説明

エンジンのアイドルギヤの軸受装置

【課題】 潤滑油を転がり軸受全体に行き渡らせることができるエンジンのアイドルギヤの軸受装置を提供する。
【解決課題】
この課題解決のため、シリンダブロック1の壁2に支持軸3を取り付け、この支持軸3に転がり軸受4を取り付け、この転がり軸受4の外輪5にアイドルギヤ6を取り付け、支持軸3に潤滑油圧送通路7を設け、この潤滑油圧送通路7の潤滑油噴射口8から転がり軸受4に潤滑油9を噴射するエンジンのアイドルギヤの軸受装置において、アイドルギヤ6のリム10の端縁11から支持軸3に向けて円環形の潤滑油案内板12を導出し、この潤滑油案内板12の導出端縁13の内側に潤滑油供給口8を臨ませ、この潤滑油供給口8から噴射した潤滑油9を潤滑油案内板12の内面14の案内で外輪5の内周面15まで導入できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのアイドルギヤの軸受装置に関し、詳しくは、潤滑油を転がり軸受全体に行き渡らせることができるエンジンのアイドルギヤの軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンのアイドルギヤの軸受装置として、シリンダブロックの壁に支持軸を取り付け、この支持軸に転がり軸受を取り付け、この転がり軸受の外輪にアイドルギヤを取り付け、支持軸に潤滑油圧送通路を設け、この潤滑油圧送通路の潤滑油噴射口から転がり軸受に潤滑油を噴射するものがある(例えば、特許文献1参照)。
この種の軸受装置によれば、潤滑油で転がり軸受の潤滑と冷却を図ることができる利点がある。
しかし、この従来技術には、潤滑油を軸受に保持する機能がないため、問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−264848号公報(図3参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
《問題》 潤滑油が転がり軸受全体に行き渡らない。
潤滑油を軸受に保持する機能がないため、潤滑油が転がり軸受から短時間で流出し、潤滑油が転がり軸受全体に行き渡らない。
【0005】
本発明の課題は、潤滑油を転がり軸受全体に行き渡らせることができるエンジンのアイドルギヤの軸受装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明の発明特定事項は、次の通りである。
図1(A)(B)または図3(A)(B)に例示するように、シリンダブロック(1)の壁(2)に支持軸(3)を取り付け、この支持軸(3)に転がり軸受(4)を取り付け、この転がり軸受(4)の外輪(5)にアイドルギヤ(6)を取り付け、支持軸(3)に潤滑油圧送通路(7)を設け、この潤滑油圧送通路(7)の潤滑油噴射口(8)から転がり軸受(4)に潤滑油(9)を噴射するエンジンのアイドルギヤの軸受装置において、
図1(A)(B)または図3(A)(B)に例示するように、アイドルギヤ(6)のリム(10)の端縁(11)から支持軸(3)に向けて円環形の潤滑油案内板(12)を導出し、この潤滑油案内板(12)の導出端縁(13)の内側に潤滑油供給口(8)を臨ませ、この潤滑油供給口(8)から噴射した潤滑油(9)を潤滑油案内板(12)の内面(14)の案内で外輪(5)の内周面(15)まで導入できるようにした、ことを特徴とするエンジンのアイドルギヤの軸受装置。
【発明の効果】
【0007】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果》 潤滑油を転がり軸受全体に供給することができる。
図1(A)(B)または図3(A)(B)に例示するように、アイドルギヤ(6)のリム(10)の端縁(11)から支持軸(3)に向けて円環形の潤滑油案内板(12)を導出し、この潤滑油案内板(12)の導出端縁(13)の内側に潤滑油供給口(8)を臨ませ、この潤滑油供給口(8)から噴射した潤滑油(9)を潤滑油案内板(12)の内面(14)の案内で外輪(5)の内周面(15)まで導入できるようにしたので、外輪(5)の内周面(15)に導入された潤滑油(9)は、その粘性でアイドルギヤ(6)と一体に回転(20)する外輪(5)の内周面(15)に連れ廻され、遠心力で外輪(5)の内周面(15)に押し付けられ、転がり軸受(4)からの短時間での流出が抑制され、潤滑油(9)を転がり軸受(4)全体に行き渡らせることができる。
【0008】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 潤滑油を転がり軸受全体に行き渡らせる機能が高い。
図1(B)または図3(B)に例示するように、潤滑油案内板(12)と外輪(5)の端面(16)との間に潤滑油保持溝(17)を形成したので、遠心力で潤滑油保持溝(17)にも潤滑油(9)を保持することができ、潤滑油(9)を転がり軸受(4)全体に行き渡らせる機能が高い。
【0009】
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 潤滑油と転がり軸受の冷却を行うことができる。
図3(A)(B)に例示するように、潤滑油案内板(12)の外面(18)に放熱フィン(19)を設けたので、放熱フィン(19)からの放熱により、潤滑油(9)と転がり軸受(4)の冷却を行うことができる。
【0010】
(請求項4に係る発明)
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 転がり軸受の潤滑機能が高まる。
図3(A)(B)に例示するように、アイドルギヤ(6)の回転(20)時に放熱フィン(19)で支持軸(3)側に送風(21)を行い、支持軸(3)と潤滑油案内板(12)の導出端縁(13)の間から転がり軸受(4)とは反対側に溢れようとする潤滑油(9)の流出を、送風(21)による遮蔽で抑制できるようにしたので、転がり軸受(4)への潤滑油(9)の供給量が多くなり、転がり軸受(4)の潤滑機能が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係るエンジンを説明する図で、図1(A)はアイドルギヤとその周辺部分の横断面平面図、図1(B)は図1(A)のB矢視部分の拡大図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るエンジンの一部切欠正面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るエンジンを説明する図で、図3(A)はアイドルギヤとその周辺部分の横断面平面図、図3(B)は図3(A)のB矢視部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1、図2は本発明の第1実施形態に係るアイドルギヤの軸受装置を備えたエンジンを説明する図、図3は第2実施形態に係るアイドルギヤの軸受装置を備えたエンジンを説明する図であり、各実施形態では、水冷の立形多気筒ディーゼルエンジンについて説明する。
【0013】
第1実施形態について説明する。
このエンジンの概要は、次の通りである。
図2に示すように、シリンダブロック(1)の上部にシリンダヘッド(22)を組み付け、シリンダブロック(1)の下部にオイルパン(23)を組み付け、シリンダブロック(1)の前部に調時伝動ギヤケース(24)を組み付けている。
調時伝動ギヤケース(24)内には調時伝動ギヤトレイン(25)を収容している。調時伝動ギヤトレイン(25)は、クランクギヤ(26)に第1アイドルギヤ(27)を噛み合わせ、第1アイドルギヤ(27)に動弁カムギヤ(28)と第2アイドルギヤ(6)とを噛み合わせ、第2アイドルギヤ(6)に燃料噴射カムギヤ(29)と動力取出しギヤ(30)とを噛み合わせている。各ギヤの回転方向は、図2に矢印で示している。
【0014】
図1(A)(B)に示すように、シリンダブロック(1)の壁(2)に支持軸(3)を取り付け、この支持軸(3)に転がり軸受(4)を取り付け、この転がり軸受(4)の外輪(5)に第2アイドルギヤ(6)を取り付け、支持軸(3)に潤滑油圧送通路(7)を設け、この潤滑油圧送通路(7)の潤滑油噴射口(8)から転がり軸受(4)に潤滑油(9)を噴射する。
【0015】
シリンダブロック(1)の壁(2)は、シリンダブロック(1)の前壁である。転がり軸受(4)は、玉軸受であり、外輪(5)と内輪(31)との間に鋼球(40)を配置している。内輪(31)は支持軸(3)に取付ボルト(32)で取り付けた抜け止め板(33)で支持軸(3)に固定され、外輪(5)は、止輪(34)で第2アイドルギヤ(6)に固定されている。
潤滑油圧送通路(7)は、オイルパン(23)の潤滑油(9)をオイルポンプ(35)でクランク軸の軸受(図外)等の摺動部に供給するためのオイルギャラリ(36)と連通している。オイルギャラリ(36)は、シリンダブロック(1)の壁(2)に設けられ、支持軸(3)の周方向に形成した円環溝(37)を介して潤滑油圧送通路(7)と連通している。潤滑油圧送通路(7)は円環溝(37)から支持軸(3)内を貫通させ、支持軸(3)の周面で潤滑油圧送通路(7)の潤滑油噴射口(8)を開口させている。
【0016】
図1(A)(B)に示すように、アイドルギヤ(6)のリム(10)の端縁(11)から支持軸(3)に向けて円環形の潤滑油案内板(12)を導出し、この潤滑油案内板(12)の導出端縁(13)の内側に潤滑油供給口(8)を臨ませ、この潤滑油供給口(8)から噴射した潤滑油(9)を潤滑油案内板(12)の内面(14)の案内で外輪(5)の内周面(15)まで導入できるようにしている。
潤滑油案内板(12)は、アイドルギヤ(6)のリム(10)のシリンダブロック(1)側の端縁(11)から導出しているが、アイドルギヤ(6)のリム(10)の反シリンダブロック(1)側の端縁(38)から支持軸(3)に向けて導出し、この潤滑油案内板(12)の導出端縁(13)の内側に潤滑油供給口(8)を臨ませてもよい。
【0017】
図1(B)に示すように、潤滑油案内板(12)と外輪(5)の端面(16)との間に潤滑油保持溝(17)を形成している。
潤滑油保持溝(17)は、潤滑油案内板(12)と外輪(5)の端面(16)との間に円環状に形成される。
潤滑油保持溝(17)は、潤滑油案内板(12)と外輪(5)のシリンダブロック(1)側の端面(16)との間に形成しているが、潤滑油案内板(12)をアイドルギヤ(6)のリム(10)の反シリンダブロック(1)側の端縁(38)から支持軸(3)に向けて導出した場合には、潤滑油案内板(12)と外輪(5)の反シリンダブロック(1)側の端面(39)との間に形成する。
【0018】
図3(A)(B)に示す第2実施形態について説明する。
図3(A)(B)に示すように、潤滑油案内板(12)の外面(18)に放熱フィン(19)を設け、アイドルギヤ(6)の回転(20)時に放熱フィン(19)で支持軸(3)側に送風(21)を行い、支持軸(3)と潤滑油案内板(12)の導出端縁(13)の間から転がり軸受(4)とは反対側に溢れようとする潤滑油(9)の流出を、送風(21)による遮蔽で抑制できるようにしている。
放熱フィン(19)は回転(20)方向の接線に対して所定角度傾斜させ、送風機能が得られるようにしている。
他の構成は、図1(A)(B)と図2に示す第1実施形態と同一であり、図3(A)(B)中、図1(A)(B)と同一の要素には同一の符号を付しておく。
【符号の説明】
【0019】
(1) シリンダブロック
(2) 壁
(3) 支持軸
(4) 転がり軸受
(5) 外輪
(6) アイドルギヤ
(7) 潤滑油圧送通路
(8) 潤滑油噴射口
(9) 潤滑油
(10) リム
(11) 端縁
(12) 潤滑油案内板
(13) 導出端縁
(14) 内面
(15) 内周面
(16) 端面
(17) 潤滑油保持溝
(18) 外面
(19) 放熱フィン
(20) 回転
(21) 送風

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダブロック(1)の壁(2)に支持軸(3)を取り付け、この支持軸(3)に転がり軸受(4)を取り付け、この転がり軸受(4)の外輪(5)にアイドルギヤ(6)を取り付け、支持軸(3)に潤滑油圧送通路(7)を設け、この潤滑油圧送通路(7)の潤滑油噴射口(8)から転がり軸受(4)に潤滑油(9)を噴射するエンジンのアイドルギヤの軸受装置において、
アイドルギヤ(6)のリム(10)の端縁(11)から支持軸(3)に向けて円環形の潤滑油案内板(12)を導出し、この潤滑油案内板(12)の導出端縁(13)の内側に潤滑油供給口(8)を臨ませ、この潤滑油供給口(8)から噴射した潤滑油(9)を潤滑油案内板(12)の内面(14)の案内で外輪(5)の内周面(15)まで導入できるようにした、ことを特徴とするエンジンのアイドルギヤの軸受装置。
【請求項2】
請求項1に記載したエンジンのアイドルギヤの軸受装置において、
潤滑油案内板(12)と外輪(5)の端面(16)との間に潤滑油保持溝(17)を形成した、ことを特徴とするエンジンのアイドルギヤの軸受装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載したエンジンのアイドルギヤの軸受装置において、
潤滑油案内板(12)の外面(18)に放熱フィン(19)を設けた、ことを特徴とするエンジンのアイドルギヤの軸受装置。
【請求項4】
請求項3に記載したエンジンのアイドルギヤの軸受装置において、
アイドルギヤ(6)の回転(20)時に放熱フィン(19)で支持軸(3)側に送風(21)を行い、支持軸(3)と潤滑油案内板(12)の導出端縁(13)の間から転がり軸受(4)とは反対側に溢れようとする潤滑油(9)の流出を、送風(21)による遮蔽で抑制できるようにした、ことを特徴とするエンジンのアイドルギヤの軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−57295(P2013−57295A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196074(P2011−196074)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】