説明

エンジンの回転制御装置

【目的】エンジンの回転数制御装置に関し、車速が最高設定車速を越えても、アクセルペダルの踏み込みの解除を行う必要がなく、アクセルペダルの操作性の向上を図ることを目的とする。
【構成】ボリューム14によって設定された最高速度以下のとき、アクセルペダル11の踏み込み量に対する目標回転数を記憶部17から読み出し、その読み出した目標回転数となるようにステッピングモータ7を介してスロットル弁6を開度制御するコントローラ10と、前記ボリューム14によって設定された最高速度に車両が達したとき、該ボリューム14によって設定した最高速度に対するエンジンの最大上限目標回転数を記憶部17から読み出し、その読み出した最大上限目標回転数となるようにステッピングモータ7を介してスロットル弁6を開度制御するコントーラ10とを備えた構成とした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はエンジンの回転数制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のエンジンの回転数制御装置は、図3R>3に示すように、アクセルペダル50の操作量に基づいて第1アクセルワイヤ51を介してアクチュエータ52を動作させる。これにより、アクチュエータ52は第2アクセルワイヤ53を介してキャブレター54内のスロットル弁を開閉制御する。従って、エンジン55の回転数が変化して車速を調整することができるようになっている。又、車速設定ボリューム56によって最高設定車速を設定することができるようになっている。つまり、前輪57の回転数を車速センサ58が検出し、コントローラ59は車速センサ58からの検出信号に基づいて車速を演算する。そして、前記車速センサ58からの検出信号に基づいて演算した車速が前記車速設定ボリューム56によって予め設定された最高設定車速を越えたとき、コントローラ59は前記アクチュエータ52を動作させる。すると、アクチュエータ52は第2アクセルワイヤ53を介しててキャブレター54内のスロットル弁を閉じる方向に制御してエンジン55の回転数をアイドリング状態にする。これにより、車速を減速する。
【0003】又、車速設定ボリューム56によって設定された最高設定車速を越えたとき、エンジン55の回転数はアイドリング状態になって車速が減速するが、これを解除するためにはアクセルぺダル50の踏み込みを解除する。すると、コントローラ59はアクセルペダル50の踏み込みの解除を図示しないアクセルセンサにより検出する。この検出に基づいて前記コントローラ59はアクチュエータ52を介してキャブレター54内のスロットル弁の開閉制御を解除し、エンジン55のアイドリング制御を解除する。これにより、再びアクセルペダル50の操作量に基づいてエンジン55の回転数を制御して車速を調整することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、車速設定ボリューム56によって設定された最高設定車速を越えると、エンジン55がアイドリング状態となって車速が減少する。そのため、この解除を行うために作業者は、アクセルペダル50の踏み込みを解除する動作を行わなければならず、操作が面倒であり操作性が悪いという問題がある。
【0005】本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は車速が最高設定車速を越えても、アクセルペダルの踏み込みの解除を行う必要がなく、アクセルペダルの操作性の向上を図るエンジンの回転制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は上記問題点を解決するため、車両に搭載されたエンジンと、前記車両の速度を検出する車速検出手段と、前記エンジンの回転数を検出する回転数検出手段と、前記エンジンのスロットル弁を駆動する駆動手段と、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセル検出手段と、前記エンジンの最高速度を適宜選択設定する最高速度設定手段と、前記最高速度設定手段に対するエンジンの最大上限目標回転数と、アクセルペダルの踏み込み量に対するエンジンの目標回転数とを記憶した記憶手段と、前記最高速度設定手段によって設定された最高速度以下のとき、前記アクセルペダルの踏み込み量に対する目標回転数を前記記憶手段から読み出し、その読み出した目標回転数となるように前記駆動手段を介してスロットル弁を開度制御する第1開度制御手段と、前記最高速度設定手段によって設定された最高速度に車両が達したとき、該最高速度設定手段によって設定された最高速度に対するエンジンの最大上限目標回転数を前記記憶手段から読み出し、その読み出した最大上限目標回転数となるように前記駆動手段を介してスロットル弁を開度制御する第2開度制御手段とを備えたことをその要旨とする。
【0007】
【作用】最高速度設定手段によって設定された最高速度以下に場合、第1開度制御手段は記憶手段からアクセルペダルの踏み込み量に基づくエンジンの目標回転数を読み出し、その読み出した目標回転数となるように駆動手段を介してスロットル弁を開度制御する。又、車両の車速が最高速度設定手段によって設定された最高速度以上になった場合、第2開度制御手段は記憶手段から最高速度設定手段に対するエンジンの最大上限目標回転数を読み出し、その読み出した最大上限目標回転数となるように駆動手段を介してスロットル弁を開度制御する。
【0008】従って、車両の車速が最高速度設定手段によって設定された最高速度になっても車速は減速されない。
【0009】
【実施例】以下、本発明をフォークリフトに具体化した一実施例を図1,図2に従って説明する。
【0010】図1に示すように、エンジン1の出力軸2にはフライホイール3が設けられ、該フライホイール3には図示しないクラッチ板及びギア機構を介してディファレンシャルギア4が設けられている。そして、前記エンジン1の吸気通路側にはキャブレター5が設けられ、そのキャブレター5には空気を供給制御するスロットル弁6が回動可能に設けられている。そして、前記前記スロットル弁6は駆動手段としてのステッピングモータ7の駆動により開度が制御されるようになっている。
【0011】又、前記キャブレター5に設けられた全閉検出スイッチ8及び全開検出スイッチ9によって前記スロットル弁6の全閉状態又は全開状態を検出することができ、この検出信号は第1,2開度制御手段としてのコントローラ10に出力されるようになっている。
【0012】前記コントローラ10はマイクロコンピュータで構成され、アクセルペダル11の踏み込み量(操作量)を検出するポテンショメータよりなるアクセル検出手段としてのアクセルセンサ12からの検出信号が入力されるとともに、前記ディファレンシャルギア4の回転数(即ち、車両の走行速度)を検出する車速検出手段としての車速センサ13からの検出信号が入力される。そして、前記アクセルペダル11の踏み込み量をアクセルセンサ12によりコントローラ10に出力し、該コントローラ10はアクセルセンサ12からの検出信号に基づいてステッピングモータ7を駆動してスロットル弁6の開度制御を行って車両を加減速するようになっている。尚、前記コントローラ10は表示パネル16に接続され、車両の動作状態等を表示するようになっている。
【0013】又、前記コントローラ10には車両の最高速度を設定する最高速度設定手段としてのボリューム14が接続され、前記アクセルペダル11が必要以上に踏み込まれ、車両の速度が前記ボリューム14によって設定された最高速度以上にならないようになっている。又、本実施例において、前記ボリューム14により最高速度は9km/h 〜18km/hの範囲で設定することができるようになっている。
【0014】又、前記コントローラ10にはモード切換スイッチ15が設けられ、前記ボリューム14の操作によって設定された最高速度の無効化又は有効化を行うことができるようになっている。更に、前記エンジン1には回転数検出手段としてのディストリビュータ18が設けられ、該ディストリビュータ18の検出信号に基づいてコントローラ10はその時々のエンジン1の実回転数を求めるようになっている。
【0015】そして、前記コントローラ10には記憶手段としての記憶部17が設けられ、この記憶部17には図2に示すように、アクセルペダル11の踏み込み量に対するエンジン1の目標回転数と、前記ボリューム14によって設定された最高速度に対する最大上限目標回転数とからなるマップが記憶されている。本実施例においては車速とエンジン1の回転数とは比例関係となるように設定され、車速が9km/h のときにはエンジン1の回転数が約1300rpmとなり、車速が18km/hのときにはエンジン1の回転数が約2600rpmとなるように予め設定されている。
【0016】従って、例えばボリューム14によって最高速度が9km/h となるように設定(エンジン回転数に対応させると1300rpm)した場合、コントローラ10は車速が9km/h に達するまではアクセルペダル11の踏み込み量に基づくエンジン1の目標回転数を記憶部17から読み出す。又、コントローラ10はディストリビュータ18からの回転検出信号に基づくエンジン1の実回転数と、前記記憶部17から読み出された目標回転数とを比較する。そして、その目標回転数となるようにコントローラ10は前記ステッピングモータ7を介してスロットル弁6の開度制御を行うようになっている。
【0017】そして、車速が9km/h に達したときは、アクセルペダル11の踏み込み量に関係なく、コントローラ10は最高速度9km/h を保持するエンジン1の目標回転数を記憶部17から読み出す。このとき、最高速度9km/h にすべくエンジン1の目標回転数は1300rpmであるため、コントローラ10は前記ディストリビュータ18からの回転数検出信号に基づくエンジン1の実回転数が1300rpmとなるようにステッピングモータ7を介してスロットル弁6の開度制御を行うようになっている。
【0018】次に、上記のように構成した回転制御装置の作用について説明する。モード切換スイッチ15によりボリューム14によって設定された最高速度が有効化となるように設定する。その後、ボリューム14によって車速が最高14km/h(エンジン回転数に換算して約2000rpm)以上にならないように設定する。
【0019】この状態で、アクセルペダル11を踏み込んで車両を加速すると、アクセルペダル11の踏み込み量に基づくアクセルセンサ12の検出信号がコントローラ10に出力される。この検出信号に基づいてコントローラ10は記憶部17からエンジン1の目標回転数を読み出す。又、コントローラ10は前記ディストリビュータ18の検出信号に基づいて求めたエンジン1の実回転数と、記憶部17から読み出したエンジン1の目標回転数とを比較する。そして、コントローラ10は目標回転数となるようにステッピングモータ7を介してスロットル弁6を開度制御し、車両を加速していく。
【0020】又、前記車速センサ13により検出されたディファレンシャルギア4の回転数に基づいてコトローラ10は車速が前記ボリューム14によって設定された最高速度14km/hを越えていないかを判断する。そして、車両の速度が14km/hに達していない場合、前記コントローラ10はアクセルセンサ12からのアクセルペダル11の踏み込み検出信号に基づくエンジン1の目標回転数を記憶部17から読み出す。又、コントローラ10は前記ディストリビュータ18の検出信号に基づくエンジン1の実回転数と、前記記憶部17から読み出したエンジン1の目標回転数とを比較する。そして、コントローラ10は目標回転数となるようにステッピングモータ7を介してスロットル弁6を開度制御する。
【0021】その後、車速センサ13によって検出されたディファレンシャルギア4の回転数に基づいてコントローラ10は車速が14km/hに達したと判断すると、コントローラ10はアクセルセンサ12からのアクセルペダル11の踏み込み検出信号に係わらず、ボリューム14によって設定された最高速度に対応するエンジン1の最大上限目標回転数を記憶部17から読み出す。
【0022】この場合、最高車速14km/hにおいてはエンジン1の最大上限目標回転数が約2000rpmであるため、コントローラ10はディストリビュータ18からの検出信号に基づくエンジン1の実回転数と、前記記憶部17から読み出したエンジン1の最大上限目標回転数とを比較する。そして、コントローラ10は最大上限目標回転数となるようにステッピングモータ7を介してスロットル弁6を開度制御し、エンジン1の回転数が2000rpmとなるように制御する。これにより、車速は14km/hの一定速度となる。
【0023】又、車速センサ13によって車速が14km/h以下となった場合には、上記と同様、アクセルセンサ12からのアクセルペダル11の踏み込み検出信号に基づいてコントローラ10は記憶部17からエンジン1の目標回転数を読み出す。又、コントローラ10はディストリビュータ18からの検出信号に基づくエンジン1の実回転数と、前記記憶部17から読み出したエンジン1の目標回転数とを比較し、目標回転数となるようにステッピングモータ7を介してスロットル弁6を開度制御する。
【0024】従って、アクセルペダル11を踏み込んで車両を加速しても、コントローラ10は予めボリューム14によって設定された最高車速となるようにステッピングモータ7を介してスロットル弁6を開度制御するので、従来とは異なり、エンジン1がアイドリング状態になって車速が減速することを防止することができる。この結果、作業者はアクセルペダルの踏み込みを解除する必要がなくなり、アクセルペダルの操作性を向上させることができる。又、車速が減速しないため、作業効率を向上させることができる。
【0025】又、ボリューム14の最高速度の設定範囲、車速等を具体的に表したが、用途に応じて任意に変更することも可能である。本実施例においては、フォークリフトに具体化したが、その他に搬送車などの産業車両に応用することも可能である。
【0026】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、車速が最高設定車速を越えても、アクセルペダルの踏み込みの解除を行う必要がなくなり、アクセルペダルの操作性の向上を図ることができる優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるエンジンの回転制御装置の構成を示すブロック構成図である。
【図2】記憶部に記憶されたアクセルペダルの踏み込み量に対するエンジンの目標回転数を示す特性図である。
【図3】従来のエンジンの回転制御装置の構成を示すブロック構成図である。
【符号の説明】
1…エンジン、6…スロットル弁、7…駆動手段としてのステッピングモータ、10…第1,2開度制御手段としてのコントローラ、11…アクセルペダル、12…アクセル検出手段としてのアクセルセンサ、13…車速検出手段としての車速センサ、14…最高速度設定手段としてのボリューム、17…記憶手段としての記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両に搭載されたエンジンと、前記車両の速度を検出する車速検出手段と、前記エンジンの回転数を検出する回転数検出手段と、前記エンジンのスロットル弁を駆動する駆動手段と、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセル検出手段と、前記エンジンの最高速度を適宜選択設定する最高速度設定手段と、前記最高速度設定手段によって設定された最高速度に対するエンジンの最大上限目標回転数と、アクセルペダルの踏み込み量に対するエンジンの目標回転数とを記憶した記憶手段と、前記最高速度設定手段によって設定された最高速度以下のとき、前記アクセルペダルの踏み込み量に対する目標回転数を前記記憶手段から読み出し、その読み出した目標回転数となるように前記駆動手段を介してスロットル弁を開度制御する第1開度制御手段と、前記最高速度設定手段によって設定された最高速度に車両が達したとき、該最高速度設定手段によって設定された最高速度に対するエンジンの最大上限目標回転数を前記記憶手段から読み出し、その読み出した最大上限目標回転数となるように前記駆動手段を介してスロットル弁を開度制御する第2開度制御手段とを備えたエンジンの回転制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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