説明

エレベータ用表示器

【課題】本発明は、既設のボックスを利用しつつ、改修工事の手間を軽減することを目的とするものである。
【解決手段】ボックス2内の上面及び下面には、箱形取付金6がそれぞれ取り付けられている。各箱形取付金6は、断面コ字形の第1の板金7と、断面コ字形の第2の板金8とを組み合わせて構成されている。第1の板金7は、ボックス2の内面に当接された平板状のボックス接合部を有している。ボックス接合部には、スタッド挿通孔が設けられている。第2の板金8は、ボックス接合部に対向した平板状の表示器本体取付部を有している。表示器本体取付部には、ピン9が立設されている。フェースプレート13の背面には、一対の案内片16と、一対の弾性係合部材17とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、乗場ボタン装置、乗場操作盤、かご内操作盤、乗場位置表示器、及びかご内表示器等のエレベータ用表示器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータの乗場ボタンの改修工事において、既設ボックスを残して新規意匠の乗場ボタンを取り付ける場合、まず、ボックス内の上下面に設けられたスタッドをそれぞれ切断するとともに、ボックスの背面の上下端部近傍に孔明け加工又はねじ加工をそれぞれ施す。この後、一端部にピンが設けられ、他端部に孔が設けられた一対のL形の取付金を、ボックス背面の加工孔に対してタッピンねじ又は他のねじを用いて取り付ける。そして、これらの取付金を介して、新規意匠の乗場ボタンをボックスに取り付ける(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−276782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の乗場ボタンの改修工事では、ボックスの背面にモルタル等の詰め物や建築壁が接している場合、孔明け工具(例えば鉄鋼用電気ドリル)の刃先を保護するため、モルタル等や建築壁を予め除去することがある。また、ボックスの幅が狭い場合やボックスの奥行きが深い場合には、通常よりも長い特殊なキリを用いて孔明けを実施する。従って、改修工事に多大な時間がかかっている。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、既設のボックスを利用しつつ、改修工事の手間を軽減することができるエレベータ用表示器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータ用表示器は、前面に開口が設けられているとともに、内面に複数のスタッドが立設されているボックスに取り付けられるものであって、スタッドが挿通されるスタッド挿通孔が設けられており、ボックスの内面に当接される平板状のボックス接合部と、ボックス接合部に対向し、ボックス接合部へ向けて突出した係合片が立設されている平板状の表示器本体取付部とをそれぞれ有する複数の箱形取付金、開口を塞ぐようにボックスの前面に取り付けられる表示器本体、表示器本体の背面に設けられ、表示器本体のボックスへの装着時に表示器本体取付部に沿って摺動される複数の案内片、及び案内片とともに表示器本体の背面に設けられ、表示器本体のボックスへの装着時に弾性変形されて係合片に係合される複数の弾性係合部材を備えている。
【発明の効果】
【0007】
この発明のエレベータ用表示器は、スタッドを利用してボックス内に取り付けられる複数の箱形取付金と、表示器本体の背面に設けられた複数の案内片と、案内片とともに表示器本体の背面に設けられた複数の弾性係合部材とを有しており、箱形取付金は、ボックスの内面に当接される平板状のボックス接合部と、ボックス接合部に対向する平板状の表示器本体取付部とをそれぞれ有しており、ボックス接合部には、スタッドが挿通されるスタッド挿通孔が設けられており、表示器本体取付部には、ボックス接合部へ向けて突出した係合片が立設されており、案内片は、表示器本体のボックスへの装着時に表示器本体取付部に沿って摺動され、弾性係合部材は、表示器本体のボックスへの装着時に弾性変形されて係合片に係合されるので、改修工事の際、既設のボックスからスタッドを切断したり、ボックスの背面に孔明け加工をしたりする必要がなく、このためボックスの背面に接する建築壁やモルタル等を除去する必要もなく、従って、既設のボックスを利用しつつ、改修工事の手間を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1による乗場ボタン装置の縦断面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1の箱形取付金を示す斜視図である。
【図4】図1のボックスを示す正面図である。
【図5】図4のV−V線に沿う断面図である。
【図6】図1の表示器本体をボックスに装着する前の状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による乗場ボタン装置の縦断面図、図2は図1のII−II線に沿う断面図、図3は図1の箱形取付金を示す斜視図である。
【0010】
図において、乗場壁1には、乗場ボタン装置を設置するための凹部1aが設けられている。凹部1a内には、ボックス2が嵌め込まれ固定されている。ボックス2の前面には、開口2aが設けられている。ボックス2内の上面及び下面には、それぞれスタッド(スタッドボルト)3が立設されている。ボックス2の背面には、配線孔2bが設けられている。
【0011】
ボックス2内には、配線孔2bを通して外部接続ケーブル4が引き込まれている。外部接続ケーブル4の端部には、コネクタ5が設けられている。
【0012】
ボックス2内の上面及び下面には、箱形取付金6がそれぞれ取り付けられている。各箱形取付金6は、図3に示すように、断面コ字形の第1の板金7と、断面コ字形の第2の板金8とを組み合わせて、断面矩形の筒状に構成されている。
【0013】
第1の板金7は、ボックス2の内面に当接された平板状のボックス接合部7aと、ボックス接合部7aの幅方向両端部を直角に折り曲げてなる一対の第1の側面部7bとを有している。ボックス接合部7aには、スタッド3が挿通されたスタッド挿通孔7cが設けられている。スタッド挿通孔7cは、ボックス2の奥行き方向(図1の左右方向)に延設された長孔である。
【0014】
第2の板金8は、ボックス接合部7aに対向した平板状の表示器本体取付部8aと、表示器本体取付部8aの幅方向両端部を直角に折り曲げてなる一対の第2の側面部8bとを有している。表示器本体取付部8aには、ボックス接合部7aへ向けて直角に突出した係合片としてピン9が立設されている。
【0015】
第1及び第2の板金7,8は、第1及び第2の側面部7b,8bを重ね合わせて複数のねじ10を用いて固定することにより、一体化されている。表示器本体取付部8aには、スタッド挿通孔7cに対向する切欠部8cが設けられている。また、第1の板金7は、スタッド3にナット11を螺着することによりボックス2の内面に固定されている。
【0016】
ボックス2の前面には、開口2aを塞ぐように表示器本体(ボタン装置本体)12が取り付けられている。表示器本体12は、フェースプレート13と、フェースプレート13の前面から突出した上下の操作ボタン14a,14bと、フェースプレート13の背面に固定された基板部15とを有している。基板部15には、コネクタ5が接続されている。
【0017】
フェースプレート13の背面には、表示器本体取付部8aに当接された上下一対の案内片16が取り付けられている。案内片16は、表示器本体12をボックス2に装着する際に表示器本体取付部8aに沿って摺動される。また、案内片16には、ピン9が挿入された切欠部16aが設けられている。
【0018】
また、フェースプレート13の背面には、上下一対の弾性係合部材17が設けられている。弾性係合部材17は、案内片16とともにフェースプレート13に取り付けられている。また、弾性係合部材17は、表示器本体12のボックス2への装着時に弾性変形してピン9に係合される。
【0019】
さらに、弾性係合部材17には、復元力によりピン9に押し当てられた係合部17aが設けられている。さらにまた、弾性係合部材17の先端部には、表示器本体12をボックス2から引き出した際にピン9に引っ掛かって表示器本体12の脱落を阻止するU字形のフック部17bが設けられている。
【0020】
次に、乗場ボタン装置の改修方法について説明する。まず、図4及び図5に示すように、既設のボックス2を残して、古い乗場ボタン装置を撤去する。このとき、スタッド3も、切断せずに残しておく。なお、図4はボックス2を示す正面図、図5は図4のV−V線に沿う断面図である。
【0021】
また、第1及び第2の板金7,8を組み合わせて2個の箱形取付金6を予め組み立てておく。そして、上下のスタッド3に箱形取付金6をそれぞれ固定する。このとき、図3に示すように、切欠部8cに工具18の先端を通して、スタッド3にナット11を締め付ける。
【0022】
この後、図6に示すように、案内片16及び弾性係合部材17が取り付けられた表示器本体12をボックス2の前面に対向させる。そして、コネクタ5を基板部15に接続するとともに、案内片16を箱形取付金6内に押し込んでいく。このとき、案内片16を表示器本体取付部8aに沿って摺動させる。これにより、弾性係合部材17は、ピン9により弾性変形され、その後、復元しつつピン9に係合し、表示器本体12がボックス2の前面に保持される。
【0023】
このような乗場ボタン装置では、改修工事の際、既設のボックス2からスタッド3を切断したり、ボックス2の背面に孔明け加工をしたりする必要がない。このため、ボックス2の背面に接する建築壁やモルタル等を除去したり、特殊なキリを用いたりする必要もない。従って、既設のボックス2を利用しつつ、改修工事の手間を軽減することができる。
【0024】
また、改修工事の作業時間が短縮されることにより、改修工事に伴うエレベータの停止期間を短縮することができる。
さらに、孔明けによる切り屑や除去した建築壁やモルタル等の廃棄物が出ないため、環境にも良い。
さらにまた、切断、孔明け、ハツリ作業がないため、作業時の騒音を低減することができる。
【0025】
また、第1及び第2の板金7,8を組み合わせて箱形取付金6を構成したので、箱形取付金6の製造が容易である。
さらに、スタッド挿通孔7cを長孔としたので、スタッド3の位置が異なる様々なボックス2に容易に適用することができる。
さらにまた、表示器本体取付部8aに切欠部8cを設けたので、工具18を使用してスタッド3にナット11を容易に締め付けることができる。
【0026】
なお、係合片はピン9に限定されるものではなく、例えばボルト等であってもよい。
また、弾性係合部材17の形状も図2の形状に限定されるものではない。
さらに、上記の例では、第1及び第2の板金7,8をねじ10で締結したが、締結方法はこれに限定されるものではなく、例えばリベットで締結したり溶接したりしてもよい。
さらにまた、箱形取付金6は、箱型であれば第1の板金7と第2の板金8とを一体化したものでもよい。
また、上記の例ではエレベータ用表示器として乗場ボタン装置を示したが、この発明は、例えば、乗場操作盤、かご内操作盤、乗場位置表示器、及びかご内表示器等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
2 ボックス、2a 開口、3 スタッド、6 箱形取付金、7 第1の板金、7a ボックス接合部、7c スタッド挿通孔、8 第2の板金、8a 表示器本体取付部、8c 切欠部、9 ピン(係合片)、12 表示器本体、16 案内片、17 弾性係合部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開口が設けられているとともに、内面に複数のスタッドが立設されているボックスに取り付けられるエレベータ用表示器であって、
前記スタッドが挿通されるスタッド挿通孔が設けられており、前記ボックスの内面に当接される平板状のボックス接合部と、前記ボックス接合部に対向し、前記ボックス接合部へ向けて突出した係合片が立設されている平板状の表示器本体取付部とをそれぞれ有する複数の箱形取付金、
前記開口を塞ぐように前記ボックスの前面に取り付けられる表示器本体、
前記表示器本体の背面に設けられ、前記表示器本体の前記ボックスへの装着時に前記表示器本体取付部に沿って摺動される複数の案内片、及び
前記案内片とともに前記表示器本体の背面に設けられ、前記表示器本体の前記ボックスへの装着時に弾性変形されて前記係合片に係合される複数の弾性係合部材
を備えていることを特徴とするエレベータ用表示器。
【請求項2】
前記箱形取付金は、前記ボックス接合部を有する断面コ字形の第1の板金と、前記表示器本体取付部を有する断面コ字形の第2の板金とを組み合わせて構成されていることを特徴とする請求項1記載のエレベータ用表示器。
【請求項3】
前記スタッド挿通孔は、前記ボックスの奥行き方向に延設された長孔であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエレベータ用表示器。
【請求項4】
前記表示器本体取付部には、前記スタッド挿通孔に対向する切欠部が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のエレベータ用表示器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−126565(P2012−126565A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282114(P2010−282114)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】