説明

エンジン用防音スペーサ

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、エンジン用防音スペーサに関する。
【0002】
【従来技術】自動車のエンジン本体の周辺部には、種々の付属装置や部品が近接して配置されることが多い。ところが、エンジン本体とそれらの装置や部品との間に間隙が存在している場合には、エンジンの作動時にその間隙に定在波が発生し、この定在波によってエンジン騒音が増長するという不具合があった。
【0003】そこで実公昭59−7545号公報等には、エンジン本体とその周辺の装置や部品との間の間隙に緩衝材を充填し、定在波の発生を防止することが提案されている。このようにエンジン本体周囲の間隙に配置される緩衝材(防音スペーサ)としては、従来より、シリコンを発泡成形したシリコンフォームや、EPDM等を発泡成形した発泡ゴム、あるいはウレタンを発泡成形したウレタンフォーム等が用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のような防音スペーサは、エンジン本体に近接して配置されるという特殊な条件から耐熱性に優れていることが望ましい。特に、エギゾーストパイプは約700℃の高温に加熱されるため、その近傍のエンジンケースカバーやヒートインシュレータ部材は300〜350℃程度まで上昇する。そのため、それらとシリンダブロックとの間に形成される間隙等に配される防音スペーサは高い耐熱性が要求される。その点、シリコンフォームは、耐熱温度が300〜350℃と高いため防音スペーサに用いて有利である。しかし、シリコンフォームは、他の材料に比べて高価であるためコストが高くなるという難点がある。一方、ウレタンフォームは、シリコンフォームに比べてコストが安く吸音率も良好であるものの、耐熱温度が約150℃以下と低いため、上記のような高温に晒される面には配設することができない。
【0005】本発明は上記実情に鑑み案出されたものであり、耐熱性に優れるとともにコスト低廉化が可能なエンジン用防音スペーサを提供することを解決すべき課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する請求項1記載の発明に係るエンジン用防音スペーサは、エンジン本体と該エンジン本体に近接して配設された付属装置や部品との間に形成される間隙に配設され、該間隙に生起する騒音を防止するエンジン用防音スペーサであって、発泡成形により形成されるウレタンフォームからなる本体部と、該本体部の前記付属装置や部品と対向する面に接合されたシリコンフォーム層と、からなり、該シリコンフォーム層は、前記ウレタンフォームを形成する成形型内に配置され、前記ウレタンフォームの固化に伴ってその接合面が固着することにより前記本体部に接合されていることを特徴とするものである。そして、請求項2記載の発明に係るエンジン用防音スペーサは、請求項1記載の発明において、前記シリコンフォーム層は、前記本体部の形成時に該本体部と係合する係合凹部及び係合凸部の少なくとも一方を有することを特徴とするものである。
【0007】
【作用】請求項1記載の発明に係るエンジン用防音スペーサは、発泡成形により形成されるウレタンフォームからなる本体部と、本体部の一面に接合されたシリコンフォーム層とからなり、これらシリコンフォーム層と本体部は、本体部のウレタンフォームを形成する際に、その成形型内にシリコンフォーム層が配置され、ウレタンフォームの固化に伴ってその接合面が固着することにより接合されている。このようにして作製される本発明のエンジン用防音スペーサは、エンジン本体に近接して配設された特に高温となる付属装置や部品に対向して配置されるシリコンフォーム層を有するため耐熱性が良好となる。また、防音スペーサの主体となる本体部は、比較的安価なウレタンフォームで形成されているためコストの低廉化が可能となる。請求項2記載の発明に係るエンジン用防音スペーサは、本体部のウレタンフォームを発泡成形により形成する際に、シリコンフォーム層に設けられた係合凹部及び係合凸部の少なくとも一方によってシリコンフォーム層と本体部とが係合される。これにより、比較的高い離型性を有するシリコンフォーム層と本体部とが強固に結合された状態となる。
【0008】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づき説明する。図1は本実施例に係るエンジン用防音スペーサの平面図であり、図2は図1のII−II線に相当する部分の断面図である。本実施例のエンジン用防音スペーサは、図1R>1及び図2に示すように、ウレタンフォームからなる本体部1と、本体部1の一面に接合されたシリコンフォーム層2とで構成され、配設すべき間隙の形状に対応してシート状の所定形状に形成されている。
【0009】本体部1は、ウレタンを発泡成形することにより、密度が0.1g/cm3 、厚さTが25mmの所定形状に形成したウレタンフォームで構成されている。この本体部1のエンジン本体と対向する面には、エンジン本体の外面に形成されたリブ等の形状と対応して溝部11が形成されている。シリコンフォーム層2は、シリコンを発泡成形することにより、密度が0.4g/cm3 、厚さtが5mmのシート状に形成したシリコンフォームで構成されており、本体部1の例えばエンジンケースカバー等の高温になる部材と対向する面に部分的に設けられている。このシリコンフォーム層2は、本体部1のウレタンフォームを形成する際に成形型内に配置され、ウレタンフォームの固化に伴ってその接合面が固着することにより本体部1に接合されている。また、シリコンフォーム層2の接合面には、係合凹部21や断面T字状の係合凸部22が多数箇所に設けられており、それら係合凹部21や係合凸部22と本体部1とが本体部1の形成時に係合されている。
【0010】このエンジン用防音スペーサは次のようにして作製されている。先ず、シリコンフォーム層2を形成する発泡成形型内に、シリコンに発泡剤等を配合したシリコン発泡材料を投入して発泡成形することにより、係合凹部21及び係合凸部22を有する所定形状のシリコンフォーム層2を作製する。次に、本体部1を形成する発泡成形型内の所定位置にそのシリコンフォーム層2を配置した後、ウレタンに発泡剤等を配合したウレタン発泡材料を発泡成形型内に投入して発泡成形する。これにより、シリコンフォーム層2の係合凹部21及び係合凸部22と係合した状態でシリコンフォーム層2に接合するウレタンフォーム(本体部1)が形成され、上記のエンジン用防音スペーサが完成する。
【0011】以上のように構成された本実施例のエンジン用防音スペーサは、図3及び図4に示すように、エンジン本体5とエンジン本体5に近接して配設されたエンジンケースカバー6との間に形成される間隙に配設される。この場合、エンジンケースカバー6はその近傍に配設されたエギゾーストパイプ7により加熱されて高温になるため、シリコンフォーム層2がエンジンケースカバー6と対向するように配設される。これにより、高温となるエンジンケースカバー6に対しての防音スペーサの耐熱性が確保される。
【0012】そして、エンジンの作動時にその間隙に生起した定在波は、本体部1及びシリコンフォーム層2により吸収されて効果的に減衰し、エンジン騒音が低減する。以上のように、本実施例のエンジン用防音スペーサによれば、高温となるエンジンケースカバー6等に対向して配置されるシリコンフォーム層2を有するため耐熱性に優れ、かつ防音スペーサの主体となる本体部1は、比較的安価なウレタンフォームで形成されているためコストの低廉化が可能となるので、耐熱性と低コスト化を両立させることができる。
【0013】また、シリコンフォーム層2は、本体部1の形成時に本体部1と係合する係合凹部21及び係合凸部22を有するため、比較的高い離型性を有するシリコンフォーム層2と本体部1との結合状態を強固にすることができる。なお、本実施例のエンジン用防音スペーサは、シリコンフォーム層2に形成した係合凹部21及び係合凸部22によりシリコンフォーム層2と本体部1とを係合するようにしているが、図5に示す防音スペーサのように、周端部に適数個の貫通孔41を形成したシリコンフォーム層4を、その周端部が本体部3に埋め込まれるようにして取付け、貫通孔41内に本体部3のウレタンフォームを侵入させることにより、シリコンフォーム層4と本体部3とを係合させるようにすることができる。
【0014】また、本実施例においてシリコンフォーム層2に設けられた係合凸部22は、シリコンフォームによりシリコンフォーム層2と一体に形成されたものであるが、これに代わり、シリコンフォーム層2に傘状のクリップ等を打ち込むことにより係合凸部を設けることができる。
【0015】
【発明の効果】請求項1記載の発明に係るエンジン用防音スペーサによれば、発泡成形により形成されるウレタンフォームからなる本体部と、該本体部の高温となる付属装置や部品と対向する面に接合されたシリコンフォーム層とからなり、シリコンフォーム層は、ウレタンフォームを形成する成形型内に配置され、ウレタンフォームの固化に伴ってその接合面が固着することにより本体部に接合されているため、耐熱性に優れるとともにコストの低廉化が可能となる。そして、請求項2記載の発明に係るエンジン用防音スペーサによれば、シリコンフォーム層は、本体部の形成時に本体部と係合する係合凹部及び係合凸部の少なくとも一方を有するため、比較的高い離型性を有するシリコンフォーム層と本体部との結合状態を強固にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係るエンジン用防音スペーサの平面図である。
【図2】図1のII−II線に相当する部分の断面図である。
【図3】本発明の実施例に係るエンジン用防音スペーサの取付状態を一部断面で示す側面図である。
【図4】本発明の実施例に係るエンジン用防音スペーサの取付状態を示す断面図である。
【図5】本発明の他の実施例に係るエンジン用防音スペーサの取付状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1、3…本体部 2、4…ウレタンフォーム層 11…溝部
21…係合凹部 22…係合凸部 41…貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジン本体と該エンジン本体に近接して配設された付属装置や部品との間に形成される間隙に配設され、該間隙に生起する騒音を防止するエンジン用防音スペーサであって、発泡成形により形成されるウレタンフォームからなる本体部と、該本体部の前記付属装置や部品と対向する面に接合されたシリコンフォーム層と、からなり、該シリコンフォーム層は、前記ウレタンフォームを形成する成形型内に配置され、前記ウレタンフォームの固化に伴ってその接合面が固着することにより前記本体部に接合されていることを特徴とするエンジン用防音スペーサ。

【請求項2】 前記シリコンフォーム層は、前記本体部
の形成時に該本体部と係合する係合凹部及び係合凸部の少なくとも一方を有することを特徴とする請求項1記載のエンジン用防音スペーサ。

【図2】
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【図4】
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【図1】
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【図3】
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【図5】
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【特許番号】特許第3204436号(P3204436)
【登録日】平成13年6月29日(2001.6.29)
【発行日】平成13年9月4日(2001.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−265753
【出願日】平成6年10月28日(1994.10.28)
【公開番号】特開平8−121190
【公開日】平成8年5月14日(1996.5.14)
【審査請求日】平成11年12月17日(1999.12.17)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【参考文献】
【文献】特開 平5−59963(JP,A)
【文献】実公 昭59−7545(JP,Y2)