説明

オイルセパレータ

【課題】冷凍機用圧縮機から供給される冷媒ガスからオイルを分離するオイルセパレータにおいて、冷媒ガスに含まれるオイルミストを効率良く液化させることができ、液化したオイルを効率良く冷媒ガスから分離できるオイルセパレータを提供する。
【解決手段】オイルを濾過する濾過材38と、濾過材38の上部に接着された上部蓋体42と、濾過材38の下部に接着された下部蓋体43とを含み、内部空間SIを画成する濾過部36と、濾過部36を収容する本体容器35と、冷媒ガスを内部空間SIに導入するための導入管15Aと、濾過部38によりオイルが濾過された冷媒ガスを、本体容器35の上部から導出するための導出管15Bとを有する。導入管15Aの下端は、内部空間SIにおける、下部蓋体43よりも高く、かつ、上部蓋体42と下部蓋体43との間の略中央Cよりも低い位置で、開口されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機と冷凍機との間に設けられ、冷媒ガスに含まれるオイルを分離するオイルセパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄冷器式冷凍機には、ギフォードマクマホン式冷凍機(GM冷凍機)、ジュールトムソン式+GM冷凍機、クロードサイクル冷凍機、スターリング冷凍機等の種々の種類があるが、一般にはGM冷凍機が多く用いられている。GM冷凍機は、圧縮機と接続されており、圧縮機から供給される高圧の冷媒ガスを冷凍機内で高圧から低圧に断熱膨張することによって冷熱を発生し、発生した冷熱を蓄冷器に設けられた蓄冷材に蓄冷することによって、極低温を得る。
【0003】
圧縮機は、GM冷凍機から戻される低圧の冷媒ガスすなわちリターンガスを圧縮機本体で昇圧し、サプライガスとして再びGM冷凍機に供給する処理を行うものである。GM冷凍機から戻されたリターンガスは圧縮機本体で再び昇圧され、昇圧された冷媒ガスは冷媒ガス熱交換部で冷却処理が行われる。
【0004】
冷却処理が行われ、圧縮機から供給された冷媒ガスは、オイルセパレータに送られてオイルが分離される。このようなオイルセパレータの一例を特許文献1に示す。そして、オイルが分離された冷媒ガスはアドソーバに送られ、その後、サプライガスとしてGM冷凍機に供給される。
【0005】
特許文献1では、縦置き型オイルセパレータの例が開示されている。特許文献1に示す例では、オイルセパレータは、シェルとフィルターエレメントとを含む。シェルは、上部フランジと、下部フランジと、円筒部とにより構成されている。フィルターエレメントは、冷媒ガスに含まれるオイルを捕捉するフィルター部材と、フィルター部材の上部に接着された上部蓋体と、フィルター部材の下部に接着された下部蓋体と、冷媒ガスをフィルター部材内に導入する導入管を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−39222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記したような冷凍機と圧縮機との間に設けられるオイルセパレータには、次のような問題がある。
【0008】
導入管から導入されたオイルを含む冷媒ガスの一部は、フィルターエレメントの上部で濾材を通過する。ところが、導出管がオイルセパレータの上部で開口しているため、フィルターエレメントの上部を通って導出管へ至る経路は、フィルターエレメントの下部を通って導出管へ至る経路に比べ、経路長が短い。そのため、フィルターエレメントの上部で濾材を通過する冷媒ガスからは、効率良くオイルを分離することができない。
【0009】
また、オイルを含む冷媒ガスがフィルターエレメントの上部で濾材を通過する場合、冷媒ガスに含まれるオイルミストが効率良く液化しないため、冷媒ガスに含まれるオイルがオイルミストとして濾材を通過してしまう。その結果、冷媒ガスに含まれるオイルが、フィルターエレメントの上部から外側に液体として滲み出すことがある。その結果、導出管から導出される冷媒ガスから効率良くオイルが分離されておらず、導出管を通ってオイルセパレータから上るオイル量、いわゆるオイル上り量が多くなる。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、冷凍機用圧縮機から供給される冷媒ガスからオイルを分離するオイルセパレータにおいて、冷媒ガスに含まれるオイルミストを効率良く液化させることができ、液化したオイルを効率良く冷媒ガスから分離できるオイルセパレータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる手段を講じたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明は、圧縮機から冷凍機へ冷媒ガスが流れる冷媒ガス流路の途中に設けられ、冷媒ガスに含まれるオイルを分離するオイルセパレータにおいて、冷媒ガスからオイルを濾過する濾過材と、前記濾過材の上部に接着された上部蓋体と、前記濾過材の下部に接着された下部蓋体とを含み、前記濾過材と前記上部蓋体と前記下部蓋体とにより内部空間を画成する濾過部と、前記濾過部を収容する本体容器と、冷媒ガスを前記内部空間に導入するための導入管と、前記濾過部によりオイルが濾過された冷媒ガスを、前記本体容器の上部から導出するための導出管とを有し、前記導入管の下端は、前記内部空間における、前記下部蓋体よりも高く、かつ、前記上部蓋体と前記下部蓋体との間の略中央よりも低い位置で、開口されている、オイルセパレータである。
【0013】
また、本発明は、上述のオイルセパレータにおいて、前記導入管の側周面を前記下端から前記下部蓋体まで延長してなる仮想筒状面の面積が、前記導入管の断面積以上である。
【0014】
また、本発明は、上述のオイルセパレータにおいて、前記下部蓋体は、前記濾過材の下部に、エポキシ系接着剤やシリコン系接着剤など密閉性を有する接着剤により接着されたものである。
【0015】
また、本発明は、上述のオイルセパレータにおいて、前記濾過部は、前記導入管の下端と前記下部蓋体との間に設けられており、前記内部空間に導入された冷媒ガスに含まれるオイルミストの液化を促進する液化促進部材を含み、前記導入管の下端は、前記液化促進部材よりも高く、かつ、前記上部蓋体と前記下部蓋体との間の略中央よりも低い位置で、開口されている。
【0016】
また、本発明は、上述のオイルセパレータにおいて、前記液化促進部材は、繊維状物質よりなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、冷凍機用圧縮機から供給される冷媒ガスからオイルを分離するオイルセパレータにおいて、冷媒ガスに含まれるオイルミストを効率良く液化させることができ、液化したオイルを効率良く冷媒ガスから分離できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施の形態に係る蓄冷器式冷凍機用圧縮機の構成図である。
【図2】第1の実施の形態に係るオイルセパレータの構成を示す断面図である。
【図3】下部蓋体から高圧ガス導入用管の下端までの高さを変化させたときの、高圧ガス導出用管からのオイル上り量を測定した結果を示すグラフである。
【図4】第1の実施の形態に係るオイルセパレータの高圧ガス導入用管の下端の周辺を拡大して示す断面図である。
【図5】高圧ガス導入用管の側周面を下端から下部蓋体まで延長してなる仮想筒状面を説明するための図である。
【図6】第2の実施の形態に係るオイルセパレータの構成を示す断面図である。
【図7】第2の実施の形態に係るオイルセパレータの高圧ガス導入用管の下端の周辺を拡大して示す断面図である。
【図8】高圧ガス導入用管の側周面を下端から液化促進部材の上端まで延長してなる仮想筒状面を説明するための図である。
【図9】液化促進部材の他の例の構成を示す側面図である。
【図10】第2の実施の形態の第1の変形例に係るオイルセパレータの高圧ガス導入用管の下端の周辺を拡大して示す断面図である。
【図11】第2の実施の形態の第2の変形例に係るオイルセパレータの高圧ガス導入用管の下端の周辺を拡大して示す断面図である
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための形態について図面と共に説明する。
(第1の実施の形態)
図1を参照し、本発明の第1の実施の形態に係るオイルセパレータを備えた蓄冷器式冷凍機用圧縮機について説明する。また、本実施の形態では、蓄冷器式冷凍機としてギフォードマクマホン式冷凍機(以下「GM冷凍機」という。)を用いた例について説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態に係る蓄冷器式冷凍機用圧縮機10(以下「圧縮機」という。)の構成図である。
【0021】
圧縮機10は、圧縮機本体11、熱交換器12、高圧側配管13、低圧側配管14、オイルセパレータ15、アドソーバ16、ストレージタンク17、及びバイパス機構18等により構成されている。圧縮機10は、サプライ配管22及びリターン配管23によりGM冷凍機30に接続されている。圧縮機10は、GM冷凍機30からリターン配管23を介して戻される低圧の冷媒ガス(リターンガス)を圧縮機本体11で昇圧し、サプライガスとしてサプライ配管22を介して再びGM冷凍機30に供給するものである。
【0022】
GM冷凍機30から戻されたリターンガスは、リターン配管23を介して先ずストレージタンク17に流入する。ストレージタンク17は、リターンガスに含まれる脈動を除去するためのものである。ストレージタンク17は比較的大きな容量を有しているため、リターンガスをストレージタンク17内に導入することにより脈動を除去することができる。
【0023】
ストレージタンク17で脈動が除去されたリターンガスは、低圧側配管14に導出される。低圧側配管14は圧縮機本体11に接続されており、よってストレージタンク17において脈動を除去されたリターンガスは圧縮機本体11に供給される。
【0024】
圧縮機本体11は、例えばスクロール方式或いはロータリ式のポンプであり、リターンガスを圧縮して高圧の冷媒ガス(サプライガス)に昇圧するためのものである。圧縮機本体11は、昇圧されたサプライガスを高圧側配管13A(13)に送り出す。サプライガスは圧縮機本体11で昇圧される際、圧縮機本体11内のオイルが若干混入した状態で高圧側配管13A(13)に送り出される。
【0025】
なお、高圧側配管13は、圧縮機10からGM冷凍機30へ冷媒ガスが流れる冷媒ガス流路に相当する。
【0026】
また圧縮機本体11は、オイルを用いて冷却を行う構成とされている。このため、オイルを循環させるオイル冷却配管33は、熱交換器12を構成するオイル熱交換部26に接続された構成とされている。また、オイル冷却配管33には、内部を流れるオイル流量を制御するオリフィス32が設けられている。
【0027】
熱交換器12は、冷却水配管25に冷却水が循環するよう構成されている。熱交換器12は、オイル冷却配管33を流れるオイルの冷却処理を行うオイル熱交換部26と、サプライガスを冷却する冷媒ガス熱交換部27とを有している。オイル熱交換部26においてオイル冷却配管33内を流れるオイルは熱交換されて冷却され、また冷媒ガス熱交換部27において高圧側配管13A(13)内を流れるサプライガスは熱交換されて冷却される。
【0028】
圧縮機本体11で昇圧され、冷媒ガス熱交換部27で冷却されたサプライガスは、高圧側配管13A(13)を介してオイルセパレータ15に供給される。オイルセパレータ15ではサプライガスに含まれるオイルが冷媒から分離されると共に、オイルに含まれる不純物や塵埃も除去される。なお、オイルセパレータ15の詳細な構成については後述する。
【0029】
オイルセパレータ15でオイル除去が行われたサプライガスは、高圧側配管13B(13)を介してアドソーバ16に送られる。アドソーバ16は、サプライガスに含まれる特に気化したオイル成分を除去するためのものである。そして、アドソーバ16において気化したオイル成分が除去されると、サプライガスはサプライ配管22に導出され、これによりGM冷凍機30に供給される。
【0030】
バイパス機構18は、バイパス配管19、高圧側圧力検出装置20、及びバイパス弁21により構成されている。バイパス配管19は、圧縮機10のサプライガスが流れる高圧側とリターンガスが流れる低圧側とを連通する配管である。高圧側圧力検出装置20は、高圧側配管13B内のサプライガスの圧力を検出するものである。バイパス弁21は、バイパス配管19を開閉する電動弁装置である。また、バイパス弁21は常閉弁とされているが、高圧側圧力検出装置20により駆動制御される構成とされている。
【0031】
具体的には、高圧側圧力検出装置20がオイルセパレータ15からアドソーバ16に至るサプライガスの圧力(即ち、高圧側配管13B内の圧力)が既定圧力以上になったことを検出した際、バイパス弁21は高圧側圧力検出装置20に駆動されて開弁される構成とされている。これにより、既定圧力以上のサプライガスがGM冷凍機30に供給されることを防止している。
【0032】
オイル戻り配管24は、高圧側がオイルセパレータ15に接続されており、低圧側が低圧側配管14に接続されている。また、オイル戻り配管24の途中には、オイルセパレータ15で分離されたオイルに含まれる塵埃を除去するフィルター28と、オイルの戻り量を制御するオリフィス29が設けられている。
【0033】
次に、図1から図4を参照し、本実施の形態に係るオイルセパレータ15について説明する。本実施の形態に係るオイルセパレータ15は、本発明に係るオイルセパレータを、縦置き型オイルセパレータに適用した例である。
【0034】
図2は、本実施の形態に係るオイルセパレータ15の構成を示す断面図である。
【0035】
なお、図2では、冷媒ガスの流れをGで示し、オイルの流れをOで示している。
【0036】
オイルセパレータ15は、シェル35とフィルターエレメント36とにより構成されている。
【0037】
なお、シェル35は、本発明における本体容器に相当し、フィルターエレメント36は、本発明における濾過部に相当する。
【0038】
シェル35は、円筒部35A、上部フランジ35B及び下部フランジ35Cにより構成されている。
【0039】
円筒部35Aは、中空な筒形状とされている。円筒部35Aの軸は上下方向に延びている。すなわち、円筒部35Aの軸は略垂直に延在している。円筒部35Aの下端部には下部フランジ35Cが溶接により固定されており、よって気密に塞がれた構成とされている。また、円筒部35Aの上端部には上部フランジ35Bが溶接により固定されており、よって気密に閉蓋された構成とされている。
【0040】
上部フランジ35Bには、高圧ガス導入用管15A、高圧ガス導出用管15B及びオイル戻り用管15Cが設けられている。
【0041】
なお、高圧ガス導入用管15Aは、本発明における導入管に相当し、高圧ガス導出用管15Bは、本発明における導出管に相当する。
【0042】
高圧ガス導入用管15Aは、上部フランジ35Bを貫通して設けられている。上部フランジ35Bを貫通した高圧ガス導入用管15Aは、シェル35内を上部フランジ35Bから後述するフィルターエレメント36の上部蓋体42まで延在し、上部蓋体42を貫通して設けられている。また、高圧ガス導入用管15Aは、上部フランジ35Bの上方において、図1に示す高圧側配管13A(13)に接続されている。高圧ガス導入用管15Aは、オイルセパレータ15内に、高圧ガスである冷媒ガスを導入する。
【0043】
高圧ガス導出用管15Bは、上部フランジ35Bを貫通して設けられている。上部フランジ35Bを貫通した高圧ガス導出用管15Bは、シェル35内の上部、すなわち上部フランジ35Bの下方であって上部フランジ35Bの付近において、下端が高圧ガス導出口15Eとして開口されている。また、高圧ガス導出用管15Bは、上部フランジ35Bの上方において、図1に示す高圧側配管13B(13)に接続されている。高圧ガス導出用管15Bは、オイルセパレータ15内から、高圧ガスである冷媒ガスを導出する。
【0044】
オイル戻り用管15Cは、上部フランジ35Bを貫通して設けられている。上部フランジ35Bを貫通したオイル戻り用管15Cは、シェル35内を、上部フランジ35Bから下部フランジ35Cの付近まで上下方向に延在するように設けられている。オイル戻り用管15Cの下端は、冷媒ガスから分離したオイルを排出するオイル排出口15Fとして開口されている。また、オイル戻り用管15Cは、上部フランジ35Bの上方で、図1に示すオイル戻り配管24に接続されている。オイル戻り用管15Cは、オイルセパレータ15内から、オイルを戻す。
【0045】
フィルターエレメント36は、内筒部材37、フィルター部材38、外筒部材39、上部蓋体42及び下部蓋体43等により構成されている。
【0046】
内筒部材37は、例えばステンレスや炭素鋼よりなるパンチングプレートを円筒形状に曲げてなる部材である。フィルター部材38は、円筒形状の内筒部材37を芯とし、内筒部材37の周りに、濾材を円筒形状に巻回すように配置して設けられている。濾材としては、例えばグラスウール等を用いることができる。外筒部材39は、例えばステンレスや炭素鋼よりなるパンチングプレートを円筒形状に曲げてなる部材であり、フィルター部材38の周囲を囲むように設けられている。すなわち、フィルター部材38は、水平断面視でリング形状を有しており、内周面を内筒部材37により補強されており、外周面を外筒部材39により補強されている。
【0047】
なお、フィルター部材38は、本発明における濾過材に相当する。
【0048】
また、本実施の形態では、内筒部材37及び外筒部材39としてパンチングメタルを用いる構成を例に説明するが、金網、スリットを設けた板、棒材を格子状に並べた部材など、ガスの流れを阻害せずにフィルター部材38を支えてオイルを分離することができればどのような部材を用いてもよい。
【0049】
上部蓋体42と下部蓋体43とは、上下から内筒部材37、フィルタ部材38及び外筒部材39を挟むように設けられている。上部蓋体42及び下部蓋体43は、それぞれフィルタ部材38の上部及び下部に接着剤により接着されている。
【0050】
また、内筒部材37と上部蓋体42と下部蓋体43とは、内筒部材37の内部であって上下を上部蓋体42と下部蓋体43とにより囲まれた空間を内部空間SIとして画成する。また、シェル35とフィルターエレメント36とは、シェル35の内部であって、フィルターエレメント36の外部の空間を外部空間SOとして画成する。
【0051】
上部蓋体42には、前述したように、上部フランジ35Bを貫通した高圧ガス導入用管15Aが、上部蓋体42を貫通して設けられている。また、上部蓋体42を貫通した高圧ガス導入用管15Aは、内部空間SIを、上部蓋体42から下部蓋体43に向かって上下方向に延在し、下端が高圧ガス導入口15Dとして開口されている。高圧ガス導入用管15Aは、冷媒ガスを内部空間SIに導入するためのものである。
【0052】
高圧ガス導入用管15Aを通り、高圧ガス導入口15Dから内部空間SIに導入された冷媒ガスは、内筒部材37、フィルター部材38、外筒部材39の順に、フィルターエレメント36を水平断面視における径方向外方に向かって放射状に流れる。冷媒ガスがフィルターエレメント36を通過する際に、冷媒ガスに含まれているオイルが濾過されることによって冷媒ガスから分離され、オイルが分離された冷媒ガスが外部空間SOに導入される。そして、外部空間SOに導入された冷媒ガスは、高圧ガス導出口15Eから高圧ガス導出用管15Bを通って導出される。
【0053】
図3は、下部蓋体43から高圧ガス導入用管15Aの下端までの高さを変化させたときの、高圧ガス導出用管15Bからのオイル上り量を測定した結果を示すグラフである。
【0054】
図2に示すように、下部蓋体43から上部蓋体42までの高さをH0とする。また、下部蓋体43から高圧ガス導入用管15Aの下端までの高さ、すなわち下部蓋体43から高圧ガス導入口15Dまでの高さをHとする。そして、図3に示すデータは、高さHを変化させたときの、高圧ガス導出用管15Bからのオイル上り量を、例えば高圧側配管13B(13)に設けられたオイルトラップにより測定したものである。
【0055】
なお、図3に示すグラフにおいて、横軸に示す下部蓋体43から高圧ガス導入用管15Aの下端までの高さについては、高さHを高さH0により規格化した高さH/H0として示す。また、図3に示すグラフにおいて、縦軸に示す高圧ガス導出用管15Bからのオイル上り量については、高さがHのときのオイル上り量を高さがH0のときのオイル上り量により規格化した上り量として示す。
【0056】
図3に示すように、高さH/H0が1から0に向かって減少するのに伴って、オイル上り量も減少する。そして、高さH/H0が0.5の近傍より小さい範囲では、オイル上り量は略一定値に収束する。従って、下記式(1)
0<H<H0/2 (1)
に示す関係を満たすときに、オイル上り量を減少させる効果が安定して得られる。すなわち、高圧ガス導入用管15Aの下端は、下部蓋体43よりも高く、かつ、上部蓋体42と下部蓋体43との間の中央Cよりも低い位置で、内部空間SI内に開口されているときに、オイルを効率良く冷媒ガスから分離できる。
【0057】
高圧ガス導入用管15Aの下端が、下部蓋体43よりも高く、かつ、上部蓋体42と下部蓋体43との間の中央Cよりも低い位置で、内部空間SI内に開口されているときに、オイルを効率良く冷媒ガスから分離できる作用効果については、例えば以下のように考えられる。
【0058】
例えば、高圧ガス導入口15Dが相対的に低い高さ位置であるため、高圧ガス導入口15Dから導入された冷媒ガスに含まれるオイルミストが、下部蓋体43に噴霧されることによって、オイルミストを効率良く液化させることができるものと考えられる。
【0059】
また、高圧ガス導入口15Dから導入された冷媒ガスが高圧ガス導出口15Eから導出されるまでにオイルセパレータ15内を通過する距離が大きくなるため、液化したオイルを途中で分離しやすくなり、液化したオイルを効率良く冷媒ガスから分離できるものと考えられる。
【0060】
また、式(1)の関係を満たすとき、上部蓋体42と下部蓋体43との間の中央Cよりも高い位置にあるフィルター部材38を通過するオイルミストの量は少なくなる。従って、中央Cよりも高い位置にフィルター部材38を備えていない場合でもオイル上り量を減少させることができる。すなわち、中央Cよりも高い位置のフィルター部材38を短くすることができるため、フィルター部材38の全高を短くすることができ、オイルセパレータ15の全高を短くすることができる。
【0061】
図4は、本実施の形態に係るオイルセパレータ15の高圧ガス導入用管15Aの下端の周辺を拡大して示す断面図である。図5は、高圧ガス導入用管15Aの側周面を下端から下部蓋体43まで延長してなる仮想筒状面VCを説明するための図である。
【0062】
図4及び図5に示すように、高圧ガス導入用管15Aの側周面を下端すなわち高圧ガス導入口15Dから下部蓋体43まで延長してなる仮想筒状面をVCとする。また、高圧ガス導入用管15Aの径をDとし、断面積をS0とする。このとき、仮想筒状面VCの高さはHである。そして、仮想筒状面VCの面積S1(=πDH)が、高圧ガス導入用管15Aの断面積S0(=π(D/2))よりも小さいとき、高圧ガス導入用管15Aの下端を回り込む冷媒ガスの流れGの流路断面積が、高圧ガス導入用管15A内の流路断面積よりも小さくなる。そのため、高圧ガス導入用管15Aの下端を回り込む際に圧力損失が生じ、オイルセパレータ15から導出された高圧ガスである冷媒ガスの圧力が低下し、冷凍機30における冷凍能力が低下するおそれがある。
【0063】
従って、仮想筒状面VCの面積S1が、高圧ガス導入用管15Aの断面積S0以上であることが好ましい。これにより、高圧ガス導入用管15Aの下端を回り込む冷媒ガスの流れGの流路断面積が、高圧ガス導入用管15A内の流路断面積以上になる。従って、高圧ガス導入用管15Aの下端を回り込む際に圧力損失が生じず、オイルセパレータ15から導出された高圧ガスである冷媒ガスの圧力が低下すること、及び、冷凍機30における冷凍能力が低下することを防止できる。
【0064】
なお、図4に示すように、下部蓋体43は、フィルタ部材38の下部に、エポキシ系接着剤やシリコン系接着剤など密閉性を有する接着剤Eにより接着されていることが好ましい。これにより、フィルタ部材38と下部蓋体43との間に隙間が発生することを防止できる。従って、高圧ガス導入口15Dから内部空間SIに導入された冷媒ガスが、オイルを含んだまま隙間を通って外部空間SOに流れることを防止できる。また、液化したオイルOLが、隙間を通って外部空間SOに流れることを防止できる。
(第2の実施の形態)
次に、図6を参照し、第2の実施の形態に係るオイルセパレータについて説明する。本実施の形態に係るオイルセパレータ15aでは、高圧ガス導入用管15Aの下端と下部蓋体43との間に、液化促進部材51が設けられている。
【0065】
図6は、本実施の形態に係るオイルセパレータ15aの構成を示す断面図である。
【0066】
本実施の形態に係るオイルセパレータ15aにおける、液化促進部材51及び高圧ガス導入用管15A以外の部分については、第1の実施の形態に係るオイルセパレータ15と同一の構成を有する。従って、本実施の形態に係るオイルセパレータ15aについては、液化促進部材51及び高圧ガス導入用管15A以外の部分の説明を省略する。
【0067】
液化促進部材51は、高圧ガス導入用管15Aの下端と下部蓋体43との間に設けられており、高圧ガス導入用管15Aから内部空間SI内に導入された冷媒ガスに含まれるオイルミストが噴霧されることによって、オイルミストの液化を促進するためのものである。本実施の形態に係る液化促進部材51は、平面視において円形形状を有する上板部51Aと、上端が上板部51Aの中心に接合されるとともに下端が下部蓋体43に接合されている軸部51Bとを有し、側面視においてT字形状を有する。また、液化促進部材51は、高圧ガス導入用管15Aから内部空間SI内に導入された冷媒ガスに含まれるオイルミストが、液化促進部材51の上板部51Aの上面に噴霧されることによって、オイルミストの液化が促進される。
【0068】
本実施の形態では、高圧ガス導入用管15Aの下端が、液化促進部材51の上端よりも高く、かつ、上部蓋体42と下部蓋体43との間の中央Cよりも低い位置で、内部空間SI内に開口されているときに、オイルを効率良く冷媒ガスから分離できる。高圧ガス導入口15Dから導入された冷媒ガスに含まれるオイルミストが、下部蓋体43に噴霧されるため、オイルミストを効率良く液化させることができるからである。また、高圧ガス導入口15Dから導入された冷媒ガスが高圧ガス導出口15Eから導出されるまでにオイルセパレータ15a内を通過する距離が大きくなるため、液化したオイルを途中で分離しやすくなり、液化したオイルを効率良く冷媒ガスから分離できるからである。
【0069】
図7は、本実施の形態に係るオイルセパレータ15aの高圧ガス導入用管15Aの下端の周辺を拡大して示す断面図である。図8は、高圧ガス導入用管15Aの側周面を下端から液化促進部材51の上端まで延長してなる仮想筒状面VCを説明するための図である。
【0070】
図7及び図8に示すように、高圧ガス導入用管15Aの側周面を下端すなわち高圧ガス導入口15Dから液化促進部材51まで延長してなる仮想筒状面をVCとする。また、高圧ガス導入用管15Aの径をDとし、断面積をS0とする。更に、液化促進部材51の高さをHPとする。このとき、仮想筒状面VCの高さは、H−HPとなる。そして、仮想筒状面VCの面積S1(=πD(H−HP))が、高圧ガス導入用管15Aの断面積S0(=π(D/2))よりも小さいとき、高圧ガス導入用管15Aの下端を回り込む冷媒ガスの流れGの流路断面積が、高圧ガス導入用管15A内の流路断面積よりも小さくなる。そのため、高圧ガス導入用管15Aの下端を回り込む際に圧力損失が生じ、オイルセパレータ15aから導出された高圧ガスである冷媒ガスの圧力が低下し、冷凍機30における冷凍能力が低下するおそれがある。
【0071】
従って、仮想筒状面VCの面積S1が、高圧ガス導入用管15Aの断面積S0以上であることが好ましい。これにより、高圧ガス導入用管15Aの下端を回り込む冷媒ガスの流れGの流路断面積が、高圧ガス導入用管15A内の流路断面積以上になる。従って、高圧ガス導入用管15Aの下端を回り込む際に圧力損失が生じず、オイルセパレータ15aから導出された高圧ガスである冷媒ガスの圧力が低下すること、及び、冷凍機30における冷凍能力が低下することを防止できる。
【0072】
また、本実施の形態でも、図7に示すように、下部蓋体43は、フィルタ部材38の下部に、エポキシ系接着剤やシリコン系接着剤など密閉性を有する接着剤Eにより接着されていることが好ましい。これにより、フィルタ部材38と下部蓋体43との間に隙間が発生することを防止できる。従って、高圧ガス導入口15Dから内部空間SIに導入された冷媒ガスが、オイルを含んだまま隙間を通って外部空間SOに流れることを防止できる。
【0073】
更に、本実施の形態では、図7に示すように、内部空間SIに導入された冷媒ガスに含まれるオイルミストが上板部51Aに噴霧されて液化すると、液化したオイルOLが上板部51Aの下に溜まるため、上板部51AがオイルOLに浸されない。従って、内部空間SIに導入された冷媒ガスに含まれるオイルミストが上板部51Aに噴霧されて液化する効果を持続させることができる。
【0074】
図9は、液化促進部材51の他の例の構成を示す側面図である。
【0075】
図7に示したT字形状を有する液化促進部材51に代え、図9(a)に示すような、円柱形状を有し、上面部51Cの周囲にテーパ部51Dが形成された液化促進部材51aを用いてもよい。このとき、高圧ガス導入口15Dから導入された冷媒ガスは、液化促進部材51aの上面部51C又はテーパ部51Dに噴霧される。あるいは、図9(b)に示すような、円錐形状を有し、円錐面51Eが形成された液化促進部材51bを用いてもよい。このとき、高圧ガス導入口15Dから導入された冷媒ガスは、液化促進部材51bの円錐面51Eに噴霧される。
(第2の実施の形態の第1の変形例)
次に、図10を参照し、第2の実施の形態の第1の変形例に係るオイルセパレータについて説明する。本変形例に係るオイルセパレータでは、高圧ガス導入用管15Aの下端と下部蓋体43との間に、繊維状物質よりなる液化促進部材51cが設けられている。
【0076】
図10は、本変形例に係るオイルセパレータの高圧ガス導入用管15Aの下端の周辺を拡大して示す断面図である。
【0077】
本変形例に係るオイルセパレータにおける、液化促進部材51c以外の部分については、第2の実施の形態に係るオイルセパレータ15aと同一の構成を有する。従って、本変形例に係るオイルセパレータについては、液化促進部材51c以外の部分の説明を省略する。
【0078】
液化促進部材51cは、繊維状物質よりなることが好ましい。これにより、高圧ガス導入口15Dから内部空間SIに導入された冷媒ガスに含まれるオイルミストが繊維状物質に噴霧されることによって、オイルミストの液化が促進される。
【0079】
更に、液化促進部材51cは、フィルター部材38よりも目の粗い、例えばスチールウール等の繊維状物質よりなることが好ましい。これにより、高圧ガス導入口15Dから内部空間SIに導入された冷媒ガスに含まれるオイルミストの液化が促進されるとともに、液化したオイルOLが液化促進部材51c中に留まらずにフィルター部材38に向かって流れる。従って、フィルター部材38により液化したオイルを効率良く冷媒ガスから分離できる。
【0080】
また、本変形例でも、図10に示すように、下部蓋体43は、フィルタ部材38の下部に、エポキシ系接着剤やシリコン系接着剤など密閉性を有する接着剤Eにより接着されていることが好ましい。これにより、フィルタ部材38と下部蓋体43との間に隙間が発生することを防止できる。従って、高圧ガス導入口15Dから内部空間SIに導入された冷媒ガスが、オイルを含んだまま隙間を通って外部空間SOに流れることを防止できる。
(第2の実施の形態の第2の変形例)
次に、図11を参照し、第2の実施の形態の第2の変形例に係るオイルセパレータについて説明する。本変形例に係るオイルセパレータでは、液化したオイルを受ける受け部を含む漏斗形状を有する液化促進部材51dが設けられている。
【0081】
図11は、本変形例に係るオイルセパレータの高圧ガス導入用管15Aの下端の周辺を拡大して示す断面図である。
【0082】
本変形例に係るオイルセパレータにおける、液化促進部材51d以外の部分については、第2の実施の形態に係るオイルセパレータ15aと同一の構成を有する。従って、本変形例に係るオイルセパレータについては、液化促進部材51d以外の部分の説明を省略する。
【0083】
液化促進部材51dは、受け部51Fと排液管部51Gとを有し、漏斗形状を有する。受け部51Fは、すり鉢状の形状を有しており、高圧ガス導入口15Dから導入された冷媒ガスに含まれるオイルミストが受け部51Fに噴霧されることによって、オイルミストの液化が促進される。また、オイルミストが液化したオイルOLは、受け部51Fに溜まる。受け部51Fは、中心最下部において、排液管部51Gの内部に形成された管路と連通している。排液管部51Gの内部に形成された管路は、下部蓋体43を貫通し、下部蓋体43の下面に形成された開口を介して、外部空間SOと連通している。これにより、高圧ガス導入口15Dから内部空間SIに導入された冷媒ガスに含まれるオイルミストが液化促進部材51dの受け部51Fに噴霧されることによって、オイルミストの液化が促進される。また、液化したオイルOLは、受け部51Fから排液管部51Gの内部に形成された管路を通って、外部空間SOに流れる。従って、フィルター部材38が液化したオイルOLを濾過する機能を補助できるため、液化したオイルを更に効率良く冷媒ガスから分離できる。
【0084】
また、本変形例でも、図11に示すように、下部蓋体43は、フィルタ部材38の下部に、エポキシ系接着剤やシリコン系接着剤など密閉性を有する接着剤Eにより接着されていることが好ましい。これにより、フィルタ部材38と下部蓋体43との間に隙間が発生することを防止できる。従って、高圧ガス導入口15Dから内部空間SIに導入された冷媒ガスが、オイルを含んだまま隙間を通って外部空間SOに流れることを防止できる。
【0085】
以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0086】
10 圧縮機
11 圧縮機本体
15、15a オイルセパレータ
15A 高圧ガス導入用管
15B 高圧ガス導出用管
15C オイル戻り用管
30 GM冷凍機
35 シェル
35A 円筒部
35B 上部フランジ
35C 下部フランジ
36 フィルターエレメント
37 内筒部材
38 フィルター部材
39 外筒部材
42 上部蓋体
43 下部蓋体
C 中央
SI 内部空間
SO 外部空間
VC 仮想筒状面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機から冷凍機へ冷媒ガスが流れる冷媒ガス流路の途中に設けられ、冷媒ガスに含まれるオイルを分離するオイルセパレータにおいて、
冷媒ガスからオイルを濾過する濾過材と、前記濾過材の上部に接着された上部蓋体と、前記濾過材の下部に接着された下部蓋体とを含み、前記濾過材と前記上部蓋体と前記下部蓋体とにより内部空間を画成する濾過部と、
前記濾過部を収容する本体容器と、
冷媒ガスを前記内部空間に導入するための導入管と、
前記濾過部によりオイルが濾過された冷媒ガスを、前記本体容器の上部から導出するための導出管と
を有し、
前記導入管の下端は、前記内部空間における、前記下部蓋体よりも高く、かつ、前記上部蓋体と前記下部蓋体との間の略中央よりも低い位置で、開口されている、オイルセパレータ。
【請求項2】
前記導入管の側周面を前記下端から前記下部蓋体まで延長してなる仮想筒状面の面積が、前記導入管の断面積以上である、請求項1に記載のオイルセパレータ。
【請求項3】
前記下部蓋体は、前記濾過材の下部に、エポキシ系接着剤やシリコン系接着剤など密閉性を有する接着剤により接着されたものである、請求項1又は請求項2に記載のオイルセパレータ。
【請求項4】
前記濾過部は、前記導入管の下端と前記下部蓋体との間に設けられており、前記内部空間に導入された冷媒ガスに含まれるオイルミストの液化を促進する液化促進部材を含み、
前記導入管の下端は、前記液化促進部材よりも高く、かつ、前記上部蓋体と前記下部蓋体との間の略中央よりも低い位置で、開口されている、請求項1に記載のオイルセパレータ。
【請求項5】
前記液化促進部材は、繊維状物質よりなる、請求項1から請求項4のいずれかに記載のオイルセパレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−202635(P2012−202635A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68866(P2011−68866)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)