説明

エンジン

【課題】リングギヤの回転による送風でエンジン出力が低下するのを防止することができるエンジンを提供する。
【解決手段】クランクケース1の後側にフライホイール2を配置し、このフライホイールにリングギヤ3を取り付け、エンジン始動時には、リングギヤにスタータモータ4のピニオンギヤ5を噛み合せるようにしたエンジンにおいて、リングギヤの回転6による送風7の下流側に位置するエンジン横側方にエアクリーナ8を配置するに当たり、エンジン横側壁17に遮風板9を設け、リングギヤから上記エンジン横側方への送風を遮風板で遮る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに関し、詳しくは、リングギヤの回転による送風でエンジン出力が低下するのを防止することができるエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンとして、クランクケースの後側にフライホイールを配置し、このフライホイールにリングギヤを取り付け、エンジン始動時には、リングギヤにスタータモータのピニオンギヤを噛み合せるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
この種のエンジンによれば、エンジン始動時にはスタータモータにより速やかに始動を行うことができる利点がある。
しかし、この従来技術では、リングギヤの回転による送風の下流側に位置するエンジン横側方にエアクリーナを配置する場合には、リングギヤから上記エンジン横側方への送風を遮る手段がないため、問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−73761号公報(図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
《問題》 リングギヤの回転による送風でエンジン出力が低下するおそれがある。
リングギヤの回転による送風の下流側に位置するエンジン横側方にエアクリーナを配置する場合には、リングギヤから上記エンジン横側方への送風を遮る手段がないため、リングギヤ周辺の熱くなった空気がエアクリーナ側に送られ、吸気の密度が低下する。このため、リングギヤの回転による送風でエンジン出力が低下するおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、リングギヤの回転による送風でエンジン出力が低下するのを防止することができるエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明の発明特定事項は、次の通りである。
図1、図2、図4に例示するように、クランクケース(1)の後側にフライホイール(2)を配置し、このフライホイール(2)にリングギヤ(3)を取り付け、エンジン始動時には、リングギヤ(3)にスタータモータ(4)のピニオンギヤ(5)を噛み合せるようにしたエンジンにおいて、
図1に例示するように、リングギヤ(3)の回転(6)による送風(7)の下流側に位置するエンジン横側方にエアクリーナ(8)を配置するに当たり、
エンジン横側壁(17)に遮風板(9)を設け、リングギヤ(3)から上記エンジン横側方への送風(7)を遮風板(9)で遮る、ことを特徴とするエンジン。
【発明の効果】
【0007】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果》 リングギヤの回転による送風でエンジン出力が低下するのを防止することができる。
図1に例示するように、リングギヤ(3)の回転(6)による送風(7)の下流側に位置するエンジン横側方にエアクリーナ(8)を配置するに当たり、エンジン横側壁(17)に遮風板(9)を設け、リングギヤ(3)から上記エンジン横側方への送風(7)を遮風板(9)で遮るので、リングギヤ(3)周辺の熱くなった空気がエアクリーナ(8)側に送られる不具合が抑制され、吸気の密度が低下が抑制される。このため、リングギヤ(3)の回転(6)による送風(7)でエンジン出力が低下するのを防止することができる。
【0008】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 専用のエンジン吊り上げ用金具が不要になる。
図2、図3に例示するように、遮風板(9)にエンジン吊り上げ具の係合孔(10)を設けるので、係合孔(10)にクレーンのフック等のエンジン吊り上げ具を係合させてエンジンを吊り上げることができ、専用のエンジン吊り上げ用金具が不要になる。
【0009】
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 エンジン吊り上げ時に、ハーネスやコネクタの損傷を防止することができる。
図2に例示するように、遮風板(9)に電子部品(11)(12)のハーネス(13)(14)とコネクタ(15)とを取り付けるので、電子部品(11)(12)のハーネス(13)(14)とコネクタ(15)が遮風板(9)の所定位置に位置決めされ、エンジン吊り上げ時に、これらがクレーンのフック等のエンジン吊り上げ具に引っ掛かって損傷する不具合がなくなり、ハーネス(13)(14)とコネクタ(15)の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るエンジンの背面図である。
【図2】図1のエンジンの側面図である。
【図3】図1のエンジンで用いる遮風板の側面図である。
【図4】図1のエンジンの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1〜図4は本発明の実施形態に係るエンジンを説明する図であり、この実施形態では、電子燃料噴射式で立形水冷の直列2気筒火花点火式エンジンについて説明する。
【0012】
このエンジンの概要は、次の通りである。
図2に示すように、シリンダブロック(21)の上部にシリンダヘッド(22)を組み付け、シリンダヘッド(22)の上部にヘッドカバー(23)を組み付け、シリンダブロック(21)の前部に調時伝動ケース(24)を組み付け、シリンダブロック(21)の後部にフライホイール(2)を配置し、シリンダブロック(21)の下部にオイルパン(25)を組み付けている。
調時伝動ケース(24)の前部にはエンジン冷却ファン(16)を配置している。
フライホイール(2)の後方には、排気マフラ(20)を配置している。
図4に示すように、シリンダヘッド(22)の横一側にはスロットルボディ(25)を組み付け、スロットルボディ(25)に燃料インジェクタ(26)とエアクリーナ(8)を組み付け、シリンダヘッド(22)の他側には排気マニホルド(27)を組み付けている。
シリンダブロック(21)は、下側のクランクケース(1)と上側のシリンダ部の一体成型物である。
【0013】
図1、図2、図4に示すように、クランクケース(1)の後側にフライホイール(2)を配置し、このフライホイール(2)にリングギヤ(3)を取り付け、エンジン始動時には、リングギヤ(3)にスタータモータ(4)のピニオンギヤ(5)を噛み合せるようにしている。
図1に示すように、リングギヤ(3)の回転(6)による送風(7)の下流側に位置するエンジン横側方にエアクリーナ(8)を配置するに当たり、エンジン横側壁(17)に遮風板(9)を設け、リングギヤ(3)から上記エンジン横側方への送風(7)を遮風板(9)で遮る。
図2、図3に示すように、遮風板(9)にエンジン吊り上げ具の係合孔(10)を設ける。
図2に示すように、遮風板(9)に電子部品(11)(12)のハーネス(13)(14)とコネクタ(15)とを取り付ける。
【0014】
図1、図2、図4に示すように、遮風板(9)を取り付けるエンジン横側壁(17)は、シリンダヘッド(22)のエアクリーナ(8)側の横壁である。遮風板(9)は取付ボルト(18)でエンジン横側壁(17)に取り付けている。
図3に示すように、遮風板(9)は、中央部(29)から前側導出部(30)と後側導出部(31)とを導出し、中央部(29)の上部にコネクタ取付孔(32)を、下部に第3ハーネス取付孔(35)をそれぞれ設け、後側導出部(31)にエンジン吊り上げ具の係合孔(10)を設け、その後側に第1ハーネス取付孔(33)を設け、前側導出部(30)に第2ハーネス取付孔(34)を設けている。
遮風板(9)の下部には、前後一対の取付ボルト孔(36)(36)を配置している。
【0015】
図2に示すように、電子部品(11)(12)のうち、一方の電子部品(11)は、発電コイルであり、クランクケース(1)からフライホイール(2)内に後向きに突出させた突出部(37)に取り付けられ、フライホイール(2)内のロータ(図外)と対向し、ロータの回転で発電する。図2、図3に示すように、この発電コイル(11)の第1ハーネス(13)は第1ハーネスクランプ(38)で遮風板(9)に取り付けられている。第1ハーネスクランプ(38)は、第1ハーネス取付孔(33)に取り付けられる。第1ハーネス(13)の第1コネクタ(15)は、コネクタクランプ(39)で遮風板(9)に取り付けられている。コネクタクランプ(39)は、コネクタ取付孔(32)に取り付けられる。
【0016】
図2に示すように、第1コネクタ(15)には第2コネクタ(40)を接続し、この第2コネクタ(40)の第2ハーネス(41)は第2ハーネスクランプ(42)で遮風板(9)に取り付けられている。第2ハーネスクランプ(42)は、第2ハーネス取付孔(34)に取り付けられる。図2に示すように、第2ハーネス(41)は、整流回路(43)を介してバッテリ(46)に接続する。
【0017】
図2に示すように、電子部品(11)(12)のうち、他方の電子部品(12)は、点火コイルであり、シリンダヘッド(22)の後部に取り付けられ、点火プラグ(44)(44)に通電してスパークを発生させる。この点火コイル(12)の第3ハーネス(14)は第3ハーネスクランプ(47)で遮風板(9)に取り付けられている。図3に示すように、第3ハーネスクランプ(48)は、第3ハーネス取付孔(35)に取り付けられる。第3ハーネス(14)はエンジンECU(図外)を介してバッテリ(46)に接続する。エンジンECUは、エンジン電子制御ユニットの略称である。
【符号の説明】
【0018】
(1) クランクケース
(2) フライホイール
(3) リングギヤ
(4) スタータモータ
(5) ピニオンギヤ
(6) 回転
(7) 送風
(8) エアクリーナ
(9) 遮風板
(10) 係合孔
(11) 電子部品(発電コイル)
(12) 電子部品(点火コイル)
(13) (第1)ハーネス
(14) (第3)ハーネス
(15) (第1)コネクタ
(16) エンジン横側壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクケース(1)の後側にフライホイール(2)を配置し、このフライホイール(2)にリングギヤ(3)を取り付け、エンジン始動時には、リングギヤ(3)にスタータモータ(4)のピニオンギヤ(5)を噛み合せるようにしたエンジンにおいて、
リングギヤ(3)の回転(6)による送風(7)の下流側に位置するエンジン横側方にエアクリーナ(8)を配置するに当たり、
エンジン横側壁(17)に遮風板(9)を設け、リングギヤ(3)から上記エンジン横側方への送風(7)を遮風板(9)で遮る、ことを特徴とするエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載したエンジンにおいて、
遮風板(9)にエンジン吊り上げ具の係合孔(10)を設ける、ことを特徴とするエンジン。
【請求項3】
請求項2に記載したエンジンにおいて、
遮風板(9)に電子部品(11)(12)のハーネス(13)(14)とコネクタ(15)とを取り付ける、ことを特徴とするエンジン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−53544(P2013−53544A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191609(P2011−191609)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)