説明

エルタペネムの中間体、エルタペネムを含む組成物およびそれらの調製方法

本発明は、式2aのエルタペネムの中間体(式中、Npは(I)又は(II)を表し、PおよびPはカルボキシル保護基を表す)及び該中間体の調製方法である。本発明の方法により調製される固体形態の化合物2aは、非晶質である。また、本発明は、少なくとも95%の式2aのエルタペネムの中間体を含む組成物に関する。
【化1】


【化2】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エルタペネムの中間体、エルタペネムを含む組成物およびそれらの調製方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
下記の式(1)のエルタペネムは(4R,5R,6S)−3−[(3S,5S)−5−[(3−カルボキシフェニル)アミノ]ホルミル]−ピロリジン−3−イル]チオ−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−メチル−7−オキソ−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタ−2−エン−2−カルボキシラートの化学名を有し、MerckおよびAstrazenecaによって共同開発された新しいカルバペネム系抗生物質であり、グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌に対する良好な抗菌活性を有する。
【化1】

【0003】
エルタペネムは、下記の式(2)のエルタペネムの中間体を脱保護することによって得られる。
【化2】

式中、Npは
【化3】

を表す;
およびPはカルボキシル保護基を表す;かつ、Pは、カルボキシル保護基、HまたはNaを表す。
【0004】
化合物2は典型的には、カルバペネム母体核3を塩基の存在下でエルタペネムの側鎖4と縮合することによって調製される。この合成経路が下記のスキーム1に示される:
【化4】

【0005】
米国特許第5,478,820号(A)は、P、PおよびPがすべてアリルである化合物2、または、PおよびPがp−ニトロベンジル(これは以降、PNBとして示される)であり、かつ、Pがアリルである化合物2、ならびに、それらの調製方法を開示する。
【0006】
米国特許第6504027号(B1)は、カルバペネム母体核3(PがPNBである)をエルタペネムの側鎖4(NPが
【化5】

であり、かつ、PがHである)と縮合すること、および、水素化分解による脱保護を含む、エルタペネムナトリウムを製造するためのワンポットプロセスを提供する。国際公開第02/057266号パンフレットおよび国際公開第03/026572号パンフレットにより、類似したプロセスが報告された。
【0007】
国際公開第98/02439号パンフレットは、カルバペネム母体核3(PがPNBである)を、98%を超える変換率で塩基(例えば、ジイソプロピルアミンなど)の存在下でエルタペネムの側鎖4(PがPNBであり、かつ、PがHである)と縮合することを含む、PおよびPがともにPNBであり、かつ、PがHである化合物2を製造するためのプロセスを提供する。しかし、後処理および得られる生成物が国際公開第98/02439号パンフレットでは報告されなかった。
【0008】
国際公開第2008/062279号パンフレットは、PおよびPがともにPNBであり、かつ、PがHまたはNaである化合物2を製造するためのプロセスを提供する。PがHである化合物2の後処理のために、反応混合物が、緩衝溶液(pH=7)または水、あるいは、緩衝溶液(pH=7)(または水)と、酢酸エチルとの混合物に注がれ、化合物2がその後の処理の後で得られた。前者の状況については、前者の状況は生成物の接着を容易にもたらし、したがって、生成物の後処理における様々な困難および不良な純度(90%未満)を生じさせることとなり、一方、後者の状況については、生成物を固体の形態で得ることができず、また、このプロセスは有機溶媒の使用のために環境保護に反した。この特許出願は生成物の物理化学的性質を提供しておらず、また、生成物の構造確認を行っていない。この特許出願はまた、PがNaである化合物2およびその非晶質形態を製造するためのプロセスを報告する。ナトリウム源の導入はその後の反応における無機塩の総量の増大をもたらし、したがって、後処理を容易に行うことができず、このことは生成物の結晶化に不利である。
【0009】
したがって、PがHである化合物2の物理化学的性質に関して先行技術では何ら報告されておらず、また、PがHである化合物2を先行技術によって高純度で得ることができない。すなわち、先行技術を使用して、PがHである化合物2を得ることができず、したがって、構造確認および物理化学的性質の測定を行うことができない。
【発明の概要】
【0010】
エルタペネムに関する研究において、本発明者らが、高い純度および良好な貯蔵安定性を有する、非晶質形態における式2aのエルタペネムの中間体を得たこと、そして、使用された調製方法が工業化のために容易かつ良好であることは驚くべきことである。
【0011】
したがって、1つの局面において、本発明は、下記の式2aのエルタペネムの中間体、好ましくは、非晶質形態における下記の式2aのエルタペネムの中間体を提供する:
【化6】

式中、Npは
【化7】

を表し、PおよびPはカルボキシル保護基を表す。
【0012】
(発明の詳細な説明)
カルボキシル保護基は、アリルまたは置換アリル、ベンジルまたは置換ベンジル、置換エチル、置換シリル、芳香族環によって置換されたメチル、フェニルまたは置換フェニル、アセトニル、t−ブチル、および、当業者によって知られている他の好適なカルボキシル保護基からなる群から選択される。
【0013】
好ましくは、置換アリルは2−クロロアリルである。
【0014】
好ましくは、置換ベンジルは、ニトロによって置換されたベンジル、および、メトキシルによって置換されたベンジルから選択される。
【0015】
好ましくは、ニトロによって置換されたベンジルはp−ニトロベンジルである。
【0016】
好ましくは、置換エチルは、2,2,2−トリクロロエチル、2−ブロモエチルおよび2−(トリメチルシリル)エチルから選択される。
【0017】
好ましくは、芳香族環によって置換されたメチルは、2−メナフチル(menaphthyl)、ベンズヒドリル、トリチルおよび4−ピリジルメチルから選択される。
【0018】
好ましくは、置換シリルは、トリメチルシリル、t−ブチル−ジメチルシリルおよびt−ブチル−ジフェニルシリルから選択される。
【0019】
好ましくは、置換フェニルはp−メチルフェニルである。
【0020】
好ましくは、式2aのエルタペネムの中間体には、下記の化合物が含まれる:
(4R,5R,6S)−3−[(3S,5S)−5−[(3−カルボキシフェニル)カルバモイル]−N−(p−ニトロベンジルオキシカルボニル−ピロリジン−3−イル]チオ−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−メチル−7−オキソ−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタ−2−エン−2−カルボン酸p−ニトロベンジル、
(4R,5R,6S)−3−[(3S,5S)−5−[(3−カルボキシフェニル)カルバモイル]−ピロリジン塩酸塩−3−イル)チオ−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−メチル−7−オキソ−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタ−2−エン−2−カルボン酸p−ニトロベンジル、
(4R,5R,6S)−3−[(3S,5S)−5−[(3−カルボキシフェニル)カルバモイル]−N−(o−ニトロベンジルオキシ)カルボニル−ピロリジン−3−イル]チオ−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−メチル−7−オキソ−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタ−2−エン−2−カルボン酸o−ニトロベンジル、
(4R,5R,6S)−3−[(3S,5S)−5−[(3−カルボキシフェニル)カルバモイル]−N−(p−メトキシベンジルオキシカルボニル−ピロリジン−3−イル]チオ−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−メチル−7−オキソ−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタ−2−エン−2−カルボン酸p−メトキシベンジル、
(4R,5R,6S)−3−[(3S,5S)−5−[(3−カルボキシフェニル)カルバモイル]−N−(アリルオキシカルボニル−ピロリジン−3−イル)チオ−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−メチル−7−オキソ−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタ−2−エン−2−カルボン酸アリルメチル、
(4R,5R,6S)−3−[(3S,5S)−5−[(3−カルボキシフェニル)カルバモイル]−N−(2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニル−ピロリジン−3−イル)チオ−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−メチル−7−オキソ−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタ−2−エン−2−カルボン酸2,2,2−トリクロロエチル、
(4R,5R,6S)−3−[(3S,5S)−5−[(3−カルボキシフェニル)カルバモイル]−N−(ベンズヒドリルオキシカルボニル−ピロリジン−3−イル)チオ−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−メチル−7−オキソ−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタ−2−エン−2−カルボン酸ベンズヒドリル、
(4R,5R,6S)−3−[(3S,5S)−5−[(3−カルボキシフェニル)カルバモイル]−N−(トリメチルシリルオキシカルボニル−ピロリジン−3−イル)チオ−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−メチル−7−オキソ−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタ−2−エン−2−カルボン酸トリメチルシリル、
(4R,5R,6S)−3−[(3S,5S)−5−[(3−カルボキシフェニル)カルバモイル]−N−(t−ブチルオキシカルボニル−ピロリジン−3−イル)チオ−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−メチル−7−オキソ−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタ−2−エン−2−カルボン酸t−ブチル。
【0021】
より好ましくは、式2aのエルタペネムの中間体には、
(4R,5R,6S)−3−[(3S,5S)−5−[(3−カルボキシフェニル)カルバモイル]−N−(4−ニトロベンジルオキシカルボニル−ピロリジン−3−イル]チオ−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−メチル−7−オキソ−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタ−2−エン−2−カルボン酸p−ニトロベンジル、および、
(4R,5R,6S)−3−[(3S,5S)−5−[(3−カルボキシフェニル)カルバモイル]−ピロリジン塩酸塩−3−イル]チオ−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−メチル−7−オキソ−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタ−2−エン−2−カルボン酸p−ニトロベンジル
が含まれる。
【0022】
別の局面において、本発明は、式2aのエルタペネムの中間体、具体的には、非晶質形態における式2aのエルタペネムの中間体を調製するための方法を提供する。本発明の方法は、式3のカルバペネム母体核を式4aのエルタペネムの側鎖と縮合することを含み、反応が終了したとき、反応混合物が、式2aの化合物を固体として生じさせるために酸水溶液に注がれることにおいて特徴づけられる。
【0023】
本発明による式4aのエルタペネムの側鎖は下記の構造を有する:
【化8】

式中、Npは
【化9】

を表し、かつ、Pはカルボキシル保護基を表す。
【0024】
カルバペネム母体核3の調製が、例えば、J.Am.Chem.Soc.、1980、102、6161〜6163において開示される(これは参照によって本明細書中に組み込まれる)。
【0025】
エルタペネムの側鎖4aの調製は、例えば、国際公開第98/02439号パンフレット、および、J.Org.Chem、2002、67、4771〜4776において開示される(これは参照によって本明細書中に組み込まれる)。
【0026】
酸が、無機酸、有機酸、または、それらの任意の組合せから選択され、この場合、酸は任意の好適な濃度で存在する。
【0027】
好ましくは、無機酸は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウムまたはそれらの任意の組合せから選択される。
【0028】
より好ましくは、無機酸は、塩酸、硫酸、リン酸、リン酸二水素ナトリウムまたはそれらの任意の組合せから選択される。
【0029】
1つの好ましい実施形態において、無機酸は塩酸である。
【0030】
1つの好ましい実施形態において、無機酸は硫酸である。
【0031】
1つの好ましい実施形態において、無機酸はリン酸である。
【0032】
好ましくは、有機酸は、ギ酸、酢酸、プロパン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、安息香酸、シュウ酸、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸またはそれらの任意の組合せから選択される。
【0033】
より好ましくは、有機酸は、酢酸、p−トルエンスルホン酸またはそれらの任意の組合せから選択される。
【0034】
酸水溶液のpH値が2〜6である。
【0035】
好ましくは、酸水溶液のpH値が2〜5である。
【0036】
より好ましくは、酸水溶液のpH値が2.5〜4.5である。
【0037】
さらに好ましくは、酸水溶液のpH値が2.5〜4である。
【0038】
最も好ましくは、酸水溶液のpH値が3〜4である。
【0039】
さらなる局面において、本発明は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の、式2aのエルタペネムの中間体、好ましくは、非晶質形態における式2aのエルタペネムの中間体と、残部としての不純物とを含む組成物を提供する。不純物には、未反応の式4aのエルタペネムの側鎖、原料および分解生成物などが含まれる。
【0040】
本発明による方法については、後処理において、使用される溶媒が水であり、その結果、有機溶媒が避けられ、したがって、本発明による方法は経済的であり、かつ、環境に優しい;生成物が遊離酸の形態で得られ、それにより、無機塩の導入を減らし、したがって、後続反応の処理のために良好である;生成物が非晶質形態であり、固体は高い純度を有し、易流動性であり、直ちに貯蔵可能であり、また、その後の脱保護反応の処理のために良好である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例1で得られる化合物2aの粉末X線回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明が、下記の実施例との組合せでさらに記載される。しかしながら、下記の実施例は本発明を限定しない。
【0043】
装置および試験条件:
1.粉末X線分析
装置:Rigaku D/MAX2550 X線回折計
走査条件:5°〜80°/ステップ長:0.02°/消費時間:0.12秒、Cu(40KV、150mA)、I(最大)282(最強ピークに対するピーク強度I=282)(カウント/秒)。
【0044】
2.HPCL分析
装置:Agilent1100シリーズ
カラム:Gemini C18(5μ、250×4.6mm)
試験条件:波長:230nm;移動相:0.05%リン酸塩水溶液/アセトニトリル=40:60(v/v)。
【0045】
3.H−NMR分析
装置:BRUKER AVANCE II 500MHz NMR分析計
溶媒:DMSO−d
【0046】
4.MS分析
装置:Applied Biosystems API4000 LC−MS
試験条件:陽イオンのALLSACAN MODE(ESIイオン源)、MW範囲:100〜1500amu、カーテンガス(CUR):25L/分、シースガス(Gs1):35L/分、補助ガス(Gs2):45L/分、イオン源(IS)電圧:5000V、イオン源温度:500℃、脱クラスター化電位(DP):40V、および、衝突室進入電位(EP):10V。
移動相:0.5%のギ酸:メタノール(50:50、v/v)を含有する2mM酢酸アンモニウム水溶液。
【0047】
具体的に示されない限り、上記試験を製造者の推奨プログラムに従って行った。
【0048】
実施例1:Npが
【化10】

を表し、かつ、PおよびPがともにPNBである化合物2aの調製
36.0g(0.0605mmol)のカルバペネム母体核3(PがPNBである)を300mlのDMFに溶解し、その後、26.7g(0.0599mol)のエルタペネムの側鎖4a(PがPNBである)を加えた。反応混合物に、9.4g(0.0727mol)のN,N−ジイソプロピルエチルアミンを−35℃でゆっくり加えた。反応を撹拌下で行った。反応が完了したとき、反応混合物をHCl水溶液(pH=4)に注ぎ、ろ過し、46.6gの固体を白色または灰白色の粉末として得た。純度:98.2%(HPLCによる)。収率:98.5%。得られた固体を粉末X線回折によって分析した。結果は、固体が非晶質形態であったことを示した。図1は生成物の粉末X線回折パターンである。H−NMR(DMSO−d): δ1.18(d, 3H); 1.20(d, 3H); 1.95(m, 1H); 2.81(m, 1H); 3.18−3.47(m, 3H); 3.60−4.50(m, 6H); 5.04−5.44(m, 5H); 7.30−8.30(m, 12H); 10.27(d, 1H)。
MS: 788.9(M−1), 812.7(M+Na).
【0049】
実施例2:Npが
【化11】

を表す化合物2aの調製
式3のカルバペネム母体核(PがPNBを表す)およびエルタペネムの側鎖4a(Npが
【化12】

を表す)を反応物として使用したことを除いて、実施例1の調製方法を使用した。白色または灰白色の粉末としての38.4gの固体を得た。純度:98.0%(HPLCによる)。収率:98.3%。得られた固体を粉末X線回折によって分析した。結果は、固体が非晶質形態であったことを示した。
MS:645.2(M−1)、669.1(M+Na)。
【0050】
実施例3〜9;Npが
【化13】

を表し、かつ、PおよびPが他のカルボキシル保護基を表す化合物2aの調製
カルバペネム母体核3およびエルタペネムの側鎖4a(Npが
【化14】

を表す)を反応物として使用したことを除いて、実施例1の調製方法を使用した。ただし、PおよびPがともに、o−ニトロベンジル、p−メトキシルベンジル、アリル、2,2,2−トリクロロエチル、ベンズヒドリル、トリメチルシリルおよびt−ブチルである。結果を表1に示す。
【表1】

【0051】
結論:本発明の調製方法を使用する場合、様々な保護基を有するカルバペネム母体核3およびエルタペネムの側鎖4aの縮合により、非晶質形態における固体を得ることができる。
【0052】
実施例10〜17:生成物に対する酸の濃度の影響
HCl水溶液のpH値を、2、2.5、3、3.5、4.5、5、5.5および6に変化させたことを除いて、実施例1の調製方法を使用した。実験の結果を表2に示す。
【表2】

【0053】
結論:生成物の収率および純度がともに97%を超えるので、HCl水溶液の2〜5のpH値が酸の好ましい濃度である。HCl水溶液のpH値が2.5〜4.5の範囲にあるとき、生成物の収率および純度がともに98%を超える。
【0054】
実施例18〜22 生成物に対する酸の種類の影響
硫酸、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、酢酸およびp−トルエンスルホン酸が塩酸の代わりに使用されたことを除いて、実施例1の調製方法を使用した。結果を表3に示す。
【表3】

【0055】
結論:種々の種類の無機酸および有機酸を本発明において使用することができ、得られた生成物の収率および純度がともに96%を超える。
【0056】
比較例:関連特許の国際公開第2008062279号パンフレットにおける化合物2a(PおよびPがともにPNBである)の様々な例の実験結果
比較例1:国際公開第2008062279号パンフレットの実施例1の実験結果
8.3gのエルタペネムの側鎖4a(Npが
【化15】

を表し、かつ、PがPNBである)を30mLのDMFに溶解し、これに10gのカルバペネム母体核3(PがPNBである)を加えた。反応混合物に、5.4gのジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を−30℃で加え、撹拌した。反応が完了したとき、反応混合物を60mLのTHFにより希釈し、緩衝溶液(pH=7)と、300mLの酢酸エチルとの混合物に注いだ。有機層を分離し、ろ液をNaCl水溶液により洗浄し、活性炭により処理した。溶媒を40℃における減圧下での濃縮によって除いた。残渣を50mLの酢酸エチルとともに撹拌した。固体が何ら沈殿しなかった。
【0057】
比較例2:国際公開第2008062279号パンフレットの実施例3の実験結果
8.3gのエルタペネムの側鎖4a(Npが
【化16】

を表し、かつ、PがPNBである)を30mLのDMFに溶解し、これに10gのカルバペネム母体核3(PがPNBである)を加えた。反応混合物に、5.4gのジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を−30℃で加え、撹拌した。反応が完了したとき、反応混合物を水に注ぎ、撹拌した。生成物が接着して、球状化した。減圧下でろ過した後、得られた固体は洗浄が困難であった。固体を乾燥し、純度を求めた。純度は(HPLCにより)86%であった。再結晶を、1種類またはそれ以上の溶媒系(例えば、エステル、ケトン、ハロ炭化水素、アルカン、芳香族炭化水素、アルコール、エーテル、非プロトン性溶媒および水など)を使用して行った。固体が何ら沈殿しなかった。
【0058】
結論:国際公開第2008062279号パンフレットの実施例1および実施例3に開示される調製方法によって、固体を何ら得ることができなかったか、または、得られた固体は、貯蔵には適していない不良な純度を有し、構造確認のために使用することができないことが、比較例1および比較例2の結果から理解することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質形態における下記の式2aのエルタペネムの中間体:
【化1】

(式中、Npは
【化2】

を表し、かつ、
およびPはカルボキシル保護基を表す)。
【請求項2】
前記カルボキシル保護基が、アリルまたは置換アリル(好ましくは2−クロロアリル)、ベンジルまたは置換ベンジル(好ましくは、ニトロによって置換されたベンジル、および、メトキシルによって置換されたベンジル)、置換エチル(好ましくは、2,2,2−トリクロロエチル、2−ブロモエチル、2−トリメチルシリルエチル)、置換シリル(好ましくは、トリメチルシリル、t−ブチル−ジメチルシリル、t−ブチル−ジフェニルシリル)、芳香族環によって置換されたメチル(好ましくは、2−メナフチル(menaphthyl)、ベンズヒドリル、トリチル、4−ピリジルメチル)、フェニルまたは置換フェニル(好ましくはp−メチルフェニル)、アセトニルおよびt−ブチルからなる群から選択される、請求項1に記載のエルタペネムの中間体。
【請求項3】
Npが、
【化3】

を表し、PおよびPがともに、p−ニトロベンジル、o−ニトロベンジル、p−メトキシベンジル、アリル、2,2,2−トリクロロエチル、ベンズヒドリル、トリメチルシリル、t−ブチルであり、好ましくは、PおよびPがともにp−ニトロベンジルである、請求項1に記載のエルタペネムの中間体。
【請求項4】
Npが、
【化4】

を表し、かつ、Pが、p−ニトロベンジル、o−ニトロベンジル、p−メトキシベンジル、アリル、2,2,2−トリクロロエチル、ベンズヒドリル、トリメチルシリル、t−ブチルを表し、好ましくは、Pがp−ニトロベンジルを表す、請求項1に記載のエルタペネムの中間体。
【請求項5】
下記の式2aのエルタペネムの中間体:
【化5】

(式中、Npは
【化6】

を表し、PおよびPはカルボキシル保護基を表す)
を調製するための方法であって、
下記の式3のカルバペネム母体核:
【化7】

(式中、Pはカルボキシル保護基を表す)
を下記の式4aのエルタペネムの側鎖:
【化8】

(式中、Npは
【化9】

を表し、かつ、Pはカルボキシル保護基を表す)
と縮合することを含み、
反応が終了したとき、反応混合物が酸水溶液に注がれることにおいて特徴づけられる方法。
【請求項6】
前記酸が、無機酸、有機酸、または、それらの組合せから選択され、かつ、前記酸が任意の好適な濃度で存在することにおいて特徴づけられる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記酸が、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、ギ酸、酢酸、プロパン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、安息香酸、シュウ酸、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸から選択されることにおいて特徴づけられる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記酸が、塩酸、硫酸、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、酢酸およびp−トルエンスルホン酸から選択されることにおいて特徴づけられる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記酸が塩酸であることにおいて特徴づけられる、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記酸が硫酸であることにおいて特徴づけられる、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記酸がリン酸であることにおいて特徴づけられる、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記酸水溶液のpH値が2〜6であり、好ましくは2〜5であり、より好ましくは2.5〜4.5であり、さらにより好ましくは2.5〜4であり、最も好ましくは3〜4であることにおいて特徴づけられる、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%または少なくとも98%の、請求項1に記載される式2aのエルタペネムの中間体と、残部としての不純物とを含む組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2012−525339(P2012−525339A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507577(P2012−507577)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際出願番号】PCT/CN2010/000607
【国際公開番号】WO2010/124531
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(511262809)石葯集団中奇制葯技▲術▼(石家庄)有限公司 (2)
【Fターム(参考)】