説明

エントランスユニットおよびエントランスユニットの製造方法

【課題】 建築物の玄関等の開口部にドア体とともに設けられるエントランスユニットを、インターホーンが取付けられるエントランスパネルを用いて構成するにあたり、該エントランスパネルにインターホーンの外部露出部品に対応した切欠き孔を形成し、該切欠き孔にエントランスパネル表面に付着しないように防錆塗装を施す。
【解決手段】 インターホーンの外部露出部品に対応した切欠き孔をエントランスパネルの表板表面から型抜き加工して形成し、表板表面の切欠き孔形成部位にシール材が被覆している状態で表板裏面から切欠き孔に防錆塗装を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の玄関等の開口部にドア体に隣接して設けられるエントランスユニットおよびエントランスユニットの製造方法の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、建築物の玄関等に設けられるドア体の戸先側には、照明、表札、インターホーン、新聞受け等の各種の玄関備品が装着された板状のエントランスユニットが設けられる。そこで従来、エントランスユニットにインターホーンを装着する場合、該インターホーンが取付けられた板材をエントランスユニットに形成した開口に組み込むようにしていた。
【0003】
ところでエントランスユニットは、多くの場合ドア体とのセットとして意匠性に優れたデザインが施され、これによって訪問者や居住者に対し良い印象を与えるよう工夫が凝らされているが、エントランスユニットにインターホーン取付け用の板材を組み込む場合、該板材をエントランスユニットの板面に積層するようにして組み込むため、板材自体がその板厚分、エントランスユニット板面から段差状に突出(あるいは後退)した状態で露出することになって、はっきりと外部から視認されてしまい、エントランスユニットの意匠性を損う要因になっていた。
【0004】
そこで、エントランスユニットの表板を補強するべく取付けられる裏板に開口を形成し、該開口から屋外側に露出する状態でインターホーンを組付ける一方、エントランスユニットの表板にはインターホーンのプッシュボタンやマイク、スピーカ等の屋外側に露出させる必要がある各種の露出部品の形状や位置に合わせて切欠き孔を形成したものとし、これによってインターホーン用の取り付け板がエントランスユニットの表板で覆蓋される状態となって表面から露出しないようにし、表板からはインターホーンの使用にあたって必要な各種の露出部品のみが外部から伺えるようにして意匠性が損なわれないようにしたものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−196115
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら前記特許文献1のものは、インターホーンの各種部品を表板から露出させるために表板に切り欠いた切欠き孔の切断面が無垢の状態のままとなって露出するため、ここから錆びが発生しやすいという問題がある。そこでこの切断面を塗装して防錆しようとしたときに、塗料が表板の表面にまで回って外観を損なうという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、屋外側の表板と屋内側の裏板とを一体化してエントランスパネルを構成し、前記裏板にインターホーンを装着してなるエントランスユニットにおいて、表板には、インターホーンとして外部に露出させる必要がある露出部品にそれぞれ対応した切欠き孔が形成され、裏板には、前記切欠き孔よりも大きい開口が形成されたものとするにあたり、表板は表面側から前記切欠き孔が打ち抜き加工されたものとし、さらに表板表面がシール材に被覆された状態で裏面側から少なくとも切断面に防錆塗装が施されたものであることを特徴とするエントランスユニットである。
請求項2の発明は、表板の打ち抜き加工は表面がシール材で被覆された状態で施され、該シール材で表面が被覆されたままの状態で防錆塗装が施されることを特徴とする請求項1記載のエントランスユニットである。
請求項3の発明は、表板と裏板とが一体化された状態で前記防錆塗装が施されたものであることを特徴とする請求項1または2記載のエントランスユニットである。
請求項4の発明は、屋外側の表板と屋内側の裏板とを一体化してエントランスパネルを構成し、前記裏板にインターホーンを装着してなるエントランスユニットにおいて、表板には、インターホーンとして外部に露出させる必要がある露出部品にそれぞれ対応した切欠き孔が形成され、裏板には、前記切欠き孔よりも大きい開口が形成されたものとするにあたり、表板の表面側から前記切欠き孔が打ち抜き加工を施した後、さらに表板表面がシール材に被覆された状態で裏面側から少なくとも切断面に防錆塗装を施したものであることを特徴とするエントランスユニットの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1または4の発明とすることにより、エントランスユニットの表板に形成される切欠き孔は、表面側から打ち抜き加工されて形成されることにより表面側にバリが発生することがなく、エントランスユニットの表面を美しく保つことが出来るとともに、該打ち抜き形成された切欠きは表板裏面側から防錆塗装が施されるため、打ち抜きによって生じたバリも含めて確実に防錆塗装されるとともに、表板表面にシール材が被覆された状態で防錆塗装が施されることにより、防錆塗料が表板の表面に回ってしまうことがなく、エントランスユニットの外観を損わない防錆塗装をおこなうことができる。
請求項2の発明とすることにより、打ち抜き加工時に表板表面を被覆しているシール材を、表板裏面側から施される防錆塗装に利用することができて、防錆塗装のために新たにシール材を被覆させる必要がない。
請求項3の発明とすることにより、インターホーン取付け部位の表板と裏板の防錆塗装を一度の塗装でおこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】エントランスユニットの正面図である。
【図2】エントランスユニットのX−X部分断面図である。
【図3】エントランスユニットのY−Y部分断面図である。
【図4】エントランスユニットのZ−Z部分断面図である。
【図5】エントランスユニットの組立て分解図である。
【図6】インターホーンの取付け部位の製造手順を示す説明図であって、(A)、(B)はそれぞれ切欠き孔、開口の型抜き加工を示す。
【図7】インターホーンの取付け部位の製造手順を示す説明図であって、(A)、(B)、(C)は表板と裏板の接着から切欠き孔、開口の吹付け塗装を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1はマンション等の建築物の玄関を構成する開口部に設けられる枠であって、該枠1の四周には、上、下、左縦、右縦の各枠2、3、4、5が一体的に設けられている。そして、図面視右側の右縦枠5には、上下方向複数個所(本実施の形態では三箇所)に設けられた蝶番6を介してドア体7が揺動自在に支持されている。ドア体7の戸先側には、ドア体7と対をなして開口部に設けられる板状のエントランスユニット8が上下一対のピボットヒンジ9、9aを介して左縦枠4に対し揺動自在に支持されている。
【0011】
左右縦枠4、5のあいだには上下各枠体2、3に上下端部が一体化される中間縦枠体10が設けられているが、該中間縦枠体10には、閉鎖姿勢となったエントランスユニット8の戸先縁部が当たる戸当り部10aが折曲形成されている。さらにエントランスユニット8の戸先縁部は、螺子部材11によって中間縦枠体10に螺子止めされており、これによってエントランスユニット8は通常時には開閉規制されているが、メンテナンス等によってエントランスユニット8を開閉する必要が生じた場合には、中間縦枠体10から該螺子部材11を外すことでエントランスユニット8が屋外側に向けて開姿勢となるように構成されている。尚、10bは戸当り音の消音をする消音材である。
【0012】
エントランスユニット8は、屋外側板材となるエントランスパネル13と、該エントランスパネル13の屋内側左右に設けられるパネル枠(力骨)14、14aとによって構成されるが、戸先側パネル枠14aには前述の螺子部材11が螺合するようになっている。エントランスパネル13は、化粧板である表板15と、該表板15の裏側に接着されて表板15を補強する鋼板である裏板16とからなるが、該エントランスパネル13には上側から下側に向けて照明灯17、表札18、インターホーン19、新聞受け20の各種玄関備品が取付けられていてエントランスユニット8を構成するようになっている。尚、インターホーン19の取付けについては後述するが、表板15および裏板16には、照明灯17、表札18、新聞受け20をそれぞれ屋内側から取付けるための螺子孔15a、16a、並びに照明灯17用の開口部15b、16bが形成されている。
【0013】
前記インターホーン19には、ケーシング21の屋外側面にプッシュボタン22、マイク23、電源表示ランプ24、スピーカ25が露出部品として装備されている。そして前記ケーシング21には裏板16の屋内側面に一体に植設された螺子(スタッドボルト)26が貫通し、ナット27を介して緊締することでインターホーン19が裏板16の屋内側面(裏面)16cに固着されるようになっている。そしてこの裏板16には、前記ケーシング屋外側面の露出部品装備部位全面を屋外側に露出するための開口28が形成されている一方、表板15には、個々の露出部品を外部に露出させるため各対応する位置に切欠き孔29a、29b、29c、29dが形成されている。
【0014】
次に、エントランスパネル13のインターホーン19取付け部位の製造手順を図6および図7に基づいて説明する。
エントランスパネル13の表板15には、予め表面(屋外側面)15cを保護するための保護シール30(本発明のシール材に相当する)が密着状に被覆しており、該保護シール30が表面15cを被覆している状態で表板15の表面15c側からプレス材31で型抜き加工をおこなうことで前記切欠き孔29a、29b、29c、29dを形成する(図6(A)参照)。同様にして、裏板16も表面側16dからの型抜き加工によって開口28を形成する(図6(B)参照)。次いでこの型抜き加工した表裏板15、16同士を面接着して一体化し、補強する(図7(A)、(B)参照)。しかる後、表板表面15cに保護シール30が被覆したままの状態で、裏板16の裏面16c側から塗装材吹付け器32によってインターホーン19取付け部位を吹付け塗装することで、裏板16の開口28周囲の裏面と、該開口28から覗いている表板15の裏面16dとが塗装されるが、さらに開口28および切欠き孔29a、29b、29c、29dの切断面33a、33bも塗装され、これによって切断面33a、33bの防錆処理がなされる。そしてこの場合、塗装したときの塗膜Tは表板15の表面15c側にも及ぶが、該表板15の表面15cは保護シール30で被覆されているため、運搬時の表板15の保護が図れるが、さらに、該保護シール30の表面が塗装されることになって、表板表面15cが塗装されてしまうことがない。その後、保護シール30を剥離することによって、表裏板15、16の切断面33a、33bには塗装による防錆処理が施されてはいるが、表板表面15cには塗装がはみ出ることがないエントランスパネル13を製造できるようになっている。
尚、このような防錆塗装は、前記裏板16に形成の螺子孔部位15a、16aや照明灯取付け用開口15b、16b部位にも施すことができる。
【0015】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、エントランスパネル13を構成する裏板16にインターホーン19を取付け、表板15にはインターホーン19として外部に露出させる必要があるプッシュボタン22、マイク23、電源表示ランプ24、スピーカ25等の露出部品に対応した切欠き孔29a、29b、29c、29dが形成され、裏板16には、前記切欠き孔29よりも大きい開口28が形成されたものとして、エントランスパネル13の表面からインターホーン取付け用板材が段差状の状態で露出することがないようにして意匠性を高めたものでありながら、前記表板15に形成の切欠き孔29は、表板15の表側から打ち抜かれたものであるため、バリ34が裏面15dに突出したものとなってバリ取りをする手間が省け、しかも切断面33a、33bは塗装が施されていて防錆機能を備えている。しかもこの防錆のための塗装は、表板表面15cが保護シール30で被覆された状態で裏面側からなされるので、表板表面15cに塗料が直接付着することがない状態で表板裏面側に突出するバリ34の部分も含めた状態での切断面33bの塗装ができ、切断面33bが錆びてしまうことを防止できることになって、エントランスパネル13の表面が美しく保たれたエントランスユニット8を提供することができる。
【0016】
しかもこのものでは、表板15と裏板16とを一体化した状態で塗装することになるから、表板15に形成される切欠き孔29と、裏板16に形成される開口28との各切断面33a、33bを同時に防錆塗装できることになって効率が良い。
【0017】
尚、本実施の形態においては、保護シール30が予め表板15の表面15cを被覆しているものに型抜きおよび防錆塗装を施しているが、これに限定されるものではなく、保護シール30の被覆がない状態で型抜き加工をおこない、しかる後、表板表面15cに形成された切欠き孔29を含めて表板表面15cにシール材を貼着し、この状態で裏側から防錆塗装を施すように構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、建築物の開口部にドア体とともに設けられるエントランスユニットの分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0019】
8 エントランスユニット
13 エントランスパネル
15 表板
15c 表面
16 裏板
16c 裏面
19 インターホーン
28 開口
29a〜29d 切欠き孔
30 保護シール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外側の表板と屋内側の裏板とを一体化してエントランスパネルを構成し、前記裏板にインターホーンを装着してなるエントランスユニットにおいて、
表板には、インターホーンとして外部に露出させる必要がある露出部品にそれぞれ対応した切欠き孔が形成され、裏板には、前記切欠き孔よりも大きい開口が形成されたものとするにあたり、
表板は表面側から前記切欠き孔が打ち抜き加工されたものとし、さらに表板表面がシール材に被覆された状態で裏面側から少なくとも切断面に防錆塗装が施されたものであることを特徴とするエントランスユニット。
【請求項2】
表板の打ち抜き加工は表面がシール材で被覆された状態で施され、該シール材で表面が被覆されたままの状態で防錆塗装が施されることを特徴とする請求項1記載のエントランスユニット。
【請求項3】
表板と裏板とが一体化された状態で前記防錆塗装が施されたものであることを特徴とする請求項1または2記載のエントランスユニット。
【請求項4】
屋外側の表板と屋内側の裏板とを一体化してエントランスパネルを構成し、前記裏板にインターホーンを装着してなるエントランスユニットにおいて、
表板には、インターホーンとして外部に露出させる必要がある露出部品にそれぞれ対応した切欠き孔が形成され、裏板には、前記切欠き孔よりも大きい開口が形成されたものとするにあたり、
表板の表面側から前記切欠き孔が打ち抜き加工を施した後、さらに表板表面がシール材に被覆された状態で裏面側から少なくとも切断面に防錆塗装を施したものであることを特徴とするエントランスユニットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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