説明

エレベータ用ブレーキ及びエレベータ

【課題】騒音を増やすことなくブレーキ故障を高精度に検出できるエレベータ用ブレーキ及びエレベータを提供する。
【解決手段】巻上機の回転軸と連動するディスクと、フレームに固定される制動基板と、制動基板とディスクとの間に配置され、制動基板に固定される第1の摩擦材と、ディスクを挟み、制動基板と対向する位置に配置され、ディスクを制動基板とともに挟む方向に往復運動自在に設置されるアーマチュアと、ディスクとアーマチュアとの間に配置され、アーマチュアに固定される第2の摩擦材と、アーマチュアを挟み、ディスクと対向する位置に配置されるアームと、アーマチュアに設置され、アーマチュアの往復運動の加速度を検知する加速度センサと、加速度センサが検知した加速度が閾値未満である場合、ブレーキ故障であると判定する制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ用ブレーキ及びエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータのカゴ室の制動は巻上機に連結されるブレーキによって行われる。このブレーキが正常に動作していることを検知するために、従来は接触式スイッチが用いられていた。
【0003】
しかし、この接触式スイッチが故障することがあり、ブレーキが正常に作動しているにもかかわらずブレーキ故障である旨の信号が検出される場合があった。
【0004】
ここで、接触式スイッチを複数設けることも考えられる。しかし、接触式スイッチは動作時に音がするため騒音の問題が生じる。
【0005】
この点に関し、ブレーキの生成する熱を検知する赤外線センサを設ける技術が提案されている。
【0006】
しかし、ブレーキの生成する熱を検知することはブレーキ故障を間接的にしか把握することができず、ブレーキ故障を検出する精度が高いとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開番号WO2007/039928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本実施形態は騒音を増やすことなくブレーキ故障を高精度に検出できるエレベータ用ブレーキ及びエレベータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、一実施形態はカゴ室と、錘と、カゴ室及び錘を吊りあげるロープと、ロープを巻き上げる巻上機と、カゴ室が昇降する昇降路と、乗場側ドアと、巻上機の回転軸と連動する中心軸と、中心軸に固定されるディスクと、中心軸が回転するように中心軸の回転軸周りに設けられ、フレームに固定される制動基板と、制動基板とディスクとの間に配置され、制動基板に固定される第1の摩擦材と、ディスクを挟み、制動基板と対向する位置に配置され、ディスクを制動基板とともに挟む方向に往復運動自在に設置されるアーマチュアと、ディスクとアーマチュアとの間に配置され、アーマチュアに固定される第2の摩擦材と、アーマチュアを挟み、ディスクと対向する位置に配置されるアームと、アーマチュアをディスクの方向に付勢する弾性体と、通電時にアーマチュアをディスクから引き離す電磁石と、アーマチュアに設置され、アーマチュアの往復運動の加速度を検知する加速度センサと、加速度センサが検知した加速度が閾値未満である場合、ブレーキ故障であると判定する制御部と、を具備するエレベータ用ブレーキと、を備えるエレベータを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】エレベータの側面図である。
【図2】ブレーキの切断斜視図である。
【図3】エレベータの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、エレベータ用ブレーキ及びエレベータの一実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
本実施形態のエレベータの一実施形態はカゴ室と、錘と、カゴ室及び錘を吊りあげるロープと、ロープを巻き上げる巻上機と、カゴ室が昇降する昇降路と、乗場側ドアと、巻上機の回転軸と連動する中心軸と、中心軸に固定されるディスクと、中心軸が回転するように中心軸の回転軸周りに設けられ、フレームに固定される制動基板と、制動基板とディスクとの間に配置され、制動基板に固定される第1の摩擦材と、ディスクを挟み、制動基板と対向する位置に配置され、ディスクを制動基板とともに挟む方向に往復運動自在に設置されるアーマチュアと、ディスクとアーマチュアとの間に配置され、アーマチュアに固定される第2の摩擦材と、アーマチュアを挟み、ディスクと対向する位置に配置されるアームと、アーマチュアをディスクの方向に付勢する弾性体と、通電時にアーマチュアをディスクから引き離す電磁石と、アーマチュアに設置され、アーマチュアの往復運動の加速度を検知する加速度センサと、加速度センサが検知した加速度が閾値未満である場合、ブレーキ故障であると判定する制御部と、を具備するエレベータ用ブレーキと、を備える。
【0013】
図1は、本実施形態に係るエレベータ100の側面図である。図1に示すように、エレベータ100は、乗客を乗せるカゴ室101と、錘103と、カゴ室101及び錘103を吊りあげるロープ106と、ロープ106を巻き上げる巻上機102と、カゴ室101が昇降する昇降路110と、乗場側ドア104と、乗場側ドア104の下方に設置されるステップ部105と、エレベータの運行を制御する制御部107と、を備える。
【0014】
カゴ室101は、カゴ室側ドア101Aと、カゴ室側ドア101Aの昇降路110側に設置される係合装置101Bと、を備える。
【0015】
乗場側ドア104は、昇降路110側に係合装置101Bと係合する突起部104Aを備える。
【0016】
制御部107は、指示された行き先階までカゴ室101を昇降させる。行き先階にカゴ室101が到着すると、係合装置101Bと突起部104Aとが係合している状態となる。この状態にてカゴ室側ドア101Aが開閉すると乗場側ドア104が従動して開閉する。
【0017】
巻上機102には巻上機102の回転を制動するブレーキ200が設けられる。
【0018】
図2は、ブレーキ200の切断斜視図である。図2に示すように、ブレーキ200は、巻上機102の回転軸と連動する中心軸208と、中心軸208に固定されるディスク205と、中心軸208が回転するように中心軸208の回転軸周りに設けられ、ブレーキ200のフレームに固定される制動基板207と、制動基板207とディスク205との間に配置され、制動基板207に固定される第1の摩擦材206と、ディスク205を挟み、制動基板207と対向する位置に配置され、ディスク205を制動基板207とともに挟む方向に往復運動自在に設置されるアーマチュア203と、ディスク205とアーマチュア203との間に配置され、アーマチュア203に固定される第2の摩擦材204と、アーマチュア203を挟み、ディスク205と対向する位置に配置されるアーム202と、アーマチュア203をディスク205方向に付勢する弾性体210と、通電時にアーマチュア203をディスク205から引き離す電磁石211と、アーマチュア203に設置され、アーマチュア203の往復運動の加速度を検知する加速度センサ201と、加速度センサ201が検知した加速度が閾値未満である場合、ブレーキ故障であると判定する制御部107と、を備える。
【0019】
さらに、ブレーキ200はアーマチュア203に固定され、アーム202に設けられる貫通孔に挿通される支持棒209を備えていてもよい。
【0020】
また、ブレーキ200は接触センサ212であるプッシュセンサをアーム202のアーマチュア203と対向する面に備える。
【0021】
アーマチュア203とアーム202との間には間隙W1が設けられる。
【0022】
巻上機102を回転させるためには、電磁石211に通電する。電磁石211は通電によりアーマチュア203をアーム202側に引き寄せ、ディスク205が開放される。
【0023】
巻上機102が回転すると中心軸208が回転し、この中心軸に固定されるディスク205が回転する。
【0024】
巻上機102を制動するためには、電磁石211の通電を遮断する。弾性体210であるつるまきバネはアーマチュア203をディスク205に押圧する。
【0025】
ディスク205は、第1の摩擦材206と第2の摩擦材204により挟まれ、ディスクの回転が制動される。
【0026】
ディスク205の回転が制動されることにより中心軸208の回転が制動され、巻上機102の回転が制動される。
【0027】
すなわち、アーマチュア203はブレーキ200の駆動に合わせて往復運動する。加速度センサ201はアーマチュア203のこの往復運動の加速度を検知する。
【0028】
制御部107は、加速度センサ201の検知した加速度と閾値とを比較する。この加速度が閾値未満である場合、制御部107はブレーキ故障が発生したと判定する。
【0029】
制御部107は、ブレーキ200が接触センサ212を備えている場合、接触センサ212がアーマチュア203の接触を検知しなくても、加速度センサ201が検知した加速度が閾値以上である場合にはブレーキ故障が発生していないと判定する。
【0030】
制御部107はさらに、加速度センサ201が検知した加速度を2回積分し、アーマチュア203の移動距離を算出する。
【0031】
制御部107は、この移動距離が間隙W1の許容範囲以内である場合はブレーキ故障が発生していないと判定し、許容範囲を超えた場合、ブレーキ故障が発生したと判定する。
【0032】
従って、制御部107は、第2の摩擦材204が欠落した場合のような、接触センサ212によって検知できない故障をも判定することができる。
【0033】
図3は、エレベータ100の構成を示すブロック図である。図3に示すように、エレベータ100は、制御部107であるCPU301と、閾値302Aを格納する記憶装置であるメモリ302と、加速度センサ201と、接触センサ212と、巻上機102と、乗場呼びボタン303と、カゴ室内行き先ボタン304と、を備える。
【0034】
メモリ302は、間隙W1の許容範囲を格納することもできる。
【0035】
以上述べたように、本実施形態のエレベータ100は、乗客を乗せるカゴ室101と、錘103と、カゴ室101及び錘103を吊りあげるロープ106と、ロープ106を巻き上げる巻上機102と、カゴ室101が昇降する昇降路110と、乗場側ドア104と、乗場側ドア104の下方に設置されるステップ部105と、巻上機102の回転軸と連動する中心軸208と、中心軸208に固定されるディスク205と、中心軸208が回転するように中心軸208の回転軸周りに設けられ、ブレーキ200のフレームに固定される制動基板207と、制動基板207とディスク205との間に配置され、制動基板207に固定される第1の摩擦材206と、ディスク205を挟み、制動基板207と対向する位置に配置され、ディスク205を制動基板207とともに挟む方向に往復運動自在に設置されるアーマチュア203と、ディスク205とアーマチュア203との間に配置され、アーマチュア203に固定される第2の摩擦材204と、アーマチュア203を挟み、ディスク205と対向する位置に配置されるアーム202と、アーマチュア203をディスク205方向に付勢する弾性体210と、通電時にアーマチュア203をディスク205から引き離す電磁石211と、アーマチュア203に設置され、アーマチュア203の往復運動の加速度を検知する加速度センサ201と、加速度センサ201が検知した加速度が閾値未満である場合、ブレーキ故障であると判定する制御部107と、を備えるブレーキ200と、を備える。
【0036】
従って、本実施形態のエレベータ100は、騒音を増やすことなくブレーキ故障を高精度に検出できるという効果がある。
【0037】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0038】
101:カゴ室
102:巻上機
104:乗場側ドア
105:ステップ部
107:制御部
201:加速度センサ
203:アーマチュア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの巻上機の回転軸と連動する中心軸と、
前記中心軸に固定されるディスクと、
前記中心軸が回転するように前記中心軸の回転軸周りに設けられ、フレームに固定される制動基板と、
前記制動基板と前記ディスクとの間に配置され、前記制動基板に固定される第1の摩擦材と、
前記ディスクを挟み、前記制動基板と対向する位置に配置され、前記ディスクを前記制動基板とともに挟む方向に往復運動自在に設置されるアーマチュアと、
前記ディスクと前記アーマチュアとの間に配置され、前記アーマチュアに固定される第2の摩擦材と、
前記アーマチュアを挟み、前記ディスクと対向する位置に配置されるアームと、
前記アーマチュアを前記ディスクの方向に付勢する弾性体と、
通電時に前記アーマチュアを前記ディスクから引き離す電磁石と、
前記アーマチュアに設置され、前記アーマチュアの往復運動の加速度を検知する加速度センサと、
前記加速度センサが検知した加速度が閾値未満である場合、ブレーキ故障であると判定する制御部と、
を備えるエレベータ用ブレーキ。
【請求項2】
接触センサを前記アームの前記アーマチュアと対向する面にさらに備え、
前記制御部は、
前記接触センサが前記アーマチュアの接触を検知しなくても、前記加速度センサが検知した加速度が閾値以上である場合にはブレーキ故障が発生していないと判定する請求項1記載のエレベータ用ブレーキ。
【請求項3】
前記制御部は、
前記加速度センサが検知した加速度を2回積分することにより算出した前記アーマチュアの移動距離が前記アーマチュアと前記アームとの間隙の許容範囲以内である場合はブレーキ故障が発生していないと判定し、許容範囲を超えた場合、ブレーキ故障が発生したと判定する請求項2記載のエレベータ用ブレーキ。
【請求項4】
カゴ室と、
錘と、
前記カゴ室及び前記錘を吊りあげるロープと、
前記ロープを巻き上げる巻上機と、
前記カゴ室が昇降する昇降路と、
乗場側ドアと、
巻上機の回転軸と連動する中心軸と、前記中心軸に固定されるディスクと、前記中心軸が回転するように前記中心軸の回転軸周りに設けられ、フレームに固定される制動基板と、前記制動基板と前記ディスクとの間に配置され、前記制動基板に固定される第1の摩擦材と、前記ディスクを挟み、前記制動基板と対向する位置に配置され、前記ディスクを前記制動基板とともに挟む方向に往復運動自在に設置されるアーマチュアと、前記ディスクと前記アーマチュアとの間に配置され、前記アーマチュアに固定される第2の摩擦材と、前記アーマチュアを挟み、前記ディスクと対向する位置に配置されるアームと、前記アーマチュアを前記ディスクの方向に付勢する弾性体と、通電時に前記アーマチュアを前記ディスクから引き離す電磁石と、前記アーマチュアに設置され、前記アーマチュアの往復運動の加速度を検知する加速度センサと、前記加速度センサが検知した加速度が閾値未満である場合、ブレーキ故障であると判定する制御部と、を具備するエレベータ用ブレーキと、
を備えるエレベータ。
【請求項5】
接触センサを前記アームの前記アーマチュアと対向する面にさらに備え、
前記制御部は、
前記接触センサが前記アーマチュアの接触を検知しなくても、前記加速度センサが検知した加速度が閾値以上である場合にはブレーキ故障が発生していないと判定する請求項4記載のエレベータ。
【請求項6】
前記制御部は、
前記加速度センサが検知した加速度を2回積分することにより算出した前記アーマチュアの移動距離が前記アーマチュアと前記アームとの間隙の許容範囲以内である場合はブレーキ故障が発生していないと判定し、許容範囲を超えた場合、ブレーキ故障が発生したと判定する請求項5記載のエレベータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−112501(P2013−112501A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262231(P2011−262231)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】