説明

エレクトロクロミック表示装置並びにその製造方法及び駆動方法

【課題】積層された複数のエレクトロクロミック素子により構成される構造よりも単純な構造を有し、任意の色を独立して発消色させることができるエレクトロクロミック表示装置を提供する。
【解決手段】表示基板11と、表示電極11a〜11cと、対向基板12と、対向電極12aと、表示電極11a〜11cに設けられたエレクトロクロミック層13a〜13cと、表示電極11a〜11cと対向電極12aとに挟まれるように設けられた電解質層16とを有するエレクトロクロミック表示装置10において、表示基板11と対向電極12aとの間に、それぞれエレクトロクロミック層13a〜13cが設けられた表示電極11a〜11cが、互いに隔離して複数設けられ、少なくとも一つの表示電極11aの対向電極12a側の表面に、エレクトロクロミック層13aとの間に挟まれるように、絶縁性材料よりなる保護層15aが形成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロクロミック表示装置並びにその製造方法及び駆動方法に係り、特に、独立して多色表示が可能なエレクトロクロミック表示装置並びにその製造方法及び駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙に替わる電子媒体として、電子ペーパーの開発が盛んに行われている。電子ペーパーは、表示装置が紙のように用いられるところに特徴があるため、CRT(Cathode Ray Tube)や液晶ディスプレイといった従来の表示装置とは異なった特性が要求される。例えば、反射型表示装置であり、かつ、高い白色反射率・高いコントラスト比を有すること、高精細な表示ができること、表示にメモリー効果があること、低電圧でも駆動できること、薄くて軽いこと、安価であること、などの特性が要求される。
【0003】
これまで、電子ペーパー用途の表示装置として、例えば反射型液晶を用いる方式、電気泳動を用いる方式、トナー泳動を用いる方式、などが提案されている。これらの方式において多色表示を行うためには、カラーフィルタを設ける。しかし、カラーフィルタを設けると、カラーフィルタ自身が光を吸収し、反射率が低下する。従って、上記のいずれの方式も白色反射率・コントラスト比を確保しながら多色表示を行うことは大変困難である。
【0004】
一方、上記のようなカラーフィルタを設けない反射型の表示装置として、電圧が印加されると、可逆的に酸化還元反応が起こり、可逆的に色が変化するエレクトロクロミック現象を利用したエレクトロクロミック表示装置がある。エレクトロクロミック表示装置は、反射型の表示装置であること、メモリー効果があること、低電圧で駆動できることから、電子ペーパー用の表示装置の有力な候補として、材料開発からデバイス設計に至るまで、幅広く研究開発が行われている。
【0005】
ただし、エレクトロクロミック表示装置には、酸化還元反応を利用して発消色を行う原理ゆえに、発消色の応答速度が遅いという欠点がある。特許文献1では、エレクトロクロミック化合物を電極近傍に固定させることによって発消色の応答速度の改善を図った例が記載されている。特許文献1の記載によれば、従来数10秒程度であった発消色に要する時間は、1秒程度まで向上している。
【0006】
また、エレクトロクロミック現象は電気化学現象であるため、エレクトロクロミック表示装置の応答速度や発色のメモリー効果は、エレクトロクロミック表示装置を構成する電解質層の性能(イオン伝導度など)の影響を受ける。電解質を溶媒に溶かすことによって形成した液体状の電解質層を用いる場合、応答性の点で優れているが、素子強度及び信頼性の点で劣る。
【0007】
このような液体状の電解質層の欠点を解決するものとして、固体状又はゲル状の電解質層がある。そのうち特に固体状の電解質層として、例えば高分子固体電解質を用いる電解質層が提案されている。ただし、高分子固体電解質の電気伝導度は、通常の非水電解液に比べ、3桁程度低い。そのため、有機電解液に高分子を溶解させることによって半固形状とした電解質層(例えば、特許文献2参照)、あるいは電解質を加えた液状モノマーを重合反応させることによって電解質を含む架橋重合体とした電解質層が提案されている。
【0008】
さらに、マトリクス状に配列した画素電極により構成され、任意の画素を発消色させるエレクトロクロミック表示装置では、電荷が電解質層内で選択した画素の外側の領域まで拡散しやすいという問題がある。特に、電解質層が液体である場合は、電荷が拡散しやすい。そこで、電解質層を表示画素に対応した部分にのみ形成することで拡散を防ぎ、選択した画素のみを表示することができる表示装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
一方、エレクトロクロミック表示装置は、エレクトロクロミック化合物の構造によって様々な色を発色できるため、多色表示装置として期待されている。このようなエレクトロクロミック表示装置を利用した多色表示装置として、例えば、一対の透明電極の間にエレクトロクロミック層及び電解質を挟持した構造単位よりなるエレクトロクロミック素子を、複数積層したものがある(例えば、特許文献4参照)。
【0010】
また、1つのエレクトロクロミック素子における、1対の表示基板と対向電極との間に、複数のエレクトロクロミック層が積層された、エレクトロクロミック表示装置がある(特許文献5参照)。特許文献5に示す例では、表示基板と対向電極との間に複数の表示電極を互いに隔離して設け、表示電極の各々に対応してエレクトロクロミック層を形成した構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、エレクトロクロミック表示装置を利用した多色表示装置においては、以下のような問題があった。
【0012】
特許文献4に開示されるエレクトロクロミック表示装置は、積層された複数のエレクトロクロミック素子により構成されるため、1層のエレクトロクロミック素子により構成される白黒表示用の表示装置に比べ、製造コストが増大する。また、1層のエレクトロクロミック素子に2層の透明電極が必要であるため、エレクトロクロミック表示装置全体では、積層されたエレクトロクロミック素子の2倍の層数の電極層が必要であり、反射率・コントラストが低下するという問題がある。
【0013】
一方、特許文献5に開示されるエレクトロクロミック表示装置では、選択した表示電極のエレクトロクロミック層のみを独立して発消色駆動させるが、そのためには、隔離された表示電極間の電気抵抗が、各表示電極面内の電気抵抗よりも大きくなるように構成する必要がある。表示電極間の電気抵抗が小さいと選択していない表示電極にも電流が印加されるため、発消色が独立駆動できないからである。
【0014】
しかし、各エレクトロクロミック層を対向電極の微細パターンに合わせて独立に発消色させる(アクティブマトリックス)駆動においては、表示電極間の十分な絶縁性が得にくいという問題がある。すなわち、先行して発色させたエレクトロクロミック層の各色が、後に発色させるエレクトロクロミック層の発色動作に影響するという問題がある。
【0015】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、積層された複数のエレクトロクロミック素子により構成される構造よりも単純な構造を有し、任意の色を独立して発消色させることができる、エレクトロクロミック表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1記載の発明は、表示基板と、表示電極と、対向基板と、対向電極と、前記表示電極に設けられたエレクトロクロミック層と、前記表示電極と前記対向電極とに挟まれるように設けられた電解質層とを有するエレクトロクロミック表示装置において、前記表示基板と前記対向電極との間に、それぞれ前記エレクトロクロミック層が設けられた前記表示電極が、互いに隔離して複数設けられ、少なくとも一つの前記表示電極の前記対向電極側の表面に、前記表示電極と前記エレクトロクロミック層との間に挟まれるように配置した、絶縁性材料よりなる保護層が形成されたことを特徴とする。
【0017】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のエレクトロクロミック表示装置において、前記絶縁性材料は、金属酸化物を主成分とすることを特徴とする。
【0018】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のエレクトロクロミック表示装置において、前記保護層は、前記保護層が形成された前記表示電極よりも膜厚が薄いことを特徴とする。
【0019】
請求項4記載の発明は、請求項3に記載のエレクトロクロミック表示装置において、前記保護層の厚さが0.5〜5nmであることを特徴とする。
【0020】
請求項5記載の発明は、請求項3に記載のエレクトロクロミック表示装置において、前記複数の保護層の厚さが、複数の表示電極ごとに異なるように形成されていることを特徴とする。
【0021】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載のエレクトロクロミック表示装置において、前記絶縁性材料は、Al酸化物又はSi酸化物を含有することを特徴とする。
【0022】
請求項7記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載のエレクトロクロミック表示装置の製造方法であって、前記保護層を真空成膜法により形成する工程を有することを特徴とする。
【0023】
請求項8記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載のエレクトロクロミック表示装置の駆動方法であって、複数の前記表示電極を、前記対向電極からの距離が遠い順に発色駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、エレクトロクロミック表示装置において、積層された複数のエレクトロクロミック素子により構成される構造よりも単純な構造を有し、任意の色を独立して発消色させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係るエレクトロクロミック表示装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るエレクトロクロミック表示装置を発色駆動する際の様子を模式的に示す断面図である。
【図3】比較例に係るエレクトロクロミック表示装置を発色駆動する際の様子を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るエレクトロクロミック表示装置の製造方法の手順を説明するための工程図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るエレクトロクロミック表示装置の駆動方法の手順を説明するための工程図である。
【図6】実施例1に係るエレクトロクロミック表示装置の構成を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明を実施するための形態について図面と共に説明する。
(エレクトロクロミック表示装置)
図1を参照し、本発明の実施の形態に係るエレクトロクロミック表示装置を説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るエレクトロクロミック表示装置10の構成を模式的に示す断面図である。
【0027】
図1に示されるように、エレクトロクロミック表示装置10は、表示基板11と、表示電極11a、11b、11cと、対向基板12と、対向電極12aと、エレクトロクロミック層13a、13b、13cと、絶縁層14a、14bと、保護層15a、15b、15cと、電解質層16と、白色反射層17とを有する。
【0028】
表示基板11は、上記の積層構造を支持するための基板である。
【0029】
表示電極11a、11b、11cは、表示基板11と対向電極12aとの間に、表示基板11側から対向電極12a側に向かって互いに離隔して設けられている。表示電極11aは、表示基板11の対向電極12a側に形成されている。表示電極11a、11b、11cは、対向電極12aに対する電位を制御し、それぞれエレクトロクロミック層13a、13b、13cを発色させるための電極である。
【0030】
対向基板12は、スペーサー19を介し、表示基板11と所定の間隔を隔てて対向して設けられている。対向電極12aは、対向基板12の表示基板11側に形成されている。
【0031】
エレクトロクロミック層13a、13b、13cは、それぞれ表示電極11a、11b、11cの対向電極12a側に設けられている。エレクトロクロミック層13a、13b、13cは、酸化還元反応によって発消色する部分である。
【0032】
絶縁層14a、14bは、それぞれエレクトロクロミック層13a、13bの対向電極12a側に接するように、形成されている。絶縁層14a、14bは、表示電極11a、11b、11cの相互間の絶縁性を確保するためのものである。
【0033】
保護層15a、15b、15cは、それぞれ表示電極11a、11b、11cの対向電極12a側に接するように、設けられている。保護層15a、15b、15cは、それぞれ表示電極11a、11b、11cと、その表示電極11a、11b、11cに設けられたエレクトロクロミック層13a、13b、13cとの間に形成されている。
【0034】
電解質層16は、表示電極11aと対向電極12aとに挟まれるように設けられている。電解質層16は、イオン移動性を示す層であり、一般に電解質と溶媒とを含有する。また、電解質層16には、白色反射機能を付与するために、白色顔料粒子18を含有させてもよい。その場合には、白色反射層17を省略することもできる。
【0035】
白色反射層17は、表示基板11側から入射する光を散乱し、反射するためのものである。
【0036】
エレクトロクロミック表示装置10は、選択した表示電極11a〜11cと対向電極12aとの間に電圧を印加し、表示電極11a〜11cに設けられたエレクトロクロミック層13a〜13cが表示電極11a〜11cからの電荷の授受により酸化還元反応することによって、発消色するものである。また、エレクトロクロミック層13a〜13cの対向電極12a側に白色反射機能を有し、表示基板11側から視認できる反射型のエレクトロクロミック表示装置である。
【0037】
また、各エレクトロクロミック層13a〜13cのエレクトロクロミック化合物を、Y(イエロー)、M(マゼンダ)、C(シアン)等の異なる色を発色するエレクトロクロミック化合物とすることによって、Y、M、Cの単色表示、及び、R(赤)、G(緑)、B(青)、K(黒)の混色表示を実現することができる。
【0038】
次に、本実施の形態に係るエレクトロクロミック表示装置10の各部の詳細な構成及び各部を構成する材料について説明する。
【0039】
表示基板11の材料としては、ガラス、プラスチック等を用いることができる。特に、表示基板11としてプラスチックフィルムを用いる場合、軽量でフレキシブルなエレクトロクロミック表示装置10を作製することができる。
【0040】
表示電極11a〜11cの材料は、導電性を有する材料であればよく、特に限定されるものではない。ただし、光の透過性を確保するため、透明且つ導電性に優れた透明導電性材料を用いることが好ましい。これにより、発色する色の視認性をより高めることができる。透明導電性材料としては、スズをドープした酸化インジウム(Indium Tin Oxide;ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(Fluorine doped Tin Oxide;FTO)、アンチモンをドープした酸化スズ(Antimony tin oxide;ATO)等の無機材料を用いることができる。このうち、真空成膜法により形成されたインジウム酸化物(以下「In酸化物)という。)、スズ酸化物(以下「Sn酸化物」という。)又は亜鉛酸化物(以下「Zn酸化物」という。)の何れか1つを含む無機材料であることが好ましい。In酸化物、Sn酸化物及びZn酸化物は、スパッタ法により、容易に成膜することができる材料であると共に、良好な透明性と電気伝導度を得ることができる材料である。また、特に好ましい材料は、InSnO、GaZnO、SnO、In、ZnOである。
【0041】
表示電極11a〜11cのいずれか2つの間の電極間抵抗は、対向電極12aに対する一方の表示電極の電位を、対向電極12aに対する他方の表示電極の電位とは独立に制御することができる程度に大きな抵抗であることが好ましい。そのため、表示電極11a〜11cのいずれか2つの間の電極間抵抗が、少なくとも表示電極11a〜11cのいずれかのシート抵抗よりも大きくなるように形成されることが好ましい。表示電極11a〜11cのいずれか2つの間の電気抵抗が、表示電極11a〜11cのいずれかのシート抵抗よりも小さい場合、表示電極11a〜11cのいずれかの表示電極に電圧を印加すると、同程度の電圧が他の表示電極にも印加される。その結果、各表示電極に対応するエレクトロクロミック層13a〜13cを独立に発消色駆動することができない。各表示電極11a〜11cの間の電極間抵抗は、それぞれの表示電極11a〜11cのシート抵抗の500倍以上あることが好ましい。
【0042】
対向基板12の材料としては、特に限定されるものではなく、表示基板11と同様の材料を用いることができる。
【0043】
対向電極12aの材料は、導電性を有する材料であればよく、特に限定されるものではない。対向基板12として、ガラス基板、プラスチックフィルムを用いる場合、対向電極12aの材料として、ITO、FTO、酸化亜鉛等の透明導電膜、あるいは亜鉛、白金等の導電性金属膜、さらにはカーボン等を用いることができる。これらの透明導電膜又は導電性金属膜からなる対向電極12aは、真空成膜法または湿式コーティングにより形成される。一方、対向電極12aとして、亜鉛等の金属板を用いる場合、対向基板12が対向電極12aを兼ねる。
【0044】
対向電極12aの材料として、エレクトロクロミック層13a〜13cにおいて発生する酸化還元反応の逆の反応を発生させる材料を用いてもよい。これにより、エレクトロクロミック層13a〜13cを、安定して発消色駆動することが可能である。すなわち、エレクトロクロミック層13a〜13cが酸化反応により発色するときは還元反応が発生し、エレクトロクロミック層13a〜13cが還元反応により発色するときは酸化反応が発生する材料を、対向電極12aとして用いるか、又は対向電極12aの表面に形成して用いることができる。このような構成により、エレクトロクロミック層13a〜13cにおける発消色の反応が、より確実に発生するようになる。
【0045】
エレクトロクロミック層13a〜13cの材料として、酸化還元反応により色が変化する材料を用いることができる。このような材料として、ポリマー系、色素系、金属錯体、金属酸化物等の公知のエレクトロクロミック化合物を用いることができる。
【0046】
具体的には、ポリマー系、色素系のエレクトロクロミック化合物として、アゾベンゼン系、アントラキノン系、ジアリールエテン系、ジヒドロプレン系、スチリル系、スチリルスピロピラン系、スピロオキサジン系、スピロチオピラン系、チオインジゴ系、テトラチアフルバレン系、テレフタル酸系、トリフェニルメタン系、トリフェニルアミン系、ナフトピラン系、ビオロゲン系、ピラゾリン系、フェナジン系、フェニレンジアミン系、フェノキサジン系、フェノチアジン系、フタロシアニン系、フルオラン系、フルギド系、ベンゾピラン系、メタロセン系、等の低分子系有機エレクトロクロミック化合物、ポリアニリン、ポリチオフェン等の導電性高分子化合物を用いることができる。
【0047】
上記中、特に、好ましくは、下記一般式(1)
【0048】
【化1】

(式中、R1、R2は、それぞれ独立に置換基を有してもよい炭素数1から8のアルキル基、又はアリール基を表し、R1又はR2の少なくとも一方は、COOH、PO(OH)、Si(OC2k+1から選ばれる置換基を有する。Xは1価のアニオンを表す。n、m、lはそれぞれ独立に0または1を表す。kは0、1又は2を表す。A、B、Cはそれぞれ独立に置換基を有してもよい炭素数2から20のアリール基、複素環基を表す。)
により表されるジピリジン系化合物を含むことが好ましい。これらの材料は発消色電位が低いため、複数の表示電極を有するエレクトロクロミック表示装置10を構成した場合においても、良好な発色の色値を示す。
【0049】
エレクトロクロミック層13a〜13cにおけるエレクトロクロミック化合物は、例えば粒子径がナノメートルオーダーであるナノ構造(微細構造)を有する半導体材料(以下「ナノ構造半導体材料」という。)に吸着または結合したものであってもよい。また、エレクトロクロミック化合物とナノ構造半導体材料とは、混合され、単一層となっていてもよい。
【0050】
ナノ構造半導体材料としては、特に限定されるものではないが、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム(以下アルミナ)、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ケイ素(以下シリカ)、酸化イットリウム、酸素ホウ素、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、酸化カルシウム、フェライト、酸化ハフニウム、酸化タングステン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化バナジウム、アルミノケイ酸、リン酸カルシウム等を主成分とする金属酸化物が用いられる。また、これらの金属酸化物は、単独で用いられてもよく、2種以上が混合され用いられてもよい。電気伝導性等の電気的特性や光学的性質等の物理的特性を鑑みるに、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化インジウム、酸化タングステン、から選ばれる一種、もしくはそれらの混合物が用いられたとき、より発消色の応答速度に優れた多色表示が可能である。
【0051】
また、ナノ構造半導体材料の形状は、特に限定されるものではないが、エレクトロクロミック化合物を効率よく担持するために、単位体積当たりの表面積(以下「比表面積」という。)が大きい形状が用いられる。エレクトロクロミック化合物が大きな比表面積を有することにより、エレクトロクロミック層13a〜13cにエレクトロクロミック化合物を効率的に担持することができ、発消色の表示コントラスト比に優れた表示が可能である。
【0052】
エレクトロクロミック層13a〜13cの膜厚は、0.2〜50μmの範囲にあることが好ましい。膜厚が0.2μm未満である場合、高い発色濃度が得にくいからである。また、膜厚が50μmを超える場合、エレクトロクロミック表示装置10の製造コストが増大すると共に、エレクトロクロミック層13a〜13cが着色することにより、エレクトロクロミック表示装置10の視認性が低下するからである。
【0053】
絶縁層14a、14bの材料としては、多孔質膜であればよく、特に限定されるものではないが、絶縁性、耐久性及び成膜性に優れた有機材料および無機材料を用いることができる。
【0054】
多孔質膜よりなる絶縁層14a、14bの形成方法としては、以下に説明する各種の方法を含め、公知の形成方法を用いることができる。例えば、高分子微粒子や無機粒子を、バインダ等を添加して部分的に融着させ、粒子間に生じた孔を利用する燒結法を用いることができる。また、溶剤に可溶な有機物又は無機物類と溶剤に溶解しないバインダ等とで構成層を形成した後、溶剤で有機物又は無機物類を溶解させることによって細孔を得る抽出法を用いることができる。また、高分子重合体等を加熱し、又は脱気する等によって発泡させる発泡法を用いることができる。また、良溶媒と貧溶媒を操作することによって高分子類の混合物を相分離させる相転換法を用いることができる。また、各種放射線を輻射することによって細孔を形成させる放射線照射法を用いることができる。
【0055】
多孔質膜として、無機ナノ構造粒子(SiO粒子、Al粒子等)とポリマー結着剤よりなるポリマー混合粒子膜、多孔性有機膜(ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂)等を用いることができる。
【0056】
また、前述した多孔質膜上に、無機絶縁材料膜を形成して用いてもよい。無機絶縁材料膜としては、少なくともZnSを含む材料が好ましい。ZnSは、スパッタ法により、エレクトロクロミック層13a〜13c等にダメージを与えることなく高速に成膜できるという特徴を有する。更に、ZnSを主な成分として含む材料として、ZnO−SiO、ZnS−SiC、ZnS−Si、ZnS−Ge等を用いることができる。ここで、形成された絶縁層14a、14bの結晶性を良好に保つために、ZnSの含有率を、約50〜90mol%とすることが好ましい。従って、特に好ましい材料として、ZnS−SiO(8/2)、ZnS−SiO(7/3)、ZnS、ZnS−ZnO−In−Ga(60/23/10/7)を用いることができる。
【0057】
このような絶縁層14a、14bの材料を用いることにより、良好な絶縁性を確保するのに必要な厚さを低減することができるため、多層化したときに膜厚が厚くなって膜強度が低下し、膜が剥がれることを防止することができる。
【0058】
前述したようにZnS等をスパッタ法により形成する場合、予め下引き層として多孔性粒子膜を形成することによって、ZnS等の多孔質膜を形成することができる。この場合、前述のナノ構造半導体材料を多孔性粒子膜として用いてもよい。ただし、絶縁層14a、14bの絶縁性を確保するためには、別途シリカ、アルミナ等を含む多孔質膜を形成し、2層により構成された絶縁層とすることが好ましい。絶縁層14a、14bを多孔質膜にすることにより、電解質層16が絶縁層14a、14b中に、また、更に表示電極11a〜11cまで浸透することが可能となるため、酸化還元反応に伴う電解質層16中のイオン電荷の移動が容易となり、発消色の応答速度に優れた多色表示が可能である。
【0059】
また、絶縁層14a、14bの膜厚は20〜2000nmの範囲にあることが好ましい。膜厚が20nm未満である場合、絶縁性を確保しにくくなるからである。また、膜厚が2000nmを超える場合、エレクトロクロミック表示装置10の製造コストが増大すると共に、着色により、エレクトロクロミック表示装置10の視認性が低下しやすいからである。
【0060】
なお、エレクトロクロミック層13a〜13cの膜厚を大きくすること等によって、前述した表示電極11a〜11cの相互間の電気抵抗を十分大きくすることができる場合には、絶縁層14a、14bを省略することもできる。
【0061】
保護層15a〜15cは、絶縁性材料よりなり、一の表示電極11a〜11cとその一の表示電極11a〜11cに設けられた一のエレクトロクロミック層13a〜13cとの間に形成されている。すなわち、保護層15a〜15cは、少なくとも一つの表示電極の対向電極側の表面に、表示電極とエレクトロクロミック層との間に挟まれるように配置されている。
【0062】
エレクトロクロミック層13a〜13cが、ナノ構造半導体材料にエレクトロクロミック化合物が吸着または結合している形態では、表示電極11a〜11cの表面又はナノ構造半導体の表面に保護層15a〜15cを形成することができる。ただし、表示電極11a〜11cの表面に形成することがより好ましい。
【0063】
保護層15a〜15cの材料として、絶縁性を有する有機材料又は無機材料よりなる絶縁性材料を用いることができる。ただし、絶縁性材料として、絶縁性に優れる点において、金属酸化物を主成分とする無機材料を用いることがより好ましい。なお、絶縁性を有する材料とは、バンドギャップが大きく、直流電圧を印加したときに電流を流しにくい材料を意味する。有機材料として、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂等のポリマー材料を用いることができる。また、無機材料として、SiO、HfO、Ta、Al、ZrO、Si、ZnS又はこれらの混合物等、公知の材料を用いることができる。そのうち、特に、Al酸化物又はSi酸化物を含有する材料を用いることが好ましい。Al酸化物又はSi酸化物は、絶縁性に優れ、膜厚が薄い場合でも、選択したエレクトロクロミック層13a〜13cを容易に独立して発消色駆動することができるからである。
【0064】
保護層15a〜15cの膜厚は、0.5〜500nmの範囲にあることが好ましく、かつ、その保護層15a〜15cが形成された表示電極11a〜11cの膜厚よりも薄いことが好ましい。膜厚が0.5nm未満である場合、絶縁性を確保しにくいからである。また、膜厚が500nmを超える場合、表示電極11a〜11cからエレクトロクロミック層13a〜13cへの電荷の授受が低下すると共に、電解質の浸透性が低下することによって発消色が困難になるからである。また、保護層15a〜15cが表示電極11a〜11cの膜厚以上の膜厚を有していると、多孔性表示電極の凹が埋まりやすく、浸透性が低下しやすくなるためである。また、保護層15a〜15cが金属酸化物を主成分とする無機材料よりなる場合、保護層15a〜15cの膜厚は、0.5〜20nmの範囲にあることが好ましく、0.5〜5nmの範囲が特に好ましい。5nmよりも厚くなると発消色駆動速度が低下しやすいためである。さらに、各エレクトロクロミック層13a〜13cの発消色特性および各表示電極11a〜11cの導電性に合わせて、複数の表示電極11a〜11cごとに、保護層15a〜15cの膜厚が異なるように形成することが良い。また、すべての表示電極11a〜11cに保護層を形成する必要もない。
【0065】
また保護層15a〜15cを形成することで、エレクトロクロミック層13a〜13cとの接触(吸着または結合)が低下するなどの理由で発消色特性が低下する場合は、保護層15a〜15cの表面にさらに表面層を形成することが好ましい。この表面層材料としてはITOなど表示電極と同様の透明導電性材料などを用いることができる。
【0066】
電解質層16として、イオン伝導度を高くするため、支持塩を溶媒に溶解させた液体状の電解質層を用いることができる。支持塩として、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩、4級アンモニウム塩や酸類、アルカリ類の支持塩を用いることができる。具体的には、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、LiCFSO、LiCFCOO、KCl、NaClO、NaCl、NaBF、NaSCN、KBF、Mg(ClO、Mg(BF、過塩素酸テトラブチルアンモニウム等を用いることができる。また、溶媒として、例えばプロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、エチレンカーボネート、スルホラン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,2−ジメトキシエタン、1,2−エトキシメトキシエタン、ポリエチレングリコール、アルコール類を用いることができる。その他、電解質層16として、支持塩を溶媒に溶解させた液体状の電解質に限定されるものではなく、イオン液体、ゲル状の電解質や、ポリマー電解質等の固体電解質を用いることができる。
【0067】
一方、素子強度を向上し、信頼性を向上し、発色拡散を防止するためには、ゲル状又は固体状の電解質層16を用いることが好ましい。固体状の電解質層16として、電解質と溶媒をポリマー樹脂中に保持させた電解質層を用いることができる。電解質と溶媒をポリマー樹脂中に保持させた電解質層は、高いイオン伝導度と強度を有する。ポリマー樹脂として、光硬化可能な樹脂(光硬化樹脂)が好ましい。熱重合することによって、又は溶剤を蒸発させることによって電解質層の材料を薄膜化する方法に比べ、低温で又は短時間で製造できるためである。樹脂としては、特に限定されないが、ウレタン、エチレングリコール、ポリプレングリコール、ビニルアルコール、アクリル、エポキシなどを挙げることができる。
【0068】
また、電解質層16中に白色顔料粒子18を分散させることによって、電解質層16に白色反射層17の機能を付与することもできる。白色顔料粒子18としては、特に限定されないが、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化セシウム、酸化イットリウム等の金属酸化物を用いることができる。白色顔料粒子18の含有量が多い場合、電解質層16に光を照射して光硬化樹脂を硬化させる際に、白色顔料粒子18により光が遮蔽されてしまい、光硬化樹脂を良好に硬化させることができない。従って、電解質層16の厚さにも依存するが、白色顔料粒子18の含有量は、10〜50wt%の範囲にあることが好ましい。
【0069】
また、電解質層16の膜厚は、0.1〜200μmの範囲にあることが好ましく、1〜50μmの範囲にあることがより好ましい。膜厚が1μm未満である場合、電解質の保持が困難になり、膜厚が50μmを超える場合、電荷が、電解質層16の選択した画素の外側の領域における部分まで拡散しやすくなるためである。
【0070】
白色反射層17の材料として、金属、半金属に加え、酸化物、窒化物、硫化物等の真空成膜法により成膜可能な無機化合物膜、又は酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化セシウム、酸化イットリウム等の金属酸化物粒子よりなる膜を用いることができる。また、電解質の浸透性を付与するために、無機化合物膜よりなる白色反射層17は、絶縁層14a、14bと同様の構造を有することが好ましい。更に、十分な白色反射率を有する無機化合物膜を得るためには、下引き層の粒子径は、100〜400nmの範囲にあることが好ましい。また、金属酸化物粒子膜は、金属酸化物粒子を溶液に分散したペーストを塗布成膜することによって、容易に形成することができる。金属酸化物粒子として、酸化チタン粒子を用いることが特に好ましい。
【0071】
なお、白色反射層17の膜厚は、0.1〜50μmの範囲にあることが好ましく、0.5〜5μmの範囲にあることがより好ましい。白色反射層17の膜厚が0.5μm未満である場合、白色反射効果を得にくいからである。また、白色反射層17の膜厚が5μmを超える場合、電解質の浸透性と膜強度とを両立することが困難となるためである。
【0072】
また、酸化チタン粒子を含有する白色反射層17を用いる場合、白色反射率が最大値に収束する膜厚まで厚膜化すると、膜強度が低下する。従って、膜強度を確保するための白色反射層17と、電解質層16に白色顔料粒子18を混合した白色電解質層との2層により構成される白色反射層17を形成することが好ましい。
【0073】
次に、図2及び図3を参照し、保護層15a〜15cを形成することにより、先に発色駆動された一のエレクトロクロミック層の発色を保持しつつ、後に発色駆動される他のエレクトロクロミック層を独立して発色させることができることについて説明する。図2は、エレクトロクロミック表示装置10を発色駆動する際の様子を模式的に示す断面図である。図3は、比較例に係るエレクトロクロミック表示装置110を発色駆動する際の様子を模式的に示す断面図である。なお、図2及び図3において、白抜きの領域により発色領域を示すものとする。
【0074】
図2及び図3に示すように、エレクトロクロミック表示装置10、110では、対向電極12aは、対向画素電極12a−1、12a−2を含む複数の対向画素電極を有している。また、対向画素電極12a−1、12a−2は、それぞれA領域、B領域における画素に対応している。
【0075】
発色駆動の方法として、以下のような例について考える。初めに、A領域における対向画素電極12a−1と1層目の表示電極11aとの間に電圧を印加することによって、1層目のエレクトロクロミック層13aのうち、A領域における部分を発色駆動するものとする。次に、B領域に対応する対向画素電極12a−2と2層目の表示電極11bとの間に電圧を印加することによって、2層目のエレクトロクロミック層13bのうち、B領域における部分を発色駆動するものとする。
【0076】
まず、図3を参照し、比較例として、保護層を設けないエレクトロクロミック表示装置110について考える。エレクトロクロミック表示装置110では、対向画素電極12a−2と2層目の表示電極11bとの間に電圧を印加したときに、図3に示すように、1層目のエレクトロクロミック層13aのA領域における部分の発色が保持されず、2層目のエレクトロクロミック層13bのA領域における部分が発色するという問題が生ずる。
【0077】
これは、1層目のエレクトロクロミック層13aのA領域を発色させると電解質イオンが動くため、2層目のエレクトロクロミック層13bのB領域を発色させる電圧印加により表示電極11aと11b間の絶縁性が保持できなくなるためと考えられる。
【0078】
一方、本実施の形態では、図2に示すように、1層目の表示電極11aと、1層目のエレクトロクロミック層13aとの間に、絶縁性材料よりなる保護層15aが形成されている。本実施の形態では、保護層15aがエレクトロクロミック層13aの発色電荷が表示電極11aへ逆流することを防ぎ、絶縁(耐電圧)が不安定となった場合も発色状態を保持できる。また、表示電極11aと11b間の絶縁性(耐電圧)が向上されるため、対向画素電極12a−2と2層目の表示電極11bとの間に電圧を印加する際に、2層目のエレクトロクロミック層13bのA領域における部分が発色することを防止できる。その結果、図2に示すように、1層目のエレクトロクロミック層13aのA領域における部分の発色を保持しつつ、2層目のエレクトロクロミック層13bのB領域における部分を独立して発色させることができる。
【0079】
以上、本実施の形態によれば、エレクトロクロミック表示装置10は、積層された複数のエレクトロクロミック素子により構成される構造よりも単純な構造を有する。そして、表示電極11a〜11cのいずれかを選択し、対向電極12aとの間に電圧を印加することによって、表示電極11a〜11cのそれぞれに設けられた各エレクトロクロミック層13a〜13cに、任意の色を独立して発消色することができる。
【0080】
また、対向電極12aの各対向画素電極を、アクティブマトリックス駆動な画素電極として形成することによって、アクティブマトリックス駆動表示可能なアクティブマトリックス型表示装置を構成することができる。
(エレクトロクロミック表示装置の製造方法)
次に、図4を参照し、本発明の実施の形態に係るエレクトロクロミック表示装置の製造方法について説明する。図4は、エレクトロクロミック表示装置の製造方法の手順を説明するための工程図である。
【0081】
本発明の実施の形態に係るエレクトロクロミック表示装置の製造方法は、図4に示すように、表示電極形成工程(ステップS11)、保護層形成工程(ステップS12)、エレクトロクロミック層形成工程(ステップS13)、絶縁層形成工程(ステップS14)、白色反射層形成工程(ステップS15)、対向電極形成工程(ステップS16)、電解質層形成工程(ステップS17)及び貼合せ工程(ステップS18)を有する。
【0082】
表示電極形成工程(ステップS11)では、表示基板11上に、蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等の真空成膜法により表示電極11aを形成する。
【0083】
保護層形成工程(ステップS12)では、表示電極11aが形成されている表示基板11上に、保護層15aを形成する。保護層15aは、真空成膜法、塗布コート成膜法、インクジェット成膜法、印刷成膜法等の公知のプロセスにより容易に形成可能である。このうち、特に、真空成膜法により金属酸化膜よりなる表示電極11aを形成することが好ましい。表示電極11aと保護層15aを連続して成膜することによって、エレクトロクロミック表示装置10を製造する際の生産性を高くすることができるからである。
【0084】
エレクトロクロミック層形成工程(ステップS13)では、表示電極11aが形成された表示基板11上に、エレクトロクロミック層13aを、スピンコート法又はスクリーン印刷法等の印刷法により形成する。
【0085】
絶縁層形成工程(ステップS14)では、エレクトロクロミック層13aが形成された表示基板11上に、蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等の真空成膜法、またはスピンコート法又はスクリーン印刷法等の印刷法により絶縁層14aを形成する。
【0086】
このように、表示電極形成工程(ステップS11)から絶縁層形成工程(ステップS14)を行うことにより、1層目の表示電極11a、保護層15a、エレクトロクロミック層13a、絶縁層14aを形成することができる。そして、表示電極形成工程(ステップS11)から絶縁層形成工程(ステップS14)の工程を、更に2回繰り返す。これにより、図1に示すように、表示基板11上に、それぞれエレクトロクロミック層13a〜13cが設けられた表示電極11a〜11cを、表示基板11側から対向電極12a側に向かって互いに離隔して設けることができる。
【0087】
ただし、3層目の絶縁層形成工程(ステップS14)は省略してもよい。図1に示すエレクトロクロミック表示装置10では、3層目の絶縁層が省略されている。
【0088】
白色反射層形成工程(ステップS15)では、表示電極11aからエレクトロクロミック層13cが形成された表示基板11上に、白色反射層17を、スピンコート法又はスクリーン印刷法等の印刷法により形成する。
【0089】
対向電極形成工程(ステップS16)では、対向基板12上に、蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等の真空成膜法により対向電極12aを形成する。また、対向電極12aが有機材料よりなる場合には、対向電極12aをスピンコート法又はスクリーン印刷法等の印刷法により形成することもできる。
【0090】
電解質層形成工程(ステップS17)では、対向電極12aが形成された対向基板12上に、例えば電解質を含む分散液ペーストを塗布することによって、電解質層16を形成する。
【0091】
貼合せ工程(ステップS18)では、表示電極11aから白色反射層17が形成された表示基板11と、対向電極12a及び電解質層16が形成された対向基板12とを、対向電極12aと表示電極11a〜11cとが対面するように貼合せる。具体的には、例えば、表示基板11と対向基板12とを重ねて貼り合せ、対向基板12側からUV光を照射し、電解質層16に含むUV硬化接着剤を硬化させることによって、表示基板11と対向基板12とを貼合せる。
(エレクトロクロミック表示装置の駆動方法)
次に、図5を参照し、本発明の実施の形態に係るエレクトロクロミック表示装置の駆動方法について説明する。図5は、エレクトロクロミック表示装置の駆動方法の手順を説明するための工程図である。
【0092】
本発明の実施の形態に係るエレクトロクロミック表示装置の駆動方法は、図5に示すように、第1の駆動工程(ステップS21)、第2の駆動工程(ステップS22)、及び第3の駆動工程(ステップS23)を有する。
【0093】
第1の駆動工程(ステップS21)では、1層目のエレクトロクロミック層13aの発消色させたい所望の領域における対向画素電極12aと1層目の表示電極11aとの間に電圧を印加する。すると、所望の領域において、1層目のエレクトロクロミック層13aが発消色駆動される。
【0094】
次に、第2の駆動工程(ステップS22)では、2層目のエレクトロクロミック層13bの発消色させたい所望の領域における対向画素電極12aと2層目の表示電極11bとの間に電圧を印加する。すると、所望の領域において、2層目のエレクトロクロミック層13bが発消色駆動される。
【0095】
次に、第3の駆動工程(ステップS23)では、3層目のエレクトロクロミック層13cの発消色させたい所望の領域における対向画素電極12aと3層目の表示電極11cとの間に電圧を印加する。すると、所望の領域において、3層目のエレクトロクロミック層13cが発消色駆動される。
【0096】
本発明の実施の形態に係るエレクトロクロミック表示装置の駆動方法は、複数の表示電極11a〜11cを、対向電極12aからの距離が遠い順(11a、11b、11cの順)に発色駆動するものである。すなわち、各表示電極11a〜11cに形成されている各エレクトロクロミック層13a〜13cを、対向電極12aからの距離が遠い順(13a、13b、13cの順)に発色駆動するものである。対向電極12aからの距離が、電圧が印加され、発色駆動される表示電極(例えば11b)よりも遠い位置にある表示電極(例えば11a)は、印加される電圧の影響を受けにくい。そのため、選択したエレクトロクロミック層(例えば13b)を独立して発色させることができる。
【0097】
なお、保護層15a〜15cの膜厚を大きくすること等により、表示電極11a〜11cの相互間の絶縁性が確保されている場合は、各表示電極11a〜11cを発色駆動する順番を任意に変更することができる。例えば、第1の駆動工程(ステップS21)から第3の駆動工程(ステップS23)を同時に行い、表示電極11a〜11cを同時に発色駆動してもよい。あるいは、第3の駆動工程(ステップS23)、第2の駆動工程(ステップS22)、第1の駆動工程(ステップS21)の順に行い、表示電極11a〜11cを、対向電極12aからの距離が近い順(11c、11b、11aの順)に発色駆動してもよい。
【0098】
一方、消色駆動では各表示電極11a〜11cを消色駆動する順番を任意に変更することもできるが、全ての表示電極11a〜11cを同時に消色駆動することが好ましい。消色駆動時間を短縮できるためである。
【実施例】
【0099】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、実施例により限定されて解釈されるものではない。
(実施例1)
[エレクトロクロミック表示装置の作製]
<表示電極/保護層/エレクトロクロミック層/絶縁層/白色反射層の形成>
表示基板11として、40mm×40mmの寸法を有する厚さ0.7mmのガラス基板を準備し、ガラス基板上に、ITO膜をスパッタ法により約100nmの厚さになるように成膜することによって、1層目の表示電極11aを形成した。さらにITO膜よりなる1層目の表示電極11aの表面に、Al膜をスパッタ法により約5nmの厚さになるように成膜することによって、1層目の保護層15aを形成した。
【0100】
その上に、酸化チタンナノ粒子分散液(商品名:SP210、昭和タイタニウム株式会社製、平均粒子径:約20nm)をスピンコート法により塗布し、120℃で15分間アニール処理を行うことによって、厚さ約1.5μmの酸化チタン粒子膜よりなるナノ構造半導体材料を形成した。続いて、エレクトロクロミック化合物として、式(2)
【0101】
【化2】

により表される化合物の0.8wt%2,2,3,3−テトラフロロプロパノール溶液を、スピンコート法により塗布し、120℃で10分間アニール処理を行い、酸化チタン粒子膜に吸着させることによって、1層目のエレクトロクロミック層13aを形成した。
【0102】
次に、SiO粒子(商品名:NanoTek、関東化学株式会社製、平均粒子径:約30nm)を、γ−ブチルラクトンと炭酸プロピレンの1/1混合溶媒に5wt%分散させ、ポリマー結着剤としてウレタン樹脂を添加した塗布液を準備した。そして、この塗布液をスピンコート法により塗布し、120℃で5分間アニール処理することによって、厚さ約500nmのSiO粒子層を形成した。その上に、スパッタ法によりZnS−SiO(8/2)を約30nmの厚さになるように成膜することによって、2層により構成され、電解質の浸透性を有する絶縁層14aを形成した。
【0103】
その上に、式(3)
【0104】
【化3】

により表される化合物の1.0wt%2,2,3,3−テトラフロロプロパノール溶液を、スピンコート法により塗布することによって、2層目のエレクトロクロミック層13bを形成したこと以外、1層目と同様にして、2層目の表示電極11b、2層目の保護層15b、2層目のエレクトロクロミック層13b、2層目の絶縁層14bを形成した。
【0105】
その上に、式(4)
【0106】
【化4】

により表される化合物の0.8wt%2,2,3,3−テトラフロロプロパノール溶液を、スピンコート法により塗布することによって、3層目のエレクトロクロミック層13cを形成し、3層目の絶縁層を省略したこと以外、1層目と同様にして、3層目の表示電極11c、3層目の保護層15c、3層目のエレクトロクロミック層13cを形成した。
【0107】
次に、2,2,3,3−テトラフロロプロパノール溶液に、ポリマー結着剤及び電解質として、ポリエチレングリコール(分子量200)/ウレタンペースト(商品名:HW140SF 、DIC株式会社製)/過塩素酸テトラブチルアンモニウムのジメトキシスルホキシド20wt%溶液を5wt%、3wt%、17wt%混合させ、更に酸化チタン粒子(商品名:CR50、石原産業株式会社製、平均粒子径:約250nm)を30wt%分散させたペーストを準備した。そして、このペーストを3層目のエレクトロクロミック層13c上にスピンコート法により塗布し、120℃で5分間アニール処理を行うことによって、厚さ約1μmの白色反射層17を形成した。
<対向電極/電解層の形成>
対向基板12として、32mm×40mmの寸法を有する厚さ0.7mmのガラス基板を準備した。そして、ガラス基板上に、ライン幅4mm、スペース幅1mmのライン部を6本有し、全体として35mm幅の矩形形状を有するITO膜を、スパッタ法により約100nmの厚さになるように成膜することによって、対向電極12aを形成した。
【0108】
次に、電解質として過塩素酸テトラブチルアンモニウム、溶媒としてジメチルスルホキシド及びポリエチレングリコール(分子量:200)、並びにUV硬化接着剤(商品名:PTC10、十条ケミカル株式会社製)を、1.2対5.4対6対16で混合した溶液に、白色酸化チタン粒子(商品名:CR50、石原産業株式会社製、平均粒子径:約250nm)を20wt%分散させたペーストを準備した。そして、このペーストを白色反射層17上に滴下することによって塗布した。次に、表示基板11を対向基板12と重ね、対向基板12側からUV光を照射し、UV硬化接着剤を硬化させ、表示基板11と対向基板12とを貼り合わせることによって、図1に示すエレクトロクロミック表示装置10を作製した。ビーズスペーサーを電解層に0.2wt%混合することによって、電解質層16の厚さを10μmとした。
【0109】
このときの、エレクトロクロミック表示装置10の平面視における構成を、図6の平面図に示す。図6において、各表示電極11a、11b、11cは、それぞれ点線、一点鎖線、二点鎖線により表される。
【0110】
各表示電極11a、11b、11c及び対向電極12a(対向画素電極12a−1、12a−2)は、平面視において図6に示す配置になるように形成されている。他の層は、各表示電極11a、11b、11cに対応する駆動接続部11a´、11b´、11c´を除き、ガラス基板の全面に形成されている。表示電極11a、11b、11c及び対向電極12aのシート抵抗は150Ω/cmであり、表示電極11a、11b、11c相互間の抵抗をそれぞれ駆動接続部11a´、11b´、11c´を用いて測定したところ、全て1MΩ以上であった。
[発消色試験1]
1層目の表示電極11aの駆動接続部11a´に負極を、対向画素電極12a−1に正極を接続し、4.5Vの電圧を1秒間印加したところ、1層目のエレクトロクロミック層13aが対向画素電極12a−1の形状(ライン部の形状)に従ってマゼンタ色に発色した。
【0111】
次に、負極と正極とが逆になるように接続し、−4.5Vの電圧を2秒間印加したところ、1層目のエレクトロクロミック層13aは完全に消色し、白色に戻った。
【0112】
また、4.5Vの電圧を1秒間印加した後、電圧を印加せずに5分放置しても、発色が保持されたことから、画像保持特性に優れることが確認された。
【0113】
また、消色状態における白色反射率を、分光測色計LCD−5000(大塚電子株式会社製)により表示基板11側から測定したところ、50%であった。
[発消色試験2]
1層目の表示電極11aの駆動接続部11a´に負極を、対向画素電極12a−1に正極を接続し、4.5Vの電圧を1秒間印加したところ、1層目のエレクトロクロミック層13aが対向画素電極12a−1の形状(ライン部の形状)に従ってマゼンタ色に発色した。
【0114】
次に、2層目の表示電極11bの駆動接続部11b´に負極を、対向画素電極12a−2に正極を接続し、4.5Vの電圧を1秒間印加したところ、2層目のエレクトロクロミック層13bが対向画素電極12a−2の形状(ライン部の形状)に従って青色に発色した。その結果、マゼンタと青のライン部を表示することができた。
(実施例2)
[エレクトロクロミック表示装置の作製]
実施例1において、保護層15a〜15cを厚さ10nmのSiOに変更したこと以外同様にして、図1を用いて説明したエレクトロクロミック表示装置10を作製した。
[発消色試験1]
1層目の表示電極11aの駆動接続部11a´に負極を、対向画素電極12a−1に正極を接続し、4.5Vの電圧を1秒間印加したところ、1層目のエレクトロクロミック層13aが対向画素電極12a−1の形状(ライン部の形状)に従ってマゼンタ色に発色した。
【0115】
次に、負極と正極とが逆になるように接続し、−4.5Vの電圧を2秒間印加したところ、1層目のエレクトロクロミック層13aは完全に消色し、白色に戻った。
【0116】
また、4.5Vの電圧を1秒間印加した後、電圧を印加せずに5分放置しても、発色が保持されたことから、画像保持特性に優れることが確認された。
【0117】
また、消色状態における白色反射率を、分光測色計LCD−5000(大塚電子株式会社製)を用いて、表示基板11側から測定したところ、51%であった。
[発消色試験2]
1層目の表示電極11aの駆動接続部11a´に負極を、対向画素電極12a−1に正極を接続し、4.5Vの電圧を1秒間印加したところ、1層目のエレクトロクロミック層13aが対向画素電極12a−1の形状(ライン部の形状)に従ってマゼンタ色に発色した。
【0118】
次に、2層目の表示電極11bの駆動接続部11b´に負極を、対向画素電極12a−2に正極を接続し、4.5Vの電圧を1秒間印加したところ、2層目のエレクトロクロミック層13bが対向画素電極12a−2の形状(ライン部の形状)に従って青色に発色した。その結果、マゼンタと青のラインを表示することができた。
(比較例1)
[エレクトロクロミック表示装置の作製]
実施例1において、保護層を形成しないこと以外同様にして、比較例1に係るエレクトロクロミック表示装置110を作製した。
[発消色試験1]
1層目の表示電極11aの駆動接続部11a´に負極を、対向画素電極12a−1に正極を接続し、4.5Vの電圧を1秒間印加したところ、1層目のエレクトロクロミック層13aが対向画素電極12a−1の形状(ライン部の形状)に従ってマゼンタ色に発色した。
【0119】
次に、負極と正極とが逆になるように接続し、−4.5Vの電圧を2秒間印加したところ、1層目のエレクトロクロミック層13aは完全に消色し、白色に戻った。
【0120】
また、4.5Vの電圧を1秒間印加した後、電圧を印加せずに5分放置しても、発色が保持されたことから、画像保持特性に優れることが確認された。
【0121】
また、消色状態における白色反射率を、分光測色計LCD−5000(大塚電子株式会社製)により表示基板11側から測定したところ、52%であった。
[発消色試験2]
1層目の表示電極11aの駆動接続部11a´に負極を、対向画素電極12a−1に正極を接続し、4.5Vの電圧を1秒間印加したところ、1層目のエレクトロクロミック層13aが対向画素電極12a−1の形状(ライン部の形状)に従ってマゼンタ色に発色した。
【0122】
次に、2層目の表示電極11bの駆動接続部11b´に負極を、対向画素電極12a−2に正極を接続し、4.5Vの電圧を1秒間印加したところ、対向画素電極12a−1の形状(ライン部の形状)に従って発色していたマゼンタ色が消失し、2層目のエレクトロクロミック層13bが対向画素電極12a−1の形状(ライン部の形状)および対向画素電極12a−2の形状(ライン部の形状)に従って青色に発色し、青色の2本のライン部が表示された。
(比較例2)
[エレクトロクロミック表示装置の作製]
実施例1において、保護層15a〜15cを導電性酸化物であるAZO(ZnO+Al(2wt%))10nmに変更したこと以外同様にして、比較例2に係るエレクトロクロミック表示装置10を作製した。
[発消色試験1]
1層目の表示電極11aの駆動接続部11a´に負極を、対向画素電極12a−1に正極を接続し、4.5Vの電圧を1秒間印加したところ、1層目のエレクトロクロミック層13aが対向画素電極12a−1の形状(ライン部の形状)に従ってマゼンタ色に発色した。
【0123】
次に、負極と正極とが逆になるように接続し、−4.5Vの電圧を2秒間印加したところ、1層目のエレクトロクロミック層13aは完全に消色し、白色に戻った。
【0124】
また、4.5Vの電圧を1秒間印加した後、電圧を印加せずに5分放置しても、発色が保持されたことから、画像保持特性に優れることが確認された。
【0125】
また、消色状態における白色反射率を、分光測色計LCD−5000(大塚電子株式会社製)を用いて、表示基板11側から測定したところ、50%であった。
[発消色試験2]
1層目の表示電極11aの駆動接続部11a´に負極を、対向画素電極12a−1に正極を接続し、4.5Vの電圧を1秒間印加したところ、1層目のエレクトロクロミック層13aが対向画素電極12a−1の形状(ライン部の形状)に従ってマゼンタ色に発色した。
【0126】
次に、2層目の表示電極11bの駆動接続部11b´に負極を、対向画素電極12a−2に正極を接続し、4.5Vの電圧を1秒間印加したところ、対向画素電極12a−1の形状(ライン部の形状)に従って発色していたマゼンタ色が消失し、2層目のエレクトロクロミック層13bが対向画素電極12a−1の形状(ライン部の形状)および対向画素電極12a−2の形状(ライン部の形状)に従って青色に発色し、青色の2本のライン部が表示された。
(実施例3、4)
[エレクトロクロミック表示装置の作製]
実施例1において、保護層15a〜15cの厚さを0.5nm、1nmのSiOに変更したこと以外同様にして、図1を用いて説明したエレクトロクロミック表示装置10を作製し、実施例3、4とした。そして、実施例3、4について、実施例1と同様に、[発消色試験2]を行った。また、実施例3については、表示電極の発色駆動順序を変えた場合についても、[発消色試験2]を実施した。その結果を、前述した実施例1、2、比較例1と合わせて、表1に示す。
【0127】
【表1】

1層目の表示電極11aの駆動接続部11a´に負極を、対向画素電極12a−1に正極を接続し、4.5Vの電圧を1秒間印加したところ、実施例3、4ともに、1層目のエレクトロクロミック層13aが対向画素電極12a−1の形状(ライン部の形状)に従ってマゼンタ色に発色した。
【0128】
次に、2層目の表示電極11bの駆動接続部11b´に負極を、対向画素電極12a−2に正極を接続し、4.5Vの電圧を1秒間印加したところ、実施例3、4ともに、2層目のエレクトロクロミック層13bが対向画素電極12a−2の形状(ライン部の形状)に従って青色に発色した。その結果、マゼンタと青のラインを表示することができた。
【0129】
なお、実施例3において表示電極の発色駆動順序を変えた場合については、初めに、2層目の表示電極11bに負極を接続して電圧を印加したところ、2層目のエレクトロクロミック層13bが対向画素電極12a−2の形状(ライン部の形状)に従って青色に発色した。しかし、次に、1層目の表示電極11aに負極を接続して電圧を印加したところ、1層目のエレクトロクロミック層13aが対向画素電極12a−1の形状(ライン部の形状)に従ってマゼンタ色に発色せず、2層目のエレクトロクロミック層13bが対向画素電極12a−1の形状(ライン部の形状)に従って青色に発色した。その結果、青色の2本のライン部が表示された。
【0130】
以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0131】
10 エレクトロクロミック表示装置
11 表示基板
11a〜11c 表示電極
12 対向基板
12a 対向電極
13a〜13c エレクトロクロミック層
14a、14b 絶縁層
15a〜15c 保護層
16 電解質層
17 白色反射層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0132】
【特許文献1】特表2001−510590号公報
【特許文献2】特開昭63−94501号公報
【特許文献3】特開2008−304906号公報
【特許文献4】特開2003−270671号公報
【特許文献5】特開2010−33016号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示基板と、表示電極と、対向基板と、対向電極と、
前記表示電極に設けられたエレクトロクロミック層と、
前記表示電極と前記対向電極とに挟まれるように設けられた電解質層と
を有するエレクトロクロミック表示装置において、
前記表示基板と前記対向電極との間に、それぞれ前記エレクトロクロミック層が設けられた前記表示電極が、互いに隔離して複数設けられ、
少なくとも一つの前記表示電極の前記対向電極側の表面に、前記表示電極と前記エレクトロクロミック層との間に挟まれるように配置した、絶縁性材料よりなる保護層が形成されたことを特徴とするエレクトロクロミック表示装置。
【請求項2】
前記絶縁性材料は、金属酸化物を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載のエレクトロクロミック表示装置。
【請求項3】
前記保護層は、前記保護層が形成された前記表示電極よりも膜厚が薄いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエレクトロクロミック表示装置。
【請求項4】
前記保護層の厚さが0.5〜5nmであることを特徴とする、請求項3に記載のエレクトロクロミック表示装置。
【請求項5】
前記複数の保護層の厚さが、複数の表示電極ごとに異なるように形成されていることを特徴とする、請求項3に記載のエレクトロクロミック表示装置。
【請求項6】
前記絶縁性材料は、Al酸化物又はSi酸化物を含有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のエレクトロクロミック表示装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のエレクトロクロミック表示装置の製造方法であって、
前記保護層を真空成膜法により形成する工程を有することを特徴とするエレクトロクロミック表示装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のエレクトロクロミック表示装置の駆動方法であって、
複数の前記表示電極を、前記対向電極からの距離が遠い順に発色駆動することを特徴とするエレクトロクロミック表示装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−53446(P2012−53446A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137121(P2011−137121)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】