説明

エレベータの磁力式のガイド装置

【課題】本発明は、内包する永久磁石が形成する磁力の向きをガイドレールに対して効果的に配することによって、ガイド装置そのものの容積を大きくすること無く、安定した保持力を得られる磁力式のガイド装置を提供する。
【解決手段】ガイド装置10は、一対のガイドレール2と、磁石ユニット11と、台座12と、センサ部13と、制御部(磁気ガイド制御装置14)と、突部181,182とを備えている。磁石ユニット11は、電磁石113A,113B,114A,114Bおよび永久磁石111,112を有し、ガイドレール2の刃21に対して三方向から空隙を開けて磁極11C,11S1,11S2を対向させている。突部181,182は、磁石ユニット11の磁極のうちガイドレール2の刃21の先端面21aに対向する中央磁極11Cの先端部の両側部が中央部よりもガイドレール2側へ接近して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの乗籠をガイドレールに沿って案内するために乗籠に装備され、磁力でガイドレールを保持するガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、巻上機に掛けられたメインロープで乗籠を昇降路内に吊るし、巻上機を駆動することによって、乗籠を移動させる。乗籠は、昇降路内に鉛直方向へ敷設されたガイドレールに沿って移動するためのガイド装置を備えている。乗客や荷物が乗っている位置やその重量によって、乗籠は、その移動中に、移動する方向と交差する方向に力を受ける。このような力を支えるために、ガイド装置は、十分な力によって乗籠を保持している。
【0003】
ガイド装置として、ガイドレールに接触するローラやシューを備えた接触式のものと、ガイドレールに対して間隙を維持するように非接触に磁力で保持する磁力式のものとがある。接触式のガイド装置の場合、ガイドレールの表面の凹凸や、継ぎ目などに起因する振動がローラやシューから伝わってきたり、ローラが回転する音やシューが擦れる音が発生することもある。この点において、磁力式のガイド装置は、非接触であるため、振動や音が発生することが軽減される。
【0004】
ガイドレールの刃先を囲うE字形状に構成された磁石ユニットを備える磁力式のガイド装置が、特許文献1に開示されている。このガイド装置の磁石ユニットは、ガイドレールの刃先に対向する位置に配置された中央電磁石と、ガイドレールの刃先を挟むように両側に一対に配置された第1および第2の電磁石と、第1の電磁石と中央電磁石の間、第2の電磁石と中央電磁石の間にそれぞれ磁束が直列になるように接続された第1および第2の永久磁石を備えている。中央電磁石は、第1の永久磁石につながる手前の部分に配置される第3の電磁石と、第2の永久磁石につながる手前の部分に配置される第4の電磁石とを有している。
【0005】
特許文献1に記載されたガイド装置は、ガイドレールの刃先と中央電磁石および第1、第2の電磁石のそれぞれ磁極端との距離を計測するギャップセンサを備えている。乗籠は、両側に配置されたガイドレールに対して上部と下部の合計4箇所に、このガイド装置を有している。ガイド装置は、ギャップセンサの検出信号と各電磁石に流れる電流値とに基づいて、ガイドレールと各磁極との間の吸引力を個々に制御する。このエレベータは、4つのガイド装置を統合的に制御することによって、乗籠の姿勢を安定させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−350267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載されたガイド装置の場合、ガイドレールに対して磁力による十分な吸引力を発生させるには、ガイド装置そのものを大きくすることになる。磁力式のガイド装置は、大きくなると重量が増加するだけでなく、永久磁石の単価も増大する。ガイド装置は、4つ設けられるため、少しの重量の増加でも乗籠の最大積載荷重を逼迫し、エレベータの製造コストを引き上げることとなる。
【0008】
そこで、本発明は、内包する永久磁石が形成する磁力の向きをガイドレールに対して効果的に配することによって、容積を大きくすること無く、安定した保持力を得られる磁力式のガイド装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るガイド装置は、エレベータの乗籠に取り付けられてこの乗籠をガイドレールに対して磁力で非接触に保持し案内する。このガイド装置は、一対のガイドレールと、磁石ユニットと、台座と、センサ部と、制御部と、突部とを備えている。一対のガイドレールは、磁性体からなり、昇降路に鉛直方向に敷設される。磁石ユニットは、電磁石および永久磁石を有し、ガイドレールの刃に対して三方向から空隙を開けて磁極を対向させている。台座は、ガイドレールの間に配置される乗籠に、磁石ユニットを固定する。センサ部は、ガイドレールおよび磁石ユニットによって形成される磁気回路中の物理量を検出する。制御部は、この物理量に基づいて、電磁石に流す電流を制御することによって乗籠をガイドレールに対して非接触に支持する。突部は、磁石ユニットの磁極のうちガイドレールの刃の先端面に対向する中央磁極の先端部の両端のそれぞれに、中央部よりもガイドレール側へ接近して形成される。
【0010】
乗籠の変位許容範囲内で変位した場合にもガイドレールの刃の厚み方向へ十分な保持力を発揮できるようにするために、中央磁極の凸部の間に形成される凹部の内のり寸法は、ガイドレールの刃の厚みと同じかそれよりも小さくする。また、ガイドレールの刃の厚み方向に沿う中央磁極の先端部の外のり寸法は、ガイドレールの刃の厚みとガイドレールに対する乗籠の変位許容範囲との和と同じかそれよりも大きくする。また、ガイドレールの刃の厚み方向に沿う中央磁極の突部それぞれの外のり寸法は、ガイドレールの刃の厚みとガイドレールに対する乗籠の変位許容範囲との和以上にする。または、中央磁極の突部の間に形成される凹部の内のり寸法は、ガイドレールの刃の厚みおよびガイドレールに対する乗籠の変位許容範囲の和よりも大きくし、中央磁極の突部の先端は、乗籠の変位許容範囲でガイドレールの刃の延びる方向に最も近づいた位置にあるときに、ガイドレールの刃の先端面を越えて延びている。
【0011】
また、磁石ユニットの磁極のうち中央磁極以外の他の2つの磁極は、第1の側部磁極および第2の側部磁極である。第1の側部磁極および第2の側部磁極は、同極であって、中央磁極と異なる極性を有し、ガイドレールの刃をその厚み方向に挟む両側にそれぞれ対向させて中央磁極と直交する向きに配置される。磁石ユニットは、鉄心と、第1の永久磁石と、第2の永久磁石と、第1の電磁石と、第2の電磁石とを有する。鉄心は、中央磁極、第1の側部磁極、第2の側部磁極をそれぞれ端部に有する。この鉄心は、中央磁極から第1、第2の永久磁石との結合部までのT字形状の部分と、第1の側部磁極から第1の永久磁石との結合部までおよび第2の側部磁極から第2の永久磁石との結合部までのそれぞれI字形状の部分と、によって構成される。第1の永久磁石は、中央磁極および第1の側部磁極のそれぞれ極性を形成する向きで中央磁極から第1の側部磁極までの間に配置される。第2の永久磁石は、中央磁極および第2の側部磁極のそれぞれ極性を形成する向きで中央磁極から第2の側部磁極までの間に配置される。第1の電磁石は、第1の永久磁石を通る第1の磁気回路の第1主磁束に交差する向きに鉄心に捲回された第1コイルを有している。第2の電磁石は、第2の永久磁石を通る第2の磁気回路の第2の主磁束に交差する向きに鉄心に捲回された第2のコイルを有している。
【0012】
ガイドレールを引き付ける各磁極の磁力を強めるために、磁石ユニットは、中央磁極から第1の側部磁極までの間を接続する区間で隣り合う外周側面どうし、および中央磁極から第2の側部磁極までの間を接続する区間で隣り合う外周側面どうし、の少なくとも1か所は、90°以上の角度で接続する。または、中央磁極、第1の側部磁極、第2の側部磁極の少なくとも一つは、ガイドレールに対向する先端部を、ガイドレール側に近づくにつれて断面積が減少する先細りに、形成する。
【0013】
また、各磁極の磁力を制御しやすくするために、第1のコイルは、中央磁極から第1の永久磁石までの間、および第1の永久磁石から第1の側部磁極までの間の少なくとも一方に設けられ、第2のコイルは、中央磁極から第2の永久磁石までの間、および第2の永久磁石から第2の側部磁極までの間にそれぞれ設けられている。
【0014】
またガイド装置の消費電力量を小さくするために、制御部は、センサ部によって検出された物理量に基づいて乗籠の姿勢を安定させるとともに、電磁石に流れる電流をゼロに収束させるように電磁石に流す電流を制御する。
【発明の効果】
【0015】
乗籠は、床面に受ける荷重分布の偏りによって、乗籠を水平方向に変位させる力や乗籠に傾きを生じさせる回転モーメント(トルク)などの外力を受ける。このような場合でも、ガイド装置の電磁石の磁力を制御することによって、これらの外力を相殺する方向に乗籠を変位許容範囲内で変位させる。そして、外力が加わっている方向と反対方向の磁極をガイドレールに接近させることによって、接近させた側の永久磁石の磁力の働きを強め、永久磁石による磁力の偏りと外力とをバランスさせる。外力が変動しなければ、電磁石の磁力をゼロに近づけても永久磁石による磁力によって、ガイド装置は、乗籠をガイドレールに対して非接触に保持できる。
【0016】
このとき、ガイドレールの刃が延びる方向に作用する磁力は、第1、第2の永久磁石で形成される磁束が磁力に寄与するため、もともと強い力を得ることが容易である。これに対して、ガイドレールの刃の厚み方向に作用する磁力は、第1、第2のいずれか一方の永久磁石で形成される磁束しか磁力に寄与しない。
【0017】
本発明の一形態のガイド装置によれば、中央磁極の先端部の両端のそれぞれに突部を有しているので、中央磁極がガイドレールに対して発生する磁力にも、ガイドレールの刃の厚み方向の成分を発生させることができる。したがって、ガイド装置の容積を大きくすること無く、ガイドレールの刃の厚み方向に個々のガイド装置が発生する磁力を強めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態のガイド装置を備えるエレベータの乗籠を示す斜視図。
【図2】図1に示したガイド装置のブロック図。
【図3】図2に示したガイド装置の磁石ユニットの斜視図。
【図4】図2中のF4−F4線に沿う磁石ユニットとガイドレールとの平面図。
【図5】図4に示した磁石ユニットがガイドレールに対して刃先の厚み方向に変位した状態の平面図。
【図6】図4に示した磁石ユニットに対して中央磁極の端部の形状が異なる変形例の図。
【図7】図4に示した磁石ユニットに対して中央磁極の端部の形状が異なる変形例の図。
【図8】本発明の第2の実施形態のガイド装置の磁石ユニットを示す斜視図。
【図9】図8に示した磁石ユニットとガイドレールとの位置関係を示す平面図。
【図10】本発明の第3の実施形態のガイド装置の磁石ユニットを示す斜視図。
【図11】図10に示した磁石ユニットとガイドレールとの位置関係を示す平面図。
【図12】本発明の第4の実施形態のガイド装置の磁石ユニットを示す斜視図。
【図13】図12に示した磁石ユニットとガイドレールとの位置関係を示す平面図。
【図14】図13に示した磁石ユニットがガイドレールに対しては先の厚み方向に変位した状態の平面図。
【図15】本発明に係る第5の実施形態のガイド装置の磁石ユニットとガイドレールとの位置関係を示す平面図。
【図16】図15に示した磁石ユニットがガイドレールに対して刃先の厚み方向に変位した状態の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1の実施形態のガイド装置10は、図1から図5を参照して説明する。このガイド装置10は、図1に示すように、エレベータ1の乗籠4に設けられている。エレベータ1は、乗籠4の乗口41側から見て両側部に、強磁性体である鉄製のガイドレール2を一対に配置している。ガイド装置10は、ガイドレール2に対応して、乗籠4の籠枠42の上部梁421および下部梁422のそれぞれ両端部の合計4箇所に装備されている。乗籠4は、巻上機に掛けられたメインロープ3に吊下げられている。各ガイド装置10は、ガイドレール2の刃21との間に磁力を生じさせ、乗籠を非接触に保持している。巻上機が駆動することによって、乗籠4は、ガイドレール2に沿って昇降路6を移動する。
【0020】
この明細書における説明の都合上、図1に示した乗籠4の床43の中央部を「基準」とし、乗籠4の乗口41側から乗籠4の中を覗くように見て右方向を「+X側」、左方向を「−X側」、奥側を「+Y側」、「基準」よりも乗口41側を「−Y側」、床43よりも上を「+Z側」、床43よりも下を「−Z側」と定義する。また、「基準」から+X方向に見て時計回りに回転する方向を「+U」、反時計回りに回る方向を「−U」、「基準」から+Y方向に見て時計回りに回転する方向を「+V」、反時計回りに回る方向を「−V」、「基準」から+Z方向に見て時計回りに回転する方向を「+W」、反時計回りに回る方向を「−W」とそれぞれ定義する。
【0021】
このエレベータ1は、4つのガイド装置10を統合的に制御することによって、乗籠4の姿勢を安定させ、ガイドレール2に対して非接触に乗籠4を保持する。それぞれのガイド装置10は、同じ構成を有している。そこで、図1における+Xおよび+Zの位置、乗口41から見て右上のガイド装置10を例に以下に説明する。
【0022】
ガイド装置10は、図2に示すように、磁石ユニット11と、台座12と、センサ部13と、磁気ガイド制御装置14とを備える。磁石ユニット11は、図3に示すように、鉄心110と第1の永久磁石111と第2の永久磁石112と第1の電磁石113A,113Bと第2の電磁石114A,114Bとを有している。
【0023】
磁石ユニット11は、図4に示すように、ガイドレール2の刃21に対して三方向から空間を空けて端部を対抗させるE字形状に形成されている。鉄心110は、中央磁極11Cを形成する中央鉄心110aと、第1の側部磁極11S1を形成する第1の側部鉄心110bと、第2の側部磁極11S2を形成する第2の側部鉄心110cと、を有する。中央磁極11Cは、ガイドレール2の刃21の先端面21aに対向する位置に空隙を空けて配置される。第1の側部磁極11S1は、ガイドレール2の刃21の−Y側の側面21bに対向する位置に空隙を空けて配置される。第2の側部磁極11S2は、ガイドレール2の刃21の+Y側の側面21cに対向する位置に空隙を空けて配置される。つまり、第1の側部磁極11S1と第2の側部磁極11S2とは、ガイドレール2の刃21をその厚み方向に挟む両側に、互いに対向させて、中央磁極11Cと直交する向きに配置される。
【0024】
また、中央磁極11Cの先端部は、図4に示すように、ガイドレール2の刃21の先端面21aに対向する両端に、突部181,182を備えている。突部181,182は、中央部よりもガイドレール2側に一定の幅が接近して形成されている。したがって、突部181,182の間は、凹部18Dが形成される。中央磁極11Cの先端部の外のり寸法は、ガイドレール2の刃21の厚みおよびガイドレールに対する乗籠4の変位許容範囲の和と同じかそれよりも大きく形成される。また、中央磁極11Cの凹部18Dの内のり寸法は、ガイドレール2の刃21の厚みと同じかそれよりも小さく形成される。さらに、ガイドレール2の刃21の厚み方向に沿う突部181,182の外のり寸法は、ガイドレール2の刃21の厚みおよびガイドレール2に対する乗籠4の変位許容範囲の和以上であることが好ましい。
【0025】
図3および図4に示すように、第1の永久磁石111は、中央鉄心110aと第1の側部鉄心110bとの間に配置され、第2の永久磁石112は、中央鉄心110aと第2の側部鉄心110cとの間に配置される。第1の永久磁石111と第2の永久磁石112とは、それぞれ中央磁極11Cに同じ極性が形成されるように配置される。したがって、第1の側部磁極11S1と第2の側部磁極11S2とは、中央磁極11Cと異なる極性で、かつ同じ極性が形成される。例えば、第1の永久磁石111がN極を+X側に、S極を−X側にして配置される場合、第2の永久磁石112も同じくN極を+X側に、S極を−X側にして配置され、第1の側部磁極11S1および第2の側部磁極11S2がN極となり、中央磁極11CがS極となる。第1の永久磁石111および第2の永久磁石の極性の向きが逆に配置されれば、当然、第1の側部磁極11S1および第2の側部磁極11S2と中央磁極11Cとに形成される極性も逆になる。
【0026】
図4に示すように、第1の電磁石113A,113Bは、第1の永久磁石111を通る第1の磁気回路H1の第1の主磁束に交差する向きに捲回される第1のコイル115A,115Bを有している。また、第2の電磁石114A,114Bは、第2の永久磁石112を通る第2の磁気回路H2の第2の主磁束に交差する向きに捲回される第2のコイル116A,116Bを有している。第1のコイル115Aは、第1の永久磁石から第1の側部磁極までの間の第1の側部鉄心110bに装着されており、第1のコイル115Bは、中央磁極11Cから第1の永久磁石111までの間の中央鉄心110aに装着されている。第2のコイル116Aは、第2の永久磁石112から第2の側部磁極までの間の第2の側部鉄心110cに装着されており、第2のコイル116Bは、中央磁極11Cから第2の永久磁石112までの間の中央鉄心110aに装着されている。
【0027】
台座12は、図1に示すように乗籠4の籠枠42の上部梁421および下部梁422のそれぞれガイドレール2に面した端部に固定され、図4に示すようにガイドレール2の刃21の表面に対して中央磁極11C、第1の側部磁極11S1、第2の側部磁極11S2がそれぞれ空隙を空けて対向する位置に磁石ユニット11を保持している。これによって、第1の磁気回路H1は、第1の永久磁石111、第1の側部鉄心110b、ガイドレール2の刃21および中央鉄心110aを通るように形成される。同様に、第2の磁気回路H2は、第2の永久磁石112、第2の側部鉄心110c、ガイドレール2の刃21および中央鉄心110aを通るように形成される。
【0028】
センサ部13は、図2に示す磁石ユニット11およびガイドレール2によって形成される第1の磁気回路H1および第2の磁気回路H2に関係する物理量を検出する。このセンサ部13は、ギャップセンサ131x,131yと電流検出器132とで構成されている。ギャップセンサ131xは、図2に示すように、ガイドレール2の刃21の先端面21aに対向させて台座12に固定されている。ギャップセンサ131yは、ガイドレール2の刃21の−Y側の側面21cに対向させて台座12に固定されている。電流検出器132は、図2に示すように、第1のコイル115A,115BとグランドGとの間、および第2のコイル116A,116BとグランドGとの間のそれぞれに接続され、各コイル115A,115B,116A,116Bに流れる電流値を検出している。
【0029】
なお、ギャップセンサ131yは、第1の側部磁極11S1および第2の側部磁極11S2がガイドレール2の刃21に対して刃21の厚み方向、つまり、Y方向にどの程度変位したかを検出するためのものである。したがって、ギャップセンサ131yは、ガイドレール2の刃21の+Y側の側面21bに面して配置されていてもよいし、+Y側および−Y側の両方に配置されていてもよい。
【0030】
磁気ガイド制御装置14は、センサ部13で検出される物理量に基づいて電磁石に励磁する電圧を制御することによって、乗籠4をガイドレール2に対して非接触で支持する制御部であって、図2に示すように、制御演算器141と、第1のドライバ1421および第2のドライバ1422とで構成される。制御演算器141は、センサ部13から得られる信号に基づいて、乗籠4をガイドレール2に対して非接触で支持するために磁石ユニット11の各コイルに印加する電圧を計算する。
【0031】
第1のドライバ1421は、第1のコイル115A,115Bにそれぞれ接続され、制御演算器141の出力に基づいて、各コイルに電力を供給する。第2のドライバ1422は、第2のコイル116A,116Bにそれぞれ接続され、制御演算器の出力に基づいて、各コイルに電力を供給する。
【0032】
本実施形態においてセンサ部13となるギャップセンサ131x,131yおよび電流検出器132においてそれぞれ検出される第1の磁気回路H1および第2の磁気回路H2に関連する物理量は、中央磁極11Cの突部181,182とガイドレール2の刃21の先端面21aとの距離、第1または第2の側部磁極とガイドレール2の刃21との距離、第1のコイル115A,115Bおよび第2のコイル116A,116Bのそれぞれに流れる電流値である。
【0033】
したがって、制御演算器141は、ギャップセンサ131x,131yで検出された距離および供給された電力に基づき電流検出器132で検出された電流値を基にフィードバック制御し、第1のドライバ1421および第2のドライバ1422により、第1のコイル115A,115Bおよび第2のコイル116A,116Bを励磁することで中央磁極11C、第1の側部磁極11S1、第2の側部磁極11S2のそれぞれに作用する磁力を調整し、ガイドレール2に対する隙間を維持する。この結果、乗籠4は、ガイドレール2に対して非接触に保持される。
【0034】
磁気ガイド制御装置14は、ギャップセンサ131x,131yで検出される信号の変化がほとんどない場合、非接触な磁力支持状態を維持したまま、電流検出値がゼロに収束するように積分器を介してフィードバック制御することによって、各コイル115A,115B,116A,116Bの電流を小さくして行く。外力を受けることなく乗籠4がガイドレール2に対して安定していれば、各コイル115A,115B,116A,116Bに流れる電流をゼロにまで収束させることで、非接触な状態に維持するために必要な磁力は、すべて第1の永久磁石111および第2の永久磁石112の磁力でまかなうことができる。このとき、エレベータ1は、いわゆる「ゼロパワー制御」で乗籠4をガイドレール2に対して非接触に維持することができる。
【0035】
乗客が乗籠4の床43の上を移動する、新たに乗客が乗り込む、または乗客が降りるなど、乗籠4の姿勢を変化させる外力が加わると、ギャップセンサ131x,131yおよび電流検出器132の検出信号に変化が生じる。したがって、磁気ガイド制御装置14は、この変化を検出すると、各コイル115A,115B,116A,116Bに電力を供給し、外力と磁力がバランスする位置まで乗籠4の姿勢をわずかに変位させる。この変位量は、極めて小さいので、乗客が知覚することはほとんどない。そして、乗籠4の姿勢が再び安定したら、コイル115A,115B,116A,116Bに流す電流をゼロに収束させる。この結果、乗籠4に作用する外力とガイド装置10の磁力とが釣り合い、乗籠4は、姿勢を変位させた状態で保持される。
【0036】
第1のコイル115A,115Bおよび第2のコイル116A,116Bに電力を供給せず第1の電磁石113A,113Bおよび第2の電磁石114A,114Bの磁力をゼロにした、いわゆる「ゼロパワー制御」のときに、ガイド装置10が保持力として発揮できる力は、第1の永久磁石111および第2の永久磁石112の磁力に因る。つまり、ガイドレール2と磁石ユニット11との相対的な位置関係に応じて、これらの間に第1の永久磁石111および第2の永久磁石112によって形成される磁力が、乗籠4を保持できるガイド力となる。
【0037】
以上のように構成されたガイド装置10の磁石ユニット11は、乗籠4に外力が作用していない場合、ガイドレール2に対して図4に示す安定した位置関係に保持されている。図4に示すように、第1の永久磁石111、第1の側部鉄心110b、および中央鉄心110aによって構成される第1の磁気回路H1の第1の主磁束は、中央磁極11Cの突部181を通る。そして、突部181とガイドレール2の刃21の先端面21aとの間、および第1の側部磁極11S1とガイドレール2の刃21の−Y側の側面21bとの間に、第1の永久磁石111と第1の電磁石113A,113Bとに由来する磁束が形成される。また、第2の永久磁石112、第2の側部鉄心110c、および中央鉄心110aによって構成される第2の磁気回路H2の第2の主磁束は、中央磁極11Cの突部182を通る。そして、突部182とガイドレール2の刃21の先端面21aとの間、および第2の側部磁極11S2とガイドレール2の刃21の+Y側の側面21cとの間に、第2の永久磁石112と第2の電磁石114A,114Bとに由来する磁束が形成される。なお、第1の磁気回路H1と第2の磁気回路H2とは、中央鉄心110aとガイドレール2の刃21の部分で磁気的に接続された同じ部材を通っている。したがって、第1の磁気回路H1および第2の磁気回路H2は、互いの磁束密度の変動、すなわち第1の永久磁石111と第1の電磁石113A,113B、および第2の永久磁石112と第2の電磁石114A,114Bの影響を互いに少なからず受ける。
【0038】
中央磁極11C,第1の側部磁極11S1,第2の側部磁極11S2とガイドレール2の刃21との間に設けられる空隙は、第1のコイル115A,115Bおよび第2のコイル116A,116Bに流す電流を操作して各空隙に発生する磁力を変化させることによって、調整される。特に、本実施形態の中央磁極11Cは、突部181,182を備えている。そのため、第1の磁気回路H1の主磁束および第2の磁気回路H2の主磁束は、それぞれ突部181,182を通る。
【0039】
このとき、中央磁極11Cの先端部の外のり寸法は、ガイドレール2の刃21の厚みおよびガイドレール2に対する乗籠4の変位許容範囲の和と同じかそれ以上である。そして、突部181,182の間に作られる凹部18Dの内のり寸法は、ガイドレール2の厚みと同じかそれよりも小さい。つまり、中央磁極11Cの先端部とガイドレール2の刃21の先端面21aとの間に形成される磁束のほとんどが突部181,182を通過するように形成される。なお、中央磁極11Cとガイドレール2の刃21の先端面21aとの間に形成される磁束の一部は、凹部18Dを通過するように形成される。
【0040】
したがって、図4に示すように、第1の磁気回路H1の主磁束に沿って突部181とガイドレール2の先端面21aとの間に発生する磁力は、ガイドレール2の刃21が延びる方向に沿う−X方向の力だけでなく、ガイドレール2の刃21の厚み方向に沿う−Y方向にもガイドレール2を突部181に向けて引き付ける。また、第2の磁気回路H2の主磁束に沿って突部182とガイドレール2の先端面21aとの間に発生する磁力は、ガイドレール2の刃21が延びる方向に沿う−X方向の力だけではなく、ガイドレール2の刃21の厚み方向に沿う+Y方向の力でガイドレール2を突部182に向けて引きつける。実際には、ガイドレール2が昇降路6内に固定されているので、ガイド装置10がガイドレール2に近づく。
【0041】
このガイド装置10の磁石ユニット11において、第1の永久磁石111および第2の永久磁石112によってそれぞれ形成される磁束の両方が中央磁極11Cを通過する。したがって、第1の側部磁極11S1および第2の側部磁極11S2が形成する磁束によって生じる磁力よりも強い磁力が、中央磁極11Cとガイドレール2との間に作用している。本実施形態では、突部181,182を設けていることによって、−X方向にガイドレール2を引き付けていた磁力の一部を−Y方向および+Y方向に作用させている。そのため、このガイド装置10は、Y方向にガイドレール2を保持する能力が向上している。
【0042】
図4において、乗籠4が−Y方向に外力を受けた場合、ガイドレール2と磁石ユニット11の相対的な位置が変化する。磁気ガイド制御装置14は、第1の永久磁石111および第2の永久磁石112の磁力が外力と釣り合う位置で安定するように、第1の電磁石113A,113Bおよび第2の電磁石114A,114Bを制御する。具体的には、磁気ガイド制御装置14は、各電磁石を制御して、図5に示すようにガイドレール2に対して+Y方向に磁石ユニット11を変位させる。これにより、第1の側部磁極11S1がガイドレール2の刃21の−Y側の側面21bに接近し、第1の側部磁極11S1とガイドレール2との間の磁力が強まる。
【0043】
また、中央磁極11Cの−Y側の突部181とガイドレール2の刃21の先端面21aとの相対距離が近くなり、突部181と先端面21aとの、X方向の重なり部の面積が広がる。この結果、第1の磁気回路H1の磁気抵抗が減少し磁束密度が高くなるため、第1の磁気回路H1全体の磁力が強くなる。さらに、ガイドレール2の刃21の先端面21aと突部181との間には、ガイドレール2の先端面21aを−X方向かつ−Y方向へ斜めに引っ張る磁力が形成される。
【0044】
以上の結果、このガイド装置10は、第1の側部磁極11S1をガイドレール2に接近させることで増加する+Y方向の磁力の他に、突部181とガイドレール2の先端面21aとの間に斜めに作用する磁力、および、突部181と先端面21aとの重なり部面積が大きくなることによって第1の磁気回路H1中に増加した磁力、によって、乗籠4に作用する外力を相殺する。このように、このガイド装置10は、ガイドレール2に対して+Y方向(または−Y方向)に磁石ユニット11を変位させた場合、第1の側部磁極11S1がガイドレール2に接近したことによって磁力が強まる以上に+Y方向(または−Y方向)の磁力が強まる。
【0045】
以上のように、ガイド装置10は、中央磁極11Cに突部181,182を設けたことによって、ガイドレール2に対して+Y方向または−Y方向に磁石ユニット11を変位させた場合の+Y方向または−Y方向の磁力の増加率が向上する。
【0046】
以上のように構成されたガイド装置10を図1に示すように乗籠4の籠枠42の4つの角に取り付けたエレベータ1において、例えば乗客が乗口41の近くに立っている場合、乗籠4は、+Y方向および+Uのトルクを外力として受けるのと同じ状態になる。この外力を「ゼロパワー制御」で保持するために、エレベータ1は、乗口41の外から乗籠4を見て右上(+X,+Z)および左上(−X,+Z)の位置にあるガイド装置10を+Y方向へ変位させ、右下(+X,−Z)および左下(−X,−Z)の位置にあるガイド装置10を−Y方向へ変位させるように制御する。また、乗客が乗籠4の奥に立っている場合、乗籠4は、−Y方向および−Uのトルクを外力として受けるのと同じ状態になる。したがって、この外力を「ゼロパワー制御」で保持するために、エレベータ1は、右上(+X,+Z)および左上(−X,+Z)の位置にあるガイド装置10を−Y方向へ変位させるとともに、右下(+X,−Z)および左下(−X,−Z)の位置にあるガイド装置10を+Y方向へ変位させるように、各々のガイド装置10においてセンサ部13の信号を基に、外力と磁力が釣り合うように制御する。
【0047】
また、例えば乗口41の外側から見て乗客が乗口41のすぐ左内側(−X,−Y)に立っている場合、乗籠4は、+Xおよび+Y方向と−Vおよび+Uのトルクを外力として受けるのと同じ状態になる。この場合は、「ゼロパワー制御」で乗籠4を保持するため、エレベータ1は、右上(+X,+Z)および左上(−X,+Z)の位置にあるガイド装置10を+Xおよび+Y方向へ変位させるとともに、右下(+X,−Z)および左下(−X,−Z)の位置にあるガイド装置10を−X,−Y方向へ変位させるように、各々のガイド装置10においてセンサ部13の信号を基に、外力と磁力が釣り合うように制御する。
【0048】
図6および図7は、第1の実施形態のガイド装置10の磁石ユニット11に対して中央磁極11Cの先端部の形状が異なっている変形例をそれぞれ示す。図6に示すガイド装置10において、中央磁極11Cの突部181,182の間に形成される凹部18Dは、丸いグルーブに形成されている。また、図7に示すガイド装置10において、中央磁極11Cの突部181,182の間に形成される凹部18Dは、V字形状のグルーブに形成されている。いずれの場合においても、図4に示したガイド装置10と同じ機能および効果を発揮する。
【0049】
以下に、本発明の第2から第5の実施形態のガイド装置10を説明する。このとき、第1の実施形態のガイド装置10と同じ機能を有する構成は、各実施形態の図中において同じ符号を付してその説明を省略する。省略された説明は、第1の実施形態の対応する記載を図面とともに参酌するものとする。また、第2から第5の実施形態のガイド装置10は、第1の実施形態のガイド装置10と同様に、図1に示すように、ガイドレール2に嵌合するように乗籠4の籠枠42の上部梁421および下部梁422のそれぞれ4箇所に配置される。そして、個々のガイド装置10は、図2に示すように構成され、磁気ガイド制御装置14によって乗籠4の姿勢が安定するように制御される。
【0050】
本発明の第2の実施形態のガイド装置10は、図8および図9を参照して説明する。このガイド装置10は、第1の実施形態のガイド装置10と比較した場合、磁石ユニット11の外周形状が異なっている。このガイド装置10は、中央磁極11Cから第1の側部磁極11S1までの間を接続する区間で隣り合う外周側面11aどうし、および中央磁極11Cから第2の側部磁極11S2までの間を接続する区間で隣り合う外周側面11bどうしの少なくとも1か所を、90°以上の角度で接続している。具体的には、図8および図9に示すように、第1の実施形態の磁石ユニット11の4つのZ方向に沿う外周角に面取りを施した形である。つまり、中央鉄心110a、第1の側部鉄心110b、および第2の側部鉄心110cのそれぞれ第1の永久磁石111または第2の永久磁石112が接続されている側の外周側面を鈍角に形成している。
【0051】
中央鉄心110a、第1の側部鉄心110b、第2の側部鉄心110cの外周に形成される磁気回路の磁気抵抗を大きくすることができる。したがって、ガイドレール2と磁石ユニット11とで形成される第1の磁気回路H1および第2の磁気回路H2以外の空間に漏れ出る磁束量を減らすことができる。つまり、第1の磁気回路H1および第2の磁気回路H2の内側の磁束密度を高めることによって、大きな磁力をガイドレール2に対して作用させることができる。
【0052】
本発明の第3の実施形態のガイド装置10は、図10および図11を参照して説明する。このガイド装置10は、第1の実施形態のガイド装置10と比較して、少なくとも1つの磁極の外形形状が異なる。ガイド装置10において、中央磁極11C、第1の側部磁極11S1、第2の側部磁極11S2は、ガイドレール2に近づくにつれて断面積が減少する先細りに形成されている。このとき、ガイドレール2が延びる方向に対して交差する平面に沿う断面において、図10および図11に示すような各磁極の端部を先窄まりの形状にすることによって、中央磁極11C、第1の側部磁極11S1、第2の側部磁極11S2の先端部における磁束密度は、高まる。したがって、ガイドレール2と中央磁極11C、第1の側部磁極11S1、第2の側部磁極11S2との間に強い磁力を発生させることができる。
【0053】
また、第1の実施形態のガイド装置10における磁極間距離と本実施形態のガイド装置10のそれとを比較した場合、図11に示すように、個々の磁極が先窄まりであるため、中央磁極11Cから第1の側部磁極11S1までの最短距離、および中央磁極11Cから第2の側部磁極11S2までの最短距離が、それぞれ大きい。したがって、中央磁極11Cと第1の側部磁極11S1との間、および中央磁極11Cと第2の側部磁極11S2との間のそれぞれにおいて、ガイドレール2を通ることなく直接接続される磁束を、減らすことができる。
【0054】
ガイドレール2の刃21の厚み方向に沿う中央磁極11Cの先端面の幅は、ガイドレール2の刃21の厚みとガイドレール2に対する乗籠4の変位許容範囲の和以上にする。乗籠4の変位許容範囲内において、ガイドレール2に対してガイド装置10が変位した場合でも、ガイドレール2の先端面21aに対する正面の位置から中央磁極11Cの先端面が外れないので、ガイドレール2と中央磁極11Cとの間に安定した磁力を維持することができる。
【0055】
本発明の第4の実施形態のガイド装置10は、図12から図14を参照して説明する。このガイド装置10は、第1の実施形態のガイド装置10と比較した場合、磁石ユニット11の外周形状および少なくとも1つの磁極の外形形状が異なっている。簡単に言うと、このガイド装置10は、第1の実施形態のガイド装置10から第2の実施形態のガイド装置10および第3の実施形態のガイド装置10への変更点を足し合わせた形状を有している。
【0056】
図12および図13に示すように、ガイド装置10は、中央磁極11Cから第1の側部磁極11S1までの間を接続する区間で隣り合う外周側面11aどうし、および中央磁極11Cから第2の側部磁極11S2までの間を接続する区間で隣り合う外周側面11bどうしを、90°以上の角度で接続している。具体的には、図12に示すように、第1の実施形態の磁石ユニット11のZ方向に沿う4つの外周角に面取りを施した形である。つまり、中央鉄心110a、第1の側部鉄心110b、および第2の側部鉄心110cのそれぞれ第1の永久磁石111または第2の永久磁石112が接続されている側の外周側面を鈍角に形成している。
【0057】
これによって、中央鉄心110a、第1の側部鉄心110b、第2の側部鉄心110cの外周に形成される磁気回路の磁気抵抗を大きくすることができる。したがって、ガイドレール2と磁石ユニット11とで形成される第1の磁気回路H1および第2の磁気回路H2以外の空間に漏れ出る磁束量を減らすことができる。つまり、第1の磁気回路H1および第2の磁気回路H2の内側の磁束密度を高めることによって、大きな磁力をガイドレール2に対して作用させることができる。
【0058】
また、ガイド装置10において、中央磁極11C、第1の側部磁極11S1、第2の側部磁極11S2は、ガイドレール2に近づくにつれて断面積が減少する先細りに形成されている。このとき、ガイドレール2が延びる方向に対して交差する平面に沿う断面において、図13に示すように各磁極の端部を先窄まりの形状にすることによって、中央磁極11C、第1の側部磁極11S1、第2の側部磁極11S2の先端部における磁束密度は、高まる。したがって、ガイドレール2と中央磁極11C、第1の側部磁極11S1、第2の側部磁極11S2との間に強い磁力を発生させることができる。
【0059】
また、第1の実施形態のガイド装置10における磁極間距離と本実施形態のガイド装置10のそれとを比較した場合、図13に示すように、個々の磁極が先窄まりであるため、中央磁極11Cから第1の側部磁極11S1までの最短距離、および中央磁極11Cから第2の側部磁極11S2までの最短距離が、それぞれ大きい。したがって、中央磁極11Cと第1の側部磁極11S1との間、および中央磁極11Cと第2の側部磁極11S2との間のそれぞれにおいて、ガイドレール2を通ることなく直接接続される磁束を、減らすことができる。
【0060】
ガイドレール2の刃21の厚み方向に沿う中央磁極11Cの先端面の幅は、ガイドレール2の刃21の厚みとガイドレール2に対する乗籠4の変位許容範囲の和以上にする。乗籠4の変位許容範囲内において、ガイドレール2に対してガイド装置10が変位した場合でも、ガイドレール2の先端面21aに対する正面の位置から中央磁極11Cの先端面が外れないので、ガイドレール2と中央磁極11Cとの間に安定した磁力を維持することができる。
【0061】
また、図13に示すように、第1の磁気回路H1の主磁束は、中央磁極11Cの突部181を通り、第2の磁気回路H2の主磁束は、中央磁極11Cの突部182を通ることによって、磁束がガイドレール2の刃21の先端面21aに対して斜めに形成される。したがって、中央磁極11Cは、−X方向のみならず、突部181によって−Y方向に、突部182によって+Y方向に、ガイドレール2を引き付けるように磁力を作用させている。
【0062】
そこで、−Y方向に乗籠4が外力を受けた場合、第1の実施形態同様に、ガイド装置10は、図14に示すように、乗籠4を+Y方向に変位するように磁気ガイド制御装置14によって制御される。この結果、受けた外力に対して磁石ユニット11の第1の永久磁石111および第2の永久磁石112の磁力が釣り合う。
【0063】
図14に示すように、ガイド装置10がガイドレール2に対して+Y方向に変位している場合、中央磁極11Cの−Y側の突部181が、ガイドレール2の刃21の先端面21aに正対する面積を増加する。また、+Y側の突部182は、ガイドレール2の先端面21aに正対する面積が減少するか、全く正対しなくなる。その結果、ガイドレール2に接近している側、図14では第1の側部磁極11S1側に形成される第1の磁気回路H1の磁束が増え、磁力が強くなる。また、突部181とガイドレール2の先端面21aとの間には、−Y方向成分を有した磁力が斜めに作用している。つまり、中央磁極11Cが発生する磁力は、第1の側部磁極11S1の磁力を補助する。したがって、このガイド装置10は、磁束を集中させたことによって、第1の実施形態のガイド装置10よりも乗籠4を支える力が向上する。
【0064】
本発明の第5の実施形態のガイド装置10は、図15および図16を参照して説明する。このガイド装置10は、中央磁極11Cの先端部の形状が第1の実施形態のガイド装置10と異なっている。このガイド装置10において中央磁極11Cの突部181,182の間に形成される凹部18Dの内のり寸法は、図15に示すようにガイドレール2の刃21の厚みおよびガイドレール2に対する乗籠4の変位許容範囲の和よりも大きい。また、突部181,182の先端は、乗籠4の変位許容範囲でガイドレール2の刃21が延びる−X方向にもっともガイドレール2に近づいた位置にあるときに、ガイドレール2の刃21の先端面21aを越えて延びている。つまり、乗籠4がガイドレール2の刃21に向かって接近する方向へ変位した場合、中央磁極11Cは、ガイドレール2の先端部を取り囲むようになる。
【0065】
ガイド装置10の第1の永久磁石111および第2の永久磁石112によって中央磁極11Cに配される磁束のほとんどは、図15中に破線で示した主磁束のように、中央磁極11Cの両脇から延びた突部181,182のガイドレール2に面した側から、ガイドレール2の−Y側の側面および+Y側の側面へ、斜めにもしくはガイドレール2の刃21の厚み方向に沿って形成される。したがって、本実施形態のガイド装置10は、第1から第4の実施形態のガイド装置10よりも−Y方向、または+Y方向に、大きな磁力を中央磁極11Cによって発生させることができる。
【0066】
乗籠4が−Y方向に外力を受けた場合、ガイド装置10は、磁石ユニット11が図16に示すように+Y側に変位するように、磁気ガイド制御装置14によって第1の電磁石113A,113Bおよび第2の電磁石114A,114Bを制御する。これにより、第1の側部磁極11S1がガイドレール2の−Y側の側面21bに接近することによって第1の側部磁極11S1とガイドレール2との間の磁気抵抗が減少し、磁力が強められるほかに、突部181が−Y側の側面21bに接近することによって突部181とガイドレール2との間の磁気抵抗が減少し、突部181によって−Y方向にガイドレール2を引き付ける磁力、実際にはガイドレール2が固定されているので、ガイド装置10を+Y方向に変位させる磁力、が強められる。したがって、ガイド装置10は、第1の永久磁石111および第2の永久磁石112によって、第1から第4の実施形態のガイド装置10よりもY方向に強い磁力を発揮させることができる。
【0067】
また、図15および図16に示すように、凹部18Dの底部は、ガイドレール2の刃21の先端面21aに対して一定の距離にある。したがって、乗籠4が−X方向に外力を受けた場合、ガイドレール2に対して接近する+X方向にガイド装置10を磁気ガイド制御装置14で変位させることで、ガイド装置10は、受けた外力に対して、第1の永久磁石111および第2の永久磁石112による磁力を釣り合わせることができる。
【符号の説明】
【0068】
1…エレベータ、2…ガイドレール、4…乗籠、10…ガイド装置、11…磁石ユニット、11C…中央磁極、11S1…第1の側部磁極、11S2…第2の側部磁極、12…台座、13…センサ部、14…磁気ガイド制御装置(制御部)、18D…凹部、21…(ガイドレールの)刃、21a…(ガイドレールの刃の)先端面、110…鉄心、111…第1の永久磁石、112…第2の永久磁石、113A,113B…第1の電磁石、114A,114B…第2の電磁石、115A,115B…第1のコイル、116A,116B第2のコイル、181,182…突部、H1…第1の磁気回路、H2…第2の磁気回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路に鉛直方向に敷設され磁性体からなる一対のガイドレールと、
電磁石および永久磁石を有し前記ガイドレールの刃に対して三方向から空隙を空けて磁極を対向させる磁石ユニットと、
前記ガイドレールの間に配置される乗籠に前記磁石ユニットを固定する台座と、
前記ガイドレールおよび前記磁石ユニットによって形成される磁気回路中の物理量を検出するセンサ部と、
前記物理量に基づいて前記電磁石に流す電流を制御することによって前記乗籠を前記ガイドレールに対して非接触で支持する制御部と、
前記磁石ユニットの前記磁極のうち前記ガイドレールの刃の先端面に対向する中央磁極の先端部の両端のそれぞれに、中央部よりも前記ガイドレール側へ接近して形成された突部と、
を備えることを特徴とするガイド装置。
【請求項2】
前記中央磁極の前記突部の間に形成される凹部の内のり寸法は、
前記ガイドレールの刃の厚みと同じかそれよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のガイド装置。
【請求項3】
前記ガイドレールの刃の厚み方向に沿う前記中央磁極の先端部の外のり寸法は、
前記ガイドレールの刃の厚みおよび前記ガイドレールに対する前記乗籠の変位許容範囲の和と同じかそれよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のガイド装置。
【請求項4】
前記ガイドレールの刃の厚み方向に沿う前記中央磁極の前記突部の外のり寸法は、
前記ガイドレールの刃の厚みおよび前記ガイドレールに対する前記乗籠の変位許容範囲の和以上であることを特徴とする請求項1に記載のガイド装置。
【請求項5】
前記中央磁極の前記突部の間に形成される凹部の内のり寸法は、前記ガイドレールの刃の厚みおよび前記ガイドレールに対する前記乗籠の変位許容範囲の和よりも大きく、
前記中央磁極の前記突部の先端は、前記乗籠の変位許容範囲で前記ガイドレールの刃の延びる方向に最も近づいた位置にあるときに、前記ガイドレールの刃の先端面を越えて延びていることを特徴とする請求項1に記載のガイド装置。
【請求項6】
前記磁石ユニットの磁極のうち前記中央磁極以外の他の2つの磁極は、
前記中央磁極と異なる極性を有し前記ガイドレールの刃をその厚み方向に挟む両側にそれぞれ対向させて前記中央磁極と直交する向きに配置される同極の第1の側部磁極および第2の側部磁極であって、
前記磁石ユニットは、
前記中央磁極、前記第1の側部磁極、前記第2の側部磁極をそれぞれ端部に有する鉄心と、
前記中央磁極および前記第1の側部磁極にそれぞれの極性を形成する向きで前記中央磁極から前記第1の側部磁極までの間に配置される第1の永久磁石と、
前記中央磁極および前記第2の側部磁極にそれぞれの極性を形成する向きで前記中央磁極から前記第2の側部磁極までの間に配置される第2の永久磁石と、
前記第1の永久磁石を通る第1の磁気回路の第1の主磁束に交差する向きに前記鉄心に捲回された第1のコイルを有する第1の電磁石と、
前記第2の永久磁石を通る第2の磁気回路の第2の主磁束に交差する向きに前記鉄心に捲回された第2のコイルを有する第2の電磁石と
を有する
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のガイド装置。
【請求項7】
前記磁石ユニットは、
前記中央磁極から前記第1の側部磁極までの間を接続する区間で隣り合う外周側面どうし、および前記中央磁極から前記第2の側部磁極までの間を接続する区間で隣り合う外周側面どうしの少なくとも1か所は、90°以上の角度で接続されている
ことを特徴とする請求項6に記載のガイド装置。
【請求項8】
前記中央磁極、前記第1の側部磁極、前記第2の側部磁極の少なくとも一つは、前記ガイドレール側に近づくにつれて断面積が減少する先細りに形成されている
ことを特徴とする請求項6に記載のガイド装置。
【請求項9】
前記第1のコイルは、前記中央磁極から前記第1の永久磁石までの間、および前記第1の永久磁石から前記第1の側部磁極までの間の、少なくとも一方に設けられ、
前記第2のコイルは、前記中央磁極から前記第2の永久磁石までの間、および前記第2の永久磁石から前記第2の側部磁極までの間の、少なくとも一方に設けられている
ことを特徴とする請求項6に記載のガイド装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記物理量に基づいて前記乗籠の姿勢を安定させるとともに、前記乗籠に作用する外力の有無にかかわらず前記電磁石に流れる電流をゼロに収束させるように前記電磁石に流す電流を制御する
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のガイド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−57343(P2011−57343A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207315(P2009−207315)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】