説明

エスカレータ監視システム

【課題】エスカレータの手すりの汚れ具合に適応して、効率よく、迅速に汚れ除去対応が行われ、清潔さを維持させることのできるエスカレータ監視システムを提供する。
【解決手段】エスカレータ手すりの汚れを検知し電圧レベルに変換し出力とする検出部および電圧レベルを信号変換して監視データとし、発信する監視・通信制御部が備えられた複数の通信モジュール(6・・n)と、複数の通信モジュールから発信された監視データを所定の宛先へ伝送するネットワークシステム3と、ネットワークシステムを介して伝送された監視データを受信し、収集・蓄積された監視データを分析処理し、手すりのメンテナンス指示情報に換えて発信する所定の宛先である情報収集センター4と、ネットワークシステムを介して伝送されたメンテナンス指示情報を受信する所定の携帯端末と、を備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークを用いた監視情報の伝送に関し、特にエスカレータの手すりの汚れ監視に供して好適なエスカレータ監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータ(移動歩道含む)の手すりベルト(移動手すり)は、周辺の浮遊ゴミ(ホコリ、チリ)、利用者の手あか及びベルト駆動の潤滑油拡散等の汚れ物質の付着によって、時間経過に伴い徐々に汚れが激しくなるほか、他の外的要因によって短時間で激しい汚れとなることもある。また、設置環境、動作頻度の違いによっても、汚れの程度は異なってくる。
【0003】
通常は、メンテナンス担当者の清掃作業または手すり清掃装置の稼動によって定期的に清掃される。
【0004】
一時的な激しい汚れに対して、利用者からの通報などにより、メンテナンス担当者の応急清掃が行われることもある。
【0005】
このように、設置環境、動作頻度等の違いによって、汚れの程度が異なってくる各エスカレータの手すりに対して、従来の清掃方法では、必ずしも適切な頻度で、効率よく行われているとは云えない。このようなことから、清潔さの面から利用者に不愉快な思いをさせるとか、時には、危険が潜む場合もあり、手すりを掴まないことで、不慮の事故に見舞われることもある。
【0006】
エスカレータ本体および手すりの移動速度など、駆動機構の特性による安全動作に関しては、規格に準じて動作し、かつ、規準に適合して整備される。
【0007】
一方、手すりの汚れに関して、その清掃については、前記記載のとおり、個々のやり方で行われている。
【0008】
従来から、エスカレータの手すりを自動的に清掃する装置の提案がなされている。(例えば、特許文献1参照)
【0009】
更に、手すりの動作状況に応じて、あらかじめ設定された動作モードが選択されて、自動的に定期的な清掃を行う装置の提案もある。(例えば、特許文献2参照)
【0010】
上記提案の装置は、図5に示されるように、手すり1の清掃に対し、手すり清掃装置2がエスカレータ本体の下部インレット(または上部インレット)に配設されている。
【0011】
これらの方式では、多くの場所に設置され、それぞれ設置環境、動作頻度が異なり、かつ、これらの状況が変化しているようなエスカレータに対して、このような状況変化に適応するような清掃が行えず、費用対効果の上で効率的なメンテナンスではなかった。
【特許文献1】特開2005−324968号公報(図1、図7)
【特許文献2】特開2001−63953号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来技術の手すり清掃装置は、予め設定した定期整備期間の清掃であるので、期間内で過度な汚れが生じた状態でも動作を継続させることがあり、一方、定期整備期間の満了時に清掃不要であるような汚れのない状態であっても清掃される場合がある。これでは、設置環境、動作頻度など、個々のエスカレータ手すりの状況変化に適応したメンテナンスの実施とは云えない。
【0013】
そこで、各エスカレータの手すりの汚れ状況を一元管理し、効率的な清掃を行えるような情報収集システムが無かった。
【0014】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、エスカレータの手すりの汚れ具合をリアルタイムでエスカレータメンテナンス担当部門およびビル管理者などの契約ユーザへ即時に通報し、汚れ具合に適応して、効率よく、迅速に汚れ除去対応が行われ、清潔さを維持させることのできるエスカレータ監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的を達成するために、本発明のエスカレータ監視システムは、エスカレータ毎に装備された手すり清掃装置の内部に取り付けられ、該エスカレータの手すりの汚れを検知し、該汚れを電圧レベルに変換し出力とする検出部および該電圧レベルを信号変換して監視データとし、発信する監視・通信制御部が備えられた複数の通信モジュールと、前記複数の通信モジュールから発信された前記監視データを所定の宛先へ伝送するネットワークシステムと、前記ネットワークシステムを介して伝送された前記監視データを受信し、収集・蓄積された前記監視データを分析処理し、前記手すりのメンテナンス指示情報に換えて発信する前記所定の宛先である情報収集センターと、前記ネットワークシステムを介して伝送された前記メンテナンス指示情報を受信する所定の携帯端末と、を備える構成とした。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、各エスカレータの手すりの汚れに対して、設置環境、動作頻度の変化に適応したメンテナンスが行えるような一元管理ができ、個別のエスカレータに対する汚れ具合情報をリアルタイムでエスカレータメンテナンス担当部門およびビル管理者などの契約ユーザへ即時に通報されるので、汚れ具合に適応して、効率よく、迅速に汚れ除去対応が行われる。
【0017】
その結果として、費用対効果の上で効率的なメンテナンスとなる。
ひいては、清潔な手すりの状態を維持し、手すりの汚れによる不慮の事故に見舞われることも避けられ、安全性の向上にも繋がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
近年、移動通信におけるモバイルネットワークは、携帯電話を個人利用する以外の利用形態、即ち、モバイルソリューションビジネスでの利用が拡がりを見せている。
【0019】
多くの分散設置されたそれぞれの被制御機器側に超小型のパケット通信ユニット及びセンサーが備えられ、そこから得た監視などのデータがモバイルネットワークを介してサーバ等を備えたセンターに伝送され、センターで処理された情報が携帯電話を持つ業務担当者に通報され、機器の保守などの対応をさせるシステムがある。
【0020】
図1に、本発明の実施形態となるシステム構成図を示し説明する。
本発明のエスカレータ監視システムは、それぞれが例えば前記超小型のパケット通信ユニット及びセンサーに該当する通信モジュール(6・・・n)と、これらの各通信モジュール(6・・・n)から発信された監視データを所定の宛先へ伝送する通信網として、例えば前記モバイルネットワークに該当するネットワークシステム3と、このネットワークシステム3を介して各監視データを受信し、収集された監視データを分析処理し、メンテナンス指示情報に換えて発信する情報収集センター4と、このメンテナンス指示情報をネットワークシステム3を介して受信するエスカレータのメンテナンス契約者である契約ユーザ5が保有する所定の携帯端末(携帯電話)5aとから構成される。
【0021】
前記通信モジュール(6・・・n)のそれぞれは、エスカレータ毎に装備された手すり清掃装置2の内部に装着され、かつ同じ構成である。その構成を例えば、通信モジュールー1(6)を代表に挙げて説明すると、次のようになる。
【0022】
手すり清掃装置2を介して検知された手すり1のベルトの汚れ具合を電圧レベルの電気信号に変換して出力する汚れセンサーとしての検出部6aと、汚れレベルを表す電圧レベルの電気信号を入力とし、伝送可能な監視データに信号変換し出力とし、またはデータメモリ6cに記憶された過去の監視データを必要により読み出して入力とする監視制御部6bと、監視データの入力・出力を行い、監視データをメモリに一時記憶させるデータメモリ6cと、更に、監視データを入力とし、これをネットワークシステム3に載せて情報収集センター4へ向けて伝送可能な無線送信信号に変換し、発信する通信制御部6dとから構成されている。
【0023】
なお、実施例として、監視制御部6b,データメモリ6c及び通信制御部6dは、前記パケット通信ユニットに、その機能が備えられている。このパケット通信ユニットに検出部6aが接続されて通信モジュールー1(6)となる。
【0024】
更に、記載してはいないが、通信モジュールー2(7)・・・通信モジュールーN(n)のそれぞれの機能も上記通信モジュールー1(6)と同様の機能を有する。
【0025】
情報収集センター4は、次のような構成である。
各通信モジュール(6・・・n)から送信された各監視データをネットワークシステム3経由で所定の宛先として受信し、これを出力とし、更に、収集・蓄積された監視データの分析結果から得られた手すりのメンテナンス指示情報を入力とし、これをネットワークシステム3に向けて発信(送信)する通信制御部4aと、過去・現在の監視データを入力とし、これを分析処理して、メンテナンス表示・指示情報を得て出力とする監視制御部4bと、必要とされる過去・現在の収集・蓄積された監視データ、その分析データおよびメンテナンス表示・指示情報等をメモリに記憶させ、かつ入出力させるデータベース4cと、
【0026】
監視データおよびメンテナンス指示情報等を表示及び指令情報などを入力させる操作表示部4dとを備えている。
【0027】
なお、情報収集センター4にはオペレータが常駐し、オペレータは、操作表示部4dを介して必要な情報を取得し、又は、所望の指令を入力し、エスカレータ保守会社、およびエスカレータ設置ビル管理者などの契約ユーザ5に対し、契約ユーザ5の担当者が保有する携帯端末5a等へ情報を送出させ、迅速に汚れ除去の対応を促すような行動をとる。
【0028】
また、監視制御部4bでは、データベース4cに格納された過去の手すり汚れ監視データを統計的手法による分析を行い、次の時期に汚れ除去が必要になるエスカレータを選別し、その時期予測などの保守用データに編集することができる。編集結果は、操作表示部4dよりオペレータに明示され、更に、オペレータは、契約ユーザ5に対して、次の時期の保守指令を送出することができる。このような定型的な指令手順は、監視制御部4bの中で予め記憶された電子化制御手順が実行され、オペレータを介することなく実行されるようにしてもよい。監視制御部4b、データベース4cおよび動作プログラムはサーバ装置に置き換えられることは云うまでもない。
【0029】
図2は、本発明のエスカレータ監視システムに適用された手すり清掃装置の第1の実施例の部分概念図であり、手すり清掃装置に対向して検出部6aが備えられている。
【0030】
清掃用具2aは、手すり1の移動方向とは逆の方向に接触しながら回転し、この動作によって手すりのベルト面の清掃が行われる。検出部6aは、清掃用具2aが清掃済みとなった用具面に付着したゴミ(検出物質)などの汚れを検知する。
【0031】
検出部6aは、赤外線などを用いた光電センサであり、発光素子から発射される光(例えば赤外線)が検出物質に当たり、その反射光を受光素子で検出する、発光素子と受光素子の両者が1つのケース内に内蔵された反射型センサである。
【0032】
次に、検出部6aからは、汚れレベルを表す電気信号が出力され、これを入力とした監視制御部6bでは、例えば、汚れのない場合と、ある場合との相関検出法などによる信号処理を行って、前記電気信号を汚れ程度を表す監視データに変換する。
【0033】
なお、図示してはいないが、検出部6aの検出面は手すりのベルト面に対向するように取付け、手すりの汚れを直接的に検出するようにしてもよい。
【0034】
図3は、本発明のエスカレータ監視システムに適用された手すり清掃装置の第2の実施例の部分概念図であり、検出部6aa、6abが備えられている。
【0035】
前記図2の説明と同様に、手すり1の移動方向とは逆の方向に接触・回転する清掃用具2aの動作によって手すりのベルト面の清掃が行われる。
【0036】
清掃済みとなった清掃用具2aの表面に付着したゴミ(検出物質)などの汚れ物質は、清掃用具2aに接触させた汚れ掻き落とし部2cの作用によって掻き落とされ、汚れ物質溜まり槽2bに落下して 汚れ物質塊2dとなる。
【0037】
検出部6aa、6abは、赤外線などを用いた光電センサであり、発光素子6aaから発射される光(例えば赤外線)が検出物質に当たり、その透過光を受光素子6abで検出する、発光素子と受光素子が分離された透過型センサである。
【0038】
次に、検出部6abからは、前記図2の説明と同様に、汚れレベルを表す電気信号が出力され、これを入力とした監視制御部6bは、例えば、汚れのない場合と、ある場合との相関検出法などによる信号処理を行って、前記電気信号を監視データに変換する。
【0039】
なお、汚れ物質溜まり槽2bは光電センサの光を減衰させない材質でできていることは云うまでもない。
【0040】
図4は、本発明のエスカレータ監視システムに適用された手すり清掃装置の第3の実施例の部分概念図であり、検出部6aa、6abが備えられている。
【0041】
前記図2の説明と同様に、手すり1の移動方向とは逆の方向に接触・回転する清掃用具2aの動作によって手すりのベルト面の清掃が行われる。
【0042】
汚れ物質溜まり槽2bには、洗浄液2eが入っており、清掃用具2aの一部は回転途中で洗浄液2eに浸るようになっている。このため、清掃用具2aの下部が回転途中で洗浄液2eに浸ると清掃済みとなった清掃用具2aの表面に付着したゴミ(検出物質)などの汚れ物質は、洗浄液2eに含浸される作用によって液内に拡散され、汚れ物質溜まり槽2b内の洗浄液2eは次第に透過度(または、透過率)の値が落ちてくる。
【0043】
この透過度が落ちてきた洗浄液は検出部6aa、6abによって汚れ程度が検知される。
前記図3の説明と同様に、検出部6aa、6abは、赤外線などを用いた光電センサであり、発光素子6aaから発射される光(例えば赤外線)が検出物質に当たり、その透過光を受光素子6abで検出する、発光素子と受光素子が分離された透過型センサである。
【0044】
更に、検出部6abからは、前記図2の説明と同様に、汚れレベルを表す電気信号が出力され、これを入力とした監視制御部6bは、例えば、汚れのない場合と、ある場合との相関検出法などによる信号処理を行って、前記電気信号を監視データに変換する。
【0045】
前記通信モジュール(6・・・n)は超小型化が進んでいるので、既設の手すり清掃装置に容易に装着できる。ネットワークシステム3は、地下街などの電波不感エリアもカバーエリアに拡大されている通信ケーブルの敷設を要しないワイヤレスの通信網であるモバイルネットワークを利用することができる。これらのことから、本発明のエスカレータ監視システムの構築費用は極めて安価で済む。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、エスカレータ(移動歩道含む)に適用される運輸事業等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明のエスカレータ監視システムのブロック図である。
【図2】本発明のエスカレータ監視システムに適用された検出部が備えられた手すり清掃装置の第1実施例の部分概念図である。
【図3】本発明のエスカレータ監視システムに適用された検出部が備えられた手すり清掃装置の第2実施例の部分概念図である。
【図4】本発明のエスカレータ監視システムに適用された検出部が備えられた手すり清掃装置の第3実施例の部分概念図である。
【図5】エスカレータの概略側面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 手すり
2 手すり清掃装置
2a 清掃用具
2b 汚れ物質溜まり槽
2c 汚れ掻き落とし部
2d 汚れ物質塊
2e 洗浄液
3 ネットワークシステム
4 情報収集センター
4a,6d 通信制御部
4b、6b 監視制御部
4c データベース
4d 操作表示部
5 契約ユーザ
5a 携帯端末
6・・・n 通信モジュール
6a 検出部
6c データメモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレータ毎に装備された手すり清掃装置の内部に取り付けられ、該エスカレータの手すりの汚れを検知し、該汚れを電圧レベルに変換し出力とする検出部および該電圧レベルを信号変換して監視データとし、発信する監視・通信制御部が備えられた複数の通信モジュールと、
前記複数の通信モジュールから発信された前記監視データを所定の宛先へ伝送するネットワークシステムと、
前記ネットワークシステムを介して伝送された前記監視データを受信し、収集・蓄積された前記監視データを分析処理し、前記手すりのメンテナンス指示情報に換えて発信する前記所定の宛先である情報収集センターと、
前記ネットワークシステムを介して伝送された前記メンテナンス指示情報を受信する所定の携帯端末と、
を備える構成としたエスカレータ監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−297072(P2008−297072A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145054(P2007−145054)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】