説明

エンドエフェクタを位置決めするための伸縮アセンブリを含むロボット

【課題】エンドエフェクタを位置決めするための伸縮アセンブリを含むロボットを提供すること。
【解決手段】ロボットが、アクチュエータアセンブリと、アクチュエータアセンブリから片持ちされた、第1および第2の平行の伸縮親ねじアセンブリと、親ねじアセンブリの端部によって支持されたエンドエフェクタとを含む。アクチュエータアセンブリは、各親ねじアセンブリを独立に展開および収縮させる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
航空機の組立て中には、様々な構造の両側で、締結作業が同時進行で実施される。締結作業は、構造の片側での穿孔、座ぐり、および締結具挿入と、その構造の反対側で各挿入済み締結具の端部を終端することを含むことがあり得る。
【0002】
航空機の翼箱での締結作業を考えてみる。穿孔、座ぐり、および締結具挿入は、翼箱の外側のロボットシステムによって実施される。スリーブおよびナットの配置は、翼箱の内側で手作業によって実施される。人が小さなアクセスポートを介して翼箱に入り、翼箱の内側で横たわった状態で、スリーブおよびナットの配置を手工具で実施する。数十万個程度もの締結具が一般的な航空機の翼に設置および終端される。
【0003】
手作業をなくし、翼箱の両側で締結作業を完全に自動化することが非常に望ましいはずである。しかし、ナットをボルトのねじの上に配置することは人間にとって単純な仕事であるかもしれないが、ロボットにとってはそれほど単純ではない。ボルトの上でナットを正確に位置決めし配向することは、複雑な仕事である。
【0004】
この仕事は、翼箱の内側の空間の制約により、さらに複雑になる。翼箱は、先端で高さわずか数インチの狭い空間を形成する(翼箱の例として図4を参照)。さらに、この狭い空間は、アクセスポートを介してのみアクセス可能である。ロボットは、アクセスポートを介して狭い空間に入り、狭い空間の内側でストリンガを越えて進み、挿入された締結具の端部を突き止め、エンドエフェクタを位置決めし、スリーブおよびナットを各締結具端部の上に配置しなければならないことになる。
【0005】
航空機の公差は非常に厳しいので、この仕事はさらに複雑になる。エンドエフェクタは、一般に40〜50ポンドの重量があるので、この仕事はさらに複雑になる。狭い空間の内側のロボットがその仕事を、翼箱の外側のロボットの仕事と同期させなければならないので、この仕事はさらに複雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7937817号
【特許文献2】米国特許出願第12/117,153号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書の一実施形態によれば、ロボットが、アクチュエータアセンブリと、アクチュエータアセンブリから片持ちされた、第1および第2の平行の伸縮親ねじアセンブリと、伸縮アセンブリの端部に結合され支持されたエンドエフェクタとを備える。アクチュエータアセンブリは、各伸縮アセンブリを独立に展開および収縮させる。
【0008】
本明細書の他の実施形態によれば、システムが、限られた空間を有する構造上で製造作業を実施することができる。このシステムは、その構造上で1組の製造仕事を実施するために限られた空間の外側で動作可能な第1のロボットと、補完する1組の製造仕事をその構造上で実施するために限られた空間内で動作可能な第2のロボットとを備える。第2のロボットは、アクチュエータアセンブリと、アクチュエータアセンブリから片持ちされた、第1および第2の平行の伸縮親ねじアセンブリとを含む。各伸縮アセンブリの端部は、エンドエフェクタに枢止される。さらに、第2のロボットは、各伸縮アセンブリ端部を収縮された位置と展開された位置との間で独立に移動させるようにアクチュエータに指令するためのコントローラを含む。
【0009】
本明細書の他の実施形態によれば、部分的に壁によって画定された限られた空間内での製造方法が、エンドエフェクタを限られた空間内に移動するステップと、エンドエフェクタが限られた空間内の目標に対して所望の向きを達成するまでエンドエフェクタを並進および回転させるように、第1および第2の平行の伸縮親ねじアセンブリを使用するステップと、限られた空間の外側で金属板を使用し、エンドエフェクタを壁に接して磁気的に締め付けるステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】エンドエフェクタを含むロボットの一実施形態の図である。
【図2】エンドエフェクタを含むロボットの一実施形態の図である。
【図3a】ロボットを動作させる方法の図である。
【図3b】ロボットを動作させる方法の図である。
【図3c】ロボットを動作させる方法の図である。
【図4】航空機翼箱のウィングベイの図である。
【図5a】翼箱で締結作業を実施するための、エンドエフェクタを含むロボットの一実施形態の図である。
【図5b】翼箱で締結作業を実施するための、エンドエフェクタを含むロボットの一実施形態の図である。
【図5c】翼箱で締結作業を実施するための、エンドエフェクタを含むロボットの一実施形態の図である。
【図6】翼箱で締結作業を実施するためのロボットシステムの図である。
【図7】翼箱を製造する方法の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1および図2を参照する。ロボット110は、アクチュエータアセンブリ120と、アクチュエータアセンブリ120から片持ちされた、第1および第2の平行の伸縮親ねじアセンブリ130、140と、親ねじアセンブリ130、140の端部132、142によって支持されたエンドエフェクタ150とを含む。
【0012】
アクチュエータアセンブリ120は、各親ねじアセンブリ130、140を独立に展開および収縮させる。アクチュエータアセンブリ120に対してXYZ座標系を考えてみる。親ねじアセンブリ130または親ねじアセンブリ140の収縮中には、端部132または端部142がX軸に沿って、アクチュエータアセンブリ120に向かって移動する。親ねじアセンブリ130または親ねじアセンブリ140の展開中には、端部132または端部142がX軸に沿って反対方向に、アクチュエータアセンブリ120から離れるように移動する。
【0013】
端部132、142は、回転しないように制約される。したがって、端部132、142は、X軸周りで回転しない。
【0014】
各伸縮アセンブリ130、140は、複数の親ねじを含む。図1および図2では、第1の伸縮アセンブリ130の2本の親ねじ134、136が見えており、第2の伸縮アセンブリ140の2本の親ねじ144、146が見える。
【0015】
いくつかの実施形態では、各伸縮アセンブリ130、140が、これらの2本の見える親ねじだけを含む。第1の伸縮アセンブリ130を考えてみる。第2の親ねじ134は、回転することができるようにアクチュエータアセンブリのハウジング122内で保持される。第2の親ねじ134は、内ねじ付きの孔を有する。第1の親ねじ136は、第2の親ねじ134のねじ付き孔と係合する外ねじを有する。第2の親ねじ134をある方向に回転させると、第1の親ねじ136が孔内に移動し収縮する(外部親ねじ136の端部132が回転しないように制約されているため)。第2の親ねじ134を反対方向に回転させると、第1の親ねじ136が孔から外に移動し展開する。第2の親ねじアセンブリ140も同様に構築され、第2の親ねじ144がハウジング122内で回転するように保持され、第1の親ねじ146が、第2の親ねじ144の内ねじ付き孔と係合する外ねじを有する。
【0016】
他の実施形態では、各伸縮アセンブリ130、140が第3の親ねじをさらに含む。これらの実施形態では、第3の親ねじは、ハウジング122内に隠される。各伸縮アセンブリ130、140の第1の親ねじと第3の親ねじは非回転可能であり、各伸縮アセンブリの第2の親ねじは回転可能である。3つの親ねじアセンブリが図5a〜5cに示されており、下記でより詳細に述べる。
【0017】
親ねじを使用することの、他の手段(運動中に案内をするための直線レール、および運動を生じさせるためのアクチュエータなど)に優る利点は、親ねじがエンドエフェクタ150を移動させるだけでなく、直線案内をも実現することである。さらに、親ねじは、エンドエフェクタ150を支持することに起因する荷重(たとえば軸方向荷重および曲げ荷重)を担持する。
【0018】
各親ねじ界面は、循環玉軸受ブッシングを有することができる。たとえば、2つの親ねじアセンブリでは、第1の親ねじ136と第2の親ねじ134の界面に循環玉軸受ブッシングが位置してもよく、別の循環玉軸受ブッシングが、第1の親ねじ146と第2の親ねじ144の界面に位置してもよい。軸受の内側の玉には、バックラッシュをなくするように予圧がかけられる。そのようなブッシングは、エンドエフェクタ150の正確な運動および配置を実施することができる安定かつ剛直な構造をもたらす。
【0019】
アクチュエータアセンブリ120は、ハウジング122内に、各親ねじアセンブリ130、140を独立に展開および収縮させるための手段を含む。いくつかの実施形態では、この手段は、第2の親ねじ134を回転させるための第1の電気モータ124および駆動ベルト126と、第2の親ねじ144を回転させるための第2の電気モータ128および駆動ベルト129とを含むことができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、第1の親ねじ136、146の端部132、142は、エンドエフェクタ150に直接枢止されてもよい。他の実施形態では、第1の親ねじ136、146の端部132、142は、界面板160によってエンドエフェクタ150に結合される。図1および図2に示されているように、第1の親ねじ136の端部132は、Z軸周りで回転を可能にする枢動継手162によって界面板160に結合され、第1の親ねじ146の端部142は、Z軸周りで回転を可能にする枢動継手164によって界面板160に結合される。
【0021】
界面板160は、追加の自由度を使用可能にすることができる。たとえば、関節によりエンドエフェクタ150がX軸周りで枢動することができる。
【0022】
さらに、ロボット110は、電子インターフェース170と、電気インターフェース170を介してアクチュエータアセンブリ120と通信するためのコントローラ180とを含む。コントローラ180は、伸縮アセンブリ130、140の端部132、142を移動させるようにアクチュエータアセンブリ120に指令するためのコマンドを生成する。いくつかの実施形態では、これらのコマンドは、モータ124、128に第2の親ねじ134、144を回転させ、それにより端部132、142がX軸に沿って移動する。内親ねじ134、144の相対角速度を制御し、エンドエフェクタ150をX軸に沿って並進させ、エンドエフェクタ150をZ軸周りで回転させる。継手/コントローラ間で通信は必要とされない。
【0023】
図3a〜3cは、エンドエフェクタ150がどのように配向されるかを示す。図3aを参照すると、第1の伸縮アセンブリ130の第2の親ねじ134(図示せず)は回転されず、それにより第1の親ねじ136は、静止して保たれる。同時に、第2の伸縮アセンブリ140の第2の親ねじ144(図示せず)は定速で回転され、第1の親ねじ146を距離ΔIだけ収縮させる。その結果、界面板160は、Z軸周りで時計方向に枢動する。
【0024】
図3bを参照すると、第2の伸縮アセンブリ140の第2の親ねじ144(図示せず)は回転されず、それにより第1の親ねじ146は、静止して保たれる。同時に、第1の伸縮アセンブリ130の第2の親ねじ134(図示せず)が回転され、第1の親ねじ136を距離ΔIだけ収縮させる。その結果、界面板160は、Z軸周りで反時計方向に枢動する。
【0025】
図3cを参照すると、第2の親ねじ134、144(図示せず)が反対方向に同じ速度で回転される。第1の伸縮アセンブリ130の第1の親ねじ136は距離ΔIだけ展開し、一方、第2の伸縮アセンブリ140の第1の親ねじ146は、同じ距離ΔIだけ収縮する。その結果、界面板160は、Z軸周りで回転する。
【0026】
界面板160の他の運動を行うことができる。第2の親ねじ134、144が同時に同じ方向に回転され、回転速度が同じである場合には、並進が行われることになるだけである。回転速度が異なる場合、並進と回転が共に引き起こされることになる。
【0027】
本明細書のロボットは、どの特定の作業にも限定されない。しかし、出願人にとって特に関心のある1つの主題には、航空機翼箱での締結作業が含まれる。締結作業は、翼箱の外側での穿孔、座ぐり、および締結具挿入と、翼箱の内側での締結具終端とを含むことがあり得る。図1および図2のロボット110は、翼箱の内側での締結具終端を実施するように適合させることができる。
【0028】
次に、翼箱のウィングベイ410を示す図4を参照する(翼箱は複数のウィングベイ410を有する)。ウィングベイ410は、上部外板420および下部外板430と、外板420、430にわたって延びるストリンガ440とを含む。アクセスポート450が下部外板430内に位置する。アクセスポート450は、限られた内部空間に通じる。締結作業460は、リブ470、480を上部外板420および下部外板430に締結することを含む。
【0029】
次に、翼箱の限られた空間内で、スリーブおよびナットの配置など締結作業を実施するためのロボット510を示す図5aおよび図5bを参照する。ロボット510(図1〜2のロボット110に基づくもの)は、アクチュエータアセンブリ520と、第1および第2の伸縮アセンブリ530、540と、エンドエフェクタ550とを含む。エンドエフェクタ550は、ナット/スリーブ設置工具552と、ビジョンシステム(図示せず)と、ナット/スリーブ設置工具552およびビジョンシステムがロボットインターフェース570と通信することを可能にする電子インターフェース554とを備える。エンドエフェクタ550を翼箱外板に接して締め付けるために使用されるクランピングブロック556(たとえば、鋼板)がエンドエフェクタ550に着設される。
【0030】
第1の伸縮アセンブリ530は、第3の親ねじ532、第2の親ねじ534、および第1の親ねじ536を含む。第3の親ねじ532は、回転しないようにアクチュエータアセンブリ520のハウジング522内で固定される。
【0031】
いくつかの実施形態では、第3の親ねじ532は、ハウジング522内で押し嵌めされてもよい。他の実施形態では、第3の親ねじ532は、「柔軟な」界面(たとえば、ゴム)によってハウジング522内に組み立て、Z軸周りで親ねじ532の何らかの回転を可能にしてもよい。この回転は、Z軸周りでの界面板の回転中に、界面板560での第1の親ねじ536と第1の親ねじ546との間の距離が縮小され、一方、ハウジング522の端部での親ねじ532と親ねじ542との距離が一定のままであるので、有益である。
【0032】
第3の親ねじ532は、内ねじ付きの孔を有する。第2の親ねじ534は、第3の親ねじ532のねじ付き孔と係合する外ねじを有する。第2の親ねじ534は、ある方向に回転されたとき孔内に移動し収縮する。第2の親ねじ534は、反対方向に回転されたとき孔から外に移動し展開する。
【0033】
第2の親ねじ534は、内ねじ付きの孔を有する。第1の親ねじ536は、第2の親ねじ534のねじ付き孔と係合する外ねじを有する。第2の親ねじ534がある方向に回転されたとき、第1の親ねじ536は孔内に移動し収縮する。第2の親ねじ534が反対方向に回転されたとき、第1の親ねじ536は孔から外に移動し展開する。
【0034】
この3本親ねじ設計は、(2本親ねじ設計より)小さなパッケージでより長い行程を実現する。また、この3本親ねじ設計は、(2本親ねじ設計と異なり)第3の親ねじ532がハウジング522内で回転しないため、より単純である。
【0035】
図5bおよび図5cに示されているように、すべての親ねじ界面が循環玉軸受ブッシングを有することができる。したがって、第1の循環玉軸受ブッシング533が第3の親ねじ532と第2の親ねじ534の界面に位置してもよく、別の循環玉軸受ブッシング535が第2の親ねじ534と第1の親ねじ536の界面に位置してもよい。軸受の内側の玉には、バックラッシュをなくするように予圧がかけられる。これらのブッシング533、535は、エンドエフェクタ550の正確な運動および配置を実施することができる安定かつ剛直な構造をもたらす。
【0036】
第2の親ねじアセンブリ540も同様に構築される。第3の親ねじ542はハウジング522内で非回転可能であり、各伸縮アセンブリの第2の親ねじは回転可能であり、第2の親ねじ544は、第3の親ねじ542の内ねじ付き孔と係合する外ねじを有し、第1の親ねじ546は、第2の親ねじ544の内ねじ付き孔と係合する外ねじを有する。第1の親ねじ546の端部は、界面板560で枢止される。第2の伸縮アセンブリ540の各親ねじ界面は、循環玉軸受ブッシング543、545を有することができる。
【0037】
第1の親ねじ536、546の端部は、界面板560に枢止される。界面板560は、継手を介してエンドエフェクタ550に結合される。
【0038】
アクチュエータアセンブリ520は、第1の親ねじアセンブリ530の第2の親ねじ534を回転させるために第1のモータ524およびシャフト525を含む。さらに、アクチュエータアセンブリ520は、第2の親ねじアセンブリ540の第2の親ねじ544を回転させるために第2のモータ526およびシャフト527を含む。
【0039】
次に、翼箱400で締結作業を実施するためのロボットシステム610を示す図6を参照する。ロボットシステム610は、翼箱400の限られた空間402内でスリーブおよびナットの配置を実施するための内部ロボット510を含む。伸縮アセンブリ530、540は、翼箱400の隅部に達するのに十分な伸びを有し、アクチュエータアセンブリ520は、伸縮アセンブリ530、540を駆動するのに十分な動力を有する。
【0040】
スタンド620が内部ロボット510を支持し、その結果、伸縮アセンブリ530、540は、スタンド620の長手軸Lから直交方向に延びることになる。スタンド620の高さは、内部ロボット510を翼箱400のアクセスポート450を介して上昇させ、限られた空間402内に入れるために、長手軸Lに沿って調整可能である。スタンド620は、ロボット510が長手軸L周りで回転することを可能にする。
【0041】
さらに、ロボットシステム610は、外部エンドエフェクタ640を担持する外部ロボット630を含む。外部エンドエフェクタ640は、穿孔、座ぐり、および締結具挿入を実施するための工具を備える。また、外部エンドエフェクタ640は、ビジョンシステムおよび強力電磁石を担持することができる。締結作業の一部として、強力電磁石には、外板の反対側にあるエンドエフェクタ550上のクランピングブロック556を引き付けるように給電することができる。
【0042】
ロボットシステム610は、外部ロボット630を翼箱400の外側に沿って移動するための手段(図示せず)をさらに含む。そのような手段は、それだけには限らないがガントリ、足場、フィーチャリング(featuring)、および移動カートを含むことができる。
【0043】
翼箱を製造する方法を示す図7をさらに参照する。ブロック710では、翼箱がプリアセンブリされる。プリアセンブリ中には、翼箱部品(たとえば、桁、外板、およびリブ)のフェイング(すなわち、重なり合い)表面をシーラントで覆い、共に押し付けることができる。シーラントはフェイング表面間の間隙をなくし、バリ無し穿孔を容易にする。次いで、翼箱の共に押し付けられた部品を、2011年5月10日に発行された譲受人の米国特許第7937817号に開示されている計装締結具(instrumented fastener)で(一時的または恒久的に)締結することができる。一実施形態では、計装締結具は、両方向に光ビーコンを生成するように構成された1つまたは複数の光源(たとえば、発光ダイオード)を含む。計装締結具に関する情報(たとえば、締結具番号)が光ビーコンに符号化されてもよい。
【0044】
ブロック720では、内部ロボット510がスタンド620上で位置決めされ、伸縮アーム530、540は完全に収縮された位置にある。ブロック730では、スタンド620が内部ロボット510を、アクセスポート450を介して揚げ、ウィングベイの限られた空間402内に入れる。内部ロボット510は、アセンブリ530、540およびエンドエフェクタ550がどのストリンガにも当たることなく延びることができる高さに揚げられる。
【0045】
ブロック740では、内部エンドエフェクタ550および外部エンドエフェクタ640が、目標締結具の場所の上で位置決めされる。外部ロボット630が外部エンドエフェクタ640を位置決めする。内部ロボット510は、内部エンドエフェクタ550が目標の場所の上で適正な位置および向きを有するまで展開するように伸縮アセンブリ540、540に指令することによって内部エンドエフェクタ550を位置決めする。回転継手(界面560とエンドエフェクタ550の間)にも、内部エンドエフェクタ550を上昇または下降させるように指令することができる。
【0046】
内部ロボット510および外部ロボット630は、その明細書を参照により本明細書に組み込む2008年5月8日に出願された譲受人の米国特許出願第12/117,153号に記載されているように、ビジョンシステムおよび計装締結具を使用し、エンドエフェクタ550、640の正確な位置決めおよび配向を得ることができる。計装締結具は、ロボット510、630が、締結具の場所を通って延びる軸の位置および向きを決定することを可能にする。光ビーコンは、両ロボット510、630によって検知することができるように、ウィングベイの内側および外側に向けて送られる。
【0047】
ブロック750では、エンドエフェクタ550、640が正確に位置決めされた後で、外部エンドエフェクタ640上の電磁石に給電される。その結果、外部エンドエフェクタ640は、内部エンドエフェクタ550上のクランピングブロック556を磁気的に引き付け、それにより外板を2つのエンドエフェクタ550、640間で締め付ける。
【0048】
ブロック760では、外部エンドエフェクタ640が目標の場所でバリ無し穿孔を実施する。座ぐりをも実施することができる。次いで、外部エンドエフェクタ640は、穿孔された穴を通して締結具を挿入する。
【0049】
ブロック770では、内部エンドエフェクタ550が、挿入された締結具の端部を終端する。たとえば、内部エンドエフェクタ550は、スリーブおよびナットを締結具上に設置する。
【0050】
追加の締結作業を実施しようとする場合(ブロック780)、エンドエフェクタ550、640が新しい目標の場所に移動され、ブロック740〜770の作業が繰り返される。ウィングベイ内での最後の締結作業が実施された後で(ブロック785)、内部ロボット510の伸縮アセンブリ530、540が完全に収縮され、内部ロボット510が限られた空間402から外に下降され(ブロック790)、別のウィングベイのアクセスポート450に移動される(ブロック730)。翼箱の各ウィングベイで締結作業が実施されるまで、ブロック740〜780の作業が繰り返される。
【0051】
本明細書のシステムは、翼箱、および限られた空間を有する他の構造の手動組立てに置き換わる。数千の締結作業が手作業よりはるかに速く実施される。非常に厳しい航空機の公差が満たされる。
【0052】
本明細書のシステムは、生産性を高めるだけではない。すなわち、翼箱の組立ては、人間工学的に困難(限られた空間の内側でナット/スリーブを手動で設置すること)であるため、作業者のけがも減少する。本明細書のシステムは、ボルトおよびナットを含む締結具に限定されず、他の締結具は、限定しないが、リベットを含む。本明細書のシステムは締結作業に限定されず、本明細書のシステムを使用し、シーラント塗布、洗浄、塗装、および検査など、他の製造作業を実施することができる。本明細書のシステムは航空機に限定されず、たとえば本明細書のシステムは、コンテナ、自動車、トラック、船舶に応用することができる。
(実施形態)
【0053】
第1の実施形態によれば、ロボットが、アクチュエータアセンブリと、アクチュエータアセンブリから片持ちされた、第1および第2の平行の伸縮親ねじアセンブリと、親ねじアセンブリの端部に結合され支持されたエンドエフェクタとを備え、アクチュエータアセンブリは、各伸縮アセンブリを独立に展開および収縮させる。
【0054】
第1の実施形態では、各伸縮アセンブリが、非回転可能な親ねじと、回転可能な親ねじとを含むことができ、非回転可能な親ねじが、エンドエフェクタに結合された端部を有し、また回転可能な親ねじの内ねじ付き孔と係合する外ねじを有する。
【0055】
また、第1の実施形態では、各伸縮アセンブリが第1の親ねじと、第2の親ねじと、第3の親ねじとを含むことができ、第1の親ねじの端部がエンドエフェクタに結合され、第1の親ねじが、第2の親ねじの内ねじ付き孔と係合する外ねじを有し、第2の親ねじが、第3の親ねじ内の内ねじ付き孔と係合する外ねじを有し、第3の親ねじが、アクチュエータアセンブリのハウジング内で回転しないように装着され、それにより、第2の親ねじを回転させると、第1の親ねじが、展開された位置と収縮された位置との間で移動する。
【0056】
第3の親ねじを含む第1の実施形態の変型形態では、各伸縮アセンブリの第3の親ねじは、Z軸回転を可能にするように柔軟な界面によってハウジング内に組み立てられてもよい。
【0057】
親ねじを含む第1の実施形態の変型形態では、各親ねじ界面が、バックラッシュをなくするように予圧がかけられた玉軸受を備える循環玉軸受ブッシングを有することができる。
【0058】
第1の実施形態の変型形態のいずれかでは、ロボットが、エンドエフェクタに回転可能に結合された界面板をも含むことができ、伸縮アセンブリの第1の端部が界面板に枢止される。
【0059】
第1の実施形態の変型形態のいずれかでは、ロボットが、両伸縮アセンブリの端部を同時に同じ方向に移動させ、それによりエンドエフェクタが直線的に並進されるようにアクチュエータアセンブリに指令するためのコントローラを含む。
【0060】
第1の実施形態の変型形態のいずれかでは、ロボットが、伸縮アセンブリの端部を同時に反対方向に移動させ、それによりエンドエフェクタが回転されるようにアクチュエータアセンブリに指令するためのコントローラを含む。
【0061】
第1の実施形態の変型形態のいずれかでは、ロボットが、一方の伸縮アセンブリの端部を移動させるようにアクチュエータアセンブリに指令し、一方、他方の伸縮アセンブリの端部を静止して保ち、それによりエンドエフェクタが回転されるようにアクチュエータアセンブリに指令するためのコントローラを含む。
【0062】
第1の実施形態の変型形態のいずれかでは、エンドエフェクタが、締結仕事を実施するように装備されてもよい。
【0063】
第2の実施形態によれば、システムが、限られた空間を有する構造上で製造作業を実施する。このシステムは、その構造上で1組の製造仕事を実施するために限られた空間の外側で動作可能な第1のロボットと、補完する1組の製造仕事をその構造上で実施するために限られた空間内で動作可能な第2のロボットとを含む。第2のロボットは、アクチュエータアセンブリと、アクチュエータアセンブリから片持ちされた、第1および第2の平行の伸縮親ねじアセンブリであって、各伸縮アセンブリの端部がエンドエフェクタに枢止される、伸縮親ねじアセンブリと、各伸縮アセンブリを収縮された位置と展開された位置との間で独立に移動させるようにアクチュエータに指令するためのコントローラとを含む。製造仕事は、穿孔、締結具挿入、および締結具終端を含むことができる。
【0064】
第2の実施形態によれば、各伸縮アセンブリが、各伸縮アセンブリが第1の親ねじと、第2の親ねじと、第3の親ねじとを含むことができ、第1の親ねじの端部がエンドエフェクタに結合され、第1の親ねじが、第2の親ねじの内ねじ付き孔と係合する外ねじを有し、第2の親ねじが、第3の親ねじ内の内ねじ付き孔と係合する外ねじを有し、第3の親ねじが、アクチュエータアセンブリのハウジング内で回転しないように装着され、それにより、第2の親ねじを回転させると、第1の親ねじが、展開された位置と収縮された位置との間で移動する。
【0065】
第2の実施形態の任意の変型形態では、コントローラが、伸縮アセンブリの第2の親ねじを回転させ、両伸縮アセンブリの端部を同時に同じ方向に移動させ、エンドエフェクタを直線的に並進するようにアクチュエータアセンブリに指令するように構成されてもよい。
【0066】
第2の実施形態の任意の変型形態では、コントローラが、伸縮アセンブリの第2の親ねじを反対方向に回転させ、エンドエフェクタを回転させるようにアクチュエータアセンブリに指令するように構成されてもよい。
【0067】
第2の実施形態の任意の変型形態では、コントローラが、伸縮アセンブリの第2の親ねじの一方だけを回転させ、一方の伸縮アセンブリの端部を移動させ、一方、他方の伸縮アセンブリの端部を静止して保ち、それによりエンドエフェクタが回転されるようにアクチュエータアセンブリに指令するように構成されてもよい。
【0068】
第3の実施形態によれば、部分的に壁によって画定された限られた空間内での製造方法が、エンドエフェクタを限られた空間内に移動するステップと、エンドエフェクタが限られた空間内の目標に対して所望の向きを達成するまでエンドエフェクタを並進および回転させるように、第1および第2の平行の伸縮親ねじアセンブリを使用するステップと、限られた空間の外側で金属板を使用し、エンドエフェクタを壁に接して磁気的に締め付けるステップとを含む。
【0069】
第3の実施形態では、この方法は、エンドエフェクタを使用し、目標にて締結仕事を実施するステップをも含むことができ、伸縮アセンブリを使用するステップが、目標を回転するように、アセンブリの対応する親ねじを異なる速度で回転させることを含むことができる。
【0070】
第3の実施形態の任意の変型形態では、計装締結具によって放射されたビーコンを使用し、エンドエフェクタを目標の上で正確に位置決めすることができる。
【符号の説明】
【0071】
110 ロボット
120 アクチュエータアセンブリ
122 ハウジング
124 電気モータ
126 駆動ベルト
128 電気モータ
129 駆動ベルト
130 第1の平行の伸縮親ねじアセンブリ
132 端部
134 親ねじ
136 親ねじ
140 第2の平行の伸縮親ねじアセンブリ
142 端部
144 親ねじ
146 親ねじ
150 エンドエフェクタ
160 界面板
162 枢動継手
164 枢動継手
170 電子インターフェース、電気インターフェース
180 コントローラ
410 ウィングベイ
400 翼箱
402 限られた空間
420 上部外板
430 下部外板
440 ストリンガ
450 アクセスポート
460 締結作業
470 リブ
480 リブ
510 内部ロボット
520 アクチュエータアセンブリ
522 ハウジング
524 第1のモータ
525 シャフト
526 第2のモータ
527 シャフト
530 第1の伸縮アセンブリ
532 第3の親ねじ
533 第1の循環玉軸受ブッシング
534 第2の親ねじ
535 別の循環玉軸受ブッシング
536 第1の親ねじ
540 第2の伸縮アセンブリ
542 第3の親ねじ
543 循環玉軸受ブッシング
544 第2の親ねじ
545 循環玉軸受ブッシング
546 第1の親ねじ
550 エンドエフェクタ
552 ナット/スリーブ設置工具
554 電子インターフェース
556 クランピングブロック
560 界面板
570 ロボットインターフェース
610 ロボットシステム
620 スタンド
630 外部ロボット
640 外部エンドエフェクタ
L 長手軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータアセンブリと、
アクチュエータアセンブリから片持ちされた、第1および第2の平行の伸縮親ねじアセンブリと、
親ねじアセンブリの端部に結合され支持されたエンドエフェクタとを備え、
アクチュエータアセンブリが各伸縮アセンブリを独立に展開および収縮させる、ロボット。
【請求項2】
各伸縮アセンブリが、非回転可能な親ねじと、回転可能な親ねじとを含み、非回転可能な親ねじが、エンドエフェクタに結合された端部を有し、また
回転可能な親ねじの内ねじ付き孔と係合する外ねじを有する、請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
各伸縮アセンブリが第1の親ねじと、第2の親ねじと、第3の親ねじとを含み、第1の親ねじの端部がエンドエフェクタに結合され、第1の親ねじが、第2の親ねじの内ねじ付き孔と係合する外ねじを有し、第2の親ねじが、第3の親ねじ内の内ねじ付き孔と係合する外ねじを有し、第3の親ねじが、アクチュエータアセンブリのハウジング内で回転しないように装着され、それにより、第2の親ねじを回転させると、第1の親ねじが、展開された位置と収縮された位置との間で移動する、請求項1に記載のロボット。
【請求項4】
エンドエフェクタに回転可能に結合された界面板をさらに備え、伸縮アセンブリの第1の端部が界面板に枢止される、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のロボット。
【請求項5】
両伸縮アセンブリの端部を同時に同じ方向に移動させ、それによりエンドエフェクタが直線的に並進するようにアクチュエータアセンブリに指令するためのコントローラをさらに備える、請求項1ないし4のいずれか一項に記載のロボット。
【請求項6】
伸縮アセンブリの端部を同時に反対方向に移動させ、それによりエンドエフェクタが回転するようにアクチュエータアセンブリに指令するためのコントローラをさらに備える、請求項1ないし5のいずれか一項に記載のロボット。
【請求項7】
一方の伸縮アセンブリの端部を移動させるようにアクチュエータアセンブリに指令し、一方、他方の伸縮アセンブリの端部を静止して保ち、それによりエンドエフェクタが回転するようにアクチュエータアセンブリに指令するためのコントローラをさらに備える、請求項1ないし6のいずれか一項に記載のロボット。
【請求項8】
部分的に壁によって画定された限られた空間内での製造方法であって、
エンドエフェクタを限られた空間内に移動するステップと、
エンドエフェクタが限られた空間内の目標に対して所望の向きを達成するまでエンドエフェクタを並進および回転させるように、第1および第2の平行の伸縮親ねじアセンブリを使用するステップと、
限られた空間の外側で金属板を使用し、エンドエフェクタを壁に接して磁気的に締め付けるステップと
を含む方法。
【請求項9】
伸縮アセンブリを使用するステップが、目標を回転するように、アセンブリの対応する親ねじを異なる速度で回転させることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
計装締結具によって放射されたビーコンを使用し、エンドエフェクタを目標の上で正確に位置決めする、請求項8または9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−35120(P2013−35120A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−172340(P2012−172340)
【出願日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】