説明

エマルション組成物の分離方法

【課題】エマルション組成物を融点以下の凍結温度で凍結し、乳化破壊を進行させることにより、各成分毎に分離し再利用することが可能なエマルション組成物の分離方法をを提供することを課題とする。
【解決手段】エマルション組成物の分離方法1は、油脂成分4及び水系成分の分散混合されたエマルション組成物としてのマヨネーズ3をを冷却し、油脂成分及び水系成分のそれぞれ融点よりも低い凍結温度でマヨネーズ3を凍結させる凍結工程S2と、凍結された凍結組成物を所定時間保持する凍結状態保持工程S3と、乳化破壊された凍結組成物を解凍する解凍工程S4と、解凍した液体組成物を油脂成分4及び残渣成分2に比重差を利用して分離する比重差分離工程S5とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルション組成物の分離方法に関するものであり、特にマヨネーズ等のエマルション組成物を油脂成分及び油脂成分以外の残渣成分に分離し、それぞれ再利用可能とするためのエマルション組成物の分離方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品を製造している食品製造工場では、品質基準以下の品質不良の製品や賞味期限切れの製品、或いは生産ラインの稼働及び停止時の調整用の食品廃棄物が多く発生し、これらを廃棄処分することがある。これらの廃棄される製品等は、栄養価の高い成分を含んでいることがあり、牛や豚等の家畜用の飼料としてそのまま用いられたり、当該飼料の原材料として再利用されている。これにより、資源の有効な活用が図られている。
【0003】
しかしながら、一部の製品等は、家畜用の飼料等として適切でないものがあり、再利用されないことがあった。この場合、焼却処分や埋設処分等によって処理されることがある。ここで、マヨネーズやサラダドレッシング等の食品調味料は、エマルション(乳化物)として構成され、植物性油脂に由来する油脂成分と醸造酢等のその他の成分からなる水系成分とによって主に構成され、水系成分中に油脂成分が滴状に分散混合した水中油型の安定した乳化状態を保っている。植物性油脂はマヨネーズ中で70%以上の比率で含まれることもあり、成分中に多くの油脂成分を含むこれらの食品調味料は、そのままでは家畜用の飼料等として使用することは困難なことがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マヨネーズ等の食品調味料を家畜用の飼料等に再利用する場合、上記理由によりそのままの状態では使用することができず、何らかの処理によって油脂成分と水系成分とに分離する処理が必要であった。しかしながら、一般のマヨネーズ等の食品エマルションは、安定した乳化状態を保つために、乳化安定剤が添加されていることがあり、容易に分離することが困難であった。一般に、エマルション(エマルション組成物)は、熱的変化によって乳化状態が解消(乳化破壊)することが知られており、例えば、マヨネーズ等を高温で加熱することにより、乳化破壊を進行させることができた。これにより、乳化破壊後は、油脂成分及び水系成分の比重差の違いを利用して容易に分離することが可能であった。
【0005】
しかしながら、上記乳化安定剤よって、マヨネーズ等を十分に高温で加熱する必要があった。その結果、マヨネーズに含まれる卵黄等のタンパク質が熱によって変性し、所謂「タンパク質凝固」の状態を呈することがあった。そのため、加熱されたマヨネーズの一部が凝固(固形化)することとなり、再利用することが困難なケースがあった。また、上記卵黄以外にも、マヨネーズに含まれる種々の成分が熱によって影響を受け、変性することがあった。したがって、高温で加熱することによってエマルション組成物を乳化破壊することが好ましくない場合があった。
【0006】
一方、マヨネーズ等のエマルション組成物を冷凍庫に保存した場合、油脂成分と水系成分とに分離することが知られている。そのため、一般家庭においては、マヨネーズ等の食品エマルションは、冷凍庫に保管することはできず、常温若しくは冷蔵庫のチルドルーム等の冷暗所に保管されていることが多かった。しかしながら、大量のエマルション組成物を凍結するまで冷却させ、乳化破壊を進行させることによって油脂成分及び水系成分を分離する試みはこれまでなされていなかった。
【0007】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、エマルション組成物を融点以下の凍結温度で凍結し、乳化破壊を進行させることにより、各成分毎に分離し再利用することが可能なエマルション組成物の分離方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明のエマルション組成物の分離方法は、「油脂成分及び水系成分を有するエマルション組成物を冷却し、前記油脂成分及び前記水系成分のいずれの融点よりも低い凍結温度で凍結させる凍結工程と、凍結された凍結組成物を前記凍結温度以下で所定時間保持する凍結保持工程と、前記凍結工程及び前記凍結保持工程の過程で乳化破壊された前記凍結組成物を解凍する解凍工程と、前記凍結組成物が解凍した液体組成物を前記油脂成分及び前記油脂成分以外の残渣成分に比重差を利用して分離する比重差分離工程と」を具備するものから主に構成されている。
【0009】
ここで、エマルション組成物とは、分散質及び分散媒がいずれも液体成分である分散系溶液であり、乳濁液、乳剤、或いはエマルジョンとして知られているものである。係るエマルション組成物は、水(分散媒)中に油滴(分散質)を分散させた水中油型(O/W型)或いは油(分散媒)中に水滴(分散質)を分散させた油中水型(W/O型)の二つのタイプがあることが知られ、牛乳やマヨネーズ等の食品、印刷用のインキ、及びフィルム感光剤等の日常生活において一般的な製品として構成されている。
【0010】
一方、凍結工程とは、エマルション組成物を所定の凍結温度で凍結させるものである。ここで、エマルション組成物は、上記示したように、油脂成分及び水系成分を含んで構成されている。油脂成分の主な組成である植物性油脂(例えば、菜種油等)は、一般、マイナス7℃〜マイナス13℃程度で液体から固体に相転移することが知られている。さらに、水が0℃で凍結するのに対し、各種成分を含む水系成分は凝固点降下によって0℃以下で凍結することが知られている。そのため、エマルション組成物を完全に凍結させるためには、油脂成分及び水性成分の両者の融点以下に凍結温度を設定する必要がある(例えば、マイナス18℃等)。なお、エマルション組成物を凍結させるための凍結設備は、既存の冷凍庫や冷凍設備、或いは冷媒を用いることが可能である。これにより、液状のエマルション組成物は、油脂成分を含んだ状態でアイスクリームのような状態で固体化される。
【0011】
また、凍結保持工程は、上記凍結工程によって凍結状態となった凍結組成物を上記凍結温度以下で所定時間保持するものであり、エマルション組成物の乳化状態を完全に破壊するものである。なお、乳化破壊の現象は当然のことながら上記凍結工程においても徐々に進行している。そのため、凍結保持工程に要する時間は特に限定されるものではなく、エマルション組成物が一端凍結したら速やかに乳化破壊が進行するために、必要以上に長くすることはなく、凍結保持工程を短時間で完了させるものであっても構わない。
【0012】
一方、解凍工程は、凍結状態を所定時間経過した凍結組成物を解凍するものである。このとき、解凍の手法は特に限定されるものではなく、冷凍庫内から取出し、常温で徐々に解凍させるものであっても、所定の加熱装置を使用するものであっても構わない。但し、水系成分に含まれる卵黄等のタンパク質の変性を生じさせないようにするために、常温で徐々に解凍を行うことが好適である。
【0013】
さらに、比重差分離工程は、解凍工程を経て凍結組成物が液状に相転移した液体組成物をそれぞれの成分の比重差を利用して分離するものである。すなわち、液体組成物を静置することにより、比重の軽い油脂成分が上方に浮き、比重の重い水系成分(油脂成分以外の残渣成分)が下方に沈殿することになる。これにより、上層(油脂層)及び下層(水系層)に液体組成物が分離し、これらを漏斗等の周知の分離技術を利用して個々に分けることができる。これにより、それぞれの成分をそれぞれの用途に再利用することが可能となる。なお、比重差を利用した分離をさらに短時間で行うためには、液体組成物を遠心分離装置にかけることにより、上記と同様の分離作用を奏させることが可能となる。
【0014】
したがって、本発明のエマルション組成物の分離方法によれば、大量のエマルション組成物を各成分の融点以下に設定した凍結温度で凍結し、凍結による乳化破壊を起こした後に解凍することで油脂成分及び水系成分を分離することが可能となる。
【0015】
さらに、本発明のエマルション組成物の分離方法は、上記構成に加え、「前記凍結工程は、プレート表面温度を前記凍結温度に調整した板状の凍結プレートが利用され、前記凍結プレートのプレート表面に前記エマルション組成物を均一の厚さになるように延ばして流込むプレート凍結工程」を具備するものであっても構わない。
【0016】
したがって、本発明のエマルション組成物の分離方法によれば、板状の凍結プレートにエマルション組成物を均一の厚さで延ばして流込むことにより、凍結温度に設定された凍結プレート(プレート表面)とエマルション組成物との接触面積を増やし、エマルション組成物を凍結させる時間の短縮化が可能となる。これにより、特に大量のエマルション組成物を凍結させ、各成分に分離する処理が容易となる。
【0017】
さらに、本発明のエマルション組成物の分離方法は、上記構成に加え、「前記エマルション組成物は、植物性油脂及び卵黄を含む水中油型エマルションの食品調味料である」ものであっても構わない。
【0018】
したがって、本発明のエマルション組成物の分離方法によれば、凍結によって植物性油脂及び卵黄を含むマヨネーズ等の食品調味料を分離処理することが可能となる。これにより、食品製造工場等から廃棄されたマヨネーズ等の食品調味料を油脂成分及び残渣成分にそれぞれ分離し、飼料等に再利用することが可能となる。特に、水系成分に相当する残渣成分には栄養価の高い卵黄が含まれていることにより、そのまま飼料等に使用することが可能である。一方、高カロリーの油脂成分は、飼料等或いはその他の原料、または燃焼油等として使用することが可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の効果として、エマルション組成物を融点以下の凍結温度で凍結し、乳化破壊を進行させた上で解凍することにより、エマルション組成物を油脂成分及び残渣成分に容易に分離することができる。特に、熱を加えるものでないため、タンパク質等が変性することがない。そのため、マヨネーズ等の卵黄を含む食品調味料の廃棄処理に有効となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態のエマルション組成物の分離方法の流れを示すフローチャートである。
【図2】分離後の残渣成分、マヨネーズ、及び卵黄の脂質及び水分の比率を示す表である。
【図3】分離後の残渣成分の成分分布を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施形態のエマルション組成物の分離方法1(以下、単に「分離方法1」と称す)について、図1乃至図3に基づいて主に説明する。ここで、図1は本実施形態の分離方法の流れを示すフローチャートであり、図2は分離後の残渣成分2、マヨネーズ3、及び卵黄5の脂質及び水分の比率を示す表であり、図3は分離後の残渣成分2の成分分析評価の結果を示す表である。ここで、本実施形態の分離方法1において、分離対象となるエマルション組成物として、食品製造工場等から大量に廃棄されたマヨネーズ3を使用するものについて例示し、当該マヨネーズ3を油脂成分4及び油脂成分4以外の残渣成分2に分離するものを示すものとする。ここで、残渣成分2は主に水溶性状を呈するものであり、水系成分となるものである。なお、マヨネーズ3の一原料である卵黄5は、その成分中に脂質分を有するものの、本実施形態の分離方法1における分離後は、水系の残渣成分2の中に含まれている。さらに、本実施形態の分離方法1において、各工程において使用する設備(例えば、冷凍設備等)は、周知のものを利用しているため、特に説明は省略するものとする。
【0022】
本実施形態の分離方法1は、まず食品製造工場等からから回収された大量のマヨネーズ3をドラム缶内に投入する(投入工程S1)。ここで、使用するドラム缶の容量は約200リットルである。そのため、複数個のドラム缶を容易し、各々200リットルずつになるように廃棄処分されるマヨネーズ3を投入している。ここで、本実施形態で分離されるマヨネーズ3は、大豆等から抽出された食用の植物性油脂(油脂成分4に相当)、醸造酢、卵黄、卵白、食塩、砂糖類(水あめ、砂糖)、増粘多糖類、調味料、香辛料、タンパク加水分解物、香辛料抽出物等によって主に構成されている。なお、油脂成分4としての植物性油脂以外の成分、醸造酢等はいずれも水系成分に相当するものとし、分離後は油脂成分4が除去された残渣成分2に含まれるものとする。ここで、図2に示すように、分離処理前のマヨネーズ3の脂質分及び水分の比率は、脂質が72.3%、水分が20.2%となっている。係る脂質の大部分が油脂成分4としての植物性油脂に由来している。すなわち、一般的なマヨネーズ3は、3/4近くが脂質で占められているものである。
【0023】
その後、マヨネーズ3が所定量ずつ投入された複数のドラム缶を予め温度調整された冷凍庫(冷凍設備)内に搬入し、所定の凍結温度以下となるようにマヨネーズ3の冷却処理を行う(凍結工程S2)。ここで、前述したように、油脂成分4及び残渣成分2を構成する各成文は、それぞれ0℃以下からマイナス10℃前後の融点を有している。そのため、係る融点以下の温度になることで、液体が分散して構成される流動性を有するエマルション(乳化物)の状態から固体物に相転移することになる。なお、大豆油はマイナス7℃からマイナス8℃前後の融点であることが知られている。本実施形態の分離方法1では、マヨネーズ3を完全に凍結させるために、マヨネーズ3がマイナス18℃以下になるように冷凍庫内の温度(例えば、マイナス25℃)に設定されている。冷凍庫内に搬送されたドラム缶内のマヨネーズ3は、周囲の温度変化によって徐々にマヨネーズ3表面からの固化が開始され、マヨネーズ3の熱を徐々に奪いながら、次第にマヨネーズ3の内部まで固化が進行する。大量のマヨネーズ3を完全に凍結させるために、ある程度の時間が必要であり、本実施形態の分離方法1では凍結工程S2を3日から4日程度行っている。
【0024】
凍結工程S2を経てエマルション組成物であるマヨネーズ3が凍結した凍結組成物6は、同様に油脂成分及び水系成分を含むアイスクリームに類似する態様を呈している。そして、完全に凍結した状態で凍結組成物6を冷凍庫内でしばらく保持する(凍結保持工程S3)。これにより、マヨネーズ3の乳化状態を破壊させる乳化破壊を進行させることができる。なお、凍結工程S2の過程でもマヨネーズ3の乳化破壊は徐々に進行しているため、凍結保持工程S3はそれほど長い時間を要するものではない。そのため、凍結組成物6の完了後、例えば、半日程度継続するものであっても構わない。或いは、凍結保持工程S3を数分程度で終了され、ほとんど省略した状態で次工程に移行するものであってもよい。上記凍結保持工程S3によって、マヨネーズ3の乳化状態がほぼ完全に破壊されたことになる。
【0025】
その後、乳化破壊が完了した凍結組成物6を冷凍庫内からドラム缶毎搬出し、常温条件下に静置する。これにより、周囲の温度環境に応じ徐々に凍結状態が解除され、凍結した状態の固体状(アイスクリーム状)の凍結組成物6が、液体状に相転移する自然解凍が行われる(解凍工程S4)。なお、本実施形態では、解凍工程S4の開始からドラム缶内の凍結組成物6が完全に液体状の液体組成物7に変化するまでに要する時間は、2日から3日程度を要している。なお、解凍工程S4は、上述した常温条件下に静置し、自然解凍を行うものであっても、解凍時間を促進させる手段を講じるものであっても構わない。但し、加熱等により油脂成分4及び残渣成分2を変性させるようなものは好ましくない。
【0026】
解凍工程S4が完了すると、固体状の凍結組成物6は液体状の液体組成物7に完全に相転移している。このとき、凍結工程S2及び凍結保持工程S3によってマヨネーズ3の乳化状態が破壊されているため、解凍後の液体組成物7は油脂成分4及び水系成分(残渣成分2)は分離している。そのため、液体組成物7をドラム缶内で静置することにより、各成分の比重差の違いによって上下二層に層分離することになる(比重差分離工程S5)。すなわち、油脂成分4は、一般的に水よりも比重が小さいことが知られ、水系成分(残渣成分2)は水よりも比重が大きいため、残渣成分2が下層となり、油脂成分4が上層となる。係る状態で周知の方法で上層及び下層をそれぞれ抽出することにより、油脂成分4及び残渣成分2の分離が完了する。なお、上記比重差分離工程S5は、解凍工程S4において凍結組成物6の一部が相転移した際に徐々にも徐々に進行している。したがって、比重差分離工程S5は、解凍工程S4と同じタイミングで一部が進行している。
【0027】
その後、ドラム缶内で比重差によって層分離した二つの液状の残渣成分2及び油脂成分4を周知の器具(例えば、分液漏斗やビュレット等)を利用して個々に分離し、それぞれの再利用の用途に使用することができる。特に、残渣成分2には、栄養価の高い卵黄が含まれているため、家畜用の飼料として特に好適である。さらに、本実施形態の分離方法1は、分離過程において、加熱処理を全く行っていないため、マヨネーズ3等のエマルション組成物に含まれる各成分が熱変性することがなく、タンパク質凝固等の再利用に問題となる現象も発生していない。
【0028】
さらに、本実施形態の分離方法1は、加熱による分離と比して大量のエマルション組成物を分離処理する際のエネルギー効率にも優れている。すなわち、物質を加熱する場合、物質に伝えられる熱以外に、大部分は大気中に放出されるため、エネルギーの効率が劣る場合がある。本実施形態の分離方法1は、冷凍庫内に搬入されるため、熱損失を加熱の場合よりも抑えることができる。さらに、一端、凍結した後は常温になるまで自然解凍させるだけで足り、必要以上のエネルギーを要することがない。したがって、大量のエマルション組成物を分離処理する際に本実施形態の分離方法1は特に好適である。
【0029】
上記処理によって得られた分離後の残渣成分2の脂質分及び水分の比率を図2に示す。これにより、マヨネーズ3に含まれる植物性油脂(油脂成分4)がほぼ分離及び回収されていることが確認され、一般の卵黄とほぼ同等の脂質分の比率を示している。これにより、栄養価の高い飼料原料として使用することが可能であることが確認される。
【0030】
さらに、分離処理後の残渣成分2を毎分3000回転で15分間遠心分離操作した後の固形物を測定試料として、当該試料の成分分析を行って結果を図3に示す。これにより、可消化養分総量が38.1%であることが示され、栄養価の高い水系成分(残渣成分2)が回収されたことが確認される。そのため、上記と同様に飼料原料としての使用に好適であることが示される。
【0031】
上記説明した通り、本実施形態の分離方法1によれば、加熱によってタンパク質凝固等の熱変性を起こしやすいマヨネーズ3等のエマルション組成物を冷却し、融点以下に凍結することにより乳化破壊を進行させ、比重差を利用して容易に分離することができる。これにより、各成分2,4を再利用することができる。特に、エネルギー効率の点から食品製造工場等から排出される大量のエマルション組成物を分離処理する際の分離方法として適している。
【0032】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0033】
すなわち、本実際形態の分離方法1において、分離対象となるエマルション組成物としてマヨネーズ3を例示したが、これに限定されるものではなく、その他のサラダドレッシング等のエマルション組成物として構成される食品調味料や印刷インキ等の工業用製品を分離するものであっても構わない。さらに、マヨネーズ3のような水中油型(W/O型)のエマルションに限らず、油中水型(O/W型)のエマルションに適用するものであってももちろん構わない。この際、エマルション組成物を冷却し、凍結させる凍結温度はそれぞれのエマルション組成物を構成する成分の融点以下となるように設定する必要がある。
【0034】
加えて、本実施形態の分離方法1における凍結工程S2において、ドラム缶内にマヨネーズ3を投入して凍結させるものを示したが、これに限定されるものではなく、例えば、予め凍結温度になるようにプレート表面温度を調整した金属製(ステンレス製)の板状の凍結プレートを準備し、当該凍結プレートに凍結対象となるエマルション組成物を徐々に流込み、均一な厚さとなるように薄く延ばしながら凍結させるものであっても構わない。これにより、凍結された凍結プレートとエマルション組成物との接触面積が増加するため、エマルション組成物は熱が奪われやすくなり容易に凍結温度以下となることができる。その結果、大量のエマルション組成物を短時間で凍結させることが可能となり、本実施形態の分離方法1において、最も時間を要することが想定される凍結工程S2を短時間で完了することができる。その結果、エマルション組成物の分離処理の全体の効率をアップすることができる。
【0035】
さらに、本実施形態の分離方法1における比重差分離工程S5において、液体組成物7を載置して上層及び下層に層分離して各成分2,4を分離するものを示したが、これに限定されるものではなく、周知の遠心分離装置を利用する物であっても構わない。これにより、比重差による分離時間の短縮化を図ることができる。但し、高速で回転する遠心分離ユニットを有する遠心分離装置は、遠心分離の際に熱を生ずることが知られている。そのため、分離対象の各成分2,4が熱変性を生じない程度の温度以上にならないように遠心分離操作の際に留意する必要がある。
【符号の説明】
【0036】
1 分離方法(エマルジョン組成物の分離方法)
2 残渣成分
3 マヨネーズ(エマルション組成物)
4 油脂成分
5 卵黄
6 凍結組成物
7 液体組成物
S2 凍結工程
S3 乳化破壊工程
S4 解凍工程
S5 比重差分離工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂成分及び水系成分を有するエマルション組成物を冷却し、前記油脂成分及び前記水系成分のいずれの融点よりも低い凍結温度で凍結させる凍結工程と、
凍結された凍結組成物を前記凍結温度以下で所定時間保持する凍結保持工程と、
前記凍結工程及び前記凍結保持工程の過程で乳化破壊された前記凍結組成物を解凍する解凍工程と、
前記凍結組成物が解凍した液体組成物を前記油脂成分及び前記油脂成分以外の残渣成分に比重差を利用して分離する比重差分離工程と
を具備することを特徴とするエマルション組成物の分離方法。
【請求項2】
前記凍結工程は、
プレート表面温度を前記凍結温度に調整した板状の凍結プレートが利用され、前記凍結プレートのプレート表面に前記エマルション組成物を均一の厚さになるように延ばして流込むプレート凍結工程をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載のエマルション組成物の分離方法。
【請求項3】
前記エマルション組成物は、
植物性油脂及び卵黄を含む水中油型エマルションの食品調味料であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエマルション組成物の分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−250203(P2012−250203A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126132(P2011−126132)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(311007176)株式会社ワールド・クリーン (1)