説明

エンジン

【課題】冷却水の自然対流を促進させて、エンジンの冷却効率を向上させることができるエンジンを提供することを目的とする。
【解決手段】シリンダブロック2と、シリンダブロック2に回転可能に軸支されるクランク軸9と、シリンダブロック2の左側部に水平方向に設けられると共に、クランク軸9とコネクティングロッド19を介して連接されるピストン20が水平方向に往復運動可能に内設されるライナ17と、シリンダブロック2の左側面に設けられるシリンダヘッド3と、シリンダブロック2の上側にてライナ17の上方に設けられるラジエータ13と、シリンダブロック2とラジエータ13との間に形成される冷却水通路251Cと、を具備し、冷却水通路251Cを介してシリンダブロック2とラジエータ13との間で、冷却水を自然対流させるエンジン1において、冷却水通路251C内をシリンダヘッド3側とクランク軸9側とに仕切る仕切壁252を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに関し、より詳細には、ラジエータを具備するエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラジエータを具備するエンジンにおいては、冷却水を自然対流させてエンジンを冷却する技術が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のエンジン(横型水冷エンジン)は、シリンダブロック(シリンダボディ)と、シリンダブロックの一側部に水平方向に設けられるライナ(シリンダライナ)と、シリンダブロックの一側に設けられるシリンダヘッドと、シリンダブロックの上側にてライナの上方に設けられるラジエータと、シリンダブロックとラジエータとの間に形成される冷却水通路(連通部)と、を具備する。
【0004】
この技術によれば、冷却水通路を介してシリンダブロックとラジエータとの間で、冷却水が自然対流することにより、エンジンを冷却することができる。つまり、シリンダヘッドやライナ等で熱せられた高温の冷却水は、比重が小さくなってラジエータに向かって上昇する一方、ラジエータで冷却された低温の冷却水は、比重が大きくなって下降する。こうして、高温の冷却水が上昇し、低温の冷却水が下降することにより、冷却水が自然対流してエンジンを冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−204622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、冷却水の自然対流が悪化して、エンジンの冷却効率が悪化する、という問題があった。これは、上昇する高温の冷却水と下降する低温の冷却水とが、冷却水通路内で混ざり合うことで、両冷却水の温度差が小さくなって、冷却水の自然対流が悪化するためである。
【0007】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、冷却水の自然対流を促進させて、エンジンの冷却効率を向上させることができるエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上のとおりであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
すなわち、請求項1においては、シリンダブロックと、前記シリンダブロックに回転可能に軸支されるクランク軸と、前記シリンダブロックの一側部に水平方向に設けられると共に、前記クランク軸とコネクティングロッドを介して連接されるピストンが水平方向に往復運動可能に内設されるライナと、前記シリンダブロックの一側に設けられるシリンダヘッドと、前記シリンダブロックの上側にて前記ライナの上方に設けられるラジエータと、前記シリンダブロックと前記ラジエータとの間に形成される冷却水通路と、を具備し、前記冷却水通路を介して前記シリンダブロックと前記ラジエータとの間で、冷却水を自然対流させるエンジンにおいて、前記冷却水通路内を前記シリンダヘッド側と前記クランク軸側とに仕切る仕切部材を具備するものである。
【0010】
請求項2においては、前記冷却水通路は、その前記ラジエータ側の端部にラジエータ側開口部が形成され、前記ラジエータ側開口部は、前記仕切部材により、前記シリンダヘッド側の開口面積と前記クランク軸側の開口面積とが略均等となるように形成されるものである。
【0011】
請求項3においては、前記冷却水通路は、その前記シリンダブロック側の端部に前記シリンダブロック側開口部が形成され、前記シリンダブロック側開口部は、前記仕切部材により、前記クランク軸側の開口面積の方が前記シリンダヘッド側の開口面積よりも小さくなるように形成されるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、シリンダヘッドやライナ等で熱せられてラジエータに向かって上昇する高温の冷却水と、ラジエータで冷却されて下降する低温の冷却水とが、冷却水通路内で仕切部材によって分離される。このため、冷却水通路内で高温の冷却水と低温の冷却水とが混ざり合うのが低減されて、両冷却水の温度差が維持される。これにより、冷却水の自然対流を促進させて、エンジンの冷却効率を向上させることができる。
【0014】
請求項2においては、ラジエータ内が高温の冷却水が上昇する側と低温の冷却水が下降する側とに概ね等しく分かれる。このため、ラジエータ内において、冷却水が上昇する側の流速と冷却水が下降する側の流速とが概ね等しくなることから、冷却水が滞留することなく円滑に流れる。これにより、冷却水の自然対流を促進させて、エンジンの冷却効率をさらに向上させることができる。
【0015】
請求項3においては、シリンダブロック側開口部のクランク軸側から流れ出る冷却水の流速が大きくなる。このため、ラジエータで冷却された下降する低温の冷却水が、シリンダブロック側開口部のクランク軸側からシリンダブロック内に素速く流入する。これにより、冷却水の自然対流を促進させて、エンジンの冷却効率をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るエンジンを示す正面図。
【図2】本発明の一実施形態に係るエンジンを示す背面図。
【図3】本発明の一実施形態に係るエンジンを示す正面断面図。
【図4】図3におけるA−A位置での断面図。
【図5】ラジエータがラジエータ取付間座を介してシリンダブロックの上面に取り付けられた状態を示す正面断面図。
【図6】クランク軸の動力をファン軸に伝達するファンベルトを示す背面図。
【図7】ラジエータ取付間座を示す斜視図。
【図8】(a)ラジエータ取付間座を示す平面図。(b)(a)におけるB−B位置での断面図。
【図9】(a)ラジエータ取付間座を示す底面図。(b)ラジエータ取付間座を示す正面図。
【図10】(a)ラジエータ側開口部を示す平面図。(b)。シリンダブロック側開口部を示す底面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図面に基づき説明する。
【0018】
先ず、本発明の一実施形態に係るエンジン1の全体構成について、図1から図4により説明する。なお、以下の説明では、エンジン1のクランク軸9の軸方向を前後方向として、図1の矢印Uで示す方向を「上方」、矢印Lで示す方向を「左方」、図4の矢印Fで示す方向を「前方」という。
【0019】
図1及び図2に示すように、エンジン1は、いわゆる横型水冷エンジンである。エンジン1において、シリンダブロック2の左側面には、シリンダヘッド3が設けられる。シリンダヘッド3の上方には、エアクリーナ4及びマフラー5が前後に並べて設けられる。また、シリンダブロック2の前面には、ギヤケース6が、シリンダブロック2の後面には、フライホイール7が、シリンダブロック2の下面には、オイルパン8が、それぞれ設けられる。フライホイール7は、クランク軸9の後端部に設けられる。
【0020】
また、シリンダブロック2の上面には、ラジエータ13を覆うラジエータカバー11及びエンジン1の燃料が貯溜される燃料タンク10が左右に並べて設けられる。ラジエータカバー11内には、ラジエータ13及び冷却ファン14が収容される(図4参照)。ラジエータカバー11の前面には、冷却風入口スクリーン15が、ラジエータカバー11の後面には、冷却風出口スクリーン16が、それぞれ設けられる。また、燃料タンク10の右側面には、照明用のライト12が設けられる。
【0021】
図3及び図4に示すように、シリンダブロック2内には、クランク軸9が前後方向に架設される。クランク軸9は、図示しない軸受を介してシリンダブロック2に回転可能に軸支される。クランク軸9の後端部は、シリンダブロック2の後面から後方に突出する。クランク軸9の後端部には、フライホイール7が設けられる。
【0022】
また、シリンダブロック2の左側部には、ライナ17が左右水平方向に設けられる。シリンダブロック2において、ライナ17の周囲には、冷却水が流れるウォータージャケット18が形成される。ウォータージャケット18は、シリンダブロック2の上面にて開口するように形成される。なお、ウォータージャケット18は、シリンダヘッド3に形成される図示しない冷却水通路と連通される。
【0023】
また、ライナ17には、ピストン20が水平方向に往復運動(摺動)可能に内設される。ピストン20は、コネクティングロッド19を介してクランク軸9と連接される。ピストン20の往復運動は、コネクティングロッド19を介してクランク軸9の回転運動に変換される。また、ライナ17とピストン20とシリンダヘッド3との間には、燃焼室21が形成される。
【0024】
次に、ラジエータ13及び冷却ファン14について、図3から図6により説明する。
【0025】
図3から図5に示すように、ラジエータ13は、ラジエータコア26及びアッパータンク27等で構成される。ラジエータ13は、ラジエータ取付間座25を介してシリンダブロック2の上面に取り付けられる。
【0026】
ラジエータコア26では、冷却水が流れる多数の冷却水チューブ28が上下方向に延設される。多数の冷却水チューブ28間には、多数の放熱用のフィン29が設けられる。また、ラジエータコア26の上面には、アッパータンク27が設けられる。アッパータンク27内には、冷却水チューブ28の上端部が差し込まれる。
【0027】
また、アッパータンク27には、冷却水を補給するための補給口27aが設けられる。補給口27aには、圧力調整用のラジエータキャップ27bが取り付けられる。また、ラジエータ13(ラジエータコア26)の左側面には、サブタンク30が設けられる。サブタンク30は、固定ステー39によってラジエータ13とで挟まれて固定される。
【0028】
サブタンク30は、ラジエータ13内の冷却水を所定量に維持するためのものである。つまり、ラジエータ13内の冷却水が熱膨張により増加すると、ラジエータ13内の冷却水がサブタンク30内に流入する一方、ラジエータ13内の冷却水が減少すると、サブタンク30内の冷却水がラジエータ13に戻されることにより、ラジエータ13内の冷却水が所定量に維持される。サブタンク30とラジエータキャップ27bとは、ホース37を介して連通される。
【0029】
冷却ファン14は、その回転中心部にファン軸14aを有し、ファンカバー31で覆われてラジエータ13の後方に設けられる。ファン軸14aは、ファンカバー31内に前後方向に架設されるとともに、軸受32を介してファンカバー31に回転可能に軸支される。ファン軸14aの後端部には、ファンプーリ33が設けられる。
【0030】
図6に示すように、クランク軸9後端部のフライホイール7には、クランクプーリ34が設けられる。クランクプーリ34及びファンプーリ33には、ファンベルト35が巻かれる。これにより、クランク軸9の動力が、クランクプーリ34、ファンベルト35、ファンプーリ33を経て、ファン軸14aに伝達されることにより、冷却ファン14が回転する。なお、ファンベルト35には、テンションプーリ36によって張力が付与される。
【0031】
こうして、冷却ファン14が回転すると、冷却風が冷却風入口スクリーン15からラジエータカバー11内に流入し、冷却風出口スクリーン16からエンジン1外部に流出する。つまり、冷却ファン14の冷却風によってラジエータ13が冷却される。
【0032】
次に、ラジエータ取付間座25について、図7から図10により説明する。
【0033】
ラジエータ取付間座25は、間座本体251及び仕切壁252等で構成される。
【0034】
間座本体251には、ラジエータ取付面251A、シリンダブロック取付面251B及び冷却水通路251Cが形成される。
【0035】
ラジエータ取付面251Aは、間座本体251の上面(ラジエータ13側の面)に形成され、ラジエータ13の下面が取り付けられる。ラジエータ取付面251Aには、ラジエータ13の下部がボルト38で固定される(図5参照)。
【0036】
シリンダブロック取付面251Bは、間座本体251の下面(シリンダブロック2側の面)に形成され、シリンダブロック2上面に取り付けられる。より詳細には、シリンダブロック取付面251Bは、ピストン20が摺動するライナ17の上方に形成されるウォータージャケット18が位置するシリンダブロック2上面に取り付けられる。なお、シリンダブロック2は、シリンダブロック取付面251Bにボルト47で固定される。また、間座本体251には、ボルト47が挿入されるボルト孔251Dが形成される。
【0037】
冷却水通路251Cは、その上端部(ラジエータ13側の端部)にラジエータ側開口部251Caが形成される。ラジエータ側開口部251Caは、ラジエータ13と連通可能に接続される。冷却水通路251Cは、その下端部(シリンダブロック2側の端部)にシリンダブロック側開口部251Cbが形成される。シリンダブロック側開口部251Cbは、シリンダブロック2(ウォータージャケット18)と連通可能に接続される。シリンダブロック側開口部251Cbは、ラジエータ側開口部251Caに対してシリンダヘッド3側(右側)にオフセットされた位置に形成される。なお、本実施形態では、シリンダブロック側開口部251Cbの開口面積は、ラジエータ側開口部251Caの開口面積よりも小さくなるように形成される。また、冷却水通路251C内は、仕切壁252によって、シリンダヘッド3側(左側)とクランク軸9側(右側)とに仕切られる。
【0038】
仕切壁252は、冷却水通路251C内をシリンダヘッド3側(左側)とクランク軸9側(右側)とに仕切る。仕切壁252は、板状の部材で構成され、冷却水通路251C内に前後方向(クランク軸9方向)に設けられる。本実施形態では、仕切壁252は、間座本体251のラジエータ取付面251A及びシリンダブロック取付面251Bに対して垂直に設けられる。また、本実施形態では、仕切壁252は、ラジエータ取付間座25に形成される。つまり、仕切壁252は、間座本体251(ラジエータ取付間座25)に一体的に形成される。
【0039】
ここで、ラジエータ側開口部251Caは、仕切壁252により、シリンダヘッド3側の開口面積とクランク軸9側の開口面積とが略均等となるように形成される。なお、ラジエータ側開口部251Caにおけるシリンダヘッド3側とクランク軸9側との面積比は、5:5に設定することが望ましい。また、シリンダブロック側開口部251Cbは、仕切壁252により、クランク軸9側の開口面積の方がシリンダヘッド3側の開口面積よりも小さくなるように形成される。なお、シリンダブロック側開口部251Cbにおけるシリンダヘッド3側とクランク軸9側との面積比は、6:4〜8:2の範囲で設定することが望ましい。
【0040】
なお、本実施形態では、仕切壁252がラジエータ取付間座25に形成されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、仕切部材は、シリンダブロックの上部や、ラジエータの下部に形成されてもよい。これにより、ラジエータ取付間座25を設けなくてすむため、コスト低減を図ることができる。また、ラジエータ取付間座25の仕切壁252に加えて、シリンダブロック2の上部やラジエータ13の下部に仕切壁を形成することにより、高温の冷却水と低温の冷却水の分離性能を向上させて、エンジンの冷却効率をさらに向上させることができる。
【0041】
また、本実施形態では、仕切壁252は、間座本体251のラジエータ取付面251A及びシリンダブロック取付面251Bに対して垂直に設けられるが、本発明はこれに限定されない。例えば、ラジエータ側開口部251Ca及びシリンダブロック側開口部251Cbの開口位置(オフセット量)や開口面積等に応じて、ラジエータ取付面251A及びシリンダブロック取付面251Bに対して傾斜して設けてもよい。
【0042】
次に、冷却水通路251Cを介してシリンダブロック2とラジエータ13との間で自然対流する冷却水の流れについて、図5により説明する。なお、図5における黒塗り矢印は、冷却水の流れを示す。また、以下の説明では、多数の冷却水チューブ28のうち、仕切壁252よりもシリンダヘッド3側(左側)のものを「シリンダヘッド側冷却水チューブ281」、仕切壁252よりもクランク軸9側(右側)のものを「クランク軸側冷却水チューブ282」という。
【0043】
先ず、ウォータージャケット18内の冷却水は、シリンダヘッド3やライナ17等で熱せられて高温になる。そして、高温の冷却水は、高温化により比重が小さくなるため、ラジエータ13に向かって上昇する。
【0044】
そして、上昇する高温の冷却水は、シリンダブロック側開口部251Cbにおいて仕切壁252よりもシリンダヘッド3側(左側)から、冷却水通路251C内に流入する。これは、ウォータージャケット18内の冷却水のうち、燃焼室21に近接するシリンダヘッド3側の冷却水が、特に高温になって上昇するためである。
【0045】
そして、高温の冷却水は、冷却水通路251C内を上昇して、ラジエータ側開口部251Caからシリンダヘッド側冷却水チューブ281内に流入する。
【0046】
その後、高温の冷却水は、シリンダヘッド側冷却水チューブ281内を上昇して、アッパータンク27内に流入する。
【0047】
次に、アッパータンク27内の冷却水は、冷却ファン14の冷却風によって冷却されて低温になる。そして、低温の冷却水は、低温化により比重が大きくなるため下降する。
【0048】
そして、低温の冷却水は、クランク軸側冷却水チューブ282内に流入して、クランク軸側冷却水チューブ282内を下降する。
【0049】
そして、低温の冷却水は、ラジエータ側開口部251Caにおいて仕切壁252よりもクランク軸9側(右側)から、冷却水通路251C内に流入する。
【0050】
その後、低温の冷却水は、冷却水通路251C内を下降して、シリンダブロック側開口部251Cbからウォータージャケット18内に流入する。
【0051】
こうして、仕切壁252を挟んでシリンダヘッド3側では、高温の冷却水が上昇する一方、クランク軸9側では、低温の冷却水が下降することにより、冷却水が自然対流する。
【0052】
以上のように、シリンダブロック2と、シリンダブロック2に回転可能に軸支されるクランク軸9と、シリンダブロック2の左側部に水平方向に設けられるとともに、クランク軸9とコネクティングロッド19を介して連接されるピストン20が水平方向に往復運動可能に内設されるライナ17と、シリンダブロック2の左側面に設けられるシリンダヘッド3と、シリンダブロック2の上側にてライナ17の上方に設けられるラジエータ13と、シリンダブロック2とラジエータ13との間に形成される冷却水通路251Cと、を具備し、冷却水通路251Cを介してシリンダブロック2とラジエータ13との間で、冷却水を自然対流させるエンジン1において、冷却水通路251C内をシリンダヘッド3側とクランク軸9側とに仕切る仕切部材である仕切壁252を具備するものである。
【0053】
このような構成により、シリンダヘッド3やライナ17等で熱せられてラジエータ13に向かって上昇する高温の冷却水と、ラジエータ13で冷却されて下降する低温の冷却水とが、冷却水通路251C内で仕切壁252によって分離される。このため、冷却水通路251C内で高温の冷却水と低温の冷却水とが混ざり合うのが低減されて、両冷却水の温度差が維持される。これにより、冷却水の自然対流を促進させて、エンジン1の冷却効率を向上させることができる。
【0054】
そして、冷却水通路251Cは、その上端部(ラジエータ13側の端部)にラジエータ側開口部251Caが形成され、ラジエータ側開口部251Caは、仕切壁252により、シリンダヘッド3側の開口面積とクランク軸9側の開口面積とが略均等となるように形成されるものである。
【0055】
このような構成により、ラジエータ13内が高温の冷却水が上昇する側と低温の冷却水が下降する側とに概ね等しく分かれる。このため、ラジエータ13内において、冷却水が上昇する側の流速と冷却水が下降する側の流速とが概ね等しくなることから、冷却水が滞留することなく円滑に流れる。これにより、冷却水の自然対流を促進させて、エンジン1の冷却効率をさらに向上させることができる。
【0056】
また、冷却水通路251Cは、その下端部(シリンダブロック2側の端部)にシリンダブロック側開口部251Cbが形成され、シリンダブロック側開口部251Cbは、仕切壁252により、クランク軸9側の開口面積の方がシリンダヘッド3側の開口面積よりも小さくなるように形成されるものである。
【0057】
このような構成により、シリンダブロック側開口部251Cbのクランク軸9側から流れ出る冷却水の流速が大きくなる。このため、ラジエータ13で冷却された下降する低温の冷却水が、シリンダブロック側開口部251Cbのクランク軸9側からシリンダブロック2内に素速く流入する。これにより、冷却水の自然対流を促進させて、エンジン1の冷却効率をさらに向上させることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 エンジン
2 シリンダブロック
3 シリンダヘッド
9 クランク軸
13 ラジエータ
17 ライナ
19 コネクティングロッド
20 ピストン
251C 冷却水通路
251Ca ラジエータ側開口部
251Cb シリンダブロック側開口部
252 仕切壁(仕切部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダブロックと、
前記シリンダブロックに回転可能に軸支されるクランク軸と、
前記シリンダブロックの一側部に水平方向に設けられると共に、前記クランク軸とコネクティングロッドを介して連接されるピストンが水平方向に往復運動可能に内設されるライナと、
前記シリンダブロックの一側に設けられるシリンダヘッドと、
前記シリンダブロックの上側にて前記ライナの上方に設けられるラジエータと、
前記シリンダブロックと前記ラジエータとの間に形成される冷却水通路と、を具備し、
前記冷却水通路を介して前記シリンダブロックと前記ラジエータとの間で、冷却水を自然対流させるエンジンにおいて、
前記冷却水通路内を前記シリンダヘッド側と前記クランク軸側とに仕切る仕切部材を具備することを特徴とするエンジン。
【請求項2】
前記冷却水通路は、その前記ラジエータ側の端部にラジエータ側開口部が形成され、
前記ラジエータ側開口部は、前記仕切部材により、前記シリンダヘッド側の開口面積と前記クランク軸側の開口面積とが略均等となるように形成されることを特徴とする請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記冷却水通路は、その前記シリンダブロック側の端部に前記シリンダブロック側開口部が形成され、
前記シリンダブロック側開口部は、前記仕切部材により、前記クランク軸側の開口面積の方が前記シリンダヘッド側の開口面積よりも小さくなるように形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−24168(P2013−24168A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161116(P2011−161116)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)