説明

エラストマー上にグラフトされるPVCの懸濁液の製造方法

本発明は、PVCの製造の分野に関する。より詳細には、本発明は、重合され、エラストマーの形で重合されるアクリル、スチレンおよび/またはエチレンモノマー上にグラフトされる塩化ビニルモノマーを含むポリマーを製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビニル(PVC)の製造の分野に関する。より詳細には、本発明は、重合され、エラストマーの形で重合されるアクリル、スチレンおよび/またはエチレンモノマー上にグラフトされる塩化ビニルモノマーを含むポリマーを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリルエラストマー上にグラフトされるPVCに基づく製品の製造は、既に先行技術に広く記載されている。方法は、2つの異なる工程を含む。第1の工程は、一般には、乳化重合、または塊もしくは溶液重合に続いて乳化を行う方法によって実施される水中のアクリルポリマーのエマルジョンの製造に関する。第2の工程は、アクリルポリマーエマルジョンの存在下でVCMの重合を実施することに向けられる。この第2の工程を成功裡に実施するために、関与する反応工程の点で異なる2つの入手経路、即ち水中懸濁液での反応および水中エマルジョンでの反応が考えられる。第2の工程の操作条件は、一方でPVCを形成させ、他方でPVCをアクリルポリマーの初期エマルジョンにグラフトさせるように定められる。このグラフトの概念は、第2の工程の製造物の構成要素である懸濁粒子またはエマルジョン粒子のフラクションがPVCとアクリルポリマーとの混合物から個別に形成されることを暗示する。
【0003】
先行技術を調査すると、エラストマー上にグラフトされるPVCを製造する方法の第1の記載は、懸濁法でのVCMの重合に基づくことが明らかになる。次いで、アクリルポリマーが水中エマルジョンの形で導入され、水中エマルジョンが、重合反応器に充填する初期段階において添加される。これらの方法は、US4981907、US5185406およびUS5232991に示されている。
【0004】
エマルジョンの形のアクリルポリマーの初期添加を伴う乳化法でのVCMの重合に基づくアプローチは、例えば、EP0647663で公開された出願によって示されている最近の明細書の主題である。この方法は、「Emulsion Polymerization and Emulsion Polymers」by P.A.Lovell and M.S.El−Aasser(Wiley)などの水中分散相でのポリマーの製造に関する総覧に記載されているシードの乳化重合のための従来の合成手順からこの発想を得ている。
【0005】
懸濁法の特定の事例において、合成手順は、塩化ビニルモノマー(VCM)重合工程の前または最中にポリアクリルエマルジョンの凝集を引き起こすことを可能にする多価電解質型の成分(例えば二価金属塩)を含む。この特定の成分は、オートクレーブの初期供給原料に添加される。この特殊性に加えて、この方法は、従来の成分(主に、コロイド、pH調整剤および遊離ラジカル開始剤)ならびにVCMの懸濁重合の通常の条件を再現する。このタイプの方法の詳細な説明は、「Encyclopedia of PVC」Volume 1 edited by L.I.Nass and C.A.Heiberger(Marcel Dekker)という便覧に示されている。反応の終了時に得られる生成物は、PVCスラリーの特徴を有する。即ち、水に分散された、100から300μmの平均粒径を有するポリマーの粒子で構成される。従って、この生成物を、例えば、遠心による濾過の段階および減圧下での加熱による乾燥の段階を含む、PVC懸濁液を仕上げるための標準的な技術により単離することができる。懸濁経路によって製造される、アクリルエラストマー上にグラフトされるこれらのPVCを処理する方法は、標準的なPVC懸濁グレード(ホモポリマーまたはコポリマー)に対する方法と類似する。一般に、これらの方法は、半製造物(管、異形要素、板、シート、フィルム、成形部品)を得ることを可能にする様々な押出、射出成形または高温成形技術に対応する。
【0006】
懸濁経路を介して、エラストマー上にグラフトされるPVCを得ることは、世界市場で消費されるPVC樹脂の大多数(約80%)が懸濁グレードに対応するため、大きな工業的関心が持たれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4981907号明細書
【特許文献2】米国特許第5185406号明細書
【特許文献3】米国特許第5232991号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「Emulsion Polymerization and Emulsion Polymers」by P.A.Lovell and M.S.El−Aasser(Wiley)
【非特許文献2】「Encyclopedia of PVC」Volume 1 edited by L.I.Nass and C.A.Heiberger(Marcel Dekker)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、特に、懸濁グラフト法の2つの欠点を克服することを目的とする。
【0010】
第1の欠点は、アクリルエラストマーの水中エマルジョンの形での初期導入に関する。より広くはラテックスと呼ばれる水中エマルジョンは、この水中分散体がイオン性または非イオン性界面活性剤によって安定化される、一般に5μm未満の粒径を有するポリマーの基本粒子からなる。エマルジョンの乾燥物または乾燥抽出物含有量は、一般に30から50重量%である。ラテックスを扱う際の周知の欠点は、ラテックスを製造プラントに使用するとき(排水段階、貯蔵段階、排気段階もしくは供給段階)またはラテックスを別のプラントに輸送するときに問題となり得る機械的または熱的不安定性による。実際、高すぎる温度で費やされる時間中または凍結中に剪断応力の影響下でラテックスの凝集を観察することが可能である。輸送コストに負担をかける70から50重量%の大きな分量の水の存在が不安定性の問題に加わる。最後に、工業プラントの大多数において、このラテックスは、そのまま使用されず、エラストマー製品を粉末の形で単離および販売できるように乾燥処理されるため、ラテックスの使用には製造工具の改造が必要であり得る。
【0011】
第2の欠点は、VCM重合工程の前または最中のエラストマーラテックスの凝集にある。このラテックス凝集は、確定粒径の基本粒子の凝集体を形成することで、第1に、遠心による濾過に対して有害な(10μm未満の)超微粒子が最終スラリーに存在することを回避し、第2にグラフト樹脂の粒子の粒径分布および形態を制御することを可能にするために必要である。多価電解質の初期添加によってもたらされるこの凝集過程は、ラテックスの熱力学的履歴および重合の操作条件(撹拌、温度、他の成分の存在、媒体のpH)に応じて変化するラテックスの安定性に依存するため再現するのが困難である。また、反応器内のラテックスの凝集は、生産性の点で不利である壁または撹拌器軸におけるポリマー堆積物の形成に関してリスクをもたらすことが一般に認められている。この凝集過程は、二価金属(Ca、Al、Mgなど)を含む流出水に関連する問題をも招き得る。
【0012】
本発明の主題である方法は、特に、水中エマルジョンの形のエラストマーを導入することにある工程の代わりに、エラストマーエマルジョンを噴霧乾燥することによって得ることができる粉末の形のエラストマーを導入することにある工程を用いることによって、上記方法の欠点を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本発明の主題は、グラフトポリマーを製造する方法であって、前記ポリマーが、重合される塩化ビニルモノマーと、エラストマーの形で重合されるアクリル、スチレンおよび/またはエチレンモノマーとを含み、前記方法が、
(a)水および少なくとも1つの保護コロイドを反応器に充填する工程と、次いで
(b)分散体を得るように、アクリル、スチレンおよび/またはエチレンエラストマーを粉末の形で撹拌しながら添加する工程と、次いで
(c)懸濁液を得るように、塩化ビニルに可溶性である、遊離ラジカルを形成することが可能な開始剤と、塩化ビニルモノマーとを、場合により、塩化ビニルモノマーと共重合することができる他のモノマーとともに添加する工程と、
(d)前記ポリマーを得るように、工程(c)の前、最中または後に反応媒体を50℃から80℃の範囲の温度で加熱する工程とを含む方法である。
【0014】
粉末の形、好ましくは乾燥粉末の形のエラストマーを本発明の主題である懸濁製造法に導入すると、水中のエラストマーラテックスエマルジョンの使用に固有の短所、即ち、ラテックスの熱力学的不安定性の問題、大きな分量の水を含む製品の見込まれる輸送、VCM重合反応器を被覆するリスクを回避することが可能である。
【0015】
本発明の主題である方法は、また、この市販の粉末の形で調整されたエラストマー製品の使用、グラフト樹脂の製造時に凝集工程が存在しないことによるより高い再現性という利点を有する。
【0016】
工程(b)で添加される粉末の形のアクリル、スチレンおよび/またはエチレンエラストマーは、10から200μmの平均粒径を有する。この粉末の形のエラストマーを、エラストマーラテックスを噴霧乾燥することによって得ることができる。噴霧乾燥により乾燥するための技術は、様々な熱可塑性ポリマーに基づく配合物を製造するために後に使用されるエラストマー粉末を得るために工業規模で広く使用されている。粉末の形のエラストマーは、平均粒径が、使用される噴霧乾燥器のタイプ(ノズル噴霧またはタービン噴霧)およびこの操作条件に応じて10から200μmである粒子で構成される。次いで、製品の最終的な使用に好適な粒径を得るために、これらの粒子に粉砕工程を施すことができる。好ましくは、エラストマーラテックスは、水中エマルジョンにてアクリル、スチレンおよび/またはエチレンモノマーを重合することによって得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の目的のために、「エラストマー」という用語は、ガラス転移温度が0℃以下であるポリマーまたはコポリマーを指すものとする。当該ポリマーまたはコポリマーは、使用温度で測定されるヤング率が10000Paから100000000Pa、好ましくは50000Paから10000000Paである。
【0018】
工程(b)において使用することができるエラストマーの中では、非排他的な例として、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレンおよびこれらの水素化型、ポリイソブチレン、ポリブタジエンおよびイソプレンとスチレンとのブロックコポリマーならびにこれらの水素化型、例えば、ポリ(スチレン−b−ブタジエン)(SB)、ポリ(スチレン−b−ブタジエン−b−スチレン)(SBS)、ポリ(スチレン−b−イソプレン−b−スチレン)(SIS)、ポリ(スチレン−b−(イソプレン−stat−ブタジエン)−b−スチレン)もしくはポリ(スチレン−b−イソプレン−b−ブタジエン−b−スチレン)(SIBS)、水素化SBS(SEBS)、ポリ(スチレン−b−ブタジエン−b−メチルメタクリレート)(SBM)およびこの水素化型(SEBM)、ポリ(メチルメタクリレート−b−ブチルアクリレート−b−メチルメタクリレート)(MAM)、ポリ(スチレン−b−ブチルアクリレート−b−スチレン)(SAS)、ブタジエンとスチレン(SBR)およびアクリロニトリル(NBR)とのランダムコポリマーならびにこれらの水素化型、ブチルもしくはハロゲン化ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、エチレン/プロピレンおよびエチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)コポリマー、エチレンとアクリルおよびビニルモノマーとのコポリマー、例えば、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマー、商品名OREVAC(登録商標)でARKEMA社から入手可能なエチレンと酢酸ビニルと無水マレイン酸とのコポリマー、エチレンとアクリル酸エステルとのコポリマー、エチレンとアクリル酸エステルと無水マレイン酸とのコポリマー、商品名LOTADER(登録商標)でARKEMA社から入手可能なエチレンとアクリル酸エステルとアクリル酸もしくはメタクリル酸グリシジルなどの官能性アクリル酸エステルとのコポリマー、軟質アクリルポリマーもしくはコポリマー、例えば、ポリアクリル酸ブチルおよびこのスチレンとのコポリマーなどのアクリル酸エステルに基づく樹脂、または他のアクリルもしくはビニルモノマー、ならびにこれらのブレンドを挙げることができる。
【0019】
エラストマーを特に以下の製品から選択することができる。
【0020】
商品名Durstrength(登録商標)200、320、340および360でARKEMA社により販売されるアクリル誘導体、商品名Paraloid(登録商標)KM342、KM342B、KM361、KM370およびKM1でRohm&Haas社により販売されるアクリル誘導体、商品名FM22(登録商標)およびFM50(登録商標)でKANEKA社により販売されるアクリル誘導体。
【0021】
商品名Clearstrength(登録商標)W300でARKEMA社により販売されるアクリル−スチレン誘導体。
【0022】
商品名Clearstrength(登録商標)C140、C320、C223、C859およびC303HでARKEMA社により販売されるMBS、商品名Paraloid(登録商標)BTA702S、707、717、730、736Sおよび780SでRohm&Haas社により販売されるMBS、商品名Kane Ace(登録商標)B11A、22、28A、38Aおよび56でKaneka社により販売されるMBS。
【0023】
工程(b)の終了時に得られる、水、コロイドおよびエラストマーを含む水性分散体は、工程(c)において、塩化ビニルモノマーの懸濁重合に使用される。この工程において、遊離ラジカルを形成することが可能な開始剤と、塩化ビニルモノマーとを、場合により、塩化ビニルモノマーと共重合することができる他のモノマーとともに添加する。水を添加してもよい。これらの成分を添加する順番は変更可能である。この添加の前、最中または後に、反応媒体を50℃から80℃の範囲の温度で加熱する。好ましくは、撹拌しながらこの工程(c)を実施し、極めて好ましくは、撹拌は塩化ビニルモノマーの添加の前に開始し、工程(c)全体において継続する。
【0024】
重合において、塩化ビニルまたは塩化ビニルモノマーを含む混合物1重量部当たり1から5重量部の水、好ましくは1から3重量部の水を使用する。
【0025】
本発明に従ってグラフトポリマーに含まれるエラストマーの割合を、工程(b)で添加されるエラストマー粉末の量または工程(c)において使用される塩化ビニルモノマーの量を変更することにより当業者によって容易に調整することができる。好ましくは、本発明の主題である方法により得られるポリマーは、ポリマーの全重量に対して15から70重量%のアクリル、スチレンおよび/またはエチレンモノマーを含む。
【0026】
好ましくは、塩化ビニルと共重合することができるモノマーは、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、イソトリデカン酸ビニルエステル、塩化ビニリデン、ビニルエーテル、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸およびメタクリル酸、ならびに1から10個の炭素原子を含む脂肪族アルコールを含むこれらのモノエステルおよびジエステル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド、ならびに芳香族または脂環式基による前記モノマーのN置換からの生成物から選択される。好ましくは、前記モノマーは、酢酸ビニルおよびメタクリル酸エステルから選択される。
【0027】
本発明の1つの特定の実施形態において、工程(a)において、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩ならびに有機および無機酸塩から選択される沈殿剤を添加する。この添加は、エラストマーを粉末の形で添加することにある工程(b)においてエラストマーエマルジョンが形成または再構成されることを回避することを可能にする。この沈殿剤を、例えば、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、塩化バリウム、硝酸バリウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウムおよび塩化第二鉄から選択することができる。沈殿剤は、一般には水溶液で導入される。
【0028】
塩化ビニルに可溶である、遊離ラジカルを形成することが可能な開始剤は、好ましくは、重合温度で1から20時間の半減期を有する過酸化物またはアゾ化合物である。過酸化物、ジアルキル、ジアシルおよびジアロイル過酸化物、パーオキシジカーボネートおよびパーエステルを挙げることができる。アゾ開始剤の例は、アゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビスジメチルバレロニトリルである。必要であれば、還元剤を添加してもよい。開始剤を、塩化ビニルモノマーの重量に対して好ましくは0.01から1重量%の範囲の濃度で、単独でまたは混合物として使用することができる。
【0029】
保護コロイドとして、部分加水分解ポリ(酢酸ビニル)およびセルロース系ポリマー、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース型の化合物から選択される保護コロイドを使用することが好ましい。
【0030】
本発明の主題である方法は、さらなる工程を含むことができる。
【0031】
工程(c)において、塩化ビニルモノマーの添加前に、存在する酸素を除去するために真空にすることができる。
【0032】
工程(d)の終了時に、固定転換率が得られるまで反応媒体を一定温度に維持するさらなる工程を設けることが可能である。この変換は、反応時間、熱平衡、または一般に反応温度における初期塩化ビニルモノマー圧力に対する−0.1から−5バールの圧力降下に基づいて確定される。固定転換率は、使用される塩化ビニルモノマーに対して一般には45から90%、好ましくは70から80%である。
【0033】
工程(d)の終了時に、脱気して残留塩化ビニルモノマーを蒸発させる工程を設けることが可能である。
【0034】
工程(d)の終了時に本発明の主題である方法を使用して得られる生成物は、PVCスラリーの特徴を有する。即ち、水に分散された、100から300μmの平均粒径を有するポリマーの粒子で構成される。この生成物を、例えば、遠心による濾過の段階および減圧下での加熱による乾燥の段階を含む、PVC懸濁液を仕上げるための標準的な技術により単離することができる。そこで、100から500μm、好ましくは100から300μmの平均粒径を有する粒子で構成される粉末が得られる。
【0035】
本発明の主題である方法により製造される、エラストマー上にグラフトされるPVCを処理する方法は、標準的なPVC懸濁グレード(ホモポリマーまたはコポリマー)に対する方法と類似する。一般に、これらの方法は、半製造物(管、異形要素、板、シート、フィルム、成形部品)を得ることを可能にする様々な押出、射出成形または高温成形技術に対応する。
【0036】
本発明の主題である方法によって得られるコポリマーは、良好な流動特性および高い密度を有する。
【0037】
これらの生成物を、半硬質もしくは軟質PVCベースの物体を製造するために、可塑剤を加えずに、または低比率の可塑剤加えて、純粋な形で、または標準的なグレードのPVCとのブレンドとして使用することができる。従って、可塑剤を加えずに、または標準的なグレードのPVC懸濁液またはエマルジョン(ホモポリマーまたはコポリマー)を含む配合物と比較して低比率の可塑剤を加えて、本発明の方法により得られた生成物を半硬質または軟質PVC用途に使用することができる。本発明の方法により得られた生成物は、可塑剤を含む既知の配合物と比較して、ショア硬度/ビカーの妥協点および温度安定性の点でも有利である。
【0038】
これらの生成物をPVC配合物における耐衝撃性改良剤として使用することができる。
【0039】
(実施例)
【実施例1】
【0040】
エラストマーの噴霧乾燥粉末を使用する懸濁法によって得られる、アクリル上にグラフトされるPVC/アクリル量=17%
11リットルの脱イオン水を、周囲温度にて、Impeller(登録商標)型の撹拌機軸を備えた30リットルのオートクレーブに導入する。88%の加水分解ポリビニルアルコールをベースとした2.82gのコロイド(日本合成のGohsenol GH20(登録商標))、72%の加水分解ポリビニルアルコールをベースとした2.50gのコロイド(SynthomerのAlcotex B72(登録商標))、55%の加水分解ポリビニルアルコールをベースとした1.26gのコロイド(3V SigmaのPolivic S404W(登録商標))および14gの塩化カルシウムを添加する。オートクレーブを閉じる。撹拌速度を100rpmとし、1011gのポリブチルアクリレートベースのアクリルエラストマー粉末(ArkemaのDurastrength D340(登録商標))を5分間にわたって導入し、5分間分散させる。次いで、2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネートの水中60%の7.79gのエマルジョン(ArkemaのLuperox 226EN60(登録商標))を添加する。撹拌速度を330rpmに上昇させ、30分間にわたって0.04バールの圧力で真空引きする。7kgのVCMをこれに充填する。混合物を周囲温度で25分間撹拌させる。次いで、2℃/分の加熱傾斜に従って、このジャケットによりオートクレーブを加熱することによって反応媒体の温度を56.5℃にする。56.5℃の温度で30分間後に、2.72リットルの水を240分間の時間にわたって一定流量で注入する。56.5℃の温度で初期VCM圧力に対して−1バールの圧力降下が生じるまで反応を継続する。このレベルの圧力降下において、18℃の水をジャケットに注入することによってオートクレーブを50℃まで冷却する。加熱傾斜の終了から−1バールまでの全反応時間は350分間である。50℃にて、撹拌を250rpmに低下させて、VCMを脱気し、次いで残留VCMを除去するためにオートクレーブを4時間にわたって動的真空下に置く。
【0041】
19.590kgの懸濁スラリーを回収する。スラリーを吸引により排水し、周囲温度にて48時間にわたって流動床で乾燥させる。乾燥後のグラフト樹脂の重量は5.870kgである。Malvern MasterSizer 2000粒径分析装置を用いて測定した懸濁粒子の平均粒径は430μmになる。
【実施例2】
【0042】
エラストマーの噴霧乾燥粉末を使用する懸濁法によって得られる、アクリル上にグラフトされるPVC/アクリル量=17%
11リットルの脱イオン水を、周囲温度にて、Impeller型の撹拌機軸を備えた30リットルのオートクレーブに導入する。88%の加水分解ポリビニルアルコールをベースとした5.64gのコロイド(日本合成のGohsenol GH20(登録商標))、72%の加水分解ポリビニルアルコールをベースとした5gのコロイド(SynthomerのAlcotex B72(登録商標))、55%の加水分解ポリビニルアルコールをベースとした1.26gのコロイド(3V SigmaのPolivic S404W(登録商標))および14gの塩化カルシウムを添加する。オートクレーブを閉じる。撹拌速度を100rpmとし、1011gのポリブチルアクリレートベースのアクリルエラストマー粉末(ArkemaのDurastrength D340(登録商標))を5分間にわたって導入し、5分間分散させる。次いで、2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネートの水中60%の10.5gのエマルジョン(ArkemaのLuperox 226EN60(登録商標))を添加する。撹拌速度を330rpmに上昇させ、30分間にわたって0.04バールの圧力で真空引きする。7kgのVCMをこれに充填する。混合物を周囲温度で25分間撹拌させる。次いで、2℃/分の加熱傾斜に従って、このジャケットによりオートクレーブを加熱することによって反応媒体の温度を56.5℃にする。56.5℃の温度で30分間後に、2.30リットルの水を230分間の時間にわたって一定流量で注入する。56.5℃の温度で初期VCM圧力に対して−1バールの圧力降下が生じるまで反応を継続する。このレベルの圧力降下において、18℃の水をジャケットに注入することによってオートクレーブを50℃まで冷却する。加熱傾斜の終了から−1バールまでの全反応時間は264分間である。50℃にて、撹拌を250rpmに低下させて、VCMを脱気し、次いで残留VCMを除去するためにオートクレーブを4時間にわたって動的真空下に置く。
【0043】
19.220kgの懸濁スラリーを回収する。スラリーを吸引により排水し、周囲温度にて48時間にわたって流動床で乾燥させる。乾燥後のグラフト樹脂の重量は5.920kgである。Malvern MasterSizer 2000粒径分析装置を用いて測定した懸濁粒子の平均粒径は263μmになる。
【実施例3】
【0044】
エラストマーの噴霧乾燥粉末を使用する懸濁法によって得られる、アクリル上にグラフトされるPVC/アクリル量=16%
11リットルの脱イオン水を、周囲温度にて、Impeller型の撹拌機軸を備えた30リットルのオートクレーブに導入する。88%の加水分解ポリビニルアルコールをベースとした5.64gのコロイド(日本合成のGohsenol GH20(登録商標))、72%の加水分解ポリビニルアルコールをベースとした10gのコロイド(SynthomerのAlcotex B72(登録商標))、55%の加水分解ポリビニルアルコールをベースとした1.26gのコロイド(3V SigmaのPolivic S404W(登録商標))および14gの塩化カルシウムを添加する。オートクレーブを閉じる。撹拌速度を100rpmとし、1011gのポリブチルアクリレートベースのアクリルエラストマー粉末(ArkemaのDurastrength D340(登録商標))を5分間にわたって導入し、5分間分散させる。次いで、2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネートの水中60%の10.5gのエマルジョン(ArkemaのLuperox 226EN60(登録商標))を添加する。撹拌速度を330rpmに上昇させ、30分間にわたって0.04バールの圧力で真空引きする。7kgのVCMをこれに充填する。混合物を周囲温度で25分間撹拌させる。次いで、2℃/分の加熱傾斜に従って、このジャケットによりオートクレーブを加熱することによって反応媒体の温度を56.5℃にする。56.5℃の温度で30分間後に、2.30リットルの水を230分間の時間にわたって一定流量で注入する。56.5℃の温度で初期VCM圧力に対して−1バールの圧力降下が生じるまで反応を継続する。このレベルの圧力降下において、18℃の水をジャケットに注入することによってオートクレーブを50℃まで冷却する。加熱傾斜の終了から−1バールまでの全反応時間は244分間である。50℃にて、撹拌を250rpmに低下させて、VCMを脱気し、次いで残留VCMを除去するためにオートクレーブを4時間にわたって動的真空下に置く。
【0045】
19.640kgの懸濁スラリーを回収する。スラリーを吸引により排水し、周囲温度にて48時間にわたって流動床で乾燥させる。乾燥後のグラフト樹脂の重量は6.340kgである。Malvern MasterSizer 2000粒径分析装置を用いて測定した懸濁粒子の平均粒径は180μmになる。
【実施例4】
【0046】
エラストマーの噴霧乾燥粉末を使用する懸濁法によって得られる、アクリル上にグラフトされるPVC/アクリル量=18%
11リットルの脱イオン水を、周囲温度にて、Impeller型の撹拌機軸を備えた30リットルのオートクレーブに導入する。88%の加水分解ポリビニルアルコールをベースとした5.64gのコロイド(日本合成のGohsenol GH20(登録商標))、72%の加水分解ポリビニルアルコールをベースとした5gのコロイド(SynthomerのAlcotex B72(登録商標))および55%の加水分解ポリビニルアルコールをベースとした1.26gのコロイド(3V SigmaのPolivic S404W(登録商標))を添加する。オートクレーブを閉じる。撹拌速度を100rpmとし、1011gのポリブチルアクリレートベースのアクリルエラストマー粉末(ArkemaのDurastrength D340(登録商標))を5分間にわたって導入し、5分間分散させる。次いで、2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネートの水中60%の10.5gのエマルジョン(ArkemaのLuperox 226EN60(登録商標))を添加する。撹拌速度を330rpmに上昇させ、30分間にわたって0.04バールの圧力で真空引きする。7kgのVCMをこれに充填する。混合物を周囲温度で25分間撹拌させる。次いで、2℃/分の加熱傾斜に従って、このジャケットによりオートクレーブを加熱することによって反応媒体の温度を56.5℃にする。56.5℃の温度で30分間後に、2.30リットルの水を230分間の時間にわたって一定流量で注入する。56.5℃の温度で初期VCM圧力に対して−1バールの圧力降下が生じるまで反応を継続する。このレベルの圧力降下において、18℃の水をジャケットに注入することによってオートクレーブを50℃まで冷却する。加熱傾斜の終了から−1バールまでの全反応時間は232分間である。50℃にて、撹拌を250rpmに低下させて、VCMを脱気し、次いで残留VCMを除去するためにオートクレーブを4時間にわたって動的真空下に置く。
【0047】
18.980kgの懸濁スラリーを回収する。スラリーを吸引により排水し、周囲温度にて48時間にわたって流動床で乾燥させる。乾燥後のグラフト樹脂の重量は5.580kgである。得られた懸濁スラリーは非常に粗い。粒子の平均粒径は、実質的に5mmと推定された。
【実施例5】
【0048】
エラストマーの噴霧乾燥粉末を使用する懸濁法によって得られる、アクリル上にグラフトされるPVC/アクリル量=38%
11リットルの脱イオン水を、周囲温度にて、Impeller型の撹拌機軸を備えた30リットルのオートクレーブに導入する。80%の加水分解ポリビニルアルコールをベースとした11.9gのコロイド(KurarayのMowiol 15−79(登録商標))および42gの塩化カルシウムを添加する。オートクレーブを閉じる。撹拌速度を100rpmとし、2557gのポリブチルアクリレートベースのアクリルエラストマー粉末(ArkemaのDurastrength D340(登録商標))を5分間にわたって導入し、5分間分散させる。次いで、2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネートの水中60%の15gのエマルジョン(ArkemaのLuperox 226EN60(登録商標))を添加する。撹拌速度を330rpmに上昇させ、30分間にわたって0.04バールの圧力で真空引きする。6.3kgのVCMをこれに充填する。混合物を周囲温度で25分間撹拌させる。次いで、2℃/分の加熱傾斜に従って、このジャケットによりオートクレーブを加熱することによって反応媒体の温度を56.5℃にする。56.5℃の温度で30分間後に、2.30リットルの水を230分間の時間にわたって一定流量で注入する。56.5℃の温度で初期VCM圧力に対して−1バールの圧力降下が生じるまで反応を継続する。このレベルの圧力降下において、18℃の水をジャケットに注入することによってオートクレーブを50℃まで冷却する。加熱傾斜の終了から−1バールまでの全反応時間は210分間である。50℃にて、撹拌を250rpmに低下させて、VCMを脱気し、次いで残留VCMを除去するためにオートクレーブを4時間にわたって動的真空下に置く。
【0049】
20.020kgの懸濁スラリーを回収する。スラリーを吸引により排水し、周囲温度にて48時間にわたって流動床で乾燥させる。乾燥後のグラフト樹脂の重量は6.700gである。Malvern MasterSizer 2000粒径分析装置を用いて測定した懸濁粒子の平均粒径は163μmになる。
【実施例6】
【0050】
エラストマーの噴霧乾燥粉末を使用する懸濁法によって得られる、アクリル上にグラフトされるPVC/アクリル量=39%
11リットルの脱イオン水を、周囲温度にて、Impeller型の撹拌機軸を備えた30リットルのオートクレーブに導入する。80%の加水分解ポリビニルアルコールをベースとした11.9gのコロイド(KurarayのMowiol 15−79(登録商標))を添加する。オートクレーブを閉じる。撹拌速度を100rpmとし、2557gのポリブチルアクリレートベースのアクリルエラストマー粉末(ArkemaのDurastrength D340(登録商標))を5分間にわたって導入し、5分間分散させる。次いで、2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネートの水中60%の15gのエマルジョン(ArkemaのLuperox 226EN60(登録商標))を添加する。撹拌速度を330rpmに上昇させ、30分間にわたって0.04バールの圧力で真空引きする。6.3kgのVCMをこれに充填する。混合物を周囲温度で25分間撹拌させる。次いで、2℃/分の加熱傾斜に従って、このジャケットによりオートクレーブを加熱することによって反応媒体の温度を56.5℃にする。56.5℃の温度で30分間後に、2.30リットルの水を230分間の時間にわたって一定流量で注入する。56.5℃の温度で初期VCM圧力に対して−1バールの圧力降下が生じるまで反応を継続する。このレベルの圧力降下において、18℃の水をジャケットに注入することによってオートクレーブを50℃まで冷却する。加熱傾斜の終了から−1バールまでの全反応時間は212分間である。50℃にて、撹拌を250rpmに低下させて、VCMを脱気し、次いで残留VCMを除去するためにオートクレーブを4時間にわたって動的真空下に置く。
【0051】
19.870kgの懸濁スラリーを回収する。スラリーを吸引により排水し、周囲温度にて48時間にわたって流動床で乾燥させる。乾燥後のグラフト樹脂の重量は6.550gである。得られた懸濁スラリーは非常に粗い。粒子の平均粒径は、実質的に2mmと推定された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフトポリマーを製造する方法であって、前記ポリマーが、重合される塩化ビニルモノマーと、エラストマーの形で重合されるアクリル、スチレンおよび/またはエチレンモノマーとを含み、前記方法が、少なくとも、
(a)水および少なくとも1つの保護コロイドを反応器に充填する工程と、次いで
(b)分散体を得るように、アクリル、スチレンおよび/またはエチレンエラストマーを粉末の形で撹拌しながら添加する工程と、次いで
(c)懸濁液を得るように、塩化ビニルに可溶性である、遊離ラジカルを形成することが可能な開始剤と、塩化ビニルモノマーとを、場合により、塩化ビニルモノマーと共重合することができる他のモノマーとともに添加する工程と、
(d)前記ポリマーを得るように、工程(c)の前、最中または後に反応媒体を50℃から80℃の範囲の温度で加熱する工程と
を含む方法。
【請求項2】
工程(a)において、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩ならびに有機および無機酸塩から選択される沈殿剤を添加することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
沈殿剤が、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、塩化バリウム、硝酸バリウム、塩化アルミニウムおよび硫酸アルミニウムカリウムから選択されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(b)で添加される粉末の形のアクリル、スチレンおよび/またはエチレンエラストマーが、前記エラストマーのラテックスを噴霧乾燥することによって得られることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記エラストマーのラテックスが、水中エマルジョンにてアクリル、スチレンおよび/またはエチレンモノマーを重合することによって得られることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記グラフトポリマーが、ポリマーの全重量に対して15から70重量%のアクリル、スチレンおよび/またはエチレンモノマーを含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
塩化ビニルと共重合することができるモノマーが、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、イソトリデカン酸ビニルエステル、塩化ビニリデン、ビニルエーテル、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸およびメタクリル酸、ならびに1から10個の炭素原子を含む脂肪族アルコールを含むこれらのモノエステルおよびジエステル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド、ならびに芳香族または脂環式基による前記モノマーのN置換からの生成物から選択されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(c)において、塩化ビニルモノマーの添加前に、存在する酸素を除去するために真空にすることを特徴とする、請求項1から7の一項に記載の方法。
【請求項9】
遊離ラジカルを形成することが可能な開始剤が、ジアルキル、ジアシルおよびジアロイル過酸化物ならびにパーオキシジカーボネート、パーエステル、アゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビスジメチルバレロニトリルから選択されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
保護コロイドが、部分加水分解ポリ(酢酸ビニル)およびセルロース誘導体、好ましくはヒドロキシプロピルメチル−セルロースから選択されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−526884(P2012−526884A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510332(P2012−510332)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050870
【国際公開番号】WO2010/130921
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】