説明

エルボ継手

【課題】金属丸パイプを曲げ加工して構成されるエルボ継手において、工具をロックナット近くで、しかも十分な面積範囲で安定してかけることができるようにする。
【解決手段】直交する両側辺部26,27から成る本体部分25における一側辺部26の先端側に、ロックナット31がねじ込まれる第1ねじ部、この第1ねじ部のさらに先端側に、固定部分にねじ込まれる第2ねじ部29をそれぞれ設けるとともに、他側辺部27の先端側に、配管が接続される第3ねじ部30を設けて構成されるエルボ継手において、本体部分25における曲がりの内側と外側の中央部分の外周に、工具がかけられる一対の平面部35,35を対称配置で、かつ、本体部分25の全長に亘り連続して設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧ショベルの油圧配管等に使用される配管用のエルボ継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルのスイベルジョイントに上部配管を接続する場合に使用されるエルボ継手を例にとって背景技術を説明する。
【0003】
図7に示すように、下部走行体と上部旋回体とに跨ってスイベルジョイント1が設けられ、このスイベルジョイント1と、上部旋回体に設けられた図示しないコントロールバルブとが油圧配管(ホース)2,3によって接続される。
【0004】
従来、このスイベルジョイント1と油圧配管2,3の接続部分には、一般に角型エルボ継手4が用いられる。
【0005】
この角型エルボ継手4は、図8,9に示すようにほぼ直方体状の本体部分5の一側(以下、図の方向性に従って下側といい、これと直交する側を横側という)に、ロックナット6がねじ込まれる第1ねじ部7、この第1ねじ部7のさらに先端側に、スイベルジョイント1にねじ込まれる第2ねじ部8をそれぞれ設けるとともに、横側に、油圧配管2,3が接続される第3ねじ部9を設けて構成される(特許文献1参照)。
【0006】
図9中、10はロックナット6とスイベルジョイント上面との間に設けられるワッシャ、11はワッシャ10の下側に介装されるシール部材である。
【0007】
この角型エルボ継手4は、金属厚板をL字形に切り出して作られたエルボ素材にドリル加工及びねじ加工を施して製作され、本体部分5の両側平面部5a,5aに工具(スパナ)をかけることができるため、ロックナット6の締め付け等、配管作業の作業性が良い。
【0008】
しかし、この角型エルボ継手4は、加工工程が多くなってコスト高となるとともに、図9に示すように内部流路12が直角に折れ曲がるため圧損が大きいという難点があった。
【0009】
そこで、コストが安くて圧損が小さいエルボ継手として、図10に示すように厚肉の金属丸パイプをL字形に曲げ加工してエルボ素材を作り、これにねじ加工等の必要な加工を施して構成されるパイプ製エルボ継手13が提案された(特許文献2参照)。
【0010】
このパイプ製エルボ継手13は、本体部分14を構成する直交する両側辺部15,16のうち一側辺部15に第1、第2両ねじ部(第2ねじ部17のみ図示)、他側辺部16に第3ねじ部18をそれぞれ設けて構成される。
【0011】
図10中、19はロックナット、20はワッシャ、21はシール部材、22はL字形の流路である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実開昭62−176580号公報
【特許文献2】特開2002−273522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、パイプ製エルボ継手13の基本的な問題として、角型エルボ継手4と異なり、本体部分14に工具がかかる平面部がないため、ロックナット6を締め付けたり、継手13の向きを調整したりする配管接続作業の作業性が悪くなる。
【0014】
なお、特許文献2には、図10中に二点鎖線で示すように本体部分14の曲がり中央部分を両側からプレスすることで一対の平面部(図では片側のみ示す)23を形成できるとしている。
【0015】
しかし、プレス加工の限界として、
(i) 図示のように平面部23をロックナット6から遠い曲がり中央部分にしか形成できないため、ロックナット締め付け時に同ナット操作用の工具と本体部分固定用の工具の間隔が広くなって操作がやり辛いこと、
(ii) 平面部23が、工具をかけるには不十分なごく狭い面積範囲に限られてしまうこと
により、作業性の改善にはなっていない。
【0016】
そこで本発明は、パイプ製でありながら、工具をロックナット近くで、しかも十分な面積範囲で安定してかけることができるエルボ継手を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1の発明は、金属パイプをL字形に曲げ加工し、直交する両側辺部から成る本体部分における一側辺部の先端側に、ロックナットがねじ込まれる第1ねじ部、この第1ねじ部のさらに先端側に、固定部分にねじ込まれる第2ねじ部をそれぞれ設けるとともに、他側辺部の先端側に、配管が接続される第3ねじ部を設けて構成されるエルボ継手において、上記本体部分の一側辺部の外周に、切削加工により、工具がかけられる少なくとも一対の平面部が対称配置で設けられたものである。
【0018】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、上記平面部が、上記一側辺部と他側辺部とに設けられたものである。
【0019】
請求項3の発明は、請求項2の構成において、上記平面部が、上記一側辺部と他側辺部とに跨って連続して設けられたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、パイプ製エルボ継手において、切削加工により、本体部分の一側辺部(ロックナットがねじ込まれる第1ねじ部が設けられた側辺部)の外周に、工具がかけられる少なくとも一対の平面部を対称配置で設けたから、
(I) 平面部がロックナット近くに位置し、本体部分用とロックナット用の両工具を接近させることができるため操作性が良いこと、
(II) 平面部に工具を安定良くかけるのに必要十分な面積を確保できること
により、配管接続作業の作業性を改善することができる。
【0021】
この場合、平面部を、上記一側辺部のみに設けてもよいし、請求項2の発明のように一側辺部と他側辺部とに設けてもよい。あるいは、請求項3の発明のように一側辺部と他側辺部とに跨って(最大では本体部分の全長に亘って)連続して設けてもよい。
【0022】
請求項2,3の発明によれば、工具をかける位置の選択肢が広がるため、作業者の好みや、障害物の有無、第3ねじ部に配管を接続する場合等の作業状況に応じて最適な位置で工具をかけて、作業の能率を一層上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係るエルボ継手が使用された油圧ショベルのスイベルジョイントと上部配管の接続部分の斜視図である。
【図2】(a)(b)は第1実施形態に係るエルボ継手を異なる二方向から見た拡大斜視図である。
【図3】同側面図である。
【図4】同縦断面図である。
【図5】(a)(b)(c)は本発明の第2、第3、第4各実施形態に係るエルボ継手を示す側面図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係るエルボ継手の側面図である。
【図7】従来の角型エルボ継手が使用された油圧ショベルのスイベルジョイントと上部配管の接続部分の斜視図である。
【図8】同継手の拡大斜視図である。
【図9】同断面図である。
【図10】従来のパイプ製エルボ継手の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態を図1〜図6によって説明する。
【0025】
第1実施形態(図1〜図4参照)
実施形態では、図1に示すように油圧ショベルのスイベルジョイント1に、図7中に示す上部配管(ホース)2,3を接続する場合に使用される標準型のエルボ継手24…を適用対象としている。
【0026】
このエルボ継手24は、図10に示す従来のパイプ製エルボ継手13と同様に、厚肉の金属丸パイプ材をL字形に曲げ加工してエルボ素材を作り、これにねじ加工等の必要な加工を施して構成される。その基本的構成も、従来のパイプ製エルボ継手13と同じである。
【0027】
すなわち、同継手24は、図2〜図4に示すように、本体部分25を構成する直交する両側辺部26,27のうち、スイベルジョイント側の一側辺部26に第1第2両ねじ部28,29、他側辺部27に第3ねじ部30をそれぞれ設けて構成される。
【0028】
第1ねじ部28にはロックナット31がねじ込まれるとともに、同ナット31の下側にワッシャ32とシール部材33が嵌装され、第2ねじ部29が図1中のスイベルジョイント1にねじ込まれ、かつ、ロックナット31によって締め付け固定される。
【0029】
図2,4中、34は両側辺部26,27に跨って形成されたL字形の流路である。
【0030】
このエルボ継手24には、本体部分25の外周に、切削加工により、工具がかけられる一対の平面部35,35が設けられている。
【0031】
詳述すると、この両側平面部35,35は、
(i) 本体部分25における曲がりの内側と外側の中央部分に、
(ii) 流路34を挟んで対称配置(180°間隔)で、
(iii) 一側辺部26の先端から他側辺部27の先端まで、つまり、本体部分25の全長に亘り連続するL字形に、
(iv) 工具(スパナ)を安定良くかけるのに必要十分な幅寸法W(両側同一。たとえば10mm〜12mm)をもって
形成されている。
【0032】
なお、平面部35,35の切削加工は、エルボ素材に対する各ねじ部28〜30のねじ加工の前段階(金属パイプの曲げ加工の直後を含む)に行ってもよいし、最終段階で行ってもよい。
【0033】
この構成によると、
(I) 平面部35,35がロックナット31近くに位置し、本体部分用とロックナット用の両工具を接近させることができるため操作性が良いこと、
(II) 切削加工によって平面部35,35を形成するため、この平面部35,35に工具を安定良くかけるのに必要十分な面積を確保できること
により、配管接続作業の作業性を改善することができる。
【0034】
この場合、第1実施形態では、平面部35,35を本体部分25の全長に亘って連続して設けているため、作業者の好みや、ロックナット31に近い部分に障害物がある場合等、作業状況に応じて最適な位置を選んで工具をかけることができる。
【0035】
また、第3ねじ部30に配管を接続する際に、継手24を固定するための工具を同ねじ部30に近い部分でかけることができる。
【0036】
これらの点で、作業の能率を一層上げることができる。
【0037】
他の実施形態(図5,6参照)
第1実施形態との相違点のみを説明する。両図では、平面部35について片側のみを図示している。
【0038】
第2実施形態として、図5(a)に示すように、両側平面部35を、曲がりの中央部分でなく外側に少しずれた位置に形成してもよい。
【0039】
こうすれば、曲がりの外側から工具をかけてロックナット31の締め付け操作等を行う場合の作業性が良くなる。
【0040】
あるいは、図示しないが、曲がりの内側から工具をかけ易いように反対側(内側)に少しずれた位置に形成してもよい。
【0041】
第3実施形態として、図5(b)に示すように、一側辺部26のみ、しかもロックナット31に近い部分のみに平面部35を設けてもよい。
【0042】
こうすれば、切削加工が簡単ですむ。
【0043】
図5(c)に示す第4実施形態では、第1実施形態と第3実施形態の中間形態として、平面部35を一側辺部26から曲がりの中央部分までの範囲に設けている。
【0044】
なお、図5(c)では、曲がりの中央部分で幅寸法を他よりも狭くした場合を例示しているが、平面部全長部分で同一幅としてもよいことはいうまでもない。
【0045】
また、図示しないが、両側平面部35を一側辺部26と他側辺部27とに分離して設けてもよい。
【0046】
一方、本発明は、第5実施形態として、図6に示すように一側辺部26が他側辺部27よりも長い所謂ロングエルボ継手24´にも適用することができる。
【0047】
この場合、図例では、切削範囲を必要最小限にするために、平面部35を一側辺部26の上部(曲がり部分に近い部分)から他側辺部27に跨る範囲のみに設けているが、第1実施形態同様、本体部分25の全長に亘って設けてもよい。また、図5(a)〜(c)に示す第2〜第4各実施形態の平面部配置を採用してもよい。
【符号の説明】
【0048】
24,24´ エルボ継手
25 同継手の本体部分
26 同、一側辺部
27 同、他側辺部
28 同、第1ねじ部
29 同、第2ねじ部
30 同、第3ねじ部
31 ロックナット
32 ワッシャ
33 シール部材
34 流路
35,35 平面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属パイプをL字形に曲げ加工し、直交する両側辺部から成る本体部分における一側辺部の先端側に、ロックナットがねじ込まれる第1ねじ部、この第1ねじ部のさらに先端側に、固定部分にねじ込まれる第2ねじ部をそれぞれ設けるとともに、他側辺部の先端側に、配管が接続される第3ねじ部を設けて構成されるエルボ継手において、上記本体部分の一側辺部の外周に、切削加工により、工具がかけられる少なくとも一対の平面部が対称配置で設けられたことを特徴とするエルボ継手。
【請求項2】
上記平面部が、上記一側辺部と他側辺部とに設けられたことを特徴とする請求項1記載のエルボ継手。
【請求項3】
上記平面部が、上記一側辺部と他側辺部とに跨って連続して設けられたことを特徴とする請求項2記載のエルボ継手。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−127677(P2011−127677A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285961(P2009−285961)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】