説明

エンジン吸気系の吸気通路

【課題】乱流や乱渦の発生抑制による吸気抵抗の低減によって高い効率でエンジンの出力特性の向上を図ることができ、しかも構造の簡素化により低コストを達成できるエンジン吸気系の吸気通路を提供する。
【解決手段】 スロットル弁2を装備したスロットルボディ3の第1吸気通路4と、その下流側に接続される吸気管7の第2吸気通路8とが連続してなるエンジン吸気系の吸気通路1において、第1吸気通路4の内径D2が第2吸気通路8の内径D1よりも大きく設定され、スロットルボディ3と吸気管7との間に、第1吸気通路4と第2吸気通路8とを互いに連続させる第3吸気通路6を備えたスペーサ5を介装する。第3吸気通路6の断面積が第1吸気通路4側から第2吸気通路8側に向けて縮径するテーパに形成され、かつ、第1吸気通路4と第3吸気通路6および第3吸気通路6と第2吸気通路8とが無段差で連続している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン吸気系の吸気通路に係り、より詳しくは、吸気抵抗を低減してエンジンの出力特性の向上を実現するのに好適なエンジン吸気系の吸気通路に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンに付設される吸気系の吸気通路は、シリンダの燃焼室に流入する吸気量を制御するためのスロットル弁を装備したスロットルボディの第1吸気通路と、この第1吸気通路の下流側に接続されて、該第1吸気通路を通過した吸気をシリンダの燃焼室に導入するためのインテークマニホールド(吸気管)の第2吸気通路とを連続させることによって構成されており、スロットルボディはアルミ合金の鋳造品からなり、吸気管は重量の軽減や製造コストの低減を図るために、樹脂の射出成形により製造されている。そして、第1吸気通路の内径と第2吸気通路の上流側の内径は等径に設定されている。
【0003】
ところで、エンジンの出力特性の向上は、シリンダの燃焼室に流入する吸気量を所定の範囲内で大きくすることで実現できるものであり、アクセル操作に対するエンジン出力の上昇の反応が良くなり、エンジンのレスポンスの改善となるものである。このため、前記吸気系の吸気通路において使用されている標準仕様のスロットルボディに代えて、大径の第1吸気通路を備えた特別仕様のスロットルボディを使用することで、シリンダの燃焼室に流入する吸気量を所定の範囲内で大きくすれば、前記のようなアクセル操作に対するエンジン出力の上昇の反応が良くなり、エンジンのレスポンスが改善するなどのエンジンの出力特性の向上を図ることができる。
【0004】
ところが、特別仕様のスロットルボディにおける大径の第1吸気通路の下流側に、吸気管における小径(標準径)の第2吸気通路の上流側を突き合わせ接続すると、吸気系の吸気通路には、第1吸気通路の内径と第2吸気通路の上流側の内径との差に相当する段差が生じる。このように、吸気系の吸気通路に段差が生じると、吸気流は、吸気通路内で段差に衝突して乱流や乱渦が生じて吸気抵抗を増大させて、エンジンの出力特性の向上効率を低下させる難点がある。
【0005】
一方、吸気通路を無段差にして、乱流や乱渦の発生を抑えて吸気抵抗を低減するように工夫した吸気系の吸気通路が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0006】
前記特許文献1に記載の吸気系の吸気通路は、スロットルボディにおける第1吸気通路の断面積を上流側から下流側に向けて漸減するテーパに形成し、吸気管における第2吸気通路の上流側の断面積を上流端から下流側に向けて第1吸気通路の勾配よりも急勾配で縮径するテーパに形成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−258091号公報(図11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1に記載されている吸気系の吸気通路は、無段差であるので、乱流や乱渦の発生を抑えて吸気抵抗を低減することができる。したがって、この吸気系の吸気通路を採用することで、高い効率でエンジンの出力特性の向上を図ることが期待できる。
【0009】
ところが、特許文献1に記載されている吸気系の吸気通路では、断面積を上流側から下流側に向けて漸減するテーパに形成した第1吸気通路を備えるスロットルボディと、上流側の断面積を上流端から下流側に向けて第1吸気通路の勾配よりも急勾配で縮径するテーパに形成した第2吸気通路を備える吸気管とを別途製作して用意する必要がある。このため、大幅な製造コストアップを招く問題点が生じる。
【0010】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、乱流や乱渦の発生抑制による吸気抵抗の低減によって高い効率でエンジンの出力特性の向上を図ることができ、しかも構造の簡素化により低コストを達成できるエンジン吸気系の吸気通路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明に係るエンジン吸気系の吸気通路は、スロットル弁を装備したスロットルボディの第1吸気通路と、この第1吸気通路の下流側に接続される吸気管の第2吸気通路とが連続してなるエンジン吸気系の吸気通路において、
前記第1吸気通路の内径が第2吸気通路の内径よりも大きく設定されているとともに、スロットルボディと吸気管との間に、第1吸気通路と第2吸気通路とを互いに連続させる第3吸気通路を備えたスペーサが介装され、前記第3吸気通路の断面積が第1吸気通路側から第2吸気通路側に向けて縮径するテーパに形成され、かつ、第1吸気通路の下流端と第3吸気通路の径大上流端および第3吸気通路の径小下流端と第2吸気通路の上流端が無段差で連続していることを特徴とする。
【0012】
前記構成のエンジン吸気系の吸気通路によれば、第1吸気通路の内径が第2吸気通路の内径よりも大きく設定されている特別仕様のスロットルボディの適用が可能になり、これによって、シリンダの燃焼室に流入する吸気量を所定の範囲内で大きくして、エンジンの出力特性の向上を図ることができる。しかも、第1吸気通路側から第2吸気通路側に向けて縮径するテーパに形成された第3吸気通路を備えたシンプルなスペーサを、スロットルボディと吸気管との間に介装する簡単な構造によって、無段差の吸気通路が構成されるので、乱流や乱渦の発生を抑えて吸気抵抗を低減し、高い効率でエンジンの出力特性の向上を図ることが可能となる。特に、アクセルの半開程度からアクセルを踏み足した時にエンジン出力の上昇の反応が良くなり、いわゆるアクセルのツキが良い状態となる。
【0013】
本発明に係るエンジン吸気系の吸気通路は、前記スペーサをアルミ合金の成形体によって構成し、第3吸気通路のテーパを小さく設定することが望ましい。
【0014】
これによると、第3吸気通路のテーパをスペーサのダイカスト成形時における金型からの抜き勾配として機能させ得るので、高品質のスペーサの製造が容易になる。また、第3吸気通路のテーパが小さく設定されることで、第3吸気通路での吸気流の急激な縮流による吸気抵抗の増大が回避されて、高い効率でエンジンの出力特性の向上を図ることに寄与する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るエンジン吸気系の吸気通路は、シリンダの燃焼室に流入する吸気量を所定の範囲内で大きくして、エンジンの出力特性の向上を図ることができるばかりか、シンプルなスペーサを、スロットルボディと吸気管との間に介装する簡単で低コストを達成できる構造によって、乱流や乱渦の発生を抑えて吸気抵抗を低減し、高い効率でエンジンの出力特性の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るエンジン吸気系の吸気通路の一実施形態を示す側面図である。
【図2】図1の実施形態の要部を分解して示す斜視図である。
【図3】図1の実施形態の要部の縦断面図である。
【図4】図3の一部を拡大して示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0017】
以下、本発明に係るエンジン吸気系の吸気通路の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係るエンジン吸気系の吸気通路の一実施形態を示す側面図、図2は図1の実施形態の要部を分解して示す斜視図、図3は図1の実施形態の要部の縦断面図、図4は図3の一部を拡大して示す縦断面図である。
【0018】
図1〜図4において、エンジン吸気系の吸気通路1は、スロットル弁2を装備したスロットルボディ3の第1吸気通路4と、この第1吸気通路4の下流側に互いに連通して接続されるスペーサ5の第3吸気通路6と、この第3吸気通路6の下流側に互いに連通して接続されるインテークマニホールド(以下の説明では吸気管という)7の第2吸気通路8とを備え、スロットルボディ3と吸気管7の間にスペーサ5と後述するガスケットが介装された構成で、自動車の直列4気筒ガソリンエンジン(以下の説明ではエンジンという)9のシリンダヘッド10に対して、吸気管7の4つの下流端部の開口から各シリンダの燃焼室への吸気流の流入を可能に適宜取り付けられており、スロットルボディ3の第1吸気通路4には、図示していないエアクリーナからの空気を導入するゴム製の吸気パイプ11が接続されている。
【0019】
スロットルボディ3は、アルミ合金を素材とする鋳造品からなり、第1吸気通路4の外周領域に円周方向等間隔で4つの貫通ボルト孔3a(ただし、図2には、3つのボルト孔3aのみが示されている)が設けられている。また、スペーサ5は、アルミ合金を素材とする略正方形で板状のダイカスト成形体からなり、第3吸気通路6の外周領域に前記4つの貫通ボルト孔3aに対応する4つの貫通ボルト孔5aが設けられている。さらに、吸気管7は、樹脂の射出成形品からなり、第2吸気通路8の上流端部を取り囲む略正方形のフランジ12を備えており、このフランジ12端面の第2吸気通路8の外周領域における前記4つの貫通ボルト孔5aに対応する位置に金属製のナット12aがインサートされている。
【0020】
スロットルボディ3とスペーサ5との間には、2次空気の吸込みを防ぐ薄肉のガスケット13が介装される。ガスケット13は、略正方形のもので、その中心部に大径の貫通孔13aを有し、該大径の貫通孔13aの外周領域に前記4つの貫通ボルト孔3aおよび前記4つの貫通ボルト孔5aのそれぞれに対応する4つの貫通ボルト孔13bが設けられている。また、フランジ12の端面に形成された環状溝14には、2次空気の吸込みを防ぐリング状のゴム製パッキン15が嵌合されている。
【0021】
スロットルボディ3は、ガスケット13、スペーサ5およびリング状のゴム製パッキン15を介装した状態で、4本の締結ボルト16により吸気管7のフランジ12に締結される。詳しくは、スロットルボディ3の4つの貫通ボルト孔3a、ガスケット13の4つの貫通ボルト孔13b、スペーサ5の4つの貫通ボルト孔5aの順序で4本の締結ボルト16を貫通させて、各締結ボルト16の先端部を吸気管7のフランジ12にインサートされている金属製のナット12aに螺着することで、スロットルボディ3は、ガスケット13、スペーサ5およびリング状のゴム製パッキン15を介装した状態で、吸気管7のフランジ12に締結される。これにより、スロットルボディ3は、ガスケット13を介してスペーサ5に突き合わせ状態で接続され、スペーサ5はリング状のゴム製パッキン15を弾性圧潰して吸気管7におけるフランジ12の端面に突き合わせ状態で接続される。
【0022】
本実施形態のエンジン吸気系の吸気通路1では、標準仕様の吸気管7の第2吸気通路8の内径D1(66.5mm)よりも大きい内径D2(69mm)の第1吸気通路4を有する特別仕様のスロットルボディ3が適用される。そして、スペーサ5は、その肉厚tが10mmに設定されているとともに、第3吸気通路6は、その上流端の内径D3が69mmに設定され、下流端の内径D4が66.5mmに設定されて、第3吸気通路6の断面積が第1吸気通路4側から第2吸気通路8側に向けて縮径する小さいテーパに形成されることで、第1吸気通路4の下流端と第3吸気通路6の径大上流端および第3吸気通路6の径小下流端と第2吸気通路8の上流端が無段差で連続している。
【0023】
前記構成において、エンジン9を起動させると、ピストンの下降に伴ってシリンダの燃焼室が負圧化され、吸込弁が開放されている吸気ポートから燃焼室への吸気が開始される。これにより、エアクリーナから外気が吸い込まれて吸気流が生成され、この吸気流が吸気系の吸気通路1を経由して前記吸気ポートに導入される。
【0024】
本実施形態のエンジン吸気系の吸気通路1によれば、第1吸気通路4の内径D2が第2吸気通路8の内径D1よりも大きく設定されている特別仕様のスロットルボディ3が適用されていることで、シリンダの燃焼室に流入する吸気量を所定の範囲内で大きくして、エンジン9の出力特性の向上を図ることができる。しかも、第1吸気通路4側から第2吸気通路8側に向けて縮径するテーパに形成された第3吸気通路6を備えたシンプルなスペーサ5を、スロットルボディ3と吸気管7との間に介装する簡単な構造によって、無段差の吸気通路1が構成されるので、乱流や乱渦の発生を抑えて吸気抵抗を低減し、高い効率でエンジン9の出力特性の向上を図ることが可能となる。特に、アクセルの半開程度からアクセルを踏み足した時にエンジン出力の上昇の反応が良くなり、例えば、5割のアクセル開度では従来の6割のアクセル開度に相当するエンジン出力が発生し、いわゆるアクセルのツキが良い状態となる。なお、第1吸気通路4と第3吸気通路6との間にガスケット13の大径の貫通孔13aが介在して、第1吸気通路4と第3吸気通路6との間に小さい逆段差が形成されるものの、ガスケット13が薄肉であるので、実際上、吸気流に影響することはない。つまり、前記逆段差は無視することができる。
【0025】
一方、第3吸気通路6のテーパは、これをスペーサ5のダイカスト成形時における金型からの抜き勾配として機能させ得るので、高品質のスペーサ5の製造が容易になる。また、第3吸気通路6のテーパが小さく設定されることで、第3吸気通路6での吸気流の急激な縮流による吸気抵抗の増大が回避されて、高い効率でエンジンの出力特性の向上を図ることに寄与する。
【産業上の利用可能性】
【0026】
標準仕様のスロットルボディに代えて、大径の吸気通路を備えた特別仕様のスロットルボディを使用することで、シリンダの燃焼室に流入する吸気量を所定の範囲内で大きくすることによって、エンジンの出力特性を高い効率で向上させる。
【符号の説明】
【0027】
1 エンジン吸気系の吸気通路
2 スロットル弁
3 スロットルボディ
4 第1吸気通路
5 スペーサ
6 第3吸気通路
7 吸気管
8 第2吸気通路
9 エンジン
D1 第2吸気通路の内径
D2 第1吸気通路の内径
D3 第3吸気通路の上流端の内径
D4 第3吸気通路の下流端の内径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットル弁を装備したスロットルボディの第1吸気通路と、この第1吸気通路の下流側に接続される吸気管の第2吸気通路とが連続してなるエンジン吸気系の吸気通路において、
前記第1吸気通路の内径が第2吸気通路の内径よりも大きく設定されているとともに、スロットルボディと吸気管との間に、第1吸気通路と第2吸気通路とを互いに連続させる第3吸気通路を備えたスペーサが介装され、前記第3吸気通路の断面積が第1吸気通路側から第2吸気通路側に向けて縮径するテーパに形成され、かつ、第1吸気通路の下流端と第3吸気通路の径大上流端および第3吸気通路の径小下流端と第2吸気通路の上流端が無段差で連続していることを特徴とするエンジン吸気系の吸気通路。
【請求項2】
請求項1に記載したエンジン吸気系の吸気通路において、
前記スペーサがアルミ合金の成形体からなり、第3吸気通路のテーパが小さく設定されているエンジン吸気系の吸気通路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−197680(P2012−197680A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60770(P2011−60770)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000128603)株式会社オートバックスセブン (6)