説明

エレベータの乗籠の音響装置

【課題】エレベータの乗籠に音響装置を設置する際に、意匠性を損なわずに、かつ、音が聴き取り易く設置された音響装置を提供する。
【解決手段】音響装置10は、取付部11と表示プレートと音出口部12と音響通路と音抜部とスピーカ15とを備える。取付部11は、エレベータの乗籠2に設置される操作盤21のフェイスプレート21aに開口する。表示プレートは、凸部と鍔部を有している。音出口部12は、取付部11の内周縁と凸部の外周部との間に形成され、フェイスプレート21aの板厚方向に開口する。音響通路は、鍔部に形成されて音出口部12に連通する。音抜部は、鍔部を板厚方向に貫通しており、音響通路に連通する。スピーカ15は、表示プレートの背面側から音抜部を覆って取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの乗籠内に設置されて、乗客に音声案内などを行う音響装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの乗籠の乗客に音声案内をするために、または、非常時に乗籠の乗客が外部の人と通話できるようにするために、音響装置が乗籠に設置されている。エレベータの乗籠の操作盤内にエレベータの利用者に音声で案内を行うスピーカとインターホン設備を設置したエレベータの音響装置が特許文献1に記載されている。この音響装置は、音声案内用のスピーカから出力される音がインターホンの機能に与える影響を小さくするために、操作盤表面板上にインターホンのスピーカとマイクとを設置し、操作盤にマイクの指向性範囲に影響を与えない位置に音声案内用スピーカを設置している。このようにすることで、インターホンが使用されているときに音声案内が流れても、マイクがハイレベルで音声案内を拾わないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−263349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インターホンは、非常時に利用される際に、お互いの会話が聞き取りにくいということが無いようにしなければならない。ただし利用頻度を考えると、音声案内用スピーカから音を出力することがほとんどである。特許文献1に記載された音声案内用のスピーカは、出力穴が設けられたスピーカケースに収められ、操作盤表面板の背面に設置されている。
【0005】
しかし、スピーカケース自体が操作盤表面板の背面に設置されるため、音声案内用スピーカから出力される音が、くぐもって聞こえることがある。このようなことを解消するために、操作盤表面板にも穴を開ける場合がある。ところが、乗籠の内装などエレベータに意匠性が求められている場合、操作盤表面板に穴を開けないようにするために、音声案内用スピーカは、乗籠の天井に設置される。天井には、照明装置のほか、換気扇や空調設備なども設置されるので、スピーカを設置するための場所が限られてしまう。また、スピーカのための配線なども施さなければならないので、設置コストが高くなる。そして、スピーカを天井に設置した場合、人間の聴覚の指向性を考慮すると、普段聞きなれない方向に音源があることになる。その結果、音質が改善されても、人によっては、聴き取り難いこともある。
【0006】
そこで、本発明は、エレベータの乗籠に音響装置を設置する際に、意匠性を損なわずに、かつ、音が聴き取り易く設置された音響装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の音響装置は、取付部と表示プレートと音出口部と音響通路と音抜部とスピーカとを備える。取付部は、エレベータの乗籠に設置される操作盤のフェイスプレートに開口する。表示プレートは、取付部の内側に嵌る凸部、この凸部からフェイスプレートの背面に沿って広がる鍔部を有している。音出口部は、取付部の内周縁と凸部の外周部との間に形成され、フェイスプレートの板厚方向に開口する。音響通路は、鍔部に形成されて音出口部に連通する。音抜部は、鍔部を板厚方向に貫通しており、音響通路に連通する。スピーカは、表示プレートの背面側から音抜部を覆って取り付けられる。
【0008】
この場合、音出口部は、凸部の全周に渡って設ける。また、スピーカは、乗籠の中の乗客に音声案内を出力するために使用される。
【0009】
乗籠の中の乗客と通話するためのマイクおよびインターホンスピーカを有するインターホンをさらに備えてもよい。この場合スピーカは、乗籠の中の乗客に対する音声案内を少なくとも出力するために用いられる。音響通路は、第1の通路および第2の通路の少なくとも2つに分けて鍔部に形成される。音抜部は、第1の通路に連通する第1の音抜部と第2の通路に連通する第2の音抜部とを有する。そして、スピーカは、第1の音抜部を覆って取り付けられ、インターホンスピーカは、第2の音抜部を覆って取り付けられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の音響装置によれば、乗籠の乗客に対して、スピーカから音抜部、音響通路を通って操作盤のフェイスプレートの取付部と表示プレートの凸部との間に形成される音出口部から音を出力する。乗籠の内面に音を出力するための穴として、複数の穴を設ける必要が無いため、意匠性を損なわない。また、乗籠の乗客に対して、操作盤に設けられる表示プレートのほうから音を伝えるので、音が聴き取り易い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態の音響装置が設置された乗籠の操作盤を示す斜視図。
【図2】図1に示した音響装置の表示プレートを示す斜視図。
【図3】図1に示した音響装置の縦断面図。
【図4】本発明の第2の実施形態の音響装置の表示プレートを示す斜視図。
【図5】図4に示した音響雄地の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の実施形態の音響装置10は、図1から図3を参照して説明する。音響装置10は、図1に示すように、エレベータの乗籠2の中に設けられる。この音響装置10は、乗籠2に設置される操作盤21の操作ボタン211上部に設置された表示装置22の背後に組み込まれている。音響装置10は、図1および図3に示すように、取付部11と表示プレート221と音出口部12と音響通路13と音抜部14とスピーカ15と制御部16を備える。また、このエレベータの乗籠2は、表示装置22と操作ボタン211との間にインターホン17を備えている。
【0013】
取付部11は、操作盤21のフェイスプレート21aに開口されている。この取付部11は、表示装置22の表示プレート221を嵌め込むために用意されている。表示装置22は、図2に示すように、乗客に対して、乗籠2の現在位置を示す位置灯222や移動方向を示す方向指示灯223のほか、満員になった場合や、地震などの災害時に非常停止したことを知らせる報知灯224を有している。表示プレート221は、位置灯222、方向指示灯223、報知灯224が点灯したときにその光が透過して乗籠2の中に表示される程度に黒色の半透明の透光板である。
【0014】
表示プレート221は、図2および図3に示すように、取付部11の内側に嵌る凸部221a、およびこの凸部221aからフェイスプレート21aの背面に沿って広がる鍔部221bを有している。凸部221aは、表示プレート221が取付部11に嵌め込まれた状態で、乗籠2の中に面した表側がフェイスプレート21aと面一になるように設けられている。表示プレート221は、フェイスプレート21aの背面に付けられたスタッドボルト21bに、鍔部221bに設けられたボルト穴221cを合わせることによって、位置決めされる。
【0015】
音出口部12は、取付部11の内周縁と凸部221aの外周部との間に形成され、フェイスプレート21aの板厚方向に開口している。この音出口部12は、図3に示すように、取付部11に表示プレート221を装着したことによってできる隙間である。音出口部12は、凸部221aの全周にわたって均一な幅で設けられている。したがって、乗籠2の室内から見た場合、いわゆる「合い沿い」の良い仕上がりに見える。
【0016】
音響通路13は、図2および図3に示すように、凸部221aの基部を囲う外周全周にわたって、鍔部221bに形成されている。この音響通路13は、図3に示すように、音出口部12に連通している。なお、この音響通路13は、必ずしも凸部221aの全周にわたって設けられている必要はなく、部分的なものであっても良い。
【0017】
音抜部14は、図3に示すように鍔部221bを板厚方向に貫通して設けられており、音響通路13に連通している。この音抜部14は、凸部221aの上部に配置された音響通路13に複数設けられている。スピーカ15は、表示プレート221の背面側から音抜部14を覆って取り付けられている。このときスピーカ15は、図2に示す楕円形をしており、複数の音抜部14を全体的に覆っている。音抜部14は、複数の丸穴を設ける代わりに、一定の幅を有したスリットであっても良い。
【0018】
制御部16は、図3に示すように表示プレート221の背面に取り付けられるケース161に、表示装置22の位置灯222、方向指示灯223、報知灯224とともに収納されている。制御部16は、図1に示すように、スピーカ15と、表示装置22と、インターホン17に接続されている。制御部16は、中の乗客に対して乗籠2の運転に合わせた音声案内を出力する。
【0019】
例えば、着床している階から乗籠2が上に移動する際に「上へ参ります」と音声案内をスピーカ15から出力し、方向指示灯223に上向きの矢印を表示する。そして、目的階に着床したら「〜階です」と音声案内をスピーカ15から出力する。また、乗籠2の積載荷重を超えた場合には、報知灯224に満員であることを表示し、スピーカ15から例えば「満員です、最後の方は降りてください」というような音声案内を出力する。このほか様々状況に合わせた音声案内が、予め内部記憶媒体に保存されている。制御部16は、状況に応じて表示装置22に表示をするとともに、各音声案内をスピーカ15から出力する。
【0020】
また、制御部16は、インターホン17に接続されており、非常呼び出しボタン171が押された場合に、管理センタなど、外部の係員と通話できるようにする。本実施形態では、インターホン17は、フェイスプレート21aに設けられた複数の穴で構成された通話部172の背面にインターホンスピーカ173およびマイク174を有している。
【0021】
以上の構成を有した音響装置10は、音声案内を行うスピーカ15を、非常時に使用されるインターホン17と別系統で、備えている。そして、スピーカ15の音は、音抜部14および音響通路13を通って、操作盤21の取付部11と表示装置22の表示プレート221との隙間にできる音出口部12から直接的に出力される。音は、空気の振動である。したがって、音響装置10は、スピーカ15から空間的に音出口部12まで連通していることにより、音抜けが良い。また、表示プレート221の凸部221aの外周に設けられた音出口部12は、乗籠2の乗客の顔よりもやや高い位置に設けられているので、乗籠2が満員に近い状況であっても、乗客の頭を越えて乗籠の奥まで音声案内が伝わりやすい。さらに、顔に近い高さから音声案内が届くので、乗客が音声案内を聞き取り易い。
【0022】
本発明の第2の実施形態の音響装置10は、図4および図5を参照して説明する。この実施形態の音響装置10は、表示装置22の上側に音声案内用のスピーカ15が組み込まれ、表示装置22のの下側にインターホンスピーカ173およびマイク174が組み込まれている。音響通路13は、図4に示すように高さ方向に表示プレート221のほぼ中央となる位置で、音声案内側の第1の通路131とインターホン側の第2の通路132とに分ける仕切り133を有している。
【0023】
また、音抜部14は、第1の通路131に連通する第1の音抜部141と、第2の通路132に連通する第2の音抜部142を備える。第1の音抜部141は、スピーカ15が配置される表示装置22の上側の範囲に配置される。スピーカ15は、複数ある第1の音抜部141また第2の音抜部142は、インターホンスピーカ173が配置される表示装置22の下側の範囲に配置される。第2の音抜部142の少なくとも一つは、マイク174に対応して配置されている。
【0024】
以上のように構成されていることによって、インターホン17のために通話部172として複数の穴をフェイスプレート21aに設けなくても良い。したがって、乗籠2の室内の意匠において、見た目がシンプルになる。また、インターホン17は、常時頻繁に使用されるものではないが、必要なときには、お互いの音声がはっきりと聞こえる必要がある。この実施形態の場合、インターホン17の通話部172が、音声案内用のスピーカ15と同様に設けられている。したがって、フェイスプレート21aに設けられた取付部11と表示プレート221との隙間に形成される音出口部12から、インターホンスピーカ173の音が直接的に出力される。また、乗籠2の内部の乗客の声も直接的にマイク174に伝わる。
【0025】
第2の実施形態の音響装置10の上記以外の構成は、第1の実施形態の音響装置10と比較して、図1に示したインターホン17が表示装置22の背後に移動され、通話部172となる複数の穴がフェイスプレート21aからなくなることを除いて、同じである。したがって、図4および図5において、同じ機能を有する構成に同一の符号を付して、その説明は、第1の実施形態の対応する記載から参酌するものとする。
【0026】
なお、第2の実施形態のインターホン17は、表示装置22の背面に設けた。同様に、非常呼び出しボタン171の背面にインターホンスピーカ173およびマイク174を表示装置と同様の構造で配置しても良い。つまり非常呼出ボタンの外周部とフェイスプレート21aとの間に隙間を設けて音出口部を作り、音響通路、音抜部を通して音声が伝わるようにする。このようにすることで、非常時にインターホン17を使用する場合、通話口がなくても、非常呼び出しボタン171が通話できる箇所として暗に示されることになる。そして、意匠性も損なうことなく、インターホン17の音質も確保される。
【符号の説明】
【0027】
2…乗籠、10…音響装置、11…取付部、12…音出口部、13…音響通路、14…音抜部、15…スピーカ、16…制御部、17…インターホン、21…操作盤、21a…フェイスプレート、22…表示装置、131…第1の通路、132…第2の通路、141…第1の音抜部、142…第2の音抜部、173…インターホンスピーカ、174…マイク、221…表示プレート、221a…凸部、221b…鍔部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗籠に設置される操作盤のフェイスプレートに開口された取付部と、
前記取付部の内側に嵌る凸部、およびこの凸部から前記フェイスプレートの背面に沿って広がる鍔部を有した表示プレートと、
前記取付部の内周縁と前記凸部の外周部との間に形成され前記フェイスプレートの板厚方向に開口する音出口部と、
前記鍔部に形成されて前記音出口部に連通する音響通路と、
前記鍔部を板厚方向に貫通して前記音響通路に連通する音抜部と、
前記表示プレートの背面側から前記音抜部を覆って取り付けられるスピーカと
を備えることを特徴とする音響装置。
【請求項2】
前記音出口部は、前記凸部の全周に渡って設けられることを特徴とする請求項1に記載の音響装置。
【請求項3】
前記スピーカは、前記乗籠の中の乗客に音声案内を出力することを特徴とする請求項1に記載の音響装置。
【請求項4】
前記乗籠の中の乗客と通話するためのインターホンスピーカおよびマイクを有するインターホンをさらに備え、
前記スピーカは、前記乗籠の中の乗客に対する音声案内を少なくとも出力するために用いられ、
前記音響通路は、第1の通路および第2の通路の少なくとも2つに分けて前記鍔部に形成され、
前記音抜部は、前記第1の通路に連通する第1の音抜部と前記第2の通路に連通する第2の音抜部とを有し、
前記スピーカは、前記第1の音抜部を覆って取り付けられ、
前記インターホンスピーカは、前記第2の音抜部を覆って取り付けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の音響装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−51789(P2011−51789A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204918(P2009−204918)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】