説明

エラストマー複合材およびその製造方法

エラストマーラテックスを含む第1の流体を、粒状充填剤を含む第2の流体と混合すること、エラストマーラテックスを凝固させ、それによってマスターバッチクラムを形成すること、マスターバッチクラムを約1質量%〜約20質量%の含水量にさせて、脱水された凝固物を形成すること、脱水された凝固物に機械的エネルギーを加えて、脱水された凝固物を摩擦の結果として発熱させて、脱水された凝固物から水を除去し、一方で、脱水された凝固物が約130℃〜約190℃の温度に達っせしめ、含水量は約0.5%〜約3%に低減され、そして含水量の実質的に全ての低下は蒸発によって成し遂げられ、それによって素練りされたマスターバッチを製造すること、ならびに、更に含水量を低減させながら、素練りされたマスターバッチに、少なくとも更に0.3MJ/kgの機械的エネルギーを加えること、を含むエラストマー複合材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2008年2月8日出願の米国仮出願第61/065086に対して優先権を主張し、その内容の全てを参照することによって本明細書の内容とする。
【0002】
本発明は、エラストマー複合材の製造方法および、その方法によって製造された複合材に関する。
【背景技術】
【0003】
商業的に重要な多くの製品が、エラストマー組成物で作られており、そこでは粒状充填剤が、種々の合成エラストマー、天然ゴムまたはエラストマー混合物のいずれかの中に分散されている。例えば、カーボンブラックは、天然ゴムおよび他のエラストマー中において、補強剤として広範に用いられている。マスターバッチ、すなわち、充填剤、エラストマーおよび種々の所望による添加剤、例えばエクステンダー油の予備混合物を作成するのが一般的である。商業的に入手できる異なるグレードのカーボンブラックからカーボンブラックマスターバッチが調製され、このカーボンブラックは単位質量当たりの表面積およびストラクチャーの両方について様々であり、そのストラクチャーは、一次カーボンブラック粒子の互いの融合によって形成されるカーボンブラック集塊の大きさおよび複雑さを表現している。天然ゴム中に分散されたカーボンブラック粒状充填剤のこのようなエラストマー組成物から、商業的に重要な数多くの製品が形成される。そのような製品としては、例えば、車両用タイヤが挙げられ、そこでは異なるエラストマー組成物を、トレッド部、サイドウォール、ワイヤースキムおよびカーカス用に用いることができる。他の製品としては、例えば、エンジンマウントブッシング、コンベアベルト、風防ワイパーなどが挙げられる。
【0004】
天然ゴム配合物中のカーボンブラックの良好な分散は、良好な品質および一貫した製品性能を得るための最も重要な目標の1つとしてしばしば認識されてきており、そして相当な努力がゴム中の分散品質の評価手順の開発に振り向けられてきている。この混合操作は、混合効率およびマクロ分散に直接の影響を有する。一般には、カーボンブラックのより良いマクロ分散は、乾式混合されたマスターバッチでは、より長い混合および、より強力な混合によって達成される。しかしながら、不幸にも、より長く、より強力な混合によってよりよいマクロ分散を得ることは、カーボンブラックを分散しようとしているエラストマーを劣化させる。このことは、機械的または熱的分解の影響を極めて受けやすい天然ゴムの場合において、特に問題を含んでいる。既知の混合技術および装置、例えば密閉式混合機を用いたより長い、そしてより強力な混合は、天然ゴムマスターバッチ組成物の分子量を低下させる。従って、天然ゴム中のカーボンブラックの改善されたマクロ分散は、対応する、一般には望ましくないゴムの分子量の低下を伴って得られることが知られている。
【0005】
乾式混合技術に加えて、ラテックスおよびカーボンブラックスラリーを攪拌された凝固タンクに連続的に供給することが知られている。このような「湿式」技術は、しばしば合成エラストマー、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)で用いられている。凝固タンクは、凝固剤、例えば塩または、約2.5〜4のpHを有する酸水溶液を含んでいる。このラテックスとカーボンブラックスラリーは、凝固タンク中で混合され、そして湿潤クラムと呼ばれる小さなビーズ(典型的には直径が数ミリメートル)に凝固される。このクラムおよび酸流出液は、典型的には振動篩(a vibrating shaker screen)などによって、分離される。このクラムは、次いで第2の攪拌タンク中に投入され、そこで中性または中性に近いpHを得るように洗浄される。その後、このクラムは、更なる振動篩および乾燥工程などに掛けられる。この方法の変形が、天然および合成エラストマーの凝固のために提案されてきている。本願と同じ出願人の、Hagopianらへの米国特許第4,029,633号明細書中には、エラストマーマスターバッチの調製のための連続式プロセスが記載されている。カーボンブラックの水性スラリーが調製され、そして天然もしくは合成エラストマーラテックスと混合されている。この混合物は、場合によっては種々の既知のクリーミング剤のいずれかを用いて、いわゆるクリーミング操作を受ける。カーボンブラック/ラテックス混合物のクリーミングに続いて、この混合物は凝固工程に掛けられる。特に、クリーム化されたカーボンブラック/ラテックス混合物は、単一の凝集性の流れとして、凝固する液の流れの中心部へと導入される。クリーム化されたカーボンブラック/ラテックス混合物の棒流(solid stream)は、凝固の前に凝固する液の流れによって剪断および微粒子化され、次いで凝固の完結のために好適な反応区域を通過する。この凝固工程に続いて、このクラムは、廃棄物「漿液」から分離され、洗浄され、そして乾燥される。幾分か同様のプロセスが、Hellerらの米国特許第3,048,559号明細書中に記載されている。カーボンブラックの水性スラリーは、天然もしくは合成エラストマーまたはラテックスの流れと連続的に混合される。2つの流れは、激しい水流の乱流および衝撃を含む、と表現される条件の下で混合される。上述のHagopian特許の場合におけるように、カーボンブラックスラリーとエラストマーラテックスの組み合わされた流れは、引き続いて、酸または塩凝固剤溶液の添加によって凝固される。
【0006】
乾燥マスターバッチ(例えば、乾式混合プロセス、または後に乾燥される湿式マスターバッチプロセスによって作られた)の素練りを、ムーニー粘度を低下させ、そして加工性を向上させ、一方で添加剤、例えばオイル、抗酸化剤および酸化亜鉛を混合するために用いることができることが、よく知られている。加硫剤を、同様に加えてもよく、または第2の素練り工程で加えてもよい。しかしながら、この混合は、早期硬化またはスコーチを防ぐために、低い温度(例えば、125℃未満)で行なう必要がある。更に、過剰混合は、粘弾性に不利益である可能性があり、そして貯蔵の間に凝集(flocculation)を増加させる可能性があり、これは貯蔵硬化を増大させ、そして更にゴム性能を劣化させる可能性がある(Wangら、KGK Kauschuk Gummi Kunststoffe、第7〜8巻、2002年、p.388〜396)。
【0007】
これより他の混合方法が、本願と同一出願人の米国特許第6,048,923号明細書および第6,929,783号明細書に開示されており、これらは湿式マスターバッチプロセスを開示しており、この中では、カーボンブラックスラリーとエラストマーラテックスの別個の流れが、加えられた凝集剤を用いることなしにエラストマーラテックスが凝固する条件の下で、混合される。このマスターバッチは、約15%〜25%の含水量まで脱水され、そして次いで連続式配合機、そして場合によっては開放型練り機を通される。最終製品は、開放型練り機を出た後で、約1%未満の水分含量を有し、そして約100℃の温度を有することができる。連続式配合機の操作パラメータ、例えば処理量、ローター回転数、排出孔の大きさおよび温度、ならびに処理チャンバー温度は、ムーニー粘度、水分含量、分子量およびバウンドラバーを制御するように最適化することができる。これらの性質の望ましい値は、製品マスターバッチの意図した用途に依存する。例えば、ムーニー粘度は、加硫されたゴムへのマスターバッチの更なる処理を促進させるために低下させることができる。
【0008】
米国特許第6,841,606号明細書('606特許)は、湿式マスターバッチプロセスを開示しており、そして充填剤の分散を向上させるために機械的な剪断力を加えることによる凝固物の乾燥を提案している。結果として得られるゴムは、良好な加工性を有し、また良好に強化され、そして燃料消費を低減することが開示されている。例において、約50phrのカーボンブラックもしくはシリカを有するラテックスマスターバッチが、約40%の水分含量とされ、そして120℃で熱的に、または同じ温度に維持された1メートル長さの2軸混練押出機を通して、乾燥される。乾燥機および押出機の使用は、概ね同等の引張強度および耐磨耗性を有する製品をもたらしている。
【0009】
国際公開第2006/068078号には、窒素表面積、24M4DBPおよび粒子径分布によって規定されたカーボンブラックの特定の品種を有する湿式天然ゴムマスターバッチ製造方法が開示されている。上記の'606特許におけるように、この例は、50phrのカーボンブラックを有し、約40%の水分含量まで脱水され、そして120℃に維持された1メートル長さの2軸混練スクリューを通したマスターバッチの製造が記載されている。
【0010】
国際公開第2006/080852号には、特定の表面積、構造および色を有するカーボンブラックを含む湿式天然ゴムマスターバッチが開示されている。上記の'606特許におけるように、この例は、50phrのカーボンブラックを有し、約40%の水分含量まで脱水され、そして120℃に維持された1メートル長さの2軸混練スクリューを通したマスターバッチの製造が記載されている。
【0011】
特開2006-265311号公報には、特定の表面積または構造を備えたカーボンブラックを有する湿式ゴムマスターバッチを用いて製造されたワイヤースキム(wire skim)組成物が開示されている。上記の'606特許におけるように、この例は、50phrのカーボンブラックを有し、約40%の水分含量まで脱水され、そして120℃に維持された1メートル長さの2軸混練スクリューを通したマスターバッチの製造が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、カーボンブラック充填量が増大すると、巨視的(例えば、10ミクロン以上)もしくは微視的な水準のいずれかにおけるカーボンブラックの良好な分散と、巨視的な水準でのマスターバッチの品質を得ることが困難であり、その帰結として、結果として得られるゴムは、目的の特性を示さない。更に、高度な構造および大きな表面積を有するカーボンブラックで作られたマスターバッチは、より粘度が高く、それらを配合するのをより困難にする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
分散およびマスターバッチ品質の制御の困難さの問題に対して、我々は、水が除去される乾燥履歴に関しての、マスターバッチへの機械的エネルギーの制御された投入が、一貫したミクロ構造および再現性のある材料特性を示す製品の製造を可能にすることを見出した。また、機械的エネルギーの投入は、大きな表面積、高度な構造のカーボンブラックのより多い充填量を有するマスターバッチの粘度を低減し、これらのマスターバッチを加硫ゴム製品へと配合するのを容易にする。
【0014】
1つの態様では、本発明は、エラストマー複合材の製造方法である。この方法は、A)エラストマーラテックスを含む第1の流体を、粒状充填剤を含む第2の流体と混合すること、B)エラストマーラテックスを凝固させ、それによってマスターバッチクラムを形成すること、C)マスターバッチクラムを約1質量%〜約20質量%の含水量にさせて、それによって脱水された凝固物を形成すること、D)脱水された凝固物に機械的エネルギーを加えて、それによって脱水された凝固物を摩擦の結果として発熱させることによって、脱水された凝固物を約130℃〜約190℃の温度に達っせしめ、含水量を約0.5%〜約3%に低減させながら、脱水された凝固物から水を除去し、そして含水量の実質的に全ての低下は蒸発によって成し遂げられ、それによって素練りされたマスターバッチを製造すること、ならびに、E)更に含水量を低減させながら、素練りされたマスターバッチに、少なくとも更に0.3MJ/kgの機械的エネルギーを加えること、を含んでいる。
【0015】
例えば、D)は、脱水された凝固物に少なくとも約0.9MJ/kgの機械的エネルギーを加えることを含んでいてよく、および/またはE)は、素練りされたマスターバッチに、少なくとも0.7MJ/kgの機械的エネルギーを加えることを含んでいてもよい。脱水された凝固物は、D)の間に、約140℃〜約160℃の温度に達することができる。あるいは、もしくは、更に、C)は、マスターバッチクラムの含水量を、約10質量%〜約20質量%にすることを含むことができる。D)およびE)の一方または両方は、独立して、脱水した凝固物を、連続式混合機、密閉式混合機、二軸スクリュー押出機、単軸スクリュー押出機、およびロール練り機から選ばれた少なくとも1つの装置中で処理することを含むことができ、そしてD)およびE)の一方または両方は、脱水された凝固物を、少なくとも1つの装置中で、少なくとも2回処理することを含むことができる。
【0016】
他の態様では、本発明はエラストマー複合材である。このエラストマー複合材は、A)エラストマーラテックスを含む第1の流体を、粒状充填剤を含む第2の流体と混合すること、B)エラストマーラテックスを凝固させ、それによってマスターバッチクラムを形成すること、C)マスターバッチクラムを約1質量%〜約20質量%の含水量にさせて、それによって脱水された凝固物を形成すること、D)脱水された凝固物に機械的エネルギーを加えて、それによって脱水された凝固物を摩擦の結果として発熱させることによって、脱水された凝固物を約130℃〜約190℃の温度に達っせしめながら、脱水された凝固物から水を除去し、含水量を約0.5%〜約3%に低減させ、そして含水量の実質的に全ての低下は蒸発によって成し遂げられ、それによって素練りされたマスターバッチを製造すること、ならびに、E)更に含水量を低減させながら、素練りされたマスターバッチに、少なくとも更に0.3MJ/kgの機械的エネルギーを加えること、を含む方法によって形成される。
【0017】
本発明の他の態様は、エラストマー複合材を製造する方法である。この方法は、A)エラストマーラテックスを含む第1の流体の連続流れを凝固反応器の混合区域に供給すること、B)粒状充填剤を含む第2の流体の連続流れを、圧力下で、凝固反応器の混合区域に供給して、エラストマーラテックスとの混合物を形成すること(この粒状充填剤はエラストマーラテックスを凝固するのに有効であり、そして第1の流体と第2の流体との混合区域内部への供給は、エラストマーラテックスを粒状充填剤と実質的に完全に凝固させてマスターバッチクラムを形成するのに十分に強力なものである)、C)凝固反応器からマスターバッチクラムの実質的に連続的な流れを排出すること、D)マスターバッチクラムの含水量を、約1質量%〜約20質量%にさせ、これによって脱水された凝固物を形成すること、E)脱水された凝固物に機械的エネルギーを加えて、それによって脱水された凝固物を摩擦の結果として発熱させることによって、脱水された凝固物を約130℃〜約190℃の温度に達っせしめながら、脱水された凝固物から水を除去し、含水量を約0.5%〜約3%に低減させ、そして含水量の実質的に全ての低下は蒸発によって成し遂げられ、それによって素練りされたマスターバッチを製造すること、ならびに、F)更に含水量を低減させながら、素練りされたマスターバッチに、少なくとも更に0.3MJ/kgの機械的エネルギーを加えること、を含む。
【0018】
態様によっては、E)は、脱水された凝固物に少なくとも約0.9MJ/kgの機械的エネルギーを加えることを含んでいてよく、および/またはF)は、素練りされたマスターバッチに、少なくとも0.7MJ/kgの機械的エネルギーを加えることを含んでいてもよい。脱水された凝固物は、E)の間に、約140℃〜約160℃の温度に達することができる。あるいは、もしくは、更に、D)は、マスターバッチクラムの含水量を、約10質量%〜約20質量%にすることを含むことができる。E)およびF)の一方または両方は、独立して、脱水した凝固物を、連続式混合機、密閉式混合機、二軸スクリュー押出機、単軸スクリュー押出機、およびロール練り機から選ばれた少なくとも1つの装置中で処理することを含むことができる。E)およびF)の一方または両方は、脱水された凝固物を、少なくとも1つの装置中で、少なくとも2回処理することを含むことができる。
【0019】
他の態様では、本発明はエラストマー複合材である。このエラストマー複合材は、A)エラストマーラテックスを含む第1の流体の連続流れを凝固反応器の混合区域に供給すること、B)粒状充填剤を含む第2の流体の連続流れを、圧力下で、凝固反応器の混合区域に供給して、エラストマーラテックスとの混合物を形成するさせてマスターバッチクラムを形成すること(この粒状充填剤はエラストマーラテックスを凝固するのに有効であり、そして第1の流体と第2の流体との混合区域内部への供給は、エラストマーラテックスを粒状充填剤と実質的に完全に凝固させるのに十分に強力なものである)、C)凝固反応器からマスターバッチクラムの実質的に連続的な流れを排出すること、D)マスターバッチクラムの含水量を、約1質量%〜約20質量%にさせ、これによって脱水された凝固物を形成すること、E)脱水された凝固物に機械的エネルギーを加えて、それによって脱水された凝固物を摩擦の結果として発熱させることによって、脱水された凝固物を約130℃〜約190℃の温度に達っせしめながら、脱水された凝固物から水を除去し、含水量を約0.5%〜約3%に低減させ、そして含水量の実質的に全ての低下は蒸発によって成し遂げられ、それによって素練りされたマスターバッチを製造すること、ならびに、F)更に含水量を低減させながら、素練りされたマスターバッチに、少なくとも更に0.3MJ/kgの機械的エネルギーを加えることを含む方法によって製造される。
【0020】
他の態様では、本発明は、加硫された湿式混合エラストマー複合材である。加硫された湿式混合エラストマー複合材は、少なくとも約65mL/100g、例えば、約70〜約110mL/100gの範囲、約75〜約85mL/100gの範囲、約85〜約90mL/100gの範囲、約90〜約95mL/100gの範囲、約95〜約100mL/100gの範囲、約100〜約105mL/100gの範囲、または約105〜約110mL/100gの範囲のCDBP値を有する、少なくとも1種のカーボンブラックを含んでいる。この加硫された湿式混合エラストマー複合材は、同じ組成を有する加硫された乾式混合エラストマー複合材におけるT100に対するT300の比率よりも、10%超高い、例えば、少なくとも約15%高い、少なくとも約13%高い、少なくとも約17%高い、または少なくとも約20%高い、T100に対するT300の比を示す。
【0021】
他の態様では、本発明はエラストマー複合材を製造する方法である。この方法は、A)エラストマーラテックスを含む第1の流体を、粒状充填剤を含む第2の流体と混合すること、B)エラストマーラテックスを凝固させて、それによってマスターバッチクラムを形成すること、C)マスターバッチクラムの含水量を、約3質量%〜約6質量%にさせ、これによって脱水された凝固物を形成すること、D)脱水された凝固物に機械的エネルギーを加えて、それによって脱水された凝固物を摩擦の結果として発熱させることによって、脱水された凝固物を約140℃〜約190℃の温度に達っせしめながら、脱水された凝固物から水を除去し、ここで含水量の実質的に全ての低下は蒸発によって成し遂げられ、それによって素練りされたマスターバッチを製造すること、ならびに、E)更に含水量を低減させながら、素練りされたマスターバッチに、少なくとも更に0.3MJ/kgの機械的エネルギーを加えることを含んでいる。C)およびD)を成し遂げるために、脱水押出機を用いることができる。素練りされたマスターバッチの水分含量は、約1%〜約3%であることができる。工程D)は、脱水した凝固物を素練りするのに密閉式混合機を用いることを含んでもよい。工程E)は、素練りされたマスターバッチを素練りするために、開放型練り機を用いることを含んでもよい。
【0022】
他の態様では、本発明は、エラストマー中に分散された粒状充填剤を含む加硫されたエラストマー複合材である。この粒状充填剤は、少なくとも40phr、例えば約42phr、少なくとも約45phr、または少なくとも約50phrの、少なくとも1種のカーボンブラックを含むことができる。このエラストマー複合材は、多くとも約55phr、多くとも約60phr、または多くとも約65phrの、少なくとも1種のカーボンブラックを含むことができる。この少なくとも1種のカーボンブラックは、約165m/g〜約205m/g、例えば、約165m/g〜約180m/g、約170m/g〜約175m/g、約180m/g〜約200m/g、約185m/g〜約195m/g、または約190m/g〜約200m/gのSTSA値を有することができる。あるいは、もしくは更に、この少なくとも1種のカーボンブラックは、約85mL/100g〜約110mL/100g、例えば、約90〜約105mL/100g、約95〜約100mL/100g、または約100mL/100g〜約110mL/100gのCDBP値を有することができる。加硫されたエラストマー複合材は、少なくとも約5.5、例えば、少なくとも約6、または少なくとも約6.5の、T100に対するT300の比を示す。例えば、この少なくとも1種のカーボンブラックは、約95mL/100g〜約105mL/100gのCDBP値、および約165〜約180m/gのSTSA値を有することでき、そしてT100に対するT300の比は、少なくとも6であることができる。他の例では、粒状充填剤は、少なくとも約45phrの少なくとも1種のカーボンブラックを含むことができ、そしてこの少なくとも1種のカーボンブラックは、約85mL/100g〜約95mL/100gのCDBP値、および約190〜約205m/gのSTSA値を有することができる。加硫されたエラストマー複合材は、湿式混合エラストマー複合材であることができる。
【0023】
他の態様では、本発明は、天然ゴム中に分散されたカーボンブラックから本質的になる湿式混合エラストマー複合材である。湿式混合エラストマー複合材が、CTV法Aに従って処理される場合には、結果として得られる加硫された湿式混合エラストマー複合材は、同じ組成を有し、そしてCTV比較法Aを用いて調製された加硫された乾式混合エラストマー複合材の同じ特性に比べて、約10%高い、例えば約15%高い、自然対数を有する抵抗率を示す。
【0024】
他の態様では、本発明は、天然ゴム中に分散されたカーボンブラックを含むエラストマー複合材である。エラストマー複合材が、CTV法Aを用いて処理された場合には、それは以下の式を満足する抵抗率を示す。
ln(抵抗率) ≧ 0.33δ+X
ここで、Xは5.8であり、そして
δ=(6000[0.806φ−1/3β−1/3−1]β1.43)/ρS
ここで、
φ=複合材中のカーボンブラックの体積分率
S=窒素BET法によって測定されたカーボンブラックのm/gでの比表面積
ρ=カーボンブラック密度
β=φeff/φ、および
φeff=φ[1+(0.0181×CDBP)]/1.59
【0025】
他の態様では、Xは6.2である。あるいは、もしくは更に、抵抗率はまた、
ln(抵抗率) ≦0.33δ+Y
(ここで、Yは9.5である)、を満足する。
【0026】
他の態様では、本発明は、天然ゴム中に分散されたカーボンブラックを含むエラストマー複合材である。エラストマー複合材が、CTV法Bを用いて処理された場合には、それは、約0.5未満、例えば約0未満、または約−0.25未満の中性子散乱指数値を示す。
【0027】
特に断りのない限り、ここでパーセントで記載された全ての材料比率は、質量パーセントである。
【0028】
前述の包括的な記載および以下の詳細な記載の両方とも、例示のため、そして説明のためだけのものであって、特許請求した本発明に対する更なる説明を与えることを意図したものであることが理解されるべきである。
【0029】
本発明は、図面の幾つかの図を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明の例示的な態様に従ってエラストマーマスターバッチを調製する装置および方法の概略フローチャート説明図である。
【図2】図2は、図1のマスターバッチ製造ラインの他の態様の一部の概略フローチャートであり、図1の連続式配合機を断面で示している。
【図3】図3は、電気抵抗率試験のための試料の形状を説明する概略図である。
【図4】図4は、デルタに対する抵抗率の自然対数のグラフであり、本発明の例示的態様に従って製造された加硫されたエラストマー複合材(四角)と、乾式混合法に従って製造されたもの(ダイアモンド)とを比較している。
【図5】図5は、充填剤充填量に対する中性子散乱指数値のグラフであり、本発明の例示的態様に従って製造された加硫されたエラストマー複合材(丸)と、乾式混合法に従って製造されたもの(四角)とを比較している。
【図6】図6は、エネルギー投入量に対する中性子散乱指数値のグラフであり、凝固に続く機械的な素練りに、種々の操作条件を用いて処理された、加硫された湿式混合エラストマー複合材について比較している(三角:550kg/時間、四角:350kg/時間、塗りつぶした記号:FCMのみ、白抜きの記号:FCM+開放型練り機)
【発明を実施するための形態】
【0031】
態様によっては、エラストマー複合材は、湿式マスターバッチプロセスを利用して、マスターバッチクラムを作ることによって製造され、これは約1%〜約20%の含水量をもたらす。結果として得られる脱水された凝固物は、機械的エネルギーを加えられ、それによって脱水された凝固物を摩擦の結果として発熱させ、一方で、脱水された凝固物を約130℃〜約190℃の温度に達っせしめ、含水量を約0.5%〜約3%に低減させる。含水量における実質的に全ての減少は、蒸発によって成し遂げられる。結果として得られる素練りされたマスターバッチは、含水量が更に低減される間に、少なくとも更なる0.3MJkgの機械的エネルギーが加えらる。
【0032】
ここに開示および記載した方法および装置は、優れた物理的性質および性能特性を有するエラストマー複合材を生成する。特に、優れた物理的性質および性能特性を有するエラストマー複合材は、天然ゴムラテックス(例えば、ラテックス濃縮液、フィールドラテックス、スキムラテックス、またはこれらの2種もしくは3種以上のいずれかの比率での混合物)を、種々の品種のカーボンブラック充填剤と共に用いて製造することができる。現在、ゴムおよび他の複合材用途のために幅広く商業的に用いられているカーボンブラック、ならびに、従来は商業的および工業的ゴム用途には一般には用いられていなかったカーボンブラックは、本発明の種々の態様によって利益を得る可能性がある。本発明の特定の態様によれば、機械的な素練りが少なくもしくは無く、または機械的エネルギー供給と水分除去の異なる相互関係で、作られたゴムに比べた場合に比べて、大きな表面積および/または構造の水準を備えたカーボンブラックが、より多量の充填量でより良く分散することができ、優れた性能特性を有するゴムを生成することができる。更に、本発明の態様によっては、大きな表面積および高水準の構造を有し、そして配合中に向上した加工性を示すカーボンブラックの大量の充填量を有するマスターバッチを製造するのに用いることができる。本発明によるマスターバッチを用いて製造された加硫されたエラストマー複合材は、それ程は素練りされていない乾式混合の複合材および湿式マスターバッチ組成物の両方について向上した性能を示す。
【0033】
本発明の種々の態様によって製造されたエラストマー複合材は、当業者に知られているいずれかの加硫パッケージ、例えば硫黄もしくは過酸化物含有物質を主成分とする硬化パッケージと配合することができ、そして加硫して、タイヤ、無限軌道駆動(track-propelled)装置、例えばブルトーザなど用の無限軌道および無限軌道パッド、採鉱装置、例えば篩、採鉱装置ライニング、コンベヤーベルト、シュートライナー、スラリーポンプライナー、泥水ポンプ部品、例えば羽根車、バルブ座、バルブ本体、ピストンハブ、ピストンロッド、およびプランジャー、種々の用途のインペラー、例えばスラリー混合およびスラリーポンプインペラー、細砕ロールライナー、サイクロ(登録商標)ンおよびハイドロサイクロ(登録商標)ン、および伸縮継手、舶用機器、例えばポンプ(例えば、船外モータポンプ、浚渫ポンプ)用ライニング、ホース(例えば、浚渫ホースおよび船外モータホース)、および他の舶用機器、船舶用軸封、オイル、航空宇宙、および他の用途、プロペラ軸、運搬用配管のライニング、例えばオイルサンドおよび/またはタールサンド、および耐摩耗性が必要な他の用途、に使用されるゴムを製造することができる。種々の種類の部品、例えばローラー、カム、軸およびパイプもまた、ゴムが金属部品に結合されている、例えば車両用のトレッドブッシングなどの用途と同様に、本発明の特定の態様を用いることで利益を得ることができる。
【0034】
態様によっては、供給する機械的エネルギーの量に対して、湿式マスターバッチからの水の除去速度を調整することは、エラストマーと充填剤の相互作用を向上させる。素練りが、エラストマーと充填剤の間に摩擦を生ずるが、しかしながらエラストマー相への損傷を回避するように注意深く制御された条件の下で与えられる。それでもなお、従来望ましいと考えられてきたよりも高い水準のエネルギーが、性能を損なうことなく、ゴムに与えることができる。態様によっては、エラストマー複合材は、少なくとも約40phr、少なくとも約50phr、少なくとも約55phr、少なくとも約60phr、少なくとも約65phr、または少なくとも約70phrのカーボンブラック、例えば、約40〜約70phr、約50〜約75phr、約55〜約80phr、60〜約85phr、65〜約90phr、70〜約90phr、40〜約60phr、50〜約65phrの範囲、55〜約80phr、約60〜約90phr、約65〜約80phr、約70〜約80phrの充填剤の充填量で調製される。
【0035】
ここで用いられるカーボンブラックの構造は、ASTM D3493中に規定されている手順に従って、100グラムの破砕カーボンブラック当たりのDBPAをミリリットルで表した、破砕カーボンブラックについてのジブチルフタレート吸収(DBPA)値(CDBP)として測定することができる。カーボンブラック表面積は、ASTM D6556中に規定されている手順に従って、統計的厚さ方(STSA)を用いて測定することができ、カーボンブラックのグラム当たりの平方メートルで表すことができる。
【0036】
いずれかの特定の理論に拘束されるのは望まないが、水を除去する間にマスターバッチを機械的に処理することが、充填剤とポリマーとの相互作用を促進すること、そして同じ組成を有する混合されたゴムと、熱的に乾燥されている湿式マスターバッチプロセスによって製造されたゴムとの両方に対して、最終製品の性能を向上させるのは、この相互作用の改善であること、が考えられる。更に、機械的な仕事の量は、最終ゴム製品の特性に不利益であると予想されてきたけれども、我々は、水を除去する間に材料に与えられた機械的エネルギーの量の増加による好ましい結果を観察した。最終ゴム製品の機械的特性およびミクロ構造の両方に改善が認められた。
【0037】
<充填された加硫物中の粒子の分布の特性決定>
ゴム強化における改善は、異なる伸張での応力の比に反映される。カーボンブラックが充填された加硫物では、与えられた伸張での応力は、何よりも、充填剤の形態(粒子径および構造)ならびに、充填剤−ポリマーおよび凝集体−凝集体相互作用を決定する表面活性の効果を反映する。異なる伸張における応力を支配する因子は異なるので、300%伸張での応力の、100%伸長での応力に対する比、T300/T100は、ポリマー−充填剤相互作用の程度を定量化するための有用な取組み方法を提供する。構造は、充填剤凝集体中でのゴムの閉塞(occlusion)に影響する。閉塞が増大すれば、有効な充填剤の容積効率が増加し、容積効率は、充填剤が実際にゴムマトリックスと相互作用し、そしてゴムマトリックス複合材の性質、そして従って充填された加硫物の与えられた伸張における応力に影響する程度の描写である。同じカーボンブラックを充填された2つの配合物で、構造および表面積の応力への影響は同じでなくてはならない。結果として、異なる歪における応力のいずれかの違いは、ポリマーマトリックスの架橋密度、ポリマー−充填剤相互作用、および凝集体−凝集体相互作用に起因すると考えられ、その最後のものは充填剤の集塊形成をもたらす。小さい歪においては、集塊は壊れず、そして集塊の中に捕捉されたゴムは充填剤として取り扱うことができる。このことは、充填剤の有効容積を増加させ、従って与えられた伸張における応力を増加させる。充填剤の集塊は、歪の増大とともに徐々に破壊され、与えられた伸張における、充填剤の集塊形成の応力への影響は減少し、そして最終的には約100%伸びで消滅する。一方で、大きな伸張、例えば300%伸びでは、異なる機構が関係している。相互凝集の会合が無いので、ポリマーと充填剤との間の相互作用は、応力により大きな影響を有している。ポリマーと充填剤の間の相互作用が弱い場合には、大きな歪は、ゴム分子のブラック表面でのずれおよび脱着(deattachment)(脱濡れ(dewetting))をもたらし、与えられた歪での応力を低減する。架橋密度の応力への効果は、100%と300%歪の両方において概ね同じである。結果として、T300/T100比は、ゴム中のポリマー−充填剤相互作用の尺度を与える(S. WolffおよびM. -J. Wang、Rubber Chem. Technol.、第65巻、1982年、p.329)
【0038】
態様によっては、加硫された湿式混合エラストマー複合材は、少なくとも約65mL/100g、例えば約70〜約110mL/100gの範囲、約75〜約85mL/100gの範囲、約85〜約90mL/100gの範囲、約90〜約95mL/100gの範囲、約95〜約100mL/100gの範囲、約100〜約105mL/100gの範囲、約105〜約110mL/100gの範囲の、CDBP値を有する少なくとも1種のカーボンブラックを含んでいる。加硫されたエラストマー複合材は、同じ組成を有する加硫された乾式混合エラストマー複合材の同じ比率に比べて、10%超大きい、例えば、少なくとも約13%大きい、少なくとも約15%大きい、少なくとも約17%大きい、または少なくとも約20%大きい、例えば、約13%〜約25%大きい、または約17%〜約30%大きい、T300のT100に対する比率を示す。加硫された湿式混合エラストマーは、少なくとも約40phr、少なくとも約45phr、少なくとも約50phr、少なくとも約55phr、少なくとも約60phr、または少なくとも約65phrのカーボンブラックを含むことができる。例えば、加硫された湿式混合エラストマーは、約40phr〜約80phr、約45phr〜約70phr、または約50phr〜約90phrのカーボンブラックを含むことができる。ここで用いられる用語「湿式混合エラストマー複合材」は、湿式マスターバッチプロセスによって調製されたエラストマー複合材を指している。対照的に、用語「環式混合エラストマー複合材」は、乾燥エラストマー(例えば、水分1%未満)と粉末形態の粒状充填剤とを混合することによって調製されたエラストマー複合材を指している。
【0039】
また、我々は、充填されたゴムの改良は、複合材のミクロ構造に反映されることを見出した。米国特許第6,048,923号明細書中に記載されているように、そこに開示された方法によって生成されたゴム複合材は、環式混合ゴムに対して、充填剤の改善されたマクロ分散を示している。マクロ分散は、複合材内部における、10ミクロン以上の長さの尺度での充填剤の分散を描写している。いずれかの特定の理論によっては拘束されないが、良好なマクロ分散は、充填剤小粒(pellets)の崩壊および、結果として得られる物質のエラストマーマトリックス中での均一な分配の結果として生じると信じられる。予期せぬことに、我々は、短い長さ尺度に関する分配の改良は、量産品の機械特性の改良に相互に関係することを見出した。複合材ミクロ構造のこの特徴は、ミクロ分散と称される。いずれかの特定の理論によっては拘束されないが、ミクロ分散の改良は、複合材内部の、個々の充填剤凝集体および/または凝集体の小さな塊(clusters)(すなわち、集塊)のより良い分離の結果として生じると信じられる。
【0040】
ここで用いられる用語「凝集体」は、充填剤の最も小さい分散可能な単位を指している。例えば、カーボンブラック凝集体は、カーボンブラックの一次粒子からできており、そして通常は機械的力によっては、より小さい断片には破壊することができない。ここで用いられる用語「集塊」は、互いに物理的に接触しており、そして物理的な力によって互いに保持している複数の凝集体を指している。これらの集塊は、機械的な力によってより小さな単位もしくは粒子へと破壊することができ、このより小さな単位は、凝集体、より小さな集塊、もしくはその両方であることができる。
【0041】
充填剤を加えたエラストマー複合材中のミクロ分散を定量化するために、多くの方法を用いることができる。例えば、カーボンブラックとゴムとの間の導電率の違いを、カーボンブラック−ゴム複合材中の分散の特性を決定するのに利用することができる。このよういな複合材の導電性は、主にカーボンブラックの濃度と形態(例えば、表面積、粒子径、および構造)に依存している。更に、これらの複合材の導電性は、カーボンブラックの、ゴムマトリックス中での分散の状態によって影響される。カーボンブラック−ゴム複合材の導電性は、マトリックス中でカーボンブラックがより分散するに連れて、最初は増加し、次いで減少する(A.I. Medalia、「カーボンブラック複合材の電気伝導」("Electrical Conduction in Carbon Black Composites")、Rubber Chemistry and Technology、1986年、第59巻、p.432)。初期の増加は、大きなカーボンブラック集塊の分配と分散が増加し、その結果、複合材中の粒子間の平均距離が減少することに原因があると考えられる。分散の更なる向上は、導電性の減少をもたらす。上記したように、このことは、系中の個別のカーボンブラック凝集体の小さい群の分離に原因があると考えられる。
【0042】
態様によっては、湿式混合エラストマー複合材は、天然ゴムおよびカーボンブラックから調製される。エラストマー複合材が、CTV法Aを用いて処理される場合には、結果として得られる湿式混合エラストマー複合材は、同じ組成を有し、そしてCTV比較法Aを用いて調製された加硫された乾式混合エラストマー複合材についての同じ特性よりも、少なくとも約10%高い、例えば、少なくとも約15%高い、または少なくとも約20%高い自然対数を有する抵抗率を示す。例えば、抵抗率の自然対数は、加硫された湿式混合複合材の場合が、加硫された乾式混合複合材の場合に比べて、約12%〜約20%高い、約15%〜約40%高い、約20%〜約45%高い、約25%〜約50%高い、約30%〜約55%高い、または約35%〜約60%高い、または約40%〜約70%高い。
【0043】
ここで用いられる、CTV法Aは、表1中の配合および表2中の手順を用いた、1.6Lバンバリーミキサー中でのマスターバッチの配合を意味する。それぞれのバンバリーミキサー段階の後に、配合物は、周囲温度で、そして約2mmのニップ間隙で、約40rpmで、4回の切り返しと、2回の最終ロール(2 end-rolls)で操作した2本ロール練り機上でシート化され、段階1と段階2の混合の間の静止時間を4〜6時間とした。次いで、配合物を、150℃のプレス中で、2mm厚のスペーサーを備えた型を用いて、慣用のゴムレオメータによって定められた時間(すなわち、T90+T90の10%)、硬化させた。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
ここで用いられる、CTV比較法Aは、表1中の配合および表3中の手順を用いて、1.6Lバンバリーミキサー中で、加硫されたエラストマー複合材を調製することを意味する。それぞれのバンバリーミキサー段階の後に、配合物は、周囲温度で、そして約40rpmで、約2mmのニップ間隙で、4回の切り返しと、2回の最終ロール(2 end-rolls)で操作した2本ロール練り機上でシート化され、段階1と段階2の混合の間の静止時間を4〜6時間とした。次いで、配合物を、150℃のプレス中で、2mm厚のスペーサーを備えた型を用いて、慣用のゴムレオメータ(すなわち、T90+T90の10%)によって定められた時間、硬化させた。
【0047】
【表3】

【0048】
加硫された配合物の取り扱いは、抵抗率に影響する可能性がある。試験結果が歪められるのを避けるために、配合物は、高湿度または高温(例えば、約30もしくは40℃超)の条件下で、長時間保存されてはならず、または加硫された配合物は、著しく機械的に変形させてはならない。
【0049】
カーボンブラックの分散および分散したカーボンブラックの電導性(例えば、電導度に利用できる表面)は、カーボンブラックの形態で変わるので、これらの変数に関してデータを正規化することができる、デルタと呼ばれるパラメータを用いることが都合がよい。値デルタは、長さの単位を有するが、機械的性能の尺度の変数「タンデルタ」とは異なる。ここで、デルタは、単分散の粒子径および粒子の完全にランダムな分散を仮定した場合の、充填されたゴム系中の凝集体間の、理論的な平均間隙を表す(M-J. Wang、S. WolffおよびE.H. Tan、Rubber Chemistry and Technology、1993年、第66巻、p.178)。これらの条件は、現実には存在しないけれども、デルタは、異なる品種および充填量のカーボンブラックを備えた充填された系のデータを正規化するために用いることができるパラメータである。パラメータデルタは、それぞれの複合材試料中の、粒子径(Sを通して)、粒子構造(CDBP)および充填量(φ)を考慮に入れている。パラメータデルタは、下記のように規定される(Wangら、1993年)。
【0050】
【数1】

【0051】
式中、
φ=複合材中のカーボンブラックの体積分率、
S=窒素BET法で測定された、m/gでの、カーボンブラックの比表面積、
ρ=カーボンブラック密度(1.8g/cmであると仮定)、および
β=φeff/φ
φeffは、閉塞されたゴムを考慮に入れたカーボンブラックの有効体積分率である。これは、下記の式から計算される。
φeff=φ[1+(0.0181×CDBP)]/1.59 (式2)
CDBPは、ASTM法D3493に従って測定されたカーボンブラックの破砕DBP数である。
【0052】
態様によっては、CTV法Aに従って加硫された本発明の複合材は、
ln(抵抗率) ≧ 0.33δ+X
(ここで、Xは5.8である)、
を満足する抵抗率を有することができる。あるいは、Xは6.2であってもよい。これらの態様のいずれかにおいて、抵抗率はまた、
ln(抵抗率) ≦0.33δ+Y
(ここで、Yは9.5である)、
を満足していてもよい。
【0053】
充填された複合材中のミクロ分散を定量化する他の方法は、超小角中性子散乱(USANS)によるものである。ボンズ−ハート配置におけるUSANSの使用は、多成分系における1つの成分の構造の特性を決定するのに用いられる。(Schaeferら、「超小角中性子散乱:材料研究のための新規な道具」(Ultra-small-angle neutron scattering: a new tool for materials research)、Current Opinion in Solid State and Materials Science、2004年、第8巻、p.39〜47)。小角散乱が系の特性を決定するディメンションの範囲は、探査する輻射線の波長に正比例する。USANSの原理は、ミクロ構造を評価するために材料の成分の屈折率における違いを利用する小角レーザー光散乱の原理と同様である。USANSでは、成分の中性子散乱長密度を基にして、中性子がミクロ構造を探査する。光学的に透明でなはない系を、このようにして中性子を用いて探査することができる。
【0054】
中性子散乱強度は、材料中の密度ゆらぎの直接的な指標である。例えば、充填剤が不均一に分布した粒子充填複合材は、充填剤がより均一に分布した複合材よりも、中性子をより強く散乱する。中性子散乱強度は、(2π/λ)sin(θ)で規定された波動ベクトルQの関数として測定され、ここでλは中性子波長であり、そして2θは散乱角度である。特定の波動ベクトルQで測定された場合の中性子散乱強度に寄与する分散状態の3つの側面は、系中の散乱物体の体積分率、2π/Qと等しい回転半径を備える散乱物体の分率、および2π/Qに等しい大きさの散乱物体の形状または形態、例えば散乱物体が組み立てられるやり方、である。散乱物体の特定の体積分率を考えると、当業者には、この物体の大きさは、それらの間隙を規定し、そして従って特定の長さの尺度での系の均質性を規定することが理解されるであろう。
【0055】
カーボンブラックの中性子散乱長密度bは、タイヤ配合中に通常用いられる成分のそれよりも、しばしばカーボンブラック充填ゴムの加硫の間に用いられる酸化亜鉛を除いては、高い(表4)。しかしながら、ゴム中の酸化亜鉛の充填量は、カーボンブラックの充填量よりも一桁少ない。その結果、炭化水素媒体中に分散したカーボンブラックは、中性子で、優れた散乱コントラストを与える。
【0056】
【表4】

【0057】
中性子散乱強度Iは、
I(Q)=φCB(1−φCB)(bmedium−bCB)Z(Q) (式3)
で規定され、ここでφCBは、エラストマー複合材中のカーボンブラックの体積分率であり、bmediumは、エラストマーマトリックスの中性子散乱長密度であり、bCBは、カーボンブラックの中性子散乱長密度であり、そしてZ(Q)は、エラストマー複合材中のカーボンブラックの分散についての記述子である(Higginsら、「ポリマーおよび中性子散乱」(Polymers and Neutron Scattering)、Oxford University Press、1994年、p.125)。与えられた材料についてのbの値は、バルク密度および元素組成から計算することができる(Higgins、1994年、p.52)。中性子散乱の当業者は、天然ゴムおよびカーボンブラックについてのbを、それらのバルク密度を(天然ゴムが0.9g/cmそしてカーボンブラックが1.8g/cm)として、計算することができる。天然ゴムでは、bは約0.264×1010cm−2、そしてカーボンブラックでは、bは約6×1010cm−2である。しかしながら、加硫された天然ゴムマトリックスのbの値は、硬化系に応じて変化するであろう。
【0058】
粒子充填複合材のUSANSの後に、結果として得られるIのQに対するプロットは、とりわけ、エラストマー中のカーボンブラックのミクロ分散を表す2つの値を与える。特定の波動ベクトルQの強度は、散乱物体(例えば、カーボンブラックペレットの崩壊およびそれらの複合材中への混合によってもたらされるカーボンブラック粒子)の大きさに相互に関係がある。プロット上の点は、式I=wQ−m(wは定数)の関数に適合させることができる。べき指数mは、2π/Qよりも大きな寸法を有するカーボンブラック粒子の形状を表す。通常は、この指数が大きくなればなるほど、この粒子はより緻密(例えば、より分岐が少ないか、またはより平滑な)になる。例えば、完全に平滑な球または楕円では、mは4に近く、棒状散乱物体では1に等しく、ランダムコイルでは約2であり、そして分岐した構造では2〜3の範囲である。
【0059】
カーボンブラックを充填したエラストマー複合材では、下記の関係は単一の値を与え、中性子散乱指数値(P)と称され、ミクロ分散へのこれらの貢献の両方を表している。
P=Log(Z(Q)×Q−m)+10 式4
式中、Z(Q)は、QにおけるZの値であり、例12によるカーボンブラックを充填されたエラストマー複合材に、USANSを実施した後に決定され、mは、波動ベクトルが4×10−5/オングストローム≦Q≦9×10−5/オングストロームの範囲で測定された中性子散乱強度についての上記のべき指数であり、そしてQは4.3*10−5/オングストロームであり、10を底として対数がとられている。Qは、例12中に記載されたエラストマー複合材にUSANSを実施することによって測定され、そして充填剤からの散乱が、湿式のマスターバッチ試料からのバックグラウンド散乱から識別できる、最小のQを識別する。我々は、予想に反して、本発明によって調製された架橋されたエラストマー複合材について、Pは、充填量またはカーボンブラックの品種によっては著しくは変化しないことを見出した。
【0060】
好ましい態様によっては、CTV法Bを用いて調製されたカーボンブラック充填エラストマー架橋物は、約0.5未満、例えば約0未満、約−0.25未満、または約−0.5未満の中性子散乱指数値Pを示す。態様によっては、中性子散乱指数値はまた、約−2超、例えば約−1.5超、または約−1超である。
【0061】
ここで用いられる、CTV法Bは、エラストマー複合材を、7phrのPerkadox PD-50S-psおよび1.5phrの6-PPDと配合し、そしてこの配合物を表2中の手順に従って加硫することを意味している。それぞれのバンバリー混合段階の後に、配合物は、周囲温度で、約40rpmで、約2mmのニップ間隙で、4回の切り替えしと2回の最終ロール(2 end-rolls)で操作した2本ロール練り機上でシート化し、段階1と段階2の混合の間の静止時間を4〜6時間とした。次いで、配合物を、150℃のプレス中で、1mm厚のスペーサーを備えた型を用いて、慣用のゴムレオメータによって定められた時間(すなわち、T90+T90の10%)、硬化させた。Perkadox PD-50S-PS(Akzo Nobel Polymer Chemicals, LLC、シカゴ、イリノイ州)は、ジ(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシドを主成分とする硬化パッケージである。架橋された配合物の取り扱いは、中性子散乱に影響を与える可能性がある。試験結果を歪曲することを避けるために、この配合物は、加硫の後に機械的に著しく変形させてはならない。
【0062】
<エラストマーマスターバッチの生成>
ここに開示された方法および装置によって、一定の量の仕事をエラストマーマスターバッチに与え、そして場合によってはこれを他の材料と配合しながら、脱水された凝固物を処理して水分を取り除くことができる。湿式のマスターバッチプロセスによって生成された、マスターバッチクラムまたは脱水された凝固物は、特定の用途に対しては高過ぎる水準の水分を有する可能性がある。水を取り除く間に、エラストマーマスターバッチに機械的な素練りを加えることによって、ゴムの特性が劣化するであろう温度にまで材料を加熱することなく、この材料に機械的エネルギーを与えることができる。
【0063】
エラストマー複合材を生成するための方法および装置の特定の態様をここで議論する。本発明の種々の態様では、種々の異なる充填剤およびエラストマーを用いることができるが、以下の記載のある部分は、便宜上、主に天然ゴムおよびカーボンブラックを含むエラストマー複合材の生成におけるそれらの使用を説明している。当業者は、以下で議論する操作の原理に従って、多くの代替のもしくは更なるエラストマー、充填剤および他の材用を含むエラストマー複合材を生成するために、ここに開示した方法および装置をどのように用いるかを理解するであろう。
【0064】
マスターバッチクラムは、下記で機論するプロセスおよび例えば米国特許第5,763,388号明細書、第6,048,923号明細書、第6,841,606号明細書、第6,646,028号明細書、第7,101,922号明細書、第3,335,200号明細書、第3,403,121号明細書に開示されているプロセス、および当業者に知られている他の湿式のマスターバッチプロセスを含めた、いずれかの湿式マスターバッチプロセスを用いて生成することができる。通常は、エラストマーラテックス液および粒状スラリーが混合され、そしてエラストマーラテックスは、凝固させられて、マスターバッチクラムを形成する。マスターバッチクラムは、脱水されて、脱水された凝固物を形成することができる。
【0065】
好適なエラストマーラテックス液としては、天然ならびに合成エラストマーラテックスおよびラテックス混合物の両方が挙げられる。このラテックスは、選択された湿式マスターバッチプロセス、および意図した目的もしくは最終的なゴム製品の用途に適切なものでなければならない。ここに開示された方法および装置で用いられる好適なエラストマーラテックスまたは好適なエラストマーラテックスの混合物を選択することは、この開示の恩恵を受けたならば、当業者の能力の範囲内であろう。エラストマーの例としては、ゴム、1,3−ブタジエン、スチレン、イソプレン、イソブチレン、2,3−ジアルキル−1,3−ブタジエン(ここで、アルキルは、メチル、エチル、プロピルなど)、アクリロニトリル、エチレン、プロピレンなどのポリマー(例えば、ホモポリマー、コポリマーおよび/またはターポリマー)が挙げられるが、これらには限定されない。エラストマーは、約−120℃〜約0℃の範囲の、示差走査熱量測定(DSC)で測定したガラス転位温度(Tg)を有することができる。例としては、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、天然ゴムおよびその誘導体、例えば塩素化ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(スチレン−コ−ブタジエン)およびこれらのいずれかの油展された誘導体、が挙げられるが、これらには限定されない。前記のもののいずれかの混合物もまた用いることができる。このラテックスは、水性のキャリア液体中に存在することができる。特に好適な合成ゴムとしては、約10〜約70質量%のスチレンおよび約90〜約30質量%のブタジエンのコポリマー、例えば19部のスチレンおよび81部のブタジエンのコポリマー、30部のスチレンおよび70部のブタジエンのコポリマー、43部のスチレンおよび57部のブタジエンのコポリマー、および50部のスチレンおよび50部のブタジエンのコポリマー;共役ジエン、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレンなどのポリマーもしくはコポリマー、それらの共役ジエンと、それらと共重合可能なエチレン性基含有モノマー、例えばスチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、アクリロニトリル、2−ビニル−ピリジン、5−メチル−2−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、アリル置換アクリレート、ビニルケトン、メチルイソプロペニルケトン、メチルビニルエーテル、アルファメチレンカルボン酸およびそれらのエステルとアミド、例えばアクリル酸およびジアルキルアクリル酸アミド、とのコポリマー、が挙げられる。ここでの使用に同様に好適なものは、エチレンおよび他の高級アルファオレフィン、例えばプロピレン、1−ブテンおよび1−ペンテンのコポリマーである。以下で更に示すように、このゴム組成物は、エラストマーおよび充填剤に加えて、カップリング剤、および場合によっては、種々の加工助剤、エクステンダー油、および劣化防止剤(antidegradents)を含むことができる。
【0066】
天然ゴムラテックスの例としては、フィールドラテックス又はラテックス濃縮液(たとえば蒸発、遠心分離またはクリーミングにより生成される)、スキムラテックス(例えば、遠心分離によってラテックス濃縮液を生成した後に残った上澄み液)およびそれらのいずれかの2種もしくは3種以上の、いずれかの比率での混合物、を含むことができるが、これらには限定されない。このラテックスは、選択される湿式マスターバッチプロセスおよび最終的なゴム製品の意図した目的もしくは用途に、適切でなければならない。このラテックスは、通常は水性キャリア液体中に与えられる。好適なラテックスもしくはラテックス混合物の選択は、本開示の恩恵、および当工業分野で通常よく理解されている選択基準の知識を受けた当業者の能力の範囲内であろう。
【0067】
粒状充填剤流体は、カーボンブラックスラリーまたは、好適なキャリア流体中の他の好適な充填剤であることができる。粒状充填剤または粒状充填剤混合物の選択は、エラストマーマスターバッチ製品の意図する用途に大きく依存するであろう。ここで用いられる粒状充填剤としては、マスターバッチクラムを生成するのに用いられるマスターバッチプロセス中での使用に適切ないずれかの材料を挙げることができる。好適な粒状充填剤としては、例えば電導性充填剤、補強性充填剤、短繊維(通常は、40未満のL/Dアスペクト比を有する)を含む充填剤、フレークなどが挙げられる。カーボンブラックおよびシリカ型の充填剤に加えて、以下により詳細に議論されるように、充填剤は、クレー、ガラス、ポリマー、例えばアラミド繊維などの形態であることができる。エラストマー組成物中における使用に好適ないずれかの充填剤は、本発明の種々の態様に従ったエラストマー複合材中に混合することができることが期待される。もちろん、ここで議論される種々の粒状充填剤の混合物もまた、用いることができる。
【0068】
カーボンブラック充填剤が用いられる場合には、カーボンブラックの選択は、エラストマーマスターバッチ製品の意図する用途に依存する。場合によっては、カーボンブラック充填剤はまた、当業者によって選択される特定の湿式マスターバッチプロセス中で、スラリー化され、そしてラテックスと混合することができるいずれかの材料を含むことができる。粒状充填剤の例としては、カーボンブラック、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、被覆カーボンブラック、化学的に官能化されたカーボンブラック、例えば結合された有機基を有するもの、およびケイ素処理カーボンブラック、の単独もしくはそれぞれの組み合わせのいずれか、が挙げられるが、それらには限定されない。カーボンブラックの例としては、ASTM N100シリーズ〜N900シリーズカーボンブラック、例えば、N100シリーズカーボンブラック、N200シリーズカーボンブラック、N300シリーズカーボンブラック、N700シリーズカーボンブラック、N800シリーズカーボンブラック、またはN900シリーズカーボンブラックが挙げられる。ASTM N100およびN200シリーズのブラックを含むエラストマー複合材が、特に本明細書の教示から利益を受けるであろう。Cabot Corporationから入手可能な、商標Regal(登録商標)、Black Pearls(登録商標)、Spheron(登録商標)、Sterling(登録商標)、およびVulcan(登録商標)、Columbian Chemicalsから入手可能な、商標Raven(登録商標)、Statex(登録商標)、Furnex(登録商標)、およびNeotex(登録商標)、およびCDとHV系列、ならびにEvonik (Degussa) Industriesから入手可能な、the Corax(登録商標)、Durax(登録商標)、Ecorax(登録商標)、およびPurex(登録商標)、およびCK系列として販売されているカーボンブラック、ならびにゴムもしくはタイヤ用途における使用に好適な他の充填剤もまた、種々の態様での使用のために利用することができる。好適な化学的に官能化されたカーボンブラックとしては、国際出願第PCT/US95/16194号(国際公開第96/18688号)(参照することによって本明細書の内容とする)中に開示されているものが挙げられる。
【0069】
カーボンブラックの例としては、以下の表5中のカーボンブラックが挙げられ、これらには限定されないが、その使用が、例中に記載される。CXG100は、例えば高性能タイヤ用途における特定の有用性を有する実験的なファーネスブラックである。
【0070】
【表5】

【0071】
大きな表面積を有するカーボンブラック、例えば、N100もしくはN200シリーズカーボンブラック、または例えば135m/g超のSTSAおよび/または高水準の構造、例えば85mL/100gのCDBP、を有するより大きな表面積のカーボンブラックが、本明細書の教示から特に利益を得ることができる。態様によっては、充填剤は、約75m/g〜約260m/g、例えば約80m/g〜約250m/g、約90m/g〜約230m/g、約100m/g〜約160m/g、約110m/g〜約240m/g、約120m/g〜約190m/g、約130m/g〜約220m/g、約140m/g〜約170m/g、約150m/g〜約200m/g、約160m/g〜約180m/g、約170m/g〜約210m/g、または約180m/g〜約215m/gのSTSAを有するカーボンブラックである。態様によっては、充填剤は、CDBPによって測定した、約40mL/100g〜約110mL/100g、例えば約50mL/100g〜100mL/100g、約60mL/100g〜約105mL/100g、約70mL/100g〜約95mL/100g、約80mL/100g〜約110mL/100g、約90mL/100g〜約110mL/100g、または約95mL/100g〜約110mL/100gの構造値を有するカーボンブラックである。あるいは、またはこれに加えて、CDBP値は、少なくとも約65mL/100g、少なくとも75mL/100g、または少なくとも85mL/100gであることができる。水分の除去と組み合わせた機械的素練りの使用は、高度に構造化されたブラック、例えば少なくとも85mL/100g、例えば少なくとも約90mL/100g、少なくとも約95mL/100g、または少なくとも約105mL/100gのCDBP値を有するカーボンブラックを用いたカーボンブラック充填エラストマーに特別な利益をもたらすことができる。
【0072】
より高度な構造のブラックは、より補強性であり、そしてそのようなブラックで生成されたエラストマー複合材は、より低い水準の構造を有するカーボンブラックで生成されたエラストマー複合材よりも、より粘度が高い。粘度の増加は、これらのエラストマー複合材の配合をより困難にし、すなわち、これらの材料を混練する配合機器にとって困難となる。水分の除去と組み合わされた機械的素練りは、高度に構造化したブラックを充填されたエラストマー複合材の粘度を低減させる。それにもかかわらず、これらの高度に補強されたエラストマー複合材は、比較的に粘度が高いままであり、そして機械的素練り手順は、下記で更に議論するように、適切な量のエネルギーを与えるように調整することを要する可能性がある。
【0073】
ケイ素被覆およびケイ素処理カーボンブラックの両方を、種々の態様において用いることができる。ケイ素処理されたカーボンブラックでは、ケイ素を含む種、例えばケイ素酸化物、もしくはケイ素炭化物が、カーボンブラック凝集体の少なくとも一部を通して、カーボンブラックの固有の部分として分布している。慣用のカーボンブラックは、凝集体の形態で存在しており、それぞれの凝集体は、炭素である単一相からなっている。この相は、黒鉛状微結晶および/または無定形炭素の形態で存在することができ、そして大抵はこの2つの形態の混合物である。カーボンブラック凝集体は、ケイ素含有種、例えばシリカを、カーボンブラック凝集体の表面の少なくとも一部の上に堆積させることによって変性することができる。この結果を、ケイ素被覆カーボンブラックと表すことができる。
【0074】
ここにケイ素処理カーボンブラックとして記載された材料は、被覆されている、もしくは他の方法で変性されたカーボンブラック凝集体ではなく、2つの相を有する異なる種類の凝集体を実際に表している。1つの相は炭素であり、これはなお黒鉛状微結晶および/または無定形炭素として存在しているであろうし、一方で第2の相はシリカ(およびおそらく他のケイ素含有種)である。従って、ケイ素処理カーボンブラックのケイ素含有種の相は、凝集体の固有の部分であり、それはこの凝集体の少なくとも一部を通して分布している。種々のケイ素処理ブラックが、キャボットコーポレイションからEcoblack(登録商標)の名称で入手可能である。多相凝集体は、上記のケイ素被覆カーボンブラックとは極めて異なっており、後者は前もって形成された、単相のカーボンブラック凝集体からなり、その表面にケイ素含有種が堆積されていることが理解されるであろう。このようなカーボンブラックは、米国特許第6,929,783号明細書中に記載されているように、カーボンブラック凝集体の表面上に、シリカの機能性を配置するために表面処理することができる。
【0075】
上記のように、添加剤を用いることができ、そしてこの関連で、シリカもしくはカーボンブラックをカップリングするのに有用なカップリング剤が、ケイ素処理カーボンブラックには有用であることを予想することができる。カーボンブラックおよび多くの他の好適な粒状充填剤が、商業的に入手可能であり、そして当業者に知られている。
【0076】
また、1種または2種以上の添加剤を、好適であれば、粒子スラリーまたはエラストマーラテックス液と予め混合することができ、または凝固の間にマスターバッチクラムと混合することができる。また、添加剤は、エラストマーマスターバッチ中に後で、例えば混合技術によって混合することができる。多くの添加剤が当業者に知られており、そして、例えば、酸化防止剤、オゾン分解防止剤、可塑剤、加工助剤(例えば、液状ポリマー、オイルなど)、樹脂、難燃剤、エクステンダー油、滑剤、およびそれらの混合物が挙げられる。添加剤の例としては、酸化亜鉛およびステアリン酸が挙げられるが、これらには限定されない。このような添加剤の一般的使用および選択は、当業者にはよく知られている。
【0077】
粒状充填剤スラリーは、当業者に知られているいずれかの技術によって生成することができる。カーボンブラックペレットを用いる方法の例では、べレットは水と混合され、そして結果として得られる混合物は、コロイドミル、パイプライングラインダーなどを通過させて分散体流体を形成する。この流体は、次いで、カーボンブラックをキャリア液体中により微細に分散させてスラリーを形成させるホモジナイザーに通される。ホモジナイザーの例としては、Microfluidics International Corporation(ニュートン、マサチューセッツ州、米国)から商業的に入手可能なMicrofluidizer(登録商標)系が挙げられるが、これらには限定されない。同様に好適なものは、APV Gaulin, Inc.(ウィルミントン、マサチューセッツ州、米国)のAPV Homogenizer部門化ら入手可能なモデルMS18、MS45およびMC120シリーズなどのホモジナイザーである。他の好適なホモジナイザーが商業的に入手可能であり、そして本明細書の開示の利益を受けて、当業者には明らかであろう。ホモジナイザーの最適な操作圧力は、実際の装置、充填剤組成、および充填剤含量に依存する可能性がある。カーボンブラックを用いる態様では、ホモジナイザーは、約10psi〜約5000psi、例えば約10psi〜約1000psi、約1000psi〜約1700psi、約1700psi〜約2200psi、約2200psi〜約2700psi、約2700psi〜約3300psi、約3300psi〜約3800psi、約3800psi〜約4300psi、または約4300psi〜約5000psiの圧力で操作することができる。用いられる湿式マスターバッチ法によっては、過剰な水または他のキャリアを取り除く仕事を低減するために、高いカーボンブラック含量を用いることができる。下記の湿式マスターバッチ法では、約5〜30質量%カーボンブラックを用いることができ、例えば約5〜約9質量%、約9〜約12質量%、約12〜約16質量%、約16〜約20質量%、約20〜約24質量%、約24〜約27質量%、または約27〜約30質量%を用いることができる。当業者は、本明細書の開示の利益を受けて、スラリーのカーボンブラック含量(質量%での)は、最終製品中の目的のカーボンブラック含量(phrでの)を得るためには、湿式マスターバッチプロセスの間の他のプロセス変数と調整されてなければならないことを理解するであろう。
【0078】
このスラリーは、好ましくは調製された直ぐ後に、マスターバッチ生成に用いられる。スラリーを運ぶ流体管、およびいずれかの所望による貯蔵タンクなどは、カーボンブラックのスラリー中の分散を実質的に維持する条件を確立、もしくは保持しなければならない。すなわち、スラリー中の粒状充填剤の実質的な再集塊化または沈降は、防止するか、または、適度に実用的な程度まで低減されなければならない。
【0079】
好ましい態様によっては、マスターバッチクラムは、慣用の凝固剤を用いることなしでも、凝固を達成することができるのに十分な乱流レベルおよび流量制御条件での、エラストマーラテックスと粒状充填剤流体との混合を含む、連続流動プロセス中で生成される。そのような方法が、例えば米国特許第6,048,923号明細書中に開示されている。要するに、マスターバッチクラムの調製方法の例は、カーボンブラックのスラリーもしくは他の充填剤と天然ゴムラテックスもしくは他の好適なエラストマー流体とを、凝固反応器の混合区域へと、同時に供給することを含んでいる。凝固区域は、混合区域から延びており、好ましくは、下流の方向に、入口末端から排出末端へと、断面積が累進的に増加している。スラリーは、好ましくは連続の、注入された流体の高速ジェットとして、混合区域に供給され、一方で天然ゴムラテックス流体は、比較的に低速で供給される。充填剤スラリーの高速、流量および粒子濃度は、ラテックス流体の混合および高せん断、凝固区域の少なくとも上流部分内部での混合物の流れ乱流、を生じさせるのに十分であり、そして排出末端の前に、エラストマーラテックスを実質的に完全に凝固させる。実質的に完全な凝固は、従って酸または塩凝固剤の必要なしに達成することができる。
【0080】
エラストマーラテックスと粒子流体の実質的に完全な凝固の後に、「虫(worms)」または小球の形態のマスターバッチクラムが形成され、そして凝固反応器の排出末端から、実質的に一定の流れとして、凝固反応器の混合区域中へのラテックスおよびカーボンブラックスラリー流の進行中の供給と同時に、排出される。特に、プラグ型の流れおよび凝固反応器の排出末端における大気圧もしくは大気圧に近い条件は、エラストマー複合材製品の制御および収集を促進するのに、例えば即時のもしくは直ぐ次の更なる処理工程のために、極めて有利である。マスターバッチクラムは生成され、そして次いで、例えば約70〜85%の水分含量を有する、所望の押出物に形成される。配合の後に、マスターバッチクラムは、好適な乾燥および配合装置を通される。
【0081】
図1および2中に示された態様では、マスターバッチクラムは、凝固反応器14から、単純な重量落下もしくは他の好適な装置であることができる運搬手段101を経由して、脱水押出機40へと送られる。好適な脱水押出機はよく知られており、そして例えばthe French Oil Mill Machinery Co.(ピクウェー、オハイオ州、米国)から商業的に入手可能である。水は、脱水押出機40から、放出流43を経由して排出される。
【0082】
脱水押出機は、例えば、約70〜85%含水量、約1%〜20%含水量、例えば約1%〜約3%含水量、約3%〜約5%含水量、約4%〜約6%含水量、約5%〜約10%含水量、約10%〜約15%含水量、約13%〜約17%含水量、または約15%〜約20%含水量の天然ゴムマスターバッチクラムをもたらすことができる。態様によっては、脱水押出機は天然ゴム押出物の水分含量を約15%まで低減させる。最適な水分含量は、用いられるエラストマー、充填剤の種類および脱水された凝固物の素練りに用いられる装置、で変わる可能性がある。いずれかの特定の理論によって拘束されはしないが、このような処理は、実質的にゴム−充填剤相互作用またはゴム特性を改善させはしないことが信じられる。水分含量が低過ぎる場合には、素練りは材料の温度を上昇させ、そしてポリマー−充填剤相互作用を促進することなく、ゴムを劣化させる。
【0083】
用いられる湿式マスターバッチ法に関わらず、マスターバッチクラムは、所望の水分含量にまで脱水することができ、それに続いて結果として得られた凝固物は、更に所望の水分水準(例えば、約0.5%〜約3%、例えば約0.5%〜約1%、約1%〜約3%、約2%〜約3%、または約1%〜約2%)に乾燥されつつ、素練りされる。我々は予想に反して、ゴム特性に観察される改善を与えるのは、脱水された凝固物が処理される装置ではなく、材料に与えられる機械的エネルギーであることを見出した。例えば、脱水された凝固物は、1基もしくは2基以上の連続式混合器、密閉式混合器、2軸スクリュー押出機、単軸スクリュー押出機またはロール練り機で、機械的に処理することができる。好適な素練り装置はよく知られており、そして商業的に入手可能であり、例えば、Farrel Corporation of Ansonia, Conn.のUnimix Continuous MixerおよびMVX(混合、脱気、押出)機、Pomini, Inc.のlong continuous mixer、Pomini Continuous Mixer、ツインローター共回転噛合い型押出機、ツインローター逆回転非噛合い型押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダーミキサー、噛合い型密閉式混合機、混練型密閉式混合機、連続式配合押出機、Kobe Steel, Ltd.によって製造された二軸混練式押出機、およびKobe Continuous Mixerが挙げられる。本発明の種々の態様で用いるのに好適な他の素練り装置は、当業者にはよく知られているであろう。
【0084】
脱水された凝固物が所望の装置中で処理されるときには、この装置は材料にエネルギーを与える。いずれかの特定の理論には拘束されないが、機械的な素練りの間に発生する摩擦が、脱水された凝固物を加熱すると信じられる。この熱の一部が、脱水された凝固物中の水分を、加熱および蒸発させることによって消費される。いずれかの特定の理論に拘束されることは望まないが、脱水された凝固物から素練りによって取り除かれる実質的に全ての水が、凝固物から水を絞り出すことによってではなく、水を加熱し、そして水を蒸発させることによって、取り除かれると信じられる。従って、特定の装置中でどのように素練りが起こるかによって、脱水された凝固物に対する最適な水分含量は変わる。装置内部の脱水された凝固物の温度は、ある水準まで増加するか、特定の水準に維持されるか、またはその両方である可能性がある。この温度は、装置内部で大気に曝されるようになる水を迅速に蒸発させるのに十分に高くなければならず、しかしながらゴムにスコーチを起こすほど高くてはならない。態様によっては、脱水された凝固物は、約130℃〜約190℃、例えば約140℃〜約160℃、または約150℃〜約165℃の温度に達する。
【0085】
態様によっては、少なくとも約0.9MJ/kg、例えば少なくとも約1.3MJ/kg、少なくとも約1.7MJ/kg、少なくとも約2MJ/kg、少なくとも約2.3MJ/kg、または少なくとも約2.6MJ/kgのエネルギーを材料に加えることができる。態様によっては、約3MJ/kg以下、または4MJ/kg以下のエネルギーが材料に加えられる。最適なエネルギーの量は、用いられる装置、処理の間の脱水された凝固物の温度、カーボンブラックの構造と充填量、および脱水された凝固物の水分含量による。
【0086】
好ましい態様によっては、機械的混合機中で、添加剤を脱水された凝固物に混合することができる。特に、添加剤、例えば充填剤(凝固反応器中で用いられる充填剤と同じでも、または異なっていてもよく、充填剤の例として、シリカおよび酸化亜鉛が挙げられ、酸化亜鉛は硬化剤としてもまた作用する)、他のエラストマー、他のもしくは更なるマスターバッチ、酸化防止剤、オゾン分解防止剤、可塑剤、加工助剤(例えば、ステアリン酸(これもまた硬化剤として用いることができる)、液状ポリマー、オイル、ワックスなど)、樹脂、難燃剤、エクステンダー油、滑剤、およびそれらのいずれかの混合物、を機械的混合機中で加えることができる。他の好ましい態様によっては、更なるエラストマーを、脱水された凝固物と混合して、エラストマー混合物を生成することができる。エラストマーの例としては、ゴム、1,3−ブタジエン、スチレン、イソプレン、イソブチレン、2,3−ジアルキル−1,3−ブタジエン(ここでアルキルは、メチル、エチル、プロピルなど)、アクリロニトリル、エチレン、プロピレンなどのポリマー(例えば、ホモポリマー、コポリマーおよび/またはターポリマー)が挙げられるが、これらには限定されない。マスターバッチ混合物を生成する方法は、本願と同一出願人による米国特許第7,105,595号明細書、第6,365,663号明細書、第6,075,084号明細書中に開示されている。
【0087】
図2は、乾燥した添加剤を、導管171および供給口102を経由して、連続式配合機100中に導入するためのサブシステム58を概略的に図示している。図2中に同様に概略的に図示されているのは、液体添加剤を、導管172および供給口109を経由して、連続式配合機100中に導入するためのサブシステム59である。導管171および172は、例えば、管、コンベヤーベルト、または材料をそれぞれのサブシステムから連続式配合機100へと運搬するための他の好適な装置であることができる。エラストマー、添加剤および更なるマスターバッチのいずれの組み合わせも、連続式配合機100中で脱水された凝固物に加えることができることが理解されなければならない。
【0088】
図1および2中に示された態様では、脱水された凝固物は、脱水押出機40から、コンベヤーもしくは単純な重力落下もしくは他の好適な装置41を経由して、連続式混合機100の長い処理チャンバー104中に形成された供給口102中へ供給される。例示的な態様によっては、供給口102は、脱水押出機40からの脱水された凝固物の重力落下を促進する供給ホッパーである。また、供給口102には、輸送機、例えばコンベヤーベルト、導管、管、またはエラストマーマスターバッチを運搬するためのいずれかの他の好適な装置を経由して、供給することができる。処理チャンバー104は、連続式配合機100の筐体の内側にある。長手のローター106が、処理チャンバー104中で、互いに平行で、そして軸方向に配向しているのがわかる。ローター106は、モータ108によって、ギア減速機110および軸受112を経由して、駆動される。ローター106は、処理する材料に対して知られた設計に従って、長手の処理チャンバー104の軸方向を通して適用される。図2中に見られるように、複式のローター106が、処理チャンバー104中で、軸方向に配向している。ローター106は、好ましくは分割されており、異なる区分が、所望により異なるネジ山またはスクリュー形状を有している。好ましい態様では、処理チャンバー104は、異なる外形を有する2つのローター106を収容している。好適なローター106は、例えば、コネチカット州アンソニアのFarrel Corporationのローターモデル7番および15番を含む、異なる外形を有している。当業者は、代替のローターの組合せが、エラストマー組成、充填剤組成、充填剤の形態、充填量、およびマスターバッチの他の特徴に応じて、特定のエラストマーマスターバッチに対して好適である可能性があることを理解するであろう。好ましい態様では、ローター106は、脱水された凝固物が配合機100を通過するときに、温度を制御して、この脱水された凝固物に加熱および/または冷却を与えることができる流体機構または他の装置を含んでいる。
【0089】
図2中に図示された態様からわかるように、それぞれのローター106は、第1区分116および第2区分118を有している。第1および第2区分を収容する処理チャンバーの部分、例えばホッパー104aおよび混合チャンバー104bは、独立して加熱または冷却することができる。態様によっては、それぞれのローターの第1区分116は、供給スクリューであり、そして第2区分118は、脱水された凝固物に対して素練りを与えるように選択された外形を有している。脱水された凝固物が処理チャンバー104を通過する時に、このローターは材料を素練りし、それによって脱水された凝固物を混合および乾燥する。供給口109は、処理チャンバー104中に、液体添加物の添加のために与えられる。乾燥材料は、供給口102を経由して、脱水された凝固物へ加えることができる。脱気孔111が、処理チャンバー104中に与えられて、脱水された凝固物が乾燥するときに、水分が出て行くのを可能にしている。脱水された凝固物は、排出孔114を経由して、処理チャンバー104を出て行く。脱水された凝固物の温度は、処理チャンバー104またはローターに、適切な温度の冷却液または加熱水を与えることによって制御することができる。
【0090】
エラストマーマスターバッチ組成物によっては、ホッパー104a、混合チャンバー104b、およびローター106の、運転開始の間およびこのプロセスが完全に操業中となったときの、最適な温度は異なる可能性がある。連続式配合機100の運転パラメータの制御は、脱水された凝固物に加えられる機械的エネルギーの量および水の除去速度を制御することを可能にする。そのような運転パラメータとしては、連続式配合機の処理量、ローター速度と温度、排出孔の大きさと温度、パワードロー(power draw)、および処理チャンバー温度が挙げられる。脱水された凝固物を素練りするのに用いることができる他の装置についても、同様のパラメータを変化させることができる。
【0091】
態様によっては、ローターの速度は、約140〜約400rpmであることができる。充填剤がより少ない充填量の、またはより小さな表面積を有する充填剤のエラストマーマスターバッチについて、素練りを強めて、そして水分除去を向上させるためには、高速が望ましい可能性があり、それは、このような充填剤は、凝固されたラテックスに摩擦を通して多くの熱を発生させることがないからである。高度に補強されたエラストマーマスターバッチにおけるエネルギー投入と温度とを制御するためには、低速が必要である可能性があり、これはこのようなマスターバッチは、より粘度が高く、そして素練りをするためにより動力を必要とするからである。このように、高度に補強されたエラストマーマスターバッチからの熱の除去を最適化するためには、ローターは低温(例えば約4℃の水をローターの冷却に用いる)に維持することができるが、しかしながら、より柔軟な、半補強のエラストマーマスターバッチからの熱の除去を促進するためにローターを加熱するのに、加熱水(例えば約90℃)を用いることができる。
【0092】
ホッパー104aおよび混合チャンバー104bは、ローターを冷却するのと、同じか、もしくは異なる温度を有する水または他の冷却液で、加熱または冷却することができ、そして独立して加熱および/または冷却することができる。例えば、ホッパー104aおよび混合チャンバー104bは、例えば約4℃〜約90℃の温度、または複合材組成によっては、この範囲外の温度、を有する水で、加熱または冷却することができる。例えば、水は、約4℃〜約10℃、約10℃〜約20℃、約20℃〜約30℃、約30℃〜約40℃、約40℃〜約50℃、約50℃〜約60℃、約60℃〜約70℃、約70℃〜約80℃、または約80℃〜約90℃であることができる。
【0093】
しかしながら、それぞれのローター106および処理チャンバー104の部分についての最適な温度はまた、連続式配合機100の処理量に依存する。例えば、高度に補強されたエラストマーマスターバッチは、低い処理量、例えば250〜350もしくは400kg/時では、冷却を必要とする可能性がある。しかしながら、大きな処理量、例えば700kg/時に近い処理量では、高度に補強されたエラストマーマスターバッチであってさえも、ローター106および処理チャンバー104は、水を除去するために、加熱される必要がある可能性がある。連続式配合機100の処理量は、上流のプロセス、下流のプロセス、またはその両方の処理用に応じて調整することができる。
【0094】
連続式配合機100内部での脱水された凝固物の滞留時間は、排出孔114を調整することによって部分的に制御される。より大きな表面積の充填剤を有するエラストマーマスターバッチでは、より短い滞留時間が望ましい可能性があり、態様によっては、排出孔は、75〜100%の開度、好ましくは90〜100%の開度に調整される。それ程高度には補強されていない、より柔軟なエラストマーマスターバッチでは、排出孔は、より閉鎖されていてよい。態様によっては、排出孔は少なくとも50%の開度である。
【0095】
連続式配合機100からの、排出孔114を通した、素練りされた凝固物排出物の温度は、連続式配合機のパワードロー(power draw)、すなわち脱水された凝固物にローターによって加えられた仕事の量を調整するために、連続式配合機の制御にカスケードされる。態様によっては、連続式配合機の排出物の温度は、約130℃〜約190℃、例えば140℃〜約180℃、約150℃〜約170℃、または約155℃〜約165℃である。当業者には、より低い温度では、素練りされた凝固物から水分を取り除くには、より長い時間が必要となる可能性があることが理解されるであろう。より高い温度、例えば170℃より高温では、ゴムの劣化を防止するために、処理時間を制限することが望ましい可能性がある。
【0096】
他の態様では、脱水された凝固物は、密閉式混合機、例えばバンバリーミキサーを用いて素練りされる。マスターバッチクラムは、先ず約3〜約7%、例えば約5%〜約6%、または約3%〜約5%とすることができる。水分含量は、所望の水準まで脱水することによって、あるいは、マスターバッチクラムをより高い水分含量まで脱水し、そして次いで更に水分含量を、結果として得た脱水された凝固物を加熱することによって、脱水された凝固物から室温にて水を蒸発させることによって、または当業者によく知られた他の方法によって低減することによって、達成することができる。脱水された凝固物は、次いで密閉式混合機中で、所望の水分水準または機械的エネルギー投入が達成されるまで、素練りすることができる。態様によっては、脱水された凝固物は、それが予め定めた温度に到達するまで素練りされ、冷却され、そして次いで材料に更なるエネルギーを与えるために、1度もしくは2度以上、密閉式混合機中に戻される。態様によっては、好ましい温度は、140℃〜約165℃、例えば約145℃〜約160℃、または約150℃〜約155℃である。脱水された凝固物は、密閉式混合機中でのそれぞれの素練りの後に、ロール練り機中でシート化することができる。あるいは、もしくは更に、バンバリーミキサー中で素練りされた脱水された凝固物は、更にロール練り機中で素練りすることができる。
【0097】
高度に補強された材料、例えば中位の表面積/高度な構造の充填剤を多い充填量で有する材料、または大きな表面積/高い構造の充填剤をより中位の充填量で有する材料では、配合装置および脱水された凝固物の相互作用によって、相当多くの量の摩擦が発生する。従って、この装置の操作条件は、そのような材料に適合するように調整する必要がある可能性がある。例えば、比較的に高度な構造と大きな表面積(CDBP102mL/100mg、STSA174m/g)を有するCRX 1490で、中位に充填された(例えば、少なくとも40phrまたは少なくとも42phr)複合材を処理するには、Farrell Continuous Mixerは、200rpm未満で運転され、そしてより低度に補強された複合材の生産に対しては、生産速度は低減される。より低い生産速度においては、増大する摩擦と組み合わさったより長い滞留時間は、脱水された凝固物の温度を急速に増大させる可能性があるために、運転温度に細心の注意を払う必要がある。他の例では、高度に構造化されたカーボンブラックでは、より少ない充填剤充填量を有する複合材を開放型混合機上に予め供給し、そして次いで漸次に開放型混合機を通して処理される材料の充填量を、所望の組成が得られるまで、増加させることが必要である可能性がある。実際に、素練り装置の選択は、特定の装置の性能の限界、および特定の充填剤の所望の充填量の水準を有する複合材の最適な処理のための生産速度と出力水準において、その装置の制御可能に運転することができる能力、によって部分的には規定される可能性がある。
【0098】
他の態様では、脱水押出機は、マスターバッチクラムから水分を除去、および材料の素練りの両方をする。脱水押出機が、マスターバッチクラムから水分のより多くの割合を除去するのに用いられるので、それは材料を素練りする。例えば、脱水押出機は、水分含量を約1%〜約3%にする一方で、材料を素練りするために用いることができる。この材料は、次いで開放型混合機または他の装置上で、更に素練りされて、水分含量を更に低減させることができる。
【0099】
脱水された凝固物がどのように素練りされるかに関わらず、素練りされた凝固物からの水の除去を、最少量であってさえも伴う追加的な素練りが、ゴム性能を更に向上させることが、予想に反して見出された。この機構は完全には理解されていないが、しかしながら、いずれかの理論によって拘束されはしないが、素練りからもたらされる摩擦が、エラストマーマトリックスと充填剤との間の相互作用を向上させ、一方で素練りされた凝固物からの水分の蒸発が、凝固物が更に素練りされる間に、摩擦によって発生する熱を放散すると信じられる。態様によっては、約0.3MJ/kgという小さなエネルギーが、素練りされた凝固物に与えられ、例えば、少なくとも約0.7MJ/kg、少なくとも約1MJ/kg、または約0.3MJ/kg〜約1MJ/kg、もしくは約1.5MJ/kgである。
【0100】
態様によっては、素練りされた凝固物は、開放型混合機に供給される。図1および2に示された態様では、素練りされた凝固物は、連続式配合機から、押出品の長さで排出され、そして開放型混合機120に入る前に、より短い長さに切断することができる。素練りされた凝固物は、場合によっては、コンベヤー119を経由して開放型混合機120へと供給することができる。コンベヤー119は、コンベヤーベルト、導管、管、または素練りされた凝固物を連続式配合機100から開放型混合機120へと運搬するための他の好適な手段であることができる。開放型混合機120としては、2本のローラー122が挙げられ、これは場合によっては開放型混合機120に促進された操作を与えるために、加熱または冷却されていてもよい。開放型混合機120の他の運転パラメータとしては、ロール間の間隙距離、バンク高さ、すなわちロール間およびロール上端上の材料の蓄積、ならびに各ロールの速度、が挙げられる。各ロールの速度および各ロールを冷却するのに用いられる流体の温度は、各ロールについて独立に制御することができる。態様によっては、間隙距離は、約5mm〜約10mmまたは約6mm〜約8mmであることができる。ロール速度は、約15〜19rpmであることができ、そしてローラーは、互いに混合機の内側の方に向かって回転することができる。収集(collection)ローラー、例えば素練りされた凝固物が収集されるローラーの速度の、後側のローラーの速度との比であるフリクションレシオは、約0.9〜約1.1であることができる。ローラーを冷却するのに用いられる流体は、約35℃〜約90℃、例えば約45℃〜約60℃、約55℃〜約75℃、または約70℃〜約80℃であることができる。素練りされた凝固物に所望の水準の素練りと乾燥を与えるために開放型混合機の操作を制御するのに加えて、開放型混合機120の排出物が、収集ローラー上に、平滑なシートとして収集されることもまた望ましい。いずれかの特定の理論に拘束されはしないが、より低温のローラー温度がこの目標を容易にすると考えられる。態様によっては、開放型混合機120は、素練りされた凝固物の温度を、約110〜140℃にまで低下させることができる。この混合機中の素練りされた凝固物の滞留時間は、部分的には、ローラー速度、間隙距離および所望の素練りの量によっては決定され、そしてFCM中で素練りされている材料に対して、約10〜20分間であることができる。素練りされた凝固物中へのエネルギーの投入は、装置の動力消費量によって測定することができる。
【0101】
当業者は、湿式マスターバッチ材料に素練りと乾燥を与えるために、装置の異なる組合せを用いることができることを理解するであろう。どのような装置が用いられるかによっては、マスターバッチに種々の量の仕事および乾燥を与えるために、上記の条件とは異なる条件下で運転することが望ましい可能性がある。更に、2種以上の特定の種類の装置、例えば開放型混合機もしくは密閉式混合機、を連続して用いるか、または素練りされた凝固物を与えられた装置に、2回以上通すことが望ましい可能性がある。例えば、素練りされた凝固物を、開放型混合機に2回もしくは3回もしくは4回以上通すか、または連続している2基もしくは3基もしくは4基以上の開放型混合機に通すことができる。後者の場合には、それぞれの開放型混合機を、異なる操作条件、例えば速度、温度などの下で操作転することが望ましい可能性がある。態様によっては、素練りされた凝固物は、密閉式混合機中で素練りされた後で、1基、2基または3基の開放型混合機を通される。
【0102】
態様によっては、エラストマー複合材は、種々のタイヤの部分、例えばタイヤ、タイヤトレッド、タイヤ側面部、タイヤ用のワイヤースキム、および山掛けタイヤ用のクッションゴムに用いる、またはそれら用に製造することができる。あるいは、もしくは更に、エラストマー複合材は、無限軌道駆動(track-propelled)装置、例えばブルトーザなど用の無限軌道および無限軌道パッド、採鉱装置、例えば篩、採鉱装置ライニング、コンベヤーベルト、シュートライナー、スラリーポンプライナー、泥水ポンプ部品、例えば羽根車、バルブ座、バルブ本体、ピストンハブ、ピストンロッド、およびプランジャー、種々の用途のインペラー、例えばスラリー混合およびスラリーポンプインペラー、細砕ロールライナー、サイクロ(登録商標)ンおよびハイドロサイクロ(登録商標)ン、および伸縮継手、舶用機器、例えばポンプ(例えば、浚渫ポンプおよび船外モータポンプ)用ライニング、ホース(例えば、浚渫ホースおよび船外モータホース)、および他の舶用機器、船舶用軸封、オイル、航空宇宙、および他の用途、プロペラ軸、例えばオイルサンドおよび/またはタールサンドの運搬用配管のライニング、および耐摩耗性が必要な他の用途、に用いることができる。加硫された複合材は、ローラー、カム、軸およびパイプ、車両用のトレッドブッシングまたは耐摩耗性が必要な他の用途に用いることができる。
【0103】
慣用の配合技術を、加硫剤およびエラストマー複合材の技術分野で知られている他の添加剤を混合するために、目的の用途に応じて用いることができる。このような配合は、機械的なエネルギーをマスターバッチに加えるけれども、水は通常は取り除かれない。水の除去がなければ、配合では、本発明の好ましい態様によって与えられる利益を与えることができない。
【実施例】
【0104】
本発明は、以下の例によって更に明確にされるが、これらの例は、例示することのみを目的とするものである。
【0105】
<方法>
以下の例では、凝固された湿式マスターバッチは、天然ゴムラテックスの流れを、カーボンブラックスラリーの比較的に高速の流れに衝突させることによって生成させた。凝固されたマスターバッチクラムは、7〜85%の範囲の水を含んでおり、断りのない限り、いずれかの更なる処理の前に、脱水押出機(オハイオ州、ピクウェーのFrench Oil Mill Machinery Company)を用いて約10〜20%の水分まで脱水(DW)した。これらの条件の下で、脱水プロセスは、マスターバッチクラムのゴムに最小限の機械的エネルギーを与えると考えられる。以下に示した一部の脱水された凝固物およびマスターバッチクラムは、60℃に設定した循環空気型の加熱炉中で24時間乾燥した。このことで、試料が、脱水された凝固物から採られたか、または脱水されていないマスターバッチクラムから採られたかに関わらず、典型的には水分含量を約2〜4%に低減させた。脱水された試料によっては、以下に示すように、換気フード内で、室温で乾燥させた。断りのない限り、このことで典型的には水分含量は約5〜6%に低減された。
【0106】
種々のマスターバッチの性能を、試料を配合および加硫することによって試験した。断りのない限り、加硫のために用いられた材料の配合は、表6中に与えられており、そして配合手順は表7中に与えられている。この配合プロセスは、約1.6〜1.9MJ/kgの機械的エネルギーをマスターバッチに加える。水は、配合の間は試料から除去されないので、この数値は、表8〜15中に含まれる計算されたエネルギー投入量には含めなかった。加硫は、150℃に設定した加熱プレス中で、慣用のゴムレオメータによって定めた時間(例えば、T90+T90の10%、ここでT90は90%の加硫が達成されるまでの時間である)、実施した。
【0107】
性能試験の結果を下記に説明する。加硫された試料の引張応力(T300およびT400)ASTM標準D−412に従って測定した。動的機械特性を、10Hzおよび60℃での、動的歪スイープ(strain sweep)を用いて測定した。ペイン(Payne)効果は、スイープの間に測定された最大と最小の貯蔵弾性率の間の差として定義される。tan δmaxは、この歪の範囲内のtan δの最大値として定めた。
【0108】
【表6】

【0109】
【表7】

【0110】
例1
52phrのN234カーボンブラックを含む天然ゴムマスターバッチを、上記の方法の項に記載した湿式マスターバッチプロセスを用いて生成した。このマスターバッチを、約15%の水分含量にまで脱水し、これに続いて4種の試料を調製した。試料1Aは、60℃で24時間乾燥した。試料1Bは、同様の方法で乾燥し、そして次いでバンバリーミキサー中で素練りし(充填率=0.75、ラム圧力=2.8バール、冷却水温度=50℃、材料を80rpmで加え、そして150〜170rpmで素練りし、そして160℃で排出した)、これに続いてこれを開放型混合機(温度=華氏180度)で6分間処理した。このバンバリー混合手順に続いてロール混練を行い、これを1バンバリーサイクルと称した。試料1Cは60℃で乾燥し、1バンバリー素練りサイクルを経過させ、そして次いでバンバリーミキサー中で、同じ条件下で2回目の素練りをし、そして開放型混合機で10分間素練りをした(すなわち、2バンバリーサイクル)。試料1Dは、室温で部分的に乾燥させ、次いでバンバリーミキサー中で2サイクル素練りをした。それぞれのバンバリーサイクルの間の、バンバリーミキサー中での材料へのエネルギーの投入を記録した;バンバリーサイクルの最後における材料のシート化は、材料にエネルギーを加えるけれども、このエネルギーの量は、バンバリー中で与えられるエネルギーに比べると非常に小さい。表8中に与えた加硫試験の結果は、試料1Aについての値を指標としている。
【0111】
【表8】

【0112】
このデータは、素練りは最終の加硫物の機械的性能を向上させる一方で、水の除去と組み合わされた素練りは、性能の更に大きな向上を与えることを示している。
【0113】
例2
天然ゴムマスターバッチを、方法の項に記載した湿式マスターバッチプロセスによって、表9中に明らかにした品種および充填量のカーボンブラックを用いて、生成した。脱水した凝固物は、60℃の加熱炉中(比較例)か、またはFarrel Continuous Mixer(FCM)(280〜320rpm、350〜400kg/時、FCMローター7番および15番、排出孔80〜100%開度)を通してかのいずれかで乾燥し、続いて開放型混合機(OM)(間隙距離約6mm、ロール速度15〜17rpm、フリクションレシオ0.9〜1.1、冷却流体60℃〜90℃)で処理した。表9中に示したカーボンブラック品種および充填量を有するゴムの加硫試験の結果は、全て同じ条件の加熱炉で乾燥した同じ組成の試料の結果を指標としている。
【0114】
【表9】

【0115】
この結果は、水を除去しながらのマスターバッチの素練りは、結果として得られるゴムの機械的性能を向上させることを示している。
【0116】
例3
天然ゴムマスターバッチを、方法の項に記載した湿式マスターバッチプロセスを用いて、表10中に明らかにした種々の品種および充填量のカーボンブラックで生成した。脱水した凝固物は、Farrel Continuous Mixer(FCM)を、例2中に記載した条件下で、通過させた。試料によっては、次いで例2中に記載した条件下で、開放型混合機を通過させた。開放型混合機を通過させていない試料は、比較例である。表10中に示したカーボンブラックの品種および充填量を有するゴムの加硫試験の結果は、同じ組成のFCM試料の結果を全て指標としている。
【0117】
【表10】

【0118】
これらの結果は、開放型混合機によって与えられる追加的な素練りは、加硫物の機械的特性に、単にFCMに材料を通すことによって得られる向上を超えて、更なる向上を与えることを示している。
【0119】
例4
52phrのN234カーボンブラックを含む天然ゴムマスターバッチを、上記の方法の項に記載した湿式マスターバッチプロセスを用いて生成した。結果として得られた脱水された凝固物は11.5%の水分含量を有していた。4種のゴム試料をこの凝固物から作った。1番目としては(例4A)、脱水された凝固物を回収し、そして60℃で24時間乾燥させた。2番目としては(例4B)、脱水された凝固物を回収し、そして室温で換気フード中で部分的に乾燥させた。1番目および2番目の試料の両方(試料4Aおよび4B)を1600ccバンバリーミキサー(充填率=0.75、ラム圧力=2.8バール、冷却水温度=50℃、材料を80rpmで加え、そして150〜170rpmで素練りし、そして160℃で排出した)、そして続いてこれを82℃に設定した開放型混合機に、材料が平滑になるまで通した。3番目(例4C)としては、脱水された凝固物を、例2中に記載した条件下でFarrel Continuous Mixerを通した。4番目(例4D)としては、FCMから出てきた材料を、例2中に記載したように更に開放型混合機を通して処理した。結果として得られた材料を加硫し、そして加硫物の機械的特性を試験した(表11)。
【0120】
【表11】

【0121】
試料4Bの性能は、試料4Dの性能と同様である。これらの結果は、機械的に素練りされたエラストマーで調製された加硫物は、熱的に乾燥されたエラストマーで調製された加硫物に比較して優れた性能を示すことを示している。いずれかの特定の理論い拘束はされないが、熱的な乾燥は酸化、およびエラストマー複合材内部に早過ぎる架橋を生じさせると考えられる。更に、脱水された凝固物から大多数の水分が取り除かれている後でさえも、例え少量であっても更に水分を除去しながらの更なる素練りは、ゴム特性を更に向上させる。
【0122】
例5
52phrのN234カーボンブラックを有する天然ゴムマスターバッチを、上記の方法の項に記載した湿式マスターバッチプロセスを用いて生成し、そして約16.7%の水分まで脱水した。結果として得た脱水された凝固物から5種のゴム試料を作成した(例5A〜E)。これらの試料を、表12中に示したように種々の乾燥および素練りプロセスで処理した。バンバリーおよびFCM素練りの条件は、例1および2中に記載した通りである。加硫試験の結果を、表12中に示した。
【0123】
【表12】

【0124】
これらの結果は、水を取り除きながらの、脱水された凝固物の素練りの量の増加は、加硫物の性能を向上させることを示している。
【0125】
例6
50phrのN120カーボンブラックを有する天然ゴムマスターバッチを、上記の方法の項に記載した湿式マスターバッチプロセスを用いて生成し、そして約13.6%の水分まで脱水した。結果として得た凝固物から3種のゴム試料を作成した(例6A〜C)。例6Aは、室温で、換気フード中で部分的に乾燥した。例6Bは、水分含量を約0.5%まで低減させながら、例2中に記載した条件下でFCFを通して材料を素練りした。例6Cは、更に、例2中で記載したように開放型混合機を更に通過させて、水分含量を約0.3%に低減させた。加硫試験からの結果を、表13中に示した。
【0126】
【表13】

【0127】
これらの結果は、水を除去しながらの、脱水した凝固物の素練りの量の増加は、より少ない程度に素練りされている材料に対して、加硫物の性能を向上させることを示している。
【0128】
例7
天然ゴムマスターバッチを、方法の項に記載した湿式のマスターバッチプロセスによって、種々の品種のカーボンブラックおよび充填量の水準(表14)を用いて、生成した。乾式配合プロセスもまた、同じ組成のゴムを作るために用いた。脱水された湿式マスターバッチ材料は、FCMおよび開放型混合機で、例2中に記載した条件下で処理した。湿式マスターバッチ配合物の加硫試験からの結果を、乾式配合プロセスによって生成された同じゴム組成からの結果と並べて、表14中に示した。湿式マスターバッチからの結果の比率が、同じ条件の乾式混合配合物からの結果に対する比率として、T300/T400に対しても得られた;同等の比率がtan δに対しても与えられた。
【0129】
【表14】

【0130】
これらの結果は、より大きなT300/T400およびより小さなtan δによって示される特性の組み合わせは、乾燥の間に適当な機械的エネルギーを用いて生成した湿式マスターバッチ材料の方が、同じ組成の乾式混合された配合物よりも、通常は実質的により優れていることを示している。
【0131】
例8
天然ゴムマスターバッチを、方法の項に記載した湿式マスターバッチプロセスによって、種々の品種のカーボンブラックおよび充填量の水準(表15)を用いて生成した。乾式配合プロセスもまた、同じ組成のゴムを作るのに用いた。脱水された湿式マスターバッチ材料は、FCMおよび開放型混合機で、下記の表15中に記載した条件下で処理した。湿式マスターバッチ配合物の加硫試験からの結果を、乾式配合プロセスによって生成された同じゴム組成からの結果と並べて、表16中に示した。湿式混合複合材からの結果の比率が、同じ条件の加硫された乾式混合複合材からの結果に対する比率として、T300/T400に対しても得られた;同等の比率がtan δに対しても与えられた。
【0132】
【表15】

【0133】
【表16】

【0134】
これらの結果は、より大きな表面積のカーボンブラック(CRX1490、STSA=174m/gおよびBP880、STSA=197m/g)であってさえも、結果として得られる配合物は、乾式混合に対して、向上した補強(T300/T400によって示される)を示している。
【0135】
例9−比較例−単一の素練り工程
フィールドラテックスおよびN120カーボンブラックで調製された天然ゴムマスターバッチを、方法の項に記載した湿式マスターバッチプロセスを用いて生成した。ゴム中のカーボンブラックの量および凝固反応器とFCMの操作条件は、表17中に示した。対照的に、例えば、表14中の例NおよびOでは、試料は、FCM中での素練りに続いて、水を除去するために更に素練りすることはしなかった。加硫試験の結果を、表17中に示した。
【0136】
【表17】

【0137】
これらの結果は、生産速度、FCM中のローターの回転速度、および運転温度を含めた生産条件の変更は、加硫されたゴム製品の性能に影響を与えることを示している。ゴム特性の更なる向上が、水を除去しながらの、材料の更なる素練りによって得られる可能性がある。
【0138】
例10
55phrのN234カーボンブラックを有する天然ゴムマスターバッチを、方法の項に記載した湿式マスターバッチプロセスを用いて生成した。脱水押出機(オハイオ州、ピクウェーのFrench Oil Mill Machinery Company)を、マスターバッチクラムを1〜3%の水分範囲とするために用いた。脱水された凝固物を、少量の酸化防止剤とともに開放型混合機に直接に供給して、そして平滑な表面が現れた時に、開放型混合機からシート化して排出した。結果として得られた加硫物についてのT300/T400の比率は約6であり、開放型混合機の前にFCMもしくはバンバリーミキサーを用いて調製した材料についての比率に匹敵しており、所望の特性を有するゴムを、素練りの方法に関わらずに生成することができることを示している。上記のように、1バンバリーサイクルを通す更なる素練りは、一部のゴム特性には不利益であり、T300/T400とtan δの両方を低下させ、過剰な素練りはゴム特性に不利益である可能性があることを示している。
【0139】
例11−電気抵抗率試験
天然ゴムマスターバッチを、方法の項に記載した湿式マスターバッチプロセスによって、種々の品種のカーボンブラックおよび充填量の水準(表18)を用いて生成した。脱水された湿式マスターバッチ材料は、FCMおよび開放型混合機で、例2中に記載した条件下で処理した。結果として得られた素練りされた凝固物を、CTV法Aを用いて処理した。種々の組成の加硫した乾式混合エラストマー複合材(表19)を、CTV比較法Aに従って調製した。
【0140】
【表18】

【0141】
【表19】

【0142】
硬化させた後に、湿式マスターバッチ材料および乾式混合材料の両方から生成したシートを、少なくとも24時間にわたり静置した。図3は、電気的試験用の試料の形状を示している。150mm掛ける70mmの寸法であるシート300を、点305に近接した4つの点で、電気接触について測定した。試料の両方の表面を、イソプロピルアルコールで払拭することによって清浄にし、それに続いてこの試料は、手袋をつけてのみ取り扱った。銀色塗料を試料の両方の末端310aおよび試料の中央付近の2つの細片310bとして塗布した。導電性塗料の中央細片310bを塗工するために型枠を用いた。塗料が乾燥した後に、この型枠は取り除いた。調製した試料を平らな、非電導性の基台上に置き、そして電流供給電極を、シートのそれぞれの末端に、金属板によって接続した。金の電極を、中央の塗料細片上に下降させ、一定の荷重を加えるバネを装填した装置を用いて、それらの最も近い端が正確に10mm離れるように間隔を置いて配置した。これらは、電圧測定用に用いた。信号発生器を、50ミリ秒間のパルス間間隔を備えた、50ミリ秒間の継続時間のパルスを加えるために用いた。電流の方向は、それぞれのパルスについて逆転させた。それぞれの連続したパルスにおいて電流を増加し、そして毎回電圧を測定した。初期の電流および電流増分の大きさは、0〜10Vの出力範囲にわたって、少なくとも50点のデータが得られるように選択した。これらの結果は、電圧が電流に比例していることを確実にするように先ず確かめた。抵抗は、次いで電圧の電流に対するプロットの直線回帰から得られた。測定された抵抗は、平均試料厚さを掛け算し、そしてその結果を、中央の電極間の距離(10mm)で割り算することによって、抵抗率に変換した。全ての配合物を3回試験し、そして平均の結果を用いた。
【0143】
図4は、デルタ(数式1を参照)に対する抵抗率の自然対数のグラフである。このグラフは、乾式混合された試料の抵抗率は、デルタによって表される、充填剤の形態および充填量に良好に相関していることを示している。更に、本発明の態様によって調製された試料の抵抗率は、一般に乾式混合されえた試料よりも高い。グラフ上に示されているデルタに対する試料の抵抗率の増加は、個々のカーボンブラック凝集体の分離は、デルタの大きい値におけるようには顕著ではないことを示している。デルタは、構造に直接に関係しており、そして充填量および表面積とは逆に関係しており、これらの変数のいずれかの1種もしくは2種以上における変化は、ゴム抵抗率の変化に寄与する可能性がある。
【0144】
例12−超小角中性子散乱(USANS)
天然ゴムマスターバッチを、方法の項に記載した湿式マスターバッチプロセスによって、種々の品種のカーボンブラックおよび充填量の水準(表20)を用いて生成した。脱水された湿式マスターバッチ材料は、FCMおよび開放型混合機で、例2中に記載した条件下で処理した。結果として得られた素練りされた凝固物を、CTV法Bを用いて処理して加硫物を生成した。
【0145】
また、表18中に記載されているような乾式配合プロセスを、表21中の配合を用いた種々の組成のゴムを作るために用いた。それぞれのバンバリー混合工程の後に、配合物を、2本ロール練り機上で、4回の切り返しと、2回の最終ロールを用いてシート化した。工程1混合と工程2混合との間の静止時間は、通常は4〜6時間であった。配合物は、次いで150℃のプレス中で、1mm厚のスペーサーを備えた金型を用いて、慣用のゴムレオメータによって定められた時間(すなわち、T90+T90の10%)、硬化させた。
【0146】
【表20】

【0147】
【表21】

【0148】
USANS測定は、BT5ビームラインが利用できる、メリーランド州、ゲーサーズバーグのNIST Center for Neutron Researchの完全結晶回折計を用いることによって実施した。散乱データは、2オングストローム波長の中性子を用いて、3×10−5/オングストローム≦Q≦5×10−4/オングストロームの範囲で、収集した。測定された垂直軸に沿った波動ベクトルの不確かさは、ΔQ=±0.117/オングストロームである。USANSデータは、Kline、J. Appl. Cry St. 、2006年、第39巻、p.895〜900に概略が述べられている手順に従って、NIST Center for Neutron Researchによって、そのウェブサイト、http://www.ncnr.nist.gov/programs/sans/data/red anal.htmlに提供されているソフトウエアパッケージを用いて、機器によってデータに持ち込まれた異常を修正し(「デスミアされ(desmeared)」)、そして絶対強度単位へと変換した。中性子散乱指数値Pは、式3に従って計算した。中性子散乱定数因子(bmedium−bCBは、3.29×1021cm−4とした。
【0149】
図5は、本発明によって調製された複合材および乾式混合複合材での充填量に対する、中性子散乱指数値のプロットを示している。この図は、本発明の例示的な態様によって調製された材料では、中性子散乱指数値は、カーボンブラックの充填量とブラック形態および用いられた充填量水準とは、比較的に非相関であることを示している。対照的に、乾式混合材料からの中性子散乱指数値は、著しく高く、そして充填量と充填剤形態で広汎に変化している。
【0150】
例13−超小角中性子散乱
50phrのN234カーボンブラックを含む天然ゴムの4種の試料を、方法の項に記載した湿式マスターバッチプロセスによって生成した。脱水された凝固物を、例2中に記載した条件の下で、FCMを通して処理した。2つの試料は、350kg/時の生産速度で処理し(図6中に四角で示されている)、そして2つを、550kg/時の生産速度で処理した(図6中に三角で示されている)。これらの対のそれぞれから1つの試料(例えば、それぞれの生産速度で生成された1つの試料)を、例2中に記載したように開放型混合機を通して処理し、2つ目の比較試料はFCMから排出されたものを用いた。結果として得られた素練りされた凝固物の4つの試料を、プレスにおいて1mm厚のスペーサーを用いた以外は、CTV法Aに従って硬化させた。
【0151】
USANSを、例12中に記載した手順に従ってこれらの4つの試料全てに実施したが、但し、中性子散乱定数因子は、硬化パッケージ中の亜鉛および硫黄の使用を考慮して、(bmedium−bCBは、3.242×1021cm−4とした。図6は、全ての4つの試料へのエネルギー投入に対する、中性子散乱指数値のプロットを示している。これらの結果は、加硫物中に亜鉛が存在していたとしても、中性子散乱は、複合材中のカーボンブラックの分散を解析するために用いることができることを示している。また、4つの試料は、例11中に記載した電気抵抗率測定を用いて評価し、同様の結果を得た(表22)。更に、これらの結果は、処理条件における差異が、ミクロ分散における変化をもたらすことを示している。すなわち、処理条件を変えることで、複合材内部のカーボンブラックの分散度が変化する。更に、素練りされた凝固物からの水分の除去を伴う、第2の素練り工程の使用は、カーボンブラックの分散に劇的な改善を与える。
【0152】
【表22】

【0153】
本発明の好ましい態様についての前述の記載は、例証と説明を目的として提供されているものである。本発明を、開示したそのままの形に網羅するか、もしくは限定することは意図していない。変更と変化は、上記の教示に照らして可能であり、または本発明の実施から得ることができる。上記の態様は、本発明の原理およびその実際的応用を説明し、当業者が、種々の態様において、そして意図される特定の用途に適合するように種々の変更を加えて、本発明を用いることを可能にするために選択され、そして記載されている。本発明の範囲は、ここに添付された特許請求の範囲およびその均等物によって規定されることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)エラストマーラテックスを含む第1の流体を、粒状充填剤を含む第2の流体と混合すること、
B)エラストマーラテックスを凝固させ、それによってマスターバッチクラムを形成すること、
C)マスターバッチクラムを約1質量%〜約20質量%の含水量にさせて、それによって脱水された凝固物を形成すること、
D)脱水された凝固物に機械的エネルギーを加えて、それによって脱水された凝固物を摩擦の結果として発熱させることによって、脱水された凝固物を約130℃〜約190℃の温度に達っせしめながら、脱水された凝固物から水を除去し、含水量を約0.5%〜約3%に低減させ、そして含水量の実質的に全ての低下は蒸発によって成し遂げられ、それによって素練りされたマスターバッチを製造すること、ならびに、
E)更に含水量を低減させながら、素練りされたマスターバッチに、少なくとも更に0.3MJ/kgの機械的エネルギーを加えること、
を含んでなるエラストマー複合材の製造方法。
【請求項2】
前記工程D)が、前記脱水された凝固物に、少なくとも約0.9MJ/kgの機械的エネルギーを加えることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記工程E)が、前記素練りされたマスターバッチに、少なくとも0.7MJ/kgの機械的エネルギーを加えることを含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記脱水された凝固物が、前記工程D)の間に、約140℃〜約160℃の温度に達する、請求項1、2または3記載の方法。
【請求項5】
前記工程C)が、前記マスターバッチクラムを、約10質量%〜約20質量%の含水量にする、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記工程D)およびE)が、独立して、前記脱水された凝固物を、連続式混合機、密閉型混合機、2軸スクリュー押出機、単軸スクリュー押出機、および開放型混合機から選ばれた少なくとも1つ装置中で処理することを含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記工程D)およびE)の1つまたは両方が、前記脱水された凝固物を前記少なくとも1つの装置中で、少なくとも2度処理することを含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
エラストマー複合材であって、
A)エラストマーラテックスを含む第1の流体を、粒状充填剤を含む第2の流体と混合すること、
B)エラストマーラテックスを凝固させ、それによってマスターバッチクラムを形成すること、
C)マスターバッチクラムを約1質量%〜約20質量%の含水量にさせて、それによって脱水された凝固物を形成すること、
D)脱水された凝固物に機械的エネルギーを加えて、それによって脱水された凝固物を摩擦の結果として発熱させることによって、脱水された凝固物を約130℃〜約190℃の温度に達っせしめながら、脱水された凝固物から水を除去し、含水量を約0.5%〜約3%に低減させ、そして含水量の実質的に全ての低下は蒸発によって成し遂げられ、それによって素練りされたマスターバッチを製造すること、ならびに、
E)更に含水量を低減させながら、素練りされたマスターバッチに、少なくとも更に0.3MJ/kgの機械的エネルギーを加えること、
を含む方法によって形成されるエラストマー複合材。
【請求項9】
前記工程D)が、脱水された凝固物に、少なくとも約0.9MJ/kgの機械的エネルギーを加えることを含む、請求項8記載のエラストマー複合材。
【請求項10】
前記工程E)が、前記素練りされたマスターバッチに、少なくとも0.7MJ/kgの機械的エネルギーを加えることを含む、請求項8または9記載のエラストマー複合材。
【請求項11】
前記脱水された凝固物が、前記工程D)の間に、約140℃〜約160℃の温度に維持される、請求項8、9または10記載のエラストマー複合材。
【請求項12】
前記工程C)が、前記マスターバッチクラムを、約10質量%〜約20質量%の含水量にする、請求項8〜11のいずれか1項記載のエラストマー複合材。
【請求項13】
前記工程D)およびE)が、独立して、前記脱水された凝固物を、連続式混合機、密閉型混合機、2軸スクリュー押出機、単軸スクリュー押出機、および開放型混合機から選ばれた少なくとも1つ装置中で処理することを含む、請求項8〜12のいずれか1項記載のエラストマー複合材。
【請求項14】
前記工程D)およびE)の1つまたは両方が、前記脱水された凝固物を前記少なくとも1つの装置中で、少なくとも2度処理することを含む、請求項13記載のエラストマー複合材。
【請求項15】
A)エラストマーラテックスを含む第1の流体の連続流れを凝固反応器の混合区域に供給すること、
B)粒状充填剤を含む第2の流体の連続流れを、圧力下で、凝固反応器の混合区域に供給して、エラストマーラテックスとの混合物を形成すること、ここで、この粒状充填剤はエラストマーラテックスを凝固するのに有効であり、そして第1の流体と第2の流体との混合区域内部への供給は、エラストマーラテックスを粒状充填剤と実質的に完全に凝固させてマスターバッチクラムを形成するのに十分に強力なものである、
C)凝固反応器からマスターバッチクラムの実質的に連続的な流れを排出すること、
D)マスターバッチクラムの含水量を、約1質量%〜約20質量%にさせ、これによって脱水された凝固物を形成すること、
E)脱水された凝固物に機械的エネルギーを加えて、それによって脱水された凝固物を摩擦の結果として発熱させることによって、脱水された凝固物を約130℃〜約190℃の温度に達っせしめ、含水量を約0.5%〜約3%に低減させながら、脱水された凝固物から水を除去し、そして含水量の実質的に全ての低下は蒸発によって成し遂げられ、それによって素練りされたマスターバッチを製造すること、ならびに、
F)更に含水量を低減させながら、素練りされたマスターバッチに、少なくとも更に0.3MJ/kgの機械的エネルギーを加えること、
を含むエラストマー複合材の製造方法。
【請求項16】
前記工程E)が、脱水された凝固物に、少なくとも約0.9MJ/kgの機械的エネルギーを加えることを含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記工程F)が、前記素練りされたマスターバッチに、少なくとも0.7MJ/kgの機械的エネルギーを加えることを含む、請求項15または16記載の方法。
【請求項18】
前記脱水された凝固物が、前記工程E)の間に、約140℃〜約160℃の温度に達する、請求項15〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記工程D)が、前記マスターバッチクラムを、約10質量%〜約20質量%の含水量にする、請求項15〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記工程E)およびF)が、独立して、前記脱水された凝固物を、連続式混合機、密閉型混合機、2軸スクリュー押出機、単軸スクリュー押出機、および開放型混合機から選ばれた少なくとも1つ装置中で処理することを含む、請求項15〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記工程E)およびF)の1つまたは両方が、前記脱水された凝固物を前記少なくとも1つの装置中で、少なくとも2度処理することを含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
A)エラストマーラテックスを含む第1の流体の連続流れを、凝固反応器の混合区域に供給すること、
B)粒状充填剤を含む第2の流体の連続流れを、圧力下で、凝固反応器の混合区域に供給して、エラストマーラテックスとの混合物を形成させてマスターバッチクラムを形成すること、ここで、この粒状充填剤はエラストマーラテックスを凝固するのに有効であり、そして第1の流体と第2の流体との混合区域内部への供給は、エラストマーラテックスを粒状充填剤と凝固反応器中で実質的に完全に凝固させるのに十分に強力なものである、
C)凝固反応器からマスターバッチクラムの実質的に連続的な流れを排出すること、
D)マスターバッチクラムの含水量を、約1質量%〜約20質量%にさせ、これによって脱水された凝固物を形成すること、
E)脱水された凝固物に機械的エネルギーを加えて、それによって脱水された凝固物を摩擦の結果として発熱させることによって、脱水された凝固物を約130℃〜約190℃の温度に達っせしめながら、脱水された凝固物から水を除去し、含水量を約0.5%〜約3%に低減させ、そして含水量の実質的に全ての低下は蒸発によって成し遂げられ、それによって素練りされたマスターバッチを製造すること、ならびに、
F)更に含水量を低減させながら、素練りされたマスターバッチに、少なくとも更に0.3MJ/kgの機械的エネルギーを加えること、
を含む方法によって製造される、エラストマー複合材。
【請求項23】
前記工程E)が、脱水された凝固物に、少なくとも約0.9MJ/kgの機械的エネルギーを加えることを含む、請求項22記載のエラストマー複合材。
【請求項24】
前記工程F)が、前記素練りされたマスターバッチに、少なくとも0.7MJ/kgの機械的エネルギーを加えることを含む、請求項22または23記載のエラストマー複合材。
【請求項25】
前記脱水された凝固物が、前記工程E)の間に、約140℃〜約160℃の温度に達する、請求項22〜24のいずれか1項記載のエラストマー複合材。
【請求項26】
前記工程D)が、前記マスターバッチクラムを、約10質量%〜約20質量%の含水量にする、請求項22〜25のいずれか1項記載のエラストマー複合材。
【請求項27】
前記工程E)およびF)が、独立して、前記脱水された凝固物を、連続式混合機、密閉型混合機、2軸スクリュー押出機、単軸スクリュー押出機、および開放型混合機から選ばれた少なくとも1つ装置中で処理することを含む、請求項22〜26のいずれか1項記載のエラストマー複合材。
【請求項28】
前記工程E)およびF)の1つまたは両方が、前記脱水された凝固物を前記少なくとも1つの装置中で、少なくとも2度処理することを含む、請求項27記載のエラストマー複合材。
【請求項29】
粒状充填剤を含む加硫された湿式混合エラストマー複合材であって、該粒状充填剤が、少なくとも約65mL/100gのCDBP値を有する少なくとも1種のカーボンブラックを含み、該加硫された湿式混合エラストマー複合材が、同じ組成を有する加硫された乾式混合エラストマー複合材のT100に対するT300の比よりも、10%超大きいT100に対するT300の比を示す、加硫された湿式混合エラストマー複合材。
【請求項30】
少なくとも1種のカーボンブラックが、少なくとも約70mL/100gのCDBP値を有している、請求項29記載の加硫された湿式混合エラストマー複合材。
【請求項31】
前記加硫された湿式混合エラストマー複合材のT100に対するT300の比が、同じ組成を有する加硫された乾式混合エラストマー複合材の同様の比よりも、約15%以上大きい、請求項29または30記載の加硫された湿式混合エラストマー複合材。
【請求項32】
A)エラストマーラテックスを含む第1の流体を、粒状充填剤を含む第2の流体と混合すること、
B)エラストマーラテックスを凝固させて、それによってマスターバッチクラムを形成すること、
C)マスターバッチクラムの含水量を、約3質量%〜約6質量%にさせ、これによって脱水された凝固物を形成すること、
D)脱水された凝固物に機械的エネルギーを加えて、それによって脱水された凝固物を摩擦の結果として発熱させることによって、脱水された凝固物を約140℃〜約190℃の温度に達っせしめながら脱水された凝固物から水を除去し、ここで含水量の実質的に全ての低下は蒸発によって成し遂げられ、それによって素練りされたマスターバッチを製造すること、ならびに、
E)更に含水量を低減させながら、素練りされたマスターバッチに、少なくとも更に0.3MJ/kgの機械的エネルギーを加えること、を含んでいる、エラストマー複合材の製造方法。
【請求項33】
前記工程C)およびD)を成し遂げるために脱水押出機を用いることを含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記工程D)の後に、素練りされたマスターバッチの水分含量が、約1〜約3%である、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記工程D)が、前記脱水された凝固物を素練りするために、密閉式混合機を用いることを含む、請求項32記載の方法。
【請求項36】
前記工程E)が、前記素練りされたマスターバッチを素練りするために、開放型混合機を用いることを含む、請求項32〜35のいずれか1項記載の方法。
【請求項37】
エラストマー中に分散した粒状充填剤を含む加硫されたエラストマー複合材であって、該粒状充填剤が、少なくとも40phrの、約165m/g〜約205m/gのSTSA値および約85mL/100g〜約110mL/100gのCDBP値を有する少なくとも1種のカーボンブラックを含み、該加硫されたエラストマー複合材が、少なくとも約5.5のT100に対するT300の比を示す、加硫されたエラストマー複合材。
【請求項38】
前記少なくとも1種のカーボンブラックが該粒状充填剤が、約95mL/100g〜約105mL/100gのCDBP値および約165m/g〜約180m/gのSTSA値を有し、そしてT100に対するT300の比が少なくとも6である、請求項37記載の加硫されたエラストマー複合材。
【請求項39】
前記粒状充填剤が、少なくとも45phrの少なくとも1種のカーボンブラックを含み、そして該少なくとも1種のカーボンブラックが、約85mL/100g〜約95mL/100gのCDBP値および約190m/g〜約205m/gのSTSA値を有している、請求項37記載の加硫されたエラストマー複合材。
【請求項40】
前記加硫されたエラストマー複合材が、湿式混合エラストマー複合材である、請求項37、38または39記載の加硫されたエラストマー複合材。
【請求項41】
天然ゴム中に分散したカーボンブラックから本質的になる湿式混合エラストマー複合材であって、該エラストマー複合材は、CTV法Aで処理され、加硫された湿式混合エラストマー複合材が、同じ組成を有し、そしてCTV比較法Aを用いて調製された架橋された乾式混合エラストマー複合材の抵抗率の自然対数よりも少なくとも約10%高い自然対数を有する抵抗率を示す、湿式混合エラストマー複合材。
【請求項42】
前記加硫された湿式混合エラストマー複合材の前記抵抗率の自然対数が、同じ組成を有し、そしてCTV比較法Aを用いて調製された架橋された乾式混合エラストマー複合材の同じ特性よりも少なくとも約15%大きい、請求項41記載の湿式混合エラストマー複合材。
【請求項43】
天然ゴム中に分散されたカーボンブラックを含むエラストマー複合材であって、該エラストマー複合材がCTV法Aを用いて処理された場合に、下記の式、
ln(抵抗率) ≧ 0.33δ+X
式中、Xは5.8であり、そして
δ=(6000[0.806φ−1/3β−1/3−1]β1.43)/ρS
ここで、
φ=複合材中のカーボンブラックの体積分率
S=窒素BET法によって測定されたカーボンブラックのm/gでの比表面積
ρ=カーボンブラック密度
β=φeff/φ、および
φeff=φ[1+(0.0181×CDBP)]/1.59
を満足する抵抗率を示す、エラストマー複合材
【請求項44】
Xが、6.2である、請求項43記載のエラストマー複合材。
【請求項45】
前記抵抗率がまた、式、
ln(抵抗率) ≧ 0.33δ+Y
を満足し、Yが9.5である、請求項43または44記載のエラストマー複合材。
【請求項46】
天然ゴム中に分散したカーボンブラックを含むエラストマー複合材であって、該エラストマー複合材をCTV法Bを用いて処理した場合に、約0.5未満の中性子散乱指数値を示す、エラストマー複合材。
【請求項47】
前記中性子散乱指数値が、約0未満である、請求項46記載のエラストマー複合材。
【請求項48】
前記中性子散乱指数値が、−0.25未満である、請求項46記載のエラストマー複合材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−511148(P2011−511148A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545872(P2010−545872)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/000732
【国際公開番号】WO2009/099623
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】