説明

エマルジョン燃料の製造方法、エマルジョン燃料、及び、エマルジョン燃料製造装置

【課題】長期間に亘って安定したエマルジョン燃料を製造する。
【解決手段】ステップS4において、油成分と水と乳化剤とを混合して攪拌し、平均粒径8μm〜12μmの第1エマルジョンを生成する第1攪拌処理を実行する。また、ステップS5において、第1エマルジョンを5分以上静置して、第2エマルジョンを生成する静置処理を実行する。更に、ステップS6において、第2エマルジョンを攪拌して、平均粒径4μm〜6μmのエマルジョン燃料を生成する第2攪拌処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽油、A重油、若しくは軽油とA重油の混合物からなる油成分と、水と、乳化剤と、を混合してエマルジョン燃料を製造するエマルジョン燃料製造方法、エマルジョン燃料、及び、エマルジョン燃料製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油の消費量の低減による省エネルギ効果の発揮、及び、石油を燃焼した際のNOx、粒子状物質等の排出量の低減による環境対策を目的として、重油等に水を乳化混合したエマルジョン燃料を利用することが提案されている。
【0003】
また、エマルジョン燃料の製造方法、製造装置として種々の技術が開示されている。例えば、共鳴電磁波により水を活性化し、ギアポンプ及びスタティックミキサにより活性水と基燃油とを混合することによって、長時間安定したエマルジョン燃料を生成する方法が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−138362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の生成方法によって生成されたエマルジョン燃料は、24時間程度の安定が確認されているにとどまり、必要とされる程度の長期間に亘って安定したエマルジョン燃料は得られない。
【0006】
例えば、エマルジョン燃料を燃焼するボイラ設備を、メンテナンス、又は老朽化に伴う設備更新等のために休止する場合には、エマルジョン燃料を長期間(例えば、1週間程度)タンク内に貯留することがある。このような場合には、長期間に亘って安定したエマルジョン燃料が必要となる。
【0007】
従来のエマルジョン燃料において長期的な安定性が得られないのは、エマルジョン燃料中の分散質の粒径が大きく、比重差によって油水が短時間で分離してしまうことが原因と考えられる。即ち、エマルジョン燃料の安定性を向上させるためには、エマルジョン燃料中の分散質の粒径を小さくする必要がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、長期間に亘って安定したエマルジョン燃料を製造することが可能なエマルジョン燃料の製造方法、エマルジョン燃料及び、エマルジョン燃料製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るエマルジョン燃料の製造方法は、以下のように構成されている。
【0010】
即ち、本発明に係るエマルジョン燃料の製造方法は、軽油、A重油、若しくは軽油とA重油の混合物からなる油成分と、水と、乳化剤と、を混合してエマルジョン燃料を製造するエマルジョン燃料の製造方法であって、この製造方法は、少なくとも前記油成分100重量部と、前記水40重量部〜100重量部と、HLB5〜HLB16の前記乳化剤0.5重量部〜1.5重量部とを混合し、攪拌することによって、平均粒径8μm〜12μmの第1エマルジョンを生成する第1攪拌工程と、前記第1攪拌工程の後、前記第1エマルジョンを5分以上静置して第2エマルジョンを得る静置工程と、前記第2エマルジョンを再度攪拌し、平均粒径4μm〜6μmのエマルジョン燃料を生成する第2攪拌工程と、を実行する(以下、本発明製造方法と称する。)。
【0011】
本発明製造方法において用いられる「油成分」は、軽油、A重油、若しくは軽油とA重油の混合物からなる。即ち、本発明製造方法においては、油成分として軽油のみを用いる場合、A重油のみを用いる場合、及び軽油とA重油の混合物を用いる場合がある。
【0012】
ここで、前記「軽油」は、原油の蒸留によって得られる沸点範囲が180℃〜350℃程度の石油製品(炭化水素混合物)であり、JIS K 2204に規定されたものである。一方、「A重油」は、JIS K2205に規定された1種重油(1号及び2号)である。A重油は、日本独自の税制上の油種区分では重油の一種とされているが、化学組成的、世界標準的には、軽油の一種である。
【0013】
本発明製造方法において用いられる「水」は、一般的に水と称されているものであれば特に限定されるものではない。本発明製造方法においては、水道水を用いることが好ましいが、その他、地下水、イオン交換水或いは蒸留水などを用いても良い。
【0014】
本発明製造方法において水は、前記油成分100重量部に対し、40重量部〜100重量部混合される。この混合割合は、油成分に対する水の混合割合が少なくなれば、石油の消費量の低減による省エネルギ効果の達成が不十分となり、一方、油成分に対する水の混合割合が多くなれば、燃焼性や着火性が悪くなることから設定されたものである。
【0015】
本発明製造方法において用いられる「乳化剤」は、界面活性作用を有し、非極性溶媒である前記油成分と、極性溶媒である前記水と共に混合、攪拌された際にエマルジョンを形成するものを意味する。この乳化剤としては、HLB(親水親油バランス)が5〜16のものであれば特に限定されるものではない。HLBが5以下、若しくはHLBが16以上となると、後述する第1攪拌工程において8μm〜12μmの平均粒径を有する第1エマルジョンの生成が困難となったり、後述する第2攪拌工程において4μm〜6μmの平均粒径を有するエマルジョン燃料の生成が困難となったりする。
【0016】
本発明製造方法において乳化剤は、前記油成分100重量部に対し、0.5重量部〜1.5重量部(好ましくは1±0.2重量部)混合される。乳化剤の混合割合が0.5重量部未満となれば、後述する第1攪拌工程において8μm〜12μmの平均粒径を有する第1エマルジョンの生成が困難となったり、後述する第2攪拌工程において4μm〜6μmの平均粒径を有するエマルジョン燃料の生成が困難となったりする。一方、乳化剤の混合割合が1.5重量部を超えると、エマルジョン燃料がコスト高となったり、着火性や燃焼性が悪くなったりする場合がある。
【0017】
乳化剤としては、イオン性のものと非イオン性のものがあり、本発明においてはいずれを用いても良いが、イオン性の乳化剤と比較して、油成分への溶解性が高く乳化力が大きい非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
【0018】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンドバノールエーテル(ドバノールは三菱化学工業社製の炭素数8〜炭素数24(分枝型を含む)の高級アルコール混合物の商品名であり、ポリオキシエチレンドバノールエーテルは、炭素数8〜炭素数24のアルキル基を疎水基とするポリオキシエチレンアルキルエーテルの混合物と解される。)、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどの「エーテル型非イオン性界面活性剤」、ポリオキシエチレンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸エステル、ソルビタンモノ(又はジ)オレイン酸エステル、ソルビタンモノ(又はジ)ラウリン酸エステル、ソルビタンモノ(又はジ)イソステアリン酸エステルなどの「エステル型非イオン性界面活性剤(エーテルエステル型非イオン性界面活性剤を含む)」を挙げることができる。なお、非イオン性界面活性剤のHLBは、主としてポリオキシエチレン鎖の付加モル数を変えることによって調整することができる。
【0019】
本発明においては、これらの乳化剤から選ばれた一種、若しくは適宜選択された複数種を用いることができる。中でも、乳化力が特に大きいエーテル型非イオン性界面活性剤から選ばれた一種、若しくは適宜選択された複数種を主成分として用いることが好ましい。エーテル型非イオン性界面活性剤を主成分とする場合にあっては、エステル型非イオン性界面活性剤を副成分として併用することが好ましく、特に、HLB5〜HLB15のエーテル型非イオン性界面活性剤に対し、HLB10〜HLB16のエステル型非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。この場合、エーテル型非イオン性界面活性剤と、エステル型非イオン性界面活性剤とを重量比で100:5〜50となるようにして用いることが好ましい。このようにHLBの異なる複数種の乳化剤を併用すれば、最終的に生成されるエマルジョン燃料の乳化状態を一層安定させることができる。なお、複数の乳化剤を併用する場合にあっては、複数の乳化剤が予め混合された混合乳化剤を用いることが取り扱い上の観点から好ましい。
【0020】
本発明のエマルジョン燃料の製造方法においては、まず、少なくとも前記油成分100重量部と、前記水40重量部〜100重量部と、HLB5〜HLB16の前記乳化剤0.5重量部〜1.5重量部とを混合し、攪拌することによって、平均粒径8μm〜12μmの第1エマルジョンを生成する第1攪拌工程を実行する。
【0021】
この際、油成分、水及び乳化剤に加えて、アルキレングリコールを更に混合すれば、係るアルキレングリコールが乳化安定剤として機能し、最終的に生成されるエマルジョン燃料の乳化状態をより安定させることができる。アルキレングリコールの具体例としては、エチレングリコールやプロピレングリコール等を挙げることができる。アルキレングリコールの混合割合としては、油成分100重量部に対し、0.005重量部〜0.1重量部とすることが好ましい。
【0022】
混合された油成分、水及び乳化剤等(以下、混合組成物と称する)を攪拌する手段としては、特に限定されるものではない。本発明においては、回転攪拌式ミキサ、ホモミキサ、ホモジナイザ、インラインミキサ、スタティックミキサ、モーションレスミキサなどの水‐油系エマルジョンを調整する際に用いられる攪拌用機器(乳化用ミキサ)を用いることが好ましい。
【0023】
ここで、前記特定の混合割合で混合された混合組成物を攪拌した場合、長時間にわたって強く攪拌しても、平均粒径が8μm以下のエマルジョンにはならず、前記特定の混合割合であれば、平均粒径は、概ね8μm〜12μmの範囲となることが確認されている。これより、本発明においては、第1エマルジョンの平均粒径が8μm〜12μmの範囲となった時点を第1攪拌工程の終点とする。なお、前記「平均粒径」は、JIS Z8825‐1に記載された測定原理(光散乱法(25℃))に基づき、HORIBA社製レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA‐300)にて測定した算術平均粒径である(以下、エマルジョンの粒径分布に関する値の測定において同じ手段を用いた)。
【0024】
第1攪拌工程終了後、本発明製造方法においては、前記第1エマルジョンを5分以上静置することによって、第2エマルジョンを得る静置工程を実行する。
【0025】
第1エマルジョンは、静置されることによって、分散質同士が接近して、複数の分散質が連なった会合体を形成し、会合体の形成が定常状態となった第2エマルジョンとなる。ここで、「会合体」とは、複数の分散質が連なって形成された分散質の集まりを意味している。この定常状態は、乳化剤の混合割合が多い場合などにあっては、液全体が懸濁している定常状態(相分離が目視で確認できない定常状態)となるが、乳化剤の混合割合が少ない場合などにあっては、上層に油成分の一部が移行して凝集し、油成分の一部が相分離した定常状態となる。
【0026】
なお、この定常状態は、長期間にわたって維持され得る状態を意味するものではなく、分散質の接近・会合が落ち着いた状態を意味する。この定常状態の第2エマルジョンは、第1攪拌工程の終了後、5分以上第1エマルジョンを静置することによって得られることが確認されている。
【0027】
なお、エマルジョンは熱力学的に不安定な系であり、長期間にわたって微細混合されている状態が保たれるわけではなく、最終的に必ず油と水に分かれる。前記第2エマルジョンも、数日間静置すれば、会合体を構成する分散質が合体して粒径が大きくなり、最終的に油と水とに分かれる。従って、静置工程における静置時間である5分以上とは、5分以上、且つ、平均粒径が8μm〜12μmの範囲内にある間を意味する。静置工程において第1エマルジョンを静置する期間は、第1攪拌終了後、5分以上60分以下とすることが好ましい。
【0028】
静置工程において別段の加熱や冷却は必要ない。従って、静置工程は常温下で行うことができる。本発明製造方法においては、20℃〜40℃(好ましくは30℃〜40℃)程度の温和な温度条件下で、前記第1エマルジョンを静置すれば良い。
【0029】
第2エマルジョンが得られた後、本発明製造方法においては、前記第2エマルジョンを再度攪拌し、平均粒径4μm〜6μmのエマルジョン燃料を生成する第2攪拌工程を実行する。
【0030】
前記特定の混合割合で混合された混合組成物を連続的に長時間にわたって強く攪拌しても、平均粒径8μm〜12μmの第1エマルジョンにしかならないのに対し、前記第1攪拌工程の後、前記静置工程を経て、第2攪拌工程を行えば、平均粒径4μm〜6μmのエマルジョン燃料となることが確認されている。又、第2攪拌工程における攪拌条件によって、エマルジョン燃料の生成時間(第2攪拌工程の終点)は変わってくるが、長時間にわたって強く攪拌しても、エマルジョン燃料中の分散質の平均粒径は一定値以下になることは殆ど無い。混合組成物の混合割合を前述のとおりとし、前記第1攪拌工程の後、前記静置工程を経て、第2攪拌工程を実行すれば、第2攪拌工程の攪拌条件にかかわらず、エマルジョン燃料中の分散質の平均粒径は、概ね4μm〜6μmの範囲となることが確認されている。これより、本発明においては、エマルジョン燃料の平均粒径が4μm〜6μmの範囲となった時点を第2攪拌工程の終点とする。
【0031】
ここで、前記第1攪拌工程の後、前記静置工程を経て、第2攪拌工程を行うことによって、エマルジョン燃料の平均粒径が4μm〜6μmとなるメカニズムの詳細は現在のところ不明である。おそらく、第1攪拌工程を長時間続けても、第1エマルジョン中において十分に分散された分散質は、その後、いくら攪拌しても液中を粒径を維持したまま不規則に移動させられるだけで、大きな剪断力が与えられないのに対し、静置工程によって会合体を形成した後に第2攪拌工程を行えば、特に第2攪拌工程初期において会合体に対する大きな剪断力が与えられ、その結果、平均粒径が小さくなっているものと考えられる。
【0032】
なお、本発明製造方法においては、前記第1攪拌工程に先立ち、前記油成分と前記乳化剤とを混合することによって、前記油成分と前記乳化剤とが混合された混合液を生成する混合液生成工程を更に実行することが好ましい。この混合液生成工程を実行した場合、前記第1攪拌工程において、混合液生成工程において生成された混合液と、前記水と、を混合して攪拌し、前記第1エマルジョンを生成する。
【0033】
この混合液生成工程を実行すれば、最終的に生成されるエマルジョン燃料の乳化状態をより安定させることができる。このメカニズムの詳細は現在のところ不明であるが、油成分と乳化剤とが予め均一に混合されることによって、第一攪拌工程の攪拌初期において、乳化剤が油成分及び水と接触する機会が増えることが原因と想定される。
【0034】
また、本発明製造方法においては、前記第1攪拌工程に先立ち、前記油成分又は前記水の一方又は両方に対し磁気処理を行う磁気処理工程を実行することが好ましい。
【0035】
この磁気処理工程を実行すれば、更に安定した乳化状態のエマルジョン燃料を生成することができる。このメカニズムの詳細は現在のところ不明であるが、磁気処理によって油成分や水の表面張力が変化することが原因と想定される。
【0036】
本発明のエマルジョン燃料は、前記本発明製造方法によって製造されたエマルジョン燃料であって、このエマルジョン燃料は、第2攪拌工程後、少なくとも2週間の期間、4μm〜6μmのメジアン径が維持されることを特徴とする。
【0037】
本発明のエマルジョン燃料は、分散質の粒径が小さいことから、長期間にわたって安定した乳化状態を維持する。
【0038】
ところで、本発明において「エマルジョン燃料の安定した乳化状態」とは、第2攪拌工程後、少なくとも2週間の間エマルジョン燃料が相分離しないことを意味しているのではない。又、第2攪拌工程後、少なくとも2週間の間、平均粒径が4μm〜6μmを維持することを意味するものでもない。例えば、混合される乳化剤の種類や量によって、本発明のエマルジョン燃料は、第2攪拌工程後2週間以内に相分離する場合もある。又、平均粒径は時間の経過と共に徐々に大きくなる。しかしながら、本発明のエマルジョン燃料は、相分離した場合にあっても、緩やかな振動や循環、或いは緩やかな攪拌を行うことによって、液全体が速やかに懸濁し、分散質である油滴が均一に分散された状態に回復することが確認されている。又、本発明のエマルジョン燃料は、時間の経過とともに平均粒径は徐々に大きくなるが、分布の最大値であるメジアン径は長期間にわたって4μm〜6μmを維持する。従って、本発明において、「エマルジョン燃料の安定した乳化状態」とは、第2攪拌後、エマルジョン燃料が、少なくとも2週間の間、4μm〜6μmのメジアン径を維持することを意味する。
【0039】
本発明のエマルジョン燃料においては、ニトロ化合物が配合されてなるものが好ましい態様となる。
【0040】
エマルジョン燃料に配合されたニトロ化合物は、特に、エマルジョン燃料の着火性を向上する着火性向上剤として機能する。ニトロ化合物の具体例としては、ニトロメタン、ニトロエタン、1‐ニトロプロパン、2‐ニトロプロパン、ニトロベンゼン、2‐エチルヘキシルニトレート等を挙げることができる。ニトロ化合物の配合量としては、油成分100重量部に対し、0.005重量部〜0.05重量部とすることが好ましい。
【0041】
又、本発明のエマルジョン燃料においては、アミン化合物が配合されてなるものが好ましい態様となる。
【0042】
エマルジョン燃料に配合されたアミン化合物は、エマルジョン燃料を製造する装置や保存容器の腐食を防止する防錆剤として機能する。アミン化合物の具体例としては、安息香酸、パラニトロ安息香酸、メタニトロ安息香酸などの安息香酸類のアミン塩や、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノイソプロピルアミン塩等を挙げることができる。アミン化合物の配合量としては、油成分100重量部に対し、0.005重量部〜0.05重量部とすることが好ましい。
【0043】
前記ニトロ化合物及びアミン化合物を配合するタイミングとしては、前記本発明製造方法におけるいずれの工程において配合しても良く、又、エマルジョン燃料が製造された後に配合しても良い。前記ニトロ化合物及びアミン化合物は、前記本発明製造方法における第1攪拌工程において配合することが好ましい。又、前記ニトロ化合物及びアミン化合物は、前記乳化剤に予め混合された状態で第1攪拌工程において配合することが好ましい。
【0044】
上記課題を解決するために、本発明に係るエマルジョン燃料製造装置は、以下のように構成されている。
【0045】
即ち、本発明に係るエマルジョン燃料製造装置は、軽油、A重油若しくは軽油及びA重油の混合物からなる油成分と、水と、乳化剤と、を混合してエマルジョン燃料を製造するエマルジョン燃料製造装置であって、少なくとも前記油成分100重量部と、前記水40重量部〜100重量部と、HLB5〜HLB16の前記乳化剤0.5重量部〜1.5重量部とを混合し、攪拌することによって、平均粒径8μm〜12μmの第1エマルジョンを生成する第1攪拌工程と、前記第1攪拌工程の後、前記第1エマルジョンを5分以上静置して第2エマルジョンを得る静置工程と、前記第2エマルジョンを再度攪拌し、平均粒径4μm〜6μmのエマルジョン燃料を生成する第2攪拌工程と、を実行することを特徴としている。
【0046】
かかる構成を備えるエマルジョン燃料製造装置によれば、前記水40重量部〜100重量部と、HLB5〜HLB16の前記乳化剤0.5重量部〜1.5重量部とを混合し、攪拌することによって、平均粒径8μm〜12μmの第1エマルジョンを生成する第1攪拌工程と、前記第1攪拌工程の後、前記第1エマルジョンを5分以上静置して第2エマルジョンを得る静置工程と、前記第2エマルジョンを再度攪拌し、平均粒径4μm〜6μmのエマルジョン燃料を生成する第2攪拌工程と、が実行されるため、分散質の平均粒径が4μm〜6μmと非常に小さくなされたエマルジョン燃料を製造することができるので、長期間に亘って安定したエマルジョン燃料を生成することができる。
【0047】
また、本発明に係るエマルジョン燃料製造装置は、軽油、A重油、若しくは軽油とA重油の混合物からなる油成分と、水と、乳化剤とを混合してエマルジョン燃料を製造するエマルジョン燃料製造装置であって、エマルジョンを収容するタンクと、前記タンク内で前記エマルジョンを攪拌するアジテータと、前記タンクから流出された前記エマルジョンを、再度当該タンク内へ流入させる循環配管と、前記循環配管に介設され、前記タンクから流出された前記エマルジョンを当該タンク内へ流入させるポンプと、前記循環配管の前記ポンプ下流側に介設され、前記エマルジョンを攪拌するスタティックミキサと、前記循環配管の前記ポンプ下流側に介設され、前記エマルジョン燃料を磁気処理する磁気処理器と、を備える。
【0048】
ここで、「エマルジョン」とは、本発明に係るエマルジョン燃料の製造方法において実行される第1攪拌工程、静置工程、及び、第2攪拌工程で、それぞれ生成されるエマルジョン又はエマルジョン燃料を含む概念である。すなわち、「エマルジョン」とは、前記第1攪拌工程で生成される第1エマルジョン、前記静置工程で得られる第2エマルジョン、及び、前記第2攪拌工程で生成されるエマルジョン燃料を含む概念である。
【0049】
かかる構成を備えるエマルジョン燃料製造装置によれば、タンクに収容されたエマルジョンがアジテータによって攪拌されると共に、ポンプによってエマルジョンが循環配管を介して、スタティックミキサを通過させられることにより攪拌されるため、エマルジョンを効果的に攪拌することができる。更に、ポンプによってエマルジョンが循環配管を介して、磁気処理器を通過させられることにより磁気処理されるため、安定したエマルジョン燃料を生成することができる。
【0050】
また、本発明に係るエマルジョン燃料製造装置は、前記アジテータが、回動可能に構成された回転軸と、当該回転軸の先端部に装着された攪拌翼と、を備え、前記攪拌翼が、前記回転軸の軸方向に垂直に係止された円板状の基体部と、該基体部の外周部に沿って該基体部に対して垂直方向に立設された複数の羽根部と、を備え、前記基体部が、当該基体部の中心位置に前記回転軸が挿通されて係止され、前記複数の羽根部が、それぞれ、上下方向に交互に立設された平板状部材からなり、前記平板状部材が、回転方向の先端側が回転方向の後端側に対して径方向の外周側に傾斜して形成されていることが好ましい。
【0051】
かかる構成を備えるエマルジョン燃料製造装置によれば、アジテータの回転軸の先端部に装着された攪拌翼が、回転軸の軸方向に垂直に係止された円板状の基体部の外周部に沿って、該基体部に対して垂直方向に立設された複数の羽根部を有しており、この複数の羽根部が、それぞれ、上下方向に交互に立設された平板状部材からなり、この平板状部材が、回転方向の先端側が回転方向の後端側に対して径方向の外周側に傾斜して形成されているため、攪拌翼が高速(例えば、1500rpm)で回転することによって、複数の羽根部によってエマルジョンに高い剪断効果が付与される。したがって、エマルジョンの細粒化、均一化を促進することができるので、更に安定したエマルジョン燃料を生成することができる。
【0052】
また、本発明に係るエマルジョン燃料製造装置は、前記アジテータが、前記攪拌翼を1分間当り1000回転以上、且つ、1分間当り3000回転以下の回転速度で回転させることが好ましい。
【0053】
かかる構成を備えるエマルジョン燃料製造装置によれば、アジテータの攪拌翼が、1分間当り1000回転以上、且つ、1分間当り3000回転以下の回転速度で回転されるため、エマルジョンに更に高い剪断効果を付与することができる。したがって、エマルジョンの細粒化、均一化を促進することができるので、更に安定したエマルジョン燃料を生成することができる。
【0054】
また、本発明に係るエマルジョン燃料製造装置は、前記タンクが、略円筒状のタンクであって、前記攪拌翼の直径が、前記タンクの直径の(1/6)以上、且つ、前記タンクの直径の(1/3)以下に形成されていることことが好ましい。
【0055】
かかる構成を備えるエマルジョン燃料製造装置によれば、タンクが、略円筒状のタンクであって、アジテータの攪拌翼の直径が、タンクの直径の(1/6)以上、且つ、タンクの直径の(1/3)以下に形成されているため、タンク内に収容されたエマルジョンの全体を対流させると共に、エマルジョンに更に高い剪断効果を付与することができる。したがって、エマルジョンの細粒化、均一化を促進することができるので、更に安定したエマルジョン燃料を生成することができる。
【0056】
また、本発明に係るエマルジョン燃料製造装置は、前記回転軸が、前記タンクの中心軸に対して、10度以上、且つ、30度以下の傾斜角で配設されていることが好ましい。
【0057】
かかる構成を備えるエマルジョン燃料製造装置によれば、アジテータの回転軸が、タンクの中心軸に対して、10度以上、且つ、30度以下の傾斜角で配設されているため、タンク内に収容されたエマルジョンの全体を更に効果的に対流させることができるので、更に安定したエマルジョン燃料を生成することができる。
【0058】
また、本発明に係るエマルジョン燃料製造装置は、前記攪拌翼が、その中心位置が、前記タンク底面から、前記タンクの底面から前記タンクに収容されているエマルジョン燃料の液面までの深さであるエマルジョン燃料深さの(1/40)以上、且つ、前記エマルジョン燃料深さの(1/3)以下の距離だけ離間した位置であって、前記タンク側面から、前記タンクの直径の(1/6)以上、且つ、前記タンクの直径の(1/3)以下の距離だけ離間した位置に配設されていることが好ましい。
【0059】
かかる構成を備えるエマルジョン燃料製造装置によれば、アジテータの攪拌翼の中心位置が、エマルジョン燃料深さの(1/40)以上、且つ、エマルジョン燃料深さの(1/3)以下の距離だけ離間した位置であって、タンク側面から、タンクの直径の(1/6)以上、且つ、タンクの直径の(1/3)以下の距離だけ離間した位置に配設されているため、タンク内に収容されたエマルジョンの全体を更に効果的に対流させることができるので、更に安定したエマルジョン燃料を生成することができる。
【0060】
上記課題を解決するために、本発明に係るエマルジョン燃料の製造方法は、以下のように構成されている。
【0061】
即ち、本発明に係るエマルジョン燃料の製造方法は、軽油、A重油若しくは軽油及びA重油の混合物からなる油成分と、水と、乳化剤と、を混合してエマルジョン燃料を製造するエマルジョン燃料の製造方法であって、本発明に係る上記エマルジョン燃料製造装置を用いて、平均粒径4μm〜6μmのエマルジョン燃料を製造することを特徴としている。
【0062】
かかる構成を備えるエマルジョン燃料の製造方法によれば、均粒径4μm〜6μmのエマルジョン燃料が、本発明に係る上記エマルジョン燃料製造装置を用いて製造されるため、長期間に亘って安定したエマルジョン燃料を効率的に製造することができる。
【発明の効果】
【0063】
本発明に係るエマルジョン燃料の製造方法、エマルジョン燃料及び、エマルジョン燃料製造装置によれば、長期間に亘って安定したエマルジョン燃料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】第1攪拌工程終了時において得られた第1エマルジョンの粒径分布図である。
【図2】図1に示す第1エマルジョンの粒径分布をデータで示す図表である。
【図3】第1攪拌工程終了時において得られた第1エマルジョンを撮影した電子顕微鏡写真である。
【図4】第1攪拌工程後、静置工程(5分)を経て得られた第2エマルジョンの粒径分布図である。
【図5】図4に示す第2エマルジョンの粒径分布をデータで示す図表である
【図6】第1攪拌工程後、静置工程(5分)を経て得られた第2エマルジョンを撮影した電子顕微鏡写真である。
【図7】第1攪拌工程後、静置工程(10分)を経て得られた第2エマルジョンの粒径分布図である。
【図8】図7に示す第2エマルジョンの粒径分布をデータで示す図表である。
【図9】第1攪拌工程後、静置工程(10分)を経て得られた第2エマルジョンを撮影した電子顕微鏡写真である。
【図10】第2攪拌工程後に得られたエマルジョン燃料の粒径分布図である。
【図11】図10に示すエマルジョン燃料の粒径分布をデータで示す図表である。
【図12】第2攪拌工程後に得られたエマルジョン燃料を撮影した電子顕微鏡写真である。
【図13】第2攪拌工程後、2週間経過した後のエマルジョン燃料の粒径分布図である。
【図14】図13で示すエマルジョン燃料の粒径分布をデータで示す図表である。
【図15】第2攪拌工程後、2週間経過した後のエマルジョン燃料を撮影した電子顕微鏡写真である。
【図16】本発明に係るエマルジョン燃料製造装置の一例を示す全体構成図である。
【図17】図16のエマルジョン燃料製造装置に配設される磁気処理器としての磁気処理器の一例を示す側面断面図である。
【図18】図16のエマルジョン燃料製造装置に配設されるスタティックミキサの一例を示す側面断面図である。
【図19】図16のエマルジョン燃料製造装置に配設される混合タンク及びアジテータの一例を示す透視側面図である。
【図20】図19に示すアジテータの攪拌翼の一例を示す側面図及び平面図である。
【図21】本発明に係るエマルジョン燃料製造方法の一例を示すフローチャートである。
【図22】図21に示すフローチャートのステップS1における水磁気処理の一例を示す詳細フローチャートである。
【図23】図22に示す水磁気処理における水の流れを示す説明図である。
【図24】図21に示すフローチャートのステップS2における重油磁気処理の一例を示す詳細フローチャートである。
【図25】図24に示す重油磁気処理におけるA重油の流れを示す説明図である。
【図26】図21に示すフローチャートのステップS3における混合液生成処理の一例を示す詳細フローチャートである。
【図27】図26に示す混合液生成処理における乳化剤及び混合液の流れを示す説明図である。
【図28】図21に示すフローチャートのステップS4における第1攪拌処理の一例を示す詳細フローチャートである。
【図29】図28に示す第1攪拌処理における水及びエマルジョンの流れを示す説明図である。
【図30】図31に示すフローチャートのステップS6における第2攪拌処理の一例を示す詳細フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下、本発明を実施するための形態を説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0066】
[実施例1〜実施例10]
‐成分‐
油成分として、JIS K 2205(1980)に規定された1種(A重油)1号(LSA重油)を用いた。
【0067】
水として、水道水を用いた。
【0068】
乳化剤として、コスゲン社製、商品名:サンアクア(乳化主成分としての複数種のポリオキシエチレンアルキルエーテル(HLB8〜HLB12)と、乳化副成分としてのエステル型非イオン性界面活性剤(HLB14)を含有し、更に、少量のエチレングリコール、ニトロ化合物及びアミン化合物が添加されたもの)を用いた。
【0069】
‐第1攪拌工程‐
前記各成分を所定割合で混合し、500gを1リットルビーカー内にて、ホモミキサーで十分に攪拌し(2000rpm、35℃)、第1エマルジョンを生成した。各成分の混合割合を表1に示し、第1エマルジョンの粒径分布に関するデータを下記表2に示す。なお、粒径分布は、HORIBA社製レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA‐300)にて3回測定した値の平均値である。
【0070】
又、参考として、第1攪拌工程終了時において得られた第1エマルジョン(実施例5のもの)の粒径分布図を図1に示し、その粒径分布をデータで示す図表を図2に示し、その電子顕微鏡写真を図3に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
表2、図1及び図2に示す結果より、第1攪拌工程によって、第1エマルジョン中の分散質の平均粒径は、実施例1〜実施例10において、8μm〜12μmの範囲内にあることが認められた。又、標準偏差(算術標準偏差)は、3.5μm〜6μmの範囲内にあり、メジアン径は、8μm〜11.5μmの範囲内にあることが確認された。又、図3に示す電子顕微鏡写真により、第1攪拌工程終了時において、第1エマルジョン中の分散質Mは十分に分散していることが認められた。なお、ホモミキサーの攪拌速度を上げ、更に攪拌時間を延ばして第1攪拌工程を行っても8μm〜12μmの範囲内の粒径分布となることが確認されている。
【0074】
‐静置工程‐
第1攪拌工程で得られた第1エマルジョンを、静置(5分及び10分)する静置工程を行うことにより第2エマルジョンを得た。得られた第2エマルジョンの状態(目視により判定)、及び測定した平均粒径(油相が上層に相分離している場合は、下層のエマルジョン相の平均粒径)を表3に示す。
【0075】
又、参考として、得られた第2エマルジョン(実施例5(5分静置))の粒径分布図を図4に示し、その粒径分布をデータで示す図表を図5に示し、その電子顕微鏡写真を図6に示す。更に、得られた第2エマルジョン(実施例5のもの(10分静置))の粒径分布図を図7に示し、その粒径分布をデータで示す図表を図8に示し、その電子顕微鏡写真を図9に示す。
【0076】
【表3】

【0077】
表3、図4、図5、図7、図8に示す結果より、静置工程を行って得られた第2エマルジョンは、8μm〜12μmの平均粒径を維持していることが認められた。又、図6及び図9に示す電子顕微鏡写真により、第2エマルジョン中の分散質M(特に粒径の大きいもの)は、静置工程によって接近・会合し、複数の分散質Mが連なった会合体Gを形成していることが認められた。
【0078】
‐第2攪拌工程‐
5分の静置工程によって得られた第2エマルジョンをホモミキサーで再度攪拌し(2000rpm、35℃)、エマルジョン燃料を生成した。
【0079】
第2攪拌工程終了時のエマルジョン燃料の粒径分布を下記表4に示す。
【0080】
又、参考として、得られた第2攪拌工程終了時のエマルジョン燃料(実施例5のもの)の粒径分布図を図10に示し、その粒径分布をデータで示す図表を図11に示し、その電子顕微鏡写真を図12に示す。
【0081】
【表4】

【0082】
表4、図10及び図11に示す結果より、第2攪拌工程によって得られたエマルジョン燃料中の分散質の平均粒径は4μm〜6μmの範囲内にあり、第1攪拌終了時よりかなり小さくなっていることが確認された。又、標準偏差(算術標準偏差)は、2.5μm〜4μmの範囲となり、メジアン径は、4μm〜6μmの範囲内にあることが認められた。更に、粒径6μm以下の分散質の割合は50%以上で、粒径4μm〜6μmの分散質の割合は、25%〜40%となっており、粒径6μm以下の分散質の割合が高いことが認められた。図12に示す電子顕微鏡写真からも、エマルジョン燃料中の分散質mは粒径が小さくなって、十分に分散していることが確認できた。
【0083】
その後、各実施例に係るエマルジョン燃料を2週間静置した。下記表5は、第2攪拌工程終了後2週間経過時に測定したエマルジョン燃料の粒径分布及びそのときの状態を示す表である。
【0084】
又、参考として、第2攪拌工程終了後2週間経過時のエマルジョン燃料(実施例5のもの)の粒径分布図を図13に示し、その粒径分布をデータで示す図表を図14に示し、その電子顕微鏡写真を図15に示す。
【0085】
【表5】

【0086】
表5、図13、図14に示す結果より、第2攪拌工程終了後2週間経過した時点のエマルジョン燃料の分散質の平均粒径は、8μm〜12μmとなり、又、標準偏差(算術標準偏差)は、16μm〜20μmとなっていることから、時間の経過と共に、分布の広がりが生じていることが認められた。しかしながら、その際のメジアン径は、第2攪拌直後に測定したメジアン径とほぼ同等であった。又、粒径6μm以下の分散質の割合は40%以上有り、粒径4μm〜6μmの分散質の割合は15%〜30%となっていることから、粒径6μm以下の分散質の割合が高いまま、しかも粒径4μm〜6μmの分散質の割合が高いまま維持されていることが認められた。図15に示す電子顕微鏡写真からも、粒径4μm〜6μmの分散質mの頻度が高いことを確認することができた。
【0087】
なお、実施例1及び2において得られたエマルジョン燃料は、2週間経過後に相分離していることが確認されたが、軽く攪拌するだけで再び均一に懸濁することが認められた。
【0088】
‐燃焼試験‐
実施例1〜実施例10にて得られたエマルジョン燃料(2週間経過後のものを35℃に加温し、軽く攪拌して均一に懸濁させたもの)をバーナーにて着火し、その着火性及び燃焼安定性について評価した結果を下記表6に示す。
【0089】
なお表中の評価は、着火性については、
◎:バーナーの炎に触れた瞬間速やかに着火
○:バーナーの炎に晒された後、2秒〜3秒経過して着火
△:バーナーの炎に晒された後、しばらく経過した後着火
×:着火せず
を意味する。
【0090】
又、燃焼安定性については、
◎:安定的に燃焼
○:炎に若干の揺らぎが認められる
△:炎にかなりの揺らぎが認められる
×:安定して燃焼しない
を意味する。
【0091】
【表6】

【0092】
表6に示す結果より、実施例1〜実施例10にて得られたエマルジョン燃料の良好な着火性及び燃焼安定性が認められた。
【0093】
[実施例11〜実施例18]
‐成分‐
油成分として、JIS K 2205(1980)に規定された1種(A重油)1号(LSA重油)を100重量部用いた。
【0094】
水として、水道水50重量部を用いた。
【0095】
乳化剤として、下記表7に示すものをそれぞれ1重量部用いた。
【0096】
【表7】

【0097】
油成分、水及び各乳化剤を混合し、前記実施例1〜実施例10と同様の条件で、第1攪拌工程、静置工程及び第2攪拌工程に供することによって、エマルジョン燃料を得た。
【0098】
各工程における粒径分布を下記表8に示す。
【0099】
【表8】

【0100】
表8に示す結果より、第1攪拌工程によって得られた第1エマルジョンの平均粒径は、各実施例においていずれも8μm〜12μmの範囲内であったのに対し、静置工程を経て、第2攪拌工程を行うことによって、平均粒径4μm〜6μmの範囲内のエマルジョン燃料となっていることが確認された。又、各実施例において得られたエマルジョン燃料は、2週間経過した後も4μm〜6μmの範囲内のメジアン径を維持していることが認められた、なお、2週間経過した後のエマルジョン燃料における粒径6μm以下の分散質の割合は、各実施例においていずれも40%以上であり、しかも粒径4μm〜6μmの分散質の割合は、20%〜30%の範囲内であった。更に、各実施例において得られたエマルジョン燃料は、いずれも良好な着火性及び燃焼性を示すことが確認された。
【0101】
なお、前記実施例1〜実施例18は、油成分としてLSA重油を用いているが、LSA重油に替えて、その他の種類のA重油(例えば、HSA重油等)や軽油、或いはA重油と軽油の混合物を用いても、第1攪拌工程によって得られる第1エマルジョンの平均粒径は8μm〜12μmの範囲内にあり、静置工程を経て、第2攪拌工程を行うことによって精製されるエマルジョン燃料の平均粒径は4μm〜6μmの範囲内にあった。又、このエマルジョン燃料は、2週間経過した後も4μm〜6μmの範囲内のメジアン径を維持しており、2週間経過した後のエマルジョン燃料における粒径6μm以下の分散質の割合は40%以上であり、しかも粒径4μm〜6μmの分散質の割合は、20%〜30%の範囲内であった。更に、このエマルジョン燃料は、良好な着火性及び燃焼性を示すことが確認された。
【0102】
続いて、本発明のエマルジョン燃料装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0103】
−エマルジョン燃料製造装置100−
まず、図16〜図20を参照して、本発明に係るエマルジョン燃料製造装置100の一実施形態について説明する。図16は、本発明に係るエマルジョン燃料製造装置100の一例を示す全体構成図である。以下、図16を参照してエマルジョン燃料製造装置100の全体構成について説明する。エマルジョン燃料製造装置100は、油成分と、水と、乳化剤とを混合してエマルジョン燃料を製造するエマルジョン燃料製造装置であって、基油タンク1及びエマルジョン燃料タンク8に配管を介して接続されている。
【0104】
基油タンク1は、油成分を収容するタンクである。後述するように、基油タンク1に収容された油成分は、エマルジョン燃料製造装置100に配設された基油混合ポンプ2によって混合タンク7へ移送される。ここでは、基油タンク1に収容される油成分は、JIS K 2205に規定された1種(A重油)1号(LSA重油)である。本実施形態では、油成分がLSA重油である場合について説明するが、その他の種類のA重油(例えば、HSA重油等)である形態でも良く又、軽油であっても、A重油と軽油の混合物であっても良い。
【0105】
エマルジョン燃料タンク8は、エマルジョン燃料製造装置100によって製造されたエマルジョン燃料を収容するタンクである。エマルジョン燃料タンク8に収容されたエマルジョン燃料は、配管を介してボイラに供給される。ここで、ボイラでエマルジョン燃料が燃焼される際には、エマルジョン燃料中の水が沸騰し蒸発して微爆発を起こすため、エマルジョン燃料中のA重油が微粒子化される。したがって、A重油と空気との接触面積が増加するため、A重油が完全燃焼されて、NOx及び粒子状物質の発生が低減される。
【0106】
エマルジョン燃料製造装置100は、基油混合ポンプ2、水タンク3、水ポンプ4、乳化剤タンク5、乳化剤ポンプ6、及び、混合タンク7を備えている。
【0107】
基油混合ポンプ2は、A重油を基油タンク1から混合タンク7へ移送すると共に、混合タンク7に収容されたエマルジョン燃料を、磁気処理器72及びスタティックミキサ73が介設された循環配管(図25、図27参照)を介して循環させるポンプである。なお、磁気処理器72は、特許請求の範囲に記載された発明における「磁気処理器」に相当し、この磁気処理器72については、図17を用いて後述する。また、スタティックミキサ73については、図18を用いて後述する。ここでは、基油混合ポンプ2は、例えば、トロコイドポンプ(日本オイルポンプ株式会社の登録商標)である。なお、トロコイドポンプは、トロコイド曲線を使用した内接ギアポンプである。また、基油混合ポンプ2の吐出量は、ここでは、毎分36リットルである。ここで、基油混合ポンプ2は、特許請求の範囲に記載された発明における「ポンプ」に相当する。
【0108】
水タンク3は、外部(例えば、上水道)から供給された水を収容するタンクである。ここで、水タンク3の容量は、20リットルである。水タンク3に収容された水は、水ポンプ4によって磁気処理器33が介設された循環配管(図23参照)を介して循環されると共に、水ポンプ4によって混合タンク7へ移送される。なお、磁気処理器33は、特許請求の範囲に記載された発明における「磁気処理器」に相当し、この磁気処理器33については、図17を用いて後述する。
【0109】
水ポンプ4は、水タンク3に収容された水を、磁気処理器33が介設された循環配管(図23参照)を介して循環させると共に、水タンク3に収容された水を混合タンク7へ移送するポンプである。ここでは、水ポンプ4は、マグネット駆動式渦巻ポンプである。また、水ポンプ4の吐出量は、ここでは、毎分9リットルである。
【0110】
乳化剤タンク5は、乳化剤を収容するタンクである。なお、乳化剤は、作業者によって乳化剤タンク5に適宜補充される。乳化剤タンク5に収容された乳化剤は、乳化剤ポンプ6によって混合タンク7へ移送される。ここで、乳化剤タンク5の容量は、25リットルである。また、乳化剤タンク5に収納される乳化剤は、安定なエマルジョン燃料を形成するために添加される両親媒性物質であり、HLB5〜HLB16のものが用いられる。ここでは乳化剤として、コスゲン株式会社製、商品名「サンアクア」を用いた。
【0111】
乳化剤ポンプ6は、乳化剤タンク5に収容された乳化剤を、混合タンク7へ移送するポンプである。乳化剤ポンプ6は、ここでは、マグネット駆動式渦巻ポンプである。また、乳化剤ポンプ6の吐出量は、ここでは、毎分0.12リットルである。
【0112】
混合タンク7は、エマルジョン(第1エマルジョン、第2エマルジョン、又は、エマルジョン燃料)を収容するタンクである。混合タンク7に収容されたエマルジョンは、混合タンク7に配設されたアジテータ71で攪拌されると共に、基油混合ポンプ2によって磁気処理器72及びスタティックミキサ73が介設された循環配管(図25、図27参照)を介して循環される。なお、磁気処理器72については、図17を用いて後述する。また、スタティックミキサ73については、図18を用いて後述する。ここで、混合タンク7の容量は、70リットルである。ここで、混合タンク7は、特許請求の範囲に記載された発明における「タンク」に相当する。
【0113】
基油タンク1と基油混合ポンプ2との間の配管には、電動バルブ21が介設されている。また、混合タンク7の流出側(下端吐出口)と基油混合ポンプ2の流入側との間の配管には、電動バルブ22が介設されている。基油混合ポンプ2の吐出側と混合タンク7の流入側(上端流入口)との間の配管には、電動バルブ23、磁気処理器72及びスタティックミキサ73がこの順序で直列に介設されている。基油混合ポンプ2の吐出側とエマルジョン燃料タンク8との間の配管には、電動バルブ24が介設されている。
【0114】
更に、上水道と水タンク3との間の配管には、電動バルブ31が介設されている。水ポンプ4の吐出側と、水タンク3の流入側(上端流入口)との間の配管には、電動バルブ32が介設されている。水ポンプ4の吐出側と、混合タンク7の流入側(上端流入口)との間の配管には、磁気処理器33及び電動バルブ34がこの順序で直列に介設されている。
【0115】
加えて、乳化剤タンク5と乳化剤ポンプ6の流入側との間には、電動バルブ61が介設されている。乳化剤ポンプ6の吐出側と乳化剤タンク5の流入側(上端流入口)との間の配管には、電動バルブ62が介設されている。乳化剤ポンプ6の吐出側と混合タンク7の流入側(上端流入口)との間の配管には、電動バルブ63が介設されている。
【0116】
このようにして、混合タンク7に収容されたエマルジョンがアジテータ71によって攪拌されると共に、基油混合ポンプ2によってエマルジョンが循環配管を介して、スタティックミキサ73を通過させられることにより攪拌されるため、エマルジョンを効果的に攪拌することができる。更に、基油混合ポンプ2によってエマルジョンが循環配管を介して、磁気処理器72を通過させられることにより磁気処理されるため、安定した乳化状態のエマルジョン燃料を生成することができる。
【0117】
本実施形態では、スタティックミキサ73が磁気処理器72の下流側に配設されている場合について説明するが、スタティックミキサ73が磁気処理器72の上流側に配設されている形態でもよい。
【0118】
また、本実施形態では、混合タンク7の循環配管に1つのスタティックミキサ73と1つの磁気処理器72とが直列に介設されている場合について説明するが、混合タンク7の循環配管に少なくとも1つのスタティックミキサ73と少なくとも1つの磁気処理器72とが直列に介設されている形態であればよい。
【0119】
例えば、混合タンク7の循環配管に直列に配設された複数のスタティックミキサ73と、直列に配設された複数の磁気処理器72とが直列に介設されている形態でもよい。この場合には、エマルジョンを更に効果的に攪拌することができると共に、更に安定した乳化状態のエマルジョン燃料を生成することができる。
【0120】
また、例えば、混合タンク7の循環配管に並列に配設された複数のスタティックミキサ73と、並列に配設された複数の磁気処理器72とが直列に介設されている形態でもよい。この場合には、エマルジョンの単位時間当りの循環流量を増大することができるため、エマルジョン燃料を効率的に製造することができる。
【0121】
また、本実施形態では、混合タンク7内に1つのアジテータ71が配設される場合について説明するが、混合タンク7内に複数のアジテータ71が配設される形態でもよい。この場合には、エマルジョンを更に効果的に攪拌することができる。
【0122】
本実施形態では、基油タンク1及びエマルジョン燃料タンク8が、エマルジョン燃料製造装置100の外部に設置されている場合について説明するが、基油タンク1及びエマルジョン燃料タンク8の少なくとも一方が、エマルジョン燃料製造装置100の内部に配設されている形態でもよい。
【0123】
−磁気処理器33、72−
図17は、図16のエマルジョン燃料製造装置100に配設される磁気処理器33、72の一例を示す側面断面図である。図17を参照して、磁気処理器33、72の構造について説明する。なお、磁気処理器33、72は、略同一の構造を有するため、以下の説明においては、便宜上、磁気処理器33について説明する。
【0124】
磁気処理器33は、水、A重油、エマルジョン等の流体を強力な磁界中を通過させて、磁気処理するものである。磁気処理器33は、図17に示すように、外周側遮蔽板331、外周側磁石332、内周側磁石333、内周側遮蔽板334、外周管335、外筒336及び内筒337を備えている。
【0125】
外周側遮蔽板331は、外周側磁石332の外周側に配設され、外周側磁石332からの磁力線が外部に漏れることを防止する遮蔽板である。
【0126】
外周側磁石332は、外周側遮蔽板331と外周管335との間に配設され、対向して配置された内周側遮蔽板334との間で強力な磁場(例えば、14000ガウス)を形成するネオジム磁石(Neodymiumu magnet)である。
【0127】
内周側磁石333は、内筒337の外周面と内周側遮蔽板334の間に配設され、対向して配置された外周側磁石332との間で強力な磁場を形成するネオジム磁石である。
【0128】
内周側遮蔽板334は、内周側磁石333の内周側に配設され、内周側磁石333(例えば、上側の内周側磁石333)からの磁力線が対向する内周側磁石333(例えば、下側の内周側磁石333)に漏れることを防止する遮蔽板である。
【0129】
外周管335は、円筒状の管であって、内部に内筒337が配設され、外周管335の内周面と内筒337の外周面との間に、水、A重油、エマルジョン等の流体が流される流路を形成するものである。
【0130】
外筒336は、外周側遮蔽板331及び外周側磁石332の外周側に配設され、端部が外周管335に接続された円筒状の筐体である。
【0131】
内筒337は、内周側磁石333及び内周側遮蔽板334が中心軸に対して線対称に配設される円筒状部材であって、その外周面が外周管335の内周面と予め設定された所定距離(例えば、5mm)だけ離間した状態で、外周管335に固定されている。
【0132】
図17の左側から流入した流体は、内筒337の左側端部位置で、矢印V11、V21で示す上下方向に分流する。そして、流体は、外周側磁石332と内周側磁石333との間の強力な磁場内を、矢印V12、V22、及び、矢印V13、V23で示すように流れる。更に、流体は、内筒337の右側端部位置で、合流する。
【0133】
このように、磁気処理器33、72によって形成された強力な磁場中を、水、A重油、エマルジョン等の流体が流されるため、該流体を効果的に磁気処理することができる。
【0134】
−スタティックミキサ73−
図18は、エマルジョン燃料製造装置100に配設されるスタティックミキサ73の一例を示す側面断面図である。(a)は、スタティックミキサ73による分割作用の一例を示す側面断面図であり、(b)は、エマルジョン燃料製造装置100に配設されるスタティックミキサ73の一例を示す側面断面図である。
【0135】
図18に示すように、スタティックミキサ73は、駆動部のない静止型混合器であって、外筒部731、及び、エレメント732、733を備えている。外筒部731の一方側端部(ここでは、左側端部)からスタティックミキサ73内に入った流体(ここでは、A重油、エマルジョン等)は、エレメント732、733により順次攪拌混合される。エレメント732、733は、それぞれ、長方形の板を180度ねじった形で構成されており、ねじれの方向により、右エレメント732と左エレメント733とが交互に配設されている。なお、各エレメント732、733の軸方向の長さは、スタティックミキサ73の直径に対して、約1.5倍の長さに設定されている。
【0136】
図18(a)に示すように、流体は、1つのエレメント732、733を通過するごとに2つに分割される。最上流側の右エレメント732に、左から右に向けて流体が矢印V31、V41で示す向きに流入する場合について、スタティックミキサ73による分割作用について、以下に具体的に説明する。
【0137】
最上流側の右エレメント732に流入した流体は、最上流側の右エレメント732に沿って矢印V32、V42で示す向き(進行方向に向かって反時計回り)に旋回される。そして、最上流側の右エレメント732に隣接する2段目の左エレメント733の上流側端面で2つに分割され、矢印V33、V43で示すように2段目の左エレメント733に流入する。次に、2段目の左エレメント733に流入した流体は、2段目の左エレメント733に沿って矢印V33、V43で示す向き(進行方向に向かって時計回り)に旋回される。そして、2段目の左エレメント733に隣接する3段目の右エレメント732の上流側端面で2つに分割され、矢印V34、V44で示すように3段目の右エレメント732に流入する。3段目の右エレメント732に流入した流体は、3段目の右エレメント732に沿って矢印V35、V45で示す向き(進行方向に向かって反時計回り)に旋回される。
【0138】
このように、スタティックミキサ73に配設されたエレメント732、733の個数Nに応じて、次の(1)式によって流体の分割数Mが決定される。
(分割数M)=2N (1)
【0139】
また、流体は、エレメント732、733ごとに回転方向が変わり、急激な慣性力の反転を受けて乱流攪拌される。したがって、スタティックミキサ73は、エレメント732、733の個数Nが多い程、細かく分割されると共に、攪拌効果が大きくなる。
【0140】
図18(b)に示すように、エマルジョン燃料製造装置100に配設されるスタティックミキサ73には、8個のエレメント732、733が配設されているため、上記(1)式より、分割数Mは、256個となる。
【0141】
このように、スタティックミキサ73によって、A重油、エマルジョン等の流体が効果的に分割される(細粒化される)と共に、攪拌される。
【0142】
本実施形態では、スタティックミキサ73が、8個のエレメント732、733を有する場合について説明するが、スタティックミキサ73が、その他の個数のエレメント732、733を有する形態でもよい。なお、上述のように、エレメント732、733の個数Nが多い程、細かく分割されると共に、攪拌効果が大きくなるため、エレメント732、733の個数Nは多い方が好ましい。
【0143】
−アジテータ71−
図19は、図16のエマルジョン燃料製造装置に配設される混合タンク7及びアジテータ71の一例を示す透視側面図である。図20は、図19に示すアジテータ71の攪拌翼の713一例を示す側面図及び平面図である。図20(a)は、攪拌翼の713の側面図であって、図20(b)は、攪拌翼の713の平面図である。以下、図19及び図20を参照して、アジテータ71の構造及び配設位置について説明する。アジテータ71は、駆動部711、回転軸712、及び、攪拌翼713を備えている。
【0144】
駆動部711は、モータ等の駆動源を備え、回転軸712を駆動するものである。駆動部711は、混合タンク7の上面に、混合タンク7の中心軸に対して予め設定された角度θで傾斜した状態で固定されている。ここで、角度θは、次の(2)式を満たすべく設定されている。なお、本実施形態においては、角度θは、16度である。また、角度θは、特許請求の範囲に記載された発明における「傾斜角」に相当する。
10度≦(角度θ)≦30度 (2)
【0145】
回転軸712は、駆動部711によって回転駆動されるものであって、先端部に攪拌翼713が固定されている。回転軸712が駆動部711によって回転駆動され、回転軸712の先端部に固定された攪拌翼713が回転することによって、混合タンク7内の流体が攪拌される。ここでは、回転軸712は、駆動部711によって、予め設定された回転速度NAで回転駆動される。また、回転速度NAは、次の(3)式を満たすべく設定されている。なお、本実施形態においては、回転速度NAは、1500rpmに設定されている。
1000rpm≦(回転速度NA)≦3000rpm (3)
【0146】
攪拌翼713は、混合タンク7内の流体を攪拌するものであって、攪拌翼713の直径d2は、混合タンク7の直径Dと比較して、次の(4)式を満たすべく形成されている。なお、本実施形態では、混合タンク7の直径Dは400mmであって、攪拌翼713の直径d2は100mmに設定されている。
(直径D)/6≦(直径d2)≦(直径D)/3 (4)
【0147】
また、攪拌翼713における中心位置の混合タンク7底面からの高さh1は、混合タンク7の底面から混合タンク7に収容されているエマルジョン燃料の液面までの深さであるエマルジョン燃料深さHと比較して、次の(5)式を満たすべく配置されている。なお、本実施形態では、エマルジョン燃料深さHは400mmであって、高さh1は、70mmに設定されている。
(深さH)/40≦(高さh1)≦(深さH)/3 (5)
【0148】
更に、攪拌翼713における中心位置の混合タンク7側面からの距離d1は、混合タンク7の直径Dと比較して、次の(6)式を満たすべく配置されている。なお、本実施形態では、距離d1は、120mmに設定されている。
(直径D)/6≦(距離d1)≦(直径D)/3 (6)
【0149】
次に、図20を参照して、攪拌翼713の構造を説明する。攪拌翼713は、基体部714、及び、複数の(ここでは、16個の)羽根部715を備えている。基体部714は、回転軸712の軸方向に対して垂直に係止された円板状の部材である。また、基体部714の中心位置には、回転軸712が挿通されて係止される孔716が形成されている。
【0150】
羽根部715は、基体部714の外周部に沿って基体部714に対して垂直方向に立設されたものである。また、羽根部715は、それぞれ、上下方向に交互に立設された平板状部材からなり、該平板状部材は、回転方向の先端側が回転方向の後端側に対して径方向の外周側に角度ψで傾斜した状態で形成されている。ここで、矢印V5は、攪拌翼713の回転方向を示しており、ここでは、反時計回りである。また、角度ψは、本実施形態では、60度である。また、羽根部715の高さh2は、ここでは、20mmである。
【0151】
具体的には、複数の羽根部715は、それぞれ、基体部714の外周部から、基体部714と一体に径方向に延設された平板状部材からなり、該板状部材の外周端部が、上下方向に交互に立設するべく直角に屈曲されて形成されている。
【0152】
このように、アジテータ71の回転軸712の先端部に装着された攪拌翼713が、回転軸712の軸方向に垂直に係止された円板状の基体部714の外周部に沿って、該基体部714に対して垂直方向に立設された複数の羽根部715を有しており、この複数の羽根部715が、それぞれ、上下方向に交互に立設された平板状部材からなり、この平板状部材が、回転方向の先端側が回転方向の後端側に対して径方向の外周側に角度ψで傾斜した状態で形成されているため、攪拌翼713が高速(例えば、1500rpm)で回転することによって、複数の羽根部715がエマルジョンに高い剪断効果を付与することができる。従って、エマルジョン燃料の細粒化、均一化を促進することができるので、更に安定したエマルジョン燃料を生成することができる。
【0153】
また、アジテータ71の攪拌翼713が、上記(3)式を満たす回転速度NA(例えば、1500rpm)で回転されるため、エマルジョン燃料に更に高い剪断効果を付与することができる。従って、エマルジョンの細粒化、均一化を促進することができるので、更に安定したエマルジョン燃料を生成することができる。
【0154】
更に、混合タンク7が、円筒状のタンクであって、アジテータ71の攪拌翼713の直径d2が、上記(4)式を満たすべく形成されているため、混合タンク7内に収容されたエマルジョンの全体を対流させると共に、エマルジョンに更に高い剪断効果を付与することができる。従って、エマルジョンの細粒化、均一化を促進することができるので、更に安定したエマルジョン燃料を生成することができる。
【0155】
加えて、アジテータ71の回転軸712が、混合タンク7の中心軸に対して、上記(2)式を満たす角度θで傾斜して配設されているため、混合タンク7内に収容されたエマルジョンの全体を更に効果的に対流させることができるので、更に安定したエマルジョン燃料を生成することができる。
【0156】
また、アジテータ71の攪拌翼713における中心位置の、混合タンク7の底面からの高さh1が、上記(5)式を満たすべく配置され、且つ、アジテータ71の攪拌翼713における中心位置の、混合タンク7の側面からの距離d1が、上記(6)式を満たすべく配置されているため、混合タンク7内に収容されたエマルジョンの全体を更に効果的に対流させることができるので、更に安定したエマルジョン燃料を生成することができる。
【0157】
本実施形態では、羽根部715の角度ψが60度である場合について説明するが、羽根部715の角度ψは、攪拌翼713の直径d2及び回転速度NAに応じて、適宜、適正な値に設定すればよい。なお、回転速度NAが大きい程、及び、直径d2が大きい程、羽根部715のエマルジョン燃料に対する相対速度が大きくなるため、羽根部715の角度ψは直角(90度)に近い値に設定することが好ましい。
【0158】
また、本実施形態では、羽根部715の高さh2が20mmである場合について説明するが、羽根部715の高さh2は、攪拌翼713の直径d2及び回転速度NAに応じて、適宜、適正な値に設定すればよい。なお、回転速度NAが大きい程、及び、直径d2が大きい程、羽根部715のエマルジョン燃料に対する相対速度が大きくなるため、羽根部715の高さh2は小さい値に設定することが好ましい。
【0159】
更に、本実施形態では、羽根部715の個数が16個である場合について説明するが、羽根部715の個数は、攪拌翼713の直径d2及び回転速度NAに応じて、適宜、適正な値に設定すればよい。なお、回転速度NAが大きい程、及び、直径d2が大きい程、羽根部715のエマルジョンに対する相対速度が大きくなるため、羽根部715の個数は小さい値に設定することが好ましい。
【0160】
−エマルジョン燃料の製造−
次に、図21〜図30を参照して、本発明に係るエマルジョン燃料の製造方法について説明する。図21は、本発明に係るエマルジョン燃料の製造方法の一例を示すフローチャートである。なお、以下の全ての処理は、エマルジョン燃料製造装置100に配設された図略の制御部によって当該エマルジョン燃料製造装置100の全体の動作が制御されて、当該エマルジョン燃料製造装置100によって実行されるものである。なお、以下の処理においては、便宜上、A重油が予め基油タンク1に充填され、乳化剤が予め乳化剤タンク5に充填されている場合について説明する。また、図21に示すフローチャートでは、便宜上、予め設定された所定量(ここでは、40リットル)のエマルジョン燃料を生成する処理について説明する。なお、図21に示すフローチャートを繰り返し実行することにより、所望する量のエマルジョン燃料を生成することができる。
【0161】
まず、ステップS1において、磁気処理器33によって水を磁気処理する水磁気処理が実行される。ここで、ステップS1は、特許請求の範囲に記載された発明における「(水に対する)磁気処理工程」に相当する。また、ステップS1と並行して、ステップS2において、磁気処理器72によってA重油を磁気処理する重油磁気処理が実行される。ここで、ステップS2は、特許請求の範囲に記載された発明における「(油成分に対する)磁気処理工程」に相当する。ステップS2が終了すると、ステップS3において、A重油と乳化剤とを混合して攪拌し、A重油と乳化剤とが混合された混合液を生成する混合液生成処理が実行される。ここで、ステップS3は、特許請求の範囲に記載された発明における「混合液生成工程」に相当する。
【0162】
ステップS1の処理及びステップS3の処理が終了すると、ステップS4において、ステップS3において生成された混合液と、ステップS1において磁気処理された水と、を混合して攪拌し、第1エマルジョンを生成する第1攪拌処理が実行される。ここで、ステップS4は、特許請求の範囲に記載された発明における「第1攪拌工程」に相当する。
【0163】
そして、ステップS5において、ステップS4において生成された第1エマルジョンが、予め設定された第1閾値時間TH1以上静置されて、第2エマルジョンが生成される。ここで、ステップS5は、特許請求の範囲に記載された発明における「静置工程」に相当する。なお、第1閾値時間TH1は、少なくとも5分以上となるように、予め設定されている。
【0164】
次に、ステップS6において、ステップS5において生成された第2エマルジョンを攪拌して、エマルジョン燃料を生成する第2攪拌処理が実行される。ここで、ステップS6は、特許請求の範囲に記載された発明における「第2攪拌工程」に相当する。
【0165】
最後に、ステップS7において、ステップS6において生成されたエマルジョン燃料が、基油混合ポンプ2によって混合タンク7からエマルジョン燃料タンク8へ移送されて、処理が終了される。
【0166】
このようにして、ステップS5において静置処理が実行されて、A重油、水及び乳化剤が攪拌されて生成された第1エマルジョンが静置されることによって、第2エマルジョンが得られる。そして、ステップS6において第2攪拌処理が実行されて、ステップS5において生成された第2エマルジョンが攪拌され、エマルジョン燃料が生成される。
【0167】
また、ステップS3において混合液生成処理が実行されて、A重油と乳化剤とが攪拌されて、混合された混合液が生成される。そして、ステップS4において第1攪拌処理が実行されて、ステップS3において生成された混合液と、水と、が攪拌されて、第1エマルジョンが生成される。したがって、乳化剤が均一にA重油に混合された混合液が、水と混合されて第1エマルジョンが生成される。この混合液生成処理によって、最終的に生成されるエマルジョン燃料の乳化状態が安定する。
【0168】
更に、ステップS3において混合液生成処理が実行されて、磁気処理器72によって磁気処理されたA重油と乳化剤とが攪拌されて、混合液が生成されるため、乳化剤が更に均一にA重油に混合された混合液を生成することができる。これより、最終的に生成されるエマルジョン燃料の乳化状態が更に安定する。
【0169】
加えて、ステップS1において水磁気処理が実行されて、磁気処理器33によって水が磁気処理される。そして、ステップS4において第1攪拌処理が実行されて、磁気処理された水と、乳化剤がA重油に混合された混合液とが、攪拌されて、第1エマルジョンが生成される。これより、最終的に生成されるエマルジョン燃料の乳化状態がさらに安定する。
【0170】
また、ステップS5において静置される期間の最小値である第1閾値時間TH1を適正な値(例えば、8分間)に設定することによって、第2エマルジョンを生成することができる。
【0171】
更に、第1閾値時間TH1は、5分以上の適当な値に設定することができる。例えば、図21に示す全工程の所要時間を短縮するために、第1閾値時間TH1を小さく設定することができる。
【0172】
本実施形態では、ステップS1における水磁気処理と、ステップS2における重油磁気処理及びステップS3における混合液生成処理と、が並行して実行される場合について説明するが、水磁気処理、重油磁気処理及び混合液生成処理が順次実行される形態でもよい。この場合には、処理のシーケンスが簡略化される。
【0173】
−水磁気処理−
次に、図22、図23を参照して水磁気処理について説明する。図22は、図21に示すフローチャートのステップS1における水磁気処理の一例を示す詳細フローチャートである。まず、ステップS101において、水が水タンク3に充填される。次いで、ステップS103において、水ポンプ4によって、水タンク3内の水が、磁気処理器33が介設された循環配管を循環されて、水タンク3内の水が磁気処理される。
【0174】
そして、ステップS105において、予め設定された閾値時間THAが経過したか否かの判定が行われる。なお、閾値時間THAは、水タンク3内の全ての水が循環配管を1回循環される時間(ここでは、1.4分間)以上の時間(例えば、2.0分間)に予め設定されている。ステップS105でYESの場合には、処理が図21に示すフローチャートのステップS4へリターンされる。ステップS105でNOの場合には、処理がステップS103に戻され、ステップS103以降の処理が繰り返し実行される。
【0175】
図23は、図22に示す水磁気処理における水の流れを示す説明図である。図22に示すステップS101において、電動バルブ31が開状態にされて、実線の矢印F1で示すように、上水道から水が水タンク3に流入する。また、図22に示すステップS103において、電動バルブ31及び電動バルブ34が閉状態にされると共に、電動バルブ32が開状態にされ、水ポンプ4が駆動されて、破線の矢印F2で示すように、水タンク3内の水が、磁気処理器33が介設された循環配管を循環される。ここで、循環配管とは、破線の矢印F2に沿った配管であって、水タンク3の下端から水ポンプ4、磁気処理器33、及び、電動バルブ32を順次経由して、水タンク3の上端に戻る配管である。
【0176】
このようにして、水タンク3内の水が磁気処理器33によって磁気処理される。本実施形態では、閾値時間THAが、水タンク3内の全ての水が循環配管を1回循環される時間以上の時間に予め設定されている場合について説明するが、閾値時間THAが、水タンク3内の全ての水が循環配管を複数回循環される時間以上の時間に予め設定されている形態でもよい。この場合には、水タンク3内の水が磁気処理器33によって更に磁気処理される。
【0177】
−重油磁気処理−
次に、図24、図25を参照して重油磁気処理について説明する。図24は、図21に示すフローチャートのステップS2における重油磁気処理の一例を示す詳細フローチャートである。まず、ステップS201において、基油混合ポンプ2によって、A重油が基油タンク1から混合タンク7へ移送され、混合タンク7内にA重油が充填される。次に、ステップS203において、基油混合ポンプ2によって、混合タンク7内のA重油が、磁気処理器72、及びスタティックミキサ73が介設された循環配管を循環されて、混合タンク7内のA重油が磁気処理されると共に細粒化される。
【0178】
そして、ステップS205において、予め設定された閾値時間THBが経過したか否かの判定が行われる。なお、閾値時間THBは、混合タンク7内の全てのA重油が循環配管を1回循環される時間(ここでは、0.76分間)以上の時間(例えば、1.50分間)に予め設定されている。ステップS205でYESの場合には、処理が図21に示すフローチャートのステップS3へリターンされる。ステップS205でNOの場合には、処理がステップS203に戻され、ステップS203以降の処理が繰り返し実行される。
【0179】
図25は、図24に示す重油磁気処理におけるA重油の流れを示す説明図である。図24に示すステップS201において、電動バルブ22及び電動バルブ24が閉状態にされると共に、電動バルブ21及び電動バルブ23が開状態にされ、基油混合ポンプ2が駆動されて、実線の矢印F3で示すように、A重油が基油タンク1から混合タンク7に流入する。
【0180】
また、図24に示すステップS203において、電動バルブ21及び電動バルブ24が閉状態にされると共に、電動バルブ22及び電動バルブ23が開状態にされ、基油混合ポンプ2が駆動されて、破線の矢印F4で示すように、混合タンク7内のA重油が、磁気処理器72及びスタティックミキサ73が介設された循環配管を循環される。ここで、循環配管とは、破線の矢印F4に沿った配管であって、混合タンク7の下端から電動バルブ22、基油混合ポンプ2、電動バルブ23、磁気処理器72、及び、スタティックミキサ73を順次経由して、混合タンク7の上端に戻る配管である。
【0181】
このようにして、混合タンク7内のA重油が磁気処理器72によって磁気処理されると共に、スタティックミキサ73によって細粒化される。本実施形態では、閾値時間THBが、混合タンク7内の全てのA重油が循環配管を1回循環される時間以上の時間に予め設定されている場合について説明するが、閾値時間THBが、混合タンク7内の全てのA重油が循環配管を複数回循環される時間以上の時間に予め設定されている形態でもよい。この場合には、混合タンク7内のA重油が磁気処理器72によって更に磁気処理されると共に、スタティックミキサ73によって更に細粒化される。
【0182】
−混合液生成処理−
次に、図26、図27を参照して混合液生成処理について説明する。図26は、図21に示すフローチャートのステップS3における混合液生成処理の一例を示す詳細フローチャートである。まず、ステップS301において、乳化剤ポンプ6によって、乳化剤タンク5に収容された乳化剤が、混合タンク7に投入される。そして、ステップS303において、予め設定された閾値時間THCが経過したか否かの判定が行われる。なお、閾値時間THCは、予め設定された量(例えば、0.24リットル)の乳化剤を混合タンク7内に投入する時間(ここでは、2.0分間)に予め設定されている。ステップS303でYESの場合には、処理がステップS309に進められる。ステップS303でNOの場合には、処理がステップS301に戻され、ステップS301以降の処理が繰り返し実行される。
【0183】
また、ステップS301と並行して、ステップS305において、混合タンク7内のA重油(又は、混合液)がアジテータ71によって攪拌される。そして、ステップS307において、基油混合ポンプ2によって、混合タンク7内のA重油(又は、混合液)が、磁気処理器72、及びスタティックミキサ73が介設された循環配管を循環されて、混合タンク7内のA重油が磁気処理されると共に攪拌される。
【0184】
ステップS303でYESの場合には、ステップS309において、予め設定された閾値時間THDが経過したか否かの判定が行われる。なお、閾値時間THDは、混合タンク7内の全ての混合液が循環配管を1回循環される時間(ここでは、0.76分間)以上の時間(例えば、1.17分間)に予め設定されている。ステップS309でYESの場合には、処理が図21に示すフローチャートのステップS4へリターンされる。ステップS309でNOの場合には、処理がステップS305に戻され、ステップS305以降の処理が繰り返し実行される。
【0185】
図27は、図26に示す混合液生成処理における乳化剤及び混合液の流れを示す説明図である。図26に示すステップS301において、電動バルブ62が閉状態とされると共に、電動バルブ63が開状態とされ、乳化剤ポンプ6が駆動されて、実線の矢印F5で示すように、乳化剤タンク5から乳化剤が混合タンク7に投入される。
【0186】
また、図26に示すステップS307において、電動バルブ63、電動バルブ21及び電動バルブ24が閉状態にされると共に、電動バルブ22及び電動バルブ23が開状態にされ、基油混合ポンプ2が駆動されて、破線の矢印F6で示すように、混合タンク7内の混合液が、磁気処理器72及びスタティックミキサ73が介設された循環配管を循環される。ここで、循環配管とは、破線の矢印F6に沿った配管であって、混合タンク7の下端から電動バルブ22、基油混合ポンプ2、電動バルブ23、磁気処理器72、及び、スタティックミキサ73を順次経由して、混合タンク7の上端に戻る配管である。
【0187】
このようにして、混合タンク7内の混合液が磁気処理器72によって磁気処理されると共に、スタティックミキサ73によって攪拌される。本実施形態では、閾値時間THDが、混合タンク7内の全ての混合液が循環配管を1回循環される時間以上の時間に予め設定されている場合について説明するが、閾値時間THDが、混合タンク7内の全ての混合液が循環配管を複数回循環される時間以上の時間に予め設定されている形態でもよい。この場合には、混合タンク7内の混合液が磁気処理器72によって更に磁気処理されると共に、スタティックミキサ73によって更に攪拌される。
【0188】
−第1攪拌処理−
次に、図28、図29を参照して第1攪拌処理について説明する。図28は、図21に示すフローチャートのステップS4における第1攪拌処理の一例を示す詳細フローチャートである。まず、ステップS401において、水ポンプ4によって、水タンク3に収容された水が、混合タンク7に移送される。そして、ステップS403において、水タンクの液面がLレベル(ローレベル)に到達したか否かの判定が行われる。ステップS403でYESの場合には、処理がステップS409に進められる。ステップS303でNOの場合には、処理がステップS401に戻され、ステップS401以降の処理が繰り返し実行される。
【0189】
また、ステップS401と並行して、ステップS405において、混合タンク7内の混合液(又は、第1エマルジョン)がアジテータ71によって攪拌される。そして、ステップS407において、基油混合ポンプ2によって、混合タンク7内の混合液(又は、第1エマルジョン)が、磁気処理器72、及びスタティックミキサ73が介設された循環配管を循環されて、混合タンク7内の第1エマルジョンが磁気処理されると共に攪拌される。
【0190】
ステップS403でYESの場合には、ステップS409において、予め設定された閾値時間THEが経過したか否かの判定が行われる。なお、閾値時間THEは、混合タンク7内の全ての第1エマルジョンが循環配管を1回循環される時間(ここでは、1.11分間)以上の時間(例えば、2.23分間)に予め設定されている。ステップS409でYESの場合には、処理が図21に示すフローチャートのステップS5へリターンされる。ステップS409でNOの場合には、処理がステップS405に戻され、ステップS405以降の処理が繰り返し実行される。
【0191】
図29は、図28に示す第1攪拌処理における水及び混合液(又は、第1エマルジョン)の流れを示す説明図である。図28に示すステップS401において、電動バルブ32が閉状態とされると共に、電動バルブ34が開状態とされ、水ポンプ4が駆動されて、実線の矢印F7で示すように、水が水タンク3から混合タンク7に移送される。
【0192】
また、図28に示すステップS407において、電動バルブ21及び電動バルブ24が閉状態にされると共に、電動バルブ22及び電動バルブ23が開状態にされ、基油混合ポンプ2が駆動されて、破線の矢印F8で示すように、混合タンク7内の第1エマルジョンが、磁気処理器72及びスタティックミキサ73が介設された循環配管を循環される。ここで、循環配管とは、破線の矢印F8に沿った配管であって、混合タンク7の下端から電動バルブ22、基油混合ポンプ2、電動バルブ23、磁気処理器72、及び、スタティックミキサ73を順次経由して、混合タンク7の上端に戻る配管である。
【0193】
このようにして、混合タンク7内の第1エマルジョンが、それぞれ、混合タンク7内でのアジテータ71の回転による攪拌と、循環配管に介設されたスタティックミキサ73の通過による攪拌とによって効果的に攪拌されるため、第1エマルジョンを均一に攪拌することができる。また、混合タンク7内の第1エマルジョンが磁気処理器72によって磁気処理されるため、最終的に生成するエマルジョン燃料の乳化状態を更に安定することができる。
【0194】
本実施形態では、閾値時間THEが、混合タンク7内の全ての第1エマルジョンが循環配管を1回循環される時間以上の時間に予め設定されている場合について説明するが、閾値時間THEが、混合タンク7内の全ての第1エマルジョンが循環配管を複数回循環される時間以上の時間に予め設定されている形態でもよい。この場合には、混合タンク7内の第1エマルジョンが磁気処理器72によって更に磁気処理されると共に、スタティックミキサ73によって更に攪拌される。
【0195】
−第2攪拌処理−
次に、図30を参照して第2攪拌処理について説明する。図30は、図21に示すフローチャートのステップS6における第2攪拌処理の一例を示す詳細フローチャートである。まず、ステップS601において、混合タンク7内の第2エマルジョンがアジテータ71によって攪拌される。そして、ステップS603において、基油混合ポンプ2によって、混合タンク7内の第2エマルジョンが、磁気処理器72、及びスタティックミキサ73が介設された循環配管を循環されて、混合タンク7内の第2エマルジョンが磁気処理されると共に攪拌される。
【0196】
次いで、ステップS605において、予め設定された第2閾値時間TH2が経過したか否かの判定が行われる。なお、第2閾値時間TH2は、例えば、15分間であって、乳化剤の種類及び濃度の少なくとも一方に基づいて、予め設定されている。ステップS605でYESの場合には、処理が図21に示すフローチャートのステップS7へリターンされる。ステップS605でNOの場合には、処理がステップS601に戻され、ステップS601以降の処理が繰り返し実行される。なお、第2攪拌処理における第2エマルジョンの流れは、図29に破線の矢印F8で示す第1エマルジョンの流れと同一である。
【0197】
このようにして、混合タンク7内の第2エマルジョンが、それぞれ、混合タンク7内でのアジテータ71の回転による攪拌と、循環配管に介設されたスタティックミキサ73の通過による攪拌とによって効果的に攪拌されるため、第2エマルジョンを均一に攪拌することができる。また、混合タンク7内の第2エマルジョンが磁気処理器72によって磁気処理される。したがって、第2攪拌処理によって更に安定した乳化状態のエマルジョン燃料を生成することができる。
【0198】
また、第2エマルジョンが予め設定された第2閾値時間TH2以上攪拌されるため、第2閾値時間TH2を適正な値(例えば、15分)に設定することによって、平均粒径の非常に小さいエマルジョン燃料を製造することができる。
【0199】
更に、乳化剤の種類及び濃度の少なくとも一方に基づいて、第2閾値時間TH2が予め設定されているため、第2閾値時間TH2を適正な値に設定することができる。例えば、乳化剤の乳化作用が強い程、図21に示す全工程の所要時間を短縮するために、第2閾値時間TH2を小さく設定することができる。また、乳化剤の濃度が濃い程、乳化作用が高いため、図21に示す全工程の所要時間を短縮するために、第2閾値時間TH2を小さく設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0200】
本発明は、少なくとも油成分と、水と、乳化剤とを混合してエマルジョン燃料を製造するエマルジョン燃料の製造方法、エマルジョン燃料、及び、エマルジョン燃料製造装置に利用可能であり、例えば、JIS K 2205に規定された1種(A重油)1号(LSA重油)と、水と、乳化剤とを混合してエマルジョン燃料を製造するエマルジョン燃料の製造方法、エマルジョン燃料、及び、エマルジョン燃料製造装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0201】
1 基油タンク
8 エマルジョン燃料タンク
100 エマルジョン燃料製造装置
2 基油混合ポンプ(ポンプ)
3 水タンク
4 水ポンプ
5 乳化剤タンク
6 乳化剤ポンプ
7 混合タンク(タンク)
33 磁気処理器
331 外周側遮蔽板
332 外周側磁石
333 内周側磁石
334 内周側遮蔽板
335 外周管
336 外筒
337 内筒
71 アジテータ
711 駆動部
712 回転軸
713 攪拌翼
714 基体部
715 羽根部
72 磁気処理器
73 スタティックミキサ
731 外筒部
732 右エレメント
733 左エレメント
M 分散質
m 分散質
G 会合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽油、A重油、若しくは軽油及びA重油の混合物からなる油成分と、水と、乳化剤と、を混合してエマルジョン燃料を製造するエマルジョン燃料の製造方法であって、
この製造方法は、
少なくとも前記油成分100重量部と、前記水40重量部〜100重量部と、HLB5〜HLB16の前記乳化剤0.5重量部〜1.5重量部とを混合し、攪拌することによって、平均粒径8μm〜12μmの第1エマルジョンを生成する第1攪拌工程と、
前記第1攪拌工程の後、前記第1エマルジョンを5分以上静置して第2エマルジョンを得る静置工程と、
前記第2エマルジョンを再度攪拌し、平均粒径4μm〜6μmのエマルジョン燃料を生成する第2攪拌工程と、
を実行することを特徴とするエマルジョン燃料の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のエマルジョン燃料の製造方法において、
前記乳化剤として、HLB5〜HLB15のエーテル型非イオン性界面活性剤と、HLB10〜HLB16のエステル型非イオン性界面活性剤とを用いることを特徴とするエマルジョン燃料の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエマルジョン燃料の製造方法において、
第1攪拌工程では、アルキレングリコールを更に混合することを特徴とするエマルジョン燃料の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のエマルジョン燃料の製造方法において、
前記静置工程では、20℃〜40℃の温度条件下で前記第1エマルジョンを静置することを特徴とするエマルジョン燃料の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のエマルジョン燃料の製造方法において、
前記第1攪拌工程に先立ち、前記油成分と前記乳化剤とを混合することによって、前記油成分と前記乳化剤とが混合された混合液を生成する混合液生成工程を実行することを特徴とするエマルジョン燃料の製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載のエマルジョン燃料の製造方法において、
前記第1攪拌工程に先立ち、前記油成分又は前記水の一方又は両方に対し磁気処理を行う磁気処理工程を実行することを特徴とするエマルジョン燃料の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載のエマルジョン燃料の製造方法によって製造されたエマルジョン燃料であって、
このエマルジョン燃料は、第2攪拌工程後、少なくとも2週間の期間、4μm〜6μmのメジアン径が維持されることを特徴とするエマルジョン燃料。
【請求項8】
請求項7に記載のエマルジョン燃料において、
前記エマルジョン燃料には、ニトロ化合物が配合されてなることを特徴とするエマルジョン燃料。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載のエマルジョン燃料において、
前記エマルジョン燃料には、アミン化合物が配合されてなることを特徴とするエマルジョン燃料。
【請求項10】
軽油、A重油若しくは軽油及びA重油の混合物からなる油成分と、水と、乳化剤と、を混合してエマルジョン燃料を製造するエマルジョン燃料製造装置であって、
少なくとも前記油成分100重量部と、前記水40重量部〜100重量部と、HLB5〜HLB16の前記乳化剤0.5重量部〜1.5重量部とを混合し、攪拌することによって、平均粒径8μm〜12μmの第1エマルジョンを生成する第1攪拌工程と、
前記第1攪拌工程の後、前記第1エマルジョンを5分以上静置して第2エマルジョンを得る静置工程と、
前記第2エマルジョンを再度攪拌し、平均粒径4μm〜6μmのエマルジョン燃料を生成する第2攪拌工程と、を実行することを特徴とするエマルジョン燃料製造装置。
【請求項11】
軽油、A重油、若しくは軽油及びA重油の混合物からなる油成分と、水と、乳化剤と、を混合してエマルジョン燃料を製造するエマルジョン燃料製造装置であって、
エマルジョンを収容するタンクと、
前記タンク内で、前記エマルジョンを攪拌するアジテータと、
前記タンクから流出された前記エマルジョンを、再度当該タンク内へ流入させる循環配管と、
前記循環配管に介設され、前記タンクから流出された前記エマルジョンを当該タンク内へ流入させるポンプと、
前記循環配管の前記ポンプ下流側に介設され、前記エマルジョンを攪拌するスタティックミキサと、
前記循環配管の前記ポンプ下流側に介設され、前記エマルジョンを磁気処理する磁気処理器と、を備えることを特徴とするエマルジョン燃料製造装置。
【請求項12】
請求項11に記載のエマルジョン燃料製造装置において、
前記アジテータは、回動可能に構成された回転軸と、当該回転軸の先端部に装着された攪拌翼と、を備え、
前記攪拌翼は、前記回転軸の軸方向に垂直に係止された円板状の基体部と、該基体部の外周部に沿って該基体部に対して垂直方向に立設された複数の羽根部と、を備え、
前記基体部は、当該基体部の中心位置に前記回転軸が挿通されて係止され、
前記複数の羽根部は、それぞれ、上下方向に交互に立設された平板状部材からなり、
前記平板状部材は、回転方向の先端側が回転方向の後端側に対して径方向の外周側に傾斜して形成されていることを特徴とするエマルジョン燃料製造装置。
【請求項13】
請求項12に記載のエマルジョン燃料製造装置において、
前記アジテータは、前記攪拌翼を1分間当り1000回転以上、且つ、1分間当り3000回転以下の回転速度で回転させることを特徴とするエマルジョン燃料製造装置。
【請求項14】
請求項12又は請求項13に記載のエマルジョン燃料製造装置において、
前記タンクは、略円筒状のタンクであって、
前記攪拌翼の直径は、前記タンクの直径の(1/6)以上、且つ、前記タンクの直径の(1/3)以下に形成されていることを特徴とするエマルジョン燃料製造装置。
【請求項15】
請求項14に記載のエマルジョン燃料製造装置において、
前記回転軸は、前記タンクの中心軸に対して、10度以上、且つ、30度以下の傾斜角で配設されていることを特徴とするエマルジョン燃料製造装置。
【請求項16】
請求項14又は請求項15に記載のエマルジョン燃料製造装置において、
前記攪拌翼は、その中心位置が、
前記タンク底面から、前記タンクの底面から前記タンクに収容されているエマルジョン燃料の液面までの深さであるエマルジョン燃料深さの(1/40)以上、且つ、前記エマルジョン燃料深さの(1/3)以下の距離だけ離間した位置であって、
前記タンク側面から、前記タンクの直径の(1/6)以上、且つ、前記タンクの直径の(1/3)以下の距離だけ離間した位置に配設されていることを特徴とするエマルジョン燃料製造装置。
【請求項17】
軽油、A重油若しくは軽油及びA重油の混合物からなる油成分と、水と、乳化剤と、を混合してエマルジョン燃料を製造するエマルジョン燃料の製造方法であって、
請求項11から請求項16のいずれか1つに記載のエマルジョン燃料製造装置を用いて、平均粒径4μm〜6μmのエマルジョン燃料を製造することを特徴とするエマルジョン燃料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2012−107169(P2012−107169A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16015(P2011−16015)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【特許番号】特許第4791602号(P4791602)
【特許公報発行日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(503438610)福西電機株式会社 (4)
【Fターム(参考)】