説明

エレベータ昇降装置

【課題】油圧ユニットが設置可能なエレベータかごが上昇を開始する時の応答が良いエレベータ昇降装置を提供する。
【解決手段】タンク41とポンプ42とモータ43とを油圧ユニット4として備え、モータ43の回転速度を変化させてポンプ42による油の供給量を調整することで、エレベータかごの上下昇降速度を制御する制御部を備え、タンク41がポンプ42よりも上位に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ昇降装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりエレベータ昇降装置(例えば特許文献1参照)は、図5に示すように、建物内に上下にわたって昇降路1が形成され、この昇降路1内にエレベータかご2が昇降自在に設けられてなる。昇降路1の底部には、エレベータかご2の昇降駆動をするための油圧ユニット4と油圧ジャッキ3とからなる駆動装置が設けられる。昇降路1の底部に、上方に向けて一対のガイドレール12が立設され、このガイドレール12の間に油圧ジャッキ3が設置される。油圧ジャッキ3のロッドの上端部には、エレベータかご2のかご部22を支持するプラットホーム21が取付けられ、プラットホーム21はガイドレール12に上下にスライド自在となる。
【0003】
油圧ユニット4は、図6に示すように、ケーシング40内に、油を貯留するタンク41と、ポンプ42と、ポンプ42を駆動するモータ43と、速度制御用の切替弁46と、を備え、これらの間および速度制御用の切替弁46と油圧ジャッキ3との間には、送油経路44が接続されている。なお、図6中の符号45はタンク41への逆流を防止する遮断弁であり、符号47はサージタンクである。
【0004】
そして、タンク41は下方に配置されるものであった。すなわち、タンク41が上方に配置されれば、タンク41から油が漏出した際にタンク41より下方の機器に油が付着して汚れてしまうため、タンク41は他の機器よりも下方に配置されるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−254741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エレベータかご2が上昇する際、ポンプ42が下方のタンク41内の油を吸い上げて油圧ジャッキ3に搬送するものである。しかしながら、上記従来のエレベータ昇降装置にあっては、タンク41がポンプ42よりも下方に配置されているため、エレベータかご2が上昇を開始する時の応答が良くないという問題があった。
【0007】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、エレベータかごが上昇を開始する時の応答が良いエレベータ昇降装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような構成とする。
【0009】
エレベータかごを昇降路内で上下に駆動させる油圧ジャッキと、この油圧ジャッキに供給する油を貯留するタンクと、このタンクから油を前記油圧ジャッキへと供給するポンプと、このポンプを動作させるモータと、を有し、前記タンクと前記ポンプと前記モータとを油圧ユニットとして備えるエレベータ昇降装置であって、前記タンクから前記ポンプへと油を送る送油経路を備え、前記タンクが前記ポンプよりも上位に配置され、前記モータの回転速度を変化させて前記ポンプによる油の供給量を調整することで、前記エレベータかごの上下昇降速度を制御する制御部を備えることを特徴とする。
【0010】
また、前記タンクには、このタンク内の油を搬出するための吸込み管が設けられ、前記吸込み管は、吸込み口が前記タンク内の貯留空間の底面よりも上方に位置し、吸込み方向が横方向となるように設けられることが好ましい。
【0011】
また、前記油圧ユニットのケーシング内に、上方から順に前記タンクと前記モータと前記ポンプとが設けられて前記ケーシングが縦長に形成され、前記ケーシングが前記昇降路の側壁の内面と前記エレベータかごの昇降領域との間に設置されることが好ましい。
【0012】
また、前記エレベータかごの上下昇降速度を検知する検知部を備え、この検知部により検知される速度に基づき前記制御部が前記モータの回転速度を変化させてフィードバック制御を行うことが好ましい。
【0013】
また、前記制御部を内蔵するコントロールボックスが前記昇降路の側壁の内面と前記エレベータかごの昇降領域との間に設置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエレベータ昇降装置は、エレベータかごが上昇を開始する時の応答が良い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態における内部を透視した油圧ユニットを示し、(a)は正面図であり、(b)は側面図であり、(c)は平面図であり、(d)は下面図である。
【図2】同上の実施形態の平面断面図である。
【図3】同上の実施形態におけるガイドレール、エレベータかご(開閉扉を除く)、駆動装置、コントロールボックス、乗り場の建物側の扉の斜視図である。
【図4】同上の実施形態における、昇降路のピットを形成した部分の側断面図である。
【図5】従来のエレベータ昇降装置の概略斜視図である。
【図6】同上のエレベータ昇降装置の駆動装置の構成図である。
【図7】同上の昇降路のピットを形成した部分の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のエレベータ昇降装置について、添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0017】
エレベータ昇降装置は、図2、図3に示すように、昇降路1と、エレベータかご2と、駆動装置と、を備えるものである。昇降路1は、建物6やエレベータ用建屋内に上下複数階にわたって連通するように形成される、平面視略矩形状をした閉空間で、この内部をエレベータかご2が昇降するものである。昇降路1の側壁には、建物の階に対応する位置に建物側の開口部62が形成され、この建物側の開口部62の外側に乗り場61が形成される。建物側の開口部62の上下には建物側のレール63が設けられ、この上下の建物側のレール63間を左右に移動自在となるように建物側の扉64が設けられる。建物側のレール63の左右の長さは、建物側の開口部62の左右の幅よりも長く、建物側の開口部62から外れた部分が戸袋部65となっている。この戸袋部65内に建物側の扉64を駆動させる扉駆動装置(不図示)が収容されている。昇降路1の底部からは、上方に向けて一対(二本)のガイドレール12が立設されるもので、本実施形態では図2に示すように、昇降路1の底部から突設される支柱11にガイドレール12が取付けられている。なお、ガイドレール12は一対ではなく、任意の本数設けられてもよい。
【0018】
エレベータかご2は、本実施形態では図2、図3に示すように、プラットホーム21と、プラットホーム21に載置されて支持されるかご部22と、で構成される平面視略矩形状をしたものである。プラットホーム21は、一対のガイドレール12間に架設され上下にスライド自在となる略矩形状をした側枠と、側枠の下端部から略水平方向に突出する略矩形状をした下枠と、からなる側面視略L字状をしたものである。なお、プラットホーム21の形状は限定されず、例えば上枠があって、側面視略L字状をしていなくてもよい。側枠の両端部に、ガイドレール12にスライド自在にはめ込まれる被ガイド部(不図示)が設けられ、側枠は被ガイド部を介してガイドレール12間を上下にスライド自在となっている。そして、下枠にかご部22が載置されて固定される。かご部22は、内部に人荷を載せる矩形箱状をしたもので、一面に出入り開口部23が形成され、扉レール24が設けられる。
【0019】
扉レール24は、出入り開口部23の上下に設けられ、この間を左右に移動自在となるように開閉扉25が設けられるもので、出入り開口部23の幅の全長および乗り場61からかご部22の左右一方に開閉扉25の幅分伸ばした長さ(すなわち戸袋部の長さ)にわたって設けられる。開閉扉25は複数枚(本実施形態では3枚)からなり、戸袋部の長さは略開閉扉25の1枚の長さとなる。これにより、扉レール24がかご部22の左右一方に戸袋部の長さ分、突出する状態となる。かご部22の戸袋部と、乗り場61側の戸袋部65は、略同じ長さに形成される。この扉レール24は、かご部22が昇降路1の各階の乗り場61に位置する際に、当該階に設けられた建物側のレール63に隣接して沿うように位置する。
【0020】
駆動装置は、エレベータかご2を昇降駆動するもので、油圧ジャッキ3と油圧ユニット4とで構成される。
【0021】
油圧ジャッキ3は、複数段の筒状のロッド(シリンダ)を有し、各ロッドがそのすぐ外側のロッドに対して突没することで、上下に伸縮自在となるもので、最上段のロッド31はシリンダでなくてもよい。最下段のシリンダ32には、油が該シリンダ32に流出入するための油ポート(不図示)が形成される。
【0022】
この油圧ジャッキ3は、本実施形態では一対のガイドレール12の間に設置され、最上段のロッド31の上端部が、エレベータかご2のプラットホーム21の側枠の上部(好ましくは上端部)に固定される。
【0023】
油圧ユニット4は、図1に示すように、タンク41と、ポンプ42と、モータ43と、送油経路44と、を備えるもので、本実施形態ではケーシング40内に前記機器とさらに遮断弁45が収容される。
【0024】
タンク41は、油圧ジャッキ3に供給される油を貯留する密閉された容器で、側壁に送油経路44と連通する開口が形成され、吸込み管48がタンク41内の貯留空間に突出するように設けられる。吸込み管48は、図1に示すように、吸込み方向(図1中の矢印)が横方向となるとともに、端部の吸込み口(の下端)が貯留空間の底面よりも上方に位置している。長年にわたりエレベータ昇降装置が使用されるうちに、油に塵埃や砂といったごみが混入する。油に混入したごみはタンク41内に溜まるが、タンク41内に溜まっているごみはタンク41内に油が戻った時に舞い上がる。この時、吸込み口が上方を向いていると、舞い上がったごみが吸込み口内に落下して油圧ジャッキ3に向けて搬送されてしまい、送油経路44の途中に設けられた機器に悪影響を与える惧れがある。このため、舞い上がったごみが吸込み口内に落下しないように吸込み方向を横に向けている。また、吸込み口が貯留空間の底面に近い程、底面に溜まっているごみが吸い込まれ易くなるが、底面から遠いと、吸込み口より下の油が吸い込まれず死蔵されてしまう。このため、底面から若干(数cm程度)の距離をあけて吸込み口が位置する。
【0025】
送油経路44は、タンク41と油圧ジャッキ3の油ポートとの間で油が搬送されるための経路で、可撓管が好適に用いられるが、可撓管でなくてもよく特に限定されない。ポンプ42は、送油経路44の途中に設けられ、モータ43により駆動されて油を搬送するものである。遮断弁45は、エレベータかご2が正常な速度範囲を超えて降下するのを防止するもので、油圧ジャッキ3からタンク41へ油が逆流するのを阻止することができる。
【0026】
本実施形態では、ケーシング40内に、タンク41とモータ43とポンプ42とが上下に並べられ、特に、タンク41がポンプ42よりも上位に配置されるもので、本実施形態では、上方から順にタンク41とモータ43とポンプ42が設けられ、ケーシング40が縦長となる縦型に形成されている。
【0027】
エレベータかご2が上昇する際、ポンプ42がタンク41内の油を吸い上げて油圧ジャッキ3に搬送するものであるが、特にエレベータかご2が上昇を開始する時に、油の搬送が早く行われるか否かで初動に影響するものである。本実施形態では、タンク41がポンプ42よりも上位に配置されて、ポンプ42にヘッド圧が常にかかった状態となるため、エレベータかご2が上昇を開始する時に、ポンプ42からの油の搬送が早く行われ、エレベータかご2の上昇が素早く行われる。
【0028】
また、本実施形態では、エレベータかご2の上下昇降速度の制御を、モータ43の回転速度を変化させてポンプ42による油の供給量を調整することで行うもので、インバータ制御によりエレベータかご2の上下昇降速度の制御を行っている。インバータ制御については既知であり詳細な説明は省略し、また、インバータ制御の具体的な形態については様々なものが適用可能で、特に限定されない。本実施形態では、インバータ制御のためのマイクロコンピュータを備えた制御部がコントロールボックス5内に設けられる。
【0029】
また本実施形態では、エレベータ昇降装置に、エレベータかご2の上下昇降速度を検知する検知部(不図示)が設けられている。検知部は、例えば圧電素子等からなり加速度を検知するピックアップと、このピックアップからの加速度情報を基に速度を演算する演算部からなるもの等、様々なものが適宜用いられ、特に限定されない。制御部は、検知部から得られる速度に基づいて、モータ43の回転速度を所定の速度とするフィードバック制御を行う。これにより、フィードバック制御が行われない場合と比べて、加減速が緩やかになって、エレベータかご2の昇降が滑らかに行われる。
【0030】
特に、フィードバック制御が行われる場合、油の搬送が早く行われるか否かで応答が大きく影響されるが、本実施形態では、タンク41がポンプ42よりも上位に配置されているため、フィードバック制御における応答が良好なものとなる。
【0031】
本実施形態では、図2に示すように、平面視において、かご部22の左右の外側面のうち扉レール24が突出する側の外側面221と、扉レール24のかご部22から突出している部分241と、を辺とする略矩形状をした領域26内に、油圧ユニット4が設置されるものである。油圧ユニット4は、全体が完全に領域26内に設置されていなくてもよいが、平面視における面積で概ね8割以上(好ましくは9割以上)が領域26内に設置される。領域26内に設置されない残りの部分は、平面視においてエレベータかご2が位置する昇降領域10と、昇降路1の側壁1aの内面との間に設置される。
【0032】
図4に示すように、昇降路1の下方の底部には、最下階の乗り場61面から下方に凹となるピット13が設けられる。従来のエレベータ昇降装置では、速度制御用の切替弁46が平面視において大きな面積を占めるもので、ケーシング40を縦長にすると容積が膨大となってしまうため、ケーシング40は横長に形成され、ケーシング40内に機器が横並びに設けられていた。このため、横長のケーシング40は上記領域26のような平面視において狭い空間に設置されることができず、昇降領域10の下方のピット13内に設置されていて、ピット13が深く(例えば550mm程度に)形成されていた。
【0033】
これに対し本実施形態においては、ケーシング40が縦型に形成されて領域26内に設置されるため、ピット13に設置される必要はなく、ピット13の深さは従来のエレベータ昇降装置よりも大幅に浅くて(例えば200mm程度で)済む。これにより、ピット13の形成のための手間と時間がかからない。特に、リフォーム時にエレベータが設置される場合、ピット13形成のために重機が搬入できず、深いピット13の形成が困難であったが、本実施形態においては、重機が搬入できない屋内等でも人力で浅いピット13が形成されればよい。
【0034】
また、従来は図5に示すように横長のケーシング40が油圧ジャッキ3から離れて設置され、ケーシング40と油圧ジャッキ3との間の送油経路44が長くなっていた。これに対し本実施形態においては、縦型のケーシング40が油圧ジャッキ3に隣接して設置可能であり、ケーシング40と油圧ジャッキ3との間の送油経路44の長さが短くて済む。
【0035】
また本実施形態では、図2、図3に示すように、戸袋部65の乗り場61に面する前面板66が開閉自在に設けられ、戸袋部65がその背方の昇降路1に連通する点検口となるものである。これにより、油圧ユニット4やコントロールボックス5をはじめ昇降路1内の点検が容易に行われる。
【符号の説明】
【0036】
1 昇降路
12 ガイドレール
2 エレベータかご
21 プラットホーム
22 かご部
23 出入り開口部
24 扉レール
25 開閉扉
3 油圧ジャッキ
4 油圧ユニット
40 ケーシング
41 タンク
42 ポンプ
43 モータ
44 送油経路
45 遮断弁
48 吸込み管
5 コントロールボックス
6 建物
61 乗り場
62 建物側の開口部
63 建物側のレール
64 建物側の扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータかごを昇降路内で上下に駆動させる油圧ジャッキと、この油圧ジャッキに供給する油を貯留するタンクと、このタンクから油を前記油圧ジャッキへと供給するポンプと、このポンプを動作させるモータと、を有し、前記タンクと前記ポンプと前記モータとを油圧ユニットとして備えるエレベータ昇降装置であって、前記タンクから前記ポンプへと油を送る送油経路を備え、前記タンクが前記ポンプよりも上位に配置され、前記モータの回転速度を変化させて前記ポンプによる油の供給量を調整することで、前記エレベータかごの上下昇降速度を制御する制御部を備えることを特徴とするエレベータ昇降装置。
【請求項2】
前記タンクには、このタンク内の油を搬出するための吸込み管が設けられ、前記吸込み管は、吸込み口が前記タンク内の貯留空間の底面よりも上方に位置し、吸込み方向が横方向となるように設けられることを特徴とする請求項1記載のエレベータ昇降装置。
【請求項3】
前記油圧ユニットのケーシング内に、上方から順に前記タンクと前記モータと前記ポンプとが設けられて前記ケーシングが縦長に形成され、前記ケーシングが前記昇降路の側壁の内面と前記エレベータかごの昇降領域との間に設置されることを特徴とする請求項1または2記載のエレベータ昇降装置。
【請求項4】
前記エレベータかごの上下昇降速度を検知する検知部を備え、この検知部により検知される速度に基づき前記制御部が前記モータの回転速度を変化させてフィードバック制御を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のエレベータ昇降装置。
【請求項5】
前記制御部を内蔵するコントロールボックスが前記昇降路の側壁の内面と前記エレベータかごの昇降領域との間に設置されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のエレベータ昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−23348(P2013−23348A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160265(P2011−160265)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(505356468)パナソニック ホームエレベーター株式会社 (23)
【Fターム(参考)】