説明

エンジン冷却装置

【課題】過給機2付きエンジン1の冷却液を外部に取り出してから戻すための高温冷却液循環路20と、水冷式のインタークーラ3に供給する冷却液が循環される低温冷却液循環路30とを備えるエンジン冷却装置において、過給機2の暖機必要時のみ過給機2の昇温を促進可能にする。
【解決手段】エンジン冷却装置は、過給機2に設けられるウォータジャケット2bにエンジン1から取り出される冷却液を流通させる第1流路(実線矢印参照)またはウォータジャケット2bに低温冷却液循環路30の冷却液を流通させる第2流路(図2一点鎖線矢印参照)を作るための流路制御手段(41,42)を備える。制御部100は、低温冷却液循環路30の冷却液温度thw2が所定の閾値Y以下である場合に第1流路(実線矢印参照)を作るように流路制御手段(41,42)を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機付きエンジンの冷却液を外部に取り出してから戻すための高温冷却液循環路と、前記過給機のコンプレッサからの圧縮吸気を冷却するための水冷式のインタークーラに供給する冷却液が循環される低温冷却液循環路とを備えるエンジン冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、ターボチャージャ付きエンジンのウォータジャケットとラジエータとの間で冷却液が循環する冷却水回路と、ターボチャージャのコンプレッサからの圧縮吸気を冷却するためのインタークーラとラジエータとの間で冷却液が循環する冷却水回路と、ターボチャージャのウォータジャケットの入口側と出口側とに設けられる切換弁とを備え、エンジン運転中にエンジンのウォータジャケットとラジエータとの間で循環する冷却液の一部をターボチャージャのウォータジャケットに流通させるようにし、エンジン停止後所定時間だけインタークーラの冷却水をターボチャージャのウォータジャケットに流通させることが記載されている。
【0003】
この特許文献1では、エンジン運転中にターボチャージャを冷却してインタークーラの冷却能力を維持させるようにして、エンジン停止後にターボチャージャの余熱を除去してタービンシャフト支持用の軸受部の焼付きを防止する、ことを狙いとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4−21724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の場合、エンジン運転中はターボチャージャのウォータジャケットの冷却液温度に関係なく、エンジンのウォータジャケットとラジエータとの間で循環する冷却液の一部をターボチャージャのウォータジャケットに流通させるようにしている。そのため、例えばターボチャージャの昇温を促進させることが可能であるものの、エンジン暖機後にはターボチャージャが過剰に昇温することが懸念される。
【0006】
このような事情に鑑み、本発明は、過給機付きエンジンの冷却液を外部に取り出してから戻すための高温冷却液循環路と、前記過給機のコンプレッサからの圧縮吸気を冷却するための水冷式のインタークーラに供給する冷却液が循環される低温冷却液循環路とを備えるエンジン冷却装置において、前記過給機の暖機が必要なときのみ当該過給機の昇温を促進可能にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエンジン冷却装置は、過給機付きエンジンの冷却液を外部に取り出してから戻すための高温冷却液循環路と、前記過給機のコンプレッサからの圧縮吸気を冷却するための水冷式のインタークーラに供給する冷却液が循環される低温冷却液循環路と、前記過給機に設けられるウォータジャケットに前記エンジンから取り出される冷却液を流通させる第1流路または前記ウォータジャケットに前記低温冷却液循環路の冷却液を流通させる第2流路を作るための流路制御手段と、前記流路制御手段の動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記低温冷却液循環路の冷却液温度が所定の閾値以下である場合に前記第1流路を作るように前記流路制御手段を制御する、ことを特徴としている。
【0008】
そもそも、エンジンを冷間始動すると、エンジンの燃焼室の熱でもって高温冷却液循環路の冷却液が比較的速やかに昇温し、エンジンの暖機が完了すると高温冷却液循環路の冷却液の循環により冷却液温度が暖機完了温度に保たれる。一方、前記低温冷却液循環路は前記過給機のコンプレッサからの圧縮吸気を水冷式のインタークーラで冷却することを狙いとして設けられる関係より、当該低温冷却液循環路の冷却液温度は比較的低温とする必要がある。このようなことから、エンジンを冷却するための冷却液循環路を「高温冷却液循環路」とし、インタークーラを冷却するための冷却液循環路を「低温冷却液循環路」としている。
【0009】
ここで、例えば外気温が低い状況でエンジンを始動すると、過給機のタービンシャフト支持用の軸受部の潤滑油粘度が高く潤滑性が不十分となっているために、過給機のフリクションが大きくなるとともに前記軸受部の油膜ダンピングが悪くなることが懸念される。
【0010】
そこで、本発明では、例えば外気が低温である状況つまり前記低温冷却液循環路の冷却液温度が所定の閾値以下である状況でエンジンを始動したときに、前記制御部および前記流路制御手段により前記第1流路を作ることにより、前記過給機に設けられるウォータジャケットに前記エンジンから取り出される冷却液を流通させるようにする。
【0011】
これにより、比較的速やかに昇温するエンジンの冷却液で前記過給機が暖められるようになるので、前記潤滑油粘度が比較的速やかに低くなって潤滑性が高められるようになる。その結果、前記軸受部のフリクションが小さくなるとともに前記軸受部の油膜ダンピングが良好になるなど、前記過給機の動作安定化を図ることが可能になる。しかも、前記低温冷却液循環路の冷却液温度が所定の閾値以下であるときのみエンジンの冷却液で前記過給機を暖めるようにしているから、それ以外のときには過給機が過剰に昇温せずに済むようになる。
【0012】
好ましくは、前記制御部は、前記低温冷却液循環路の冷却液温度が前記所定の閾値を超えている場合に、前記第2流路を作るように前記流路制御手段を制御する、構成とすることができる。
【0013】
ここで、前記第1流路を確保している状態において、前記高温冷却液循環路の冷却液温度が上昇することに伴い前記低温冷却液循環路の冷却液温度が上昇するようになるが、前記低温冷却液循環路の冷却液温度が前記所定の閾値を超えると、過給機を暖機する必要がなくなるので、前記制御部および前記流路制御手段により前記第2流路を作るようにしている。
【0014】
これにより、前記低温冷却液循環路の冷却液が前記過給機に設けられるウォータジャケットに流通するようになるので、当該過給機が徐々に冷却されるようになる。
【0015】
好ましくは、前記高温冷却液循環路には、冷却液を循環させるためのウォータポンプと、前記エンジンのウォータジャケットから取り出した冷却液を外気と熱交換するためのラジエータとが設けられ、前記低温冷却液循環路には、冷却液を循環させるための電動式ウォータポンプと、循環する冷却液を外気と熱交換するためのラジエータと、このラジエータをバイパスするとともに途中に前記過給機のウォータジャケットが直列に接続されるラジエータバイパス路と、前記エンジンのウォータジャケットの出口と前記ラジエータバイパス路において前記過給機のウォータジャケットの入口側部分とにそれらを連通するように接続される上流側連通路と、前記ラジエータバイパス路において前記過給機のウォータジャケットの出口側部分と前記高温冷却液循環路において前記ラジエータへの冷却液導入側とにそれらを連通するように接続される下流側連通路とが設けられる、構成とすることができる。
【0016】
ここでは、高温冷却液循環路および低温冷却液循環路の構成を特定している。これにより、本発明を実施する形態が明らかになる。
【0017】
好ましくは、前記流路制御手段は、前記ラジエータバイパス路に対する前記上流側連通路の接続部分に設置される上流側三方弁と、前記ラジエータバイパス路に対する前記下流側連通路の接続部分に設置される下流側三方弁とを含む構成とされ、前記上流側三方弁は、前記エンジンのウォータジャケットの冷却液を前記上流側連通路および前記ラジエータバイパス路を経て前記過給機のウォータジャケットに導く第1状態と、前記低温冷却液循環路の冷却液を前記ラジエータバイパス路から前記過給機のウォータジャケットに導く第2状態とに切り替えられる構成とされ、前記下流側三方弁は、前記過給機のウォータジャケットの出口側から前記下流側流通路を経て前記高温冷却液循環路のラジエータに冷却液を導く第1状態と、前記過給機のウォータジャケットの出口側から前記低温冷却液循環路に冷却液を導く第2状態とに切り替えられる構成とされ、前記制御部は、前記第1流路を作るときに、前記上流側三方弁および前記下流側三方弁を共に前記第1状態にさせるように制御する一方、前記第2流路を作るときに、前記上流側三方弁および前記下流側三方弁を共に前記第2状態にさせるように制御する、構成とすることができる。
【0018】
ここでは、流路制御手段の構成を特定している。これにより、本発明を実施する形態が明らかになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、過給機付きエンジンの冷却液を外部に取り出してから戻すための高温冷却液循環路と、前記過給機のコンプレッサからの圧縮吸気を冷却するための水冷式のインタークーラに供給する冷却液が循環される低温冷却液循環路とを備えるエンジン冷却装置において、前記過給機の暖機が必要なときのみ当該過給機の昇温を促進することが可能になる。また、本発明に係るエンジン冷却装置は、前記過給機の暖機完了後に当該過給機の過剰昇温を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るエンジン冷却装置の一実施形態の概略構成を示す図であり、三方弁が共に第1状態になっているときの冷却液の流れを示している。
【図2】本発明に係るエンジン冷却装置の一実施形態の概略構成を示す図であり、三方弁が共に第2状態になっているときの冷却液の流れを示している。
【図3】図1および図2のECUによる動作説明に用いるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1から図3に、本発明の一実施形態を示している。この実施形態のエンジン1には、過給機2が付設されている。
【0023】
この過給機2は、詳細に図示していないが、エンジン1の排気通路からタービンハウジングに流入する排気によってタービンが回転され、このタービンと一体的に回転されるコンプレッサによってエンジン1の吸気通路からコンプレッサハウジング内に吸入される吸気が圧縮(過給)され、この圧縮空気がエンジン1に吸気される。
【0024】
このエンジン1に供給する圧縮吸気は、その密度が高められるとともに温度が上昇するので、この圧縮吸気を冷却するために、水冷式のインタークーラ3が設けられる。水冷式のインタークーラ3は、前記コンプレッサからの圧縮吸気と冷却液との間で熱交換するための熱交換器からなる。
【0025】
この過給機2のタービンシャフト(図示省略)を回転自在に支持するための軸受部(図示省略)は、フローティングブッシュ(図示省略)を潤滑油で潤滑、冷却するようになっているが、前記軸受部が高温になるので、この軸受部をさらに冷却するために、過給機2のベアリングハウジング2aにはウォータジャケット2bが設けられている。
【0026】
このエンジン1には、高温冷却液循環路20と、低温冷却液循環路30とが付設されている。高温冷却液循環路20と低温冷却液循環路30とに充填される冷却液は、共に一般的なエチレングリコールの水溶液などの不凍液とされる。なお、本発明のエンジン冷却装置は、高温冷却液循環路20と、低温冷却液循環路30と、それに関連する構成要素とを備える構成になっている。
【0027】
まず、高温冷却液循環路20は、エンジン1のウォータジャケット1aの冷却液を一旦外部に取り出してから戻すように閉ループとされており、その途中には、機械式のウォータポンプ21と、ラジエータ22とが少なくとも設けられている。
【0028】
この高温冷却液循環路20において、ウォータポンプ21を作動させると図1および図2の実線矢印100で示すように、冷却液が循環するようになる。この高温冷却液循環路20において、エンジン1のウォータジャケット1aから取り出される冷却液をラジエータ22に導く領域が冷却液導入部23とされ、ラジエータ22からエンジン1のウォータジャケット1aに冷却液を還流させる領域が冷却液還流部24とされている。
【0029】
ウォータポンプ21は、高温冷却液循環路20の冷却液還流部24において冷却液流通方向の下流側に設けられている。このウォータポンプ21は、機械式と呼ばれるものであり、図示していないが、エンジン1のクランクシャフトの回転動力を動力伝達装置(例えばプーリやベルトなどを含む)を介して伝達されて駆動される。ラジエータ22は、高温冷却液循環路20を循環する冷却液を外気と熱交換する熱交換器とされている。
【0030】
次に、低温冷却液循環路30は、水冷式のインタークーラ3を冷却するための冷却液が循環されるように閉ループとされており、その途中には、電動式のウォータポンプ31と、ラジエータ32とが少なくとも設けられている。
【0031】
電動式のウォータポンプ31は、低温冷却液循環路30内で冷却液を循環させるものである。このウォータポンプ31の動作は、下記エレクトロニックコントロールユニット(以下、ECUとする)50により制御される。ラジエータ32は、低温冷却液循環路30内を循環する冷却液を外気と熱交換する熱交換器とされている。
【0032】
この低温冷却液循環路30において、ウォータポンプ31を作動させると図1および図2の実線矢印200で示すように、冷却液が循環するようになる。この低温冷却液循環路30において、インタークーラ3からラジエータ32に冷却液を導く領域が冷却液導入部33とされ、ラジエータ32からインタークーラ3に冷却液を還流させる領域が冷却液還流部34とされている。
【0033】
この実施形態の低温冷却液循環路30には、ラジエータ32をバイパスするためのラジエータバイパス路35が設けられており、このラジエータバイパス路35の途中には、過給機2のウォータジャケット2bが直列に接続されている。つまりラジエータバイパス路35を流れる冷却液が過給機2のウォータジャケット2bを流通可能になっている。
【0034】
また、この実施形態では、エンジン1のウォータジャケット1aの出口1bとラジエータバイパス路35において過給機2のウォータジャケット2aの入口側部分とに、それらを連通するための上流側連通路36が接続されている。また、ラジエータバイパス路35において過給機2のウォータジャケット2bの出口側部分と高温冷却液循環路20の取り出し路23においてラジエータ22寄り位置とに、それらを連通するための下流側連通路37が接続されている。
【0035】
さらに、ラジエータバイパス路35に対する上流側連通路36の接続部分には上流側三方弁41が設けられていて、ラジエータバイパス路35に対する下流側連通路37の接続部分には下流側三方弁42が設けられている。
【0036】
上流側三方弁41は、第1状態と、第2状態とに切り替えられる構成になっている。具体的に、上流側三方弁41の第1状態とは、エンジン1のウォータジャケット1aの冷却液を上流側連通路36およびラジエータバイパス路35を経て過給機2のウォータジャケット2bに導く状態のことである。また、上流側三方弁41の第2状態とは、低温冷却液循環路30の冷却液をラジエータバイパス路35から過給機2のウォータジャケット2bに導く状態のことである。
【0037】
下流側三方弁42は、第1状態と、第2状態とに切り替えられる構成とされている。具体的に、下流側三方弁42の第1状態とは、過給機2のウォータジャケット2bの出口側から下流側流通路37を経て高温冷却液循環路20のラジエータ22に冷却液を導く状態のことである。また、下流側三方弁42の第2状態とは、過給機2のウォータジャケット2bの出口側から低温冷却液循環路30の冷却液導入部33に冷却液を導く状態のことである。
【0038】
これら2つの三方弁41,42は、電磁式または電動式とされており、その動作は、ECU50により制御される。2つの三方弁41,42が請求項に記載の「流路制御手段」を構成している。
【0039】
ECU50は、例えばエンジンの各種動作を制御するためのエンジンコントロールコンピュータとされる。このECU50は、詳細に図示していないが、CPU(中央処理装置)、ROM(プログラムメモリ)、RAM(データメモリ)、ならびにバックアップRAM(不揮発性メモリ)などを備える公知の構成とされる。
【0040】
ROMは、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップなどが記憶されている。CPUは、ROMに記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。また、RAMは、CPUでの演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAMは、エンジンの停止時にその保存すべきデータなどを記憶する不揮発性のメモリである。
【0041】
この実施形態では、前記既存のECU50に電動式のウォータポンプ31および2つの三方弁41,42の動作を制御するための機能を装備させている。
【0042】
この実施形態では、エンジン1のウォータジャケット1aの出口1bに、そこを流通する冷却液の温度thw1を検出するための第1温度センサ43が設けられており、また、低温冷却液循環路30においてウォータポンプ31の吐出側に、そこを流通する冷却液の温度thw2を検出するための第2温度センサ44が設けられている。
【0043】
第1、第2温度センサ43,44は、前記冷却液の温度に対応する信号を出力してECU50に入力する。そして、ECU50は、例えば第1温度センサ43の出力信号の入力に基づいて冷却液温度thw1を検出し、この検出した冷却液温度thw1が所定の閾値X以下であるか否かを判定することによりエンジン1の暖機が完了したか否かを判断する処理を実行する他、第2温度センサ44の出力信号の入力に基づいて冷却液温度thw2を検出し、この検出した冷却液温度thw2が所定の閾値Y以下であるか否かを判定することにより上流側三方弁41および下流側三方弁42を開閉制御する処理を実行するようになっている。
【0044】
ちなみに、ECU50は、thw2≦Yであると判定した場合に、上流側三方弁41および下流側三方弁42を共に第1状態にさせるように制御することにより第1流路(図1の一点鎖線矢印300参照)を作る一方、thw2>Yであると判定した場合に、上流側三方弁41および下流側三方弁42を共に第2状態にさせるように制御することにより第2流路(図2の二点鎖線矢印400参照)を作る。
【0045】
なお、前記第1流路とは、過給機2のウォータジャケット2bにエンジン1のウォータジャケット1aから取り出される冷却液を流通させるための暖機用流路のことである。この第1流路を作ると、比較的速やかに昇温するエンジン1の冷却液で過給機2が暖められるようになるので、過給機2のタービンシャフト支持用の軸受部(図示省略)の潤滑油粘度が比較的速やかに低くなって潤滑性が高められるようになる。その結果、前記軸受部のフリクションが小さくなるとともに前記軸受部の油膜ダンピングが良好になるなど、過給機2の動作安定化を図ることが可能になる。
【0046】
また、前記第2流路とは、過給機2のウォータジャケット2bに低温冷却液循環路30の冷却液を流通させるための通常温調用流路のことである。この第2流路を作ると、低温冷却液循環路30の冷却液がインタークーラ3および過給機2のウォータジャケット2bを通過することにより過給機2の熱を回収し、その後、前記冷却液がラジエータ32を通過することにより前記回収した熱がラジエータ32により大気に放出されることになるので、低温冷却液循環路30を循環する冷却液が過剰に昇温せずに所定の温度範囲に保たれるようになる。
【0047】
さらに、前記閾値Yについては、過給機2のタービンシャフト支持用の軸受部(図示省略)の潤滑性を良好とする状態にさせるのに必要な前記低温冷却液循環路30の冷却液温度thw2を実験またはシミュレーションにより把握し、この把握した結果に基づいて適宜(例えば約40〜50℃の範囲、好ましくは50℃)に設定することができる。ところで、エンジン1が暖機完了した後における低温冷却液循環路30の冷却液温度thw2の上限値は約50℃となるので、このことも加味すると、前記閾値Yについては、前記上限値以下とすることが好ましいと言える。
【0048】
ちなみに、低温冷却液循環路30を循環する冷却液がインタークーラ3ならびに過給機のウォータジャケット2bを通過するときにそれらの熱を回収するので、ラジエータ32の入口側付近の冷却液温度が高くなるが、ラジエータ32を冷却液が通過すると当該冷却液の熱が大気に放出されるので、ラジエータ32の出口側付近の冷却液温度が低くなる。つまり、低温冷却液循環路30の冷却液導入部33においてラジエータ32の入口側付近の冷却液温度は、低温冷却液循環路30の冷却液還流部34においてラジエータ32の出口側付近の冷却液温度に比べて高くなる。
【0049】
次に、図3のフローチャートを参照して、ECU50による動作の一例を説明する。なお、図3に示すフローチャートはエンジン1が始動されたときにスタートされる。
【0050】
このフローチャートがスタートされると、まず、ステップS1において、上流側三方弁41および下流側三方弁42を共に第2状態にさせる。これにより、過給機2のウォータジャケット2bに低温冷却液循環路30の冷却液を流通させるための第2流路(図2の二点鎖線矢印400参照)が作られる。
【0051】
続くステップS2において、第2温度センサ44からの出力信号の入力に基づいて低温冷却液循環路30におけるラジエータ32の冷却液排出側の冷却液温度thw2を検出する。
【0052】
この後、ステップS3において、前記ステップS2で検出した冷却液温度thw2が所定の閾値Y以下であるか否かを判定する。
【0053】
ここで、前記冷却液温度thw2が前記閾値Yを超えている場合つまり過給機2の暖機が不要である場合には前記ステップS3で否定判定し、前記ステップS2に戻る。
【0054】
一方、前記冷却液温度thw2が所定の閾値Y以下である場合つまり過給機2の暖機が必要である場合には前記ステップS3で肯定判定し、ステップS4に移る。
【0055】
このステップS4では、上流側三方弁41および下流側三方弁42を共に第1状態にさせる。これにより、過給機2のウォータジャケット2bにエンジン1のウォータジャケット1aから取り出される冷却液を流通させるための第1流路(図1の一点鎖線矢印300参照)が作られる。
【0056】
以上説明したような構成のエンジン冷却装置では、外気温が低い状況でエンジン1を始動したときにエンジン1のウォータジャケット1a内で比較的速やかに昇温する冷却液で過給機2を暖めることにより、当該過給機2のタービンシャフト支持用の軸受部(図示省略)の潤滑油粘度を可及的速やかに低くさせて潤滑性を高めるようにしている。
【0057】
これにより、過給機2のフリクションを小さくすることが可能になって、過給機2の前記軸受部の油膜ダンピングが良好になるなど、過給機2の動作安定化を達成できるようになる。
【0058】
しかも、過給機2の暖機が完了した後は、低温冷却液循環路30の冷却液を過給機2のウォータジャケット2bに流通させることによって過給機2を冷却させるようにしているから、過給機2が過剰に昇温することを防止できるようになる。
【0059】
このように、外気温が低い状況での過給機2の動作安定化と、エンジン1の暖機完了後における過給機2の過剰昇温防止とを両立することが可能になる。
【0060】
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内および当該範囲と均等の範囲内で適宜に変更することが可能である。
【0061】
(1)上記実施形態では流路制御手段として2つの三方弁41,42を用いる例を挙げているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図示していないが、例えば四方弁などに置き換えることが可能である。
【0062】
このような四方弁を用いる場合には、例えば過給機2のウォータジャケット2b内に冷却液を流通させない状態を作ることが可能になる。例えばエンジン1と電動機とを組み合わせたハイブリッド車両では、節電が重要になる。そこで、このようなハイブリッド車両に本発明に係るエンジン冷却装置を適用した場合において、外気温が低い状況でエンジン1を始動したときに上記した過給機2の暖機処理を行う前段階として、前記四方弁で過給機2のウォータジャケット2b内に冷却液を流通させない状態とすることによりエンジン1の排気ガスにより過給機2を昇温させるようにしておいて、その間は電動式ウォータポンプ31の作動を停止させるようにすることが可能になる。このようにすれば当該ウォータポンプ31の作動に必要な電力を節約することが可能になる。そして、前記排気ガスによる昇温動作を所定時間行った後で上記過給機2の暖機処理を行うようにすれば過給機2の暖機を完了させるのに要する時間を短縮できるようになる。
【0063】
(2)上記実施形態において、図示していないが、高温冷却液循環路20にラジエータ22をバイパスするためのラジエータバイパス路を設け、このラジエータバイパス路の途中に車室内に設置される暖房用熱交換器(ヒータコア)を直列に接続することが可能である。
【0064】
この場合には、例えばエンジン1を冷間始動したときに、エンジン1のウォータジャケット1aの冷却液をラジエータ22に流通させない状態にして、前記ラジエータバイパス路に流通させる状態にすることが可能になる。そのようにすると、エンジン1を冷間始動してから比較的早い段階で車室内の暖房を行うことが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、過給機付きエンジンの冷却液を外部に取り出してから戻すための高温冷却液循環路と、前記過給機のコンプレッサからの圧縮吸気を冷却するための水冷式のインタークーラに供給する冷却液が循環される低温冷却液循環路とを備えるエンジン冷却装置に好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 エンジン
1a エンジンのウォータジャケット
2 過給機
2a 過給機のベアリングハウジング
2b ベアリングハウジングのウォータジャケット
3 インタークーラ
20 高温冷却液循環路
21 ウォータポンプ
22 ラジエータ
23 高温冷却液循環路の冷却液導入部
24 高温冷却液循環路の冷却液還流部
30 低温冷却液循環路
31 ウォータポンプ
32 ラジエータ
33 低温冷却液循環路の冷却液導入部
34 低温冷却液循環路の冷却液還流部
35 低温冷却液循環路のラジエータバイパス路
36 低温冷却液循環路の上流側連通路
37 低温冷却液循環路の下流側連通路
41 上流側三方弁
42 下流側三方弁
44 第2温度センサ
50 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給機付きエンジンの冷却液を外部に取り出してから戻すための高温冷却液循環路と、
前記過給機のコンプレッサからの圧縮吸気を冷却するための水冷式のインタークーラに供給する冷却液が循環される低温冷却液循環路と、
前記過給機に設けられるウォータジャケットに前記エンジンから取り出される冷却液を流通させる第1流路または前記ウォータジャケットに前記低温冷却液循環路の冷却液を流通させる第2流路を作るための流路制御手段と、
前記流路制御手段の動作を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記低温冷却液循環路の冷却液温度が所定の閾値以下である場合に前記第1流路を作るように前記流路制御手段を制御する、ことを特徴とするエンジン冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジン冷却装置において、
前記制御部は、前記低温冷却液循環路の冷却液温度が前記所定の閾値を超えている場合に、前記第2流路を作るように前記流路制御手段を制御する、ことを特徴とするエンジン冷却装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエンジン冷却装置において、
前記高温冷却液循環路には、冷却液を循環させるためのウォータポンプと、前記エンジンのウォータジャケットから取り出した冷却液を外気と熱交換するためのラジエータとが設けられ、
前記低温冷却液循環路には、冷却液を循環させるための電動式ウォータポンプと、循環する冷却液を外気と熱交換するためのラジエータと、このラジエータをバイパスするとともに途中に前記過給機のウォータジャケットが直列に接続されるラジエータバイパス路と、前記エンジンのウォータジャケットの出口と前記ラジエータバイパス路において前記過給機のウォータジャケットの入口側部分とにそれらを連通するように接続される上流側連通路と、前記ラジエータバイパス路において前記過給機のウォータジャケットの出口側部分と前記高温冷却液循環路において前記ラジエータへの冷却液導入側とにそれらを連通するように接続される下流側連通路とが設けられる、ことを特徴とするエンジン冷却装置。
【請求項4】
請求項3に記載のエンジン冷却装置において、
前記流路制御手段は、前記ラジエータバイパス路に対する前記上流側連通路の接続部分に設置される上流側三方弁と、前記ラジエータバイパス路に対する前記下流側連通路の接続部分に設置される下流側三方弁とを含む構成とされ、
前記上流側三方弁は、前記エンジンのウォータジャケットの冷却液を前記上流側連通路および前記ラジエータバイパス路を経て前記過給機のウォータジャケットに導く第1状態と、前記低温冷却液循環路の冷却液を前記ラジエータバイパス路から前記過給機のウォータジャケットに導く第2状態とに切り替えられる構成とされ、
前記下流側三方弁は、前記過給機のウォータジャケットの出口側から前記下流側流通路を経て前記高温冷却液循環路のラジエータに冷却液を導く第1状態と、前記過給機のウォータジャケットの出口側から前記低温冷却液循環路に冷却液を導く第2状態とに切り替えられる構成とされ、
前記制御部は、前記第1流路を作るときに、前記上流側三方弁および前記下流側三方弁を共に前記第1状態にさせるように制御する一方、前記第2流路を作るときに、前記上流側三方弁および前記下流側三方弁を共に前記第2状態にさせるように制御する、ことを特徴とするエンジン冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−113118(P2013−113118A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257225(P2011−257225)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)