説明

エンドレスウインチ

【課題】エンドレスウインチにおいて、ロープに作用する引張荷重を、ロープをドラムに押し付ける力に十分効率良く変換できるようにする。
【解決手段】エンドレスウインチ100は、ハウジング4と、ドラム5と、ハウジング4に直接固定されることなくロープ10の入/出の両辺を横切り、両端に第1,第2ガイドシーブ11,12がそれぞれ配置された主リンク13と、ドラム5の外周面に沿うように配置され、一端がハウジング4に対して回動自在に支持され、他端は主リンク13の中央部に回動自在に連結され、ロープ10をドラム5の外周面に押さえつけるための1以上の押さえローラ15を含むローラチェーン14a,14bとを備える。第1,第2ガイドシーブ11,12は、主リンク13の変位に応じてドラム5を押さえつける力を増減可能であり、ローラチェーン14a,14bは緊密にドラム5外周面に沿っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドレスウインチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
「エンドレスウインチ」とは、ロープ(「ワイヤロープ」または「ワイヤ」とも呼ばれる。)の端をドラムに保持することなく、回転駆動するドラムによってロープを巻き送ったり停止させたりするための装置である。したがって、標準的動作としては、エンドレスウインチはロープの途中を保持し、ドラムの回転駆動によってロープの一方の側を次々と取り込み、他方の側を次々と吐き出す。エンドレスウインチは、「摩擦巻胴式ウインチ」とも呼ばれる。エンドレスウインチは、1本のロープの途中を取り込んでいるため、エンドレスウインチのハウジングから外部に延在するロープは外観上は2本あり、この2本は外力による荷重が作用する負荷側(「牽引側」ともいう。)と外力による荷重が作用しない無負荷側(「弛緩側」ともいう。)とに分類することができる。
【0003】
エンドレスウインチは、たとえば、高所壁面作業用のゴンドラの昇降、重量物の揚重作業または移動作業、大型テントの開閉、ゴルフ練習場のネットの昇降などに用いられる。
【0004】
エンドレスウインチにおいて、ロープに引張荷重がかかってもその荷重に屈服せずに所望の送り状態または停止状態を実現するためには、ロープにかかる引張荷重に対抗できる程度の十分大きな保持力を発生させる必要がある。
【0005】
従来、引張荷重に応じた保持力を得るための手段としては、押さえローラによってロープの弛緩側をドラムの外周に押さえつける機構が知られている。押さえローラによってロープを押さえつけることによってロープとドラムとの間で摩擦力が発生する。この摩擦力が作用することによってロープを保持することができる。このような機構は、たとえば特開昭54−13163号公報(特許文献1)、実公昭56−17439号公報(特許文献2)、実公平2−29110号公報(特許文献3)、実公平6−36052号公報(特許文献4)、特開平9−52694号公報(特許文献5)、特許第3058871号(特許文献6)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭54−13163号公報
【特許文献2】実公昭56−17439号公報
【特許文献3】実公平2−29110号公報
【特許文献4】実公平6−36052号公報
【特許文献5】特開平9−52694号公報
【特許文献6】特許第3058871号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの技術においてはいずれも、ロープに作用する引張荷重をその荷重の変化に比例した状態で押さえローラに伝達して押さえローラの押付け力に変換するために、何らかの介在するための部材が存在し、その部材は、ウインチの本体ないしハウジングに対して少なくとも1点において固定されている。この固定手段は、回転軸であったりスライド軸であったりするが、固定されているがために、力の伝達において機械的損失が発生していた。すなわち、ロープに作用する引張荷重を押さえローラの押付け力に変換することが十分効率良くできていなかった。
【0008】
そこで、本発明は、ロープに作用する引張荷重を、ロープをドラムに押し付ける力に十分効率良く変換することができるエンドレスウインチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に基づくエンドレスウインチは、ロープの出入口を有するハウジングと、前記出入口から取り込んだ前記ロープを外周面に巻き掛けて保持するために前記ハウジングの内部で回転駆動されるドラムと、前記ハウジングの内部の、前記ドラムと前記出入口との間において、前記ハウジングに直接固定されることなく、前記ロープの入側/出側の両方を横切るように配置され、一方の端に第1ガイドシーブが回動自在に配置され、他方の端に第2ガイドシーブが回動自在に配置された主リンクと、前記ドラムの外周面に沿うように配置され、一端が前記ハウジングに対して回動自在に支持され、他端は前記主リンクのうち前記第1,第2ガイドシーブ間に回動自在に連結され、前記一端と前記他端との間には前記ロープを前記ドラムの外周面に押さえつけるための1以上の押さえローラを含むローラチェーンとを備え、前記第1ガイドシーブおよび前記第2ガイドシーブは、前記第1ガイドシーブの側にある前記ロープが前記第1ガイドシーブを前記ドラムから遠ざかる向きに押し進めることによって、前記主リンクが変位し、前記第2ガイドシーブが前記ロープを前記ドラムに向けて押さえつけることができ、かつ、前記第2ガイドシーブの側にある前記ロープが前記第2ガイドシーブを前記ドラムから遠ざかる向きに押し進めることによって、前記主リンクが変位し、前記第1ガイドシーブが前記ロープを前記ドラムに向けて押さえつけることができる程度に大きな直径を有し、前記ローラチェーンに含まれる前記押さえローラは、前記主リンクの変位に応じて前記ロープを前記ドラムの外周面に押さえつける力を増減させることができる程度に緊密に前記ドラムの外周面に沿っている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ロープに加えられた引張荷重を、ロープをドラムに押し付ける力に、十分に効率良く変換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に基づく実施の形態1におけるエンドレスウインチの側方から見た部分断面図である。
【図2】本発明に基づく実施の形態1におけるエンドレスウインチの断面図である。
【図3】図2におけるIII−III線に関する矢視断面図である。
【図4】本発明に基づく実施の形態1におけるエンドレスウインチの一部を取り出したものの平面図である。
【図5】本発明に基づく実施の形態1におけるエンドレスウインチの一部を取り出したものの側面図である。
【図6】図4におけるVI−VI線に関する矢視断面図である。
【図7】図4におけるVII−VII線に関する矢視断面図である。
【図8】本発明に基づく実施の形態1におけるエンドレスウインチにおける力の作用の説明図である。
【図9】本発明に基づく実施の形態1におけるエンドレスウインチの動作の第1の説明図である。
【図10】本発明に基づく実施の形態1におけるエンドレスウインチの動作の第2の説明図である。
【図11】本発明に基づく実施の形態1におけるエンドレスウインチに含まれる主リンクの平面図である。
【図12】本発明に基づく実施の形態2におけるエンドレスウインチの断面図である。
【図13】本発明に基づく実施の形態2におけるエンドレスウインチに含まれる主リンクの平面図である。
【図14】本発明に基づく実施の形態3におけるエンドレスウインチの断面図である。
【図15】本発明に基づく実施の形態4におけるエンドレスウインチの断面図である。
【図16】本発明に基づく実施の形態4におけるエンドレスウインチの動作の第1の説明図である。
【図17】本発明に基づく実施の形態4におけるエンドレスウインチの動作の第2の説明図である。
【図18】本発明に基づく実施の形態4におけるエンドレスウインチの他の例の断面図である。
【図19】本発明に基づく実施の形態4におけるエンドレスウインチの他のさらに例の断面図である。
【図20】本発明に基づく実施の形態5におけるエンドレスウインチの第1の例の断面図である。
【図21】本発明に基づく実施の形態5におけるエンドレスウインチの第2の例の断面図である。
【図22】本発明に基づく実施の形態5におけるエンドレスウインチの第3の例の断面図である。
【図23】本発明に基づく実施の形態5におけるエンドレスウインチの第4の例の断面図である。
【図24】本発明に基づく実施の形態5におけるエンドレスウインチの第5の例の断面図である。
【図25】本発明に基づく実施の形態5におけるエンドレスウインチの第6の例の断面図である。
【図26】本発明に基づく実施の形態6におけるエンドレスウインチの第1の例の断面図である。
【図27】本発明に基づく実施の形態6におけるエンドレスウインチの第2の例の断面図である。
【図28】本発明に基づく実施の形態6におけるエンドレスウインチの第3の例の断面図である。
【図29】本発明に基づく実施の形態6におけるエンドレスウインチの第4の例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態1)
(構成)
図1〜図7を参照して、本発明に基づく実施の形態1におけるエンドレスウインチについて説明する。
【0013】
このエンドレスウインチ100の側方から見た部分断面図を図1に示す。正面すなわち図1における矢印81の側から見た断面図を図2に示す。図2におけるIII−III線に関する矢視断面図を図3に示す。
【0014】
図1に示すように、このエンドレスウインチ100は、モータ1と、減速機部2と、ブレーキ部3と、エンドレスウインチ本体90とを備える。エンドレスウインチ本体90の内部にはドラム5が設置されている。モータ1および減速機部2はエンドレスウインチ本体90内に設置されているドラム5を所望速度で回転駆動するためのものである。ブレーキ部3は、ロープに引張荷重が作用したときにドラム5ごと引きずられて不所望に回転してしまわないようにドラム5の回転を抑止するためのものである。以下は、エンドレスウインチ本体90の内部の構造に関して説明する。
【0015】
図2に示すように、このエンドレスウインチ100は、ロープ10の出入口9を有するハウジング4と、出入口9から取り込んだロープ10を外周面に巻き掛けて保持するためにハウジング4の内部で回転駆動されるドラム5と、主リンク13と、ローラチェーン14a,14bとを備える。主リンク13は、ハウジング4の内部の、ドラム5と出入口9との間において、ハウジング4に直接固定されることなく、ロープ10の入側/出側すなわちロープ10a,10bの両方を横切るように配置されている。主リンク13の一方の端には第1ガイドシーブ(sheave)11が回動自在に配置され、他方の端には第2ガイドシーブ12が回動自在に配置されている。ローラチェーン14a,14bは、ドラム5の外周面に沿うように配置され、一端が固定ピン7によってハウジング4に対して回動自在に支持され、他端は連結ピン8によって主リンク13のうち前記第1,第2ガイドシーブ間に回動自在に連結され、前記一端と前記他端との間には前記ロープをドラム5の外周面に押さえつけるための1以上の押さえローラ15を含む。ロープ10a,10bのいずれかに引張荷重が作用するときには、当該ロープに直線状態に戻ろうとする力が働くので、当該ロープは第1または第2ガイドシーブ11,12をドラム5から遠ざける向きに押し進めることとなる。第1ガイドシーブ11および第2ガイドシーブ12は、第1ガイドシーブ11の側にあるロープ10aが第1ガイドシーブ11をドラム5から遠ざかる向きに押し進めることによって、主リンク13が変位し、第2ガイドシーブ12がロープ10bをドラム5に向けて押さえつけることができ、かつ、第2ガイドシーブ12の側にあるロープ10bが第2ガイドシーブ12をドラム5から遠ざかる向きに押し進めることによって、主リンク13が変位し、第1ガイドシーブ11がロープ10aをドラム5に向けて押さえつけることができる程度に大きな直径を有する。ローラチェーン14a,14bにそれぞれ1以上の個数含まれる押さえローラ15は、主リンク13の変位に応じてロープをドラム5の外周面に押さえつける力を増減させることができる程度に緊密にドラム5の外周面に沿っている。
【0016】
本実施の形態では、図1および図3に示すように、ハウジング4はハウジング片4a,4bを組み合わせたものである。ハウジング4はドラム5、ロープ10、第1,第2ガイドシーブ11,12、主リンク13などを収容することができる構造であれば、図示した以外の構造であってもよい。
【0017】
「ロープ10a,10b」とは、1本のロープ10のうちの図2における左半分と右半分とをそれぞれ示す。
【0018】
「ローラチェーン」とは、図2に示すように複数のローラをリンク部材でチェーン状につなぎ合わせたものである。ここで示すローラチェーンの内訳はあくまで一例であるが、ローラチェーン14a,14bの各々の一端の固定ピン7の位置には、この固定ピン7を中心として回動自在にエンドローラ17が保持されている。エンドローラ17に隣接するように押さえローラ15が配置されている。押さえローラ15が2個並んだのちに、ガイドローラ19が配置されている。ガイドローラ19と連結ピン8とをつなぐように連結リンク18が配置されている。「ローラチェーン14a,14b」といった場合は、それぞれ固定ピン7から連結ピン8までを含む一連の構造体を指す。固定ピン7はハウジング4に対して接続されることによって位置が固定されたものであるが、連結ピン8は図3に示されるように、ハウジング4に対しては直接接続されていない。この例では、連結リンク18の端にガイドローラ19が配置されたものとしたが、ガイドローラ19の代わりに、さらにもう一つの押さえローラ15をこの位置に配置してもよい。
【0019】
このエンドレスウインチ100においては、好ましいことに、ローラチェーン14a,14bは、ドラム5を出入口9から見た左右両側に1本ずつ配置されている。
【0020】
このエンドレスウインチ100から、第1ガイドシーブ11、第2ガイドシーブ12、主リンク13、ローラチェーン14a,14bおよび仕分け部16を取り出したところを図4に示す。図4に示した構造体を図4における右側から見たところを図5に示す。図4におけるVI−VI線に関する矢視断面図を図6に示す。図4におけるVII−VII線に関する矢視断面図を図7に示す。
【0021】
(作用・効果)
本実施の形態のエンドレスウインチ100における力の作用および動作について説明する。図8では主リンク13とローラチェーン14bとその周辺の関連する部材のみを表示している。
【0022】
図2においてロープ10aが牽引側となった場合、すなわち、図8において第1ガイドシーブ11の側にあるロープ10aに引張荷重Wが矢印の向きに作用した場合には、ロープ10aが折れ曲がる点Aに力Pが作用する。これにより、第1ガイドシーブ11の側にあるロープ10aが第1ガイドシーブ11をドラム5から遠ざかる向きに押し進めることになる。第1ガイドシーブ11の中心Bから主リンク13に力Pが作用するが、第1ガイドシーブ11と第2ガイドシーブ12との間にはロープ10a,10bがあり、下方にはドラム5があるので、主リンク13は、力Pの方向に単純に平行移動することはできず連結ピン8をおよその中心として回転しながら移動する。その結果、主リンク13は変位し、すなわち、図8における右下がりの姿勢になり、第2ガイドシーブ12は中心Dから力R1を以ってドラム5に押し当てられる。このとき、図9に示すように、第2ガイドシーブ12はドラム5の右側においてロープ10bをドラム5に向けて押さえつけることができる。
【0023】
図8において、第1ガイドシーブ11の中心Bに作用する力Pの一成分である力P1は連結ピン8を引っ張ることに貢献し、一端が固定ピン7で支持されたローラチェーン14bの他端がこのように引っ張られることにより、ローラチェーン14b内に含まれている2個の押さえローラ15はそれぞれ力NF1、力NG1を以ってドラム5に押し付けられる。したがって、これらの押さえローラ15はロープをドラム5の外周面に押さえ付けることとなる。
【0024】
図8に示すように、押さえローラ15がロープをドラム5に向かって押し付ける各力は、ロープ10aがドラム5に接する点から測って角度θ1,θ2、θ3の位置でそれぞれ作用することとなる。これらの押し付けによってロープ10bとドラム5との間に発生する摩擦力は増大する。
【0025】
逆に、図2においてロープ10bが牽引側となった場合、すなわち、第2ガイドシーブ12の側にあるロープ10bに引張荷重が作用した場合には、ロープ10bが第2ガイドシーブ12をドラム5から遠ざかる向きに押し進めることによって、主リンク13が変位し、すなわち、主リンク13の姿勢が変わり、図10に示すように、第1ガイドシーブ11がロープ10aをドラム5に向けて押さえつけることができる。この場合は、第1ガイドシーブ11の他に、ローラチェーン14aに含まれる各押さえローラ15がドラム5に押し付けられる。したがって、これらの押さえローラ15はロープをドラム5の外周面に押さえ付けることとなる。これらの押し付けによってロープ10aとドラム5との間に発生する摩擦力は増大する。
【0026】
このように、本実施の形態におけるエンドレスウインチ100では、ロープに作用する引張荷重をその荷重の大きさに比例した状態で押さえローラに伝達して押さえローラの押付け力に変換するための介在部材が、ウインチ本体ないしハウジングに対して直接固定されていないことにより、ロープに加えられた引張荷重を、ロープをドラムに押し付ける力に、十分に効率良く変換することができる。
【0027】
エンドレスウインチ100に含まれる主リンク13を単独で取り出したところを図11に示す。エンドレスウインチ100においては、好ましいことに、主リンク13は長手方向に対称な形状をしており、ローラチェーン14a,14bの端は、主リンク13の長手方向の中心に連結されている。この構成を備えていることにより、ロープ10a,10bのいずれが牽引側となっても対称に動作することができる。
【0028】
また、ロープ10a,10bの両者のうちいずれを牽引側とした場合も対称な動作をすることを所望しない場合には、主リンクは長手方向に非対称な形状とすることもできる。
【0029】
(実施の形態2)
(構成)
図12、図13を参照して、本発明に基づく実施の形態2におけるエンドレスウインチ101について説明する。エンドレスウインチ101は、基本的には実施の形態1で説明したエンドレスウインチ100と同じ構成であるが、エンドレスウインチ100が備えていた主リンク13の代わりに、図12に示すように主リンク13jを備えている。また、エンドレスウインチ101は、主リンク13jに見合う適切な長さの連結リンク18jを備えている。エンドレスウインチ101に含まれる主リンク13jを単独で取り出したところを図13に示す。
【0030】
ローラチェーン14a,14bの一端は、固定ピン7によってハウジング4に対して回動自在に支持されている。主リンク13jは幅方向に対称な形状をしており、ローラチェーン14a,14bの端は、主リンク13jの幅方向の中心に連結されている。
【0031】
(作用・効果)
本実施の形態におけるエンドレスウインチ101においては、主リンク13jが幅方向(図中の上下方向)に対称な形状となっているので、組立時に主リンク13jの向きを気にせず組み立てることができ、組立作業が容易になる。本実施の形態では、他の作用効果については、実施の形態1で説明したのと同様である。
【0032】
なお、ここで示した主リンク13jの例では、長手方向と幅方向とのいずれにおいても対称な形状となっているが、ロープ10a,10bの両者のうちいずれを牽引側とした場合も対称な動作をすることを所望しない場合には、主リンクの幅方向のみを対称な形状として長手方向は非対称な形状とすることも考えられる。
【0033】
(実施の形態3)
(構成)
図14を参照して、本発明に基づく実施の形態3におけるエンドレスウインチ102について説明する。
【0034】
実施の形態1では、連結ピン8は、主リンク13の幅方向の中心よりもドラム5寄りに配置していたが、逆に、図14に示すように、幅方向の中心よりもドラム5の反対側寄り、すなわち図14における上寄りに配置してもよい。このエンドレスウインチ102は主リンク13kを備えることとして、これに見合う適切な長さの連結リンク18kを備えることとしている。すなわち、連結リンク18kは、実施の形態1における連結リンク18よりも長いものとなっており、ローラチェーン14a,14bに含まれる押さえローラ15は、主リンク13kの変位に応じてドラム5を押さえつける力を増減させることができる程度に緊密にドラム5の外周面に沿っている。
【0035】
(作用・効果)
本実施の形態におけるエンドレスウインチ102の構成であっても、ローラチェーン14a,14bの長さが適切であるので、実施の形態1で説明したのと同様の作用効果を得ることができる。
【0036】
(実施の形態4)
(構成)
図15を参照して、本発明に基づく実施の形態4におけるエンドレスウインチ103について説明する。エンドレスウインチ103は、基本的には実施の形態1で説明したエンドレスウインチ100と同じ構成であるが、図15に示すように、エンドレスウインチ100が備えていた主リンク13の代わりに主リンク13nを備えている。主リンク13nは、中央部に2つの孔を有している。ローラチェーン14a,14bの各上端は、主リンク13nの中央部に対して、連結ピン8a,8bによってそれぞれ別個に連結されている。
【0037】
(作用・効果)
本実施の形態におけるエンドレスウインチ103においても、実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。エンドレスウインチ103において、ロープ10aが牽引側となった場合には、第1ガイドシーブ11の側にあるロープ10aが第1ガイドシーブ11をドラム5から遠ざかる向きに押し進めることによって、図16に示すように主リンク13nが変位し、第2ガイドシーブ12がロープ10bをドラム5に向けて押さえつける。逆に、ロープ10bが牽引側となった場合には、第2ガイドシーブ12の側にあるロープ10bが第2ガイドシーブ12をドラム5から遠ざかる向きに押し進めることによって、図17に示すように主リンク13nが変位し、第1ガイドシーブ11がロープ10aをドラム5に向けて押さえつける。
【0038】
なお、図15〜図17に示した例では、連結ピン8a,8bは、主リンク13nの幅方向の中心よりもドラム5寄りに配置していたが、図18に示すように、連結ピン8a,8bが主リンク13n1の幅方向の中心に配置された構成であってもよい。また、図19に示すように、連結ピン8a,8bが主リンク13n2の幅方向の中心よりもドラム5の反対側寄りに配置された構成であってもよい。
【0039】
また、連結ピン8a,8bが主リンクの長手方向にも幅方向にも非対称な位置に配置された構成も考えられる。
【0040】
(実施の形態5)
(構成)
図20〜図22を参照して、本発明に基づく実施の形態5におけるエンドレスウインチについて説明する。図20〜図22には、本実施の形態におけるエンドレスウインチの第1〜第3の例をそれぞれ示す。本実施の形態におけるエンドレスウインチ104,105,106は、基本的には実施の形態1で説明したエンドレスウインチ100と同じ構成であるが、エンドレスウインチ100に比べてローラチェーンに含まれる押さえローラの数が少なくなっている。図20〜図22に示すように、ローラチェーン14ia,14ibにおいては、固定ピン7によって支持されたエンドローラ17の隣に大型の押さえローラ15iが配置されている。すなわち、1つのローラチェーン当たりに含まれる押さえローラの数が1つのみとなっている。
【0041】
ここでは直径がやや大きな押さえローラ15iを用いた例を示したが、これに代えて図2などに示した押さえローラ15と同じサイズのものを用いてもよい。
【0042】
(作用・効果)
本実施の形態におけるエンドレスウインチ104,105,106においても、実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。押さえローラの数が少なくなっている分だけ部品点数の低減を図ることができる。ただし、発揮する摩擦力を増大させることが望まれる場合は、実施の形態1などで示したように、1つのローラチェーン当たりに含まれる押さえローラの数を多くすることが好ましい。また、主リンクと連結リンクとがなす角度を変更して、押さえローラ15の押付け力を大きくしてもよい。
【0043】
なお、本実施の形態におけるエンドレスウインチ104,105,106の相互間の違いは、主リンクにおける主リンクの幅方向(図中の上下方向)に関する連結ピン8の位置の違いにある。図20に示したエンドレスウインチ104においては、主リンクの幅方向のドラム5寄りに連結ピン8が配置されているが、図21に示したエンドレスウインチ105では主リンクの幅方向の中央に連結ピン8が配置されている。図22に示したエンドレスウインチ106では主リンクの幅方向のドラム5と反対側寄りに連結ピン8が配置されている。これらのいずれの構成であっても同様の作用効果を得ることができる。
【0044】
さらに、主リンクにおける連結ピンを、中央の1本で兼ねるのではなく、実施の形態4で示した技術的思想に従い、左右別々に設けることとしてもよい。すなわち、具体的には図23〜図25に示すような構成であってもよい。図23〜図25にそれぞれ示したエンドレスウインチの相互間の違いは、主リンクにおける主リンクの幅方向(図中の上下方向)に関する連結ピン8a,8bの位置の違いにある。図23に示したエンドレスウインチにおいては、主リンクの幅方向のドラム5寄りに連結ピン8a,8bが配置されているが、図24に示したエンドレスウインチでは主リンクの幅方向の中央に連結ピン8a,8bが配置されている。図25に示したエンドレスウインチでは主リンクの幅方向のドラム5と反対側寄りに連結ピン8a,8bが配置されている。これらのいずれの構成であっても同様の作用効果を得ることができる。
【0045】
(実施の形態6)
(構成)
上記各実施の形態では、ローラチェーンが左右に1本ずつの合計2本ある構成を例示してきたが、本発明としては、ローラチェーンの数はこれに限らず、片側の1本のみであってもよい。すなわち、具体的には図26〜図29に示すような構成であってもよい。図26、図27は、1本のローラチェーンに多数の押さえローラが含まれる例を示し、図28、図29は、1本ローラチェーンに1つの押さえローラが含まれる例を示す。図26、図28に示した例では、連結ピン8は主リンク13の長手方向中央に配置されている。図27、図29に示した例では、連結ピン8は主リンク13qの長手方向中央よりも図中右側すなわち、ローラチェーンが配置されている側に偏った位置に設けられている。本実施の形態におけるエンドレスウインチでは、片側にしかローラチェーンがないので、主リンクに対するローラチェーンの連結の位置も左右対称に拘る必要はない。
【0046】
(作用・効果)
本実施の形態におけるエンドレスウインチでは、ロープ10a,10bのいずれが牽引側になる場合も摩擦力を発揮するのではなく、ロープ10aが牽引側になる場合のみ摩擦力を発揮する。すなわち、牽引側と弛緩側との割当てが固定的なものとなる。
【0047】
引張荷重が作用する側が一定であって入れ替わることがないような用途においては、本実施の形態におけるエンドレスウインチを使用することができる。本実施の形態におけるエンドレスウインチは、予め定められた牽引側のロープに対しては十分に摩擦力を発揮することができ、本発明の作用効果を発揮することができる。
【0048】
(仕分け部)
なお、上記各実施の形態では、仕分け部16(図2、図4〜図6を参照)が備わった構成のエンドレスウインチを例示したが、仕分け部16がない構成であっても、ロープ10をドラム5に巻いて設置することさえできていれば、その後の動作においては一定の作用効果を得ることができる。もっとも、仕分け部16が備わった構成の方が好ましいことはいうまでもない。エンドレスウインチ100を例にとり、仕分け部16について詳しく述べる。
【0049】
エンドレスウインチ100は、好ましいことに、ハウジング4の内部の、ドラム5と出入口9との間において、主リンク13の動きを妨げず、ハウジング4に直接固定されないように、仕分け部16が配置されており、この仕分け部16は、入側のロープと出側のロープとを隔て、第1ガイドシーブ11と第2ガイドシーブ12とを隔てる壁部16eを有する。
【0050】
図4〜図6に示すように、仕分け部16は壁部16eの両側面に障壁16fをそれぞれ取り付けた構造となっている。図4を参照して説明すると、壁部16eは上端が細くなっており、下側は緩やかに広がった略くさび形状となっている。障壁16fはロープが図4における紙面垂直方向にずれることを防ぐためのものであり、一定面積の板材である。図示した例では略長方形の板であるが、他の形状の板であってもよい。また、ロープがずれることを防ぐことができる形状であれば板材以外の形状の部材であってもよい。これらが組み合わさった構造体である仕分け部16は、上述したように主リンク13の動きを妨げないように、連結ピン8を介して連結リンク18によって支持されている。仕分け部16はハウジング4に対しては直接は接続されていない。したがって、仕分け部16はロープの動きに伴って第1,第2ガイドシーブ11,12間で多少変位することができる。
【0051】
このような仕分け部16が備わっていれば、ドラム5の周りにロープがまだ巻かれていない状態のエンドレスウインチに対して新規にロープを巻き掛けようとする際には、出入口からロープの先端を挿入することによって、ロープの先端は壁部16eの形状に沿って自然にドラムの所望の片側に導かれる。そのままドラム5を回転させることによってロープをドラム5に巻き掛けて出入口から再び取り出すことができる。したがって、ロープの新規設置が行ないやすいので好ましい。
【0052】
ここでは、仕分け部16は壁部16eと2枚の障壁16fとを組み合わせた構造体としたが、これはあくまで一例である。仕分け部はたとえば一体構造のものであってもよい。
【0053】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0054】
1 モータ、2 減速機部、3 ブレーキ部、4 ハウジング、4a,4b ハウジング片、5 ドラム、6 ロープガイド、7 固定ピン、8,8a,8b 連結ピン、9 出入口、10,10a,10b ロープ、11 第1ガイドシーブ、12 第2 ガイドシーブ、13,13j,13k,13n,13n1,13n2,13q 主リンク、14a,14b,14ia,14ib ローラチェーン、15,15i 押さえローラ、16 仕分け部、16e 壁部、16f 障壁、17 エンドローラ、18,18j,18k 連結リンク、19 ガイドローラ、81 矢印、90 エンドレスウインチ本体、100,101,102,103,104,105,106 エンドレスウインチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープの出入口を有するハウジングと、
前記出入口から取り込んだ前記ロープを外周面に巻き掛けて保持するために前記ハウジングの内部で回転駆動されるドラムと、
前記ハウジングの内部の、前記ドラムと前記出入口との間において、前記ハウジングに直接固定されることなく、前記ロープの入側/出側の両方を横切るように配置され、一方の端に第1ガイドシーブが回動自在に配置され、他方の端に第2ガイドシーブが回動自在に配置された主リンクと、
前記ドラムの外周面に沿うように配置され、一端が前記ハウジングに対して回動自在に支持され、他端は前記主リンクのうち前記第1,第2ガイドシーブ間に回動自在に連結され、前記一端と前記他端との間には前記ロープを前記ドラムの外周面に押さえつけるための1以上の押さえローラを含むローラチェーンとを備え、
前記第1ガイドシーブおよび前記第2ガイドシーブは、前記第1ガイドシーブの側にある前記ロープが前記第1ガイドシーブを前記ドラムから遠ざかる向きに押し進めることによって、前記主リンクが変位し、前記第2ガイドシーブが前記ロープを前記ドラムに向けて押さえつけることができ、かつ、前記第2ガイドシーブの側にある前記ロープが前記第2ガイドシーブを前記ドラムから遠ざかる向きに押し進めることによって、前記主リンクが変位し、前記第1ガイドシーブが前記ロープを前記ドラムに向けて押さえつけることができる程度に大きな直径を有し、
前記ローラチェーンに含まれる前記押さえローラは、前記主リンクの変位に応じて前記ロープを前記ドラムの外周面に押さえつける力を増減させることができる程度に緊密に前記ドラムの外周面に沿っている、エンドレスウインチ。
【請求項2】
前記ローラチェーンは、前記ドラムを前記出入口から見た左右両側に1本ずつ配置されている、請求項1に記載のエンドレスウインチ。
【請求項3】
前記主リンクは長手方向に対称な形状をしており、前記ローラチェーンの前記他端は、前記主リンクの長手方向の中心に連結されている、請求項1または2に記載のエンドレスウインチ。
【請求項4】
前記主リンクは幅方向に対称な形状をしており、前記ローラチェーンの前記他端は、前記主リンクの幅方向の中心に連結されている、請求項1から3のいずれかに記載のエンドレスウインチ。
【請求項5】
前記ハウジングの内部の、前記ドラムと前記出入口との間において、前記主リンクの動きを妨げず、前記ハウジングに直接固定されないように、仕分け部が配置されており、
前記仕分け部は、入側のロープと出側のロープとを隔て、前記第1ガイドシーブと前記第2ガイドシーブとを隔てる壁部を有する、請求項1から4のいずれかに記載のエンドレスウインチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2010−222065(P2010−222065A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67895(P2009−67895)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(591003655)株式会社チルコーポレーション (6)