説明

エマルジョン燃料

【課題】従来のエマルジョン燃料よりも経時安定性に優れるエマルジョン燃料を提供すること。
【解決手段】水酸基含有エチレン性不飽和単量体を少なくとも80質量%含有する不飽和単量体組成物をラジカル重合して得られる水溶性樹脂と、燃料油と、水とを含有するエマルジョン燃料である。好ましい水酸基含有エチレン性不飽和単量体としては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートおよびヒドロキシブチルアクリレートが挙げられる。また、水溶性樹脂の好ましい配合量は、エマルジョン燃料に対して0.01〜5.0質量%の範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルジョン燃料に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料油に水を分散させたエマルジョン燃料は、燃焼効率の向上やNOの低減効果が実証されており、環境負荷の低減の面で有効な手段として、実用化へ検討が盛んに行われている。重質油に水を安定に分散させる手法として、界面活性剤とポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子とを併用することが知られている(例えば、特許文献1〜6を参照)。また、重合性芳香族スルホン酸塩を架橋させた重合体や(メタ)アクリル酸と(無水)マレイン酸とを共重合させた共重合体を添加した重質油エマルジョン燃料も提案されている(例えば、特許文献7および8を参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平3−97788号公報
【特許文献2】特開平6−57268号公報
【特許文献3】特開平6−88082号公報
【特許文献4】特開平6−108071号公報
【特許文献5】特開平6−322382号公報
【特許文献6】特開平7−233381号公報
【特許文献7】特開平8−3573号公報
【特許文献8】特開平8−73873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のエマルジョン燃料では、安定性が未だ十分ではなく、経時的に分離を起こしやすいという問題点があった。
従って、本発明の目的は、従来のエマルジョン燃料と比べて経時安定性に優れるエマルジョン燃料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、水酸基含有エチレン性不飽和単量体を特定の割合で含有する不飽和単量体組成物をラジカル重合して得られる水溶性樹脂をエマルジョン燃料用の乳化剤として用いることが有効であることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、水酸基含有エチレン性不飽和単量体を少なくとも80質量%含有する不飽和単量体組成物をラジカル重合して得られる水溶性樹脂、燃料油および水を含有することを特徴とするエマルジョン燃料である。
本発明において、水溶性樹脂は、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートおよびヒドロキシブチルアクリレートからなる群から選択される水酸基含有エチレン性不飽和単量体のみを含有する不飽和単量体組成物をラジカル重合して得られるものであることが好ましい。
また、本発明において、エマルジョン燃料に対する水溶性樹脂の含有量は、0.01〜5.0質量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、経時安定性に優れるエマルジョン燃料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明によるエマルジョン燃料は、燃料油および水に、水酸基含有エチレン性不飽和単量体を少なくとも80質量%含有する不飽和単量体組成物をラジカル重合して得られる水溶性樹脂をエマルジョン燃料用乳化剤として添加したことに特徴がある。不飽和単量体組成物における水酸基含有エチレン性不飽和単量体の含有量が80質量%より少ないと、得られる樹脂の水に対する溶解性が著しく低下するため、該樹脂をエマルジョン燃料の乳化剤として使用することができない。また、本発明における水溶性樹脂の重量平均分子量は、エマルジョン燃料の経時安定性やエマルジョン燃料製造時の作業性をより向上させる観点から、5,000〜1,000,000であることが好ましい。
【0008】
本発明のエマルジョン燃料は、エマルジョン燃料に対して有効成分換算で(不揮発分として)0.01〜5.0質量%の水溶性樹脂を含有することが好ましい。水溶性樹脂の含有量が0.01質量%より少ないと、十分な経時安定性が得られない場合があり、5.0質量%より多いと経済的に難がある。水溶性樹脂のさらに好ましい含有量は0.1〜1.0質量%である。
【0009】
本発明で使用される水酸基含有エチレン性不飽和単量体としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジテトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリプロピレングリコールポリテトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール等が挙げられる。これらの水酸基含有エチレン性不飽和単量体を1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。特にこれらの中でも、ラジカル重合が容易であり且つ水溶性が高いという理由から、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートおよびヒドロキシブチルアクリレートからなる群から選択されるものを使用することが好ましい。
【0010】
不飽和単量体組成物は水酸基含有エチレン性不飽和単量体を必須成分として含有するが、本発明の効果を損なわない範囲で、他の不飽和単量体を含有してもよい。このような不飽和単量体としては、少なくとも1個の重合可能なビニル基を有し、水酸基を有さないものであり、例えば、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル類(メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等)、芳香族ビニル化合物(スチレン、α−メチルスチレン等)、複素環式ビニル化合物(ビニルピロリドン等)、アルキルアミノ(メタ)アクリレート、ビニルエステル類(酢酸ビニル、アルカン酸ビニル等)、α,β−不飽和モノあるいはジカルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等)、カルボキシル基含有ビニル化合物、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル等)、カルボニル基含有エチレン性不飽和単量体(アクロレイン、ビニルメチルケトン等)、スルホン酸基含有エチレン性不飽和単量体(p−トルエンスルホン酸等)、エポキシ基含有α,β−エチレン性不飽和単量体(グリシジルメタアクリレート等)、加水分解性アルコキシシリル基含有α,β−エチレン性不飽和単量体(γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等)、多官能ビニル化合物(ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート等)が挙げられる。このような不飽和単量体を使用する場合、不飽和単量体組成物の20質量%を越えない範囲で適宜配合される。
【0011】
本発明における水溶性樹脂は、ラジカル重合によって製造される。ラジカル重合反応時の温度は、特に限定されるものではないが、40〜130℃であることが好ましい。
また、不飽和単量体組成物は、溶媒、重合開始剤等を含み得る。溶媒としては、水単独、水溶性溶媒もしくは親水性溶剤と水との混合物、または水溶性溶剤もしくは親水性溶剤単独等が挙げられる。水溶性溶剤および親水性溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独もしくは2種以上を併用して使用することができる。溶媒の使用量は特に制限されるものではないが、エマルジョン燃料作製時の作業性の観点から、10質量%〜80質量%が好ましい。
【0012】
重合開始剤としては、ラジカル重合に用いられる公知の水溶性重合開始剤や油溶性重合開始剤が挙げられる。水溶性重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド塩酸塩等の水溶性アゾ系化合物、t−ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド等の有機過酸化物、過酸化水素等が挙げられる。油溶性重合開始剤としては、2,2−アゾビス−イソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキシド、アセチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等の有機過酸化物が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0013】
また、必要に応じて還元剤を使用することができる。還元剤の例としては、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、ホルムアルデヒドスルホキシラート金属塩等の還元性有機化合物、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物が挙げられる。得られる水溶性樹脂の重量平均分子量を調整する際、必要に応じて連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレート、β−メルカプトプロピオン酸、メチルアルコールやイソプロピルアルコール等のアルコール類が挙げられる。
【0014】
本発明における燃料油としては、石油留分、植物油等の内燃機関で使用可能なすべての燃料油を用いることができる。好ましくは、軽油、A重油、B重油、C重油であり、さらに好ましくはC重油である。
また、本発明のエマルジョン燃料に対する水の含有量は、1〜50質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがさらに好ましい。
【0015】
本発明のエマルジョン燃料は、上記した水溶性樹脂、燃料油および水を公知の乳化手段を用いて乳化することにより製造される。乳化手段としては、例えば、ホモミキサー、ラインミキサー、超音波乳化機等の乳化機や分散機が挙げられる。エマルジョンの粒子径は、より経時安定性の優れたエマルジョン燃料を得る観点から、1〜5μmであることが好ましい。
【0016】
なお、本発明のエマルジョン燃料は、上記した水溶性樹脂を乳化剤として用いるだけで十分な経時安定性が得られるが、公知のノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を必要に応じて併用してもよい。
【実施例】
【0017】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。合成例、実施例および比較例における各種物性等の測定、エマルジョン燃料の調製は、下記の方法で実施した。
【0018】
(樹脂の重量平均分子量(M)の測定)
以下の装置を用いて、0.1M硝酸ナトリウム水溶液をキャリアとして、サンプル濃度約0.1質量%、測定時の流量1mL/分で樹脂の重量平均分子量を測定した。
使用機器;ゲルパーミテ−ションクロマトグラフィー
カラム;昭和電工株式会社製 OHPAK SB−806M HQ
標準試料;プルラン(昭和電工株式会社製 P−82)
【0019】
(エマルジョン燃料の調製方法)
水に樹脂または界面活性剤を添加し、攪拌した後、これを燃料油と混合した。2相に分離した状態で、特殊機化工業株式会社製T.Kロボミックスを用いて、攪拌翼の回転数4,000rpmで5分間攪拌し、エマルジョン燃料を調製した。
【0020】
(エマルジョン燃料の粘度)
ブルックフィールド型回転粘度計を用いて、液温23℃、回転数60rpmにて測定した。
【0021】
(エマルジョン燃料中の粒子径の測定)
顕微鏡で、粒子の大きさを直接観察した。
【0022】
(エマルジョン燃料の経時安定性評価)
上記方法によって作製されたエマルジョン燃料をガラス瓶に入れて密封し、23℃および50℃で7日間放置し、エマルジョン燃料の粘度変化、粒子径変化を測定した。調製直後と7日間放置後とで粘度および粒子径が、ほとんど変化しないものを○とし、それ以外のものを×とした。
【0023】
<合成例1>
攪拌装置、温度計および還流冷却器を備えた四つ口フラスコ反応器に、溶媒であるイオン交換水93質量部およびイソプロピルアルコール6.5質量部を仕込み、80℃に昇温した。重合開始剤である過硫酸カリウム0.5質量部を投入し、同時にヒドロキシエチルアクリレート(HEA)100質量部を2時間かけて滴下した。なお、滴下中、反応器内の温度は約80℃に保った。滴下終了後、約80℃で1時間保持し、冷却した後、反応器から樹脂溶液を取り出した(以下、これを樹脂溶液Aと呼ぶ)。得られた樹脂溶液Aは、不揮発分が50質量%、重量平均分子量(M)が215,000であった。
【0024】
<合成例2>
攪拌装置、温度計および還流冷却器を備えた四つ口フラスコ反応器にイオン交換水84質量部、イソプロピルアルコール15.5質量部を仕込み、80℃に昇温した。過硫酸カリウム0.5質量部を投入し、同時にヒドロキシエチルアクリレート(HEA)100質量部を2時間かけて滴下した。なお、滴下中、反応器内の温度は約80℃に保った。滴下終了後、約80℃で1時間保持し、冷却した後、反応器から樹脂溶液を取り出した(以下、これを樹脂溶液Bと呼ぶ)。得られた樹脂溶液Bは、不揮発分が50質量%、重量平均分子量(M)が56,200であった。
【0025】
<合成例3>
攪拌装置、温度計および還流冷却器を備えた四つ口フラスコ反応器にイオン交換水93質量部、イソプロピルアルコール6.5質量部を仕込み、80℃に昇温した。過硫酸カリウム0.5質量部を投入し、同時にヒドロキシエチルアクリレート(HEA)80質量部およびヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)20質量部を2時間かけて滴下した。なお、滴下中、反応器内の温度は約80℃に保った。滴下終了後、約80℃で1時間保持し、冷却した後、反応器から樹脂溶液を取り出した(以下、これを樹脂溶液Cと呼ぶ)。得られた樹脂溶液Cは、不揮発分が50質量%、重量平均分子量(M)が300,200であった。
【0026】
<参考合成例1>
攪拌装置、温度計および還流冷却器を備えた四つ口フラスコ反応器にイオン交換水84質量部、イソプロピルアルコール15.5質量部を仕込み、80℃に昇温した。過硫酸カリウム0.5質量部を投入し、同時にヒドロキシエチルアクリレート(HEA)75質量部およびメチルメタクリレート(MMA)25質量部を2時間かけて滴下したところ、樹脂が不溶化して析出し、樹脂溶液が得られなかった。なお、滴下中、反応器内の温度は約80℃に保った。
【0027】
【表1】

【0028】
<実施例1>
樹脂溶液A 2質量部(不揮発分として1質量部)を水79質量部に添加し攪拌した後、これを市販のC重油320質量部と混合し、上記方法に従ってエマルジョン燃料を調製した。調製直後の粘度は460mPa・sであり、粒子径は1〜3μmであった。23℃および50℃で7日間放置後の粘度はそれぞれ500mPa・sおよび480mPa・sであり、粒子径はほとんど変化が見られなかった。
【0029】
<実施例2>
樹脂溶液B 2質量部(不揮発分として1質量部)を水79質量部に添加し攪拌した後、これを市販のC重油320質量部と混合し、上記方法に従ってエマルジョン燃料を調製した。調製直後の粘度は430mPa・sであり、粒子径は1〜3μmであった。23℃および50℃で7日間放置後の粘度はそれぞれ500mPa・sおよび480mPa・sであり、粒子径はほとんど変化が見られなかった。
【0030】
<実施例3>
樹脂溶液C 2質量部(不揮発分として1質量部)を水79質量部に添加し攪拌した後、これを市販のC重油320質量部と混合し、上記方法に従ってエマルジョン燃料を調製した。調製直後の粘度は480mPa・sであり、粒子径は1〜3μmであった。23℃および50℃で7日間放置後の粘度はそれぞれ490mPa・sおよび470mPa・sであり、粒子径はほとんど変化が見られなかった。
【0031】
<比較例1>
水80質量部と市販のC重油320質量部とを混合し、上記方法に従ってエマルジョン燃料を調製した。調製直後の粘度は510mPa・sであり、粒子径は1〜7μmであった。23℃および50℃で7日間放置後の粘度はそれぞれ740mPa・sおよび350mPa・sであった。23℃で7日間放置後の粒子径は1〜10μmであった。また、50℃で7日間放置後の粒子径は約20μmであった(ただし、粒子はほとんど存在しなかった)。
【0032】
<比較例2>
油溶性ノニオン界面活性剤(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、HLB7.8)1.0質量部を市販のC重油320質量部に添加し攪拌した後、これを水80質量部と混合し、上記方法に従ってエマルジョン燃料を調製した。作製直後の粘度は550mPa・s、粒子径は1〜6μmであった。23℃および50℃で7日間放置後の粘度はそれぞれ680mPa・sおよび360mPa・sであった。23℃で7日間放置後の粒子径はほとんど変化が見られなかったが、50℃で7日間放置後の粒子径は1〜15μmであった。
【0033】
<比較例3>
親水性ノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、HLB13.5)1.0質量部および20%ポリビニルアルコール水溶液(株式会社クラレ製PVA205)0.5質量部(不揮発分として0.1質量部)を水79質量部に添加し攪拌した後、これを市販のC重油320質量部と混合し、上記方法に従ってエマルジョン燃料を調製した。調製直後の粘度は600mPa・sであり、粒子径は1〜6μmであった。23℃および50℃で7日間放置後の粘度はそれぞれ690mPa・sおよび610mPa・sであった。23℃で7日間放置後の粒子径はほとんど変化が見られなかったが、50℃で7日間放置後の粒子径は1〜10μmであった。
【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
表2および3より、実施例1〜3のエマルジョン燃料は、乳化剤を添加しない比較例1よりも経時安定性に優れるのは当然のことながら、従来のエマルジョン燃料に相当する比較例2および3と比較しても、経時安定性に優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有エチレン性不飽和単量体を少なくとも80質量%含有する不飽和単量体組成物をラジカル重合して得られる水溶性樹脂、燃料油および水を含有することを特徴とするエマルジョン燃料。
【請求項2】
前記水溶性樹脂が、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートおよびヒドロキシブチルアクリレートからなる群から選択される水酸基含有エチレン性不飽和単量体のみを含有する不飽和単量体組成物をラジカル重合して得られるものであることを特徴とする請求項1に記載のエマルジョン燃料。
【請求項3】
前記エマルジョン燃料に対する前記水溶性樹脂の含有量が0.01〜5.0質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載のエマルジョン燃料。

【公開番号】特開2009−51939(P2009−51939A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219667(P2007−219667)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)
【Fターム(参考)】