説明

エネルギーを無線で交換するシステム

【課題】効率的な無線エネルギー伝達の範囲を拡張する。
【解決手段】エネルギーを無線で交換するシステムが物体のアレイを備える。各物体は、電磁的(EM)かつ非放射性であり、エネルギーの受信に応じてEM近接場を生成する。前記アレイ内の各物体は、他の物体から電気的に絶縁され、全ての他の物体から或る距離に配置される。エネルギードライバが、エネルギーを物体のアレイに提供する。受信機が、アレイに対する相対位置において、エバネッセント場の共振結合を介して前記エネルギーを受信する。本システムは、アレイに対する受信機の相対位置に依拠してEM近接場の特性を調整することができる。この調整は、エネルギー場の周波数、位相、および振幅に影響を与えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、エネルギーを無線で伝達することに関し、より詳細には、共振物体のアレイを用いてエネルギーを伝達することに関する。
【背景技術】
【0002】
無線エネルギー伝達
誘導結合は、コードレス電子歯ブラシまたは車両バッテリ等の複数の無線エネルギー伝達システムにおいて用いられる。変換器のような結合インダクターにおいて、ソース、例えば一次コイルは、電磁場としてエネルギーを生成し、シンク、例えば二次コイルは、シンク内を流れるエネルギーが最適化される、例えばシンクによって生成されるエネルギーがソースのエネルギーと可能な限り同様となるようにその電磁場の範囲を定める。エネルギーを最適化するためには、ソースとシンクとの間の距離は、可能な限り小さくすべきである。なぜなら、大きな距離を介するほど、誘導結合法が非常に非効率になるためである。
【0003】
共振結合システム
図1は、ソース110からシンク120にエネルギーを伝達するための従来の共振結合システム100を示している。共振結合において、2つの共振電磁物体、すなわちソースおよびシンクは、共振条件下で互いに相互作用する。
【0004】
ドライバ140は、エネルギーをソースに入力して振動電磁場115を形成する。励起した電磁場は、ドライバにおける信号周波数、すなわち共振システムのソースおよびシンクの自己共振周波数に対し或る率で減衰する。しかしながら、シンクが、各サイクルの間に損失するエネルギーよりも多くのエネルギーを吸収する場合、エネルギーのほとんどがシンクに伝達される。ソースおよびシンクを同じ共振周波数で動作させることによって、シンクがその周波数において低いインピーダンスを有すること、およびエネルギーが最適に受信されることが保証される。
【0005】
エネルギーは、共振物体間で距離Dを介して伝達され、例えばソースは、長さLを有し、シンクは、長さLを有する。ドライバは、電力提供部をソースに接続する。シンクが電力消費デバイス、例えば抵抗負荷150に接続される。電力が、ドライバによってソースに供給され、ソースからシンクに無線でかつ非放射的にエネルギーとして伝達される。エネルギー伝達率によって、負荷に電力が供給される。無線非放射エネルギー伝達は、場115、例えば共振システムの電磁場または音場を用いて実行される。この説明を簡単にするために、場115は、電磁場とする。共振物体の結合の間、ソースとシンクとの間でエバネッセント場130が伝播される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、共振結合は、ソースから中距離、例えば共振周波数波長の数倍を介してシンクにエネルギーを伝達し、距離が長くなると非効率である。このため、効率的な無線エネルギー伝達の範囲を拡張することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施の形態は、強結合された共振物体のアレイによって、効率的な無線エネルギー伝達の範囲が拡張され、長距離にわたって移動する受信物体に対する効率的なエネルギー伝達が容易になるという認識に基づいている。
【0008】
本発明の実施の形態は、エネルギーが、強結合された共振物体のアレイの少なくとも1つの物体に提供される場合、アレイ内の全ての物体間で妥当な損失を伴って振動するという別の認識に基づいている。エネルギーは、アレイ内の少なくとも1つの物体に提供される場合、その物体からアレイ内の全ての他の物体に分配される。このため、シンクは、アレイの任意の物体からエネルギーを無線で受信することができる。したがって、本発明の実施の形態は、エネルギードライバから任意の所望の方向および距離において、エネルギーを後に無線で取り出すためにエネルギーを蓄積および分配する新規な方法を提供する。
【0009】
従来のエネルギー分配システムでは、エネルギーは、利用されなかったエネルギーをソースまたは他の特に指定されたエネルギー蓄積装置に戻す閉ループを介して送信される。これは、問題ではなくエネルギー伝達の実際と考えられていた。本発明の実施の形態は、この要件を排除し、物体の任意の配置を可能にし、これによって、エネルギー分配トポグラフィーの任意の構成を可能にする。
【0010】
1つの実施の形態では、送信デバイスと受信デバイスとの間でエネルギーを無線で伝達するように構成されたシステムが提供される。システムは、共振物体のアレイによって形成されてエバネッセント電磁(EM:electromagnetic)場を生成するソースを備える。システムは、エネルギーをアレイ内の少なくとも1つの物体に提供し、それによってシステムの動作中、エネルギーが物体からアレイ内の全ての他の物体に、例えば振動により分配されるようにするエネルギードライバを更に備える。
【0011】
この実施の形態の1つの変形形態において、システムは、エバネッセントEM場の結合によりソースからエネルギーを無線で受信する、ソースから或る距離にあるシンクを更に備える。シンクは、共振構造とすることもできるし、非共振構造とすることもできる。エネルギー伝達は、ソースのアレイ内の任意の共振物体から達成することができる。
【0012】
別の実施の形態は、エネルギーを無線で交換するように構成されるシステムであって、物体の第1のアレイを含むソースと、物体の第2のアレイを含むシンクであって、ソースおよびシンク内の各物体は、共振周波数を有し、電磁的(EM)かつ非放射性であり、エネルギーの受信に応じてEM近接場を生成するように構成される、シンクと、共振周波数におけるエネルギーをソース内の少なくとも1つの物体に提供し、それによって、システムの動作中、エネルギーがソース内の物体からソース内の全ての他の物体に分配されるようにする、エネルギードライバと、シンクからエネルギーを受信する負荷とを備え、第1のアレイおよび第2のアレイ内の各物体は、それぞれ第1のアレイおよび第2のアレイ内の全ての他の物体から或る距離に配置され、それによって、第1のアレイおよび第2のアレイ内の物体は、エネルギーを受信するとエバネッセント場の共振結合によりそれぞれ第1のアレイおよび第2のアレイ内の少なくとも1つの他の物体に強結合され、シンクは、第1のアレイ内の1つまたは多数の物体と第2のアレイ内の1つまたは複数の物体との共振結合を介してソースからエネルギーを無線で受信するように構成されるシステムを開示する。
【0013】
別の実施の形態では、ソースとシンクとの間でエネルギーを無線で伝達する方法が開示される。方法は、共振物体のアレイにおいてエバネッセントEM場を生成することを含む。方法は、共振物体のアレイとシンクとの間でエネルギーを無線で伝達することを更に含む。シンクは、共振構造とすることもできるし、非共振構造とすることもできる。別の実施の形態では、方法は、共振物体のアレイと共振物体の別のアレイとの間でエネルギーを無線で伝達することを更に含む。
【0014】
別の実施の形態では、電磁場の特性は、ソースとシンクとの間の相対位置に依拠して動的に調整される。特性には、電磁場の周波数および位相が含まれる。
【発明の効果】
【0015】
これにより、効率的な無線エネルギー伝達の範囲を拡張することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来の共振結合システムのブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態による効率的な無線エネルギー伝達の範囲を超えたシンクを有するシステムのブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態による、ソースとして共振器アレイを有するシステムのブロック図である。
【図4A】本発明の実施の形態による強結合された共振物体のアレイの概略図である。
【図4B】本発明の実施の形態による強結合された共振物体のアレイの概略図である。
【図4C】本発明の実施の形態による強結合された共振物体のアレイの概略図である。
【図4D】本発明の実施の形態による強結合された共振物体のアレイの概略図である。
【図5】本発明の実施の形態による、移動する物体に対しエネルギーを無線で供給するシステムのブロック図である。
【図6A】シンクの異なる実施態様を比較する概略図である。
【図6B】シンクの異なる実施態様を比較する概略図である。
【図6C】シンクの異なる実施態様を比較する概略図である。
【図7】本発明の実施の形態による、ソースおよびシンクとして共振器アレイを有するシステムのブロック図である。
【図8】本発明の実施の形態による、移動する物体にエネルギーを無線で供給するためのシステムのブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態による動作中のスパイラル共振器のアレイの概略図である。
【図10A】本発明の実施の形態による、共振アレイシステム内の周波数の関数としての伝達効率のグラフである。
【図10B】本発明の実施の形態による対応する共振モードを示す図である。
【図10C】本発明の実施の形態による対応する共振モードを示す図である。
【図10D】本発明の実施の形態による対応する共振モードを示す図である。
【図10E】本発明の実施の形態による対応する共振モードを示す図である。
【図11】場の強度分布パターンを示す図である。
【図12】本発明の実施の形態による、2次元平面システムに拡張された1次元システムの例の概略図である。
【図13】座標系内の2つの円形ループの概略図である。
【図14】距離の関数としての、2つの同軸金属ループの結合係数のグラフであり、電磁場の磁束の分布を有する2つのループの側面図の差込図を有する。
【図15】距離の関数としての、横方向にシフトされた2つの共平面金属ループの結合係数のグラフであり、電磁場の磁束の分布を有する2つのループの側面図の差込図を有する。
【図16】10個の共振物体からなるアレイ、および受信機として別の共振物体を有する無線エネルギー伝達システムの一例である。
【図17】図16に示す無線エネルギー伝達システムの側面図であり、第1の物体が外部ソースによって励起され、受信機がアレイ内の最後の物体と位置合わせされ、上図及下図で近傍の物体の間隔が異なる。
【図18】図17に示す2つの事例についての、周波数の関数としてのエネルギー伝達効率のグラフである。
【図19】受信機が異なる位置にあるときの結合共振物体の側面図である。
【図20】アレイの一端から他端に移動する受信機を有する無線エネルギー伝達システムの側面図である。
【図21A】第1の周波数における、受信機位置の関数としてのエネルギー伝達効率のグラフである。
【図21B】第2の周波数における、受信機位置の関数としてのエネルギー伝達効率のグラフである。
【図21C】受信機位置(x軸)および周波数(y軸)の関数としてのエネルギー伝達効率の第2のプロット図である。
【図22A】周波数が各受信機位置において最大効率に達するように調整されているときの、受信機位置の関数としてのエネルギー伝達効率のグラフである。
【図22B】受信機位置の関数としての対応する周波数のグラフである。
【図23】ソースにおける電磁場の共振周波数調整を用いた、共振物体のアレイを有する無線エネルギー伝達システムのブロック図である。
【図24】ソースにおける電磁場の共振位相調整を用いた、共振物体のアレイを有する無線エネルギー伝達システムのブロック図である。
【図25】2つの励起ポートを有する位相制御アレイの概略図である。
【図26】位相差を有しない2つの励起および90度の位相差を有する2つの励起でのエネルギー伝達効率のグラフである。
【図27】シンクにおける電磁場の共振周波数調整を用いた、共振物体のアレイを有する無線エネルギー伝達システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
エネルギーは、共振周波数において結合された共振物体間で無線により効率的に伝達することができる。共振物体のサイズが共振波長よりはるかに小さい場合、エネルギーのほとんどが共振物体内に保存され、自由空間に放射されない。効率的な無線エネルギー伝達の範囲は、共振物体の物理的なサイズに依拠する。エネルギー伝達は、受信物体が共振物体のサイズと比較して大きな距離にわたって移動するときに非効率である。
【0018】
このため、図1に示す共振エネルギー伝達システムは、距離DがおよそソースのサイズLおよびシンクのサイズLであるとき、効率的である。DがLまたはLよりはるかに大きいとき、エネルギー伝達システムは、非効率になる。さらに、ソース110およびシンク120の構造設計に依拠して、システムは、通例、1つの軸に沿った良好な位置合わせを必要とする。
【0019】
図2は、ソース210およびシンク220を用いた無線エネルギー伝達が非効率であるときの例を示している。シンク220は、ソース210から、x方向において距離Dであり、y方向において距離Lであり、ここで距離Lは、LおよびLよりはるかに大きい。さらに、シンク220は、方向250に沿って移動することができる。このため、効率的な無線エネルギー伝達の範囲を拡張し、エレベーターまたは電気車両等の移動デバイスにエネルギーを無線で提供するシステムを設計することが望ましい。
【0020】
本発明の実施の形態は、強結合された共振物体のアレイによって、効率的な無線エネルギー伝達の範囲が拡張され、大きな距離にわたって移動する受信物体への効率的なエネルギー伝達が容易になるという認識に基づいている。
【0021】
結合共振器アレイ
図3は、本発明の実施の形態によるシステム300を示している。1つの共振物体をソースとして用いる代わりに、同じ共振周波数を有する少なくとも3つの共振物体311のアレイがソース310として用いられる。各物体は、電磁的(EM)かつ非放射性であり、エネルギーの受信に応じてEM近接場を生成するように構成される。アレイ310は、物体311の任意の配置とすることができる。アレイ内の物体311は、互いから或る距離に配置され、すなわち物理的に接続されず、それによって、この物体は、エネルギーを受信すると電磁波360の共振結合によりアレイ内の少なくとも1つの他の物体に強結合される。
【0022】
アレイ内の共振結合のタイプは、誘導結合、容量性結合、またはその組み合わせとすることができる。エネルギードライバ330を用いて、エネルギーをアレイ310内の1つまたは複数の物体に提供する。共振結合によってエネルギーは、アレイ310内の全ての物体に分配される。アレイ内のエネルギー分配は、共振結合に起因してアレイの物体に沿って伝播するエバネッセント場360の励起によって達成される。エバネッセント場は、共振物体の近接場内で局所化され、自由空間には放射されない。1つの実施の形態では、処理中の損失を低減するために、高い品質係数(Q係数、Q>100)を有する共振物体が選択される。
【0023】
シンク320は、アレイから距離Dにある。シンクは、共振物体または非共振物体として構築することができる。エネルギーは、ソース310からエバネッセント場370の結合によりシンク320に伝達される。結合は、ソースおよびシンク内の1つまたは複数の物体間で生じる可能性がある。シンクは、ソースからエネルギーを無線で受信し、エネルギーを負荷340に提供する。シンクは、方向350に沿った様々な位置にあることができる。シンクが異なる位置にあるとき、ソース310内の異なる物体がシンク320に結合される。
【0024】
本発明の実施の形態は、強結合された共振物体のアレイの少なくとも1つの物体にエネルギーが提供される場合、エネルギーは、アレイ内の全ての物体の間で妥当な損失を伴って振動するという認識に基づいている。このため、シンクは、アレイ内の任意の物体からエネルギーを無線で受信することができる。したがって、本発明の実施の形態は、エネルギードライバから任意の所望の方向および距離において、エネルギーを後に無線で取り出すためにエネルギーを蓄積および分配する方法を提供する。
【0025】
従来の有線エネルギー分配システムでは、エネルギーは、利用されなかったエネルギーをソースまたは他の特別に設計されたエネルギー蓄積装置に返す閉ループを介して送信される。これは、問題ではなくむしろエネルギー伝達の実際と考えられていた。本発明の実施の形態は、この要件を排除し、物体の任意の配置を可能にし、これによってエネルギー分配トポグラフィーの任意の構成を可能にする。
【0026】
アレイ構成
共振アレイ310内の共振物体311は、用途に依拠して任意の物理形状を取ることができる。例えば、共振物体は、自己共振コイル、スパイラル、および誘電共振器とすることができる。
【0027】
図4Aに示す1つの実施の形態では、共振物体は、平面スパイラル411の形態を有する。共振物体は、異なる形状のアレイを形成する異なる配置を形成することができる。アレイ410は、複数の共振物体を線形に配置することによって形成される。スパイラル物体411は、導線から作製され、共振周波数において自己共振する。シンクは、共振構造または非共振構造で構築された1つまたは複数の物体を含むことができる。1つの実施の形態では、シンクは、スパイラル420として構築され、アレイ410の物体のうちの1つの上に配置される。別の実施の形態では、シンクは、現在の位置と別の位置430との間で移動可能である。更に別の実施の形態では、複数のシンク420および430が異なる位置において用いられる。
【0028】
図4B〜図4Dは、アレイのより複雑な形状を示している。図4Bは、曲線に沿って配置された共振物体のアレイ440を示している。図4Cに示す別の実施の形態では、共振物体は、円450に沿って配置される。図4Dに示す更に別の実施の形態では、共振物体は、平面460内に2次元で配置することができる。様々な実施の形態において、シンクは、エネルギーを無線で受信するための共振周波数を有する共振物体である。
【0029】
応用形態例
本発明の実施の形態は、エネルギーを無線で移動デバイスに提供するか、または異なるデバイス上の電池に無線で充電するための様々な応用形態に適用することができる。デバイスには、限定ではないが、電気車両と、エレベーターと、ロボットと、携帯電話、ラップトップ等の電子デバイスとが含まれる。
【0030】
図5は、エネルギーをエレベーターかご550に無線で提供するためのシステム500を示している。ソースは、共振物体511のアレイ510によって形成され、昇降路に設置される。ドライバ530を用いてアレイ510内の1つまたは複数の物体にエネルギーを提供する。ドライバ530は、送電網に接続される。シンク520は、共振物体であり、エレベーターかごに電力供給するためにエレベーターの負荷540に接続される。シンク520は、ソースからエネルギーを無線で受信し、エネルギーを負荷540に提供する。シンク520および負荷540の双方がエレベーターかご550の外側に位置決めされる。インピーダンス整合ネットワークおよび他の構成要素(図示せず)を用いてエレベーターシステムの性能を制御および最適化することができる。システムを、電気車両の無線充電等の他の用途に適合させることができる。
【0031】
シンクとしての共振器アレイ
本発明のいくつかの実施の形態は、共振器のアレイによって形成されたシンクを用いる。図6Aおよび図6Bは、異なるシンク構成を有するシステム610および620の例を示している。双方のシステムにおいて、ソースは、線形アレイに整列されたスパイラルによって構築される。ドライバにおいてループアンテナを用いて、エネルギーをアレイの一端において共振スパイラルに提供する。システム610において、シンクは、同一のスパイラル共振器であり、アレイの他端において共振スパイラルと同軸に位置合わせされる。シンクは、アレイの平面から0.5m離れている。ループアンテナを用いてシンクからエネルギーを抽出する。システム620では、シンクは、同一のスパイラルのアレイによって構築される。ループアンテナがアレイの一端においてスパイラルと同軸に位置合わせされる。
【0032】
図6Cは、システム620の伝達効率625がシステム610の伝達効率615よりも良好であることを示している。シンクと負荷との間の距離は、0.1mである。
【0033】
2つの結合された共振器アレイ
図7は、無線エネルギー伝達のための1対の共振器アレイ、すなわち第1のアレイ710および第2のアレイ720を含むシステム700を示している。共振周波数において振動するエネルギーがドライバ730からソース710に提供される。エネルギーは、無線で提供することができる。ソース710およびシンク720は、共振物体711および721のアレイである。ソースおよびシンク内の共振物体間の相互結合によって、共振アレイ構成に従うシステムにおいて、無線エネルギーが再分配される。通常、それぞれ第1のアレイおよび第2のアレイの物体間の距離は、ソースとシンクとの間の距離未満である。
【0034】
アレイ710とアレイ720との間の相互結合によって、中距離、例えばいくつかの共振物体の寸法サイズにわたる近接場750を通じた無線エネルギー伝達がサポートされる。エネルギーは、ソース内の1つまたは複数の共振物体と、シンク内の1つまたは複数の共振物体との結合によりソースからシンクに伝達される。相互結合に起因する全体的な場の分布は、単一のシステムの2つの共振器アレイの結合モードを形成する。
【0035】
様々な実施の形態において、共振物体711および721は、異なる形状およびジオメトリである。共振周波数は、ソースとシンクとの間で変動する可能性がある。しかしながら、1つの実施の形態は、最適なエネルギー伝達効率を達成するために、共振物体711および722の双方について同じ共振周波数を維持する。
【0036】
様々な実施の形態において、第1のアレイのサイズは、第2のアレイのサイズよりも小さいか、第2のアレイのサイズよりも大きいか、または第2のアレイのサイズと等しい。第1のアレイおよび第2のアレイは、同じ寸法または異なる寸法とすることができる。第1のアレイおよび第2のアレイは、同じ自由度または異なる自由度を有することができる。1つの実施の形態では、第2のアレイは、少なくとも1自由度を有する。
【0037】
或る実施の形態では、ドライバは、1つの共振物体にまたはいくつかの共振物体に同時にエネルギーを提供することができる。また、1つの実施の形態では、ドライバ給電位置731は、動くことができる。システム共振周波数および共振周波数毎の共振モードは、システム構成、すなわちソースおよびシンクの物体が決まった後に固定される。ドライバ730は、ソース710内の任意の共振器物体711においてシステムにエネルギーを提供することができる。
【0038】
同様に、1つの実施の形態では、負荷エネルギー抽出位置は、動くことができる。エネルギーは、シンクの任意の共振物体721から抽出することができる。この実施の形態の変形形態では、負荷740は、シンクのアレイ内の2つ以上の物体から、例えば様々な位置741、742、743、および744においてエネルギーを抽出することができる。
【0039】
いくつかの実施の形態では、システム700において複数のドライバを用いて様々な位置においてソースアレイ710にエネルギーを提供することができる。同様に、複数の負荷740および745を用いて様々な位置においてシンク720からエネルギーを抽出することができる。
【0040】
移動するデバイス
図8は、エレベーターかご等の移動するデバイスにエネルギーを無線で供給するシステム800を示している。ソースは、共振物体880のアレイ860である。ソースは、昇降路に設置され、エネルギードライバ810からエネルギー815を受信する。エネルギードライバは、送電網に接続することができ、エネルギーをソースに、例えば誘導的に供給することができる。共振器アレイは、指定された共振周波数において指定された共振モードで電磁エバネッセント場を生成するように構成される。
【0041】
エレベーターかご850、すなわち負荷が共振器アレイ820によって形成されたシンクに無線で接続される。シンクは、ソースの共振器アレイより少ないか、多いか、または同じ数の共振物体を有することができる。
【0042】
実施例
図9は、別の実施の形態例を示している。27MHzで共振しているスパイラル共振器910がソース920およびシンク930の共振器アレイを形成する。例えば、双方の共振器アレイは、距離D1離隔された6個のスパイラル素子を有する。半径Rを有する2つのループアンテナがエネルギードライバ940および負荷950として用いられる。ドライバ/負荷とソースアレイ/シンクアレイとの間の離隔距離は、D2である。ソースアレイとシンクアレイとの間の距離は、Dである。
【0043】
例えば、エネルギーが有線ケーブルによりエネルギードライバ940に提供され、その後、例えば共振周波数における誘導結合によりソースに提供される。指定された共振モードがシステムにおいて励起され、エネルギーが共振モードに従ってシステム全体にわたって再分配される。負荷950がシンク930からエネルギーを無線で抽出する。エネルギーがシステムから抽出されると、システムのエネルギーバランスが乱され、バランスを維持するために更なるエネルギーがドライバ940から提供される。したがって、ドライバ940から負荷950に伝達されるエネルギーは、システムにおいて共振モードが維持される限り継続する。
【0044】
図10Aに示すように、システムの共振モードが周波数に依拠するので、伝達効率も周波数に依拠する。エネルギー伝達効率1030は、システムにおいて複数のピークを有し、これは、複数共振器構成の結果である。
【0045】
図10B〜図10Eに示すように、エネルギー伝達効率曲線1011〜1014における異なるピークは、異なる対応する共振モード1021〜1024に対応する。システム全体に共通の共振モードが励起されるとき、エネルギーは、放射をほとんど伴わずにシステム内に閉じ込められる。
【0046】
特に、ドライバから負荷へのエネルギー伝達効率は、エネルギーがシステム全体にわたって均等に分配される共振モードにおいて最も高くなり、これは、ピーク1014である。
【0047】
図11は、対応するモード1110を示している。ソース920およびシンク930内の各共振器は、この共振モードにおいて励起され、エネルギーは、2つのアレイに沿ってかつこの2つのアレイ間で振動して均等に分配される。
【0048】
2次元共振アレイ
図12は、共振物体のアレイをどのように様々な次元、例えば共振物体の2次元(2D)アレイとすることができるかを示している。2Dアレイは、x方向およびy方向双方に延在し、ソース1240およびシンク1230として用いられる。エネルギードライバ1260は、共振周波数においてソースにエネルギーを提供する(1250)。ソース内の共振物体間の相互結合1270〜1273に起因して、システムにわたって双方向に無線エネルギーが再分配される。ソース内の共振物体と、シンク内の共振物体との相互結合1274によって、結果としてソース1240からシンク1230への無線エネルギー伝達が生じる。システム全体の対応する共振モードが、共振周波数においてエネルギーを提供することを通じて励起される。対応する共振モードにおいて、システム1200内のエネルギーが3方向において再分配される。特に、エネルギーは、z方向において無線で伝達される。
【0049】
金属線の2つのループの結合
電磁(EM)場の結合は、誘導結合および共振結合に基づく無線エネルギー伝達において不可欠である。無線エネルギー伝達システムをより良好に設計するには、EM物体間の結合挙動を理解することが重要である。
【0050】
まず、金属線の2つのループの結合を説明する。図13は、2つの結合金属ループを示している。それらの位置および幾何学的パラメーターは、座標系において規定される。2つの金属ループの相互結合は、
【0051】
【数1】

【0052】
によって記載することができる。ここで、Φは、第1のループ内の電流Iに起因して第2のループを通過する電磁場の磁束であり、
【0053】
【数2】

【0054】
である。
【0055】
2つのループの自己インダクタンスは、LおよびLである。結合係数は、
【0056】
【数3】

【0057】
として規定される。半径Rを有する金属ループの自己インダクタンスは、
【0058】
【数4】

【0059】
によって計算される。
【0060】
図14および図15では、同一のサイズおよび自己インダクタンスL=Lを有する2つのループの2つの特殊な場合について説明する。対応する電磁場の磁束1401が差込図に示されている。
【0061】
図14において見て取ることができるように、ループ間の距離dで2つのループが同軸であるとき、式は、以下のように簡単化される。
【0062】
【数5】

【0063】
結合係数は、数値的に計算される(そして図14において距離の関数としてプロットされる)。結合係数は、2つのループが互いに近接しているとき、短い範囲において非常に強い。距離がループの半径に等しいとき、結合係数は、約0.05に降下する。ループ間の距離dで2つのループが(図15に見られるように)共平面であるとき、式は、以下のように簡単化される。
【0064】
【数6】

【0065】
結合係数は、数値的に計算され、図15において距離の関数としてプロットされる。2つのループが並んでいるときであっても、結合係数は、既に非常に弱い。距離がループの半径に等しいとき、結合係数は、0.005未満に降下する。
【0066】
上記の解析は、2つの金属ループの結合係数が、同軸の場合よりも共平面の場合にはるかに弱く、双方の場合に距離の増加に伴い急速に減少することを示している。結合係数は、第1のループ内の電流に起因して第2のループを通過することができる磁束の量に比例する。図14および図15に示すように、共平面の場合よりも同軸の場合に、はるかに多くの磁束1401が第2のループを通過する。誘導結合または共振結合を用いた無線エネルギー伝達システムでは、受信機(複数の場合もあり)は、通常、より高いエネルギー伝達効率およびより大きな伝達距離を得るために、送信機と共平面に配置される代わりに送信機と同軸位置に配置される。
【0067】
誘導結合に基づく無線エネルギー伝達の場合、高い効率を達成するために、通常、高い結合係数(k>0.9)が必要とされ、このため、送信機と受信機との間の良好な同軸位置合わせおよび非常に小さな距離が必要とされる。共振結合に基づく無線エネルギー伝達の場合、エネルギーは、送信機と受信機との間の共振エネルギー交換の多数のサイクルを介して受信機に伝達することができる。受信機に結合されたエネルギーが、各サイクルにおける結合において失われるエネルギーよりも高い限り、高い結合係数がなくても効率的なエネルギー伝達を達成することができる。
【0068】
共振物体のアレイにおける結合
共振物体のアレイを用いた無線エネルギー伝達システムでは、エネルギーを受信機に提供するために2つ以上の共振物体が密に結合される。これらの物体は、物理的にも電気的にも接続されていないが、エネルギーは、電磁場の共振結合を介してこれらの物体間で分配される。
【0069】
高い伝達効率およびより大きな伝達距離を得るために、受信機は、この受信機の平面の軸が送信物体の平面の軸と平行(同軸、または横方向シフトで同軸)になるように配置されることが好ましい。アレイ内の共振物体は、結合によるエネルギー損失を低減するために、密に結合される必要がある。一般に、共振物体のアレイがこのアレイの一端で励起されるとき、近傍物体間の結合係数がより高いほど、アレイの他端により多くのエネルギーが結合される。さらに、共振結合のハイブリッド化に起因して、帯域幅はより広くなり、より高い結合係数が得られる。
【0070】
図16は、共振物体のアレイおよび受信機1601の一例を示している。共振物体は、多重巻き方形螺旋共振器である。アレイは、線形アレイに配列された10個のそのような物体によって作製される。受信機も、アレイと平行に配列された多重巻き方形螺旋共振器であり、アレイによって形成された平面に沿って自由に移動することができる。アレイ内の第1の物体は、外部エネルギーソースによって励起され、共振結合を介してアレイの全ての物体にエネルギーが分配される。
【0071】
図17に示すように、近傍の物体の位置の2つの異なる間隔1701および1702がアレイに用いられる。周波数の関数としてのエネルギー伝達効率は、シミュレーションによって求めることができる。事例1において、近傍物体間の間隔は、共振物体の幅の15%である。事例2において、近傍物体間の間隔は、共振物体の幅の僅か3%である。受信機とアレイの平面との間の距離は、共振物体の幅の50%である。
【0072】
図18は、図17の2つの事例について、周波数の関数としてのエネルギー伝達効率を示している。アレイが近接した位置に配置されているとき、効率は、全ての周波数についてより高く、帯域幅は、はるかに広い。
【0073】
異なる位置の受信機
受信物体が異なる位置にあるとき、受信物体とアレイとの間の結合は異なる。図19に示すように、アレイ1902から受信機1901への結合は、受信機がアレイ内の1つの物体に位置合わせされているときに、より強力である。それと比較して、受信機が近傍物体の間にあるとき、結合はより弱い。2つの近傍物体からの電磁場の磁束は、異なる方向を有する場合があり、それによって受信物体を通過する磁束全体が相殺され、結合係数が更に小さくなる。結合係数の変化に起因して、受信物体が異なる位置にあるとき、エネルギー伝達効率は、それに応じて変化する。
【0074】
さらに、受信機の位置が変化するとき、アレイおよび受信機のシステムの共振モードおよび共振周波数も変化する。システムの共振周波数で動作することによって、通常、他の周波数で動作するよりも高いエネルギー伝達効率がもたらされる。したがって、受信機が異なる位置に移動すると、ピークエネルギー伝達効率の周波数も変動する。このため、アレイおよび受信機の相対位置に依拠して周波数を調整することが望ましい。
【0075】
図20は、共振物体のアレイおよびこのアレイの方向に沿って移動する受信物体2010の側面図を示している。図16にシステム設計が示されている。受信機とアレイとの間の距離は、アレイ内の共振物体の幅の50%である。アレイは、アレイ内の第1の物体において、外部ソースによって励起される。受信機位置の関数としてのエネルギー伝達効率が図21Aおよび図21Bに示されている。
【0076】
受信機位置は、アレイの周期を単位とする。ゼロは、受信機の位置がアレイ内の第1の物体に位置合わせされていることを意味する。数が大きくなるほど、受信機は、第1の物体からより遠く離れている。
【0077】
図21Aおよび図21Bは、2つの異なる周波数におけるプロットを示している。双方の図は、受信機がアレイに沿って進むときの効率の変動を示している。図21Aにおいて、効率は、85%から60%まで変動する。図21Bにおいて、効率は、90%から10%まで変動する。変動は、図21Aよりも図21Bにおいてより大きい。これは、2つの異なる周波数における異なる共振モードに起因する。
【0078】
図21Cにおいて、受信機が異なる位置にあるときの異なる周波数におけるエネルギー伝達効率変動が更に示されている。ここで、エネルギー伝達効率2111は、受信機位置および周波数の双方の関数としてプロットされている。ピークエネルギー伝達効率の周波数は、異なる位置において変化する。
【0079】
したがって、共振物体のアレイを用いて無線エネルギー伝達の変動を低減するのが望ましい。
【0080】
電磁場特性の最適化
電磁場は、周波数特性および位相特性を有する。本発明の実施の形態は、アレイに対するソースの相対位置に依拠してこれらの特性を調整することを可能にする。これは3つの方法で行うことができる。
【0081】
送信周波数調整
共振物体のアレイを用いて無線エネルギー伝達システムの性能を改善する1つの方法は、アレイに対する受信機の相対位置に依拠して電磁場の周波数を調整することである。受信機が異なる位置にあるとき、最高エネルギー伝達効率のための周波数は変化する。全ての位置について周波数をこの所望の周波数に調整することができる場合、システムの性能が改善する。
【0082】
図22Aは、図16に示すシステムのエネルギー伝達効率を、アレイに対する受信機の相対位置の関数として示している。この実施の形態では、周波数は、全ての位置において最高エネルギー伝達効率を得る最適周波数に調整される。この効率は、全ての位置について80%を超え、効率の変動は、10%未満である。ここで、性能改善は、図21に示す性能と比較してより良好である。
【0083】
図22Bは、各受信機位置の周波数を示している。
【0084】
図23は、共振物体2310のアレイを有する無線エネルギー伝達システムの一実施の形態を示している。ソースにおける周波数調整を用いて所望の周波数において信号を生成する。RF生成器2301が所望の電力レベルを達成するために増幅器2302に接続され、そしてインピーダンス整合のために整合ネットワーク2305に接続される。インピーダンス整合は、電力伝達を最大にしかつ/または反射を最小にする。
【0085】
高周波数エネルギーが共振物体2310のアレイに提供される。受信機2321は、アレイからエネルギーを受信する。受信したRFエネルギーは、整流器2322および調整器2323を通過してデバイス(負荷)2324に電力を供給する。
【0086】
本明細書において用いられるとき、電力とは、エネルギーが作業を実行するために変換される率である。
【0087】
効率的なエネルギー伝達のためにアレイに対する受信機の相対位置に依拠して動作周波数を調整するために、検出・フィードバックモジュール2306を用いてフィードバックを検出し、情報をコントローラ2304に送信し、その後、コントローラ2304は、フィードバック情報を処理して周波数調整メッセージ2303を高周波数信号生成器2301に送信する。
【0088】
周波数調整の検出・フィードバックシステムによって様々な情報を収集することができる。1つの実施の形態では、アレイからRFソースに戻される反射エネルギー量を監視することができ、最低反射エネルギーを得るように周波数が調整される。反射エネルギーは、受信機の位置に間接的に依拠する。別の実施の形態では、これもまた位置に依拠する、受信機への送信エネルギーレベルを監視することができ、最高エネルギーが受信機に送信されるまで、周波数調整のための情報がコントローラに返送される。代替的に、アレイ2310に対する受信機2321の位置を直接用いて周波数を調整することができる。
【0089】
調整は、受信機が動くのに伴い、動的かつリアルタイムとすることができることに留意する。
【0090】
送信位相調整
共振物体のアレイは、外部ソースによって、様々な励起ポートを通じてアレイ内の1つまたは複数の共振物体において励起することができる。各励起ポートの位相および振幅を動的に調整して、高い効率を達成し、受信機(複数の場合もあり)が様々な位置にあるときの効率変動を低減することができる。
【0091】
各ポートにおいて励起の位相および振幅を調整することによって、アレイ(複数の場合もあり)および受信機(複数の場合もあり)のシステムにおけるEM場分布を制御することができる。様々な位置における受信機(複数の場合もあり)への結合は、動的調整によって最適化することができる。
【0092】
このため、最適な電力伝達効率を維持することができる。複数励起ポートの第2の利点は、複数の共振物体を横切ることに起因したエネルギー損失が減少することである。適切な励起ポート設計により、アレイ内に「ヌル」エリアを挿入し、それによってアレイのその部分において、電磁場強度を無視できるほど小さくし、アレイのその部分の近くの受信機(意図的であっても偶然であっても)は、結合されないようにすることが可能である。このため、無線で電力供給された車両幹線道路網等でアレイの一部分がサービス提供されている間、その部分を「オフにする」ことができる。
【0093】
図24は、送信周波数を同じに保ちながら、アレイに対する受信機2405の相対位置に依拠して電磁場の位相を変動させることにより、共振物体のアレイ2404を用いて無線エネルギー伝達システムの性能を改善する方法を示している。2つ以上の給電点2400を用いてアレイにエネルギーを提供する。アレイ上のエネルギー分布は、全ての給電点における電磁場パターンの重ね合わせによって求めることができる。
【0094】
アレイ内の1つまたは複数の給電点の位相遅延を調整することができる。位相を調整することによって、アレイ2404に沿ったエネルギー分布を変動させることができる。受信機2405が低エネルギーおよび低エネルギー伝達効率を有する位置にあるとき、1つまたは複数の給電点の位相遅延を調整することによって、その位置におけるエネルギーが増大し、受信機へのエネルギー伝達が改善する。位相遅延がアレイに対する全ての位置における受信機について依拠して調整される場合、システムの性能を改善することができる。
【0095】
高周波数信号生成器2401を用いて、所望の周波数で信号を生成することができる。信号は、所望のレベルを得るために電力増幅器2402に供給され、インピーダンスマッチングのためにマッチングネットワーク2403に供給される。複数の給電点における共振物体のアレイ2404に高周波数エネルギーが提供される。
【0096】
1つまたは複数の給電点2400の位相遅延は、アレイに対する受信機2405の相対位置に依拠して、調整可能移相器2411によって調整することができる。受信機2405は、アレイ2404からのエネルギーを受信する。受信RFエネルギーは、整流器2406および調整器2407を通過し、デバイスまたは負荷2408に電力を提供するために変換される。
【0097】
効率的なエネルギー伝達のために受信機位置に依拠して位相を調整するために、検出・フィードバックモジュール2409を用いてアレイシステムの情報を検出し、情報をコントローラ2410に返送する。コントローラは、フィードバック情報を処理して移相調整メッセージ2420を調整可能移相器2411に送信する。コントローラは、振幅調整メッセージ2421も生成することができる。
【0098】
検出・フィードバックシステムによって、移相調整処理のための様々な情報を収集することができる。1つの実施の形態では、アレイからRFソースに戻される反射エネルギーを監視することができ、最低反射エネルギーを得るように位相が調整される。反射エネルギーは、受信機の位置に依拠する。別の実施の形態では、受信機が受信したエネルギーを監視することができ、最高エネルギーが受信機に送信されるまで、位相調整のための情報がコントローラに返送される。アレイに対する受信機の位置を直接監視することもできる。
【0099】
図25は、位相制御アレイ(Tx)および受信機(Rx)の一例を示している。アレイは、2つの励起ポート(Tx)を有する。各励起の移送は、エネルギー伝達効率を最適化するように調整される。
【0100】
図26は、同じ位置にある受信機のエネルギー伝達効率を示している。図26において2つの事例、すなわち、位相差のない2つの励起、および90度の位相差を有する2つの励起が検討される。効率は、2つの事例について異なる。励起周波数が一定であるとき、システムは、各励起の位相角を変更してエネルギー伝達を最適化することによって調整することができる。
【0101】
受信機共振周波数調整
共振物体のアレイを用いて無線エネルギー伝達システムの性能を改善する別の方法は、システムの周波数における最良の結合のために受信機の共振周波数を調整することである。
【0102】
図27は、受信機2705の共振周波数調整を用いる、共振物体のアレイ2704を有する無線エネルギー伝達システムの一実施の形態を示している。
【0103】
高周波数RF信号生成器2701が所望の周波数で信号を生成する。信号は、所望の電力レベルを得るために増幅器2702に供給され、インピーダンスマッチングのためにマッチングネットワーク2703に供給される。共振物体のアレイ2704に高周波数エネルギーが提供される。
【0104】
調整可能な受信機2705がアレイからエネルギーを受信する。受信RFエネルギーは、整流器2706および調整器2707を通過し、デバイス2708の電力に変換される。受信エネルギーは、検出器2709によって監視される。次に、情報が制御システム2710に送信され、制御システム2710は、情報を処理し、共振周波数調整メッセージ2711を調整可能な受信機に送信する。プロセスは、最高効率を達成するために動的に継続する。
【0105】
様々な方法を用いて受信機の共振周波数を調整することができる。1つの実施の形態では、受信機にバラクター2712を加えて、バラクターの静電容量がバイアス回路によって制御される。受信機の共振周波数は、バラクター2712の静電容量を変化させることによって調整される。
【0106】
別の実施の形態では、静電容量、ひいては受信機の共振周波数を、微小電気機械システム(MEMS:micro−electro−mechanical system)デバイスによって制御することができる。更に別の実施の形態では、静電容量、ひいては受信機の共振周波数を、強誘電体材料によって制御することができる。
【0107】
物体が移動している間に周波数および位相の双方を動的に最適化することができることに留意する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギーを無線で交換するシステムであって、
物体のアレイであって、前記各物体は、電磁的(EM)かつ非放射性であり、前記エネルギーの受信に応じてEM近接場を生成し、前記アレイ内の前記各物体は、他の前記物体から電気的に絶縁され、全ての他の前記物体から或る距離に配置される、物体のアレイと、
前記エネルギーを前記物体のアレイに提供するように構成されたエネルギードライバと、
前記アレイに対する相対位置において、エバネッセント波の共振結合を介して前記エネルギーを受信する受信機と、
前記アレイに対する前記受信機の前記相対位置に依拠して前記EM近接場の特性を調整する手段と、
を備える、エネルギーを無線で交換するシステム。
【請求項2】
前記特性は、全ての位置の最高エネルギー伝達効率のために、前記アレイに対する前記受信機の全ての前記相対位置について、全ての位置において最高エネルギー伝達効率を得る所望の周波数を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記調整する手段は、
フィードバック情報を検出するように構成された検出・フィードバックモジュールと、
前記フィードバック情報を処理し、前記エネルギードライバのための周波数調整メッセージを生成するように構成されたコントローラと、
を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記フィードバック情報は、前記アレイからの反射エネルギー量を含み、前記周波数調整メッセージは、最低反射エネルギーを得る、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記フィードバック情報は、前記受信機の前記位置を含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記調整は、動的である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記受信機は、移動している、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記調整する手段は、
フィードバック情報を検出するように構成された検出・フィードバックモジュールと、
前記フィードバック情報を処理し、2つ以上の給電点において前記アレイに接続された調整可能移相器のための位相調整メッセージを生成するように構成されたコントローラと、
を更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記アレイにおけるエネルギー分布は、全ての前記給電点における前記EM近接場のパターンの重ね合わせによって求められる、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記フィードバック情報は、前記アレイからの反射エネルギー量を含み、前記位相調整メッセージは、最低反射エネルギーを得る、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記フィードバック情報は、前記受信機が受信するエネルギー量を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記フィードバック情報は、前記受信機の位置を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記特性は、全ての位置の最高エネルギー伝達効率のために、前記アレイに対する前記受信機の全ての前記相対位置について、全ての位置において最高エネルギー伝達効率を得る所望の周波数および所望の位相を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記受信機の共振周波数は、前記システムの所望の周波数における最良の結合のために調整される、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記受信機は、バラクターを備える、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記共振周波数は、前記受信機において微小電気機械システムデバイスによって調整される、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記共振周波数は、前記受信機において強誘電体材料によって調整される、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
2つ以上の給電点において前記アレイに接続された調整可能移相器のための周波数調整メッセージを生成する、請求項6に記載のシステム。
【請求項19】
エネルギーを無線で交換する方法であって、
物体のアレイにエネルギーを分配するステップであって、前記各物体は、電磁的(EM)かつ非放射性であり、前記エネルギーの受信に応じてEM近接場を生成し、前記アレイ内の前記各物体は、他の前記物体から電気的に絶縁され、全ての他の前記物体から或る距離に配置される、分配するステップと、
前記アレイに対する相対位置にある受信機において、エバネッセント波の共振結合を介して前記エネルギーを受信するステップと、
前記アレイに対する前記受信機の前記相対位置に依拠して前記EM近接場の特性を調整するステップと、
を含む、エネルギーを無線で交換する方法。
【請求項20】
前記特性は、前記EM近接場の周波数を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記特性は、前記EM近接場の位相を含む、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図21C】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−186992(P2012−186992A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−35338(P2012−35338)
【出願日】平成24年2月21日(2012.2.21)
【出願人】(597067574)ミツビシ・エレクトリック・リサーチ・ラボラトリーズ・インコーポレイテッド (484)
【住所又は居所原語表記】201 BROADWAY, CAMBRIDGE, MASSACHUSETTS 02139, U.S.A.