説明

エポキシ化合物およびその合成中間体

【課題】耐吸湿性樹脂、耐光性樹脂、耐熱性樹脂等のモノマーとして用いた場合でも、加熱による亀裂破壊、自然光による着色、加熱による変形等の問題が生じることがない新規なエポキシ化合物を提供する。
【解決手段】下記の一般式(1)で表される新規なエポキシ化合物である。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規なエポキシ化合物およびその合成中間体に関するものである。さらに詳しくは、環骨格内に不飽和結合を有しない新規なエポキシ化合物およびその合成中間体に関するものである。本発明のエポキシ化合物は、耐吸湿性樹脂、耐光性樹脂、耐熱性樹脂等のモノマーとして利用することができる。
【0002】
【従来の技術】一般に、エポキシ化合物は、樹脂用モノマーとして広く用いられている。このようなエポキシ化合物は、環構造を基本骨格とするものが多い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来のエポキシ化合物は、環骨格内に不飽和結合を有する構造であるため、親水性に富み、紫外線を吸収するという特徴を備えている。そのため、上記従来のエポキシ化合物を、耐吸湿性樹脂、耐光性樹脂、耐熱性樹脂等のモノマーとして用いると、加熱によって亀裂破壊が生じたり、自然光によって着色する等の問題が生じる。
【0004】なお、不飽和結合を有しないエポキシ化合物としては、基本骨格が上記のように環構造ではなく、直鎖構造のものが知られているが、この基本骨格が直鎖構造のものは、構造が柔軟であるため加熱によって変形する等の問題が生じる。
【0005】本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、耐吸湿性樹脂、耐光性樹脂、耐熱性樹脂等のモノマーとして用いた場合でも、加熱による亀裂破壊、自然光による着色、加熱による変形等の問題が生じることがない新規なエポキシ化合物およびその合成中間体の提供をその目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明は、下記の一般式(1)で表されるエポキシ化合物を第1の要旨とする。
【0007】
【化5】


【0008】また、下記の一般式(3)で表されるエポキシ化合物の合成中間体を第2の要旨とする。
【0009】
【化6】


【0010】すなわち、本発明者らは、耐吸湿性樹脂、耐光性樹脂、耐熱性樹脂等のモノマーとして用いた場合でも、加熱による亀裂破壊、自然光による着色、加熱による変形等の問題が生じることがないエポキシ化合物を得るために一連の研究を重ねた。そして、その研究の過程において、基本骨格が環構造であり、しかも環骨格内に不飽和結合を有しない上記一般式(1)で表される新規なエポキシ化合物が、耐吸湿性樹脂、耐光性樹脂、耐熱性樹脂等のモノマーとして優れていることを見いだし本発明に到達した。
【0011】また、下記の式(2)で表されるエポキシ化合物、すなわち2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパンが、加熱による亀裂破壊、自然光による着色、加熱による変形等の問題が生じることがなく、耐吸湿性樹脂、耐熱性樹脂、耐光性樹脂等のモノマーとして特に優れていることを突き止めた。
【0012】
【化7】


【0013】そして、下記の一般式(3)で表される新規化合物から、上記一般式(1)で表される新規なエポキシ化合物を容易に合成することができることを突き止めた。
【0014】
【化8】


【0015】さらに、下記の式(4)で表される新規化合物、すなわち2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンから、上記式(2)で表される2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパンを容易に合成することができることを突き止めた。
【0016】
【化9】


【0017】
【発明の実施の形態】つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0018】本発明の新規なエポキシ化合物は、下記の一般式(1)で表される構造を備えている。
【0019】
【化10】


【0020】すなわち、上記一般式(1)で表される新規なエポキシ化合物は、基本骨格が環構造であり、しかも環骨格内に不飽和結合を有しないため、加熱による亀裂破壊、自然光による着色、加熱による変形等の問題が生じることがなく、耐吸湿性樹脂、耐光性樹脂、耐熱性樹脂等のモノマーとして優れているのである。
【0021】なかでも、下記の式(2)、(5)〜(14)で表される新規なエポキシ化合物がより好ましい。
【0022】下記の式(2)で表される2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン。
【0023】
【化11】


【0024】下記の式(5)で表される2,2−ビス(3,5−ジイソプロピル−4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン。
【0025】
【化12】


【0026】下記の式(6)で表される2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン。
【0027】
【化13】


【0028】下記の式(7)で表される2,4−ジメチル−3,3−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)ペンタン。
【0029】
【化14】


【0030】下記の式(8)で表される2,4−ジメチル−3,3−ビス(3,5−ジメチル−4−グリシジルオキシシクロヘキシル)ペンタン。
【0031】
【化15】


【0032】下記の式(9)で表される2,4−ジメチル−3,3−ビス(3,5−ジイソプロピル−4−グリシジルオキシシクロヘキシル)ペンタン。
【0033】
【化16】


【0034】下記の式(10)で表される2,4−ジメチル−3,3−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−グリシジルオキシシクロヘキシル)ペンタン。
【0035】
【化17】


【0036】下記の式(11)で表される1,1,1,3,3,3,−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン。
【0037】
【化18】


【0038】下記の式(12)で表される1,1,1,3,3,3,−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン。
【0039】
【化19】


【0040】下記の式(13)で表される1,1,1,3,3,3,−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,5−ジイソプロピル−4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン。
【0041】
【化20】


【0042】下記の式(14)で表される1,1,1,3,3,3,−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン。
【0043】
【化21】


【0044】なかでも、上記式(2)で表される2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパンが、加熱による亀裂破壊、自然光による着色、加熱による変形等の問題が生じることがなく、耐吸湿性樹脂、耐光性樹脂、耐熱性樹脂等のモノマーとしてより優れているため、特に好ましい。
【0045】つぎに、本発明の新規なエポキシ化合物の製造方法について、下記に示す反応式に基づいて具体的に説明する。すなわち、下記の一般式(1)で表されるエポキシ化合物は、下記の一般式(15)で表される公知のビスフェノール誘導体を出発物質として、下記の一般式(3)で表される本発明の合成中間体A、および下記の一般式(16)で表される合成中間体Bを経て、以下のような方法で製造される。
【0046】
【化22】


【0047】■ 上記一般式(3)で表される合成中間体Aの製造例まず、上記一般式(15)で表される公知のビスフェノール誘導体を準備し、これに活性炭担持ルテニウム触媒等の水素添加触媒を加え、50〜150kgf、好ましくは100〜120kgfの加圧水素雰囲気下、50〜200℃×2〜8時間、好ましくは120℃×4時間の反応条件で、2−プロパノール等の溶媒や、水酸化ナトリウム等の助触媒を用いて還元反応を行うことにより、上記一般式(3)で表される合成中間体Aを製造することができる。
【0048】上記一般式(15)で表されるビスフェノール誘導体は、公知のビスフェノール誘導体であれば特に制限されるものではないが、ジイソプロピルケトン、ジトリフルオロメチルケトン等のケトン類と、フェノール、ジメチルフェノール、2,6−ジイソプロピルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール等のフェノール類とから誘導されるビスフェノール誘導体がより好ましく、特に好ましくは、下記の式(17)で表される2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンである。
【0049】
【化23】


【0050】上記水素添加触媒としては、活性炭担持ルテニウム触媒、ラネーニッケル、アルミナ担持ロジウム触媒、アルミナ担持ルテニウム触媒、酸化白金触媒等が好ましく、なかでも活性炭担持ルテニウム触媒が特に好ましい。
【0051】上記溶媒としては、テトラヒドロフラン等のエーテル類や、ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素類や、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、2−ブタノール、ペンタノール、2−ペンタノール等のアルコール類が好ましく、なかでも2−プロパノールが特に好ましい。
【0052】上記溶媒の上記ビスフェノール誘導体に対する添加量としては、操作の簡便性や反応時間等を考慮すれば、30〜70重量%の範囲が好ましく、特に好ましくは50重量%である。
【0053】上記助触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強塩基性化合物や、酢酸等の弱酸化合物が好ましく、特に好ましくは水酸化ナトリウムである。また、上記助触媒の上記ビスフェノール誘導体に対する添加量としては、0.1〜10モル%の範囲が好ましく、特に好ましくは0.5モル%である。なお、操作の簡便性や、反応系を均一にして反応効率を高める等の点で、上記助触媒を水溶液として使用することもできる。
【0054】■ 上記一般式(16)で表される合成中間体Bの製造例上記■で得られる合成中間体Aとテトラヒドロフランとの混合溶液を、水素化ナトリウムとテトラヒドロフランとの懸濁溶液に加え、加熱還流下、3〜7時間、好ましくは4〜5時間攪拌を行う。そして、アリルブロマイドを滴下した後、65〜75℃×25時間攪拌を行うことにより、上記一般式(16)で表される合成中間体Bを製造することができる。
【0055】■ 上記一般式(1)で表されるエポキシ化合物(最終生産物)の製造例上記■で得られる合成中間体Bに、炭酸水素ナトリウム等の塩基、および塩化メチレン等の溶媒を加えた反応溶液を冷水で冷却し、m−塩化過安息香酸等の酸化剤を加え、室温で、48〜96時間、好ましくは60〜70時間攪拌を行うことにより、上記一般式(1)で表されるエポキシ化合物(最終生産物)を製造することができる。
【0056】上記塩基としては、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム等が好ましく、なかでも炭酸水素ナトリウムが特に好ましい。上記塩基の添加量としては、酸化剤に対して等量から2当量が好ましい。
【0057】上記溶媒としては、クロロホルム等のハロゲン化合物や、ヘキサン、トルエン等の炭化水素類が好ましく、なかでも塩化メチレンが特に好ましい。上記溶媒の添加量としては、酸化剤が3〜10重量%になるよう加えることが好ましい。
【0058】上記酸化剤としては、m−塩化過安息香酸、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド等が好ましく、なかでもm−塩化過安息香酸が特に好ましい。上記酸化剤の添加量としては、上記塩基を溶媒の反応溶液に対して2〜4当量になるよう加えることが好ましい。
【0059】また、上記のような酸化剤を用いる方法以外にも、例えば、エピクロロヒドリン等を用いることによっても、上記一般式(1)で表されるエポキシ化合物(最終生産物)を製造することができる。すなわち、上記■で得られる合成中間体Aに、エピクロロヒドリンを、水酸化カリウムもしくは水酸化ナトリウムの存在下、常法により、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンと加熱することにより合成することができる。
【0060】つぎに、実施例について説明する。
【0061】
【実施例1】
2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパンの製造例
【0062】本発明の新規なエポキシ化合物である2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパンは、下記に示す反応式に基づいて製造した。すなわち、下記の式(17)で表される公知の2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンを出発物質として、下記の式(4)で表される2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(合成中間体a)、および下記の式(18)で表される2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−アリルオキシシクロヘキシル)プロパン(合成中間体b)を経て、下記の式(2)で表される2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン(最終生産物)を製造した。
【0063】
【化24】


【0064】■ 上記式(4)で表される2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(合成中間体a)の製造例
【0065】(1)まず、上記式(17)で表される公知の2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンを、自体既知の方法に従って製造した。
【0066】すなわち、2,6−キシレノール110gに、アセトン52ml、塩化鉄0.22g、プロピルチオール0.9g、および硫酸19.6gを加えた反応溶液を、55℃で2時間攪拌した。さらに、アセトン26ml、塩化鉄0.22g、および硫酸19.6gを加え、55℃で攪拌を行った。得られた反応生成物を炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水で洗浄し、さらに硫酸マグネシウムで乾燥した後、濃縮した。この反応生成物にn−ヘキサンを加え沈殿を生じさせ、これを濾過して回収し、この濾物を酢酸エチルで再結晶して精製を行うことにより、上記式(17)で表される公知の2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンを製造した。
【0067】そして、得られた2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンの生成は、下記の赤外線吸収スペクトルおよびプロトン核磁気共鳴スペクトルの各測定により確認した。なお、得られた反応生成物の融点は163〜164℃であり、重量は58.9g(収率46.0%)であった。
【0068】すなわち、上記反応生成物の赤外線吸収スペクトルの吸収波数(cm-1)は、図1のチャート図に示すように、3350、3050、2950、2850、1760、1600、1480、1440、1380、1320、1300、1220、1180、1110、1020、990、940、880、860、770、730、660、580であった。なお、測定は試料をKBr錠剤法によって調整して行った。
【0069】また、プロトン核磁気共鳴スペクトルのδ値(ppm)は、図2のチャート図に示すように、1.6(s,6H)、2.2(s,12H)、4.5(s,2H)、6.8(s,4H)であった。なお、測定は試料をクロロホルム溶液(d−CHCl3 )に溶かし、周波数が100MHzのプロトン核磁気共鳴により行った。
【0070】(2)上記(1)で得られた2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(化合物17)90.6gに、活性炭担持ルテニウム触媒5.4g、40%水酸化ナトリウム水溶液1ml、およびイソプロパノール140mlを加え、初期水素圧力100kgf、反応温度120℃で4時間攪拌した。そして、反応混合物からセライト濾過により触媒を取り除いた後、濃縮した。ついで、反応混合物にジエチルエーテルを加え、2規定水酸化ナトリウム、および2規定塩酸で洗浄して有機層を抽出した。この有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下加熱することにより濃縮した。この反応混合物にn−ヘキサン:エーテル20:1(重量比)混合溶媒210mlを加え、室温で1日放置した。この反応混合物を濾過し、濾物として上記式(4)で表される2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(合成中間体a)の結晶体15.6gを得た。さらに、濾液を濃縮して、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(合成中間体a)の非晶質体32.7gを得た。
【0071】そして、得られた2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(合成中間体a)の生成は、下記の赤外線吸収スペクトルおよびプロトン核磁気共鳴スペクトルの各測定により確認した。また、得られた反応生成物の結晶体を元素分析した結果、分子式はC19362 であり、結晶体と非晶質体とをあわせた総重量は48.3g(収率51.9%)であった。得られた合成中間体aは、結晶体は外観が白色粉末様であり、非晶質体は外観が飴状であった。このように同一構造の化合物が異なる外観をもつ物質として生成する理由は、結晶体、非晶質体それぞれに含まれる配座異性体の混合比が異なることによるので、これは還元反応による触媒、反応条件等により変化させることが可能である。なお、結晶体の融点は166〜167℃であった。
【0072】すなわち、上記反応生成物の赤外線吸収スペクトルの吸収波数(cm-1)は、結晶体および非晶質体ともに、図3のチャート図に示すように、3375、2980、2870、1460、1360、1300、1180、1100、1050、970、840、620、540であった。なお、測定は試料をKBr錠剤法によって調整して行った。
【0073】また、プロトン核磁気共鳴スペクトルのδ値(ppm)は、結晶体および非晶質体ともに、図4のチャート図に示すように、0.6〜0.8(m,6H)、0.9〜1.2(m,12H)、1.2〜1.8(m,14H)、2.0〜3.5(m,2H)であった。なお、測定は試料をクロロホルム溶液(d−CHCl3)に溶かし、周波数が100MHzのプロトン核磁気共鳴により行った。
【0074】■ 上記式(18)で表される2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−アリルオキシシクロヘキシル)プロパン(合成中間体b)の製造例
【0075】まず、上記■で得られた合成中間体a89.3gとテトラヒドロフラン680mlとの混合溶液を、水素化ナトリウム26.7gとテトラヒドロフラン120mlとの懸濁溶液に加え、加熱還流下、5時間攪拌を行った。そして、アリルブロマイド219gを滴下し、65〜75℃で25時間攪拌を行った。そして、氷冷下で反応生成物に食塩水を加えた後有機層を抽出し、硫酸マグネシウムで抽出物を乾燥後濃縮した。この反応生成物をシリカゲル3600g、n−ヘキサン:酢酸エチル=5:1(重量比)溶媒で精製を行うことにより、上記式(18)で表される2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−アリルオキシシクロヘキシル)プロパン(合成中間体b)を作製した。
【0076】そして、得られた2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−アリルオキシシクロヘキシル)プロパン(合成中間体b)の生成は、下記の赤外線吸収スペクトルおよびプロトン核磁気共鳴スペクトルの各測定により確認した。なお、得られた反応生成物の重量は47.9g(収率42.2%)である。
【0077】すなわち、上記反応生成物の赤外線吸収スペクトルの吸収波数(cm-1)は、図5のチャート図に示すように、3070、2930、2850、1640、1450、1400、1380、1360、1340、1280、1140、1100、1080、920、800、660、450であった。なお、測定は試料をNeatでKBr板に挟んだものを用い行った。
【0078】また、プロトン核磁気共鳴スペクトルのδ値(ppm)は、図6のチャート図に示すように、0.6〜0.8(m,6H)、0.9〜1.2(m,12H)、1.2〜1.8(m,14H)、2.0〜3.2(m,2H)、3.4〜4.2(m,4H)、4.9〜5.4(m,4H)、5.6〜6.1(m,2H)であった。なお、測定は試料をクロロホルム溶液(d−CHCl3 )に溶かし、周波数が100MHzのプロトン核磁気共鳴により行った。
【0079】■ 上記式(2)で表される2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン(最終生産物)の製造例
【0080】上記■で得た合成中間体b110gに、炭酸水素ナトリウム100.32g、および塩化メチレン2820gを加えた反応溶液を冷水で冷却し、m−塩化過安息香酸177.9gを加え、室温で72時間攪拌した。この反応溶液にチオ硫酸ナトリウム五水和物水溶液1.6リットルを加え、室温で3時間攪拌した。そして、有機層を抽出し、水、飽和食塩水の順で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後濃縮した。この回収物をシリカゲル2000g、n−ヘキサン:酢酸エチル=4:1(重量比)で精製することにより、上記式(2)で表される2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン(最終生産物)を製造した。
【0081】そして、得られた2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン(最終生産物)の生成は、下記のガスクロマトグラフィー−質量スペクトル、赤外線吸収スペクトルおよびプロトン核磁気共鳴スペクトルの各測定により確認した。なお、得られた反応生成物の重量は104.2g(収率87.5%)であり、外観が粘ちょうな油状物質であった。
【0082】すなわち、上記反応生成物をガスクロマトグラフィー−質量スペクトルで分析を行ったところ、図7R>7のチャート図に示すように、親ピークが2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン(最終生産物)の生成を支持する結果が得られた。
【0083】また、上記反応生成物の赤外線吸収スペクトルの吸収波数(cm-1)は、図8のチャート図に示すように、3020、2860、2830、1720、1460、1380、1360、1280、1260、1160、1090、1000、910、840、800、760、660、440であった。なお、測定は試料をNeatでKBr板に挟んだものを用い行った。
【0084】さらに、プロトン核磁気共鳴スペクトルのδ値(ppm)は、図9のチャート図に示すように、0.6〜0.8(m,6H)、0.9〜1.2(m,12H)、1.2〜1.8(m,14H)、2.0〜3.4(m,12H)であった。なお、測定は試料をクロロホルム−dに溶かし、周波数が100MHzのプロトン核磁気共鳴により行った。
【0085】なお、実施例1以外の他のエポキシ化合物については、反応に直接関与しない置換基が異なるだけか、あるいはその置換位置が異なるだけの相違しかないので、実施例1と同様のプロセスで実施例1に準じて製造することができる。
【0086】このようにして得られた実施例品のエポキシ化合物について、下記の基準に従い、耐吸湿性および耐光性について測定評価を行った。
【0087】〔耐吸湿性〕上記エポキシ化合物50gと、硬化剤であるメチルヘキサヒドロ無水フタル酸50gとを混合し、150℃で2時間硬化させ、直径30mmの円板状の試料を作製した。つぎに、この試料を65℃×85%の雰囲気下で1週間放置し、吸湿率を測定した。その結果、吸湿率は3%であり、従来の硬化物に比べてより優れていることが確認された。
【0088】〔耐光性〕上記硬化物を、150℃で1000時間放置したところ、着色等が観察されなかった。
【0089】
【発明の効果】以上のように、本発明の新規なエポキシ化合物は、上記一般式(1)で表される構造を備えている。すなわち、基本骨格が環構造であり、しかも環骨格内に不飽和結合を有しないため、加熱による亀裂破壊、自然光による着色、加熱による変形等の問題が生じることがない。そのため、本発明の新規なエポキシ化合物は、耐熱性樹脂、耐吸湿性樹脂、耐光性樹脂等のモノマーとして優れている。
【0090】また、上記式(2)で表されるエポキシ化合物、すなわち2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパンが、加熱による亀裂破壊、自然光による着色、加熱による変形等の問題が生じることがなく、耐熱性樹脂、耐吸湿性樹脂、耐光性樹脂等のモノマーとして特に優れている。
【0091】そして、上記一般式(3)で表される新規化合物から、上記一般式(1)で表される新規なエポキシ化合物を容易に合成することができるため、上記一般式(3)で表される化合物は、上記上記一般式(1)で表される新規なエポキシ化合物の合成中間体として優れている。
【0092】さらに、上記式(4)で表される新規化合物、すなわち2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンから、上記式(2)で表される2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパンを容易に合成することができるため、上記式(4)で表される化合物は、上記式(2)で表される新規なエポキシ化合物の合成中間体として優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンの赤外線吸収スペクトルの分析結果を示すチャート図である。
【図2】2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンのプロトン核磁気共鳴スペクトルの分析結果を示すチャート図である。
【図3】2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(合成中間体a)の赤外線吸収スペクトルの分析結果を示すチャート図である。
【図4】2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(合成中間体a)のプロトン核磁気共鳴スペクトルの分析結果を示すチャート図である。
【図5】2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−アリルオキシシクロヘキシル)プロパン(合成中間体b)の赤外線吸収スペクトルの分析結果を示すチャート図である。
【図6】2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−アリルオキシシクロヘキシル)プロパン(合成中間体b)のプロトン核磁気共鳴スペクトルの分析結果を示すチャート図である。
【図7】2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン(最終生産物)のガスクロマトグラフィー−質量スペクトルの分析結果を示すチャート図である。
【図8】2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン(最終生産物)の赤外線吸収スペクトルの分析結果を示すチャート図である。
【図9】2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン(最終生産物)のプロトン核磁気共鳴スペクトルの分析結果を示すチャート図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記の一般式(1)で表されるエポキシ化合物。
【化1】


【請求項2】 エポキシ化合物が、下記の式(2)で表される2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパンである請求項1記載のエポキシ化合物。
【化2】


【請求項3】 下記の一般式(3)で表されるエポキシ化合物の合成中間体。
【化3】


【請求項4】 エポキシ化合物の合成中間体が、下記の式(4)で表される2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンである請求項3記載のエポキシ化合物の合成中間体。
【化4】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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