説明

エレクトレット性微粒子及びその製造方法

【課題】帯電性が均一で優れた電気泳動性を示すエレクトレット性微粒子を提供する。
【解決手段】コア部分とシェル部分を有するコアシェル型のエレクトレット性微粒子であって、前記コア部分は、顔料を分散可能な材料を含有し、前記シェル部分は、エレクトレット性樹脂を含有し、前記エレクトレット性樹脂は、フッ素含有樹脂であり、且つ、電子線照射、放射線照射又はコロナ放電によりエレクトレット化されている、ことを特徴とするエレクトレット性微粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルカラーの電気泳動表示装置(いわゆる電子ペーパー)に用いる泳動粒子として有用なエレクトレット性微粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、荷電粒子(エレクトレット性粒子)の電気泳動による電気泳動表示方法が、次世代表示装置の最適技術と考えられている。しかしながら、荷電粒子の形状、帯電電位(ζ電位)が小さく不安定なこと、泳動粒子の二次凝集や沈殿、前歴表示画像の消去や応答速度が不十分である等の多くの課題があり、研究開発が進められている。
【0003】
特許文献1、2には、上記用途に用いるエレクトレット性粒子が開示されている。
【0004】
特許文献1には、「高分子微粒子材料を重合して製作した、粒径1〜10μmの真球状超微粒子のコア樹脂に、電子トラップとなる樹脂を添加し、これに10〜300kGyの電子線を照射して、エレクトレット性負電荷を帯電した微粒子で、コア樹脂を所望の色彩に着色したことを特徴とする負荷電微粒子。」が記載されている(請求項1)。
【0005】
特許文献2には、「高分子微粒子原料モノマーに、電子トラップとなる材料、顔料等を添加し、懸濁重合法・乳化重合法・分散重合法等により、5〜10μmの真球状微粒子を作り、これに10〜50kGyの電子線を照射し、90〜110℃で十数分間加熱するか、90〜110℃で10〜50kGyの電子線を照射して、エレクトレット性負電荷を帯電した微粒子で、−50〜−100mVのζ電位をもち、所望の色彩に着色したことを特徴とする着色負荷電微粒子。」を用いることが記載されている(請求項10)。
【0006】
しかしながら、従来の各種エレクトレット性粒子は、帯電性が均一でない場合があり、電気泳動性が不十分であるという課題がある。従って、帯電性が均一で優れた電気泳動性を示すエレクトレット性粒子の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−31189号公報
【特許文献2】特開2007−206570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、帯電性が均一で優れた電気泳動性を示すエレクトレット性微粒子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のコアシェル構造体をエレクトレット化することにより得られるエレクトレット性微粒子によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記のエレクトレット性微粒子及びその製造方法に関する。
1.コア部分とシェル部分を有するコアシェル型のエレクトレット性微粒子であって、
前記コア部分は、顔料を分散可能な材料を含有し、前記シェル部分は、エレクトレット性樹脂を含有し、
前記エレクトレット性樹脂は、フッ素含有樹脂であり、且つ、電子線照射、放射線照射又はコロナ放電によりエレクトレット化されている、
ことを特徴とするエレクトレット性微粒子。
2.前記エレクトレット性樹脂は、フッ素置換率が10%以上のフッ素含有樹脂である、上記項1に記載のエレクトレット性微粒子。
3.前記エレクトレット性樹脂がビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体である、上記項1又は2に記載のエレクトレット性微粒子。
4.前記顔料を分散可能な材料が樹脂である、上記項1〜3のいずれかに記載のエレクトレット性微粒子。
5.前記エレクトレット性微粒子の平均粒子径が1000μm以下である、上記項1〜4のいずれかに記載のエレクトレット性微粒子。
6.コア部分とシェル部分を有するコアシェル型のエレクトレット性微粒子であって、
前記コア部分は、顔料を分散可能な樹脂及び平均粒子径が0.02〜0.2μmの顔料を含有し、前記シェル部分は、エレクトレット性樹脂を含有し、
前記エレクトレット性樹脂がビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体であり、且つ、電子線照射、放射線照射又はコロナ放電によりエレクトレット化されており、
前記エレクトレット性微粒子の平均粒子径が1000μm以下である、
上記項1に記載のエレクトレット性微粒子。
7.コアシェル型のエレクトレット性微粒子の製造方法であって、
顔料を分散可能な材料を含有するコア部分及びエレクトレット性樹脂としてフッ素含有樹脂を含有するシェル部分からなるコアシェル構造体を形成した後、当該コアシェル構造体に電子線照射、放射線照射又はコロナ放電することを特徴とするエレクトレット性微粒子の製造方法。
8.前記コアシェル構造体を電気泳動媒体に分散させて電子線照射、放射線照射又はコロナ放電する、上記項7に記載の製造方法。
【0011】
以下、本発明のエレクトレット性微粒子及びその製造方法について説明する。
【0012】
本発明のエレクトレット性微粒子は、コア部分とシェル部分を有するコアシェル型のエレクトレット性微粒子であって、
前記コア部分は、顔料を分散可能な材料を含有し、前記シェル部分は、エレクトレット性樹脂を含有し、
前記エレクトレット性樹脂は、フッ素含有樹脂であり、且つ、電子線照射、放射線照射又はコロナ放電によりエレクトレット化されていることを特徴とする。
【0013】
上記特徴を有する本願発明のエレクトレット性微粒子は、コア部分に顔料を分散させることができるため、フルカラーの電気泳動表示装置に用いる泳動粒子として有用である。また、シェル部分がエレクトレット性樹脂としてフッ素含有樹脂を含有し、且つ、電子線照射、放射線照射又はコロナ放電によりエレクトレット化されていることにより、微粒子の帯電性が均一で優れた電気泳動性を示すエレクトレット性微粒子である。
【0014】
前記コア部分は、顔料を分散可能な材料を含有する。顔料を分散可能な材料としては限定的ではないが、顔料を分散した上でシェル部分と共にコア部分にもエレクトレット性を付与し得る観点ではフッ素含有化合物が好ましい。フッ素含有化合物としては、例えば、公知のフッ素含有樹脂、フッ素含有オイル、フッ素含有接着剤等が広く利用できる。
【0015】
上記フッ素含有樹脂としては、例えば、四フッ化エチレン樹脂、直鎖状フルオロポリエーテル化合物、四フッ化エチレン/ビニルモノマー共重合体、重合性アモルファスフッ素樹脂等が挙げられる。
【0016】
四フッ化エチレン樹脂の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やその誘導体(FRC=CR=F又はH、R=F又はH又はCl又は任意)の重合物等が挙げられる。
【0017】
直鎖状フルオロポリエーテル化合物の具体例としては、(商品名「SIFEL3590−N」、「SIFEL2610」、「SIFEL8470」いずれも信越化学工業製)が挙げられる。
【0018】
四フッ化エチレン/ビニルモノマー共重合体の具体例としては、(商品名「ゼッフル」ダイキン工業製)が挙げられる。
【0019】
重合性アモルファスフッ素樹脂の具体例としては、(商品名「CYTOP」旭硝子製)が挙げられる。
【0020】
上記フッ素含有オイルとしては、パーフルオロポリエーテルオイル、三フッ化塩化エチレン低重合体等が挙げられる。具体例としては、パーフルオロポリエーテルオイル(商品名「デムナム」ダイキン工業製)、三フッ化塩化エチレン低重合体(商品名「ダイフロイル」ダイキン工業製)等が挙げられる。
【0021】
上記フッ素含有接着剤としては、紫外線硬化型フッ素化エポキシ接着剤等が挙げられる。具体例としては、(商品名「オプトダイン」ダイキン工業製)等が挙げられる。
【0022】
顔料を分散可能な材料としては、上記列挙した材料の中でも樹脂が好ましい。
【0023】
その他、顔料を分散可能な材料としてフッ素含有樹脂以外の公知の樹脂も使用できる。例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド樹脂、石油樹脂、ケトン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂等が好ましい。これらの樹脂としては、予め樹脂球(着色又は無着色)の状態の市販品を用意してもよく、例えば、アクリル樹脂球としては、(商品名「TAFTICシリーズ」東洋紡製)、(商品名「アートパールGRシリーズ」根上工業製)、(商品名「ケミスノーMXシリーズ」綜研化学製)、(商品名「ラブコロールシリーズ」大日精化工業製)、(商品名「テクノポリマーMBシリーズ」積水化学工業製)等が挙げられる。ポリスチレン樹脂球としては、(商品名「テクノポリマーSBXシリーズ」積水化学工業製)、(商品名「ケミスノーSXシリーズ」綜研化学製)等が挙げられる。また、ポリウレタン樹脂球としては、(商品名「アートパールCシリーズ」根上工業製)等が挙げられる。
【0024】
コア部分に分散させる顔料としては限定的ではなく、公知の顔料を使用できる。コア部分に顔料を分散させることにより、最終的に着色されたエレクトレット性微粒子が得られ、フルカラーの電子ペーパー材料として有用である。
【0025】
無機顔料としては限定されないが、例えば、炭素を主成分とする黒色顔料として、カーボンブラック、油煙、ボーンブラック、植物性黒等が挙げられる。また、白色顔料として、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化珪素等が挙げられる。これらの白色顔料は、白色泳動粒子の製造や粒子比重調整のために適宜使用できる。
【0026】
有機顔料としては限定されないが、例えば、β−ナフトール系、ナフトールAS系、アセト酢酸、アリールアミド系、ピラゾロン系、アセト酢酸アリールアミド系、ピラゾロン系、β−ナフトール系、β−オキシナフトエ酸系(BON酸系)、ナフトールAS系、アセト酢酸アリリド系のアゾ顔料が挙げられる。また、フタロシアニン系、アントラキノン系(スレン系)、ペリレン系、ペリノン系、インジゴ系、チオインジゴ系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、金属錯体顔料、メチン系、アゾメチン系、ジケトピロロピロール等の多環状顔料が挙げられる。その他、アジン顔料、昼光蛍光顔料(染料樹脂固溶体)、中空樹脂顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料等が挙げられる。
【0027】
具体的な市販品としては、DIC(株)製のSymuler fast yellow 4GO、Fastogen super magenta RG、Fastogen blue TGRや、富士色素(株)製のFuji fast red 7R3300E、Fuji fast carmine 527等が挙げられる。
【0028】
これらの顔料の平均粒子径としては、20μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましい。この中でも、特に顔料の平均粒子径が0.02〜0.2μmの範囲であれば、得られるエレクトレット性微粒子を透明着色し易い。顔料の平均粒子径の下限値としては0.02μm程度とすることができるが、顔料の種類に応じてより小さな平均粒子径のものを用いることもできる。なお、本明細書中の平均粒子径は、測定対象物の分散体を相溶性の良い適当な分散媒で希釈し、動的光散乱式粒径分布測定装置「LB−550」(堀場製作所製)を用いてメジアン径を測定することにより求めた値である。
【0029】
コア部分は、上記顔料を分散可能な材料及び顔料の2成分から構成されていてもよく、必要に応じて分散剤、安定剤等の公知の添加剤を含有してもよい。なお、コア部分に含有される顔料の量は限定的ではないが、1〜30重量%程度が好ましく、5〜20重量%程度がより好ましい。
【0030】
コア部分は単独の球状粒子から構成されてもよく、複数の球状粒子の集合体から構成されてもよい。つまり、本発明のエレクトレット性微粒子は、単独の球状粒子からなるコア部分の表面にシェル部分が被覆されている態様でもよく、複数の球状粒子の集合体であるコア部分の周囲にシェル部分が被覆されている態様でもよい。また、コア部分を構成する粒子の形状は球状だけでなく多角形等の非球状であってもよい。
【0031】
前記シェル部分は、エレクトレット性樹脂としてフッ素含有樹脂を含有する。本発明では、シェル部分のエレクトレット性樹脂が後記の電子線照射、放射線照射又はコロナ放電によりエレクトレット化させることにより帯電性が均一で優れた電気泳動性を示すエレクトレット性微粒子が得られる。
【0032】
上記エレクトレット性樹脂としては、電子線照射、放射線照射又はコロナ放電によりエレクトレット化されて均一で優れた帯電性を得るためにフッ素含有樹脂を用いる。
【0033】
フッ素含有樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)、パーフルオロポリエーテル(PFPE)等を単独又は混合して用いることができるほか、これらの共重合体を用いることもできる。
【0034】
上記PTFEは、下記構造式で示される。
【0035】
【化1】

【0036】
ここで、フッ素置換前の炭化水素の構造−(CH2−CH2)n−を基準としてフッ素置換率を算出すると、PTFEのフッ素置換率は100%である。なお、本明細書におけるフッ素置換率は、フッ素置換前の構造:−(CH2−CH2)n−、−(CH2−CH2−CH2−O)n−又は−(CH2−CH(CH3))n−における炭素と結合している水素の数に対するフッ素置換数の割合を示すものであり、下記式により算出される値である。
・フッ素置換率(%)={(水素と置換したフッ素の数)÷(フッ素置換前の炭化水素の構造において炭素原子に結合している水素の数)}×100
PTFEとしては、例えば、(商品名「ポリフロンPTFE」ダイキン工業製)、(商品名「テフロン(登録商標)PTFE」三井・デュポンフロロケミカル製)等が挙げられる。
【0037】
上記PCTFEは、下記構造式で示される。
【0038】
【化2】

【0039】
PCTFEのフッ素置換率は上記式から算出すると75%である。
【0040】
PCTFEとしては、例えば、(商品名「ネオフロンPCTFE」ダイキン工業製)等が挙げられる。
【0041】
上記PVDFは、下記構造式で示される。
【0042】
【化3】

【0043】
PVDFのフッ素置換率は上記式から算出すると50%である。
【0044】
PVDFとしては、例えば、(商品名「KFポリマー」クレハ製)、(商品名「ネオフロンPVDF」ダイキン工業製)等が挙げられる。
【0045】
上記PVFは、下記構造式で示される。
【0046】
【化4】

【0047】
PVFのフッ素置換率は上記式から算出すると25%である。
【0048】
PVFとしては、例えば、(商品名「Tedlar」SolvaySolexis, Inc製)が挙げられる。
【0049】
上記PFPEは、下記構造式で示される。
【0050】
【化5】

【0051】
PFPEのフッ素置換率は上記式から算出すると100%である。
【0052】
PFPEとしては、例えば、(商品名「デムナム」ダイキン工業製)等が挙げられる。
【0053】
これらのフッ素含有樹脂のいずれかを共重合成分として含有する共重合体としては、例えば、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフロオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体等が挙げられる。これらの共重合体中でも、特に均一で優れた帯電性が得られる点でビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体がより好ましい。
【0054】
上記PFAは、下記構造式で示される。
【0055】
【化6】

【0056】
〔式中、Rはアルキル基、m、nはそれぞれ各ユニットの共重合比率を示す。〕
テトラフルオロエチレンユニットのフッ素置換率は100%であり、パーフルオロアルコキシビニルエーテルユニットのフッ素置換率は75%であるため、PFAのフッ素置換率は共重合比率m、nに依存して変化する。
【0057】
PFAとしては、例えば、(商品名「テフロン(登録商標)PFA」三井・デュポンフロロケミカル製)、(商品名「ネオフロンPFA」ダイキン工業製)、(商品名「フルオンPFA」旭硝子製)等が挙げられる。
【0058】
上記FEPは、下記構造式で示される。
【0059】
【化7】

【0060】
〔式中、m、nはそれぞれ各ユニットの共重合比率を示す。〕
テトラフルオロエチレンユニットのフッ素置換率は100%であり、ヘキサフルオロプロピレンユニットのフッ素置換率は100%であるため、FEPのフッ素置換率は100%である。
【0061】
FEPとしては、例えば、(商品名「ネオフロンFEP」ダイキン工業製)、(商品名「テフロン(登録商標)FEP」三井・デュポンフロロケミカル製)、(商品名「ダイニオンFEP」住友スリーエム製)等が挙げられる。
【0062】
上記ETFEは、下記構造式で示される。
【0063】
【化8】

【0064】
〔式中、m、nはそれぞれ各ユニットの共重合比率を示す。〕
テトラフルオロエチレンユニットのフッ素置換率は100%であり、エチレンユニットのフッ素置換率は0%であるため、ETFEのフッ素置換率は共重合比率m、nに依存して変化する。
【0065】
ETFEとしては、例えば、(商品名「フルオンETFE」旭硝子製)、(商品名「ネオフロンETFE」ダイキン工業製)、(商品名「ダイニオンETFE」住友スリーエム製)等が挙げられる。
【0066】
上記ECTFEは、下記構造式で示される。
【0067】
【化9】

【0068】
〔式中、m、nはそれぞれ各ユニットの共重合比率を示す。〕
クロロトリフルオロエチレンユニットのフッ素置換率は75%であり、エチレンユニットのフッ素置換率は0%であるため、ECTFEのフッ素置換率は共重合比率m、nに依存して変化する。
【0069】
ECTFEとしては、例えば、(商品名「Halar」SolvaySolexis, Inc製)が挙げられる。
【0070】
ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体は、前記ビニリデンフルオライドユニット(フッ素置換率50%)と前記テトラフルオロエチレンユニット(フッ素置換率100%)とが共重合したものであり、共重合比率に依存してビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体のフッ素置換率は変化する。
【0071】
ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体は、前記ビニリデンフルオライドユニット(フッ素置換率50%)と前記ヘキサフルオロプロピレンユニット(フッ素置換率100%)と前記テトラフルオロエチレンユニット(フッ素置換率100%)とが共重合したものであり、共重合比率に依存して三元共重合体のフッ素置換率は変化する。
【0072】
ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体としては、例えば、(商品名「VT470」ダイキン工業製)が挙げられる。
【0073】
本発明では、上記列挙したフッ素含有樹脂(共重合体も含む)のフッ素置換率としては、10%以上のものが好ましく、20%以上のものがより好ましく、25〜100%のものが最も好ましい。
【0074】
前記シェル部分は、エレクトレット性樹脂のみから構成されてもよく、必要に応じて、分散剤、顔料誘導体、安定剤等の公知の添加剤を含有してもよい。シェル部分の厚さは限定的ではないが、均一な帯電性を得る観点からは厚さは均一であることが好ましい。なお、コア部分とシェル部分と合わせたエレクトレット性微粒子の平均粒子径としては、1000μm以下が好ましく、その中でも0.02〜1000μmが好ましい。コア部分とシェル部分の重量比は限定的ではないが、コア部分:シェル部分の重量比は50:50〜90:10であることが好ましく、70:30〜80:20であることがより好ましい。
【0075】
本発明のエレクトレット性微粒子は、電子線照射、放射線照射又はコロナ放電によりエレクトレット化されている。電子線照射、放射線照射又はコロナ放電によりエレクトレット化されていることにより、エレクトレット性樹脂であるフッ素含有樹脂中にトラップし、半永久的に負帯電したエレクトレット性微粒子を得ることができる。エレクトレット化の条件等については、製造方法の説明にて後記する。
【0076】
エレクトレット性微粒子の製造方法
上記エレクトレット性微粒子の製造方法は限定的ではないが、本発明では、顔料を分散可能な材料を含有するコア部分及びエレクトレット性樹脂としてフッ素含有樹脂を含有するシェル部分からなるコアシェル構造体を形成した後、当該コアシェル構造体に電子線照射、放射線照射又はコロナ放電することにより好適にエレクトレット性微粒子を製造することができる。以下、この製造方法(本発明の製造方法と言う)について説明する。
【0077】
本発明の製造方法において、コア部分及びシェル部分の各説明については、前記と同じである。コアシェル構造体を形成する方法は限定されず、例えば、公知のコアシェル重合を利用することによりコアシェル構造体を形成することができる。
【0078】
コアシェル重合を利用する場合のコアシェル構造体の形成手順を例示すると、例えば、以下の通りである。
(1)顔料を分散可能な材料と顔料を撹拌することにより顔料分散体を得る工程1、
(2)前記顔料分散体にエレクトレット性樹脂を添加・撹拌する工程2、
(3)前記混合液に硬化剤又は重合開始剤を添加・撹拌する工程3、
(4)乳化剤を添加・撹拌した水相に、(3)の溶液を添加・撹拌することによりコアシェル構造体を形成する工程4。
【0079】
上記コアシェル構造体の形成において、撹拌は、ミキサー、ホモジナイザー、ディゾルバー等の公知の混合機を利用することができる。また、上記手順では工程4で加熱・撹拌することによりコアシェル構造体の硬化・重合が開始し、それ以前の工程で硬化・重合が開始しないように反応を制御する。更に、ボールミルやビーズミルを用いることにより顔料を微粒子化することができる。更に、撹拌条件を調整することにより、エレクトレット性微粒子の平均粒子径が1000μm以下となるように調整することが好ましい。
【0080】
上記乳化剤としては限定的ではないが、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン無水マレイン酸等が挙げられる。
【0081】
その他、予め着色又は無着色の樹脂球(アクリル樹脂球、ポリスチレン樹脂球、ポリウレタン樹脂球等)を用意し、樹脂球をコア部分とし、その表面にフッ素含有樹脂を含有するシェル部分を被覆することによりエレクトレット性微粒子を製造することもできる。
【0082】
得られたコアシェル構造体は、懸濁状態のまま又はコアシェル構造体を一旦取り出した粉体の状態で、又は、当該粉体を電気泳動媒体に分散させた状態で電子線照射、放射線照射又はコロナ放電してエレクトレット化させることができる。電子線照射、放射線照射又はコロナ放電条件はコアシェル構造体をエレクトレット化できる限り限定されない。例えば、電子線加速器を用いて10〜50kGy程度の電子線を照射すればよい。また、放射線については、例えば、1〜15kGy程度のガンマ線を照射すればよい。
【0083】
上記電気泳動媒体としては限定されず、空気中をはじめ液体媒体を用いることもできる。液体媒体としては、例えば、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール(PG)、グリセリン、シリコーンオイル、フッ素系オイル、石油系オイル等が挙げられる。上記シリコーンオイルとしてはジメチルシリコーンオイル等が挙げられる。また、上記フッ素系オイルとしてはパーフルオロポリエーテルオイル等が挙げられる。
【0084】
上記過程を経て、好適な実施態様においては1000μm以下の均一性の高いエレクトレット微粒子が効率的に得られる。本発明の製造方法によれば、ほぼ全ての微粒子が一定以上の荷電粒子(負電荷)となり均一性の高い粒子径のエレクトレット微粒子が歩留まり良く簡便に得られる。
【0085】
なお、優れた電気泳動性を示すエレクトレット性微粒子が得られる範囲で、上記コア部分とシェル部分とを置換した態様のエレクトレット性微粒子を得ることもできる。具体的には、コア部分にエレクトレット性樹脂を含有し、シェル部分に顔料を分散可能な材料及び顔料を含有するエレクトレット性微粒子を得ることもできる。
【0086】
上記エレクトレット性微粒子は、電極板間に配置し、電極板間に外部電圧を印加することにより電気泳動を示す。このとき、電気泳動媒体は限定されず、空気中をはじめ液体媒体を用いることもできる。液体媒体としては、例えば、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール(PG)、グリセリン、シリコーンオイル、フッ素系オイル、石油系オイル等が挙げられる。上記シリコーンオイルとしてはジメチルシリコーンオイル等が挙げられる。特に、上記フッ素系オイルとしてはパーフルオロポリエーテルオイル等が挙げられる。これらの媒体の中でも、特にシリコーンオイルが好ましい。
(電気泳動表示装置)
エレクトレット性微粒子は、顔料により着色(好ましくは透明着色)されている。かかる着色されたエレクトレット性微粒子を荷電粒子として用いてカラー画像を表示する電気泳動表示装置としては、例えば、
荷電粒子を収容する少なくとも3層のセルを有し、マトリクス状に配置されて各画素を表示する複数の表示部と、
前記各セルの上面又は下面に設けられた第1の電極と、
前記各セルの側端部に設けられた第2の電極と、を備え、
前記荷電粒子は、前記各表示部において前記セル毎に異なる色に着色されている、電気泳動表示装置が好適である。
【0087】
上記電気泳動表示装置は、画素毎に表示部が設置されており、各表示部は少なくとも3層のセルから構成されている。この各セルには異なる色に着色された荷電粒子が収容されているため、第1及び第2の電極に電圧を印加することによって1つの画素において各種の色を表示することが可能であり、画像範囲内に無駄な画素が存在することがなくカラー画像を表示することができる。なお、「セル毎に異なる色」とは、特に限定されるものではないが、カラーフィルターを用いることなく加法混色によりフルカラー表示を実現するためには、レッド(R)、グリーン(G)及びブルー(B)が好ましい。また、「セルの側端部」とは、セルの上面縁部、下面縁部、及び側面を意味している。
【0088】
以下、図面を例示的に参照しながら具体的に説明する。
【0089】
電気泳動表示装置1は、図1に示すように、複数の表示部2を備え、この表示部2は第1〜第3のセル5a〜5cを有しており、各セル内には第1の電極3及び第2の電極4が設けられている。
【0090】
各表示部2は、画像を構成する画素毎に設けられており、図1に示すように、高さ方向に積層された第1〜第3のセル5a〜5cから構成されている。この第1〜第3のセル5a〜5cは、光を透過できるように、例えば、ガラスやポリエチレンテレフタラート等の透明性材料で形成されており、下面には第1の電極3及び第2の電極4を支持するための基盤7が設けられている。なお、第3のセル5cの下方には、表示部2を透過してきた光を反射させるための反射板や、画像の背景色となる白色板又は黒色板が設けられていてもよい。また、第1のセル5aの上面周縁部には、後述する第1〜第3の荷電粒子6a〜6cが第2の電極4に集積したときにこの第1〜第3の荷電粒子6a〜6cを遮蔽することができるよう、遮蔽手段を設けてもよい。
【0091】
第1〜第3のセル5a〜5cの内部には、図1に示すように、後述する第1〜第3の荷電粒子6a〜6cを収集するための第1の電極3及び第2の電極4が設けられている。第2の電極4は、第1〜第3のセル5a〜5cそれぞれの内側面全周に亘って配置されている。第1の電極3は、第2の電極4の内側において、この第2の電極4と短絡しないように第1〜第3のセル5a〜5cの底面に配置されている。この第1の電極3は、例えば、板状やストライプ状、格子状、ドット状等、種々の形状とすることができる。第1の電極3及び第2の電極4としては、特に限定されるものではないが、例えば、銅や銀といった導電性のよい金属、透明な導電性樹脂、又はITO(酸化インジウムスズ)膜等を使用することができる。
【0092】
また、図1に示すように、第1のセル5a内にはレッド(R)に着色された第1の荷電粒子6a、第2のセル5b内にはグリーン(G)に着色された第2の荷電粒子6b、第3のセル5c内にはブルー(B)に着色された第3の荷電粒子6cが収容されている。また、第1〜第3のセル5a〜5c内には、第1〜第3の荷電粒子6a〜6cを電気泳動させるための電気泳動媒体が充填されている。
【0093】
次に、上記電気泳動表示装置1の作動について、図2及び図3を用いて説明する。なお、図2においては、第1〜第3のセル5a〜5cを総括的にセル5、第1〜第3の荷電粒子を総括的に荷電粒子6として示している。
【0094】
上記電気泳動表示装置1により、ある画素にレッドを表示したい場合、レッド(R)に着色された第1の荷電粒子6aが収容されている第1のセル5a内において、第1の電極3が正極となるとともに第2の電極4が負極となるよう、第1の電極3及び第2の電極4に電圧を印加すると、第1の荷電粒子6aが、第1の電極3に引き寄せられ、第1のセル5aの底面に配置される(図2(a))。一方、第2及び第3のセル5a、5b内においては、第1の電極3が負極となるとともに第2の電極4が正極となるよう、第1の電極3及び第2の電極4に電圧を印加すると、第2及び第3の荷電粒子6b、6cが、第2の電極4に引き寄せられ、第2及び第3のセル5a、5bの内側面に配置される。(図2(b))この状態で表示部2を上方から確認すると、第1の荷電粒子6aの色(レッド)のみが視認され、第2の荷電粒子6bの色(グリーン)及び第3の荷電粒子6cの色(ブルー)は第2及び第3のセル5b、5c、第2の電極4又は遮蔽手段に隠れて視認することができないため、画素にはレッドが表示される(図3(a))。
【0095】
また、ある画素にグリーンを表示したい場合、第2のセル5b内において第1の電極3を正極、第2の電極4を負極として、第2の荷電粒子6bを第2のセル5bの底面に移動させ(図2(a))、第1及び第3のセル5a、5c内においては、第1の電極3を負極、第2の電極4を正極として、第1及び第3の荷電粒子6a、6cを第1及び第3のセル5a、5cの内側面に移動させる(図2(b))。この状態で表示部2を上方から確認すると、第2の荷電粒子6bの色(グリーン)のみが視認され、第1の荷電粒子6aの色(レッド)及び第3の荷電粒子6cの色(ブルー)は第1及び第3のセル5a、5c、第2の電極4又は遮蔽手段に隠れて視認することができないため、画素にはグリーンが表示される(図3(b))。
【0096】
同様に、ある画素にブルーを表示したい場合、第3のセル5c内において第1の電極3を正極、第2の電極4を負極として、第3の荷電粒子6cを第3のセル5cの底面に移動させ(図2(a))、第1及び第2のセル5a、5bにおいては、第1の電極3を負極、第2の電極4を正極として、第1及び第2の荷電粒子6a、6bを第1及び第2のセル5a、5bの内側面に移動させる(図2(b))。この状態で表示部2を上方から確認すると、第3の荷電粒子6cの色(ブルー)のみが視認され、第1の荷電粒子6aの色(レッド)及び第2の荷電粒子6bの色(グリーン)は第1及び第2のセル5a、5b、第2の電極4又は遮蔽手段に隠れて視認することができないため、画素にはブルーが表示される(図3(c))。
【0097】
また、ある画素にホワイトを表示する場合、第1〜第3のセル5a〜5c内において、第1の電極3及び第2の電極4に印加する電圧の大きさを調整し、第1〜第3の荷電粒子6a〜6cを分散させる(図3(d))。この状態で表示部2を上方から確認すると、第1〜第3の荷電粒子6a〜6cの色が加法混合した状態で見えるため、画素の色はホワイトとなる。
【0098】
以上のように、電気泳動表示装置1は、画素毎に対応した各表示部2が第1〜第3のセル5a〜5cを積層した構成となっており、この第1〜第3のセル5a〜5c内における第1〜第3の荷電粒子6a〜6cを移動させることにより、1つの画素で各種の色を表示することができる。このため、画像範囲内において、画像表示に寄与しない無駄な画素が存在することがなく、結果としてカラーフィルターを用いることなく、フルカラー画像を表示することができる。
【発明の効果】
【0099】
本願発明のエレクトレット性微粒子は、コア部分に顔料を分散させることにより、フルカラーの電気泳動表示装置に用いる泳動粒子として有用であり、シェル部分がエレクトレット性樹脂を含有することにより、微粒子の帯電性が均一で優れた電気泳動性を示すエレクトレット性微粒子である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】電気泳動表示装置(一例)の正面断面概略図である。
【図2】電気泳動表示装置(一例)における荷電粒子の動作を示す斜視図である。
【図3】電気泳動表示装置(一例)の動作を示す正面断面概略図である。
【図4】実施例及び比較例で用いた電気泳動試験装置の上面図及び側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0101】
以下に実施例、比較例及び試験例を示して本発明を具体的に説明する。但し本発明は実施例及びその試験例に限定されない。
【0102】
実施例1
エレクトレット性微粒子の原料として下記を用意した。
A.ゼッフルGK−510(顔料を分散可能なコア部分原料)
B.顔料
C.ジルコニアビーズφ0.3(顔料粉砕メディア)
D.VT470酢酸エチル溶液(シェル部分原料)
E.デスモジュールL75(コア部分の硬化剤)
F.PVA224 5%水溶液(乳化剤)
下記の手順によりエレクトレット性微粒子を調製した。
(1)A及びBを秤量してビーカーに投入し、ディゾルバー撹拌した。撹拌条件は、500rpm×30分とした。
(2)Cを秤量し、(1)に投入した。撹拌条件は、2000rpm×1時間とした。
(3)(2)を250meshでろ過してビーズを除去し、顔料分散体を得た。
(4)(3)とDを秤量し、別に用意したビーカー中でディゾルバー撹拌した。撹拌条件は、700rpm×30分とした。
(5)Eを秤量して(4)に投入した。撹拌条件は1000rpm×1時間とした。
(6)Fを200gビーカーに秤量し、ホモミキサー撹拌を開始した。撹拌条件は、2000rpmとした。
(7)撹拌開始した(6)に(5)と投入してホモミキサー撹拌した。撹拌条件は、6000rpm×6分とした。
(8)(7)を温浴(50〜80℃)にてプロペラ撹拌した。撹拌条件は、600rpm×4時間とした。
(9)(8)をイオン交換水で希釈し、遠心分離機で固液分離した。遠心分離の条件は、2000rpm×10分とした。また、沈殿物の洗浄を4階繰り返した。
(10)洗浄後の沈殿物を50℃恒温槽で乾燥後、粉砕し、微粒子を得た。
(11)微粒子をアルミカップに広げ、電子線照射によりエレクトレット化した。電子線照射条件は、加速電圧800kV、照射線量100kGy、温度120℃、空気雰囲気で行った。これによりエレクトレット性微粒子を得た。
【0103】
実施例2
A及びE成分を下記に変えた以外は、実施例1と同様にしてエレクトレット性微粒子を調製した。
A.メタクリル酸メチルモノマー(顔料を分散可能なコア部分原料)
E.アゾビスイソブチロニトリル(コア部分の重合開始剤)
実施例3
A及びE成分を下記に変えた以外は、実施例1と同様にしてエレクトレット性微粒子を調製した。
A.JER828(顔料を分散可能なコア部分原料)
E.JERキュアST11(コア部分の硬化剤)
比較例1〜3
実施例1〜3において、D成分:VT470酢酸エチル溶液(シェル部分原料)を使用しない以外は、それぞれ実施例1〜3と同様にしてエレクトレット性微粒子を調製した。
【0104】
試験例1(電気泳動試験)
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られたエレクトレット性微粒子について図4に示す電気泳動試験装置を用いて電気泳動試験を行った。具体的には、次の通りである。
【0105】
株式会社倉元製作所製ITO成膜ガラス(縦300mm×横400mm×厚み0.7mm、7Ω/sq以下)を30mm×50mmにカットした。また、住友スリーエム株式会社製粘着両面テープ(Scotch超強力両面テープ、幅19mm×長さ4m×厚み1mm)を長さ20mmカットし、中心部をφ8mmくり貫いた。
【0106】
カットした粘着両面テープを、ITO成膜ガラス面のやや左寄りに貼り付けた。
【0107】
粘着両面テープの穴の部分にエレクトレット性微粒子を溢れない程度に充填した。
【0108】
粘着両面テープの未接着面の剥離紙を剥がし、カットしたITO成膜ガラス面を未接着面に蓋をするように貼り付けた。このとき、ワニ口クリップで挟む所を残すために、図4の側面図に示すように上下のガラスの位置をずらして配置した。ITO成膜面どうしの間は粘着両面テープの厚み(1mm)がある。
【0109】
シリコーンオイル(信越シリコーン社製)の入ったシリンジ(ニプロ株式会社製)を2枚のガラスの隙間の粘着両面テープに刺し、くり貫いた両面テープ内にシリコーンオイルを充填した。
【0110】
ITO成膜ガラス上下の端をそれぞれワニ口クリップでつなぎ、外部電源(松定プレシジョン株式会社製高圧電源、HJPM-5R0.6)により電圧印加することにより、エレクトレット性微粒子の電気泳動性を調べた。
【0111】
実施例1〜3及び比較例1〜3の各成分の詳細な説明及び各エレクトレット性微粒子の電気泳動性の評価結果を下記表1に示す。
【0112】
【表1】

表1中の数値は、重量部を示す。
【0113】
実施例4〜8
エレクトレット性微粒子の原料として下記を用意した。詳細な組成を表2に示す。
A.VT470(フッ素樹脂:シェル部分原料)
B.アクリル樹脂球(表2に示す3種)
C.ウレタン樹脂球
D.スチレン樹脂球
E.PVA224(乳化剤の原料)
下記の手順によりエレクトレット性微粒子を調製した。
【0114】
フッ素樹脂VT470を酢酸エチルに5%溶解させた。この溶液にB〜Dの樹脂球をそれぞれ混合して撹拌した。
【0115】
PVA224をイオン交換水に5%溶解して乳化剤を調製した。樹脂球混合液200gを計り取り、ホモミキサーにて2000rpmで撹拌した。撹拌中の混合液に上記乳化剤50gを添加し、ホモミキサーにて6000rpmで6分間撹拌して乳化した。乳化液を50〜80℃の温浴中でプロペラ撹拌した。撹拌条件は600rpmで3時間とした。
【0116】
上記撹拌後のスラリーをイオン交換水で希釈し、遠心分離機で固液分離し、沈殿物の洗浄を4回繰り返した。洗浄後の沈殿物を50℃恒温槽で乾燥後、粉砕し、各エレクトレット性微粒子を得た。
【0117】
比較例4〜8
フッ素樹脂を用いない以外は実施例4〜8と同様にしてエレクトレット性微粒子を得た。
【0118】
【表2】

表2中の数値は、重量部を示す。
【0119】
試験例2(電気泳動試験)
実施例4〜8及び比較例4〜8の各エレクトレット性微粒子の電気泳動性の評価結果を併せて表2に示す。電気泳動試験及び評価方法は、試験例1と同じとした。
【符号の説明】
【0120】
1.電気泳動表示装置
2.表示部
3.第1の電極
4.第2の電極
5a〜5c.第1〜第3のセル
6a〜6c.第1〜第3の荷電粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部分とシェル部分を有するコアシェル型のエレクトレット性微粒子であって、
前記コア部分は、顔料を分散可能な材料を含有し、前記シェル部分は、エレクトレット性樹脂を含有し、
前記エレクトレット性樹脂は、フッ素含有樹脂であり、且つ、電子線照射、放射線照射又はコロナ放電によりエレクトレット化されている、
ことを特徴とするエレクトレット性微粒子。
【請求項2】
前記エレクトレット性樹脂は、フッ素置換率が10%以上のフッ素含有樹脂である、請求項1に記載のエレクトレット性微粒子。
【請求項3】
前記エレクトレット性樹脂がビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体である、請求項1又は2に記載のエレクトレット性微粒子。
【請求項4】
前記顔料を分散可能な材料が樹脂である、請求項1〜3のいずれかに記載のエレクトレット性微粒子。
【請求項5】
前記エレクトレット性微粒子の平均粒子径が1000μm以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のエレクトレット性微粒子。
【請求項6】
コア部分とシェル部分を有するコアシェル型のエレクトレット性微粒子であって、
前記コア部分は、顔料を分散可能な樹脂及び平均粒子径が0.02〜0.2μmの顔料を含有し、前記シェル部分は、エレクトレット性樹脂を含有し、
前記エレクトレット性樹脂がビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体であり、且つ、電子線照射、放射線照射又はコロナ放電によりエレクトレット化されており、
前記エレクトレット性微粒子の平均粒子径が1000μm以下である、
請求項1に記載のエレクトレット性微粒子。
【請求項7】
コアシェル型のエレクトレット性微粒子の製造方法であって、
顔料を分散可能な材料を含有するコア部分及びエレクトレット性樹脂としてフッ素含有樹脂を含有するシェル部分からなるコアシェル構造体を形成した後、当該コアシェル構造体に電子線照射、放射線照射又はコロナ放電することを特徴とするエレクトレット性微粒子の製造方法。
【請求項8】
前記コアシェル構造体を電気泳動媒体に分散させて電子線照射、放射線照射又はコロナ放電する、請求項7に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−256016(P2012−256016A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248088(P2011−248088)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【特許番号】特許第5014507号(P5014507)
【特許公報発行日】平成24年8月29日(2012.8.29)
【出願人】(390039734)株式会社サクラクレパス (211)
【Fターム(参考)】