説明

エネルギー中継器を用いた無線エネルギー伝達方法およびシステム

【課題】この発明の実施の形態は、エネルギーを無線で伝達するように構成される方法およびシステムを開示する。
【解決手段】本システムは、エバネッセント波の結合を介してエネルギーをシンクに無線で伝達するように構成されるソースであって、エネルギーの受信に応答して、電磁(EM)近接場を生成する、ソースと、該ソースとシンクとの間の結合を増大させるように配置されるエネルギー中継器であって、ソース、シンク、およびエネルギー中継器は電磁および非放射構造である、エネルギー中継器とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、Koon Hoo Teoによって出願された、「Wireless Energy Transfer with Negative Index Material」と題する、2009年12月3日付けで出願された米国特許出願第(MERL−2218)12/630,498号、および、Koon Hoo Teoによって本出願と同時出願され、参照により本明細書に援用される、「Wireless Energy Transfer with Negative Index Material」と題する、2009年12月xx日付けで出願された米国特許出願第(MERL−2259)12/xxx,xxx号に関する。
【0002】
また、本出願は、2009年12月3日付けでKoon Hoo Teo他によって出願された、「Wireless Energy Transfer with Negative Index Material」と題する(MERL−2221)米国特許出願12/630,543号、2009年12月3日付けでKoon Hoo Teo他によって出願された、「Wireless Energy Transfer with Negative Index Material」と題する(MERL−2222)米国特許出願12/630,669号、および2009年12月3日付けでKoon Hoo Teo他によって出願された、「Wireless Energy Transfer with Negative Index Material」と題する(MERL−2223)米国特許出願12/630,710号に関し、それらの特許出願はすべて参照により本明細書に援用される。
【0003】
この発明は、エネルギーを伝達することに関し、より詳細には、エネルギーを無線で伝達することに関する。
【背景技術】
【0004】
無線エネルギー伝達
誘導結合は、コードレス電子歯ブラシまたはハイブリッド車両バッテリの充電のような多くの無線エネルギー伝達用途において使用されている。変圧器、ソースのような結合インダクタにおいて、たとえば一次コイルが、電磁場としてエネルギーを生成し、シンク、たとえば2次コイルが、該シンクを通過するエネルギーが最適化される、たとえばソースのエネルギーと可能な限り類似するように電磁場の範囲を定める(subtend)。エネルギーを最適化するために、ソースとシンクとの間の距離は可能な限り小さくなるべきである。これは、距離が長くなると誘導法が非常に効果のないものとなるためである。
【0005】
共振結合系
共振結合において、2つの共振電磁物体、すなわちソースおよびシンクが、共振状態の下で互いに相互作用する。共振結合は中距離、たとえば共振周波数波長の数分の1にわたってソースからシンクにエネルギーを伝達する。
【0006】
図1は、共振ソース110から共振シンク120へエネルギーを伝達するための従来の共振結合系100を示している。系100の動作の一般原理は誘導結合と類似している。ドライバ140がエネルギーを共振ソースに入力して、振動電磁場115を形成する。励起された電磁場は、ドライバにおける励起信号周波数、または共振系のためのソースおよびシンクの自己共振周波数に対して或るレートで減衰する。しかしながら、共振シンクが、各サイクルにおいて失ったエネルギーよりも多くのエネルギーをより多く吸収する場合、エネルギーのほとんどがシンクに伝達される。同じ共振周波数で共振ソースおよび共振シンクを動作させることによって、共振シンクがその周波数において低インピーダンスを有すると共に、エネルギーが最適に吸収されることが確実になる。共振結合系の例が、参照によって本明細書に援用される、米国特許出願公開第2008/0278264号および同第2007/0222542号に開示されている。
【0007】
エネルギーは、複数の共振物体、たとえばサイズLを有する共振ソースおよびサイズLを有する共振シンク間で、距離Dにわたって伝達される。ドライバは電力供給器をソースに接続し、共振シンクは電力消費装置、たとえば抵抗負荷150に接続される。エネルギーは、ドライバによって共振ソースに供給され、共振ソースから共振シンクに無線でかつ非放射で伝達され、負荷によって消費される。無線非放射エネルギー伝達は、場115、たとえば共振系の電磁場または音場を使用して実行される。本明細書を簡略化するために、場115は電磁場である。共振物体の結合中、エバネッセント波130は共振ソースと共振シンクとの間で伝播される。
【0008】
結合強化
結合モード理論によれば、結合強度は結合係数kによって表される。結合強化は、結合係数kの絶対値の増加によって表される。結合モード理論に基づいて、共振結合系の共振周波数は、複数の周波数に分割される。たとえば、2つの物体の共振結合系において、結合効果に起因して、偶モード周波数および奇モード周波数と呼ばれる2つの共振周波数が観測され得る。2つの全く同じ共振構造によって形成される2つの物体の共振系の結合係数は、以下にしたがって偶モードおよび奇モードを分割することによって計算される。
【0009】
k=π|feven−fodd|・・・(1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
結合を強化することが課題である。たとえば、結合を最適化するために、高い品質係数を有する共振物体が選択される。
したがって、ソースとシンクとの間の無線エネルギー伝達を最適化することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の1つの実施の形態は、エネルギーを無線で伝達するように構成されるシステムであって、本システムは、エバネッセント波の結合を介してエネルギーをシンクに無線で伝達するように構成されるソースであって、エネルギーの受信に応答して、電磁(EM)近接場を生成する、ソースと、該ソースとシンクとの間の結合を増大させるように配置されるエネルギー中継器であって、ソース、シンク、およびエネルギー中継器は電磁および非放射構造である、エネルギー中継器とを備える、システムを開示する。
【0012】
この発明の別の実施の形態は、近接場の結合を介してエネルギーを無線で伝達するための方法であって、ソースを提供するステップであって、該ソースは、該ソースの近接場とシンクの近接場との結合を介して該シンクにエネルギーを無線で伝達するように構成され、ソースおよびシンクは、エネルギーの受信に応答して電磁(EM)近接場を生成するように構成される、EMおよび非放射構造である、ソースを提供するステップと、エネルギー中継器を提供するステップであって、該エネルギー中継器は、シンクが所定のロケーションに配置されるとき、ソースとシンクとの間の結合を増大させるように構成される、エネルギー中継器を提供するステップと、エネルギーを無線で伝達するステップとを含む、方法を開示する。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、ソースおよびシンクの近隣の少なくとも1つまたは複数のエネルギー中継器を、該エネルギー中継器によって、ソースによって生成されるいくつかのエバネッセント波がシンクにリダイレクトされるように戦略的に配置することによって、エネルギーソースとエネルギーシンクとの間のエバネッセント波の結合を最適化することができるという認識に基づく。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来の共振結合系のブロック図である
【図2A】この発明の実施の形態1による、エネルギー中継器を使用してエネルギーを伝達するためのシステムの例を示す図である。
【図2B】この発明の実施の形態1による電磁構造の図である。
【図3】異なるエネルギー分散パターンの図である。
【図4】異なるエネルギー分散パターンの図である。
【図5】異なるエネルギー分散パターンの図である。
【図6】複数のエネルギー中継器を使用してエネルギーを無線で供給するためのシステムの例を示す図である。
【図7】エネルギー中継器の実施態様の例を示す図である。
【図8】この発明の異なる実施の形態1の効果を示す概略図である。
【図9】この発明の異なる実施の形態1の効果を示す概略図である。
【図10】この発明の異なる実施の形態1の効果を示す概略図である。
【図11】この発明の異なる実施の形態1の効果を示す概略図である。
【図12】この発明の異なる実施の形態1の効果を示す概略図である。
【図13】この発明の異なる実施の形態1の効果を示す概略図である。
【図14】この発明の実施の形態2による、エネルギーを無線で伝達または受信するのに適したシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1は、エネルギーソースとエネルギーシンクとの間のエバネッセント波の結合を、ソースおよびシンクの近隣における少なくとも1つのエネルギー中継器を、該エネルギー中継器によって、ソースによって生成されるいくつかのエバネッセント波がシンクにリダイレクトされるように戦略的に配置することによって、エネルギーソースとエネルギーシンクとの間のエバネッセント波の結合を最適化することができるという認識に基づく。
【0016】
図2Aは、ソース210からシンク220への無線エネルギー伝達を最適化するように構成されるこの発明の実施の形態1を示している。ドライバ240がエネルギー260をソース210に供給するとき、ソースはEM近接場215を生成する。通常、近接場215は特定のエネルギー分散パターンにしたがって生成される。後述するパターンは、最適ゾーンのような異なる複数のゾーンを有する。最適ゾーンにおいて、近接場強度は最適、すなわち最大である。ブラインドゾーンにおいて、近接場強度は準最適である。
【0017】
近接場215に制限されるエバネッセント波230のうちのいくつかは、シンクに直接到達し、結合する。しかしながら、いくつかの他のエバネッセント波235はエネルギー中継器222に到達し、近接場216内のシンクにリダイレクトされる。エネルギー中継がなければ、波235は実質的にエネルギー伝送に役立たない。
【0018】
ソースとシンクとの間の距離および配向を使用して、エネルギー中継器の特定の配置を確定する。いくつかの実施の形態1では、エネルギー中継器は受動であり、すなわちエネルギーの外部ソースに一切接続されないエネルギーであり、ソースから受信したエバネッセント波をリダイレクトする。他の実施の形態1では、エネルギー中継器は能動であり、すなわち近接場215で伝達されるエネルギーのうちのいくらかを吸収し、該エネルギーを増幅し、近接場216を再生するように構成される。したがって、この発明の実施の形態1は、ソースとシンクとの間の結合を増大させ、中継器を用いない場合よりも長い距離にわたって、ソースとシンクとの間のエネルギーの無線伝達を容易にする。
【0019】
図2Bは、この発明の実施の形態1によるシステム200を示している。本システムは、エネルギーを無線で交換する、たとえば送信または受信するように構成され、構造210を含み、該構造は、エネルギーが該構造によって受信されるときに電磁近接場220を生成すると共に、エバネッセント波の結合を介してエネルギーを無線で交換するように構成される。
【0020】
1つの実施の形態1では、エネルギー260は当該技術分野において既知のドライバ240によって供給される。この実施の形態1では、構造210は無線エネルギー伝達システムのソースとしての役割を果たす。代替的な実施の形態1では、エネルギー260はソース(図示せず)から無線で供給される。この実施の形態1において、構造210は無線エネルギー伝達システムのシンクとしての役割を果たす。
【0021】
システム200は、オプションで、近接場215および216内に配置される負屈折率材料(NIM)231〜234を備える。1つの実施の形態1では、NIM233はEM構造210を実質的に取り囲む。NIMは、負誘電率特性および負透磁率特性を有する材料である。この材料に関して、いくつかの特異な現象、たとえばエバネッセント波増幅、表面のプラズモンのような挙動、および負の屈折が知られている。この発明の実施の形態1は、NIMの特異な能力を理解および利用してエバネッセント波を増幅した。これによって無線エネルギー伝達が最適化される。
【0022】
近接場の形状および寸法、すなわちエネルギー分散パターンは、外部エネルギー260の周波数およびEM構造210の共振周波数に依拠し、部分的に、EM構造、たとえば円形形状、螺旋形状、円柱形状によって、並びに導電率、相対誘電率、および相対透磁率のようなEM構造の材料のパラメーターによって確定される。
【0023】
通常、近接場の範囲270は、系の主波長程度である。非共振系では、主波長は外部エネルギー260の周波数、すなわち波長λ265によって確定される。共振系では、主波長は、EM構造の共振周波数によって確定される。通常、主波長は無線で交換されるエネルギーの周波数によって確定される。
【0024】
共鳴は、品質係数(Q係数)、すなわち蓄積エネルギーと散逸エネルギーとの無次元の比によって特徴付けられる。システム200の目的は、エネルギーを無線で伝達または受信することであるため、ドライバの周波数または共振周波数は、近接場領域の寸法を大きくするように選択される。いくつかの実施の形態1では、エネルギー260の周波数および/または共振周波数は、MHzからGHzの域にある。他の実施の形態1では、上述の周波数は可視光領域にある。
【0025】
エバネッセント波
エバネッセント波は、該波が形成された境界からの距離と共に強度が指数関数的に減衰する近接場定常波である。エバネッセント波235は、構造210と、波の動きに関して異なる特性を有する他の「媒体」、たとえば空気との間の境界において形成される。エバネッセント波は、外部エネルギーがEM構造によって受信されるときに形成され、EM構造210の表面からの近接場の波長の3分の1内において最も強力である。
【0026】
ウィスパリングギャラリーモード(WGM)
ウィスパリングギャラリーモードは、エバネッセント波が内部的に反射されるか、またはEM構造の表面によって収束される、エネルギー分散パターンである。最小の反射損失および放射損失に起因して、WGMパターンは通常高い品質係数に達するため、WGMは無線エネルギー伝達に有用である。
【0027】
図3は、EM構造の例、すなわちディスク310を示している。ディスク310の材料、幾何学形状、および寸法、並びに主周波数に依拠して、WGMパターン320にしたがって、EM近接場強度およびエネルギー密度がディスクの表面において最大になる。
【0028】
WGMパターンはEM構造の形状と必ずしも対称でない。WGMパターンは通常ブラインドゾーン345および最適ゾーン340を有し、ブラインドゾーン345において、EM近接場の強度は最小になり、最適ゾーン340においてEM近接場の強度は最大になる。この発明のいくつかの実施の形態1は、最適ゾーン340にNIM230を置き、エバネッセント波350の距離範囲を拡張する。
【0029】
偶モードおよび奇モード
図4は、バラフライエネルギー分散パターンを示している。2つのEM構造411および412が互いに結合され結合系を形成する場合、結合系の主周波数は、偶周波数および奇周波数によって表される。偶周波数および奇周波数における近接場分散が、偶モード結合系410および奇モード結合系420として定義される。2つのEM構造の結合系の偶モードおよび奇モードの一般的な特性は、EM場が偶モードで同相である場合、奇モードで位相が異なるということである。
【0030】
バタフライ対
偶モード結合系および奇モード結合系は、バタフライ対として定義される、近接場強度の奇モード分散パターンおよび偶モード分散パターンを生成する。バタフライ対の近接場強度分散は、各EM構造の中心に対し0度および90度に配向される2つの線431および432、すなわちバタフライ対のブラインドゾーンにおいて最小に達する。しかしながら、強度分散を変更し、ブラインドゾーンの位置および/または配向を排除および/または変更することが多くの場合に望まれている。
【0031】
交差対
図5は、この発明の実施の形態1による、交差対500として定義される近接場強度の分散パターンを示している。交差対分散パターンは、各EM構造の中心に対し0度および90度に配向される最適ゾーン1231および1232を有する。すなわち、交差対パターンの最適ゾーンは、バタフライ対パターンのブラインドゾーンに対応する。したがって、バタフライ対パターンおよび交差対パターンの1つの重要な特性は、それらのパターンのそれぞれのブラインドゾーンが重複せず、このため双方の種類のパターンが利用される場合にブラインドゾーンを排除することが可能であるということである。バタフライパターンおよび交差パターンは、同じ桁のシステム品質係数および結合係数を有する。
【0032】
エネルギー中継器配置
この発明のいくつかの実施の形態1は、バタフライ対エネルギー分散パターンおよび交差対エネルギー分散パターンの知識を使用して、ソースおよびシンクの近隣にエネルギー中継器を配置する。いくつかの実施の形態1では、シンクのロケーションは所定であり、エネルギー中継器は、シンクが所定のロケーションに配置されるときに、ソースとシンクとの間の結合を最適化するように配置される。いくつかの実施の形態1では、この目標は実験的に達成される。
【0033】
別の実施の形態1では、ソースはエネルギーを複数のシンクに伝送するように構成される。したがって、エネルギー中継器は、2つ以上のシンクの結合を増大させるように配置される。
【0034】
図6は、第1のエネルギー中継器630および第2のエネルギー中継器640を使用して、ソース610からシンク620へのエネルギー伝送を最適化するように構成されるシステム600の例を示している。この実施の形態1では、ソース、シンク、およびエネルギー中継器のEM構造は、図7に示すループ700として実現される。半径rのループが半径aの導線710、および相対誘電率εを有するコンデンサ720によって形成される。コンデンサの平板面積はAであり、平板は距離dにわたって分離される。ループ700は軸705を有し、共振構造である。しかしながら、他の実施の形態1は構造の異なる実施の形態1、たとえばディスクを使用する。
【0035】
ソース610およびシンク620は、それらのそれぞれの中心から測定して、互いから距離Dで配置される。ソースおよびシンクは、ソースおよびシンクの軸が同じ線に沿うように位置合わせされる。ソースはドライバ(図示せず)に接続され、シンクは負荷(図示せず)に接続される。
【0036】
第1のエネルギー中継器および第2のエネルギー中継器は距離dだけ離され、ソースとシンクとの間のエバネッセント波の結合を増大させるように配置される。距離dは、エネルギー中継器が互いに強力に結合されないように選択される。1つの実施の形態1では、エネルギー中継器のループは、それらの軸がシンクを指すように回転される。別の実施の形態1では、エネルギー中継器のループの軸は、ソースおよびシンクの軸と直交する。さらに別の実施の形態1では、エネルギー中継器の配向は任意である。
【0037】
図8〜図11は、ソース610およびシンク620の配置に対する系の周波数の依存状態を示している。ここで、エネルギー中継器は非能動である。たとえば、ソースとシンクとの間の距離が増大すると、奇モード周波数805および偶モード周波数815は、図8に示すように、主周波数825に向かって収束する。
【0038】
図9は、モード周波数におけるソースまたはシンクのいずれかの回転の効果を示す概略図を示している。この実施の形態1では、2つのモード周波数は、回転に関わらず比較的安定している。
【0039】
図10は、モード周波数の同軸位置合わせからソースまたはシンクの変位の効果を示す概略図を示している。1つの実施の形態1では、変位は60cm〜0cmの範囲内にある。図示するように、変位が閾値、たとえば60cmに達すると、奇周波数および偶周波数は、個々の共振周波数に接近する。
【0040】
図11は、ソースおよびシンクの異なる配置の結合係数を示している。図示されるように、ソースとシンクとの間の距離は、結合係数に最も影響し、次に変位、次に回転に影響する。
【0041】
図12および図13は、この発明の、エネルギー中継器を用いる実施の形態1および用いない実施の形態1を比較するグラフを示している。図12は、エネルギー中継器を含むシステム、すなわち曲線1200および1220の場合に、非能動エネルギー中継器を用いるシステム、すなわち曲線1210および1230の場合よりも結合係数がより大きくなることを示している。図13は、エネルギー中継器を用いるシステムの結合係数と、用いないシステムの結合係数と間の比較を示している。
【0042】
この発明のいくつかの実施の形態1は、結合が或る距離範囲にわたって最適化されることを可能にする受動エネルギー中継器または能動エネルギー中継器のより大きなネットワークを使用する。通常、エネルギー中継器は、シンク―ソース共振器リンクを強力に結合しないように配置される。
【0043】
この発明を好ましい実施の形態1の例として説明してきたが、この発明の精神および範囲内で様々な他の適応および変更を行うことができることは理解されたい。したがって、添付の特許請求の範囲の目的は、この発明の真の精神および範囲内に入るすべての変形および変更を包含することである。
【0044】
実施の形態2.
この発明の別の実施の形態2は、近接場の結合を介してエネルギーを無線で交換するための方法であって、第1の構造を提供するステップであって、該第1の構造は、該第1の構造の近接場と第2の構造の近接場との結合を介して該第2の構造とエネルギーを無線で交換するように構成され、該第1の構造および該第2の構造は、電磁(EM)および非放射であり、該第1の構造および該第2の構造は、エネルギーの受信に応答してEM近接場を生成する、第1の構造を提供するステップと、第1の構造と第2の構造との間の配向を確定するステップと、第1の構造の近接場が、配向に最適な特定のエネルギー分散パターンにしたがって生成されるように第1の構造の主周波数を調整するステップと、エネルギーを無線で交換するステップとを含む、方法を提供する。
【0045】
この発明の実施の形態2は、無線エネルギー伝達システムのソースまたはシンクの主周波数を調整することによって、異なるゾーンにおいて最大強度を有する、少なくとも4つの異なる電磁(EM)エネルギー分散パターンを生成することが可能になるという認識に基づく。この認識によって、最適な効率で異なる方向にエネルギーを伝達することが可能になる。
【0046】
図14は、調整可能なソース210から複数のシンクへの無線エネルギー伝達を最適化するように構成される、この発明の実施の形態2を示している。ドライバ240がエネルギー260をソース210に供給すると、該ソースはEM近接場215を生成する。通常、近接場215は特定のエネルギー分散パターンにしたがって生成される。該パターンは、後述するように、近接場強度が最適、すなわち最大である最適ゾーン、および近接場強度が最小にされるブラインドゾーンのような異なる複数のゾーンを有する。
【0047】
いくつかの用途では、エネルギーを2つ以上のシンク、たとえばシンク221およびシンク222に伝達することが好都合である。しかしながら、シンクがソースのエネルギー分散パターンの最適ゾーンを占有する場合、シンクはパターンのブラインドゾーンに位置する可能性がある。したがって、コントローラ270は、ソース210の主周波数を調整して、エネルギー分散パターン215を別のエネルギー分散パターン216にする。ここで、パターン216の最適ゾーンがパターン215のブラインドゾーンに置き換わる。1つの実施の形態2では、パターン215は偶バラフライパターンまたは奇バタフライパターンのいずれかであり、パターン216は偶交差パターンまたは奇交差パターンのいずれかである。
【0048】
ソースとシンクとの間の配向を使用して、該ソースと該シンクとの間の無線エネルギー伝達のための特定の最適パターンを確定する。したがって、実施の形態2によって、1つのソースを再利用して、異なる複数のシンクのロケーションに対応する複数の方向にエネルギーを最適に伝達することが容易になる。同様に、1つのシンクは複数のソースから、すなわち異なる複数の方向からエネルギーを受信することができる。
【0049】
1つの実施の形態2では、主周波数の調整は、発振器、たとえば電圧発振器またはデジタル制御発振器によって達成される。コントローラ270は、発振器の制御信号、たとえば電圧またはデジタル信号をモニタリングして、システムのための所望の共振周波数を達成する。そのような発振器の例は、Digi−key社およびNarda社によって製造された発振器である。別の例は、Crysteck社の発振器(型番:CVCO55CL−0060−0110)である。該発振器は、調整電圧を0.5V〜9.5Vで変化させながら60MHz〜110MHzの周波数調整範囲を提供する。
【0050】
システム200は、オプションで、近接場220内に配置される負屈折率材料(NIM)231〜233を備える。
【0051】
この発明の実施の形態2は、ソースの主周波数を調整して、少なくとも4つの異なるエネルギー分散パターンを生成する。これらのパターンはバタフライ対パターンおよび交差対パターンを含む。ソースとシンクとの間の配向を使用して、ソースとシンクとの間の無線エネルギー伝達に最適な特定のパターンを確定する。したがって、この発明の実施の形態2によって、1つのソースを再利用して、異なる複数のシンクのロケーションに対応する複数の方向にエネルギーを最適に伝達することが容易になる。同様に、1つのシンクは複数のソースから、すなわち異なる複数の方向からエネルギーを受信することができる。
【0052】
この発明を好ましい実施の形態2の例として説明してきたが、この発明の精神および範囲内で様々な他の適応および変更を行うことができることは理解されたい。したがって、添付の特許請求の範囲の目的は、この発明の真の精神および範囲内に入るすべての変形および変更を包含することである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギーを無線で伝達するように構成されるシステムであって、
前記エネルギーを、エバネッセント波の結合を介してシンクに無線で伝達するように構成されるソースであって、前記エネルギーの受信に応答して、電磁(EM)近接場を生成する、ソースと、
前記ソースと前記シンクとの間の前記結合を増大させるように配置されるエネルギー中継器であって、前記ソース、前記シンク、および前記エネルギー中継器は電磁および非放射構造である、エネルギー中継器と、
を備える、システム。
【請求項2】
前記エネルギー伝達中の前記シンクのロケーションは所定であり、前記エネルギー中継器は、前記ソースと前記シンクとの間の前記結合を増大させるように配置され、一方、前記シンクは前記所定のローケーションに配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記エネルギーを前記ソースに供給するように構成されるドライバをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記結合を強化するように前記EM近接場内に配置される負屈折率材料(NIM)をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ソースおよび前記エネルギー中継器は共振構造である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記NIMは、前記シンクの前記所定のロケーションに基づいて配置される、請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
前記NIMは、前記ソースを取り囲むように配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記エネルギー中継器は、偶バタフライパターン、奇バタフライパターン、偶交差パターン、および奇交差パターンから成るパターン群から選択されるエネルギー分散パターンに基づいて配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記エネルギー分散パターンは、前記ソース、前記エネルギー中継器、および前記シンク間の距離および/または配向に基づいて確定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記NIMは負誘電率特性および負透磁率特性を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記エネルギー中継器は、前記ソースから前記エバネッセント波を受信すると共に、該エバネッセント波の少なくともいくつかを前記シンクにリダイレクトするように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記エネルギー中継器は、前記ソースから前記エネルギーを受信すると共に、該エネルギーを増幅すると共に、該エネルギーを前記シンクに伝送するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記エネルギー中継器はループを含み、該ループは、該ループの軸が前記シンクに向かって方向付けられるように回転される、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記エネルギー中継器はループを含み、該ループは、該ループの軸が前記シンクの軸に直交するように回転される、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記エネルギー中継器は第1のエネルギー中継器であり、前記システムは、
前記ソースと前記シンクとの間の前記結合を増大させるように配置される第2のエネルギー中継器であって、前記第1のエネルギー中継器は該第2のエネルギー中継器に強力に結合されない、第2のエネルギー中継器をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
受動エネルギー中継器および能動エネルギー中継器のネットワークをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
近接場の結合を介してエネルギーを無線で伝達するための方法であって、
ソースを提供するステップであって、該ソースは、該ソースの前記近接場とシンクの前記近接場との結合を介して該シンクに前記エネルギーを無線で伝達するように構成され、該ソースおよび該シンクは、前記エネルギーの受信に応答して電磁(EM)近接場を生成するように構成される、EMおよび非放射構造である、ソースを提供するステップと、
エネルギー中継器を提供するステップであって、該エネルギー中継器は、前記シンクが所定のロケーションに配置されるとき、前記ソースと前記シンクとの間の前記結合を増大させるように構成される、エネルギー中継器を提供するステップと、
前記エネルギーを無線で伝達するステップと、
を含む、方法。
【請求項18】
前記エネルギー中継器によって、前記ソースから前記エネルギーの少なくとも部分を受信するステップと、および
前記エネルギー中継器によって、前記エネルギーの少なくとも部分を前記シンクに伝達するステップと、
をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
負屈折率材料(NIM)を使用して前記結合を増大させるステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
エネルギーを無線で交換するように構成されるシステムであって、
構造であって、前記エネルギーを、エバネッセント波の結合を介して無線で交換するように構成され、該構造は電磁(EM)および非放射であり、該構造は前記エネルギーの受信に応答してEM近接場を生成する、構造と、
コントローラであって、前記近接場が特定のエネルギー分散パターンにしたがって生成されるように前記構造の主周波数を調整するように構成される、コントローラと、
を備える、システム。
【請求項21】
近接場の結合を介してエネルギーを無線で交換するための方法であって、
第1の構造を提供するステップであって、該第1の構造は、該第1の構造の近接場と第2の構造の近接場との結合を介して該第2の構造と前記エネルギーを無線で交換するように構成され、該第1の構造および該第2の構造は、電磁(EM)および非放射であり、該第1の構造および該第2の構造は、前記エネルギーの受信に応答してEM近接場を生成する、第1の構造を提供するステップと、
前記第1の構造と前記第2の構造との間の配向を確定するステップと、
前記第1の構造の前記近接場が、前記配向に最適な特定のエネルギー分散パターンにしたがって生成されるように前記第1の構造の主周波数を調整するステップと、
前記エネルギーを無線で交換するステップと、
を含む、方法。
【請求項22】
近接場の結合を介してエネルギーを無線で交換するためのシステムであって、
第1の構造であって、該第1の構造の近接場と第2の構造の近接場との結合を介して該第2の構造と前記エネルギーを無線で交換するように構成され、該第1の構造および該第2の構造は、電磁(EM)および非放射であり、該第1の構造および該第2の構造は、前記エネルギーの受信に応答してEM近接場を生成する、第1の構造と、
前記第1の構造と前記第2の構造との間の配向を確定する手段と、
前記第1の構造の前記近接場が、前記配向に最適な特定のエネルギー分散パターンにしたがって生成されるように前記第1の構造の主周波数を調整する手段と、
を備える、システム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−142805(P2011−142805A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−285958(P2010−285958)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(597067574)ミツビシ・エレクトリック・リサーチ・ラボラトリーズ・インコーポレイテッド (484)
【住所又は居所原語表記】201 BROADWAY, CAMBRIDGE, MASSACHUSETTS 02139, U.S.A.