エネルギー誘導域を用いた電動筋肉刺激システム及び方法
筋肉組織を刺激する、そして一部実施形態では深層筋肉組織を刺激するNMESシステム及び方法である。皮膚表面付近のインピーダンスを制御して増大させ、対象者に供給するエネルギーのうち、筋肉組織を刺激するエネルギーの割合を増大させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー誘導域を用いた電動筋肉刺激システム及び方法に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年2月20日出願の米国仮特許出願第61/208,119号、及び2009年7月31日出願の同第61/230,587号の利益を主張するものである。なお、これら仮特許出願の内容を参照してここに援用し、本明細書中で十分に示す。
【0003】
本出願は以下の同時係属出願に関連する:2009年11月11日出願の特許出願第61/260,324号、2009年7月2日出願の同第12/497,230号、2008年8月19日出願の同第61/189,558号、2009年8月26日出願の同第12/548,155号、2008年8月29日出願の同第61/190,602号、及び2008年12月15日出願の同第61/201,877号。なお、これらの出願全ての内容を参照してここに援用する。
【背景技術】
【0004】
電動筋肉刺激、機能的筋肉刺激、電気的筋肉刺激とも呼ばれる神経筋電気刺激(NMES)は、鎮痛、非活動性萎縮の防止又は遅延、及び局所血液循環の改善等、多くの治療に用いられる周知の技術である。典型的にNMESは、人の皮膚に取り付けた表面電極によって、短電気パルスを断続的且つ反復的に経皮的に供給するものである。電気パルスを筋肉組織及び/又は筋肉神経に供給し、筋収縮を誘発する。電極は、ストラップ、粘着剤、その他の方法を用いて皮膚に固定することができ、多くの場合、電極から皮膚及び下層組織へのエネルギー伝達率を高めることのできるヒドロゲルを含む連結層を含有する。
【0005】
NMES療法から多大な恩恵を被る人は、動くことのできない、即ち寝たきりの人々である。動けないことで筋萎縮と筋力低下につながり、人の身体能力に深刻な影響を及ぼす。以前身体が活発に機能していた人物は、動けなくなった後、以前の身体機能レベルを取り戻すために、広範囲にわたる理学療法が必要となることが一般的である。NMESは筋肉を刺激することによって、動けない間の筋萎縮を防止する又は遅延させるように作用できる。
【0006】
重症患者は、動くことのできない患者のサブグループを構成する。これらの患者の略全てがベッドに寝たきりになっているが、その多くは昏睡状態、或いは一般に鎮静及び/又は鎮痛を必要とする(人口呼吸器等の)治療介入を受けている状態である。鎮静又は昏睡状態の患者は、(例えばベッドの上で四肢を上げる又は足を動かすといった)単純で自発的な動きでさえも行わないことが多いため、筋萎縮を起こすリスクが大きい。従って重症患者の回復には、数日から数週間ではなく一般的に月単位という長い期間がかかる。
【0007】
急性疾患に対する治療の一環として、多くの重症患者は点滴や抗生物質等の治療介入を受ける。動くことのできない患者に起こる、これらの治療の一般的な副作用は組織浮腫の進行である。一般的に、組織浮腫は「サードスペース」、即ち細胞外及び血管外の領域に体液が循環することで起こる。浮腫はしばしば微小血管系への漏洩によって引き起こされ、典型的には組織を膨張させる。浮腫があるとNMESの性能に悪影響が及ぶが、多くの場合、筋収縮を十分に誘発する技術力が制限される。これは、非侵襲性の電極を皮膚表面に置いて、例えば四頭筋、ハムストリング筋、臀筋、腹直筋、腹横筋、内外腹斜筋、骨盤底、多裂筋、脊柱起立筋、胸最長筋、横隔膜筋等の深層筋肉を刺激しようとする場合に、特にあてはまる。
【0008】
組織浮腫がNMES治療に影響を及ぼし得るいくつかの作用機序がある。組織が膨張して皮膚表面と下層筋との距離が増すことで、対象とする深層筋に達する電流密度がより低くなる可能性がある。さらに、組織中にイオン流体が必要以上に存在すると、特に浅層領域で、組織の電気インピーダンスを低下させる可能性がある。浅層領域においてインピーダンスが低下すれば、皮膚電極を「短絡する」よう作用するおそれがある。浅層組織領域中のより低いインピーダンスの経路は、より深層の筋肉組織において電流密度を低下させるメカニズムとして作用する可能性がある。これらメカニズムのうち後者のメカニズムは、浮腫患者におけるNMES性能の低下に関連する主な要因であり得る。医学文献中の過去の研究は、ある特定のタイプの電気刺激によって、外傷後に発現する局部的な浮腫を防止できることを指摘したが、非外傷性又は多要因性の内科疾患を含むケースにおいて、かかる治療が広範囲の浮腫を防止又は軽減することについては示していない。
【0009】
身体に関する規制基準及び管理基準(例えば、米国食品医薬品局(US FDA)、米国規格協会(ANSI)、医療機関内倫理委員会(IEC))に従う表面電極及びエネルギーレベルを用いて、多くの浮腫患者において深層筋肉の収縮を確実に刺激することは不可能である。より高いエネルギーレベルを使用すればNMESの効率を高めることができるが、供給するエネルギーの振幅を増大させると、火傷、神経及び/又は筋肉の損傷、並びにその他の潜在的合併症を引き起こすリスクが高くなる。これはプラウスニッツ(Prausnitz)著「アドバンスト ドラッグ デリバリー レビューズ(Advanced Drug Delivery Reviews)」18巻:pp. 395-425、2006年、及びステッカー等(Stecker et al.)著「アメリカン ジャーナル オブ エレクトロニューロダイアグノスティック テクノロジー(American Journal of Electroneurodiagnostic Technology)」43巻:pp. 315-342、2006年で詳述されている通りであり、これら文献については参照によってここに援用する。浅層組織の電流密度が大きく、筋肉組織の電流密度がより小さいため、これはとりわけ「短絡」状態について言えることである。これら及び他の要因により、NMES治療の用途は、浮腫患者及び動くことのできない重症患者全般、即ち潜在的にNMES治療が極めて有効であると仮定されるグループに限定される(モリス等(Morris et al.)著「ケア クリニックス(Care Clinics)」23巻:pp. 1-20、2007年。なお、この文献については参照によってここに援用する)。
【0010】
低温熱エネルギーを短時間局所的に皮膚に付与すると浅層組織の温度が低下し、医療的に有用となり得る多くの効果を生み出すことができる。例えば表面冷却は、浅層組織と深層組織との間に「逆」温度勾配を作り出して、深層組織を表面組織より比較的暖かい状態に維持することができる。
【0011】
上記逆温度勾配の1つの用途は、高エネルギー高周波(RP)刺激、光刺激、光音響刺激、音響刺激、赤外刺激、電磁刺激、又はその他のタイプの刺激を皮膚表面下の組織を対象として経皮的に与えることと、表面冷却を組み合わせることを含む。一般に、これらの用途は切除や組織(例えばコラーゲン)改造の目的で、又はその他の皮膚科的若しくは治療上の理由から、皮膚表面下の組織の温度を実質的に上昇させようとする。これらの用途は、治療対象でない組織の損傷を回避するべく、皮膚及びその他の浅層組織の温度を上昇させずに、非侵襲的に対象組織にエネルギーを与えようとする。逆温度勾配は、温度を上昇させることによって治療対象とするより深層の組織を有意に冷却することなく、浅層組織を冷却することにより、この方法を補助する。従って、エネルギー刺激の一部を浅層領域が吸収しても、浅層領域の温度は損傷を受けるレベル未満に維持される。
【0012】
上述の温度勾配を使用する一部の用途では、高振幅RF又はその他の形態の電磁/電気エネルギーを使用して、対象とする組織領域(例えば毛包、コラーゲン等)の温度を実質的に上昇させる。効果的に行うため、これらの治療では組織の対象領域の温度を約43℃を上回る温度とする必要があるが、ほとんどの用途においては組織の温度は約60℃以上に上昇させる必要がある。このような温度に近い温度では、細胞と細胞外液の水分が蒸発し、温度の上昇により組織のインピーダンスが上昇する。逆温度勾配と組織の表面冷却は、浅層組織の温度上昇を正常な体温より極わずかに高い温度に留めることによって、エネルギー供給を促進するため、浅層組織のインピーダンスが(その下の過熱組織と比べて)低下する。よって、浅層組織を通してより深層の対象領域により多くのエネルギーを供給することができる。
【0013】
切除、美容、及び他の治療を行う場合、組織に供給するエネルギーでは一般に筋収縮が生じない。所望の治療領域において筋収縮が生じると治療介入が複雑になるため、ほぼ全ての場合においてこのことは望ましいことである。例えば、多くの装置で利用されるRFエネルギーは、意図的に例えば約100から約500kHzの周波数範囲で供給されるが、この周波数範囲は非常に高く、筋収縮を生じない。
【0014】
さらに、表面冷却を行って皮膚火傷を防止する美容、切除、及び治療の用途では、エネルギーが皮膚を通って伝わる解剖学的位置、又は皮膚を通って伝わる位置を含むより大きな領域において、逆温度勾配を適用する。切除、美容、及び治療において一般的なエネルギー振幅、周波数範囲、及び温度範囲に対して、逆温度勾配を利用するこれらのシステムと方法を最適化する。比較的低いエネルギー周波数及び振幅で動作する筋肉刺激装置の場合、ピークの組織温度を正常な体温近くの温度にすると、エネルギーが皮膚を通って伝わる領域の皮膚温度を低下させるという欠点が生じる。そのようなことが起こると、エネルギーを身体に伝達する効率が大幅に低下し、表面刺激電極の寿命を著しく縮め、全体的な治療効率も低下させる。
【0015】
最近の病院設備で使用されているほとんどの筋肉刺激装置は、電流(又は電圧)が一定の刺激装置であるが、組織のインピーダンスが上昇すると、刺激装置は人に供給する電流(又は電圧)を一定に維持しようとして、供給するエネルギーの電圧(又は電流)振幅を(所定の限界値まで)増大させる。何らかの理論に従おうとしなければ、この電圧(又は電流)の増大は皮膚電極におけるエネルギー損失と発熱を増大させる。皮膚表面を予め冷却すれば皮膚火傷のリスクは部分的に低くなるが、皮膚電極の温度が上昇することで、電極の性能が低下する。NMESで使用する最も一般的な最新の皮膚電極は、接着媒質及び導電(接触)媒質の両方として作用するヒドロゲル接触層を含む。かかるヒドロゲルは50%以上が水分で構成されているため、温度が上昇すると電極の乾燥が早まり、再利用性が大幅に低下する。これは集中治療室の場合に特に重要な要素となるが、それは集中治療室では、電極の設置と取外しを繰り返し行うと皮膚外傷が生じてしまうことから、長期間にわたって1セットの電極を一定の位置に置いたままにしておくことが望ましいためである。さらに、ヒドロゲル層の乾燥は正のフィードバック現象である:導電層が乾燥すると、皮膚/電極インピーダンスがさらに上昇し、これにより皮膚において一層熱を生じさせ、接着性が低下することにより電極の密着が弱まるという危険な状況になる可能性がある。NMESを表面冷却と併用した場合でも、この後者の状況は、電極の密着が弱まったことにより皮膚火傷を非常に早く起こすおそれがあることから、深刻な事態である。よって、この技術は皮膚電極の位置における皮膚インピーダンスを上昇させるため、NMESと併用する場合には、皮膚電極の位置において表面冷却と温度勾配を使用する装置には、重大な制限が伴う。特に、皮膚電極の位置における表面冷却と温度勾配は、一般にはエネルギーの筋肉への伝達率を高めず、組織のインピーダンスを上昇させると共に電極の性能を低下させるため、NMESにとってはほとんど若しくは全く利点がない。
【0016】
経皮的末梢神経電気刺激装置(「TENS」)は、経皮的なエネルギーの供給と組み合わせて皮膚表面冷却を使用する別のタイプの治療法である。詳細には、この治療法は皮膚に高温及び低温の鎮痛効果を利用して、それらを神経刺激の鎮痛効果と組み合わせようとするものである。TENS装置は筋収縮を生じる振幅では一般に動作しないが、TENS装置で筋肉を刺激することは理論的に可能である。TENS療法はまた、エネルギーが皮膚を通して伝わる解剖学的位置で、又はエネルギーが皮膚を通して伝わる場所を含む、より大きな解剖学的領域において、温度勾配を適用する。ここに記載するように、電気筋肉刺激治療と共にこのようなことを行うと、身体へのエネルギー伝達率が大幅に低下し、表面刺激電極の寿命が著しく短くなり、治療の全体的な有効性が低下する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】プラウスニッツ(Prausnitz)著「アドバンスト ドラッグ デリバリー レビューズ(Advanced Drug Delivery Reviews)」18巻:pp. 395-425、2006年
【非特許文献2】ステッカー等(Stecker et al.)著「アメリカン ジャーナル オブ エレクトロニューロダイアグノスティック テクノロジー(American Journal of Electroneurodiagnostic Technology)」43巻:pp. 315-342、2006年
【非特許文献3】モリス等(Morris et al.)著「ケア クリニックス(Care Clinics)」23巻:pp. 1-20、2007年
【非特許文献4】ミクラブシック等(Miklavcic et al.)著「組織の電気的特徴(Electrical Properties of Tissues)」、ワイリー社生体医用工学百科事典(Wiley Encyclopedia of Biomedical Engineering)、2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
NMESシステムとその使用方法を改良して、現在のNMESシステムと使用方法の欠点を克服する必要がある。例えば、以下のことを1つ以上実行できるよう改良したNMESシステムが必要である:筋肉組織、特に深層筋肉組織への刺激エネルギー伝達をより効率的及び効果的に行うこと;動くことのできない重症患者に安全且つ効果的に使用できること;浮腫患者及び非浮腫患者を効果的且つ安全に治療するよう使用できること。経皮的エネルギー供与と表面冷却及び/又は温度勾配を組み合わせる既存の治療は、NMESで使用する最適な構成ではないと共に、筋収縮を高めることとは無関係の目的に合わせたものであるため、所望の目的を達成しない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一態様は、筋肉組織を電気的に刺激する方法である。該方法は、被刺激筋肉組織付近で対象者に第1電極及び第2電極を配置することと、一箇所以上の浅層組織のインピーダンスが、被刺激筋肉組織のインピーダンスに比べて高くなるよう、一箇所以上の浅層組織の電気インピーダンスを上昇させることと、第1電極から第2電極へと筋肉組織を通して電気エネルギーを供給することと、を含み、一箇所以上の浅層組織の電気インピーダンスを上昇させることにより、供給する電気エネルギーのうちのより大きな割合のエネルギーで筋肉組織を刺激し、これにより筋収縮を増大させる。
【0020】
一部実施形態において、一箇所以上の浅層組織の電気インピーダンスを上昇させることが、第1電極及び第2電極を配置した浅層組織の電気インピーダンスを実質的に上昇させずに、第1電極と第2電極の間の浅層組織の電気インピーダンスを上昇させることを含む。一部実施形態において、前記方法は第1電極及び第2電極を少なくとも部分的に囲む一箇所以上の浅層組織の電気インピーダンスを上昇させることを含む。一部実施形態において、前記方法は第1電極と第2電極を配置した位置よりも、これら電極同士の間の領域における一箇所以上の浅層組織の温度を大幅に低下させることを含む。一部実施形態において、前記方法は第1電極と第2電極の間に配置した冷却要素を作動させることを含む。
【0021】
一部実施形態において、配置するステップは四頭筋付近に第1電極と第2電極を配置することを含む。
【0022】
一部実施形態において、一箇所以上の浅層組織の電気的インピーンダンスを上昇させることは、第1電極と第2電極の間で対象者に配置した冷却要素を作動させることを含む。冷却要素を作動させることは、皮膚表面に冷湿布を貼ること、第1電極と第2電極の間に配置した冷却要素を通るよう流体をポンプで送ること、又は第1電極と第2電極の間に配置した熱電素子を作動させること、又はそれらの組み合わせを含むことができる。冷却要素を作動させることは一箇所以上の浅層組織を連続的に冷却すること、又は冷却要素を断続的に作動させることを含むことができる。冷却要素を作動させることで、一箇所以上の浅層組織からその下の深層組織へと温度勾配が生じるが、この温度勾配において一箇所以上の浅層組織の温度が最低の温度である。前記方法は電気エネルギーの供給を停止する前に、冷却要素の作動を停止させることを含むことができる。冷却要素を作動させることは、一箇所以上の浅層組織を約30°Fから約40°Fの範囲の温度に冷却することを含むことができる。
【0023】
一部実施形態において、筋肉組織を通して電気エネルギーを供給することは、筋肉組織の温度を約40℃より高く上昇させずに、筋肉組織を通して電気エネルギーを供給することを含む。
【0024】
一部実施形態において、電気エネルギーを供給することは、約10kHz以下の周波数を含むスペクトルを有するパルスを用いてエネルギーを供給することを含む。
【0025】
一部実施形態において、電気エネルギーを供給することは約100から約400マイクロ秒のパルス幅を有するパルスを用いてエネルギーを供給することを含む。
【0026】
一部実施形態において、電気エネルギーを供給することは、約30Hzから約50Hzの繰返し率で一連のパルスを供給することによりエネルギーを供給することを含む。
【0027】
一部実施形態において、電気エネルギーを供給することは、オン時間とオフ時間を交互に繰り返してエネルギーを供給することを含む。
【0028】
一部実施形態において、対象者に第1電極と第2電極を配置することは、肥満又は浮腫の対象者に第1電極と第2電極を配置することを含む。
【0029】
本発明の一態様は、筋肉組織を刺激する方法である。該方法は、被刺激筋肉付近の一箇所以上の浅層組織のインピーダンスを上昇させることと、少なくとも2つの刺激電極により被刺激筋肉付近の組織に電気エネルギーを供給することと、を含み、供給するエネルギーのうち一定の割合のエネルギーで筋肉組織を刺激し、一定の割合のエネルギーで筋肉組織を刺激せず、一箇所以上の浅層組織のインピーダンスを上昇させることにより、一箇所以上の浅層組織のインピーダンスを上昇させなかった場合に比べて、供給するエネルギーのうち、筋肉組織を刺激するエネルギーの割合が大きくなる。
【0030】
一部実施形態において、一箇所以上の浅層組織のインピーダンスを上昇させることが、2つの表面電極同士の間の領域において、一箇所以上の浅層組織の温度を低下させることを含む。
【0031】
一部実施形態において、電気エネルギーを供給することは四頭筋に電気エネルギーを供給することを含む。
【0032】
一部実施形態において、一箇所以上の浅層組織のインピーダンスを上昇させることは、少なくとも2つの表面電極同士の間に配置した冷却要素を作動させることを含む。冷却要素を作動させることは、筋肉刺激治療が継続している間、冷却要素を一定の温度に維持すること、筋肉刺激治療を通じて冷却要素の温度を低下させること、筋肉刺激治療を通じて冷却要素を断続的に作動させること、及び/又は一定の時間の後に冷却要素の動作を停止させることを含むことができる。冷却要素の動作を停止させた後、電気エネルギーを供給することができる。
【0033】
一部実施形態において、組織に電気エネルギーを供給することは肥満又は浮腫の対象者の組織に電気エネルギーを供給することを含む。
【0034】
本発明の一態様は、対象者における筋肉刺激を増大する方法である。該方法は、一箇所以上の浅層組織の温度が深層筋肉組織の温度より低くなるように、電気刺激を行う筋肉組織付近の一箇所以上の浅層組織を冷却することと、冷却ステップによって実質的に冷却しない浅層組織に電気刺激を行うこととを含み、一箇所以上の浅層組織を冷却することにより、冷却ステップを行わない場合の筋収縮量に比べて、筋収縮量が増加する。
【0035】
一部実施形態では、一箇所以上の浅層組織を冷却することは、電気エネルギーを付与する領域とは異なる位置で対象者に冷却要素を配置することを含み、該方法は冷却要素を作動させることをさらに含む。
【0036】
一部実施形態では、電気刺激を付与することは、少なくとも2つの表面電極同士の間に電気刺激を付与することを含む。
【0037】
一部実施形態では、電気刺激を付与することは、四頭筋の筋収縮量を増大させることを含む。
【0038】
一部実施形態において、筋肉組織付近で一箇所以上の浅層組織を冷却することは、肥満又は浮腫の対象者の一箇所以上の浅層組織を冷却することを含む。
【0039】
本発明の一態様は、筋肉刺激システムである。該システムは、複数の電極を含む刺激パッドであって、筋肉組織に刺激エネルギーを供給する位置に電極がくるようにして患者に配置するよう構成した、前記刺激パッドと;複数の電極同士の間の、電極を配置した位置とは異なる位置で患者に配置するよう構成した冷却要素であって、一箇所以上の浅層組織を冷却することにより、該一箇所以上の浅層組織のインピーダンスを上昇させるよう構成した、前記冷却要素と;複数の電極と通信し、電極に刺激エネルギーを供給して、筋肉組織の収縮を刺激するよう構成した刺激制御手段と;を含む。
【0040】
一部実施形態では、電極を配置した場所の浅層組織を実質的に冷却しないよう冷却要素を構成する。
【0041】
一部実施形態では、浅層の電流路を実質的になくすよう前記冷却要素を構成する。
【0042】
一部実施形態において、刺激パッドは冷却要素を含む
【0043】
一部実施形態では、冷却要素は一定の幅を有し、複数の電極は一定の幅に跨っているが、冷却要素の幅は複数の電極の跨る幅より大きい。冷却要素の幅は、冷却要素周辺の浅層組織におけるアーク放電を実質的に防止するよう構成することができる。
【0044】
一部実施形態において、前記システムは冷却要素の作動を制御するよう構成した冷却要素制御手段をさらに含む。冷却要素制御手段は冷却要素と流体連結状態とし、冷却要素を通る流体の流れを制御するよう構成することができる。冷却要素制御手段は、冷却要素を通るように流体を送り出すよう構成したポンプを含むことができる。冷却要素は冷却要素制御手段と流体連結状態にある内部管を含むことができる。冷却要素制御手段は熱電素子を制御するよう構成することができる。
【0045】
本発明の一態様は筋肉刺激システムである。該システムは:対象者に配置するよう構成した複数の刺激電極と;冷却要素制御手段と通信する冷却要素であって、一箇所以上の浅層組織の温度を低下させるよう冷却要素を制御するように冷却要素制御手段を構成し、複数の刺激電極を配置しない位置で対象者に配置されるよう冷却要素を構成した、前記冷却要素と;複数の刺激電極と通信する刺激制御手段と;を含む。
【0046】
一部実施形態において、冷却要素制御手段は、冷却要素の温度を制御するよう構成する。一部実施形態において、冷却要素制御手段は冷却要素を略一定の温度に維持するよう構成し、一方、一部実施形態において、冷却要素制御手段は、冷却要素を作動させた後に冷却要素の温度を低下させるよう構成する。
【0047】
一部実施形態では、冷却要素制御手段は冷却要素を作動させるよう構成する。冷却要素制御手段は、刺激制御手段が複数の電極に電気刺激を供給する間、冷却要素の動作を停止させる構成としてもよい。冷却要素制御手段は、冷却要素を断続的に作動させる構成としてもよい。
【0048】
一部実施形態において、冷却要素は複数の刺激電極同士の間に配置できる大きさ及び形状とし、複数の電極を少なくとも部分的に囲むように配置できる大きさ及び形状としてもよい。
【0049】
一部実施形態では、複数の電極を刺激パッドに一体化する。
【0050】
一部実施形態では、冷却要素を刺激パッドに一体化する。
【0051】
一部実施形態では、冷却要素は冷却要素制御手段と流体連結状態にある内部管を有し、冷却要素制御手段は冷却要素を通るよう流体を送り出すポンプを含む。
【0052】
一部実施形態において、制御要素は熱電素子であり、冷却要素制御手段は熱電素子を制御するよう構成する。
【0053】
本明細書で取り上げる全ての刊行物及び特許出願は、参照によってここに援用するが、これらについては具体的且つ個々に参照によって本明細書に引用したものとする。
【図面の簡単な説明】
【0054】
発明の原理を用いた例示的な実施形態を示す以下の詳細な説明と添付の図面を参照しながら、本発明の特徴及び利点について記載する。
【0055】
【図1】組織を通る電流に冷却要素が如何に影響を与えるかを示す図である。
【図2】例示的なNMESシステムを示す図である。
【図3】浅層組織の冷却が、組織を通る電流路に及ぼす影響を示す図である。
【図4】例示的な冷却要素を示す図である。
【図5】離間した電極と冷却要素を示す図である。
【図6】流体用の管を含む冷却要素を備えた刺激パッドを示す図である。
【図7】刺激パッドと別個の冷却要素を示す図である。
【図8】離間した電極と流体用の管を備える冷却要素を示す図である。
【図9】氷槽を組み込んだ刺激パッドを示す図である。
【図10A】化学的冷却パックを示す図である。
【図10B】化学的冷却パックを示す図である。
【図10C】化学的冷却パックを示す図である。
【図11】NMES治療システムを使用する例示的方法を示す図である。
【図12A】複数の冷却ゾーンを有する例示的冷却要素を示す図である。
【図12B】複数の冷却ゾーンを有する例示的冷却要素を示す図である。
【図12C】複数の冷却ゾーンを有する例示的冷却要素を示す図である。
【図13】表面電極上に冷却要素を配置した筋肉刺激システムを示す図である。
【図14A】冷却要素を刺激領域の所定の位置に固定した実施形態を示す図である。
【図14B】冷却要素を刺激領域の所定の位置に固定した実施形態を示す図である。
【図14C】冷却要素を刺激領域の所定の位置に固定した実施形態を示す図である。
【図15】下肢の後部に任意の加熱要素を配置した一実施形態を示す図である。
【図16A】超音波振動子を有する実施形態を示す図である。
【図16B】超音波振動子を有する実施形態を示す図である。
【図16C】超音波振動子を有する実施形態を示す図である。
【図17】被験者の実験データを示す図である。
【図18】重症患者の実験による筋肉刺激データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明は筋肉組織、一部実施形態では深層筋肉組織に電気エネルギーをより効率よく伝達することにより、NMES治療を改良するシステム及び方法を提供する。ここに記載する改良したNMES治療は現在のNMES治療に置き換えて使用することができ、また浮腫患者の治療ばかりでなく非浮腫患者の治療にも使用することができ、動くことのできない重症患者の治療にも有益であり得る。一般に本発明は筋肉組織、場合によっては深層の筋肉組織へと電気エネルギーを誘導するエネルギー誘導域と組み合わせて行う電気的筋肉刺激に関する。
【0057】
本明細書におけるNMESの用途では、ヒトの皮膚に固定した表面電極によって経皮的に筋肉組織に電気エネルギーを付与する。本発明は、患者に供給する電気エネルギーの量を増やすことなく、筋肉に供給する電気エネルギーの量を増大する方法を提供し得る。即ち、対象者に供給する電気エネルギーのうちのより大きい割合のエネルギーを筋肉組織に供給することで、より効率的に筋肉刺激を行う。筋肉組織へとエネルギーを誘導するエネルギー誘導域を作り出すことによって、より大きい割合の電気エネルギーを筋肉組織に供給する。
【0058】
図1Aから図1Dは、NMESを使用した筋肉刺激の効率を高める例示的な実施形態の側面図を示す。図1Aは、2つの表面電極101を取り付けた状態の、概して健康な患者の四肢102の側面断面図を示す。電極101は刺激手段(図示せず)と通信するが、該刺激手段は、電極に電流を流すことにより患者の組織に電流を供給するよう構成する。図1Aは電流が流れる方向を示すと共に、四肢102の所与の組織領域に達するエネルギーの割合を示す。図示するように、四肢102に入る電流のうち、深層の筋肉組織103に到達する電流は、相対的にごくわずかでしかない(10%と示されている)。
【0059】
図1Bは図1Aで示す四肢102を示しているが、この図は、刺激電極101同士の間の皮膚表面と接触させて配置した表面冷却要素105を含む。冷却要素105は、一般に筋肉組織へとより深くエネルギーを誘導するエネルギー誘導域を生成する。本実施形態では、冷却要素105は皮膚表面から皮膚表面下の位置へと温度勾配を生成する。皮膚表面は、温度勾配の低温端と考えることができる。筋肉刺激手段の使用する電気エネルギーの周波数(一般に約10kHz未満である)は一般に、切除又は美容の場合に使用する周波数(一般にRFの場合は約300kHzより大きく、マイクロ波の場合は約3GHzより大きい)より小さいため、典型的には特に深層の組織領域において、組織の有意な加熱を生じない。さらに、筋肉刺激手段を使用した場合には、約40℃より高い組織温度を生じない(多くの身体に関する規制及び管理ガイドラインに従ったものである−前掲のプラウスニッツの2006年の文献を参照されたい)ことが典型的である。組織温度が40℃未満である場合、組織インピーダンスにおける温度の影響は一般に、切除及び美容治療中により高い温度を使用した際に見られる、組織インピーダンスが約2%/℃上昇するという影響とは逆となる(ミクラブシック等(Miklavcic et al.)著「組織の電気的特徴(Electrical Properties of Tissues)」、ワイリー社の生体医用工学百科事典2006年を参照されたい。なお、この文献を参照によりここに援用する)。冷却要素105を使用することにより皮膚表面に最も近い組織を冷却すると、組織において3次元的温度勾配が生じるが、本質的には、組織を冷却する程度に比例して組織のインピーダンスが上昇するという3次元的なインピーダンス勾配が生じるものである。従って、体温インピーダンスレベルからの組織インピーダンスの上昇量は、冷却要素105と組織との距離に少なくとも部分的に依存する。冷却要素105を配置した表面付近の組織が最も冷却されるため、体温インピーダンスレベルに比して最も大きくインピーダンスが上昇する。筋肉組織103付近の深さにおけるインピーダンスは、冷却要素105直下の組織のインピーダンスの上昇に比べて(仮に上昇したとしても)わずかなものである。従って表面冷却と組み合わせて行うNMESは、上述の切除又は美容治療等のより高い温度を使用する場合に浅層冷却が及ぼす影響とは逆の影響を及ぼす。
【0060】
一部実施形態では、冷却要素は冷却領域における皮膚温度を約30°Fから約40°Fの範囲に低下させる。この範囲に表面温度を維持すると、局所的な組織インピーダンスを変化させるのに十分な温度勾配が生じ、NMESを行っている間のエネルギー伝達率が高まる。従って、所与の量の刺激エネルギーで達成できる筋収縮の程度を増大させることができる。代替的に、刺激領域及びNMES治療の治療目標における組織の局所的な解剖学的特性、生理学的特性、そして電気的特性に依存して、30°Fより低い表面温度や40°Fより高い表面温度を使用して、NMESの効率を上げることもできる。
【0061】
示すように、筋肉組織を通って流れる電気エネルギーの割合は(冷却要素105の作り出すエネルギー誘導域により)図1Aより図1Bの方が大きいが、浅層組織を流れる電気エネルギーは図1Aより図1Bの方が小さい。筋肉組織を刺激する、又は筋肉組織を支配する神経を刺激するエネルギーの量を増やすと、筋収縮の量が増える。従って筋肉は、図1Aより図1Bの方が大幅に収縮する。図1Bは、身体に流す電流のうち大きな割合の電流が組織の経路に沿って流れて、筋収縮を生じる又は筋収縮を引き起こすよう、刺激電極同士の間の領域における浅層組織と筋肉組織の相対的インピーダンスを変更する概念を示している。
【0062】
図1Cは大幅な組織膨張で浮腫を起こした四肢104の断面図を示す。図1A及び図1Bに示す実施形態と同様に四肢104に電極を配置する。図示するように、皮膚表面と筋肉103との距離は、図1Aに示す概して健康な四肢における皮膚表面と筋肉との距離より大きい。さらに、イオン流体が過剰なことによる短絡効果が影響して、深層の筋肉組織に到達する電流は(あるとしても)非常に少ない。図示するように、四肢に供給される電流のうち筋肉に到達するのは1%のみである。図1Dは、身体に電流を供給した際に電流が組織内の経路に沿って流れる割合に対して、皮膚表面に配置した冷却要素105が及ぼす影響を、図1Cと対比して示す図である。筋収縮の量は図1Cよりも図1Dの方が大きい。図1Aから図1Dに示す量に関する情報は全て例示の目的で示したものあり、四肢表面に使用するNMES装置の実際の性能を必ずしも反映したものではない。
【0063】
図1Eは、下肢150に冷却要素を約7分間配置した後、下肢150の一部の皮膚における2次元の温度勾配を示す。冷却要素は下肢の上に略水平に配置するが、冷却要素の幅は概してその高さより大きく、その形状は図3Bに示す冷却要素204の形状に近い。冷却要素は、実質的に図1Eに参照番号140として示す領域に配置した。下肢の上に配置した電極152も図示している。冷却要素を取り外した後、下肢の皮膚の温度を測定した。示すゾーンの大きさはおおよそのものであり、ゾーン140では皮膚温度が約37°Fであった。ゾーン142の温度は約42°Fであった。ゾーン144の皮膚温度は57°F、ゾーン146の皮膚温度は約72°Fであった。ゾーン148の皮膚温度は約85°F、ゾーン150の皮膚温度は約87°Fであった。図1Eは、略矩形の冷却要素を電極同士の間に水平に配置した後の例示的な温度勾配を示す。代替的な形状を有する冷却要素も同様に異なる温度勾配を作り出し、場合によっては電極により近い皮膚を、図1Eに関して述べたもの以上に冷却する。例えば、電極152のうちの1つ以上が領域148、146、144に或る場合や、一部実施形態ではゾーン142又は140にある場合もある。図1Eには示さないが、冷却要素は下肢の深さに沿っても温度勾配を作り出していることを理解されたい。
【0064】
本明細書に示すNMES治療システム及び方法に関して、体内にエネルギーが出入りする解剖学的位置(即ち、皮膚電極を配置した電極に近接する皮膚部分)には冷却効果が略全く又はほとんど及ばないため、これらの領域におけるインピーダンスの変化は最小又は無視できる値である。従って、例えば表面電極に直接接した皮膚においてはインピーダンスがほぼ上昇しないため、体内外へのエネルギー供給には有意な変化がない。また、非浅層筋肉へのエネルギー伝達を促す正確な位置で冷却を行うため、全経路のインピーダンスは、より大きい解剖学的領域(即ち電極の位置を含む領域)にわたって皮膚を冷却する場合に比べて上昇が小さい。さらに、表面電極に過度の熱が生じないため、ヒドロゲル層の乾燥を早めることがない。
【0065】
図1B及び図1Dはエネルギーが体内に出入りする場所において皮膚温度又は組織のインピーダンスを実質的に上昇させない例示的実施形態を示す。図1B及び図1Dで示すように、皮膚の電極配置位置に冷却効果が及ぶことを実質的に避ける皮膚上の位置に、冷却要素を配置する。皮膚の電極を取り付けた位置は略全く又はほとんど冷却されないため、その位置におけるインピーダンスの変化は無視できる程度である。電極101は、冷却要素105を配置した位置とは異なる皮膚位置に配置するよう示すが、特に図1B及び図1Dでは、冷却要素105は電極101同士の間に配置している。冷却要素を電極同士の間に置くことによって、体内外へのエネルギー伝達には実質的に影響がない。
【0066】
ここで示すシステムとその使用方法は、体内外へエネルギーが出入りする位置における皮膚又は浅層組織のインピーダンスを著しく増大しないと述べているが、代替的実施形態ではエネルギーが体内外へ出入りする組織の温度を低下させることもできる。従ってこの領域の組織インピーダンスは上昇し、この組織を介したエネルギー伝達は、エネルギーが体内外へ出入りする場所で冷却を行わない実施形態ほど効率的に行われない。例えば図1B及び図1Dにおいて、1つ又は両方の電極101の範囲に冷却要素が及ぶようにしてもよい。
【0067】
図1C及び図1Dで示すように、組織の冷却をNMESと併用することは、本明細書で述べた「短絡」状態のような特性を示す組織を有し得る浮腫患者において、特に有用であり得る。ただし、本発明のシステムは、健常者又は浮腫患者ではない人に対しても多大な価値をもたらすことができる。該システムではより効率的な筋肉刺激が可能となるため、一定の筋収縮量を生成するために身体に供給するエネルギーの必要量が減少する。必要なエネルギー量が減少することで、一つには表在神経に到達する電流の振幅を減少する(即ち「しびれ感」といった不快な症状を減らす)ことにより、NMES治療の患者の耐性を増すことができる。このようにエネルギー量が減ることにより、火傷、神経及び/又は筋肉損傷、並びにその他潜在的合併症のリスクも減る。本文に記載する治療はまた、(体格指数で定義し得る)過体重又は肥満の人、又は有意の筋収縮を起こすために大きい刺激エネルギー振幅を必要とするその他の人に対して、NMES治療を行う場合に非常に有用であり得る。一般にこれらの人々に対しては、筋肉組織の浅層に過度の脂肪が存在することによる容量効果に対応するべく、多大な刺激エネルギーが必要である。かかる人々に対しては、最小の筋収縮を誘発する場合でさえ、身体に関する規制及び/又は監督的安全基準で認められる最高のエネルギー振幅が必要となる場合が多い。これらの人々に対しては、エネルギー振幅をさらに増大させるという選択ができないため、供給するエネルギーをより効率的に使用することが、効果的な筋収縮を誘発するためにも不可欠である。さらに、患者間での性能のばらつきを減らすことにより、救命医療、高度介護施設、長期リハビリケア施設において、ここに記載する治療をより幅広く取り入れることができる。
【0068】
図2は、刺激制御手段122、表面電極124、及び冷却要素126を含むNMES治療システム120の例示的な概略図を示す。刺激制御手段122は、刺激エネルギーパルスを生成して表面電極124に供給し、表面電極124は身体の内外へと電気エネルギーを伝える。冷却要素126は、表面電極124同士の間の領域及び/又は電極124を囲む領域において体に熱エネルギーを付与するよう構成する。制御手段120は、標準的なケーブル接続、又はブルートゥース、WiFi、RF、赤外線、光学式、音響式等のワイヤレス接続、又はその他適切なタイプの接続を通して、電気信号を送受信するのに適した方法で、表面電極124と通信する。一部実施形態では、制御手段は冷却要素126と通信する。制御手段122は電極124とは別個の筐体であるため、電極を配置した治療中の人物から一定の距離に配置することができる。代替的な実施形態では、刺激電極及び/又は冷却要素を含む筐体ユニットに制御手段を統合してもよい。一部実施形態では、電極のレイアウト及び構成を身体の特定の領域に対して最適化するようカスタマイズした刺激パッドに刺激電極を収容する。
【0069】
概して図1及び図2に示すNMES治療システムを用いる例示的な方法について説明する。ここに記載するシステムを用いる方法は、以下のステップのうちの1つ以上を含み、治療中の任意の適切な時間にそれらステップを実行し得る。以下のステップの順序は、一切限定しない。例示的方法は、皮膚電極に生じる熱の温度の上昇を最小化しながら、深層の筋肉組織に電気エネルギーを一層効率よく伝達する。少なくとも2つの電極を皮膚表面の被刺激筋肉付近に配置する。刺激電極同士の間の領域及び/又は刺激電極を囲む領域における皮膚組織には、冷却エネルギーを付与する。この冷却エネルギーの付与により温度勾配が生じるが、この温度勾配では、深層の組織(例えば筋肉)の温度がその通常温度から低下するよりも、皮膚と浅層組織の温度がその通常温度から大幅に低下する。刺激エネルギーを表面電極に付与することによって、刺激エネルギーが対象者を通して付与される。刺激エネルギーは、電極と通信する刺激制御手段が生成して供給する。
【0070】
治療方法によっては、表面冷却と電気刺激を同時に使用する必要がないものもある。例えば、浅層組織をまず所定の温度だけ又は所定時間の間予め冷却し、その後熱刺激を取り外す。熱刺激を取り外すと、温度勾配は所定の割合で減衰し始めるであろう。実験の結果、身体の部位が復温する速度は比較的ゆっくりであり、例えば大腿部のような大きい身体部位が冷却前の温度分布に戻るには、約30分以上もの時間がかかり得ることが分かっている。復温中は、同時に冷却を行わなくともNMESの性能は或る程度高くなる。本発明の方法のこの特定の実施形態は、温度勾配を筋肉刺激と組み合わせる利点に関して周知の治療が如何に認識していないか示す更なる例である。
【0071】
一部の方法では、冷却を断続的に実行する。これらの実施形態では、表面冷却にオン期間とオフ期間がある。例えば、60分のNMESセッションの間に、冷却エネルギーを10分ごとに5分間付与することができる。断続的に冷却を行う利点は、組織インピーダンスの有効な変化を生じるのに十分な浅層組織の温度低下が生じた後で表面冷却を停止することで、NMES治療を受ける人物が熱による刺激を不快に、又は耐え難く、又は危険に感じる程度にまで皮膚温度が冷却されるのを防止できることである。
【0072】
一般に、表面組織を冷却して、表面組織と浅層組織のインピーダンスを上昇させると、身体に入る電気エネルギーのうちのより大きい割合のエネルギーが、非浅層筋肉組織(例えば深層筋肉)に行くことになる。従って1つの目的は、より深い経路にそって流れるエネルギーの量を増やし、狭い経路(例えば表面に近い経路)に沿って流れるエネルギーの量を減らすことである。しかし、電流が或る電極から別の電極に流れる際には、皮膚の小さな領域に冷却効果が限定された場合や、冷却による皮膚表面の温度の低下が適切でなかった場合には、皮膚表面に非常に近い場所に沿って或いは近い場所に、エネルギーの多く(又は所望のエネルギーのより大きい割合のエネルギー)が流れる可能性がある。図3Aは、NMES治療中に2つの表面電極同士の間に存在する低インピーダンスの表在電流路の上面図を示すことによって、上記に関する一例を示す。図3Aでは、刺激領域201の皮膚206の表面に電極202を配置する。エネルギー路203の分布は、通常の状態で電極202同士の間に流れる際に電流が採り得る経路を示している。図3Bでは、冷却要素204を電極202同士の間に配置する。冷却要素204は、電極204の跨る幅“EW”に近い幅“CW”を有する。冷却要素204は、低インピーダンスの表面エネルギー路の多くを排除するが、一部は残ったままであり得る。図3Bは、冷却要素104からの冷却効果が浅層組織を十分に冷却せず、インピーダンスの上昇が十分でないため、低インピーダンスの浅層組織路を排除しない場所に存在する電流路208を示している。
より冷たい組織領域を避けるように電流路208は弧をなしている。図3Cは、電極の跨る幅“EW”より広い、冷却要素205の幅“CW”を示している。浅層冷却の領域は、刺激電極の分布幅より(横断面に沿って)広い。幅“CW”は大きい領域にわたって組織の電気インピーダンスを上昇させ、低インピーダンスの浅層エネルギー路の略すべてを排除する。図3Cでは、電流路は皮膚表面下に存在する(図示せず)。図3Cでは、冷却によってインピーダンスが変化する領域が十分であるため、組織の冷却領域を避けて弧を描く浅層低インピーダンス電気路の存在が最小となる又はなくなる。
【0073】
従って冷却要素の大きさ、形状、構成等は、刺激領域における温度勾配と浅層組織インピーダンスの変化の度合いに影響することができる。
【0074】
ただし一部実施形態では、冷却する組織領域の幅は、電極の分布幅と同様の幅である場合や、それ未満の幅である場合さえある。冷却する組織領域の幅は、NMES治療セッションの組織の局所的電気的特徴及び/又は治療目的に依存し得る。
【0075】
図4Aから図4Dは、電極同士の間で電極を少なくとも部分的に囲むように配置した例示的冷却要素の代替的構成を示す。これらの図では、電極の参照番号をそれぞれ212、222、232、及び242とする。図4Aでは、冷却要素214は略H形状として皮膚210上に配置し、低インピーダンスの表面電気路を最小化する。図4Bでは、2つのU字を一体化したような形状の冷却要素224を、皮膚220上の電極224同士の間で電極224を部分的に囲むように配置する。代替的に、図4Bで示す構成において冷却要素224は皮膚上に配置した2つの別個の冷却要素であってもよい。図4Cでは、冷却要素324は略8の字形状を有し、電極232同士の間で電極232を囲むよう皮膚230上に配置する。代替的に、図4Cに示す構成において冷却要素234は皮膚上に配置した2つのO字形状としてもよい。図4Dで示す冷却要素は、図4Aで示す「H形状」であるが、電極242同士の間の皮膚240上に3つの別個の冷却要素244、246、248を配置したものである。冷却要素の代替的な構成、形状、及び大きさを使用してもよい。
【0076】
一部実施形態では、システムは、別個の要素であると共に互いに連結しない複数の電極と1つの冷却要素を含む。これらの実施形態では、電極と冷却要素は別個の要素として皮膚に固定する。図3及び図4はかかる実施形態を示す。電極自体を1つ以上の他の電極から分離させてもよい。図5は、皮膚260上に配置した複数の離散電極264を示す。電極264は、リード線によって制御手段262と電気通信する。冷却要素264は電極264に連結しない。冷却要素に連結しない及び/又は相互に連結させない電極は、以下に述べるように予め製造した刺激パッドを使用できない病態患者又はその他の医療介入を受けている患者に有用であり得る。例えば、(傷のある皮膚は一般にNMES治療の禁忌ではないが、)皮膚の傷領域268を避けるようにして電極264と冷却要素266を皮膚260上に配置できる。離散した表面電極と冷却要素(1つ又は複数)を使用することで、NMESの操作者は刺激システム要素を、個人のニーズに合わせた安全で効果的な位置に配置することができる。
【0077】
一部実施形態では、1つ以上の電極を単一の筐体又はパッド(本文中パッチと称することもある)内で連結し、一部実施形態では1つ以上の電極を単一の筐体又はパッド内で1つ以上の冷却要素と共に収容する。一部実施形態において、システムはパッド上に表面電極を所定の構成で配置するようカスタマイズした刺激パッドを含む。刺激パッド内には電極を任意の数で含むことができる。カスタマイズする刺激パッドは冷却要素を組み込むよう構成してもよく、又は着脱可能な冷却要素の取付け、接続、又は刺激パッドとの併用を容易に行えるよう構成してもよい。これらの実施形態は、NMESの操作者が、深層筋肉組織へのエネルギー供給効率の向上に最適な位置で表面冷却を行うことに役立つ。個別の電極をパッドから取り外すことができるように、刺激パッドを構成してもよい。
【0078】
一部実施形態において、刺激パッドは、皮膚との密着を容易に維持するよう粘着性のヒドロゲルを背面に施した、薄い可撓性の筐体を含む。ヒドロゲルを背面に施すことで、刺激電極と人体との間の電気エネルギー及び信号の結合が強まる。
【0079】
刺激パッドを備えるシステムの1つの例示的な実施形態では、刺激電極の配列を設定できる。任意の所与の時間に配列中の一部の電極のみが、NMES治療を受ける人物にエネルギーを動的に供給するよう、配列を構成することができる。しかし、エネルギー供給を行わない電極については、制御手段に関連情報(例えばこの電極と配列中の第2の電極との間の電気インピーダンス)を伝えるよう構成してもよく、このことについて以下により詳細に記載する。
【0080】
図6は、下肢401の大腿領域に配置した刺激パッドを含むNMESシステムの例示的な実施形態を示す。表面電極403と冷却要素404を刺激パッド402に一体化させているが、刺激パッドは熱伝導性の柔軟で可撓性のパッドである。制御手段405は、ワイヤ接続を介して刺激電極と通信し、下肢に電気エネルギーを供給する。冷却要素404はパッド内に管408を含み、該管はポンプ406と流体連結状態にある。ポンプ406(例えば蠕動ポンプ)は流入管及び流出管を介して冷却要素の管に接続しており、ポンプ406を使用して水、生理食塩水、空気等の冷却した流体を、管を通して循環させる。流体は冷却要素を通るように連続的又は断続的にポンプで送ることができる。3つの刺激電極を示しているが、2つ以上の任意の数の電極をパッド内に含むことができる。下肢の筋肉群以外の筋肉群についても、ここで示すシステム及び方法を用いて刺激することができる。
【0081】
図7は、システムが冷却要素と刺激パッドを含むが、冷却要素を刺激パッドに収容しない例示的実施形態を示す。本実施形態では冷却パッドは別個の要素であり、刺激パッド又は刺激電極とは別に人物に配置する。刺激パッド432は、刺激電極424を含む可撓性の筐体を含む。電極424は、刺激制御手段422と電気的に通信する。刺激パッド432に取り付けない冷却要素426は、ポンプ428と流体連結状態にある管430を有する。ポンプ428は、限定はしないが例えば蠕動ポンプであり得る。示すように、電極424同士の間に冷却要素426を配置することにより、浅層組織が冷却され、ここで示すように温度勾配が生じる。
【0082】
図8は電極同士が互いに離散していると共に、冷却要素からも離散した例示的実施形態を示す。下肢701上に刺激電極702を単独で配置する(ただしシステムは他の身体部位で使用してもよい)。冷却要素703はポンプ705と流体連結状態にある中空の管709を含む。冷却要素703を使用して、刺激電極702同士の間の領域で表面冷却を行う。ポンプは、冷却した流体を連続的若しくは非連続的に管709を通るよう送出し、流体貯蔵部を含むことができる。
【0083】
図9は、刺激パッドに組み込んだ氷槽を含むNMES治療システムの代替的実施形態を示す。該システムは、流体密閉状態であると共に可撓性の氷水浴804を含むパッド802を含み、該氷水浴804は下肢801の一部の皮膚と接触している。制御手段805は刺激電極803とワイヤ接続し、該電極803はパッド802に組み込まれている。可撓性の氷槽と表面電極は両方とも刺激パッド802の一部であり、刺激パッド802はシステムの2つの要素の相対的位置を最適な構成に固定する。代替的に氷槽をそれ自体のパッドに収容し、電極を別のパッドに収容することもできる。氷槽を使用することによって、患者から氷に熱が移行する際に時間とともに冷却剤(即ち氷)の温度が自然に低下する。従って氷は時間依存性の冷却機構として作用し、「しびれる」感覚を低減するように作用する。
【0084】
図10Aから図10Cは、化学的冷却パックをNMES治療と組み合わせるための作動機構の例示的実施形態を示す。図10Aの(1)では、化学的冷却パック900を握りつぶして内部の管を破裂させ、化学物質を混合し、冷熱源とする。図10Aの(2)では、刺激電極902同士の間の筋肉刺激を行う領域に冷熱源901を配置する。図10Bにおいて、刺激パッド906は刺激電極902、化学的冷却パック904、並びにストラップ及びフック機構905を含む。皮膚の所望の位置に冷却パックを置いた後、支点907でストラップをしっかりと引っ張る。ストラップを引っ張ることで内部の管に力がかかり、内部管が破裂して化学物質が混ざり合い、冷熱源を作り出す。次いで、例えばベルクロストラップ、スナップ、又は他の固定機構を用いて、ストラップをそれ自体に固定する。その後冷熱源を所定の場所に保持する。図10Cにおいて、刺激パッドは制御手段908と電気通信する。化学的冷却パックは断面図で示している。制御手段908からのワイヤ909は冷却パックの外側のコンパートメント910まで及び、冷却パックの内部管911に固定した抵抗加熱要素912に接続する。制御手段908が、所望の時間にワイヤ909を介して抵抗加熱要素912に電気信号を送ると、内部管の一部が溶融し、化学物質が混ざり合って冷熱源を作り出し、これを皮膚に適用することができる。
【0085】
代替的実施形態は、化学反応機構を使用して浅層冷却を行う。例えば、刺激パッドに開放した中心部分を備えて、刺激電極同士の間の表面を露出させる。刺激パッドを配置した後(又は、一部実施形態では離散電極を配置した後)、化学薬品を露出面に塗布して浅層組織の温度を低下させる。化学薬品は、露出面に噴射しても、吹き付けてもよい。代替的に、化学反応機構を別個の要素(例えば瞬間冷却パック)の一部として、これを浅層組織に接触させて配置してもよい。
【0086】
一部実施形態では、冷却要素はペルティエ素子等の熱電素子であり得る。冷却に使用するペルティエ素子が知られている。上記のように、熱電素子を使用して組織を冷却することができる。
【0087】
一部実施形態では、冷却機構はガス膨張の使用を含むことができる。ガス圧を一定量低下させることにより、ガスの温度が低下し、これを用いて浅層組織を冷却することができる。一部実施形態ではガス膨張の使用を、例えば循環流体、化学的冷却機構、及び/又は熱電冷却機構等の1つ以上の異なる冷却機構と組み合わせる。
【0088】
図11は、NMES治療システムを使用する方法の実施形態を示すが、これは単に例示的なものである。ステップの順序は限定的ではなく、一部のステップを実行しなくてもよい。方法を行っている間の任意の適切な時間に、その他のステップを含むこともできる。まず、ステップ502において刺激電極と冷却要素を皮膚表面に配置する。電極は別個のものでも、又はおそらくは冷却要素と共にパッドに組み込んでもよい。冷却ポンプを含む実施形態では、ステップ504でポンプを作動させ、所与の時間の間電極同士の間の領域を冷却する。ステップ506では電極を通して患者に電気エネルギーを供給する。設定時間(例えば30分)の後、ステップ508に示すように冷却機構とNMESエネルギー供給を停止する。最終的に、ステップ510では流入/流出ホースを刺激パッドから外し、制御手段と刺激パッドの接続を切る。これらステップはいずれも任意であり、又は他のステップと取り換えても、ステップの順序を変更してもよい。
【0089】
NMESエネルギー供給を開始する前に、表面冷却を数分間(例えば約5分から約10分)実行し始めてもよい。NMESを実行するために使用する装置とシステムの実施形態によって、冷却を開始する前又は後のいずれかに、表面電極を身体に配置する。NMESエネルギー供給中は表面冷却を継続して行う。この期間浅層組織の温度を一定に保つようにしてもよく、又は一部実施形態では、NMESを行っている間浅層組織の温度が低下し続けるようにする場合もある。一部実施形態では、NMES治療セッション中に表面冷却を断続的に使用してもよい。代替的に、NMESエネルギー供給を開始する前にのみ表面冷却を行ってもよい。代替的に、NMESエネルギーを開始した後に、刺激領域に表面冷却を行ってもよい。例えば、NMES治療と一緒に冷却を行う期間の前及び/又はNMES治療を後にひかえた冷却期間の前に、10分間のNMESの準備期間を設けてもよい。
【0090】
図12Aから12Cは、複数の冷却ゾーン又は冷却領域を有する冷却要素をシステムが含む実施形態を示す。図12Aは、冷却要素1200を配置した下肢の一部を示しており、冷却要素1200は第1冷却ゾーン1201と第2冷却ゾーン1202を含んでいる。これらゾーンの各々を、刺激電極1203同士の間に配置する。冷却ゾーン毎に独立的に制御しても、或いは他のゾーンに依存させて制御してもよい。即ち、冷却ゾーンを他のゾーン(1つ又は複数)とは無関係に有効としても無効としてもよい。冷却ゾーンは制御手段(図示せず)によって独立的に又は依存的に制御することができ、図12Bでは制御手段1206は電極1203と通信する。ポンプ1205を制御手段1206によって駆動することにより、又は独立に制御することにより、2つ以上の別個の冷却ゾーン筐体1204を通して冷却流体を循環させる。複数の筐体同士は互いに流体連結していない。弁又は同様のメカニズムを使用して、各筐体に個別に、又は複数の筐体に同時に流体を送ることができる。図12Cの実施形態は複数の冷却ゾーンを有する化学的冷却パックを使用する。冷却パックの外側コンパートメント1207は複数の内部管1208を収容し、該内部管1208は、区画化要素1210(4つのうち1つのみを特定している)により互いに密閉、又は化学的に分離されている。各内部管は、制御手段1206から抵抗加熱要素1209へとエネルギーを供給することによって、その一部が溶融し破裂し得る。制御手段からの命令に基づいて、冷却パックの異なるゾーンにおける化学物質を個別に任意の時間に混合させてもよい。
【0091】
NMES治療セッションを約15分から約30分間継続することが見込まれる場合には、冷暴露が長引くことで皮膚が損傷するという問題が生じ得る。一部実施形態では、組織の第1浅層領域を冷却した後、組織の異なる第2浅層領域を冷却する。冷却領域をシフトさせることにより、寒冷暴露の延長により皮膚の損傷を生じるリスクを幾分低減することができる。一部実施形態では、第2領域は第1領域と重なり合う。(冷却要素への暴露を停止した後に)組織の復温を比較的長く行い、冷却要素を領域から取り外した後でNMES効率を高める期間を長く設ければ、熱伝達領域を調整することで、皮膚表面における潜在的な低インピーダンス電気路を回避しながら、皮膚よりわずかに深い組織において効果的な温度勾配を維持することができる。循環する冷却流体を冷却機構として使用する実施形態では、冷却要素の所定領域への流体の流れを制御する弁を選択的に開閉することにより、冷却領域を変更又は変化させることができる。化学的瞬間冷却パックを冷却機構として使用する実施形態では、2段階の管を有する冷却パックを使用して、特定の時間に特定の領域でのみ化学物質を混合するようにすることができる。まず、冷却パックの第1段階内部管を破裂させて化学物質を混合し、1つの領域を冷却する。その領域で化学反応(そして冷熱源)が終了すると、第2段階の管を破裂させて皮膚の第2領域に熱刺激を及ばせる。段階を任意の数で設けた管を使用してばらつきを持たせることで、皮膚の1つ以上の所望の領域に対して所望の量及び/又は所望のタイミングで熱刺激を行うことができる。熱電素子を冷却機構として含む実施形態では、制御手段が各ゾーンにエネルギー又は信号を選択的に送ることにより、熱電素子の特定のゾーンを選択的に作動させるようにすることができる。例えば、図12Aでは冷却ゾーン1201及び1202は別々の(2つ以上の)熱電素子であり得る。冷却ゾーンは冷却制御手段と通信するが、該冷却制御手段は、刺激制御手段と共に収容するか、又は別個の筐体に収容するかのいずれかである。冷却制御手段は、例えば冷却ゾーン1201及び1202を異なる温度に設定するように、或いは冷却ゾーン1201及び1202を異なる冷却時間で作動させるように、熱源素子を制御するよう構成することができる。熱電素子はまた、様々な大きさと形状を有することができる。
【0092】
一部実施形態では、領域又はゾーン毎に冷却する程度を変えることで、皮膚の温度を領域毎に異なる温度にすることができる。前述のように、エネルギーが体内外に出入りする位置(即ち表面電極の位置)の組織を過度に冷却することは一般に望ましくない。なぜなら過度に冷却することで、深層筋肉及び/又は神経組織へのエネルギー供給を高めることなく、局所的なインピーダンスを上昇させて電極の性能及び持続性を害するためである。しかし場合によっては、電極の位置(又は電極自体)における組織領域をわずかに(例えば、約1℃から約5℃)冷却することが望ましいこともある。このようにわずかに冷却することで、エネルギーが体内外に出入りする領域において組織のインピーダンスを実質的に高めることなく、更なる火傷を防止することができる。刺激に使用する電極同士の間の1つ以上の他の空間ゾーンにおいて、浅層冷却の程度をより高めて行う(例えば約20℃から約30℃程度)と、深層筋肉及び/又は神経組織へのエネルギー伝達率を高めることができる。複数の冷却領域又はゾーンについて記載した本文中の適切な実施形態のいずれについても、各々が組織の領域毎に異なる熱的効果を有する複数の異なる冷却ゾーンを提供するよう、適応させることができる。例えば図13は、電極460(透視して示す)と通信する制御手段466を含むシステムの例示的実施形態を示す。冷却要素は第1冷却要素462と第2冷却要素464を含む。ポンプ468は冷却要素の両方と流体連結状態にある。第1冷却要素462は、電極460上に配置した2つの別々の冷却要素を含む。第2冷却要素464は、第1冷却要素462が電極付近の領域を冷却する以上に、電極460同士の間の領域を冷却する。この場合、エネルギーが体内外に出入りする領域の温度の低下はより緩やかなものであるのに対して、電極同士の間を冷却する程度はより大きい。
【0093】
治療時間全体を通して比較的一定の冷却温度を維持することが望ましい。このような場合には、冷却流体を循環させる方法、化学的方法、又は熱電気的方法は、アイスバッグ又は氷槽等の冷却要素を用いる方法より有益である。なぜなら氷は溶けて、皮膚を一定温度に維持できないためである。冷却流体と化学的メカニズムにはワークフローに関する更なる利点がある。例えば、冷却ポンプ又は瞬間化学的冷却パックは、患者のベッドサイドの収納に置いておくことができると共に、アイスバッグや氷槽の際に必要となり得る設置にかかる時間や保管の必要もなく、必要な時に作動させることができ、便利である。さらに、アイスバッグ及び/又は氷槽は湿気及び/又は水分の漏洩を生じやすい。従って異なるタイプの冷却要素を使用して、経時的に冷却要素の温度を調整することができる。
【0094】
冷却要素(又は少なくともその一部)は皮膚としっかりと接触させておくことが好ましい。自発的又は不意の筋収縮によって、又はその他の動作によって刺激領域が移動すると、冷却要素の位置がずれる、又は冷却要素が浅層組織と直接的且つ効果的に熱的接触しなくなることが生じ得る。従ってシステムの一部実施形態は、このような動作が生じても冷却要素と浅層組織の間に所望の熱的接触を維持する。
【0095】
図14Aから図14Cは、皮膚にしっかりと冷却要素を固定する実施形態を示す。図14Aでは、刺激パッド301は3つの刺激電極302、冷却要素303、及び錘304を含む。一実施形態では、錘は可撓性であり、量及び可撓性の点で砂のうに類似する。冷却要素303を皮膚の所望の領域に配置し、錘304を冷却要素の上に配置する。錘304は皮膚の所望の領域に対する定位置に冷却要素303をしっかり固定する。図14Bでは、錘306を冷却要素305の上に置き、スナップコネクタの形態のコネクタ307を用いて冷却要素305に取り付ける。他のタイプの接続要素を使用してもよい。図14Cでは、刺激パッド309は埋込み刺激電極308と埋込み冷却要素310を含む。可撓性であり得る錘311を冷却要素310の上に置いて下方に圧力をかけ、ストラップ312を用いて所定の位置に錘を保持するが、ストラップ312は、錘/冷却機構アセンブリの両側で刺激パッドに連結するよう構成する。圧力を冷却要素に印加する代替的メカニズムを使用して、冷却要素を皮膚にしっかりと接触させて固定した状態を維持することができる。
【0096】
冷却要素を皮膚にしっかりと固定することで、冷却機構を所望の位置に維持できるだけでなく、冷却機構と皮膚表面との間が密閉状態となり、刺激領域における湿気の蓄積を最小限に抑える。代替的実施形態は、冷却要素の配置を維持するために、低刺激性の接着剤や周縁ストラップを使用することを含み得る。
【0097】
一部実施形態において、NMES治療システムは皮膚の表面に湿気が生じることを防止する又は最小限に抑える方法を含む。暖かい空気がより冷たい面に接すると、空気からの湿気が冷たい面上で濃縮する可能性がある。皮膚表面上の湿気は皮膚の電気インピーダンスを低下させ、エネルギー供給中に危害を及ぼす可能性もある。一部実施形態において、皮膚上のパッドは、表面冷却と共にNMESを行う間、皮膚に過度の湿気が生じることを回避するための層をいくつか含む。例えば一実施形態では、中間吸収層の囲む区画内に含まれる内部層を冷熱源とし、中間吸収層は、断熱材として作用しない程度に薄くすることができる。中間層はペーパータオルや発泡体に類似した材料、又はその他の適切な材料であり得る。皮膚と接触する薄い外部層は非吸収性の材料を含み、中間層を囲む。外部層は湿気が皮膚表面に生じるのを防止する。
【0098】
代替的実施形態では、暖気が冷熱源/皮膚表面に達しないようにすることで刺激領域における湿気の蓄積を減少し得るが、これは冷却要素と皮膚との間の空気を減らす又はなくすことにより達成することができる。吸引及び/又は真空ポンプを使用して空気を除去することができる。冷却要素に十分な圧力をかけることによっても、空気が循環する量を減らすことができる。錘、ストラップ、又は他の装置を使用して、冷却要素に圧力をかけることができる。
【0099】
一般に、NMES治療システムは表面電極と通信する刺激制御手段を有し、該制御手段は電気エネルギーを生成して、これを表面電極に供給する。一般に、制御手段は電源(例えばバッテリー又は主電源と共に使用する絶縁変圧器)を備え、以下のいずれかを含むことができる:ハードウェアコンポーネント、ソフトウェアコンポーネント、電圧/電流増幅器、マイクロコントローラ、FGPA、タイミング回路、波形生成回路、信号処理回路、及びメモリ。一部実施形態では、制御手段の主な命令は、マイクロプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、用途別集積回路、これらメカニズムの一部組合せ、又はその他の適切なメカニズムにより提供することができる。起動すると、制御手段は表面電極に送信する電気刺激信号を生成し、表面電極がエネルギーを身体に連結して筋肉組織を刺激する。
【0100】
刺激を行う前に電気刺激のパラメータを定め、刺激治療の前、治療中、又は治療後の任意の時間に刺激パラメータを調整するよう、制御手段を構成することができる。パラメータは手動で調整しても、或いはパラメータを自動調整するよう制御手段を構成してもよい。なお自動調整は、以下に述べるように、予め定めた治療プロトコルによって、又は患者を監視して感知したフィードバック信号に基づいて、行うことができる。例示的な電気刺激パラメータとしては、治療期間、刺激パルスエネルギー振幅等を含むが、これらに限定しない。
【0101】
一部実施形態では、制御手段は医療従事者が患者への電気エネルギー供給のパラメータを制御できるユーザインタフェースを含む。電気刺激パラメータをユーザが手動で設定する(即ち定める)ことができるよう、制御手段を構成してもよく、又は治療中若しくは治療後の任意の時点で電気刺激パラメータをユーザが調整できるよう制御手段を構成してもよい。ユーザインタフェースは制御手段内に収容してもよく、又は制御手段と通信する遠隔制御に類似した別個の装置としてもよい。ユーザインタフェースはエネルギー供給のパラメータを制御するためのボタン、ノブ、ダイアル、スイッチ等を含み得る。ユーザインタフェースは、制御手段又は他の任意の要素の動作をユーザがテストして、任意のエラー又は不具合のある要素を検出する機能を含み得る。
【0102】
一部実施形態において、制御手段は、制御手段における最適化ソフトに基づいて刺激パラメータを自動的に調整するよう構成する。
【0103】
一部実施形態において、制御手段は患者の検知信号を受信するよう構成するが、該信号は患者の体に又は体内に配置した1つ以上のセンサを使用して感知するのが一般的である。1つ以上のセンサを使用して対象者からパラメータを感知し、制御手段にフィードバックすることができる。
【0104】
一部実施形態において、センサは患者の皮膚の温度を監視するよう構成した温度センサを含むことができる。制御手段は、感知した温度を連続的に又は定期的に受信するよう構成することができ、制御アルゴリズムは、感知した温度を基準温度と比較して、感知した温度が基準温度より高いか低いかを判断することができる。この比較に基づいて、冷却要素を作動させて、又はその動作を停止させて、又は冷却要素の調整を行って、皮膚の温度を上げる又は下げることが治療に必要となり得る。冷却の程度は手動で調整してもよく、又は制御手段内に冷却プロトコルを修正するソフトウェアを内蔵させて、皮膚温度を制御するようにしてもよい。皮膚温度を監視すると、組織中に生じた温度勾配がわかるため、患者の体内に入るエネルギーのうちの十分な割合のエネルギーが深層筋肉組織に供給されるのにこの温度勾配で十分であるかどうかが分かる。よって温度は、冷却要素で冷却する表面の量を制御するべく感知できる例示的な患者のパラメータであり、この例を本文に記載する。
【0105】
一部実施形態において、センサは筋肉刺激又は収縮の程度を感知するセンサを含む。筋収縮は、例えば筋電図(EMG)を用いて感知することができるが、これに限定しない。センサが筋収縮を感知する構成であれば、感知するパラメータは筋収縮の量を示す任意のパラメータであり得る。筋収縮を示す感知パラメータを受け取り、この情報を使用して冷却要素の動作を制御する又は電気刺激を制御するよう、制御手段を構成することができる。例えば、筋収縮を示す感知パラメータが、収縮量が不十分であることを示す場合には、皮膚表面における冷却効果を高めるか、或いは電気刺激の量を増やすか、或いはこれら2つのことを組み合わせて行うか、のいずれかを実行することが望ましい。感知パラメータへの対応は、手動で調整しても、或いは制御手段が自動で制御するようにしてもよい。ここに記載するNMES治療に採用できる一部の例示的な筋肉センサについては、2009年7月2日出願の米国特許出願第12/497,230号に含まれている。なお、この特許出願を参照してここに援用する。
【0106】
一部実施形態では、NMES治療を受ける人物に1つ以上のセンサを連結し、該センサは筋収縮を示すデータを記録するに使用する。制御手段内のフィードバック制御システムを使用して、刺激エネルギー波形の閉ループを最適化する。
【0107】
制御手段は冷却要素を作動させるよう構成することができる。ある例示的な実施形態では、数分間の「準備」期間の後、刺激領域において局所的な組織冷却を開始し、刺激エネルギーを対象者に付与する。刺激エネルギーの「準備」期間の後、システムがケアを行う者に対して復帰と調整を行うことを求めずに、治療中の所定の時間に冷却を自動的に開始するようにすれば、便利である。
【0108】
循環する冷却流体(この例については上述している)を使用して温度勾配を作り出す実施形態では、制御手段は冷却要素への流体の流れを制御するポンプ要素と通信することができる。従って制御手段は患者の皮膚温度を制御する。所定時間に又はフィードバックで定めた時間に冷却機構を作動させるよう、制御手段を構成することができる。
【0109】
他の実施形態では、内部管が破裂して2つの物質が混合し、化学的に反応した際に作動する冷却パック(例えば市販されている尿素ベース又は硝酸アンモニウム/水のパック)を使用する。かかる実施形態の例をここに記載する。制御手段で生成した電流を使用して、冷却パックの内部管の所定領域を溶融又は破裂させ、物質を混合することができる。
【0110】
制御手段はまた1つ以上の記憶手段を含み、該記憶手段は、例えばNMES治療の機能を実行するよう使用するアルゴリズム、治療プロトコル、感知する患者に関するパラメータ、刺激パラメータ、及び/又は冷却パラメータを記憶するが、これらに限定しない。記憶手段は次の形態のいずれかであり得る:RAM、ROM、EEPROM、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、又はこれらの任意の組み合わせ。記憶手段はNMES治療を実行するプロセッサと通信することができる。
【0111】
治療の種々の態様のタイミングを合わせて同期化を行うべく、制御手段における1つ以上のプロセッサをクロックに連結することができる。
【0112】
制御手段はまた、限定はしないが例を挙げると、パーソナルコンピュータ又はネットワーク等の遠隔装置と通信して、データ通信、プログラミングコマンド等を提供するよう構成した通信インタフェースを含むことができる。例えばテレメトリ、誘導コイルリンク、RFリンク、その他電磁的リンク、磁気リンク、赤外線リンク、光学的リンク、超音波リンク等の従来のワイヤレスプロトコルを使用して、通信を行うことができる。通信インタフェースが受信手段と送信手段の両方を含むことで、双方向の通信が可能となり、制御手段へのソフトウェアの更新提供、記憶した又は実時間のデータの送信、医療従事者からの入力の送信等を行うことができる。
【0113】
本文中の記載で特定していなくても、制御手段を使用して治療の種々の特徴を制御することができる。制御手段は単一の筐体であっても、或いは複数の筐体であってもよく、これらを任意の数で通信させる。
【0114】
一部実施形態では、システムは冷却要素の他に加熱要素を含む。冷却要素は組織の温度を低下させるために使用するのに対し、加熱要素は組織の温度を高めるために使用する。図15では、加熱要素107を下肢1001の後面側に置き(又は患者が台の上に横たわっている場合には加熱要素に下肢で圧力をかける)、刺激パッド1002を下肢1001の前面側に置く。刺激パッド1002は、冷却要素1004と刺激電極1003を含む。刺激パッド1002に制御手段1005とポンプ及び流体貯蔵部1006を組み込んでいる。上述のように、表面冷却は冷却要素1004が行う。ハムストリング筋及び/又は臀筋付近で表面加温を行うように加熱要素1007を配置するが、システムは他の筋肉に対しても使用できる。後面の加温が前面側の冷却と相乗的に働いて、深層筋肉組織と下肢前面側の浅層組織との間に温度勾配を作り出し、筋肉組織への電流供給率が高まる。第二に、加温は体の中心の温度を正常なレベルに維持するのに役立つ。表面冷却を長時間行うと大血管付近の温度が変化し、血液を冷やして中核体温を低下させる。後面に加熱要素を配置すると大血管付近の組織を加温することによって、下肢の前面部における温度勾配を縮小させることなく、冷却によって生じる中核体温の変化を相殺することに役立つ。加温要素をそれ自体の制御手段に連結して、加熱要素の温度を制御することができる。加温要素は加熱パッドに類似したものであり得る。
【0115】
図16Aから図16Cは、超音波振動子を含む代替的実施形態を示す。図16Aでは、制御手段1101は刺激パッド1105と電気的に通信し、刺激パッドは刺激電極1102、冷却要素1103、及び2つの超音波振動子1104を含む。図16Bは、集束超音波振動子1105からの音響エネルギー分布を示しており、焦点領域1106にはビーム中のエネルギーの最大空間分布が生じる。組織加熱が生じるのは主に焦点領域であり、その他の領域ではエネルギーが分散しすぎて有意に温度を上げることができない。図16Cは、NMES治療を施している四肢1107の側面断面図である。超音波振動子1104は深層組織領域1108を焦点として、皮膚表面から浅層組織を通して音響エネルギーを伝達する。
【0116】
制御手段又はその他の制御装置で操作することにより、振動子が比較的低周波の超音波エネルギー(例えば約1から約4MHz)を使用して、電子及び/又は凸レンズの焦点を、刺激している筋肉群に適した深さに当てるようにすることができる。超音波エネルギーを組織が部分的に吸収し、組織を通って超音波エネルギーが伝搬し、このエネルギーが熱に変換され得る。超音波の焦点性質により、より浅い組織領域におけるエネルギー供給は最小としながら、焦点領域にはエネルギーの圧倒的大部分を供給することができる。従って、浅層領域を実質的に加温することなく、より深層組織を焦点領域として加温することができる。この方法は、浅層冷却機構の生成する温度勾配を強化して、体の中核温度が低下し過ぎることがないよう保証する。
【実施例】
【0117】
上述の皮膚冷却と共に行うNMES治療について、調査研究を行った。20人の健常者を採用した。10名の健常者からなる第1グループ(グループ1)には希望者全員を入れた(年齢中央値44歳、年齢範囲22から70歳、BMI中央値25.0、BMI範囲22.0から38.3)。健常者の第2グループ(グループ2)は、全ての人が医学的に肥満である人からなるグループとした(BMI>30.0)、個人(年齢中央値53歳、年齢範囲25から75歳、BMI中央値32.4、BMI範囲30.1から39.6)。重症患者を募って更なる調査研究を実施中であるが、中間結果が出ている。
【0118】
最初の調査では、健常者に安定した姿勢をとらせ、各大腿四頭筋領域に左右対称に筋肉刺激電極を取り付けた。医療用動力計を各足首に配置した。筋肉を刺激している間、四頭筋が収縮することにより下肢が伸展する。医療用動力計でこの下肢の伸展力を読み取る。固定(一定)量の刺激エネルギーに対する下肢の伸展力は、このエネルギー量で刺激を行っている間に使った筋肉運動単位数の代わりとなるものであるため、筋肉刺激効率を良好に示すよう作用する。各下肢における筋力の基線測定を行った後、片方の下肢をランダムに選択して、刺激電極同士の間の領域にアイスバッグを配置し、他方の下肢には室温制御バッグを配置する。各下肢の伸展力を、3分間隔で測定した。20分から30分冷却した後、アイスバッグ及び室温制御バッグを下肢から取り外し、復温期間中測定を継続した。
【0119】
この研究では、パルス幅300ms、パルス繰返し率40Hzとした一連の非対称性二相性方形波を含むパルス列で筋肉刺激を行った。エネルギー増大時間を1秒、エネルギー減少時間を1秒としてパルス列を5秒持続させ(即ち最大エネルギー供給は3秒)、その後少なくとも10秒停止した。各刺激チャネルにより各人に供給した最大電流は、約30から約80mAであった。
【0120】
一部実施形態では、個々のパルスの周波数成分を約10kHz以下とする。実施形態によっては個々のパルスの周波数成分が約5kHzであることもあれば、約1kHzであることもある。実施形態によって、パルス繰返し率が約30Hz以上である場合もあれば、約30Hzから約50Hzである場合もある。一部実施形態では、オン時間(所与の繰返し率でパルスを供給する時間)とオフ時間(パルスを供給しない時間)を交互に設けながらエネルギーを供給する。一部実施形態ではオン時間は約5秒から約10秒継続する。一部実施形態ではオフ時間は約10秒から約20秒継続する。
【0121】
この研究により、上述のシステムと方法の多大な有用性が判明した。下肢の伸展力(及び筋肉刺激効率)は健常者20人すべてにおいて、冷却期間中に実験を行った方の下肢において増大した。実験を行った方の下肢において浅層冷却を行って達成した基線からの伸展力が最高に増大したものの平均は、グループ1では69.9%であり、グループ2では94.8%であった。医学的にみて肥満である人のグループにおいて、このように伸展力の一層の増大がみられたことは、NMES治療の有効性が極めて高いことを示している(即ち、身体の安全に関する規制基準及び/又は管理基準の許容する最大エネルギーを一般的に必要とする人は、軽いものであったとしても筋収縮を達成する必要がある)。グループ2において増大幅が大きいことは特に重要であり、なぜなら筋収縮が萎縮を防止する程には強くないレベルから、筋力を保持して機能的転帰を高めるのに有用なレベルへと移行できたためである。従って、ここで開示する装置、システム、及び方法により、このグループの人々はNMES治療から重要な又はより一層の利益を受けることができる。
【0122】
対照実験の下肢に比べて、実験対象の下肢において浅層冷却を行って達成した伸展力の9分間での増大の平均は、基線に対して52.6%であり、これは刺激効率の増大が有意な時間にわたって持続することを示している。全体として、浅層冷却を行って達成した筋収縮力の増大は、対応のあるt検定で分析して極めて統計学的に重要であると判断した(p<0.0001)。
【0123】
図17は、第1の研究から得た被験者実験データを示す。縦座標軸は、四頭筋を刺激することで生じた最大下肢伸展力(足首に配置した動力計で測定)を、各下肢に対して基線測定で正規化したものを示している。NMES装置上の電流設定は測定期間を通じて一定に保った。横座標は時間を示す。時間t=0からt=6分における測定は基線の読込みととらえる。時間t=6分(縦実線)において、氷を入れた防水バッグを使用して、実験対象の下肢(上のデータ追跡)に置いた刺激電極同士の間の浅層組織を冷却し、室温制御バッグを対照実験の下肢(下のデータ追跡)に置いた。時間t=29分(縦点線)で、アイスバッグと室温制御バッグの両方を取り外した。図のように、四頭筋への電流伝達率が高くなっている(下肢伸展力により明らかである)ことは20分以上にわたり明白であり、その後熱刺激を取り外した。筋肉刺激が増大(及び収縮が増大)したことが明らかであることに加えて、図17はNMESを行っている間又はNMESを行う前のみに断続的に浅層組織に冷却機能を適用することを支持している。
【0124】
図18は、重症患者から得た筋肉刺激の実験データを示しており、これは第2の研究からの中間集計の一部である。刺激を行っている間、患者の下肢に配置した加速器で、四頭筋の刺激中の運動を測定した。所定量のエネルギーが筋収縮を生じる程度は、記録した運動の量で適切に代用することができる。体温にある両下肢で一連の基線測定を行った(最も左の棒セット)後、アイスバッグを配置した片方の下肢では浅層側から温度勾配が生じたが、他方の下肢は体温制御状態のままであった。中央の棒セットが示すように、実験対象の下肢に熱刺激を行っている期間はその収縮力が高まり、対照実験の下肢では収縮力が衰えた。対照実験の下肢における収縮力の衰えは、疲労によるものだと推定される。対照実験の下肢と比較して、筋収縮は46%高まった。冷却期間の後、実験対象の下肢が復温期間にあるうちに、更なる測定を行った。最も右の棒セットが示すように、両下肢における収縮力は再度同様になり、基線を大幅に下回っている。この減少についても、疲労によるものであると推定される。冷却前、組織冷却中、及び冷却後の復温期間中に、患者の両下肢に同じエネルギーを与えた。
【0125】
本明細書では、概して付与エネルギー誘導域を伴う筋肉刺激について記載している。本明細書中の実施形態では、エネルギー誘導域は表面組織とこれに近い組織における電気インピーダンスを変える。エネルギーを生じる1つのメカニズムは皮膚冷却であるが、その他のメカニズムを使用してもよい。例えば、理論的には以下のいずれかを単独で又は他のメカニズムと組み合わせて使用して、エネルギー誘導域を生成することができる:1)パルス又は静電磁場、又は磁気ベースの一般的な方法;2)化学物質を局所に塗布する又は化学物質を注入することで、局部的な浅層組織の誘導特性を変える;3)血管拡張領域の選択(即ちどの程度の量の血管を収縮させるかを調整する);4)最適な伝達経路を設定するための複数のエネルギー源干渉パターン;5)深層組織のインピーダンスを低下させるために行う深層における一時的な溶液又は材料の注入。
【0126】
本明細書に記載する装置及び方法は、皮膚表面ではなく身体内部の組織面に使用するよう構成することができる。1つの例示的実施形態では、食道を介したアクセスにより心臓を刺激するよう表面電極を構成する。動作している刺激電極同士の間の位置で食道に表面冷却装置を適用することにより、心臓へのエネルギー伝達率を高めることができる。この実施形態の一実施例では、冷却要素を中空管装備の小型のパッドとし、小型の流入管及び流出管によって中空管を通して冷却流体を循環させる。わずかに形状の異なる本実施形態の変形は、横隔膜を刺激するという用途に使用することができる。
【0127】
本明細書に記載する方法は、上述の装置及びシステムの実施形態のいずれか又はその変形だけでなく、本明細書では明示しないその他の実施形態及び変形において、効果的に使用することができる。本文中の実施形態のいずれかに記載したシステム又はシステム要素のいずれかの特徴を、システム又はシステム要素の他の任意の適切な実施形態で使用することができる。
【0128】
ここに記載した発明の種々の態様は、以下に示す特定の用途のいずれか、又は他の任意のタイプの電気刺激及び感知システム又は方法に適用することができる。本発明は単独のシステム若しくは方法として、又は統合的な医療システムの一部として適用可能である。本発明の様々な態様は個々に、又は一括して、又は互いに組み合わせて使用できることを理解されたい。
【0129】
NMESシステムは、四頭筋領域や他の任意の下肢領域を含む、対象者の任意の解剖学的領域に適用できる。NMESシステムはまた、その他の解剖学的領域にも同様に適用可能である。例えばNMESシステムの対象は、ふくらはぎの筋肉組織としてもよい。別の例では、NMESシステムの対象は上腕又は下腕の筋肉組織としてもよい。またNMESシステムの対象は、対象者の胴体の筋肉組織であってもよい。例えば、システムは対象者の腰部に刺激を与えるようにしても、又は対象者の上体に刺激を与えるようにしてもよく、例えば脇の下等の解剖学的特徴を目安として使用してもよい。NMESシステムは対象者の体における任意の他の筋肉組織を対象とすることができる。
【0130】
ここに記載した装置、システム、及び方法のいずれについても、他のNMES用途で使用する適切な態様、特徴、又はステップを含み得る。例えば、2009年7月2日出願の米国特許出願第12/497,230号で開示された内容を、参照によりここに援用する。
【0131】
特定の実施形態を示して説明したが、前述のことから、これら実施形態に種々変更を施すことができ、また本明細書中でも種々変更を検討していることを理解されたい。本発明は、明細書中に示した特定の例で限定されない。さらに本発明の全ての態様は、種々の条件及び変数に依存した本明細書中の特定の表現、構成、又は相対的比率に限定されないことを理解されたい。本発明の実施形態の構造及び詳細における種々の変更が当業者には明らかであろう。よって、本発明は任意のかかる変更、変形、及び同等物を含むものと理解されたい。
【符号の説明】
【0132】
101、124 表面電極
103、126 筋肉組織
105 表面冷却要素
122 刺激制御手段
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー誘導域を用いた電動筋肉刺激システム及び方法に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年2月20日出願の米国仮特許出願第61/208,119号、及び2009年7月31日出願の同第61/230,587号の利益を主張するものである。なお、これら仮特許出願の内容を参照してここに援用し、本明細書中で十分に示す。
【0003】
本出願は以下の同時係属出願に関連する:2009年11月11日出願の特許出願第61/260,324号、2009年7月2日出願の同第12/497,230号、2008年8月19日出願の同第61/189,558号、2009年8月26日出願の同第12/548,155号、2008年8月29日出願の同第61/190,602号、及び2008年12月15日出願の同第61/201,877号。なお、これらの出願全ての内容を参照してここに援用する。
【背景技術】
【0004】
電動筋肉刺激、機能的筋肉刺激、電気的筋肉刺激とも呼ばれる神経筋電気刺激(NMES)は、鎮痛、非活動性萎縮の防止又は遅延、及び局所血液循環の改善等、多くの治療に用いられる周知の技術である。典型的にNMESは、人の皮膚に取り付けた表面電極によって、短電気パルスを断続的且つ反復的に経皮的に供給するものである。電気パルスを筋肉組織及び/又は筋肉神経に供給し、筋収縮を誘発する。電極は、ストラップ、粘着剤、その他の方法を用いて皮膚に固定することができ、多くの場合、電極から皮膚及び下層組織へのエネルギー伝達率を高めることのできるヒドロゲルを含む連結層を含有する。
【0005】
NMES療法から多大な恩恵を被る人は、動くことのできない、即ち寝たきりの人々である。動けないことで筋萎縮と筋力低下につながり、人の身体能力に深刻な影響を及ぼす。以前身体が活発に機能していた人物は、動けなくなった後、以前の身体機能レベルを取り戻すために、広範囲にわたる理学療法が必要となることが一般的である。NMESは筋肉を刺激することによって、動けない間の筋萎縮を防止する又は遅延させるように作用できる。
【0006】
重症患者は、動くことのできない患者のサブグループを構成する。これらの患者の略全てがベッドに寝たきりになっているが、その多くは昏睡状態、或いは一般に鎮静及び/又は鎮痛を必要とする(人口呼吸器等の)治療介入を受けている状態である。鎮静又は昏睡状態の患者は、(例えばベッドの上で四肢を上げる又は足を動かすといった)単純で自発的な動きでさえも行わないことが多いため、筋萎縮を起こすリスクが大きい。従って重症患者の回復には、数日から数週間ではなく一般的に月単位という長い期間がかかる。
【0007】
急性疾患に対する治療の一環として、多くの重症患者は点滴や抗生物質等の治療介入を受ける。動くことのできない患者に起こる、これらの治療の一般的な副作用は組織浮腫の進行である。一般的に、組織浮腫は「サードスペース」、即ち細胞外及び血管外の領域に体液が循環することで起こる。浮腫はしばしば微小血管系への漏洩によって引き起こされ、典型的には組織を膨張させる。浮腫があるとNMESの性能に悪影響が及ぶが、多くの場合、筋収縮を十分に誘発する技術力が制限される。これは、非侵襲性の電極を皮膚表面に置いて、例えば四頭筋、ハムストリング筋、臀筋、腹直筋、腹横筋、内外腹斜筋、骨盤底、多裂筋、脊柱起立筋、胸最長筋、横隔膜筋等の深層筋肉を刺激しようとする場合に、特にあてはまる。
【0008】
組織浮腫がNMES治療に影響を及ぼし得るいくつかの作用機序がある。組織が膨張して皮膚表面と下層筋との距離が増すことで、対象とする深層筋に達する電流密度がより低くなる可能性がある。さらに、組織中にイオン流体が必要以上に存在すると、特に浅層領域で、組織の電気インピーダンスを低下させる可能性がある。浅層領域においてインピーダンスが低下すれば、皮膚電極を「短絡する」よう作用するおそれがある。浅層組織領域中のより低いインピーダンスの経路は、より深層の筋肉組織において電流密度を低下させるメカニズムとして作用する可能性がある。これらメカニズムのうち後者のメカニズムは、浮腫患者におけるNMES性能の低下に関連する主な要因であり得る。医学文献中の過去の研究は、ある特定のタイプの電気刺激によって、外傷後に発現する局部的な浮腫を防止できることを指摘したが、非外傷性又は多要因性の内科疾患を含むケースにおいて、かかる治療が広範囲の浮腫を防止又は軽減することについては示していない。
【0009】
身体に関する規制基準及び管理基準(例えば、米国食品医薬品局(US FDA)、米国規格協会(ANSI)、医療機関内倫理委員会(IEC))に従う表面電極及びエネルギーレベルを用いて、多くの浮腫患者において深層筋肉の収縮を確実に刺激することは不可能である。より高いエネルギーレベルを使用すればNMESの効率を高めることができるが、供給するエネルギーの振幅を増大させると、火傷、神経及び/又は筋肉の損傷、並びにその他の潜在的合併症を引き起こすリスクが高くなる。これはプラウスニッツ(Prausnitz)著「アドバンスト ドラッグ デリバリー レビューズ(Advanced Drug Delivery Reviews)」18巻:pp. 395-425、2006年、及びステッカー等(Stecker et al.)著「アメリカン ジャーナル オブ エレクトロニューロダイアグノスティック テクノロジー(American Journal of Electroneurodiagnostic Technology)」43巻:pp. 315-342、2006年で詳述されている通りであり、これら文献については参照によってここに援用する。浅層組織の電流密度が大きく、筋肉組織の電流密度がより小さいため、これはとりわけ「短絡」状態について言えることである。これら及び他の要因により、NMES治療の用途は、浮腫患者及び動くことのできない重症患者全般、即ち潜在的にNMES治療が極めて有効であると仮定されるグループに限定される(モリス等(Morris et al.)著「ケア クリニックス(Care Clinics)」23巻:pp. 1-20、2007年。なお、この文献については参照によってここに援用する)。
【0010】
低温熱エネルギーを短時間局所的に皮膚に付与すると浅層組織の温度が低下し、医療的に有用となり得る多くの効果を生み出すことができる。例えば表面冷却は、浅層組織と深層組織との間に「逆」温度勾配を作り出して、深層組織を表面組織より比較的暖かい状態に維持することができる。
【0011】
上記逆温度勾配の1つの用途は、高エネルギー高周波(RP)刺激、光刺激、光音響刺激、音響刺激、赤外刺激、電磁刺激、又はその他のタイプの刺激を皮膚表面下の組織を対象として経皮的に与えることと、表面冷却を組み合わせることを含む。一般に、これらの用途は切除や組織(例えばコラーゲン)改造の目的で、又はその他の皮膚科的若しくは治療上の理由から、皮膚表面下の組織の温度を実質的に上昇させようとする。これらの用途は、治療対象でない組織の損傷を回避するべく、皮膚及びその他の浅層組織の温度を上昇させずに、非侵襲的に対象組織にエネルギーを与えようとする。逆温度勾配は、温度を上昇させることによって治療対象とするより深層の組織を有意に冷却することなく、浅層組織を冷却することにより、この方法を補助する。従って、エネルギー刺激の一部を浅層領域が吸収しても、浅層領域の温度は損傷を受けるレベル未満に維持される。
【0012】
上述の温度勾配を使用する一部の用途では、高振幅RF又はその他の形態の電磁/電気エネルギーを使用して、対象とする組織領域(例えば毛包、コラーゲン等)の温度を実質的に上昇させる。効果的に行うため、これらの治療では組織の対象領域の温度を約43℃を上回る温度とする必要があるが、ほとんどの用途においては組織の温度は約60℃以上に上昇させる必要がある。このような温度に近い温度では、細胞と細胞外液の水分が蒸発し、温度の上昇により組織のインピーダンスが上昇する。逆温度勾配と組織の表面冷却は、浅層組織の温度上昇を正常な体温より極わずかに高い温度に留めることによって、エネルギー供給を促進するため、浅層組織のインピーダンスが(その下の過熱組織と比べて)低下する。よって、浅層組織を通してより深層の対象領域により多くのエネルギーを供給することができる。
【0013】
切除、美容、及び他の治療を行う場合、組織に供給するエネルギーでは一般に筋収縮が生じない。所望の治療領域において筋収縮が生じると治療介入が複雑になるため、ほぼ全ての場合においてこのことは望ましいことである。例えば、多くの装置で利用されるRFエネルギーは、意図的に例えば約100から約500kHzの周波数範囲で供給されるが、この周波数範囲は非常に高く、筋収縮を生じない。
【0014】
さらに、表面冷却を行って皮膚火傷を防止する美容、切除、及び治療の用途では、エネルギーが皮膚を通って伝わる解剖学的位置、又は皮膚を通って伝わる位置を含むより大きな領域において、逆温度勾配を適用する。切除、美容、及び治療において一般的なエネルギー振幅、周波数範囲、及び温度範囲に対して、逆温度勾配を利用するこれらのシステムと方法を最適化する。比較的低いエネルギー周波数及び振幅で動作する筋肉刺激装置の場合、ピークの組織温度を正常な体温近くの温度にすると、エネルギーが皮膚を通って伝わる領域の皮膚温度を低下させるという欠点が生じる。そのようなことが起こると、エネルギーを身体に伝達する効率が大幅に低下し、表面刺激電極の寿命を著しく縮め、全体的な治療効率も低下させる。
【0015】
最近の病院設備で使用されているほとんどの筋肉刺激装置は、電流(又は電圧)が一定の刺激装置であるが、組織のインピーダンスが上昇すると、刺激装置は人に供給する電流(又は電圧)を一定に維持しようとして、供給するエネルギーの電圧(又は電流)振幅を(所定の限界値まで)増大させる。何らかの理論に従おうとしなければ、この電圧(又は電流)の増大は皮膚電極におけるエネルギー損失と発熱を増大させる。皮膚表面を予め冷却すれば皮膚火傷のリスクは部分的に低くなるが、皮膚電極の温度が上昇することで、電極の性能が低下する。NMESで使用する最も一般的な最新の皮膚電極は、接着媒質及び導電(接触)媒質の両方として作用するヒドロゲル接触層を含む。かかるヒドロゲルは50%以上が水分で構成されているため、温度が上昇すると電極の乾燥が早まり、再利用性が大幅に低下する。これは集中治療室の場合に特に重要な要素となるが、それは集中治療室では、電極の設置と取外しを繰り返し行うと皮膚外傷が生じてしまうことから、長期間にわたって1セットの電極を一定の位置に置いたままにしておくことが望ましいためである。さらに、ヒドロゲル層の乾燥は正のフィードバック現象である:導電層が乾燥すると、皮膚/電極インピーダンスがさらに上昇し、これにより皮膚において一層熱を生じさせ、接着性が低下することにより電極の密着が弱まるという危険な状況になる可能性がある。NMESを表面冷却と併用した場合でも、この後者の状況は、電極の密着が弱まったことにより皮膚火傷を非常に早く起こすおそれがあることから、深刻な事態である。よって、この技術は皮膚電極の位置における皮膚インピーダンスを上昇させるため、NMESと併用する場合には、皮膚電極の位置において表面冷却と温度勾配を使用する装置には、重大な制限が伴う。特に、皮膚電極の位置における表面冷却と温度勾配は、一般にはエネルギーの筋肉への伝達率を高めず、組織のインピーダンスを上昇させると共に電極の性能を低下させるため、NMESにとってはほとんど若しくは全く利点がない。
【0016】
経皮的末梢神経電気刺激装置(「TENS」)は、経皮的なエネルギーの供給と組み合わせて皮膚表面冷却を使用する別のタイプの治療法である。詳細には、この治療法は皮膚に高温及び低温の鎮痛効果を利用して、それらを神経刺激の鎮痛効果と組み合わせようとするものである。TENS装置は筋収縮を生じる振幅では一般に動作しないが、TENS装置で筋肉を刺激することは理論的に可能である。TENS療法はまた、エネルギーが皮膚を通して伝わる解剖学的位置で、又はエネルギーが皮膚を通して伝わる場所を含む、より大きな解剖学的領域において、温度勾配を適用する。ここに記載するように、電気筋肉刺激治療と共にこのようなことを行うと、身体へのエネルギー伝達率が大幅に低下し、表面刺激電極の寿命が著しく短くなり、治療の全体的な有効性が低下する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】プラウスニッツ(Prausnitz)著「アドバンスト ドラッグ デリバリー レビューズ(Advanced Drug Delivery Reviews)」18巻:pp. 395-425、2006年
【非特許文献2】ステッカー等(Stecker et al.)著「アメリカン ジャーナル オブ エレクトロニューロダイアグノスティック テクノロジー(American Journal of Electroneurodiagnostic Technology)」43巻:pp. 315-342、2006年
【非特許文献3】モリス等(Morris et al.)著「ケア クリニックス(Care Clinics)」23巻:pp. 1-20、2007年
【非特許文献4】ミクラブシック等(Miklavcic et al.)著「組織の電気的特徴(Electrical Properties of Tissues)」、ワイリー社生体医用工学百科事典(Wiley Encyclopedia of Biomedical Engineering)、2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
NMESシステムとその使用方法を改良して、現在のNMESシステムと使用方法の欠点を克服する必要がある。例えば、以下のことを1つ以上実行できるよう改良したNMESシステムが必要である:筋肉組織、特に深層筋肉組織への刺激エネルギー伝達をより効率的及び効果的に行うこと;動くことのできない重症患者に安全且つ効果的に使用できること;浮腫患者及び非浮腫患者を効果的且つ安全に治療するよう使用できること。経皮的エネルギー供与と表面冷却及び/又は温度勾配を組み合わせる既存の治療は、NMESで使用する最適な構成ではないと共に、筋収縮を高めることとは無関係の目的に合わせたものであるため、所望の目的を達成しない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一態様は、筋肉組織を電気的に刺激する方法である。該方法は、被刺激筋肉組織付近で対象者に第1電極及び第2電極を配置することと、一箇所以上の浅層組織のインピーダンスが、被刺激筋肉組織のインピーダンスに比べて高くなるよう、一箇所以上の浅層組織の電気インピーダンスを上昇させることと、第1電極から第2電極へと筋肉組織を通して電気エネルギーを供給することと、を含み、一箇所以上の浅層組織の電気インピーダンスを上昇させることにより、供給する電気エネルギーのうちのより大きな割合のエネルギーで筋肉組織を刺激し、これにより筋収縮を増大させる。
【0020】
一部実施形態において、一箇所以上の浅層組織の電気インピーダンスを上昇させることが、第1電極及び第2電極を配置した浅層組織の電気インピーダンスを実質的に上昇させずに、第1電極と第2電極の間の浅層組織の電気インピーダンスを上昇させることを含む。一部実施形態において、前記方法は第1電極及び第2電極を少なくとも部分的に囲む一箇所以上の浅層組織の電気インピーダンスを上昇させることを含む。一部実施形態において、前記方法は第1電極と第2電極を配置した位置よりも、これら電極同士の間の領域における一箇所以上の浅層組織の温度を大幅に低下させることを含む。一部実施形態において、前記方法は第1電極と第2電極の間に配置した冷却要素を作動させることを含む。
【0021】
一部実施形態において、配置するステップは四頭筋付近に第1電極と第2電極を配置することを含む。
【0022】
一部実施形態において、一箇所以上の浅層組織の電気的インピーンダンスを上昇させることは、第1電極と第2電極の間で対象者に配置した冷却要素を作動させることを含む。冷却要素を作動させることは、皮膚表面に冷湿布を貼ること、第1電極と第2電極の間に配置した冷却要素を通るよう流体をポンプで送ること、又は第1電極と第2電極の間に配置した熱電素子を作動させること、又はそれらの組み合わせを含むことができる。冷却要素を作動させることは一箇所以上の浅層組織を連続的に冷却すること、又は冷却要素を断続的に作動させることを含むことができる。冷却要素を作動させることで、一箇所以上の浅層組織からその下の深層組織へと温度勾配が生じるが、この温度勾配において一箇所以上の浅層組織の温度が最低の温度である。前記方法は電気エネルギーの供給を停止する前に、冷却要素の作動を停止させることを含むことができる。冷却要素を作動させることは、一箇所以上の浅層組織を約30°Fから約40°Fの範囲の温度に冷却することを含むことができる。
【0023】
一部実施形態において、筋肉組織を通して電気エネルギーを供給することは、筋肉組織の温度を約40℃より高く上昇させずに、筋肉組織を通して電気エネルギーを供給することを含む。
【0024】
一部実施形態において、電気エネルギーを供給することは、約10kHz以下の周波数を含むスペクトルを有するパルスを用いてエネルギーを供給することを含む。
【0025】
一部実施形態において、電気エネルギーを供給することは約100から約400マイクロ秒のパルス幅を有するパルスを用いてエネルギーを供給することを含む。
【0026】
一部実施形態において、電気エネルギーを供給することは、約30Hzから約50Hzの繰返し率で一連のパルスを供給することによりエネルギーを供給することを含む。
【0027】
一部実施形態において、電気エネルギーを供給することは、オン時間とオフ時間を交互に繰り返してエネルギーを供給することを含む。
【0028】
一部実施形態において、対象者に第1電極と第2電極を配置することは、肥満又は浮腫の対象者に第1電極と第2電極を配置することを含む。
【0029】
本発明の一態様は、筋肉組織を刺激する方法である。該方法は、被刺激筋肉付近の一箇所以上の浅層組織のインピーダンスを上昇させることと、少なくとも2つの刺激電極により被刺激筋肉付近の組織に電気エネルギーを供給することと、を含み、供給するエネルギーのうち一定の割合のエネルギーで筋肉組織を刺激し、一定の割合のエネルギーで筋肉組織を刺激せず、一箇所以上の浅層組織のインピーダンスを上昇させることにより、一箇所以上の浅層組織のインピーダンスを上昇させなかった場合に比べて、供給するエネルギーのうち、筋肉組織を刺激するエネルギーの割合が大きくなる。
【0030】
一部実施形態において、一箇所以上の浅層組織のインピーダンスを上昇させることが、2つの表面電極同士の間の領域において、一箇所以上の浅層組織の温度を低下させることを含む。
【0031】
一部実施形態において、電気エネルギーを供給することは四頭筋に電気エネルギーを供給することを含む。
【0032】
一部実施形態において、一箇所以上の浅層組織のインピーダンスを上昇させることは、少なくとも2つの表面電極同士の間に配置した冷却要素を作動させることを含む。冷却要素を作動させることは、筋肉刺激治療が継続している間、冷却要素を一定の温度に維持すること、筋肉刺激治療を通じて冷却要素の温度を低下させること、筋肉刺激治療を通じて冷却要素を断続的に作動させること、及び/又は一定の時間の後に冷却要素の動作を停止させることを含むことができる。冷却要素の動作を停止させた後、電気エネルギーを供給することができる。
【0033】
一部実施形態において、組織に電気エネルギーを供給することは肥満又は浮腫の対象者の組織に電気エネルギーを供給することを含む。
【0034】
本発明の一態様は、対象者における筋肉刺激を増大する方法である。該方法は、一箇所以上の浅層組織の温度が深層筋肉組織の温度より低くなるように、電気刺激を行う筋肉組織付近の一箇所以上の浅層組織を冷却することと、冷却ステップによって実質的に冷却しない浅層組織に電気刺激を行うこととを含み、一箇所以上の浅層組織を冷却することにより、冷却ステップを行わない場合の筋収縮量に比べて、筋収縮量が増加する。
【0035】
一部実施形態では、一箇所以上の浅層組織を冷却することは、電気エネルギーを付与する領域とは異なる位置で対象者に冷却要素を配置することを含み、該方法は冷却要素を作動させることをさらに含む。
【0036】
一部実施形態では、電気刺激を付与することは、少なくとも2つの表面電極同士の間に電気刺激を付与することを含む。
【0037】
一部実施形態では、電気刺激を付与することは、四頭筋の筋収縮量を増大させることを含む。
【0038】
一部実施形態において、筋肉組織付近で一箇所以上の浅層組織を冷却することは、肥満又は浮腫の対象者の一箇所以上の浅層組織を冷却することを含む。
【0039】
本発明の一態様は、筋肉刺激システムである。該システムは、複数の電極を含む刺激パッドであって、筋肉組織に刺激エネルギーを供給する位置に電極がくるようにして患者に配置するよう構成した、前記刺激パッドと;複数の電極同士の間の、電極を配置した位置とは異なる位置で患者に配置するよう構成した冷却要素であって、一箇所以上の浅層組織を冷却することにより、該一箇所以上の浅層組織のインピーダンスを上昇させるよう構成した、前記冷却要素と;複数の電極と通信し、電極に刺激エネルギーを供給して、筋肉組織の収縮を刺激するよう構成した刺激制御手段と;を含む。
【0040】
一部実施形態では、電極を配置した場所の浅層組織を実質的に冷却しないよう冷却要素を構成する。
【0041】
一部実施形態では、浅層の電流路を実質的になくすよう前記冷却要素を構成する。
【0042】
一部実施形態において、刺激パッドは冷却要素を含む
【0043】
一部実施形態では、冷却要素は一定の幅を有し、複数の電極は一定の幅に跨っているが、冷却要素の幅は複数の電極の跨る幅より大きい。冷却要素の幅は、冷却要素周辺の浅層組織におけるアーク放電を実質的に防止するよう構成することができる。
【0044】
一部実施形態において、前記システムは冷却要素の作動を制御するよう構成した冷却要素制御手段をさらに含む。冷却要素制御手段は冷却要素と流体連結状態とし、冷却要素を通る流体の流れを制御するよう構成することができる。冷却要素制御手段は、冷却要素を通るように流体を送り出すよう構成したポンプを含むことができる。冷却要素は冷却要素制御手段と流体連結状態にある内部管を含むことができる。冷却要素制御手段は熱電素子を制御するよう構成することができる。
【0045】
本発明の一態様は筋肉刺激システムである。該システムは:対象者に配置するよう構成した複数の刺激電極と;冷却要素制御手段と通信する冷却要素であって、一箇所以上の浅層組織の温度を低下させるよう冷却要素を制御するように冷却要素制御手段を構成し、複数の刺激電極を配置しない位置で対象者に配置されるよう冷却要素を構成した、前記冷却要素と;複数の刺激電極と通信する刺激制御手段と;を含む。
【0046】
一部実施形態において、冷却要素制御手段は、冷却要素の温度を制御するよう構成する。一部実施形態において、冷却要素制御手段は冷却要素を略一定の温度に維持するよう構成し、一方、一部実施形態において、冷却要素制御手段は、冷却要素を作動させた後に冷却要素の温度を低下させるよう構成する。
【0047】
一部実施形態では、冷却要素制御手段は冷却要素を作動させるよう構成する。冷却要素制御手段は、刺激制御手段が複数の電極に電気刺激を供給する間、冷却要素の動作を停止させる構成としてもよい。冷却要素制御手段は、冷却要素を断続的に作動させる構成としてもよい。
【0048】
一部実施形態において、冷却要素は複数の刺激電極同士の間に配置できる大きさ及び形状とし、複数の電極を少なくとも部分的に囲むように配置できる大きさ及び形状としてもよい。
【0049】
一部実施形態では、複数の電極を刺激パッドに一体化する。
【0050】
一部実施形態では、冷却要素を刺激パッドに一体化する。
【0051】
一部実施形態では、冷却要素は冷却要素制御手段と流体連結状態にある内部管を有し、冷却要素制御手段は冷却要素を通るよう流体を送り出すポンプを含む。
【0052】
一部実施形態において、制御要素は熱電素子であり、冷却要素制御手段は熱電素子を制御するよう構成する。
【0053】
本明細書で取り上げる全ての刊行物及び特許出願は、参照によってここに援用するが、これらについては具体的且つ個々に参照によって本明細書に引用したものとする。
【図面の簡単な説明】
【0054】
発明の原理を用いた例示的な実施形態を示す以下の詳細な説明と添付の図面を参照しながら、本発明の特徴及び利点について記載する。
【0055】
【図1】組織を通る電流に冷却要素が如何に影響を与えるかを示す図である。
【図2】例示的なNMESシステムを示す図である。
【図3】浅層組織の冷却が、組織を通る電流路に及ぼす影響を示す図である。
【図4】例示的な冷却要素を示す図である。
【図5】離間した電極と冷却要素を示す図である。
【図6】流体用の管を含む冷却要素を備えた刺激パッドを示す図である。
【図7】刺激パッドと別個の冷却要素を示す図である。
【図8】離間した電極と流体用の管を備える冷却要素を示す図である。
【図9】氷槽を組み込んだ刺激パッドを示す図である。
【図10A】化学的冷却パックを示す図である。
【図10B】化学的冷却パックを示す図である。
【図10C】化学的冷却パックを示す図である。
【図11】NMES治療システムを使用する例示的方法を示す図である。
【図12A】複数の冷却ゾーンを有する例示的冷却要素を示す図である。
【図12B】複数の冷却ゾーンを有する例示的冷却要素を示す図である。
【図12C】複数の冷却ゾーンを有する例示的冷却要素を示す図である。
【図13】表面電極上に冷却要素を配置した筋肉刺激システムを示す図である。
【図14A】冷却要素を刺激領域の所定の位置に固定した実施形態を示す図である。
【図14B】冷却要素を刺激領域の所定の位置に固定した実施形態を示す図である。
【図14C】冷却要素を刺激領域の所定の位置に固定した実施形態を示す図である。
【図15】下肢の後部に任意の加熱要素を配置した一実施形態を示す図である。
【図16A】超音波振動子を有する実施形態を示す図である。
【図16B】超音波振動子を有する実施形態を示す図である。
【図16C】超音波振動子を有する実施形態を示す図である。
【図17】被験者の実験データを示す図である。
【図18】重症患者の実験による筋肉刺激データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明は筋肉組織、一部実施形態では深層筋肉組織に電気エネルギーをより効率よく伝達することにより、NMES治療を改良するシステム及び方法を提供する。ここに記載する改良したNMES治療は現在のNMES治療に置き換えて使用することができ、また浮腫患者の治療ばかりでなく非浮腫患者の治療にも使用することができ、動くことのできない重症患者の治療にも有益であり得る。一般に本発明は筋肉組織、場合によっては深層の筋肉組織へと電気エネルギーを誘導するエネルギー誘導域と組み合わせて行う電気的筋肉刺激に関する。
【0057】
本明細書におけるNMESの用途では、ヒトの皮膚に固定した表面電極によって経皮的に筋肉組織に電気エネルギーを付与する。本発明は、患者に供給する電気エネルギーの量を増やすことなく、筋肉に供給する電気エネルギーの量を増大する方法を提供し得る。即ち、対象者に供給する電気エネルギーのうちのより大きい割合のエネルギーを筋肉組織に供給することで、より効率的に筋肉刺激を行う。筋肉組織へとエネルギーを誘導するエネルギー誘導域を作り出すことによって、より大きい割合の電気エネルギーを筋肉組織に供給する。
【0058】
図1Aから図1Dは、NMESを使用した筋肉刺激の効率を高める例示的な実施形態の側面図を示す。図1Aは、2つの表面電極101を取り付けた状態の、概して健康な患者の四肢102の側面断面図を示す。電極101は刺激手段(図示せず)と通信するが、該刺激手段は、電極に電流を流すことにより患者の組織に電流を供給するよう構成する。図1Aは電流が流れる方向を示すと共に、四肢102の所与の組織領域に達するエネルギーの割合を示す。図示するように、四肢102に入る電流のうち、深層の筋肉組織103に到達する電流は、相対的にごくわずかでしかない(10%と示されている)。
【0059】
図1Bは図1Aで示す四肢102を示しているが、この図は、刺激電極101同士の間の皮膚表面と接触させて配置した表面冷却要素105を含む。冷却要素105は、一般に筋肉組織へとより深くエネルギーを誘導するエネルギー誘導域を生成する。本実施形態では、冷却要素105は皮膚表面から皮膚表面下の位置へと温度勾配を生成する。皮膚表面は、温度勾配の低温端と考えることができる。筋肉刺激手段の使用する電気エネルギーの周波数(一般に約10kHz未満である)は一般に、切除又は美容の場合に使用する周波数(一般にRFの場合は約300kHzより大きく、マイクロ波の場合は約3GHzより大きい)より小さいため、典型的には特に深層の組織領域において、組織の有意な加熱を生じない。さらに、筋肉刺激手段を使用した場合には、約40℃より高い組織温度を生じない(多くの身体に関する規制及び管理ガイドラインに従ったものである−前掲のプラウスニッツの2006年の文献を参照されたい)ことが典型的である。組織温度が40℃未満である場合、組織インピーダンスにおける温度の影響は一般に、切除及び美容治療中により高い温度を使用した際に見られる、組織インピーダンスが約2%/℃上昇するという影響とは逆となる(ミクラブシック等(Miklavcic et al.)著「組織の電気的特徴(Electrical Properties of Tissues)」、ワイリー社の生体医用工学百科事典2006年を参照されたい。なお、この文献を参照によりここに援用する)。冷却要素105を使用することにより皮膚表面に最も近い組織を冷却すると、組織において3次元的温度勾配が生じるが、本質的には、組織を冷却する程度に比例して組織のインピーダンスが上昇するという3次元的なインピーダンス勾配が生じるものである。従って、体温インピーダンスレベルからの組織インピーダンスの上昇量は、冷却要素105と組織との距離に少なくとも部分的に依存する。冷却要素105を配置した表面付近の組織が最も冷却されるため、体温インピーダンスレベルに比して最も大きくインピーダンスが上昇する。筋肉組織103付近の深さにおけるインピーダンスは、冷却要素105直下の組織のインピーダンスの上昇に比べて(仮に上昇したとしても)わずかなものである。従って表面冷却と組み合わせて行うNMESは、上述の切除又は美容治療等のより高い温度を使用する場合に浅層冷却が及ぼす影響とは逆の影響を及ぼす。
【0060】
一部実施形態では、冷却要素は冷却領域における皮膚温度を約30°Fから約40°Fの範囲に低下させる。この範囲に表面温度を維持すると、局所的な組織インピーダンスを変化させるのに十分な温度勾配が生じ、NMESを行っている間のエネルギー伝達率が高まる。従って、所与の量の刺激エネルギーで達成できる筋収縮の程度を増大させることができる。代替的に、刺激領域及びNMES治療の治療目標における組織の局所的な解剖学的特性、生理学的特性、そして電気的特性に依存して、30°Fより低い表面温度や40°Fより高い表面温度を使用して、NMESの効率を上げることもできる。
【0061】
示すように、筋肉組織を通って流れる電気エネルギーの割合は(冷却要素105の作り出すエネルギー誘導域により)図1Aより図1Bの方が大きいが、浅層組織を流れる電気エネルギーは図1Aより図1Bの方が小さい。筋肉組織を刺激する、又は筋肉組織を支配する神経を刺激するエネルギーの量を増やすと、筋収縮の量が増える。従って筋肉は、図1Aより図1Bの方が大幅に収縮する。図1Bは、身体に流す電流のうち大きな割合の電流が組織の経路に沿って流れて、筋収縮を生じる又は筋収縮を引き起こすよう、刺激電極同士の間の領域における浅層組織と筋肉組織の相対的インピーダンスを変更する概念を示している。
【0062】
図1Cは大幅な組織膨張で浮腫を起こした四肢104の断面図を示す。図1A及び図1Bに示す実施形態と同様に四肢104に電極を配置する。図示するように、皮膚表面と筋肉103との距離は、図1Aに示す概して健康な四肢における皮膚表面と筋肉との距離より大きい。さらに、イオン流体が過剰なことによる短絡効果が影響して、深層の筋肉組織に到達する電流は(あるとしても)非常に少ない。図示するように、四肢に供給される電流のうち筋肉に到達するのは1%のみである。図1Dは、身体に電流を供給した際に電流が組織内の経路に沿って流れる割合に対して、皮膚表面に配置した冷却要素105が及ぼす影響を、図1Cと対比して示す図である。筋収縮の量は図1Cよりも図1Dの方が大きい。図1Aから図1Dに示す量に関する情報は全て例示の目的で示したものあり、四肢表面に使用するNMES装置の実際の性能を必ずしも反映したものではない。
【0063】
図1Eは、下肢150に冷却要素を約7分間配置した後、下肢150の一部の皮膚における2次元の温度勾配を示す。冷却要素は下肢の上に略水平に配置するが、冷却要素の幅は概してその高さより大きく、その形状は図3Bに示す冷却要素204の形状に近い。冷却要素は、実質的に図1Eに参照番号140として示す領域に配置した。下肢の上に配置した電極152も図示している。冷却要素を取り外した後、下肢の皮膚の温度を測定した。示すゾーンの大きさはおおよそのものであり、ゾーン140では皮膚温度が約37°Fであった。ゾーン142の温度は約42°Fであった。ゾーン144の皮膚温度は57°F、ゾーン146の皮膚温度は約72°Fであった。ゾーン148の皮膚温度は約85°F、ゾーン150の皮膚温度は約87°Fであった。図1Eは、略矩形の冷却要素を電極同士の間に水平に配置した後の例示的な温度勾配を示す。代替的な形状を有する冷却要素も同様に異なる温度勾配を作り出し、場合によっては電極により近い皮膚を、図1Eに関して述べたもの以上に冷却する。例えば、電極152のうちの1つ以上が領域148、146、144に或る場合や、一部実施形態ではゾーン142又は140にある場合もある。図1Eには示さないが、冷却要素は下肢の深さに沿っても温度勾配を作り出していることを理解されたい。
【0064】
本明細書に示すNMES治療システム及び方法に関して、体内にエネルギーが出入りする解剖学的位置(即ち、皮膚電極を配置した電極に近接する皮膚部分)には冷却効果が略全く又はほとんど及ばないため、これらの領域におけるインピーダンスの変化は最小又は無視できる値である。従って、例えば表面電極に直接接した皮膚においてはインピーダンスがほぼ上昇しないため、体内外へのエネルギー供給には有意な変化がない。また、非浅層筋肉へのエネルギー伝達を促す正確な位置で冷却を行うため、全経路のインピーダンスは、より大きい解剖学的領域(即ち電極の位置を含む領域)にわたって皮膚を冷却する場合に比べて上昇が小さい。さらに、表面電極に過度の熱が生じないため、ヒドロゲル層の乾燥を早めることがない。
【0065】
図1B及び図1Dはエネルギーが体内に出入りする場所において皮膚温度又は組織のインピーダンスを実質的に上昇させない例示的実施形態を示す。図1B及び図1Dで示すように、皮膚の電極配置位置に冷却効果が及ぶことを実質的に避ける皮膚上の位置に、冷却要素を配置する。皮膚の電極を取り付けた位置は略全く又はほとんど冷却されないため、その位置におけるインピーダンスの変化は無視できる程度である。電極101は、冷却要素105を配置した位置とは異なる皮膚位置に配置するよう示すが、特に図1B及び図1Dでは、冷却要素105は電極101同士の間に配置している。冷却要素を電極同士の間に置くことによって、体内外へのエネルギー伝達には実質的に影響がない。
【0066】
ここで示すシステムとその使用方法は、体内外へエネルギーが出入りする位置における皮膚又は浅層組織のインピーダンスを著しく増大しないと述べているが、代替的実施形態ではエネルギーが体内外へ出入りする組織の温度を低下させることもできる。従ってこの領域の組織インピーダンスは上昇し、この組織を介したエネルギー伝達は、エネルギーが体内外へ出入りする場所で冷却を行わない実施形態ほど効率的に行われない。例えば図1B及び図1Dにおいて、1つ又は両方の電極101の範囲に冷却要素が及ぶようにしてもよい。
【0067】
図1C及び図1Dで示すように、組織の冷却をNMESと併用することは、本明細書で述べた「短絡」状態のような特性を示す組織を有し得る浮腫患者において、特に有用であり得る。ただし、本発明のシステムは、健常者又は浮腫患者ではない人に対しても多大な価値をもたらすことができる。該システムではより効率的な筋肉刺激が可能となるため、一定の筋収縮量を生成するために身体に供給するエネルギーの必要量が減少する。必要なエネルギー量が減少することで、一つには表在神経に到達する電流の振幅を減少する(即ち「しびれ感」といった不快な症状を減らす)ことにより、NMES治療の患者の耐性を増すことができる。このようにエネルギー量が減ることにより、火傷、神経及び/又は筋肉損傷、並びにその他潜在的合併症のリスクも減る。本文に記載する治療はまた、(体格指数で定義し得る)過体重又は肥満の人、又は有意の筋収縮を起こすために大きい刺激エネルギー振幅を必要とするその他の人に対して、NMES治療を行う場合に非常に有用であり得る。一般にこれらの人々に対しては、筋肉組織の浅層に過度の脂肪が存在することによる容量効果に対応するべく、多大な刺激エネルギーが必要である。かかる人々に対しては、最小の筋収縮を誘発する場合でさえ、身体に関する規制及び/又は監督的安全基準で認められる最高のエネルギー振幅が必要となる場合が多い。これらの人々に対しては、エネルギー振幅をさらに増大させるという選択ができないため、供給するエネルギーをより効率的に使用することが、効果的な筋収縮を誘発するためにも不可欠である。さらに、患者間での性能のばらつきを減らすことにより、救命医療、高度介護施設、長期リハビリケア施設において、ここに記載する治療をより幅広く取り入れることができる。
【0068】
図2は、刺激制御手段122、表面電極124、及び冷却要素126を含むNMES治療システム120の例示的な概略図を示す。刺激制御手段122は、刺激エネルギーパルスを生成して表面電極124に供給し、表面電極124は身体の内外へと電気エネルギーを伝える。冷却要素126は、表面電極124同士の間の領域及び/又は電極124を囲む領域において体に熱エネルギーを付与するよう構成する。制御手段120は、標準的なケーブル接続、又はブルートゥース、WiFi、RF、赤外線、光学式、音響式等のワイヤレス接続、又はその他適切なタイプの接続を通して、電気信号を送受信するのに適した方法で、表面電極124と通信する。一部実施形態では、制御手段は冷却要素126と通信する。制御手段122は電極124とは別個の筐体であるため、電極を配置した治療中の人物から一定の距離に配置することができる。代替的な実施形態では、刺激電極及び/又は冷却要素を含む筐体ユニットに制御手段を統合してもよい。一部実施形態では、電極のレイアウト及び構成を身体の特定の領域に対して最適化するようカスタマイズした刺激パッドに刺激電極を収容する。
【0069】
概して図1及び図2に示すNMES治療システムを用いる例示的な方法について説明する。ここに記載するシステムを用いる方法は、以下のステップのうちの1つ以上を含み、治療中の任意の適切な時間にそれらステップを実行し得る。以下のステップの順序は、一切限定しない。例示的方法は、皮膚電極に生じる熱の温度の上昇を最小化しながら、深層の筋肉組織に電気エネルギーを一層効率よく伝達する。少なくとも2つの電極を皮膚表面の被刺激筋肉付近に配置する。刺激電極同士の間の領域及び/又は刺激電極を囲む領域における皮膚組織には、冷却エネルギーを付与する。この冷却エネルギーの付与により温度勾配が生じるが、この温度勾配では、深層の組織(例えば筋肉)の温度がその通常温度から低下するよりも、皮膚と浅層組織の温度がその通常温度から大幅に低下する。刺激エネルギーを表面電極に付与することによって、刺激エネルギーが対象者を通して付与される。刺激エネルギーは、電極と通信する刺激制御手段が生成して供給する。
【0070】
治療方法によっては、表面冷却と電気刺激を同時に使用する必要がないものもある。例えば、浅層組織をまず所定の温度だけ又は所定時間の間予め冷却し、その後熱刺激を取り外す。熱刺激を取り外すと、温度勾配は所定の割合で減衰し始めるであろう。実験の結果、身体の部位が復温する速度は比較的ゆっくりであり、例えば大腿部のような大きい身体部位が冷却前の温度分布に戻るには、約30分以上もの時間がかかり得ることが分かっている。復温中は、同時に冷却を行わなくともNMESの性能は或る程度高くなる。本発明の方法のこの特定の実施形態は、温度勾配を筋肉刺激と組み合わせる利点に関して周知の治療が如何に認識していないか示す更なる例である。
【0071】
一部の方法では、冷却を断続的に実行する。これらの実施形態では、表面冷却にオン期間とオフ期間がある。例えば、60分のNMESセッションの間に、冷却エネルギーを10分ごとに5分間付与することができる。断続的に冷却を行う利点は、組織インピーダンスの有効な変化を生じるのに十分な浅層組織の温度低下が生じた後で表面冷却を停止することで、NMES治療を受ける人物が熱による刺激を不快に、又は耐え難く、又は危険に感じる程度にまで皮膚温度が冷却されるのを防止できることである。
【0072】
一般に、表面組織を冷却して、表面組織と浅層組織のインピーダンスを上昇させると、身体に入る電気エネルギーのうちのより大きい割合のエネルギーが、非浅層筋肉組織(例えば深層筋肉)に行くことになる。従って1つの目的は、より深い経路にそって流れるエネルギーの量を増やし、狭い経路(例えば表面に近い経路)に沿って流れるエネルギーの量を減らすことである。しかし、電流が或る電極から別の電極に流れる際には、皮膚の小さな領域に冷却効果が限定された場合や、冷却による皮膚表面の温度の低下が適切でなかった場合には、皮膚表面に非常に近い場所に沿って或いは近い場所に、エネルギーの多く(又は所望のエネルギーのより大きい割合のエネルギー)が流れる可能性がある。図3Aは、NMES治療中に2つの表面電極同士の間に存在する低インピーダンスの表在電流路の上面図を示すことによって、上記に関する一例を示す。図3Aでは、刺激領域201の皮膚206の表面に電極202を配置する。エネルギー路203の分布は、通常の状態で電極202同士の間に流れる際に電流が採り得る経路を示している。図3Bでは、冷却要素204を電極202同士の間に配置する。冷却要素204は、電極204の跨る幅“EW”に近い幅“CW”を有する。冷却要素204は、低インピーダンスの表面エネルギー路の多くを排除するが、一部は残ったままであり得る。図3Bは、冷却要素104からの冷却効果が浅層組織を十分に冷却せず、インピーダンスの上昇が十分でないため、低インピーダンスの浅層組織路を排除しない場所に存在する電流路208を示している。
より冷たい組織領域を避けるように電流路208は弧をなしている。図3Cは、電極の跨る幅“EW”より広い、冷却要素205の幅“CW”を示している。浅層冷却の領域は、刺激電極の分布幅より(横断面に沿って)広い。幅“CW”は大きい領域にわたって組織の電気インピーダンスを上昇させ、低インピーダンスの浅層エネルギー路の略すべてを排除する。図3Cでは、電流路は皮膚表面下に存在する(図示せず)。図3Cでは、冷却によってインピーダンスが変化する領域が十分であるため、組織の冷却領域を避けて弧を描く浅層低インピーダンス電気路の存在が最小となる又はなくなる。
【0073】
従って冷却要素の大きさ、形状、構成等は、刺激領域における温度勾配と浅層組織インピーダンスの変化の度合いに影響することができる。
【0074】
ただし一部実施形態では、冷却する組織領域の幅は、電極の分布幅と同様の幅である場合や、それ未満の幅である場合さえある。冷却する組織領域の幅は、NMES治療セッションの組織の局所的電気的特徴及び/又は治療目的に依存し得る。
【0075】
図4Aから図4Dは、電極同士の間で電極を少なくとも部分的に囲むように配置した例示的冷却要素の代替的構成を示す。これらの図では、電極の参照番号をそれぞれ212、222、232、及び242とする。図4Aでは、冷却要素214は略H形状として皮膚210上に配置し、低インピーダンスの表面電気路を最小化する。図4Bでは、2つのU字を一体化したような形状の冷却要素224を、皮膚220上の電極224同士の間で電極224を部分的に囲むように配置する。代替的に、図4Bで示す構成において冷却要素224は皮膚上に配置した2つの別個の冷却要素であってもよい。図4Cでは、冷却要素324は略8の字形状を有し、電極232同士の間で電極232を囲むよう皮膚230上に配置する。代替的に、図4Cに示す構成において冷却要素234は皮膚上に配置した2つのO字形状としてもよい。図4Dで示す冷却要素は、図4Aで示す「H形状」であるが、電極242同士の間の皮膚240上に3つの別個の冷却要素244、246、248を配置したものである。冷却要素の代替的な構成、形状、及び大きさを使用してもよい。
【0076】
一部実施形態では、システムは、別個の要素であると共に互いに連結しない複数の電極と1つの冷却要素を含む。これらの実施形態では、電極と冷却要素は別個の要素として皮膚に固定する。図3及び図4はかかる実施形態を示す。電極自体を1つ以上の他の電極から分離させてもよい。図5は、皮膚260上に配置した複数の離散電極264を示す。電極264は、リード線によって制御手段262と電気通信する。冷却要素264は電極264に連結しない。冷却要素に連結しない及び/又は相互に連結させない電極は、以下に述べるように予め製造した刺激パッドを使用できない病態患者又はその他の医療介入を受けている患者に有用であり得る。例えば、(傷のある皮膚は一般にNMES治療の禁忌ではないが、)皮膚の傷領域268を避けるようにして電極264と冷却要素266を皮膚260上に配置できる。離散した表面電極と冷却要素(1つ又は複数)を使用することで、NMESの操作者は刺激システム要素を、個人のニーズに合わせた安全で効果的な位置に配置することができる。
【0077】
一部実施形態では、1つ以上の電極を単一の筐体又はパッド(本文中パッチと称することもある)内で連結し、一部実施形態では1つ以上の電極を単一の筐体又はパッド内で1つ以上の冷却要素と共に収容する。一部実施形態において、システムはパッド上に表面電極を所定の構成で配置するようカスタマイズした刺激パッドを含む。刺激パッド内には電極を任意の数で含むことができる。カスタマイズする刺激パッドは冷却要素を組み込むよう構成してもよく、又は着脱可能な冷却要素の取付け、接続、又は刺激パッドとの併用を容易に行えるよう構成してもよい。これらの実施形態は、NMESの操作者が、深層筋肉組織へのエネルギー供給効率の向上に最適な位置で表面冷却を行うことに役立つ。個別の電極をパッドから取り外すことができるように、刺激パッドを構成してもよい。
【0078】
一部実施形態において、刺激パッドは、皮膚との密着を容易に維持するよう粘着性のヒドロゲルを背面に施した、薄い可撓性の筐体を含む。ヒドロゲルを背面に施すことで、刺激電極と人体との間の電気エネルギー及び信号の結合が強まる。
【0079】
刺激パッドを備えるシステムの1つの例示的な実施形態では、刺激電極の配列を設定できる。任意の所与の時間に配列中の一部の電極のみが、NMES治療を受ける人物にエネルギーを動的に供給するよう、配列を構成することができる。しかし、エネルギー供給を行わない電極については、制御手段に関連情報(例えばこの電極と配列中の第2の電極との間の電気インピーダンス)を伝えるよう構成してもよく、このことについて以下により詳細に記載する。
【0080】
図6は、下肢401の大腿領域に配置した刺激パッドを含むNMESシステムの例示的な実施形態を示す。表面電極403と冷却要素404を刺激パッド402に一体化させているが、刺激パッドは熱伝導性の柔軟で可撓性のパッドである。制御手段405は、ワイヤ接続を介して刺激電極と通信し、下肢に電気エネルギーを供給する。冷却要素404はパッド内に管408を含み、該管はポンプ406と流体連結状態にある。ポンプ406(例えば蠕動ポンプ)は流入管及び流出管を介して冷却要素の管に接続しており、ポンプ406を使用して水、生理食塩水、空気等の冷却した流体を、管を通して循環させる。流体は冷却要素を通るように連続的又は断続的にポンプで送ることができる。3つの刺激電極を示しているが、2つ以上の任意の数の電極をパッド内に含むことができる。下肢の筋肉群以外の筋肉群についても、ここで示すシステム及び方法を用いて刺激することができる。
【0081】
図7は、システムが冷却要素と刺激パッドを含むが、冷却要素を刺激パッドに収容しない例示的実施形態を示す。本実施形態では冷却パッドは別個の要素であり、刺激パッド又は刺激電極とは別に人物に配置する。刺激パッド432は、刺激電極424を含む可撓性の筐体を含む。電極424は、刺激制御手段422と電気的に通信する。刺激パッド432に取り付けない冷却要素426は、ポンプ428と流体連結状態にある管430を有する。ポンプ428は、限定はしないが例えば蠕動ポンプであり得る。示すように、電極424同士の間に冷却要素426を配置することにより、浅層組織が冷却され、ここで示すように温度勾配が生じる。
【0082】
図8は電極同士が互いに離散していると共に、冷却要素からも離散した例示的実施形態を示す。下肢701上に刺激電極702を単独で配置する(ただしシステムは他の身体部位で使用してもよい)。冷却要素703はポンプ705と流体連結状態にある中空の管709を含む。冷却要素703を使用して、刺激電極702同士の間の領域で表面冷却を行う。ポンプは、冷却した流体を連続的若しくは非連続的に管709を通るよう送出し、流体貯蔵部を含むことができる。
【0083】
図9は、刺激パッドに組み込んだ氷槽を含むNMES治療システムの代替的実施形態を示す。該システムは、流体密閉状態であると共に可撓性の氷水浴804を含むパッド802を含み、該氷水浴804は下肢801の一部の皮膚と接触している。制御手段805は刺激電極803とワイヤ接続し、該電極803はパッド802に組み込まれている。可撓性の氷槽と表面電極は両方とも刺激パッド802の一部であり、刺激パッド802はシステムの2つの要素の相対的位置を最適な構成に固定する。代替的に氷槽をそれ自体のパッドに収容し、電極を別のパッドに収容することもできる。氷槽を使用することによって、患者から氷に熱が移行する際に時間とともに冷却剤(即ち氷)の温度が自然に低下する。従って氷は時間依存性の冷却機構として作用し、「しびれる」感覚を低減するように作用する。
【0084】
図10Aから図10Cは、化学的冷却パックをNMES治療と組み合わせるための作動機構の例示的実施形態を示す。図10Aの(1)では、化学的冷却パック900を握りつぶして内部の管を破裂させ、化学物質を混合し、冷熱源とする。図10Aの(2)では、刺激電極902同士の間の筋肉刺激を行う領域に冷熱源901を配置する。図10Bにおいて、刺激パッド906は刺激電極902、化学的冷却パック904、並びにストラップ及びフック機構905を含む。皮膚の所望の位置に冷却パックを置いた後、支点907でストラップをしっかりと引っ張る。ストラップを引っ張ることで内部の管に力がかかり、内部管が破裂して化学物質が混ざり合い、冷熱源を作り出す。次いで、例えばベルクロストラップ、スナップ、又は他の固定機構を用いて、ストラップをそれ自体に固定する。その後冷熱源を所定の場所に保持する。図10Cにおいて、刺激パッドは制御手段908と電気通信する。化学的冷却パックは断面図で示している。制御手段908からのワイヤ909は冷却パックの外側のコンパートメント910まで及び、冷却パックの内部管911に固定した抵抗加熱要素912に接続する。制御手段908が、所望の時間にワイヤ909を介して抵抗加熱要素912に電気信号を送ると、内部管の一部が溶融し、化学物質が混ざり合って冷熱源を作り出し、これを皮膚に適用することができる。
【0085】
代替的実施形態は、化学反応機構を使用して浅層冷却を行う。例えば、刺激パッドに開放した中心部分を備えて、刺激電極同士の間の表面を露出させる。刺激パッドを配置した後(又は、一部実施形態では離散電極を配置した後)、化学薬品を露出面に塗布して浅層組織の温度を低下させる。化学薬品は、露出面に噴射しても、吹き付けてもよい。代替的に、化学反応機構を別個の要素(例えば瞬間冷却パック)の一部として、これを浅層組織に接触させて配置してもよい。
【0086】
一部実施形態では、冷却要素はペルティエ素子等の熱電素子であり得る。冷却に使用するペルティエ素子が知られている。上記のように、熱電素子を使用して組織を冷却することができる。
【0087】
一部実施形態では、冷却機構はガス膨張の使用を含むことができる。ガス圧を一定量低下させることにより、ガスの温度が低下し、これを用いて浅層組織を冷却することができる。一部実施形態ではガス膨張の使用を、例えば循環流体、化学的冷却機構、及び/又は熱電冷却機構等の1つ以上の異なる冷却機構と組み合わせる。
【0088】
図11は、NMES治療システムを使用する方法の実施形態を示すが、これは単に例示的なものである。ステップの順序は限定的ではなく、一部のステップを実行しなくてもよい。方法を行っている間の任意の適切な時間に、その他のステップを含むこともできる。まず、ステップ502において刺激電極と冷却要素を皮膚表面に配置する。電極は別個のものでも、又はおそらくは冷却要素と共にパッドに組み込んでもよい。冷却ポンプを含む実施形態では、ステップ504でポンプを作動させ、所与の時間の間電極同士の間の領域を冷却する。ステップ506では電極を通して患者に電気エネルギーを供給する。設定時間(例えば30分)の後、ステップ508に示すように冷却機構とNMESエネルギー供給を停止する。最終的に、ステップ510では流入/流出ホースを刺激パッドから外し、制御手段と刺激パッドの接続を切る。これらステップはいずれも任意であり、又は他のステップと取り換えても、ステップの順序を変更してもよい。
【0089】
NMESエネルギー供給を開始する前に、表面冷却を数分間(例えば約5分から約10分)実行し始めてもよい。NMESを実行するために使用する装置とシステムの実施形態によって、冷却を開始する前又は後のいずれかに、表面電極を身体に配置する。NMESエネルギー供給中は表面冷却を継続して行う。この期間浅層組織の温度を一定に保つようにしてもよく、又は一部実施形態では、NMESを行っている間浅層組織の温度が低下し続けるようにする場合もある。一部実施形態では、NMES治療セッション中に表面冷却を断続的に使用してもよい。代替的に、NMESエネルギー供給を開始する前にのみ表面冷却を行ってもよい。代替的に、NMESエネルギーを開始した後に、刺激領域に表面冷却を行ってもよい。例えば、NMES治療と一緒に冷却を行う期間の前及び/又はNMES治療を後にひかえた冷却期間の前に、10分間のNMESの準備期間を設けてもよい。
【0090】
図12Aから12Cは、複数の冷却ゾーン又は冷却領域を有する冷却要素をシステムが含む実施形態を示す。図12Aは、冷却要素1200を配置した下肢の一部を示しており、冷却要素1200は第1冷却ゾーン1201と第2冷却ゾーン1202を含んでいる。これらゾーンの各々を、刺激電極1203同士の間に配置する。冷却ゾーン毎に独立的に制御しても、或いは他のゾーンに依存させて制御してもよい。即ち、冷却ゾーンを他のゾーン(1つ又は複数)とは無関係に有効としても無効としてもよい。冷却ゾーンは制御手段(図示せず)によって独立的に又は依存的に制御することができ、図12Bでは制御手段1206は電極1203と通信する。ポンプ1205を制御手段1206によって駆動することにより、又は独立に制御することにより、2つ以上の別個の冷却ゾーン筐体1204を通して冷却流体を循環させる。複数の筐体同士は互いに流体連結していない。弁又は同様のメカニズムを使用して、各筐体に個別に、又は複数の筐体に同時に流体を送ることができる。図12Cの実施形態は複数の冷却ゾーンを有する化学的冷却パックを使用する。冷却パックの外側コンパートメント1207は複数の内部管1208を収容し、該内部管1208は、区画化要素1210(4つのうち1つのみを特定している)により互いに密閉、又は化学的に分離されている。各内部管は、制御手段1206から抵抗加熱要素1209へとエネルギーを供給することによって、その一部が溶融し破裂し得る。制御手段からの命令に基づいて、冷却パックの異なるゾーンにおける化学物質を個別に任意の時間に混合させてもよい。
【0091】
NMES治療セッションを約15分から約30分間継続することが見込まれる場合には、冷暴露が長引くことで皮膚が損傷するという問題が生じ得る。一部実施形態では、組織の第1浅層領域を冷却した後、組織の異なる第2浅層領域を冷却する。冷却領域をシフトさせることにより、寒冷暴露の延長により皮膚の損傷を生じるリスクを幾分低減することができる。一部実施形態では、第2領域は第1領域と重なり合う。(冷却要素への暴露を停止した後に)組織の復温を比較的長く行い、冷却要素を領域から取り外した後でNMES効率を高める期間を長く設ければ、熱伝達領域を調整することで、皮膚表面における潜在的な低インピーダンス電気路を回避しながら、皮膚よりわずかに深い組織において効果的な温度勾配を維持することができる。循環する冷却流体を冷却機構として使用する実施形態では、冷却要素の所定領域への流体の流れを制御する弁を選択的に開閉することにより、冷却領域を変更又は変化させることができる。化学的瞬間冷却パックを冷却機構として使用する実施形態では、2段階の管を有する冷却パックを使用して、特定の時間に特定の領域でのみ化学物質を混合するようにすることができる。まず、冷却パックの第1段階内部管を破裂させて化学物質を混合し、1つの領域を冷却する。その領域で化学反応(そして冷熱源)が終了すると、第2段階の管を破裂させて皮膚の第2領域に熱刺激を及ばせる。段階を任意の数で設けた管を使用してばらつきを持たせることで、皮膚の1つ以上の所望の領域に対して所望の量及び/又は所望のタイミングで熱刺激を行うことができる。熱電素子を冷却機構として含む実施形態では、制御手段が各ゾーンにエネルギー又は信号を選択的に送ることにより、熱電素子の特定のゾーンを選択的に作動させるようにすることができる。例えば、図12Aでは冷却ゾーン1201及び1202は別々の(2つ以上の)熱電素子であり得る。冷却ゾーンは冷却制御手段と通信するが、該冷却制御手段は、刺激制御手段と共に収容するか、又は別個の筐体に収容するかのいずれかである。冷却制御手段は、例えば冷却ゾーン1201及び1202を異なる温度に設定するように、或いは冷却ゾーン1201及び1202を異なる冷却時間で作動させるように、熱源素子を制御するよう構成することができる。熱電素子はまた、様々な大きさと形状を有することができる。
【0092】
一部実施形態では、領域又はゾーン毎に冷却する程度を変えることで、皮膚の温度を領域毎に異なる温度にすることができる。前述のように、エネルギーが体内外に出入りする位置(即ち表面電極の位置)の組織を過度に冷却することは一般に望ましくない。なぜなら過度に冷却することで、深層筋肉及び/又は神経組織へのエネルギー供給を高めることなく、局所的なインピーダンスを上昇させて電極の性能及び持続性を害するためである。しかし場合によっては、電極の位置(又は電極自体)における組織領域をわずかに(例えば、約1℃から約5℃)冷却することが望ましいこともある。このようにわずかに冷却することで、エネルギーが体内外に出入りする領域において組織のインピーダンスを実質的に高めることなく、更なる火傷を防止することができる。刺激に使用する電極同士の間の1つ以上の他の空間ゾーンにおいて、浅層冷却の程度をより高めて行う(例えば約20℃から約30℃程度)と、深層筋肉及び/又は神経組織へのエネルギー伝達率を高めることができる。複数の冷却領域又はゾーンについて記載した本文中の適切な実施形態のいずれについても、各々が組織の領域毎に異なる熱的効果を有する複数の異なる冷却ゾーンを提供するよう、適応させることができる。例えば図13は、電極460(透視して示す)と通信する制御手段466を含むシステムの例示的実施形態を示す。冷却要素は第1冷却要素462と第2冷却要素464を含む。ポンプ468は冷却要素の両方と流体連結状態にある。第1冷却要素462は、電極460上に配置した2つの別々の冷却要素を含む。第2冷却要素464は、第1冷却要素462が電極付近の領域を冷却する以上に、電極460同士の間の領域を冷却する。この場合、エネルギーが体内外に出入りする領域の温度の低下はより緩やかなものであるのに対して、電極同士の間を冷却する程度はより大きい。
【0093】
治療時間全体を通して比較的一定の冷却温度を維持することが望ましい。このような場合には、冷却流体を循環させる方法、化学的方法、又は熱電気的方法は、アイスバッグ又は氷槽等の冷却要素を用いる方法より有益である。なぜなら氷は溶けて、皮膚を一定温度に維持できないためである。冷却流体と化学的メカニズムにはワークフローに関する更なる利点がある。例えば、冷却ポンプ又は瞬間化学的冷却パックは、患者のベッドサイドの収納に置いておくことができると共に、アイスバッグや氷槽の際に必要となり得る設置にかかる時間や保管の必要もなく、必要な時に作動させることができ、便利である。さらに、アイスバッグ及び/又は氷槽は湿気及び/又は水分の漏洩を生じやすい。従って異なるタイプの冷却要素を使用して、経時的に冷却要素の温度を調整することができる。
【0094】
冷却要素(又は少なくともその一部)は皮膚としっかりと接触させておくことが好ましい。自発的又は不意の筋収縮によって、又はその他の動作によって刺激領域が移動すると、冷却要素の位置がずれる、又は冷却要素が浅層組織と直接的且つ効果的に熱的接触しなくなることが生じ得る。従ってシステムの一部実施形態は、このような動作が生じても冷却要素と浅層組織の間に所望の熱的接触を維持する。
【0095】
図14Aから図14Cは、皮膚にしっかりと冷却要素を固定する実施形態を示す。図14Aでは、刺激パッド301は3つの刺激電極302、冷却要素303、及び錘304を含む。一実施形態では、錘は可撓性であり、量及び可撓性の点で砂のうに類似する。冷却要素303を皮膚の所望の領域に配置し、錘304を冷却要素の上に配置する。錘304は皮膚の所望の領域に対する定位置に冷却要素303をしっかり固定する。図14Bでは、錘306を冷却要素305の上に置き、スナップコネクタの形態のコネクタ307を用いて冷却要素305に取り付ける。他のタイプの接続要素を使用してもよい。図14Cでは、刺激パッド309は埋込み刺激電極308と埋込み冷却要素310を含む。可撓性であり得る錘311を冷却要素310の上に置いて下方に圧力をかけ、ストラップ312を用いて所定の位置に錘を保持するが、ストラップ312は、錘/冷却機構アセンブリの両側で刺激パッドに連結するよう構成する。圧力を冷却要素に印加する代替的メカニズムを使用して、冷却要素を皮膚にしっかりと接触させて固定した状態を維持することができる。
【0096】
冷却要素を皮膚にしっかりと固定することで、冷却機構を所望の位置に維持できるだけでなく、冷却機構と皮膚表面との間が密閉状態となり、刺激領域における湿気の蓄積を最小限に抑える。代替的実施形態は、冷却要素の配置を維持するために、低刺激性の接着剤や周縁ストラップを使用することを含み得る。
【0097】
一部実施形態において、NMES治療システムは皮膚の表面に湿気が生じることを防止する又は最小限に抑える方法を含む。暖かい空気がより冷たい面に接すると、空気からの湿気が冷たい面上で濃縮する可能性がある。皮膚表面上の湿気は皮膚の電気インピーダンスを低下させ、エネルギー供給中に危害を及ぼす可能性もある。一部実施形態において、皮膚上のパッドは、表面冷却と共にNMESを行う間、皮膚に過度の湿気が生じることを回避するための層をいくつか含む。例えば一実施形態では、中間吸収層の囲む区画内に含まれる内部層を冷熱源とし、中間吸収層は、断熱材として作用しない程度に薄くすることができる。中間層はペーパータオルや発泡体に類似した材料、又はその他の適切な材料であり得る。皮膚と接触する薄い外部層は非吸収性の材料を含み、中間層を囲む。外部層は湿気が皮膚表面に生じるのを防止する。
【0098】
代替的実施形態では、暖気が冷熱源/皮膚表面に達しないようにすることで刺激領域における湿気の蓄積を減少し得るが、これは冷却要素と皮膚との間の空気を減らす又はなくすことにより達成することができる。吸引及び/又は真空ポンプを使用して空気を除去することができる。冷却要素に十分な圧力をかけることによっても、空気が循環する量を減らすことができる。錘、ストラップ、又は他の装置を使用して、冷却要素に圧力をかけることができる。
【0099】
一般に、NMES治療システムは表面電極と通信する刺激制御手段を有し、該制御手段は電気エネルギーを生成して、これを表面電極に供給する。一般に、制御手段は電源(例えばバッテリー又は主電源と共に使用する絶縁変圧器)を備え、以下のいずれかを含むことができる:ハードウェアコンポーネント、ソフトウェアコンポーネント、電圧/電流増幅器、マイクロコントローラ、FGPA、タイミング回路、波形生成回路、信号処理回路、及びメモリ。一部実施形態では、制御手段の主な命令は、マイクロプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、用途別集積回路、これらメカニズムの一部組合せ、又はその他の適切なメカニズムにより提供することができる。起動すると、制御手段は表面電極に送信する電気刺激信号を生成し、表面電極がエネルギーを身体に連結して筋肉組織を刺激する。
【0100】
刺激を行う前に電気刺激のパラメータを定め、刺激治療の前、治療中、又は治療後の任意の時間に刺激パラメータを調整するよう、制御手段を構成することができる。パラメータは手動で調整しても、或いはパラメータを自動調整するよう制御手段を構成してもよい。なお自動調整は、以下に述べるように、予め定めた治療プロトコルによって、又は患者を監視して感知したフィードバック信号に基づいて、行うことができる。例示的な電気刺激パラメータとしては、治療期間、刺激パルスエネルギー振幅等を含むが、これらに限定しない。
【0101】
一部実施形態では、制御手段は医療従事者が患者への電気エネルギー供給のパラメータを制御できるユーザインタフェースを含む。電気刺激パラメータをユーザが手動で設定する(即ち定める)ことができるよう、制御手段を構成してもよく、又は治療中若しくは治療後の任意の時点で電気刺激パラメータをユーザが調整できるよう制御手段を構成してもよい。ユーザインタフェースは制御手段内に収容してもよく、又は制御手段と通信する遠隔制御に類似した別個の装置としてもよい。ユーザインタフェースはエネルギー供給のパラメータを制御するためのボタン、ノブ、ダイアル、スイッチ等を含み得る。ユーザインタフェースは、制御手段又は他の任意の要素の動作をユーザがテストして、任意のエラー又は不具合のある要素を検出する機能を含み得る。
【0102】
一部実施形態において、制御手段は、制御手段における最適化ソフトに基づいて刺激パラメータを自動的に調整するよう構成する。
【0103】
一部実施形態において、制御手段は患者の検知信号を受信するよう構成するが、該信号は患者の体に又は体内に配置した1つ以上のセンサを使用して感知するのが一般的である。1つ以上のセンサを使用して対象者からパラメータを感知し、制御手段にフィードバックすることができる。
【0104】
一部実施形態において、センサは患者の皮膚の温度を監視するよう構成した温度センサを含むことができる。制御手段は、感知した温度を連続的に又は定期的に受信するよう構成することができ、制御アルゴリズムは、感知した温度を基準温度と比較して、感知した温度が基準温度より高いか低いかを判断することができる。この比較に基づいて、冷却要素を作動させて、又はその動作を停止させて、又は冷却要素の調整を行って、皮膚の温度を上げる又は下げることが治療に必要となり得る。冷却の程度は手動で調整してもよく、又は制御手段内に冷却プロトコルを修正するソフトウェアを内蔵させて、皮膚温度を制御するようにしてもよい。皮膚温度を監視すると、組織中に生じた温度勾配がわかるため、患者の体内に入るエネルギーのうちの十分な割合のエネルギーが深層筋肉組織に供給されるのにこの温度勾配で十分であるかどうかが分かる。よって温度は、冷却要素で冷却する表面の量を制御するべく感知できる例示的な患者のパラメータであり、この例を本文に記載する。
【0105】
一部実施形態において、センサは筋肉刺激又は収縮の程度を感知するセンサを含む。筋収縮は、例えば筋電図(EMG)を用いて感知することができるが、これに限定しない。センサが筋収縮を感知する構成であれば、感知するパラメータは筋収縮の量を示す任意のパラメータであり得る。筋収縮を示す感知パラメータを受け取り、この情報を使用して冷却要素の動作を制御する又は電気刺激を制御するよう、制御手段を構成することができる。例えば、筋収縮を示す感知パラメータが、収縮量が不十分であることを示す場合には、皮膚表面における冷却効果を高めるか、或いは電気刺激の量を増やすか、或いはこれら2つのことを組み合わせて行うか、のいずれかを実行することが望ましい。感知パラメータへの対応は、手動で調整しても、或いは制御手段が自動で制御するようにしてもよい。ここに記載するNMES治療に採用できる一部の例示的な筋肉センサについては、2009年7月2日出願の米国特許出願第12/497,230号に含まれている。なお、この特許出願を参照してここに援用する。
【0106】
一部実施形態では、NMES治療を受ける人物に1つ以上のセンサを連結し、該センサは筋収縮を示すデータを記録するに使用する。制御手段内のフィードバック制御システムを使用して、刺激エネルギー波形の閉ループを最適化する。
【0107】
制御手段は冷却要素を作動させるよう構成することができる。ある例示的な実施形態では、数分間の「準備」期間の後、刺激領域において局所的な組織冷却を開始し、刺激エネルギーを対象者に付与する。刺激エネルギーの「準備」期間の後、システムがケアを行う者に対して復帰と調整を行うことを求めずに、治療中の所定の時間に冷却を自動的に開始するようにすれば、便利である。
【0108】
循環する冷却流体(この例については上述している)を使用して温度勾配を作り出す実施形態では、制御手段は冷却要素への流体の流れを制御するポンプ要素と通信することができる。従って制御手段は患者の皮膚温度を制御する。所定時間に又はフィードバックで定めた時間に冷却機構を作動させるよう、制御手段を構成することができる。
【0109】
他の実施形態では、内部管が破裂して2つの物質が混合し、化学的に反応した際に作動する冷却パック(例えば市販されている尿素ベース又は硝酸アンモニウム/水のパック)を使用する。かかる実施形態の例をここに記載する。制御手段で生成した電流を使用して、冷却パックの内部管の所定領域を溶融又は破裂させ、物質を混合することができる。
【0110】
制御手段はまた1つ以上の記憶手段を含み、該記憶手段は、例えばNMES治療の機能を実行するよう使用するアルゴリズム、治療プロトコル、感知する患者に関するパラメータ、刺激パラメータ、及び/又は冷却パラメータを記憶するが、これらに限定しない。記憶手段は次の形態のいずれかであり得る:RAM、ROM、EEPROM、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、又はこれらの任意の組み合わせ。記憶手段はNMES治療を実行するプロセッサと通信することができる。
【0111】
治療の種々の態様のタイミングを合わせて同期化を行うべく、制御手段における1つ以上のプロセッサをクロックに連結することができる。
【0112】
制御手段はまた、限定はしないが例を挙げると、パーソナルコンピュータ又はネットワーク等の遠隔装置と通信して、データ通信、プログラミングコマンド等を提供するよう構成した通信インタフェースを含むことができる。例えばテレメトリ、誘導コイルリンク、RFリンク、その他電磁的リンク、磁気リンク、赤外線リンク、光学的リンク、超音波リンク等の従来のワイヤレスプロトコルを使用して、通信を行うことができる。通信インタフェースが受信手段と送信手段の両方を含むことで、双方向の通信が可能となり、制御手段へのソフトウェアの更新提供、記憶した又は実時間のデータの送信、医療従事者からの入力の送信等を行うことができる。
【0113】
本文中の記載で特定していなくても、制御手段を使用して治療の種々の特徴を制御することができる。制御手段は単一の筐体であっても、或いは複数の筐体であってもよく、これらを任意の数で通信させる。
【0114】
一部実施形態では、システムは冷却要素の他に加熱要素を含む。冷却要素は組織の温度を低下させるために使用するのに対し、加熱要素は組織の温度を高めるために使用する。図15では、加熱要素107を下肢1001の後面側に置き(又は患者が台の上に横たわっている場合には加熱要素に下肢で圧力をかける)、刺激パッド1002を下肢1001の前面側に置く。刺激パッド1002は、冷却要素1004と刺激電極1003を含む。刺激パッド1002に制御手段1005とポンプ及び流体貯蔵部1006を組み込んでいる。上述のように、表面冷却は冷却要素1004が行う。ハムストリング筋及び/又は臀筋付近で表面加温を行うように加熱要素1007を配置するが、システムは他の筋肉に対しても使用できる。後面の加温が前面側の冷却と相乗的に働いて、深層筋肉組織と下肢前面側の浅層組織との間に温度勾配を作り出し、筋肉組織への電流供給率が高まる。第二に、加温は体の中心の温度を正常なレベルに維持するのに役立つ。表面冷却を長時間行うと大血管付近の温度が変化し、血液を冷やして中核体温を低下させる。後面に加熱要素を配置すると大血管付近の組織を加温することによって、下肢の前面部における温度勾配を縮小させることなく、冷却によって生じる中核体温の変化を相殺することに役立つ。加温要素をそれ自体の制御手段に連結して、加熱要素の温度を制御することができる。加温要素は加熱パッドに類似したものであり得る。
【0115】
図16Aから図16Cは、超音波振動子を含む代替的実施形態を示す。図16Aでは、制御手段1101は刺激パッド1105と電気的に通信し、刺激パッドは刺激電極1102、冷却要素1103、及び2つの超音波振動子1104を含む。図16Bは、集束超音波振動子1105からの音響エネルギー分布を示しており、焦点領域1106にはビーム中のエネルギーの最大空間分布が生じる。組織加熱が生じるのは主に焦点領域であり、その他の領域ではエネルギーが分散しすぎて有意に温度を上げることができない。図16Cは、NMES治療を施している四肢1107の側面断面図である。超音波振動子1104は深層組織領域1108を焦点として、皮膚表面から浅層組織を通して音響エネルギーを伝達する。
【0116】
制御手段又はその他の制御装置で操作することにより、振動子が比較的低周波の超音波エネルギー(例えば約1から約4MHz)を使用して、電子及び/又は凸レンズの焦点を、刺激している筋肉群に適した深さに当てるようにすることができる。超音波エネルギーを組織が部分的に吸収し、組織を通って超音波エネルギーが伝搬し、このエネルギーが熱に変換され得る。超音波の焦点性質により、より浅い組織領域におけるエネルギー供給は最小としながら、焦点領域にはエネルギーの圧倒的大部分を供給することができる。従って、浅層領域を実質的に加温することなく、より深層組織を焦点領域として加温することができる。この方法は、浅層冷却機構の生成する温度勾配を強化して、体の中核温度が低下し過ぎることがないよう保証する。
【実施例】
【0117】
上述の皮膚冷却と共に行うNMES治療について、調査研究を行った。20人の健常者を採用した。10名の健常者からなる第1グループ(グループ1)には希望者全員を入れた(年齢中央値44歳、年齢範囲22から70歳、BMI中央値25.0、BMI範囲22.0から38.3)。健常者の第2グループ(グループ2)は、全ての人が医学的に肥満である人からなるグループとした(BMI>30.0)、個人(年齢中央値53歳、年齢範囲25から75歳、BMI中央値32.4、BMI範囲30.1から39.6)。重症患者を募って更なる調査研究を実施中であるが、中間結果が出ている。
【0118】
最初の調査では、健常者に安定した姿勢をとらせ、各大腿四頭筋領域に左右対称に筋肉刺激電極を取り付けた。医療用動力計を各足首に配置した。筋肉を刺激している間、四頭筋が収縮することにより下肢が伸展する。医療用動力計でこの下肢の伸展力を読み取る。固定(一定)量の刺激エネルギーに対する下肢の伸展力は、このエネルギー量で刺激を行っている間に使った筋肉運動単位数の代わりとなるものであるため、筋肉刺激効率を良好に示すよう作用する。各下肢における筋力の基線測定を行った後、片方の下肢をランダムに選択して、刺激電極同士の間の領域にアイスバッグを配置し、他方の下肢には室温制御バッグを配置する。各下肢の伸展力を、3分間隔で測定した。20分から30分冷却した後、アイスバッグ及び室温制御バッグを下肢から取り外し、復温期間中測定を継続した。
【0119】
この研究では、パルス幅300ms、パルス繰返し率40Hzとした一連の非対称性二相性方形波を含むパルス列で筋肉刺激を行った。エネルギー増大時間を1秒、エネルギー減少時間を1秒としてパルス列を5秒持続させ(即ち最大エネルギー供給は3秒)、その後少なくとも10秒停止した。各刺激チャネルにより各人に供給した最大電流は、約30から約80mAであった。
【0120】
一部実施形態では、個々のパルスの周波数成分を約10kHz以下とする。実施形態によっては個々のパルスの周波数成分が約5kHzであることもあれば、約1kHzであることもある。実施形態によって、パルス繰返し率が約30Hz以上である場合もあれば、約30Hzから約50Hzである場合もある。一部実施形態では、オン時間(所与の繰返し率でパルスを供給する時間)とオフ時間(パルスを供給しない時間)を交互に設けながらエネルギーを供給する。一部実施形態ではオン時間は約5秒から約10秒継続する。一部実施形態ではオフ時間は約10秒から約20秒継続する。
【0121】
この研究により、上述のシステムと方法の多大な有用性が判明した。下肢の伸展力(及び筋肉刺激効率)は健常者20人すべてにおいて、冷却期間中に実験を行った方の下肢において増大した。実験を行った方の下肢において浅層冷却を行って達成した基線からの伸展力が最高に増大したものの平均は、グループ1では69.9%であり、グループ2では94.8%であった。医学的にみて肥満である人のグループにおいて、このように伸展力の一層の増大がみられたことは、NMES治療の有効性が極めて高いことを示している(即ち、身体の安全に関する規制基準及び/又は管理基準の許容する最大エネルギーを一般的に必要とする人は、軽いものであったとしても筋収縮を達成する必要がある)。グループ2において増大幅が大きいことは特に重要であり、なぜなら筋収縮が萎縮を防止する程には強くないレベルから、筋力を保持して機能的転帰を高めるのに有用なレベルへと移行できたためである。従って、ここで開示する装置、システム、及び方法により、このグループの人々はNMES治療から重要な又はより一層の利益を受けることができる。
【0122】
対照実験の下肢に比べて、実験対象の下肢において浅層冷却を行って達成した伸展力の9分間での増大の平均は、基線に対して52.6%であり、これは刺激効率の増大が有意な時間にわたって持続することを示している。全体として、浅層冷却を行って達成した筋収縮力の増大は、対応のあるt検定で分析して極めて統計学的に重要であると判断した(p<0.0001)。
【0123】
図17は、第1の研究から得た被験者実験データを示す。縦座標軸は、四頭筋を刺激することで生じた最大下肢伸展力(足首に配置した動力計で測定)を、各下肢に対して基線測定で正規化したものを示している。NMES装置上の電流設定は測定期間を通じて一定に保った。横座標は時間を示す。時間t=0からt=6分における測定は基線の読込みととらえる。時間t=6分(縦実線)において、氷を入れた防水バッグを使用して、実験対象の下肢(上のデータ追跡)に置いた刺激電極同士の間の浅層組織を冷却し、室温制御バッグを対照実験の下肢(下のデータ追跡)に置いた。時間t=29分(縦点線)で、アイスバッグと室温制御バッグの両方を取り外した。図のように、四頭筋への電流伝達率が高くなっている(下肢伸展力により明らかである)ことは20分以上にわたり明白であり、その後熱刺激を取り外した。筋肉刺激が増大(及び収縮が増大)したことが明らかであることに加えて、図17はNMESを行っている間又はNMESを行う前のみに断続的に浅層組織に冷却機能を適用することを支持している。
【0124】
図18は、重症患者から得た筋肉刺激の実験データを示しており、これは第2の研究からの中間集計の一部である。刺激を行っている間、患者の下肢に配置した加速器で、四頭筋の刺激中の運動を測定した。所定量のエネルギーが筋収縮を生じる程度は、記録した運動の量で適切に代用することができる。体温にある両下肢で一連の基線測定を行った(最も左の棒セット)後、アイスバッグを配置した片方の下肢では浅層側から温度勾配が生じたが、他方の下肢は体温制御状態のままであった。中央の棒セットが示すように、実験対象の下肢に熱刺激を行っている期間はその収縮力が高まり、対照実験の下肢では収縮力が衰えた。対照実験の下肢における収縮力の衰えは、疲労によるものだと推定される。対照実験の下肢と比較して、筋収縮は46%高まった。冷却期間の後、実験対象の下肢が復温期間にあるうちに、更なる測定を行った。最も右の棒セットが示すように、両下肢における収縮力は再度同様になり、基線を大幅に下回っている。この減少についても、疲労によるものであると推定される。冷却前、組織冷却中、及び冷却後の復温期間中に、患者の両下肢に同じエネルギーを与えた。
【0125】
本明細書では、概して付与エネルギー誘導域を伴う筋肉刺激について記載している。本明細書中の実施形態では、エネルギー誘導域は表面組織とこれに近い組織における電気インピーダンスを変える。エネルギーを生じる1つのメカニズムは皮膚冷却であるが、その他のメカニズムを使用してもよい。例えば、理論的には以下のいずれかを単独で又は他のメカニズムと組み合わせて使用して、エネルギー誘導域を生成することができる:1)パルス又は静電磁場、又は磁気ベースの一般的な方法;2)化学物質を局所に塗布する又は化学物質を注入することで、局部的な浅層組織の誘導特性を変える;3)血管拡張領域の選択(即ちどの程度の量の血管を収縮させるかを調整する);4)最適な伝達経路を設定するための複数のエネルギー源干渉パターン;5)深層組織のインピーダンスを低下させるために行う深層における一時的な溶液又は材料の注入。
【0126】
本明細書に記載する装置及び方法は、皮膚表面ではなく身体内部の組織面に使用するよう構成することができる。1つの例示的実施形態では、食道を介したアクセスにより心臓を刺激するよう表面電極を構成する。動作している刺激電極同士の間の位置で食道に表面冷却装置を適用することにより、心臓へのエネルギー伝達率を高めることができる。この実施形態の一実施例では、冷却要素を中空管装備の小型のパッドとし、小型の流入管及び流出管によって中空管を通して冷却流体を循環させる。わずかに形状の異なる本実施形態の変形は、横隔膜を刺激するという用途に使用することができる。
【0127】
本明細書に記載する方法は、上述の装置及びシステムの実施形態のいずれか又はその変形だけでなく、本明細書では明示しないその他の実施形態及び変形において、効果的に使用することができる。本文中の実施形態のいずれかに記載したシステム又はシステム要素のいずれかの特徴を、システム又はシステム要素の他の任意の適切な実施形態で使用することができる。
【0128】
ここに記載した発明の種々の態様は、以下に示す特定の用途のいずれか、又は他の任意のタイプの電気刺激及び感知システム又は方法に適用することができる。本発明は単独のシステム若しくは方法として、又は統合的な医療システムの一部として適用可能である。本発明の様々な態様は個々に、又は一括して、又は互いに組み合わせて使用できることを理解されたい。
【0129】
NMESシステムは、四頭筋領域や他の任意の下肢領域を含む、対象者の任意の解剖学的領域に適用できる。NMESシステムはまた、その他の解剖学的領域にも同様に適用可能である。例えばNMESシステムの対象は、ふくらはぎの筋肉組織としてもよい。別の例では、NMESシステムの対象は上腕又は下腕の筋肉組織としてもよい。またNMESシステムの対象は、対象者の胴体の筋肉組織であってもよい。例えば、システムは対象者の腰部に刺激を与えるようにしても、又は対象者の上体に刺激を与えるようにしてもよく、例えば脇の下等の解剖学的特徴を目安として使用してもよい。NMESシステムは対象者の体における任意の他の筋肉組織を対象とすることができる。
【0130】
ここに記載した装置、システム、及び方法のいずれについても、他のNMES用途で使用する適切な態様、特徴、又はステップを含み得る。例えば、2009年7月2日出願の米国特許出願第12/497,230号で開示された内容を、参照によりここに援用する。
【0131】
特定の実施形態を示して説明したが、前述のことから、これら実施形態に種々変更を施すことができ、また本明細書中でも種々変更を検討していることを理解されたい。本発明は、明細書中に示した特定の例で限定されない。さらに本発明の全ての態様は、種々の条件及び変数に依存した本明細書中の特定の表現、構成、又は相対的比率に限定されないことを理解されたい。本発明の実施形態の構造及び詳細における種々の変更が当業者には明らかであろう。よって、本発明は任意のかかる変更、変形、及び同等物を含むものと理解されたい。
【符号の説明】
【0132】
101、124 表面電極
103、126 筋肉組織
105 表面冷却要素
122 刺激制御手段
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋肉組織を電気的に刺激する方法であって:
被刺激筋肉組織付近で対象者に第1電極及び第2電極を配置することと;
一箇所以上の浅層組織の電気インピーダンスが、前記被刺激筋肉組織の電気インピーダンスに比べて高くなるよう、前記一箇所以上の浅層組織の電気インピーダンスを上昇させることと;
前記第1電極から前記第2電極へと前記筋肉組織を通して電気エネルギーを供給することと;
を含み、前記一箇所以上の浅層組織の電気インピーダンスを上昇させることにより、供給する電気エネルギーのうちのより大きな割合のエネルギーで前記筋肉組織を刺激し、これにより筋収縮を増大させる、方法。
【請求項2】
前記一箇所以上の浅層組織の電気インピーダンスを上昇させることが、前記第1電極及び前記第2電極を配置した浅層組織の電気インピーダンスを実質的に上昇させずに、前記第1電極と前記第2電極との間の浅層組織の電気インピーダンスを上昇させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1電極と前記第2電極の間の一箇所以上の浅層組織の電気インピーダンスを上昇させることが、前記第1電極及び前記第2電極を少なくとも部分的に囲む一箇所以上の浅層組織の電気インピーダンスを上昇させることをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1電極及び前記第2電極を配置した浅層組織の電気インピーダンスを実質的に上昇させずに、前記第1電極と前記第2電極との間の一箇所以上の浅層組織の電気インピーダンスを上昇させることが、前記第1電極及び前記第2電極を配置した位置よりも、前記電極同士の間の領域における一箇所以上の浅層組織の温度を大幅に低下させることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第1電極及び前記第2電極を配置した浅層組織の電気インピーダンスを実質的に上昇させずに、前記第1電極と前記第2電極との間の一箇所以上の浅層組織の電気インピーダンスを上昇させることが、前記第1電極及び前記第2電極との間に配置した冷却要素を作動させることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記配置するステップが、四頭筋付近に前記第1電極と前記第2電極を配置することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記一箇所以上の浅層組織の電気的インピーダンスを上昇させることが、前記第1電極と前記第2電極との間で前記対象者に配置した冷却要素を作動させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
冷却要素を作動させることが、皮膚表面に冷湿布を貼ることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
冷却要素を作動させることが、前記第1電極と前記第2電極との間に配置した冷却要素を通るよう流体をポンプで送ることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
冷却要素を作動させることが、前記第1電極と前記第2電極の間に配置した熱電素子を作動させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記第1電極と前記第2電極との間に配置した冷却要素を作動させることが、前記一箇所以上の浅層組織を連続的に冷却することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記第1電極と前記第2電極との間に配置した冷却要素を作動させることが、前記第1電極と前記第2電極との間に配置した冷却要素を断続的に作動させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
冷却要素を作動させることで、前記一箇所以上の浅層組織からその下の深層組織へと温度勾配が生じ、前記温度勾配において前記一箇所以上の浅層組織の温度が最低の温度である、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
電気エネルギーの前記供給を停止する前に、前記冷却要素を停止させることをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
冷却要素を作動させることが、前記一箇所以上の浅層組織を約30°Fから約40°Fの範囲の温度に冷却することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
筋肉組織を通して電気エネルギーを供給することが、前記筋肉組織の温度を約40℃より高く上昇させずに、筋肉組織を通して電気エネルギーを供給することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
電気エネルギーを供給することが、約10kHz以下の周波数を含むスペクトルを有するパルスを用いてエネルギーを供給することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
電気エネルギーを供給することが、約100から約400マイクロ秒のパルス幅を有するパルスを用いてエネルギーを供給することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
電気エネルギーを供給することが、約30Hzから約50Hzの繰返し率で一連のパルスを供給することによりエネルギーを供給することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
電気エネルギーを供給することが、オン時間とオフ時間を交互に繰り返してエネルギーを供給することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記対象者に前記第1電極と前記第2電極を配置することが、肥満又は浮腫の対象者に前記第1電極と前記第2電極を配置することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
筋肉組織を刺激する方法であって:
被刺激筋肉付近の一箇所以上の浅層組織のインピーダンスを上昇させることと;
少なくとも2つの刺激電極により前記被刺激筋肉付近の組織に電気エネルギーを供給することと;
を含み、前記供給するエネルギーのうち一定の割合のエネルギーで筋肉組織を刺激し、前記供給するエネルギーのうち一定の割合のエネルギーで筋肉組織を刺激せず、一箇所以上の浅層組織のインピーダンスを上昇させることにより、前記一箇所以上の浅層組織のインピーダンスを上昇させなかった場合に比べて、供給するエネルギーのうちの、筋肉組織を刺激するエネルギーの割合が大きくなる、方法。
【請求項23】
前記一箇所以上の浅層組織のインピーダンスを上昇させることが、前記2つの表面電極同士の間の領域において、前記一箇所以上の浅層組織の温度を低下させることを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
電気エネルギーを供給することが四頭筋に電気エネルギーを供給することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記一箇所以上の浅層組織のインピーダンスを上昇させることが、前記少なくとも2つの表面電極同士の間に配置した冷却要素を作動させることを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
冷却要素を作動させることが、筋肉刺激治療が継続している間、冷却要素を一定の温度に維持することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
冷却要素を作動させることが、筋肉刺激治療を行っている間、前記冷却要素の温度を低下させることを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
冷却要素を作動させることが、筋肉刺激治療を行っている間、前記冷却要素を断続的に作動させることを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
冷却要素を作動させることが、一定の時間の後に前記冷却要素を停止させることをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記冷却要素の動作を停止させた後で電気エネルギーを供給する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
組織に電気エネルギーを供給することが、肥満又は浮腫の対象者の組織に電気エネルギーを供給することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
対象者における筋肉刺激を増大する方法であって:
一箇所以上の浅層組織の温度が深層筋肉組織の温度より低くなるように、電気刺激する筋肉組織付近の一箇所以上の浅層組織を冷却することと;
前記冷却ステップによって実質的に冷却しない浅層組織に電気刺激を行うことと;
を含み、前記一箇所以上の浅層組織を冷却することにより、冷却ステップを行わない場合の筋収縮量に比べて筋収縮量が増加する、方法。
【請求項33】
前記一箇所以上の浅層組織を冷却することが、電気エネルギーを付与する領域とは異なる位置で前記対象者に冷却要素を配置することを含み、前記方法が前記冷却要素を作動させることをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記冷却要素の作動中に前記冷却要素を略一定の温度に維持することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記冷却要素の作動後に前記冷却要素の温度を低下させることをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
電気刺激の前記付与を停止する前に前記冷却要素の動作を停止させることをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記冷却要素を作動させることが、前記冷却要素を断続的に作動させることを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
電気刺激を付与することが、少なくとも2つの表面電極同士の間で電気刺激を付与することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
電気刺激を付与することが、四頭筋の筋収縮量を増加させることを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
筋肉組織付近で一箇所以上の浅層組織を冷却することが、肥満又は浮腫の対象者の一箇所以上の浅層組織を冷却することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
筋肉刺激システムであって:
複数の電極を含む刺激パッドであって、筋肉組織に刺激エネルギーを供給する位置に電極がくるように患者に配置するよう構成した、前記刺激パッドと;
前記複数の電極同士の間の、前記電極を配置した位置とは異なる位置で患者に配置するよう構成した冷却要素であって、一箇所以上の浅層組織を冷却することにより、前記一箇所以上の浅層組織のインピーダンスを上昇させるよう構成した、前記冷却要素と;
前記複数の電極と通信し、前記電極に前記刺激エネルギーを供給して、筋肉組織の収縮を刺激するよう構成した刺激制御手段と;
を含む、システム。
【請求項42】
前記電極を配置した場所の浅層組織を実質的に冷却しないよう前記冷却要素を構成した、請求項41に記載のシステム。
【請求項43】
浅層の電流路を実質的になくすよう前記冷却要素を構成した、請求項41に記載のシステム。
【請求項44】
前記刺激パッドが前記冷却要素を含む、請求項41に記載のシステム。
【請求項45】
前記冷却要素が一定の幅を有すると共に、前記複数の電極が一定の幅に跨っており、前記冷却要素の幅が前記複数の電極の跨る幅より大きい、請求項41に記載のシステム。
【請求項46】
前記冷却要素周辺の浅層組織におけるアーク放電を実質的に防止するよう、前記冷却要素の幅を構成した、請求項45に記載のシステム。
【請求項47】
前記冷却要素の作動を制御するよう構成した冷却要素制御手段をさらに含む、請求項41に記載のシステム。
【請求項48】
前記冷却要素制御手段を前記冷却要素と流体連結状態とし、前記冷却要素を通る流体の流れを制御するよう前記冷却要素制御手段を構成した、請求項47に記載のシステム。
【請求項49】
前記冷却要素制御手段が、前記冷却要素を通るように流体を送り出すよう構成したポンプを含む、請求項48に記載のシステム。
【請求項50】
前記冷却要素が、前記冷却要素制御手段と流体連結状態にある内部管を含む、請求項47に記載のシステム。
【請求項51】
熱電素子を制御するよう前記冷却要素制御手段を構成した、請求項47に記載のシステム。
【請求項52】
筋肉刺激システムであって:
対象者に配置するよう構成した複数の刺激電極と;
冷却要素制御手段と通信する冷却要素であって、一箇所以上の浅層組織の温度を低下させるように前記冷却要素を制御するよう、前記冷却要素制御手段を構成し、前記複数の刺激電極を配置していない位置で前記対象者に配置されるよう前記冷却要素を構成した、前記冷却要素と;
前記複数の刺激電極と通信する刺激制御手段と;
を含む、システム。
【請求項53】
前記冷却要素の温度を制御するよう前記冷却要素制御手段を構成した、請求項52に記載のシステム。
【請求項54】
前記冷却要素を略一定の温度に維持するよう前記冷却要素制御手段を構成した、請求項53に記載のシステム。
【請求項55】
前記冷却要素の作動後、前記冷却要素の温度を低下させるよう前記冷却要素制御手段を構成した、請求項53に記載のシステム。
【請求項56】
前記冷却要素を作動させるよう前記冷却要素制御手段を構成した、請求項52に記載のシステム。
【請求項57】
前記刺激制御手段が前記複数の電極に電気刺激を供給する間、前記冷却要素の動作を停止させるよう前記冷却要素制御手段を構成した、請求項56に記載のシステム。
【請求項58】
前記冷却要素を断続的に作動させるよう前記冷却要素制御手段を構成した、請求項56に記載のシステム。
【請求項59】
前記冷却要素を、前記複数の刺激電極同士の間に配置できる大きさ及び形状とした、請求項52に記載のシステム。
【請求項60】
前記冷却要素を、前記複数の電極を少なくとも部分的に囲むよう配置できる大きさ及び形状とした、請求項59に記載のシステム。
【請求項61】
前記複数の電極を刺激パッドに一体化した、請求項52に記載のシステム。
【請求項62】
前記冷却要素を前記刺激パッドに一体化した、請求項52に記載のシステム。
【請求項63】
前記冷却要素が前記冷却要素制御手段と流体連結状態にある内部管を有し、前記冷却要素制御手段が前記冷却要素を通るよう流体を送り出すポンプを含む、請求項52に記載のシステム。
【請求項64】
前記制御要素が熱電素子であり、前記熱電素子を制御するよう前記冷却要素制御手段を構成した、請求項52に記載のシステム。
【請求項1】
筋肉組織を電気的に刺激する方法であって:
被刺激筋肉組織付近で対象者に第1電極及び第2電極を配置することと;
一箇所以上の浅層組織の電気インピーダンスが、前記被刺激筋肉組織の電気インピーダンスに比べて高くなるよう、前記一箇所以上の浅層組織の電気インピーダンスを上昇させることと;
前記第1電極から前記第2電極へと前記筋肉組織を通して電気エネルギーを供給することと;
を含み、前記一箇所以上の浅層組織の電気インピーダンスを上昇させることにより、供給する電気エネルギーのうちのより大きな割合のエネルギーで前記筋肉組織を刺激し、これにより筋収縮を増大させる、方法。
【請求項2】
前記一箇所以上の浅層組織の電気インピーダンスを上昇させることが、前記第1電極及び前記第2電極を配置した浅層組織の電気インピーダンスを実質的に上昇させずに、前記第1電極と前記第2電極との間の浅層組織の電気インピーダンスを上昇させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1電極と前記第2電極の間の一箇所以上の浅層組織の電気インピーダンスを上昇させることが、前記第1電極及び前記第2電極を少なくとも部分的に囲む一箇所以上の浅層組織の電気インピーダンスを上昇させることをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1電極及び前記第2電極を配置した浅層組織の電気インピーダンスを実質的に上昇させずに、前記第1電極と前記第2電極との間の一箇所以上の浅層組織の電気インピーダンスを上昇させることが、前記第1電極及び前記第2電極を配置した位置よりも、前記電極同士の間の領域における一箇所以上の浅層組織の温度を大幅に低下させることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第1電極及び前記第2電極を配置した浅層組織の電気インピーダンスを実質的に上昇させずに、前記第1電極と前記第2電極との間の一箇所以上の浅層組織の電気インピーダンスを上昇させることが、前記第1電極及び前記第2電極との間に配置した冷却要素を作動させることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記配置するステップが、四頭筋付近に前記第1電極と前記第2電極を配置することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記一箇所以上の浅層組織の電気的インピーダンスを上昇させることが、前記第1電極と前記第2電極との間で前記対象者に配置した冷却要素を作動させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
冷却要素を作動させることが、皮膚表面に冷湿布を貼ることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
冷却要素を作動させることが、前記第1電極と前記第2電極との間に配置した冷却要素を通るよう流体をポンプで送ることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
冷却要素を作動させることが、前記第1電極と前記第2電極の間に配置した熱電素子を作動させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記第1電極と前記第2電極との間に配置した冷却要素を作動させることが、前記一箇所以上の浅層組織を連続的に冷却することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記第1電極と前記第2電極との間に配置した冷却要素を作動させることが、前記第1電極と前記第2電極との間に配置した冷却要素を断続的に作動させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
冷却要素を作動させることで、前記一箇所以上の浅層組織からその下の深層組織へと温度勾配が生じ、前記温度勾配において前記一箇所以上の浅層組織の温度が最低の温度である、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
電気エネルギーの前記供給を停止する前に、前記冷却要素を停止させることをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
冷却要素を作動させることが、前記一箇所以上の浅層組織を約30°Fから約40°Fの範囲の温度に冷却することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
筋肉組織を通して電気エネルギーを供給することが、前記筋肉組織の温度を約40℃より高く上昇させずに、筋肉組織を通して電気エネルギーを供給することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
電気エネルギーを供給することが、約10kHz以下の周波数を含むスペクトルを有するパルスを用いてエネルギーを供給することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
電気エネルギーを供給することが、約100から約400マイクロ秒のパルス幅を有するパルスを用いてエネルギーを供給することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
電気エネルギーを供給することが、約30Hzから約50Hzの繰返し率で一連のパルスを供給することによりエネルギーを供給することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
電気エネルギーを供給することが、オン時間とオフ時間を交互に繰り返してエネルギーを供給することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記対象者に前記第1電極と前記第2電極を配置することが、肥満又は浮腫の対象者に前記第1電極と前記第2電極を配置することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
筋肉組織を刺激する方法であって:
被刺激筋肉付近の一箇所以上の浅層組織のインピーダンスを上昇させることと;
少なくとも2つの刺激電極により前記被刺激筋肉付近の組織に電気エネルギーを供給することと;
を含み、前記供給するエネルギーのうち一定の割合のエネルギーで筋肉組織を刺激し、前記供給するエネルギーのうち一定の割合のエネルギーで筋肉組織を刺激せず、一箇所以上の浅層組織のインピーダンスを上昇させることにより、前記一箇所以上の浅層組織のインピーダンスを上昇させなかった場合に比べて、供給するエネルギーのうちの、筋肉組織を刺激するエネルギーの割合が大きくなる、方法。
【請求項23】
前記一箇所以上の浅層組織のインピーダンスを上昇させることが、前記2つの表面電極同士の間の領域において、前記一箇所以上の浅層組織の温度を低下させることを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
電気エネルギーを供給することが四頭筋に電気エネルギーを供給することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記一箇所以上の浅層組織のインピーダンスを上昇させることが、前記少なくとも2つの表面電極同士の間に配置した冷却要素を作動させることを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
冷却要素を作動させることが、筋肉刺激治療が継続している間、冷却要素を一定の温度に維持することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
冷却要素を作動させることが、筋肉刺激治療を行っている間、前記冷却要素の温度を低下させることを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
冷却要素を作動させることが、筋肉刺激治療を行っている間、前記冷却要素を断続的に作動させることを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
冷却要素を作動させることが、一定の時間の後に前記冷却要素を停止させることをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記冷却要素の動作を停止させた後で電気エネルギーを供給する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
組織に電気エネルギーを供給することが、肥満又は浮腫の対象者の組織に電気エネルギーを供給することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
対象者における筋肉刺激を増大する方法であって:
一箇所以上の浅層組織の温度が深層筋肉組織の温度より低くなるように、電気刺激する筋肉組織付近の一箇所以上の浅層組織を冷却することと;
前記冷却ステップによって実質的に冷却しない浅層組織に電気刺激を行うことと;
を含み、前記一箇所以上の浅層組織を冷却することにより、冷却ステップを行わない場合の筋収縮量に比べて筋収縮量が増加する、方法。
【請求項33】
前記一箇所以上の浅層組織を冷却することが、電気エネルギーを付与する領域とは異なる位置で前記対象者に冷却要素を配置することを含み、前記方法が前記冷却要素を作動させることをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記冷却要素の作動中に前記冷却要素を略一定の温度に維持することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記冷却要素の作動後に前記冷却要素の温度を低下させることをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
電気刺激の前記付与を停止する前に前記冷却要素の動作を停止させることをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記冷却要素を作動させることが、前記冷却要素を断続的に作動させることを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
電気刺激を付与することが、少なくとも2つの表面電極同士の間で電気刺激を付与することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
電気刺激を付与することが、四頭筋の筋収縮量を増加させることを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
筋肉組織付近で一箇所以上の浅層組織を冷却することが、肥満又は浮腫の対象者の一箇所以上の浅層組織を冷却することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
筋肉刺激システムであって:
複数の電極を含む刺激パッドであって、筋肉組織に刺激エネルギーを供給する位置に電極がくるように患者に配置するよう構成した、前記刺激パッドと;
前記複数の電極同士の間の、前記電極を配置した位置とは異なる位置で患者に配置するよう構成した冷却要素であって、一箇所以上の浅層組織を冷却することにより、前記一箇所以上の浅層組織のインピーダンスを上昇させるよう構成した、前記冷却要素と;
前記複数の電極と通信し、前記電極に前記刺激エネルギーを供給して、筋肉組織の収縮を刺激するよう構成した刺激制御手段と;
を含む、システム。
【請求項42】
前記電極を配置した場所の浅層組織を実質的に冷却しないよう前記冷却要素を構成した、請求項41に記載のシステム。
【請求項43】
浅層の電流路を実質的になくすよう前記冷却要素を構成した、請求項41に記載のシステム。
【請求項44】
前記刺激パッドが前記冷却要素を含む、請求項41に記載のシステム。
【請求項45】
前記冷却要素が一定の幅を有すると共に、前記複数の電極が一定の幅に跨っており、前記冷却要素の幅が前記複数の電極の跨る幅より大きい、請求項41に記載のシステム。
【請求項46】
前記冷却要素周辺の浅層組織におけるアーク放電を実質的に防止するよう、前記冷却要素の幅を構成した、請求項45に記載のシステム。
【請求項47】
前記冷却要素の作動を制御するよう構成した冷却要素制御手段をさらに含む、請求項41に記載のシステム。
【請求項48】
前記冷却要素制御手段を前記冷却要素と流体連結状態とし、前記冷却要素を通る流体の流れを制御するよう前記冷却要素制御手段を構成した、請求項47に記載のシステム。
【請求項49】
前記冷却要素制御手段が、前記冷却要素を通るように流体を送り出すよう構成したポンプを含む、請求項48に記載のシステム。
【請求項50】
前記冷却要素が、前記冷却要素制御手段と流体連結状態にある内部管を含む、請求項47に記載のシステム。
【請求項51】
熱電素子を制御するよう前記冷却要素制御手段を構成した、請求項47に記載のシステム。
【請求項52】
筋肉刺激システムであって:
対象者に配置するよう構成した複数の刺激電極と;
冷却要素制御手段と通信する冷却要素であって、一箇所以上の浅層組織の温度を低下させるように前記冷却要素を制御するよう、前記冷却要素制御手段を構成し、前記複数の刺激電極を配置していない位置で前記対象者に配置されるよう前記冷却要素を構成した、前記冷却要素と;
前記複数の刺激電極と通信する刺激制御手段と;
を含む、システム。
【請求項53】
前記冷却要素の温度を制御するよう前記冷却要素制御手段を構成した、請求項52に記載のシステム。
【請求項54】
前記冷却要素を略一定の温度に維持するよう前記冷却要素制御手段を構成した、請求項53に記載のシステム。
【請求項55】
前記冷却要素の作動後、前記冷却要素の温度を低下させるよう前記冷却要素制御手段を構成した、請求項53に記載のシステム。
【請求項56】
前記冷却要素を作動させるよう前記冷却要素制御手段を構成した、請求項52に記載のシステム。
【請求項57】
前記刺激制御手段が前記複数の電極に電気刺激を供給する間、前記冷却要素の動作を停止させるよう前記冷却要素制御手段を構成した、請求項56に記載のシステム。
【請求項58】
前記冷却要素を断続的に作動させるよう前記冷却要素制御手段を構成した、請求項56に記載のシステム。
【請求項59】
前記冷却要素を、前記複数の刺激電極同士の間に配置できる大きさ及び形状とした、請求項52に記載のシステム。
【請求項60】
前記冷却要素を、前記複数の電極を少なくとも部分的に囲むよう配置できる大きさ及び形状とした、請求項59に記載のシステム。
【請求項61】
前記複数の電極を刺激パッドに一体化した、請求項52に記載のシステム。
【請求項62】
前記冷却要素を前記刺激パッドに一体化した、請求項52に記載のシステム。
【請求項63】
前記冷却要素が前記冷却要素制御手段と流体連結状態にある内部管を有し、前記冷却要素制御手段が前記冷却要素を通るよう流体を送り出すポンプを含む、請求項52に記載のシステム。
【請求項64】
前記制御要素が熱電素子であり、前記熱電素子を制御するよう前記冷却要素制御手段を構成した、請求項52に記載のシステム。
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17】
【図18】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2012−518486(P2012−518486A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551279(P2011−551279)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/024944
【国際公開番号】WO2010/096776
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(511203190)ニヴェウス メディカル, インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/024944
【国際公開番号】WO2010/096776
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(511203190)ニヴェウス メディカル, インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】
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