説明

エンジンキーの点火操作防止装置、車両に対するその取付構造

【課題】車種を問わず簡単に装着でき、目視にて容易に通電状態で且つエンジンキーの操作ができないことが判断でき、車両内の外観に大きな変更を伴わず、着脱が容易であり、安価に設置できるエンジンキーの点火操作防止装置の提供を、発明が解決しようとする課題とする。
【解決手段】把持部に把持部用穴を有するエンジンキーに対して用いるエンジンキーの点火操作防止装置であって、車両のキー差込穴にエンジンキーを差込んで回転させ車両から離脱不能とした前記把持部の収納空間を有するカバーケース本体と、エンジンキーの把持部用穴に対してカバーケース本体を引張状態とする連結手段を備え、カバーケース本体の開口縁部を車両に当接して、車両に取付ける構成としたことを特徴とするエンジンキーの点火操作防止装置を、課題を解決するための手段とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として展示車両について、来店客のエンジンキー操作によって不慮のエンジン点火を防止するための、新規な点火操作防止装置、及び、車両に対するその取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、カーディーラーやショールーム等では、来店客への商品のアピール等を目的として、車両(以下、展示車両)を展示することが一般的に行われている。展示車両は、電力で動作する装置や車両オプションを実際に来店客に示すことで、より商品を効率よくアピールすることができるため、通常、展示車両に対して電力を供給した状態とする。
【0003】
電力の供給は、自動車に搭載されているバッテリーを用いるか、若しくはそれに代わる電源装置を自動車に接続することで行われる。そして、電力で動作する装置や車両オプションを動作させるには、自動車のキー差込穴にエンジンキーを差し込んだ状態とする必要がある。
【0004】
このような構成が前提であるため、来店客が展示車両内で誤ってエンジンキーを回すことで、エンジンが始動する可能性がある。
【0005】
エンジンが始動するだけでは、即座に車両が発進する危険性は高くないが、展示車両内での来店客は自由な操作が可能であることから、自動車の急発進事故が引き起こされる可能性は否定できない。
【0006】
また、急発進を起こさない状況であっても、例えばエンジンフードを開けたままの状態で別の来店者がエンジンルームを見学中にエンジンが始動すると、体の一部や衣服の一部等がファンベルト等の動力伝達部分に挟み込まれて、怪我を負う可能性があり、場合によっては、死亡事故に至る危険性もある。
【0007】
一般的に、車両の急発進を防止するものとしては、種々の車止め装置が公知であるが、車止め装置は、エンジンの始動を阻止するものでないことから、前記した動力伝達部分に挟み込まれる事故等を防止することができない欠点がある。
【0008】
自動車のキー差込穴にエンジンキーを差し込んだ状態で、エンジンキーの誤操作を防止するものとしては、エンジンキーと車両の無線通信を含む安全性を確保するものとして、車両側点火錠へ差込み可能な少なくとも1つの電子キーと、キー側に設けられる操作部材の操作によって少なくとも1つの車両側機能装置を始動するための無線キー・車両間通信チヤネルと、キーが点火錠へ差込まれているか否か又はキーが点火錠内の特定の位置にあるか否かを検知しかつキーが点火錠へ差込まれているか又はキーが点火錠内の特定の位置にある場合このキーと始動すべき機能装置との間の通信を阻止状態に保つ誤操作防止手段とを有するものにおいて、誤操作防止手段がキー側に設けられて、点火錠にあるキーと始動すべき機能装置との間の通信を阻止するため、このキーにある通信チヤネルの通信部分を、機能装置の始動に役立つデータの伝送に関して阻止状態に保つことを特徴とする、誤操作を防止される点火キー・車両間通信装置(以下、誤操作防止装置という。)(例えば、特許文献1参照。)が公知である。
【0009】
【特許文献1】特開平09−301127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1に開示する誤操作防止装置は、基本的には無線との通信手段における誤動作を解消しようとするものであり、電気制御によってエンジンキーの有無およびエンジンキーの位置を検知し、データの伝送を阻止する構成のものである。このため、制御方法によっては、エンジンキーをキー差込穴に差し込み、電力で動作する装置や車両オプションを動作させた状態で、エンジンがかからない状態とすることは可能であるとも考えられる。
【0011】
しかしながら、カーディーラーやショールームで、各展示車両について、常に電気的に最適な状態(即ち、電力は使用できるがエンジンがかからない状態)に維持されているかの確認は、実際に試して確認しなければわからない欠点がある。そして、不慮の操作によって設定を変更し、これに気付かなければ、安全性が全く確保できない状態となる。
【0012】
また、カーディーラーやショールームでは、販売される実車を展示するのが目的であるところ、当該誤操作防止装置を運転席周りに装着すると、元の車両と異なる外観を呈し、不都合となる欠点がある。
【0013】
更に、電子部品を含むこれらの装置は、基本的に高価である欠点を有する。
【0014】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、車種を問わず簡単に装着でき、目視にて容易に通電状態で且つエンジンキーの操作ができないことが判断でき、車両内の外観に大きな変更を伴わず、着脱が容易であり、安価に設置できるエンジンキーの点火操作防止装置の提供を、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
車両のキー差込穴に差込まれたエンジンキーにおける把持部を収納するための収納空間を形成したカバーケース本体と、該カバーケース本体を車両に対して着脱可能とするための取付手段を備えたことを特徴とするエンジンキーの点火操作防止装置を、課題を解決するための手段とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るエンジンキーの点火防止装置によれば、車両のキー差込穴に差込まれたエンジンキーにおける把持部を収納するための収納空間を形成したカバーケース本体と、該カバーケース本体を車両に対して着脱可能とするための取付手段を備えたことから、エンジンキーをキー差込穴に差込んで予め電力で動作する装置や車両オプションの動作を確保し、該エンジンキーを収納することで来店客にエンジンキーを触れさせない効果を得ることができる。また、車両にエンジンキーは取付けているものの、来店客がエンジンキーを触ることはできないため、来店客が誤ってエンジンキーを取外して持ち帰るというトラブルを未然に防ぐことができる。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、上記請求項1で得られる作用効果に加えて、カバーケース本体を車両に対して着脱可能とするための取付手段が、エンジンキーの把持部に連結して該把持部を引張する引張手段と、該引張手段及びカバーケース本体を保持するための保持手段とを備える構成としたことから、エンジンキーをキー差込穴に差込んで予め電力で動作する装置や車両オプションの動作を確保した状態ではエンジンキーが離脱不能であり、この状態で引張手段とカバーケース本体とを保持手段で保持し、カバーケース本体を車両に当接させることで、車種やエンジンキーの把持部の形状等に左右されることなく、カバーケース本体を車両に確実に取付けることができる。
【0018】
そして、請求項2に係る発明によれば、エンジンキーを差し込みACCや点火位置にし、離脱不能となった状態(即ち、電力で動作する装置や車両オプションを動作できる状態)でのみ、車両への取付が可能となるため、点火操作防止装置が取付けられていることで、車両が通電状態にあることを判断でき、目視にて簡単に、来店客が見学可能であって安全性が確保されていることが確認できる。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、上記請求項1及び請求項2の構成に加えて、引張手段は、エンジンキーとの連結手段及び紐体を有し、該紐体は、カバーケース本体に形成した紐体通し穴からカバーケースの外側へ通し、該カバーケース本体の外側において、紐体上に摺動可能な保持手段を設けたことから、非常に簡素かつ安価な構成を実現し、紐体を引きながら保持手段でカバーケースを押さえ込み、キャップを螺合するのみの簡単な操作で取付けを行える。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、キャップをカバーケース本体と取付けることで、保持手段や引張手段が点火操作防止装置内に収納され、該点火操作防止装置の外部に露呈しないため、来店客が本発明における保持手段を誤って取外す事態を未然に防止することができる。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、引張手段は、エンジンキーとの連結手段及びガイド体を有し、該ガイド体は、エンジンキーに対する引張力への反発弾性を有するばねを備え、ガイド体の一端には鍔部を形成し、カバーケース本体は、貫通穴を備え、該貫通穴はガイド体の鍔部を除く直径より大きく且つガイド体の鍔部よりも小さい直径とし、保持手段は、ガイド体とカバーケース本体を固定する手段としたことによって、故意に点火操作防止装置を取外す試みがなされた状況においても、工具無しでは取り外しができない構造とすることで、来店客が本発明における保持手段を誤って取外す事態を未然に防止することができる。
【0022】
請求項6に係る発明によれば、キャップをガイド体と取付けることで、保持手段や引張手段が点火操作防止装置内に収納され、該点火操作防止装置の外部に露呈しないため、上記請求項5の効果をより一層高めることができる。
【0023】
請求項7に係る発明によれば、車両のキー差込穴にエンジンキーを差し込んで離脱不能とした状態で、エンジンキーの後端に連結した把持部の収納空間を形成するカバーケース本体と、該カバーケース本体を車両に対して着脱するための取付手段を備え、取付手段は、引張手段と該引張手段の引張状態を保持する保持手段を備え、キー差込穴から離脱不能なエンジンキーを引張手段で引張し、該引張手段とカバーケース本体を保持手段で保持し、且つ、カバーケース本体を車両に当接した点火操作防止装置の取付構造としたことで、エンジンキーの把持部に対して引張手段と保持手段でカバーケース本体を固定できるから、車種を問わず簡単に装着でき、目視にて容易に通電状態で且つエンジンキーの操作ができないことが判断でき、車両内の外観に大きな変更を伴わず、着脱が容易であり、安価に設置できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、車両のキー差込穴に差込まれたエンジンキーにおける把持部を収納するための収納空間を形成したカバーケース本体と、該カバーケース本体を車両に対して着脱可能とするための取付手段を備え、カバーケース本体を車両に対して着脱可能とする取付手段は、エンジンキーの把持部に連結して該把持部を引張する引張手段と、該引張手段及びカバーケース本体を保持するための保持手段とを備え、前記引張手段は、エンジンキーとの連結手段及び紐体を有し、該紐体は、カバーケース本体に形成した紐体通し穴からカバーケースの外側へ通し、該カバーケース本体の外側において、紐体上に摺動可能な前記保持手段を設けた点火操作防止装置としたことで、エンジンキーの把持部に対して引張手段と保持手段でカバーケース本体を固定できるから、車種を問わず簡単に装着でき、目視にて、容易に通電状態であることやエンジンキーの操作ができないことが判断でき、車両内の外観に大きな変更を伴わず、着脱が容易であり、安価に設置できるエンジンキーの点火操作防止装置を実現した。
【実施例】
【0025】
(実施例1)
図1(イ)は本発明の実施例1に係る点火操作防止装置1aの正面図、図1(ロ)は同実施例1に係る点火操作防止装置1aのA−A一部断面図、図2(イ)は実施例1に係る点火操作防止装置1aをエンジンキー2に取付ける前の状態を示す一部断面図、図2(ロ)は同実施例1に係る点火操作防止装置1aをエンジンキー2に取付けた状態を示す一部断面図、図3(イ)は同実施例1に係る点火操作防止装置1aを取付けたエンジンキー2をキー差込穴30に差し込んだ状態を示す一部断面図、図3(ロ)は同実施例1に係る点火操作防止装置1aにおけるカバーケース本体10を車両3に対して当接させた状態を示す一部断面図、図4(イ)は同実施例1に係る点火操作防止装置1aにおける保持体をスライドさせてカバーケース本体10に押し当てた状態を示す一部断面図、図4(ロ)は図4(イ)の状態から紐体12を引張した状態を示す一部断面図、図5は図4(ロ)の状態からキャップ11を取付けた状態を示す一部断面図である。
【0026】
本発明の実施例1に係る点火操作防止装置1aについて以下に説明する。本発明の実施例1に係る点火操作防止装置1aは、図1(イ)(ロ)に示すように、合成樹脂製のカバーケース本体10と、伸縮性を有する紐体12と、ストッパ部材14と、連結部材13と、合成樹脂製のキャップ11とからなる。尚、本発明における「カバーケース本体10を車両3に対して着脱可能とするための取付手段」としては、本実施例1では、紐体12、ストッパ部材14、連結部材13が相当する。本発明における「エンジンキー2の把持部20に連結して該把持部20を引張する引張手段」としては、紐体12及び連結部材13が相当する。「本発明における引張手段及びカバーケース本体10を保持するための保持手段」としては、本実施例1では、ストッパ部材14が相当する。
【0027】
カバーケース本体10は、筒を形成する周壁103と、筒の一端を塞ぐ蓋部102を一体とした構成である。図1に示す正面図において上方位置は、周壁103の直径を狭くした狭幅部を形成しており、狭幅部の周壁103の外面に雄螺子部104を設けている。また、蓋部102の中央には、紐体通し穴100を形成してある。
【0028】
紐体12は二つ折りとしてあり、折り返し部分となる一端に連結部材13を備え、紐体12上にストッパ部材14を備えた構成である。紐体12は、前記カバーケース本体10の紐体通し穴100に通してある。ストッパ部材14は、カバーケース本体10の外側において、紐体12上を摺動可能としている。
また、紐体12の他端(即ち、二つ折りされる紐体12の重合された両端)には結び目120を形成することによって、ストッパ部材14が紐体12から離脱することを防止している。
【0029】
ストッパ部材14は、図示されないばね付勢されるノブを備えており、通常状態ではばねの付勢力で紐体12に固定している。ばね付勢力に抗してノブを押し込むことによって、紐体12上の摺動が可能となる。
【0030】
連結部材13は、紐体12とエンジンキー2を連結するためのものであり、開閉口を有する金属製のリングを用いている。連結部材13を形成する金属製線材の幅は、エンジンキー2に形成された把持部用穴21を貫通可能な寸法としている。
【0031】
前記キャップ11は、側壁内面にキャップ雌螺子110を形成してあり、前記カバーケース本体10に形成した雄螺子と螺合可能な構成である。カバーケース本体10との螺合した状態において、カバーケース本体10とキャップ11との間に空間を形成することで、カバーケース本体10から外部へ設けられる紐体12及びストッパ部材14を収納可能な構成としている。
【0032】
(実施例1に係る点火操作防止装置の取付方法)
次に、本発明の実施例1に係る点火操作防止装置1aの使用方法について以下に説明する。
先ず、図2に示すように、本実施例1に係る点火操作防止装置1aの引張手段の一部である連結部材13を、エンジンキー2の把持部用穴21に通し、連結部材13を閉塞状態とすることで、当該エンジンキー2と連結部材13を連結する。
【0033】
そして、図3(イ)に示すように、エンジンキー2を車両3のキー差込穴30に差込む。差込み後、把持部20を持ち、エンジンキー2をACC位置、若しくは点火(イグニッション)位置を指示した状態とする。通常エンジンキー2は、ACC位置、点火(イグニッション)位置を指示した状態では、キー差込穴30から抜けない構成となっている。そして、ACC位置、若しくは点火位置では、車内に電力が供給され、電力で動作する装置や車両オプションを使用できることとなる。
【0034】
図3(ロ)に示すように、カバーケース本体10の開口部縁面を車両3のキー差込穴30の周縁に当接し、カバーケース本体10内にエンジンキー2の把持部20を格納する。この状態において、図4(イ)(ロ)に示すように、ストッパ部材14のノブを押し込んで紐体12上を摺動させ、紐体12を強く引き、ストッパ部材14をカバーケース本体10へ押し当てる。ノブから指を離すことで、ストッパ部材14は紐体12を引いた状態を保って紐体12上に固定され、離脱不能なエンジンキー2を紐体12で強く引いた状態で、カバーケース本体10が車両3に対して当接固定された状態となる。
【0035】
そして図5に示すように、カバーケース本体10の狭幅部に対してキャップ11を被せ、カバーケース本体10とキャップ11の間の収納空間にストッパ部材14と紐体12を収納し、カバーケース本体10の雄螺子104とキャップ11のキャップ雌螺子110とを螺合する。
【0036】
尚、本実施例1に係る点火操作防止装置1aの取外し操作は、取付操作を逆手順で行うことで可能となる。上記構成とした本発明の実施例1に係る点火操作防止装置1aは、エンジンキー2を完全に遮蔽する。また、カバーケース本体10を強く回すと、該カバーケース本体10は車両3の当接面に当接した状態を維持して回動するものの、内部のエンジンキー2は回転せず、紐体12が捩れるだけであるから、エンジンキー2に対する誤操作を確実に防止することができる。
【0037】
(実施例2)
図6(イ)は本発明の実施例2に係る点火操作防止装置1bを示す正面図、図6(ロ)は同実施例2に係る点火操作防止装置1bを示すB−B一部断面図、図7(イ)は同実施例2に係る点火操作防止装置1bにおけるガイド体15とエンジンキー2とを取付ける前の状態を示す一部断面図、図7(ロ)は同実施例2に係る点火操作防止装置1bにおけるガイド体15とエンジンキー2とを取付けた状態を示す一部断面図、図8(イ)は同実施例2に係る点火操作防止装置1bにおけるガイド体15を取付けたエンジンキー2をキー差込穴30に差し込んだ状態と、取付治具4を示す一部断面図、図8(ロ)は取付治具4とガイド体15とを螺合した状態を示す一部断面図、図9は取付治具4にサイドカバー16を被せた状態を示す一部断面図、図10は同実施例2に係る点火操作防止装置1bにおけるガイド体15とサイドカバー16を雄螺子で固定する状態を示す一断面図、図11は同実施例2に係る点火操作防止装置1bにおけるガイド体15からサイドカバー16を取外し、ガイド体15にキャップ11を螺合した状態を示す一部断面図、図12は実施例2に係る点火操作防止装置1bの取付状態を示す、(イ)正面図及び(ロ)一部断面図である。
【0038】
次に、本発明の実施例2に係る点火操作防止装置1bの構成について以下に説明する。
本発明の実施例2に係る点火操作防止装置1bは、実施例1と同様に、把持部20に把持部用穴21を有するエンジンキー2に対して用いるエンジンキー2の点火操作防止装置である。また、車両3のキー差込穴30にエンジンキー2を差込んで回転させ車両3から離脱不能とした前記把持部20の収納空間を有するカバーケース本体10と、エンジンキー2の把持部用穴21に対してカバーケース本体10を引張状態とする連結手段を備え、カバーケース本体10の開口縁部101を車両3に当接して、車両3に取付ける構成としたエンジンキー2の点火操作防止装置である点で、実施例1と共通する。
【0039】
本実施例2に係る点火操作防止装置は、取付用治具及び工具を用いて車両3に取付ける頑強な構造を有する。本実施例2に係る点火操作防止装置は、図6(ロ)に示すように、金属製のカバーケース本体10と、ガイド体15と、連結部材13(金属製線材からなる環状連結体)と、キャップ11とからなる。尚、本発明における「カバーケース本体10を車両3に対して着脱可能とするための取付手段」としては、本実施例2では、ガイド体15、固定用螺子18、連結部材13が相当する。本発明における「エンジンキー2の把持部20に連結して該把持部20を引張する引張手段」としては、ガイド体15及び連結部材13が相当する。「本発明における引張手段及びカバーケース本体10を保持するための保持手段」としては、本実施例2では、固定用螺子18が相当する。
【0040】
図6に示すように、金属製のカバーケース本体10は、筒状のサイドカバー16と、該サイドカバー16の一端の開口部に嵌入した、中央穴156を有する環状のガイド受け部材155とを有する。
【0041】
前記筒状のサイドカバー16は、ガイド受け部材155を設ける前記一端側(以下、「小径側」という。)の周壁の外径を、他端側の周壁の外径よりも小さくしてある。サイドカバー16の小径側の開口部内面には、段部161を形成してある。また、サイドカバー16の小径側の側面には螺子固定用貫通穴160を形成している。
【0042】
前記環状のガイド受け部材155は、側面に雌螺子穴155aを有する。また本実施例2においては、ガイド受け部材155の外面にボールチェーンの一端を取付け、ボールチェーンの他端をキャップ11に連結することで、キャップ11の紛失を防止するものとしている。
【0043】
ガイド受け部材155は、前記サイドカバー16の小径側の開口部内面と段部161に当接して配置する。そして、固定用螺子18を、サイドカバー16の螺子固定用貫通穴160を通してガイド受け部材155の雌螺子穴155aに螺合する。この固定用螺子18は、ガイド体15の固定に用いるものである。
【0044】
前記ガイド体15は、ガイド体主体152と、圧縮コイルばね153と、ばね受け部材154と、押圧片150とからなる。
【0045】
ここで、前記ガイド体主体152は、ガイド受け部材155の中央穴156に嵌る外径寸法を有する筒状とし、そのエンジンキー2取付側に底部を形成し、該底部の中央には圧縮コイルばね153の外径よりも小さい直径の押圧片通し穴151を形成している。またガイド体主体152の底部には鍔部157を形成しており、その直径寸法は、ガイド受け部材155の中央穴156の直径寸法よりも大きく設定している。更に、ガイド体主体152の筒状部分の内面には雌螺子を設けている。
【0046】
また、押圧片150は金属製線材を二つ折り状とし、押圧片150の一端となる折曲部分を円弧状とし、押圧片150の他端(即ち、金属製線材の両端)を相互に外側へ開いた係着部を形成している。
【0047】
そして、本実施例2におけるガイド体15は、前記ガイド体主体152の内側に圧縮コイルばね153とばね受け部材154とを配置し、押圧片150を係着部からをガイド体主体152の押圧片通し穴151に挿通し、圧縮コイルばね153とばね受け部材154を更に連通し、ばね受け部材154と押圧片150の係着部とを係着してなる構成である。
【0048】
一方、本実施例2に係るキャップ11は、下部には雄螺子を有し、上部には前記ガイド受け部材155と連結するためのボールチェーンの端部を取着した構成である。
【0049】
(実施例2に係る点火操作防止装置の取付方法)
本実施例2に係る点火操作防止装置の取付方法については、専用の取付治具4を用いる。尚、前記実施例1では、本実施例2に示す取付治具4は不要である。
【0050】
本実施例2に係る取付治具4は、円筒状の治具本体の一端外面に前記ガイド体15の雌螺子穴155aに螺合可能な雄螺子部104を備え、治具本体の他端となる円筒内には六角レンチ41に適合する六角形状の保持穴400を備えたスペーサ40を設けている。以下に、本実施例2に係る点火操作防止装置の取付方法について説明する。
【0051】
先ず、図7(イ)に示すように、エンジンキー2の把持部20に形成した把持部用穴21と、ガイド体15とを、連結部材13を介して取付ける。本実施例2におけるガイド体15は、圧縮コイルばね153を押圧収縮する押圧片150を備えている。押圧片150は一端にループ部を備えている。エンジンキー2の把持部用穴21と、前記ループ部を、連結部材13である金属製の環体で連通して取付ける。
【0052】
次に、図7(ロ)に示すように、エンジンキー2を車両3のキー差込穴30に差込む。差込み後、把持部20を持ち、エンジンキ2ーをACC位置、若しくは点火(イグニッション)位置を指示した状態とする。通常エンジンキー2は、ACC位置、点火(イグニッション)位置を指示した状態では、キー差込穴30から抜けない構成となっている。そして、ACC位置、若しくは点火位置では、車内に電力が供給されるから、電力で動作する装置や車両オプションを使用できることとなる。
【0053】
その次に、図8(イ)(ロ)に示すように、取付治具4を用いる。取付治具4の保持穴400に六角レンチ41を差込んで、取付治具4の雄螺子42をガイド体15の雌螺子と螺合する。
【0054】
取付治具4の雄螺子42とガイド体15の雌螺子とを螺合した後、取付治具4から六角レンチを脱着する。
【0055】
そして、図9に示すように、本実施例に係るカバーケース本体10の開口側から、前記取付治具4をガイド受け部材155の中央穴156へ通し、カバーケース本体10をエンジンキー2の把持部20へ被せる。取付治具4を継続して中央穴156へ通すと、最終的に取付治具4は中央穴156から反対側へ全て通り抜けてガイド体15が中央穴156へ通る。
【0056】
図10に示すように、ガイド体15が中央穴156へ入った状態で、エンジンキー2を連結部材13で引張した状態を保持できるガイド体15の最適な位置を決定し、その位置で、ガイド体15の側面に形成した螺子固定用貫通穴160を貫通して雌螺子穴155aと固定用螺子18を螺合し、固定用螺子18を締め込むことで、ガイド体15を固定する。
【0057】
ガイド体15の最適な位置は、車種やエンジンキー2の把持部20形状等によって異なるが、ガイド体15を中央穴156に対してスライドさせることで、常に最適な位置に決定することができる。尚、ガイド体15の鍔部157は中央穴156よりも大きく生成されているため、ガイド体15の鍔部157と中央穴156の周縁部が当接することで、ガイド体15の抜け止めとして機能する。
【0058】
図11に示すように、カバーケース本体10を車両3に固定した後、六角レンチを用いて取付治具4をガイド体15から離脱させる。ガイド体15は、雌螺子側が開口する。当該雌螺子とキャップ11の雄螺子を螺合することで、取付が完了する。図12に取付が完了した状態の(イ)正面図と(ロ)一部断面図を示す。
以上に示すように、本実施例2に係るエンジンキー2の点火操作防止装置は、ガイド体15の固定によって、カバーケース本体10を車両3に対して固定できる。
【0059】
本実施例2に係る点火操作防止装置1bの取外し操作においては、雄螺子を緩めてキャップ11を取外した後、六角レンチ41を取付けた取付治具4をガイド体15に螺合し、サイドカバー16を取付治具4側へ取外すことで、ガイド体15とサイドカバー16とを分離することができる。
【0060】
連結部材13は実施例に開示したものに限らず、任意の公知な形状とすることができる。
更に、本発明においては連結部材13は必須ではなく、例えば、組紐をカバーケース本体10の長さ寸法よりも長くして、紐体12を直接エンジンキー2の把持部20に取着する構成とすることもできる。尚、実施例のように紐体12を直接キー差込穴30に取着せず連結部材13を用いることで、取付作業を容易とすることができる。
【0061】
また、本発明は、エンジンキー2の把持部20への引張手段の取付は、把持部用穴21を利用するものに限らない。例えば、把持部20に把持部用穴21がなければ、把持部20への固着手段(例えば、挟持手段や接着手段等)を紐体12と連結して使用することもできる。
【0062】
また、キャップ11は実施例2のように紐状体17(実施例2ではボールチェーン)等を用いて紛失を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】(イ)は本発明の実施例1に係る点火操作防止装置の正面図、(ロ)は同実施例1に係る点火操作防止装置のA−A一部断面図である。
【図2】(イ)は本発明の実施例1に係る点火操作防止装置をエンジンキーに取付ける前の状態を示す一部断面図、(ロ)は同実施例1に係る点火操作防止装置をエンジンキーに取付けた状態を示す一部断面図である。
【図3】(イ)は本発明の実施例1に係る点火操作防止装置を取付けたエンジンキーをキー差込穴30に差し込んだ状態を示す一部断面図、(ロ)は同実施例1に係る点火操作防止装置におけるカバーケース本体を車両に対して当接させた状態を示す一部断面図である。
【図4】(イ)は本発明の実施例1に係る点火操作防止装置における保持体をスライドさせてカバーケース本体に押し当てた状態を示す一部断面図、(ロ)は(イ)の状態から紐体を引張した状態を示す一部断面図
【図5】本発明の実施例1に係る点火操作防止装置におけるキャップを取付けた状態を示す一部断面図である。
【図6】(イ)は本発明の実施例2に係る点火操作防止装置を示す正面図、(ロ)は同実施例2に係る点火操作防止装置を示すB−B一部断面図である。
【図7】(イ)は同実施例2に係る点火操作防止装置におけるガイド体とエンジンキーとを取付ける前の状態を示す一部断面図、(ロ)は同実施例2に係る点火操作防止装置におけるガイド体とエンジンキーとを取付けた状態を示す一部断面図である。
【図8】(イ)は同実施例2に係る点火操作防止装置におけるガイド体を取付けたエンジンキーをキー差込穴30に差し込んだ状態と、取付治具を示す一部断面図、(ロ)は取付治具とガイド体とを螺合した状態を示す一部断面図である。
【図9】本発明の実施例2に係る取付治具にサイドカバーを被せた状態を示す一部断面図である。
【図10】本発明の実施例2に係る点火操作防止装置におけるガイド体とサイドカバーを雄螺子で固定する状態を示す一断面図である。
【図11】本発明の実施例2に係る点火操作防止装置におけるガイド体からサイドカバーを取外し、ガイド体にキャップを螺合した状態を示す一部断面である。
【図12】本発明の実施例2に係る点火操作防止装置の取付状態を示す、(イ)正面図及び(ロ)一部断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1a 点火操作防止装置(実施例1)
1b 点火操作防止装置(実施例2)
10 カバーケース本体
100 紐体通し穴
101 開口縁部
102 蓋部
103 周壁
104 雄螺子部
11 キャップ
110 キャップ雌螺子
12 紐体
120 結び目
13 連結部材
14 ストッパ部材
15 ガイド体
150 押圧片
151 押圧片通し穴
152 ガイド体主体
153 圧縮コイルばね
154 ばね受け部材
155 ガイド受け部材
155a 雌螺子穴
156 中央穴
157 鍔部
159 雌螺子
16 サイドカバー
160 螺子固定用貫通穴
17 紐状体(ボールチェーン)
18 固定用螺子
2 エンジンキー
20 把持部
21 把持部用穴
3 車両
30 キー差込穴
4 取付治具
40 スペーサ
400 保持穴
41 六角レンチ
42 雄螺子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のキー差込穴に差込まれたエンジンキーにおける把持部を収納するための収納空間を形成したカバーケース本体と、
該カバーケース本体を車両に対して着脱可能とするための取付手段を備えたことを特徴とするエンジンキーの点火操作防止装置。
【請求項2】
カバーケース本体を車両に対して着脱可能とする取付手段は、エンジンキーの把持部に連結して該把持部を引張する引張手段と、該引張手段及びカバーケース本体を保持するための保持手段とを備えることを特徴とする請求項1記載のエンジンキーの点火操作防止装置。
【請求項3】
引張手段は、エンジンキーとの連結手段及び紐体を有し、該紐体は、カバーケース本体に形成した紐体通し穴からカバーケースの外側へ通し、該カバーケース本体の外側において、紐体上に摺動可能な保持手段を設けたことを特徴とする請求項2記載の点火操作防止装置。
【請求項4】
紐体及び保持手段を格納するキャップをカバーケース本体に着脱自在として設けたことを特徴とする請求項3記載の点火操作防止装置。
【請求項5】
引張手段は、エンジンキーとの連結手段及びガイド体を有し、該ガイド体は、エンジンキーに対する引張力への反発弾性を有するばねを備え、ガイド体の一端には鍔部を形成し、
カバーケース本体は、貫通穴を備え、該貫通穴はガイド体の鍔部を除く直径より大きく且つガイド体の鍔部よりも小さい直径とし、
保持手段は、ガイド体とカバーケース本体を固定する手段としたことを特徴とする請求項2記載の点火操作防止装置。
【請求項6】
ガイド体に対して着脱自在となるキャップを設けたことを特徴とする請求項5記載の点火操作防止装置。
【請求項7】
車両のキー差込穴にエンジンキーを差し込んで離脱不能とした状態で、エンジンキーの後端に連結した把持部の収納空間を形成するカバーケース本体と、該カバーケース本体を車両に対して着脱するための取付手段を備え、取付手段は、引張手段と該引張手段の引張状態を保持する保持手段を備え、
キー差込穴から離脱不能なエンジンキーを引張手段で引張し、該引張手段とカバーケース本体を保持手段で保持し、且つ、カバーケース本体を車両に当接したことを特徴とするエンジンキーの点火防止装置の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−169657(P2008−169657A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−5307(P2007−5307)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000109772)デンゲン株式会社 (6)