説明

エン・チオール硬化物及びその製造方法

【課題】 超高屈折率の硬化物と、その原料である硬化性組成物、及びその工業的に安価で簡便な製造方法を提供すること。
【解決手段】 少なくとも一般式(1)で表されるジチオカルバメート化合物と、一般式(2)で表されるポリチオールと硬化剤とを含有する硬化性組成物とする。前記ポリチオールとしては、ポリチオールが、1,2,3−トリメルカプトプロパン又は2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアンが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学材料(例えば眼鏡レンズ、各種光学機器用レンズ(ピックアップレンズ、カメラ、ビデオ、車載カメラ、OHP、及び携帯電話用レンズ、マクロレンズアレイ、プリズム、プリズムシート、光ファイバー等)に用いられる硬化性組成物と、その硬化物であるエン・チオール超高屈折率樹脂材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来プラスチックレンズ材料は数多くの種類が開発され、実際にも使用されているが、光学材料を考えた場合、屈折率1.65を超える超高屈折率樹脂材料と呼ばれるものは、非常に限られていた。
例えばポリチオールとポリイソシアネートとの反応により得られるチオウレタン樹脂で屈折率1.67のものが、ポリエピスルフィド化合物の開環重合により得られるポリチオエーテルで屈折率1.7を超えるものが知られている。しかし何れも熱硬化であるため、成形に時間がかかるだけでなく、低温での成形も困難である等の問題点があった。
また特許文献1には、3,3’−チオビス(プロパン−1,2−ジチオール)と1種以上のエン化合物、光ラジカル重合開始剤を含有する組成物を光硬化させることにより高屈折率な硬化物が製造される事が記載されており、その屈折率は1.598〜1.663であった。更に特許文献1には、高屈折率樹脂を得る方法としてエン化合物とチオール化合物の組み合わせ硫黄含量を上げる方法が提案されているが、屈折率を高めるために単純に硫黄含量を上げると得られる樹脂はゴム状になり十分な硬さが得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−226718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、超高屈折率の硬化物と、その原料である硬化性組成物、及びその工業的に安価で簡便な製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決するため、鋭意研究を行った結果、例えば23℃、湿度50%における屈折率が1.65を超えるような超高屈折率の硬化物と、その原料である硬化性組成物、及びその工業的に安価で簡便な製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の課題は、一般式(1)
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、Rは、アリーレン基、複数のこれらアリーレン基が直接又はヘテロ原子或いは炭素数1〜10の炭化水素基(環式構造や分岐構造も含み、更に低級炭化水素基の中にヘテロ原子を含む。)を介してつながっていても良い。Z及びZ’は独立にN、NH又はNR1を表し、Rは環構造を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を表し、n及びmは独立に1又は2の整数を表す。)で表されるジチオカルバメート化合物と、一般式(2)
【0008】
[化2]
A(SH) (2)
【0009】
(式中、Aは置換基を有していてもよく、その炭素鎖中にヘテロ原子又は環構造を含有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表し、pは2〜10の整数を表す。)で表されるポリチオールと硬化剤とを含有する硬化性組成物から得られるエン・チオール硬化性組成物によって解決される。
【0010】
本発明は、また、一般式(1)で表されるジチオカルバメート化合物と一般式(2)で表されるポリチオールと硬化剤とを含有する硬化性組成物を例えばラジカル開始剤存在下で光重合させて得られるエン・チオール硬化物の製造方法によっても解決される。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、例えば屈折率1.65を超えるような超高屈折率の硬化物と、その原料である硬化性組成物、及びその工業的に安価で簡便な製造方法が提供されるのであり、経済的、工業的価値が極めて大きい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一般式(1)で表されるジチオカルバメート化合物のRは、置換基を有していてもよいアリーレン基、複数のこれらアリーレン基が直接又はヘテロ原子或いは炭素数1〜10の炭化水素基(環式構造や分岐構造も含み、更に炭化水素基の中にヘテロ原子を含む。)を介してつながっていても良い。
本発明において、環式構造とは、脂環構造、芳香環構造、複素環構造等を含むものである。
前記アリーレン基、複数のこれらアリーレン基が直接又はヘテロ原子或いは炭素数1〜10の炭化水素基(環式構造や分岐構造も含み、更に炭化水素基の中にヘテロ原子を含む。)としては、例えば、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,2−キシリレン基、1,3−キシリレン基、1,4−キシリレン基、1,4−ナフチレン基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビフェニルエーテル基、4,4’−ビフェニルチオエーテル基、4,4’−ビフェニルスルホニル基等である。前記の置換基としては特に限定はされないが、例えば、炭素原子数1〜10個(特に炭素原子数1〜5個)である直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基(異性体を含む)、ブチル基(異性体を含む)、ペンチル基(異性体を含む)、ヘキシル基(異性体を含む)、ヘプチル基(異性体を含む)、オクチル基(異性体を含む)、ノニル基(異性体を含む)、デシル基(異性体を含む)等を挙げることができ、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基(異性体を含む)、ブチル基(異性体を含む)、ペンチル基(異性体を含む)、ヘキシル基(異性体を含む)、ヘプチル基(異性体を含む)、オクチル基(異性体を含む)であり、特に好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基(異性体を含む)、ブチル基(異性体を含む)、ペンチル基(異性体を含む)が挙げられる。
【0013】
前記炭素数1〜10の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、メチルメチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、2−プロピレン基、ジメチルメチレン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、3−メチルトリメチレン基、1−エチルエチレン基、2−エチルエチレン基、2,2−ジメチルエチレン基、1,1−ジメチルエチレン基、エチルメチルメチレン基、プロピルメチレン基、ペンタメチレン基、1−メチルテトラメチレン基、2−メチルテトラメチレン基、3−メチルテトラメチレン基、4−メチルテトラメチレン基、1,1−ジメチルトリメチレン基、2,2−ジメチルトリメチレン基、3,3−ジメチルトリメチレン基、1,3−ジメチルトリメチレン基、2,3−ジメチルトリメチレン基、1,2−ジメチルトリメチレン基、1−エチルトリメチレン基、1,1,2−トリメチルエチレン基、ジエチルメチレン基、1−プロピルエチレン基、2−プロピルエチレン基、ブチルメチレン基、ヘキサメチレン基、1−メチルペンタメチレン基、1,1−ジメチルテトラメチレン基、2,2−ジメチルテトラメチレン基、3,3−ジメチルテトラメチレン基、4,4−ジメチルテトラメチレン基、1,1,3−トリメチルトリメチレン基、1,1,2−トリメチルトリメチレン基、1,1,2,2−テトラメチルエチレン基、1,1−ジメチル−2−エチルエチレン基、1,1−ジエチルエチレン基、1−プロピルトリメチレン基、2−プロピルトリメチレン基、3−プロピルトリメチレン基、1−ブチルエチレン基、2−ブチルエチレン基、1−メチル−1−プロピルエチレン基、2−メチル−2−プロピルエチレン基、1−メチル−2−プロピルエチレン基、2−メチル−1−プロピルエチレン基、ペンチルメチレン基、ブチルメチルメチレン基、エチルプロピルメチレン基等のアルキレン基;ヘキサン−1,6−ジイル基、シクロヘキサン−1,1−ジイル基、シクロヘキサン−1,2−ジイル基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基等のアルキレン基や、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基、3−メチルペンタン−1,5−ジイル基、ジメチルメチレン基、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジイル基等の置換基を有するアルキレン基や、シクロへキサン−1,4−ジメチレン基(位置異性体を含む)等の炭素鎖中に環構造を有するアルキレン基;2−チアプロパン−1,3−ジイル基、3−チアペンタン−1,5−ジイル基、4−チアヘプタン−1,7−ジイル基、1,3−ジチアプロパン−1,3−ジイル基、2,4−ジチアペンタン−1,5−ジイル基、2,3−ジチアブタン−1,4−ジイル基、3,4−ジチアヘキサン−1,6−ジイル基、3,5−ジチアヘプタン−1,7−ジイル基、2,5−ジチアヘキサン−1,6−ジイル基、3,6−ジチアオクタン−1,8−ジイル基、4,5−ジチアオクタン−1,8−ジイル基、4,6−ジチアノナン−1,9−ジイル基、4,7−ジチアデカン−1,10−ジイル基、3,7−ジチアノナン−1,9−ジイル基、4,8−ジチアウンデカン−1,11−ジイル基、2−オキサプロパン−1,3−ジイル基、3−オキサペンタン−1,5−ジイル基、4−オキサヘプタン−1,7−ジイル基、1,3−ジオキサプロパン−1,3−ジイル基、2,4−ジオキサペンタン−1,5−ジイル基、3,5−ジオキサヘプタン−1,7−ジイル基、2,5−ジオキサヘキサン−1,6−ジイル基、3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジイル基、4,6−ジオキサノナン−1,9−ジイル基、4,7−ジオキサデカン−1,10−ジイル基、3,7−ジオキサノナン−1,9−ジイル基、4,8−ジオキサウンデカン−1,11−ジイル基、1,4−ジチアン−2,5−ジイル基、1,4−ジオキサン−2,5−ジイル基等の炭素鎖中にヘテロ原子を有するアルキレン基;1,4−ジチアン−2,5−ジメチル基(位置異性体を含む)、1,4−ジオキサン−2,5−ジメチル基(位置異性体を含む)等の炭素鎖中にヘテロ原子及び環構造を有するアルキレン基等が挙げられる。
【0014】
本発明の一般式(1)で表されるジチオカルバメート化合物におけるZ及びZ’としては、それぞれ独立に、窒素原子、NH又はNR1が挙げられる。前記R1は環構造を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を表し、例えば、炭素原子数1〜10、好ましくは炭素原子数1〜7である直鎖状または分岐状のアルキル基やアリール基、シクロアルキル基等が挙げられる。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基等を挙げることができ、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基である。なお、これらの置換基は、その異性体を含み、環構造を有していてもよい。
また、一般式(1)で表されるジチオカルバメート化合物中のn及びmは独立に1又は2の整数を表す。
【0015】
一般式(2)で表されるポリチオール化合物におけるAとしては、脂肪族(脂環式を含む)又は芳香族(芳香脂肪族を含む)の炭化水素基が挙げられ、これらの炭化水素基は、反応に関与しない置換基(アルキル基等)を有していてもよく、その炭素鎖中にヘテロ原子(硫黄原子、酸素原子、窒素原子)や環構造(脂環構造、芳香環構造、複素環構造等)などの原子又は原子団を含有していてもよい。
【0016】
前記の炭化水素基としては、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基、ドデカン−1,12−ジイル基、シクロヘキサン−1,1−ジイル基、シクロヘキサン−1,2−ジイル基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基等のアルキレン基や、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基、3−メチルペンタン−1,5−ジイル基、ジメチルメチレン基、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジイル基等の置換基を有するアルキレン基や、シクロへキサン−1,4−ジメチル基(位置異性体を含む)等の炭素鎖中に環構造を有するアルキレン基や、メタン−トリイル基、エタン−1,1,2−トリイル基、プロパン−1,1,3−トリイル基、プロパン−1,2,3−トリイル基、ブタン−1,1,4−トリイル基、ブタン−1,2,4−トリイル基、2−チアプロパン−1,3−ジイル基、3−チアペンタン−1,5−ジイル基、4−チアヘプタン−1,7−ジイル基、1,3−ジチアプロパン−1,3−ジイル基、2,4−ジチアペンタン−1,5−ジイル基、2,3−ジチアブタン−1,4−ジイル基、3,4−ジチアヘキサン−1,6−ジイル基、3,5−ジチアヘプタン−1,7−ジイル基、2,5−ジチアヘキサン−1,6−ジイル基、3,6−ジチアオクタン−1,8−ジイル基、4,5−ジチアオクタン−1,8−ジイル基、4,6−ジチアノナン−1,9−ジイル基、4,7−ジチアデカン−1,10−ジイル基、3,7−ジチアノナン−1,9−ジイル基、4,8−ジチアウンデカン−1,11−ジイル基、2−オキサプロパン−1,3−ジイル基、3−オキサペンタン−1,5−ジイル基、4−オキサヘプタン−1,7−ジイル基、1,3−ジオキサプロパン−1,3−ジイル基、2,4−ジオキサペンタン−1,5−ジイル基、3,5−ジオキサヘプタン−1,7−ジイル基、2,5−ジオキサヘキサン−1,6−ジイル基、3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジイル基、4,6−ジオキサノナン−1,9−ジイル基、4,7−ジオキサデカン−1,10−ジイル基、3,7−ジオキサノナン−1,9−ジイル基、4,8−ジオキサウンデカン−1,11−ジイル基、1,4−ジチアン−2,5−ジイル基、1,4−ジオキサン−2,5−ジイル基等の炭素鎖中にヘテロ原子を有するアルキレン基や、1,4−ジチアン−2,5−ジメチル基(位置異性体を含む)、1,4−ジオキサン−2,5−ジメチル基(位置異性体を含む)等の炭素鎖中にヘテロ原子及び環構造を有するアルキレン基;1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、2,5−トリレン基、3,4−トリレン基、1,2−キシリレン基、1,3−キシリレン基、1,4−キシリレン基、1,4−ナフチレン基、4,4‘−ビフェニレン基等のアリーレン基や、ピリジン−2,5−ジイル基、3,4−チエニレン基、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル基、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジメチル基等の炭素鎖中にヘテロ原子を有するアリーレン基などが挙げられる。
上記のポリチオールの中でも、取り扱いの容易性の観点から、1,2,3−トリメルカプトプロパン又は2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアンが好ましい。
【0017】
本発明の硬化性組成物中において、一般式(2)で表されるポリチオール中のチオール基のモル数に対する、一般式(1)で表されるジチオカルバメート化合物中の不飽和結合のモル数との比(不飽和結合のモル数/チオール基のモル数)が1.0〜10であることが好ましく、より好ましくは1.0〜5.0である。
ポリチオール及びジチオカルバメート化合物は、それぞれ複数の異なるポリチオール化合物とジチオカルバメート化合物が混合されていてもよい。
前記不飽和結合のモル数/チオール基のモル数が、小さすぎると、悪臭元となるチオールが残留する場合があり、大きすぎると硬化しない場合がある。
【0018】
本発明における硬化剤としては、特に制限されないが、熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤等のラジカル重合開始剤、熱カチオン重合開始剤、光カチオン重合開始剤等のカチオン重合開始剤、熱アニオン重合開始剤、光アニオン重合開始剤等のアニオン重合開始剤等が使用できる。中でも反応性の観点から、ラジカル重合開始剤が好ましく、反応性の高さと取り扱い性の良さから光ラジカル重合開始剤がより好ましい。前記硬化剤は、単独で使用してもよいし、複数種を併用してもよい。
前記硬化剤の添加量としては、ポリチオールに対して0.001〜10重量部、好ましくは0.005〜5重量部が好ましい。
前記硬化剤の添加量が少なすぎると、硬化性組成物の硬化が十分でない場合があり、多すぎると、硬化物が変色する場合がある。
【0019】
本発明の硬化性組成物を光重合させて硬化物を得る場合には、硬化剤として、光重合開始剤を用いる。前記光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、光アニオン重合開始剤、光カチオン重合開始剤等が挙げられ、中でも反応性が高い点から光ラジカル重合開始剤が好ましい。
前記光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、2,2−ジエトキンアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ベンジル、メチルベンゾイルホルメート、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、1,4−ジベンゾイルベンゼン、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルジフェニル、4−ベンゾイルジフェニルエーテル、キサントン、チオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、エチルアントラキノン、10−ブチル−2−クロロアクリドン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0020】
本発明で得られる硬化物の屈折率(nD)としては、1.65〜2.0であることが好ましく、1.67〜1.9がより好ましく、更に好ましくは1.7〜1.8である。
【0021】
本発明の硬化性組成物を光硬化させる際に用いることのできる光源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、得られた硬化物の屈折率は以下の試験法により評価した。
屈折率:ATAGO社製、多波長アッベ屈折計を用いて、
25℃での589(D)nmを測定した。
UV硬化装置:SEN Light社製 UV coring Processor HM15001C-4
【0023】
[合成例1]
ジアリルアミン(3.69g、40mmol)に二硫化炭素(5.05g、66.3mmol)を10℃以下で加え、これに更に同温度でp−キシリレンジクロライド(1.76g、10mmol)を加えた後、25℃で10時間攪拌した。得られた反応混合物に水10mlと酢酸エチル20mlを加え、分離した有機層に1mol/l−塩酸10mlを加えた。再び分離した有機層を減圧濃縮して、薄黄色油状物4.20gを得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;n−ヘキサン/酢酸エチル=10/1(容量比))で精製し、無色粉末として、1,4−ビス(ジアリルアミノチオカルボニルスルファニルメチル)ベンゼン(3.10g、6.9mmol)を得た(p−キシリレンジクロライド基準の単離収率;69%)。また、H−NMRにより構造の確認をした。
【0024】
【化2】

【0025】
1H-NMR(CDCl3,δ(ppm));4.30(4H,brs),4.53(4H,s),4.66(4H,brs),5.16〜5.28(8H,m),5.78〜5.90(4H,m),7.32(4H,s)
【0026】
[合成例2]
ジアリルアミン(3.69g、40mmol)に二硫化炭素(5.05g、66.3mmol)を10℃以下で加え、これに更に同温度で4,4'-ビス(クロロメチル)ビフェニル(2.52g、10mmol)を加えた後、25℃で2.5時間攪拌した。得られた反応混合物に水10mlと酢酸エチル20mlを加え、分離した有機層に1mol/l−塩酸10mlを加えた。再び分離した有機層を減圧濃縮して、薄黄色固体4.77gを得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;n−ヘキサン/酢酸エチル=10/1(容量比))で精製し、無色粉末として、1,4−ビス(ジアリルアミノチオカルボニルスルファニルメチル)ビフェニル(3.33g、6.4mmol)を得た(4,4'-ビス(クロロメチル)ビフェニル基準の単離収率;64%)。
【0027】
【化3】

【0028】
1H-NMR(CDCl3,δ(ppm));4.32(4H,brs),4.60(4H,s),4.68(4H,brs),5.16〜5.29(8H,m),5.80〜5.91(4H,m),7.41〜7.53(8H,m)
【0029】
[合成例3]
N−ベンジルアリルアミン(3.69g、25mmol)に二硫化炭素(1.91g、25mmol)をTHF2mlで希釈した溶液を10℃以下で加えたものを25℃で1.5時間攪拌した。これに同温度でp−キシリレンジクロライド(1.76g、10mmol)をTHF8mlに溶解させた溶液を加えた後、25℃で50時間攪拌した。得られた反応混合物を減圧濃縮し、残渣に酢酸エチル60mlと水10mlを加え、分離した有機層を減圧濃縮して、薄黄色の液体と無色針状物の混合物4.5gを得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;n−ヘキサン/酢酸エチル=40/1〜20/1(容量比))で精製し、無色粘性物として、下記構造式の1,4−ビス(N−ベンジルアリルアミノチオカルボニルスルファニルメチル)ベンゼン(2.1g、3.8mmol)を得た(p−キシリレンジクロライド基準の単離収率;38%)。また、H−NMRにより構造の確認をした。
【0030】
【化4】

(式中、Bnはベンジル基を表す。)
【0031】
1H-NMR(CDCl3,δ(ppm));4.21(2H,brs),4.57(4H,s),4.66(2H,brs),5.15(2H,brs),5.16〜5.28(4H,m), 5.35(2H,brs),5.60〜6.00(2H,m),7.10〜7.40(14H,m)
【0032】
[実施例1]
合成例1と同様の方法で合成した1,4−ビス(ジアリルアミノチオカルボニルスルファニルメチル)ベンゼン(336mg、0.75mmol)と1,2,3−トリメルカプトプロパン0.14mg、1mmol)、及び2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(1.1mg)を混合したものを、80℃で1分間加温して均一溶液としたものを、2枚の石英ガラス板とシリコンラバーから構成される厚さ0.4mmの隙間に注入した。これを1500W(7000J/cm)のメタルハライドランプ光の光源から10cmの距離で25秒照射し、これを3回行って硬化させた。得られた薄黄色フィルム状の硬化物を取り出し、この屈折率を測定した。前記フィルム状の硬化物の23℃、湿度50%における屈折率(n)は、1.72であった。
【0033】
[実施例2]
合成例2と同様の方法で合成した1,4−ビス(ジアリルアミノチオカルボニルスルファニルメチル)ビフェニル(394mg、0.75mmol)、1,2,3−トリメルカプトプロパン(0.14mg、1mmol)及び2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オ(1.1mg)を混合したものを、80℃で1分間加温して均一溶液としたものを、2枚の石英ガラス板とシリコンラバーから構成される厚さ0.4mmの隙間に注入した。これを1500W(7000J/cm)のメタルハライドランプ光の光源から10cmの距離で25秒照射し、これを3回行って硬化させた。得られた薄黄色フィルム状の硬化物を取り出し、この屈折率を測定した。前記フィルム状の硬化物の23℃、湿度50%における屈折率(n)は、1.72であった。
【0034】
[実施例3]
合成例2と同様の方法で合成した1,4−ビス(ジアリルアミノチオカルボニルスルファニルメチル)ビフェニル(315mg)と2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン(255mg、1.2mmol)、及び2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(0.88mg)を混合したものを、80℃で1分間加温して均一溶液としたものを、2枚の石英ガラス板とシリコンラバーから構成される厚さ0.4mmの隙間に注入した。これを1500W(7000J/cm)のメタルハライドランプ光の光源から10cmの距離で25秒照射し、これを3回行って硬化させた。得られた薄黄色フィルム状の硬化物を取り出し、この屈折率(n)を測定した。前記フィルム状の硬化物の23℃、湿度50%における屈折率(n)は、1.72であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一般式(1)で表されるジチオカルバメート化合物と、一般式(2)で表されるポリチオールと硬化剤とを含有する硬化性組成物。
【化1】

(式中、Rは、アリーレン基、複数のこれらアリーレン基が直接又はヘテロ原子或いは炭素数1〜10の炭化水素基(環式構造や分岐構造も含み、更に低級炭化水素基の中にヘテロ原子を含む。)を介してつながっていても良い。Z及びZ’は独立にN、NH又はNR1を表し、Rは環構造を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を表し、n及びmは独立に1又は2の整数を表す。)
[化2]
A(SH) (2)
(式中、Aは置換基を有していてもよく、その炭素鎖中にヘテロ原子又は環構造を含有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表し、pは2〜10の整数を表す。)
【請求項2】
前記一般式(2)で表されるポリチオールが、1,2,3−トリメルカプトプロパン又は2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアンである請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
硬化剤が、ラジカル重合開始剤である請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
ポリチオール中のチオール基のモル数に対するジチオカルバメート化合物中の不飽和結合のモル数の比が1〜5となるように、調製した請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性組成物を光重合させて得られる請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性組成物を硬化して得られるエン・チオール硬化物。
【請求項6】
光重合させて得られる請求項5に記載のエン・チオール硬化物の製造方法。

【公開番号】特開2010−229394(P2010−229394A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25727(P2010−25727)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】