説明

エリトリトールを含有する菓子製品

本発明は、食用酸、イヌリンを基礎とするポリマー、またはイヌリンを基礎とするポリマー、カラギーナン、および少なくとも85重量%のエリトリトールを含有し、イヌリンを基礎とするポリマーとエリトリトールとの比が1/99〜15/85である、菓子製品、より具体的にはハードキャンディー、ならびにそれらの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用酸、イヌリンを基礎とするポリマー、場合によりカラギーナン、および少なくとも85重量%のエリトリトールを含有する、菓子製品、より具体的にはハードキャンディーに関する。
【背景技術】
【0002】
菓子製造における最近の進展は、カロリー量が減少されており、そして虫歯を引き起こす傾向がより低い製品を提供するための、糖アルコール(ポリオール)の一部または全部の置換である。菓子の製造に提案されてきたポリオールの中には、イソマルト、マルチトール、キシリトール、エリトリトール、およびこれらの混合物がある。
【0003】
特許文献1には、糖アルコール混合物のマルチトール含有量が、乾燥物質を基準として77重量%より大きいが、86重量%より小さいことを特徴とするハードキャンディーの製造方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、水素化イソマルツロース(=イソマルト)を基礎とするハード菓子(hard confection)が記載されている。
【0005】
特許文献3には、エリトリトールと、エリトリトール以外の糖類および糖アルコール類から選択される糖類とを含むハードキャンディー、ならびに該ハードキャンディーを製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第0533334号
【特許文献2】米国特許4,971,798号
【特許文献3】米国特許4,883,685号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ポリオール類を基礎とし、砂糖を含まない菓子製品、より具体的にはハードキャンディーを有することに対するさらなる需要がなおも存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、食用酸、イヌリンを基礎とするポリマーおよび少なくとも85重量%のエリトリトールを含有し、イヌリンを基礎とするポリマーとエリトリトールとの比が1/99〜15/85である、菓子製品、より具体的にはハードキャンディーに関する。より具体的には、本発明は、イヌリンを基礎とするポリマー、85〜98重量%のエリトリトール、食用酸およびフレーバー類からなるハードキャンディーに関する。
【0009】
さらに、本発明は、エリトリトール含有混合物であって、乾燥物質がイヌリンを基礎とするポリマーおよび少なくとも85重量%のエリトリトールを含有している混合物を、120〜160℃の温度で加熱することによってハードキャンディーを製造する方法に関する。
【0010】
本発明は、食用酸、イヌリンをベースとするポリマーおよび少なくとも85重量%のエリトリトールを含み、イヌリンをベースとるすポリマーとエリトリトールとの比が1/99〜15/85であって、好ましくはエリトリトールが少なくとも90重量%の量で存在する、菓子製品、好ましくはハードキャンディーに関する。
【0011】
本発明の範囲内における菓子製品には、粒状製品、例えばハードキャンディー類、ブリトル、キャラメルおよびタフィー、好ましくはハードキャンディー類が含まれる。
【0012】
イヌリンを基礎とするポリマーは、イヌリンに関連するポリマーの種類である。イヌリン自体は約100年間にわたって植物から抽出されてきた。イヌリンは、種々の分子量または重合度(DP)を有する多糖類の混合物から構成される。一般に、イヌリンは、ベータ1−2結合を有するフルクトース単位からなり、末端にグルコース単位を有する。フルクトース単位の付加または削減は、イヌリンの分子量または重合度(DP)に影響を及ぼす。イヌリンは、種々の植物、例えばアガーベ、チコリ根、ダリア塊茎、エルサレム・アンティチョークおよびサルシファイにおける主要な炭水化物である。栽培および回収の容易さから、今日では、チコリがイヌリンの主要な供給源となっている。米国特許第7,045,166号はさらに、少なくとも2種、好ましくは少なくとも3種、望ましくは少なくとも4種の異なる多糖類であって、それぞれが約2288以下の範囲の異なる分子量を有する多糖類を含有するイヌリンの新規画分を開示しており、前記画分は、2288を越える分子量を有する多糖類が25重量%未満であり、改善された水溶性および/または水混和性を示す。これらの全てのタイプの多糖類が、本発明に使用できる好適なイヌリンを基礎とするポリマーである。
【0013】
カラギーナンは、紅藻類からアルカリ抽出によって調製される多糖類の総称である。カラギーナンの基本構造は、交互の3結合−β−D−ガラクトピラノース(=ガラクトース)および4結合−α−D−ガラクトピラノース単位からなる。カラギーナンの基本構造の規則的な骨格構造は、スルファートエステル基のおおよそ秩序正しい分布によって破壊される。カラギーナンはまた、いくつかのメトキシおよびピルビン酸基を含むことができる。カラギーナンは、約25,000個のガラクトース誘導体の直鎖状ポリマーである。カラギーナン分子の3つの主要なタイプ(イオタ、カッパおよびラムダ)は、(1)ガラクトース単位間の結合のタイプおよび(2)スルファート基のガラクトース単位への結合点によって相違する。これらの一見小さな化学的構成および構造の相違が、各タイプの分子の特性を大きく相違させる。
【0014】
エリトリトールは、炭水化物を基礎とするポリオール、すなわち、化学式C10で表されるテトリトールであり、これは白色結晶の形態にある優れた外観を有し、グラニュー糖、ショ糖の外観と類似する。これは非消化性であり、カロリーがゼロであり、非う蝕性である。
【0015】
菓子製品におけるイヌリンを基礎とするポリマーとエリトリトールとの比は、1/99〜15/85、好ましくは1/99〜1/90、より好ましくは2/98〜8/92、さらに好ましくは2.5/97.5〜7/93であり、エリトリトールは、菓子製品の乾燥重量を基準として少なくとも85%、好ましくは90%で存在する。
【0016】
さらに、菓子製品、特にハードキャンディーは、食用酸を含んでいる。好適な酸は、リンゴ酸、フマル酸、乳酸、酒石酸、グルコノデルタラクトン、グルコン酸の塩、リン酸、コハク酸、アジピン酸、アスコルビン酸、酢酸、クエン酸、およびこれらのうちの2種またはそれ以上の混合物、からなる群から選択される。前記酸は、菓子製品の乾燥物質を基準とした量において、0.2〜4%、好ましくは0.2〜2%、より好ましくは0.2〜0.5%の量で添加される。
【0017】
さらに、カラギーナンが、菓子製品がなおも、菓子の乾燥重量を基準として少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%のエリトリトールを含有しているような量で添加される。
【0018】
菓子製品、特にハードキャンディーはさらに、フレーバー、高甘味度甘味料および/または着色剤を含んでいる。
【0019】
フレーバーは、ミントフレーバー、チョコレートミントフレーバー、バブルガムフレーバー、アップルスパイスフレーバー(apple spice flavour)、ブラックチェリーフレーバー、パイナップルフレーバー、コーラフレーバー、グレーププレーバー、チェリーフレーバー、アップルフレーバーおよびシトラスフレーバー類、例えば、オレンジフレーバー、レモンフレーバー、ライムフレーバー、フルーツポンチ、およびこれらのうちの2種またはそれ以上の混合物から選択される。好ましいフレーバーは、チョコレートミント、バブルガム、アップルスパイス、ブラックチェリーおよびパイナップルである。フレーバーの量は、選択されるフレーバーまたは複数のフレーバー、所望のフレーバーインプレッション(flavor impression)および使用するフレーバーの形態に依存する。
【0020】
非栄養性甘味料として使用できる高甘味度甘味料は、アスパルテーム、アセスルファム塩、例えばアセスルファムK、サッカリン類(例えばナトリウムおよびカルシウム塩)、シクラマート類(例えば、ナトリウムおよびカルシウム塩)、スクラロース、アリターム、ネオターム、ステビオシド類、グリシルリジン、ネオヘスペリジン、ジヒドロカルコン、モネリン、タウマチン、ブラゼイン、これらのうちの2種またはそれ以上の混合物等からなる群から選択することができる。実際には、他の任意の天然由来の高甘味度甘味料も同様に好適である。
【0021】
必要に応じて、着色剤も同様に添加することができる。食品用途に承認されたいずれの水溶性の着色剤も本発明に使用することができる。
【0022】
本発明は、120〜160℃の温度でエリトリトール含有混合物を加熱することによってハードキャンディーを製造する方法であって、乾燥物質がイヌリンを基礎とするポリマーおよび少なくとも85重量%のエリトリトールを含有している方法に関する。
【0023】
上記方法はさらに、加熱時間の最後に0.6〜0.8barの真空を適用することを特徴とする。
【0024】
最後に、本発明は、イヌリンを基礎とするポリマーおよび少なくとも85重量%のエリトリトールを含有するドライミックスであって、イヌリンを基礎とするポリマーとエリトリトールとの比が1/99〜15/85であるドライミックス、または、カラギーナンおよび/または食用酸をさらに含有するドライミックスに関する。カラギーナンは、菓子製品がなおも菓子の乾燥重量を基準として少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%のエリトリトールを含有するような量で添加される。食用酸は、菓子製品の乾燥物質を基準とした量において、0.2〜4%、好ましくは0.2〜2%、より好ましくは0.2%〜0.5%の量で添加される。
【0025】
最後に、前記菓子製品、特にハードキャンディーは、砂糖不含であり、カロリーがゼロであり、そして、天然(natural)および/または有機(organic)と明示することができる。
【0026】
一様でない結晶化、一様でない表面、粒の多いザラザラしたテクスチャーおよび脆性などの不利な点が、本発明の菓子製品によって克服される。
【0027】
以下において、下記の実施例の形態で本発明を例証する。
【実施例】
【0028】
分析方法
テクスチャー分析をTexture Technologies Corp製の装置TA−XT2iテクスチャーアナライザーにおいて実施した。プログラムの設定は以下のとおりである:
TAモード:圧縮時の力の測定
TAオプション:開始に戻る(Return to Start)
プレテスト速度:1.0mm/s
テスト速度:5.0mm/s
ポスト速度:10.0mm/s
試験距離:4.0mm
トリガー値: 5g
PPS: 400.00
プローブ:25kgロードセルを用いるP0.5HS 1/2”半球状プラスチック
アクセサリー:Heavy Duty Platform(HDP/90)
結果:力(硬度)
距離(破断性(Fracturability))
サンプル調製:全てのサンプルは常温の温度(21〜24℃)で保持し、プラスチックの保存用バッグに保管し、試験に先立ってバッグから取り出した。全てのサンプルがそれぞれ±3.7gの重さであった(特記しない限り各バッチから5つのサンプルを測定した。)
試験の設定:HDP/90を機械の基板上に配置した。サンプルの試験に先立ってプローブを較正する。サンプルをHDP/90のブランクプレート上に、プローブ下の中心の位置に定置した。試験を開始する。
【0029】
2つの特性、すなわち硬度(hardness)および破断性(fracturability)をテクスチャーアナライザーで試験した。以下が硬度および破断性に関してのTexture Technologyによる定義である。
【0030】
硬度は、キャンディーの最初の圧縮のピークの力である。
【0031】
全ての製品が破損するするとは限らないが、破損した場合には、破断点(製品のプローブでの最初の圧縮の間にプロットがその最初の顕著なピークを有する)が生じる。
【0032】
硬度および破断性は2つの完全に異なるパラメーターであり、互いに比較できるものではない。
【0033】
<実施例1>
処方
91.9重量% エリトリトール(Cargill 16961)
7.5重量% イヌリン(Cargill F97)
0.3重量% バブルガムフレーバー
0.3重量% クエン酸
0.01重量% 着色剤
【0034】
調理法
200エリトリトール含有混合物(エリトリトールおよびイヌリン)を、水の添加なしで、加熱プレート上の調理容器に入れた。該ドライブレンドを130℃に、前記混合物が液化するまで加熱する。
【0035】
成形−充填法(Shaping−Depositing method)
フレーバー、酸および着色剤を最終段階で0.6〜0.8barの真空で混合した。熱塊(hot mass)をテフロンコーティングされたアルミニウム型に入れ、冷却し、さらに引き続いて型から取り出した。
【0036】
【表1】

【0037】
解析結果は、ハードキャンディーが固いテクスチャーを有し、容易に割れないことを示した。
【0038】
<実施例2>
処方
97.9重量% エリトリトール(Cargill 16961)
2.0重量% イヌリン(Cargill DS2)
0.1重量% カラギーナン(Cargill)
0.3重量% バブルガムフレーバー
0.3重量% クエン酸
0.01重量% 着色剤
【0039】
調理法
200エリトリトール含有混合物(エリトリトール、イヌリンおよびカラギーナン)を、水の添加なしで、加熱プレート上の調理容器に入れた。該ドライブレンドを130℃に、前記混合物が液化するまで加熱する。
【0040】
成形−充填法
フレーバー、酸および着色剤を最終段階で0.6〜0.8barの真空で混合した。熱塊をテフロンコーティングされたアルミニウム型に入れ、冷却し、さらに引き続いて型から取り出した。
【0041】
解析結果は、ハードキャンディーが非常に固いテクスチャーを有し、容易に割れないことを示した。
【0042】
<実施例3 種々の酸>
処方
98.5重量% エリトリトール(Cargill 16961)
1.0重量% イヌリン(Cargill DS2)
0.3重量% バブルガムフレーバー
0.5重量% 酸
0.01重量% 着色剤
【0043】
調理法
200エリトリトール含有混合物(エリトリトールおよびイヌリン)を、水の添加なしで、加熱プレート上の調理容器に入れた。該ドライブレンドを130℃に、前記混合物が液化するまで加熱する。
【0044】
成形−充填法3A
フレーバー、グルコノラクトンおよび着色剤を最終段階で0.6〜0.8barの真空で混合した。熱塊をテフロンコーティングされたアルミニウム型に入れ、冷却し、さらに引き続いて型から取り出した。
【0045】
成形−充填法3B
フレーバー、アスコルビン酸および着色剤を最終段階で0.6〜0.8barの真空で混合した。熱塊をテフロンコーティングされたアルミニウム型に入れ、冷却し、さらに引き続いて型から取り出した。
【0046】
両方の方法(3Aおよび3B)とも非常に硬いキャンディーが得られた。
【0047】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用酸、イヌリンを基礎とするポリマーおよび少なくとも85重量%のエリトリトールを含有するハードキャンディーであって、イヌリンを基礎とするポリマーとエリトリトールとの比が1/99〜15/85であるハードキャンディー。
【請求項2】
さらにカラギーナンを含む、請求項1記載のハードキャンディー。
【請求項3】
さらにフレーバー、高甘味度甘味料および/または着色剤を含んでいる、請求項2記載のハードキャンディー。
【請求項4】
イヌリンを基礎とするポリマー、85〜98重量%のエリトリトール、食用酸およびフレーバー類からなる、請求項1記載のハードキャンディー。
【請求項5】
エリトリトール含有混合物を120〜160℃の温度で加熱することによって、ハードキャンディーを製造する方法であって、乾燥物質がイヌリンを基礎とするポリマーおよび少なくとも85重量%のエリトリトールを含有している方法。
【請求項6】
加熱時間の最後に0.6〜0.8barの真空を適用する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
イヌリンを基礎とするポリマーおよび少なくとも85重量%のエリトリトールを含有するドライミックスであって、イヌリンを基礎とするポリマーとエリトリトールとの比が1/99〜15/85であるドライミックス。
【請求項8】
さらにカラギーナンを含む、請求項7記載のドライミックス。
【請求項9】
さらに食用酸を含む、請求項7記載のドライミックス。


【公表番号】特表2013−506402(P2013−506402A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531277(P2012−531277)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005904
【国際公開番号】WO2011/038882
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(397058666)カーギル インコーポレイテッド (60)
【Fターム(参考)】