説明

オイルタンク

【課題】樹脂製のタンク本体の内部にフィルタを配設する場合に、フィルタをタンク本体に固定する前に該タンク本体に位置決めした状態で溶着できるようにすることで、フィルタをタンク本体に強固に、かつ、確実に固定できるようにして不良品の発生を抑制する。
【解決手段】タンク本体2は、タンクアッパ10とタンクロア20とに分割されている。タンクアッパ10とタンクロア20には、アッパ側溶着用突条部13aとロア側溶着用突条部23aとが形成されている。ロア側溶着用突条部23aにおける内周側の周方向一部には、フィルタ30を位置決めするためのフィルタ位置決め用段部24が形成されている。フィルタ30の縁部には、フィルタ位置決め用段部24に嵌合する嵌合部32aが形成されている。ロア側溶着用突条部23a及びフィルタ30の嵌合部32aは、アッパ側溶着用突条部13aに溶着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製のオイルタンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、オイルタンクを樹脂材で構成することが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のオイルタンクは、2つの部材を組み合わせて構成されたタンク本体と、タンク本体内に収容されるフィルタとを備えている。タンク本体を構成する一方のタンク構成部材の開放側には、フィルタの周縁部が嵌る段部が形成されている。一方、他方のタンク構成部材の開放側には、段部に嵌ったフィルタの周縁部に当接する当接部が形成されている。また、両タンク構成部材の開放側には、互いに溶着されるフランジが形成されている。
【0003】
上記一方のタンク構成部材の段部にフィルタの周縁部を嵌めた状態で両タンク構成部材の開放側を合わせてフランジを溶着すると、他方のタンク構成部材の当接部がフィルタの周縁部に当接してフィルタが段部に嵌った状態で保持されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−162526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、オイルタンクにはオイルの脈動や機器の振動等による加振力が作用するとともに、経年変化も生じ得る。特許文献1のオイルタンクでは、フィルタに当接部を当接させているだけなので、フィルタにがたつきが発生してオイルの濾過性能を確保できなくなる恐れがある。
【0006】
そこで、フィルタをタンク構成部材に溶着することが考えられるが、溶着後は、フィルタはオイルタンクの中にあり、フィルタとオイルタンクとの溶着部分が狙い通りに溶着できているか否かを検査するのは困難であり、不良品の発生懸念がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、樹脂製のタンク本体の内部にフィルタを配設する場合に、フィルタをタンク本体に固定する前に該タンク本体に位置決めした状態で溶着できるようにすることで、フィルタをタンク本体に強固に、かつ、確実に固定できるようにして不良品の発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、フィルタの縁部を一方のタンク構成部材の溶着部に位置決めした状態で、フィルタの縁部及び溶着部を他方のタンク構成部材の溶着部に溶着するようにした。
【0009】
第1の発明は、オイルの流入孔(S1)及び流出孔(S2)を有する樹脂製のタンク本体(2)と、上記タンク本体(2)の内部に配設されるオイル濾過用のフィルタ(30)とを備え、上記流入孔(1)から流入したオイルを上記フィルタ(30)により濾過した後に上記流出孔(S2)から流出させるように構成されたオイルタンク(1)において、上記タンク本体(2)は、半割形状の第1タンク構成部材(20)及び第2タンク構成部材(10)に分割され、上記第1タンク構成部材(20)の開放側の全周には、上記第2タンク構成部材(10)の開放側の全周に溶着される環状の第1溶着部(23a)が形成され、上記第2タンク構成部材(10)の開放側の全周には、上記第1溶着部(23a)の全周に溶着される環状の第2溶着部(13a)が形成され、上記第1溶着部(23a)における内周側の周方向一部には、上記フィルタ(30)を位置決めするためのフィルタ位置決め用の段部(24)が形成され、上記フィルタ(30)の縁部には、上記段部(24)に嵌合する嵌合部(32a)が形成され、上記第1溶着部(23a)及び上記フィルタ(30)の嵌合部(32a)は、上記第2溶着部(13a)に溶着されていることを特徴とするものである。
【0010】
この構成によれば、フィルタの嵌合部が第1タンク構成部材の第1溶着部の段部に嵌合すると、段部が周方向の一部にのみ形成されているので、嵌合部の周方向両側への移動が第1溶着部により阻止され、さらに、段部が第1溶着部の内周側に形成されているので、嵌合部が第1溶着部の外側へ移動するのが第1溶着部により阻止される。これにより、フィルタが第1タンク構成部材に対し位置決めされる。
【0011】
そして、第1タンク構成部材の第1溶着部及びフィルタの嵌合部は第2タンク構成部材の第2溶着部に溶着されてオイルタンクが得られる。溶着時には、上記のようにフィルタが位置決めされているので、フィルタの位置ずれが抑制され、狙い通りの溶着が可能となる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、上記第1タンク構成部材(20)及び第2タンク構成部材(10)の一方のタンク構成部材の周壁部には、上記流入孔(S1)及び流出孔(S2)の一方を構成する管(22a)が該周壁部の外側へ突出するように該周壁部に一体成形され、上記一方のタンク構成部材の周壁部の外側には、該周壁部及び上記管(22a)と一体成形された補強板部(25)が該管(22a)の径方向両側に形成され、上記補強板部(25)には、上記タンク本体(2)を締結固定するための複数の締結用ボス(27a,27b)が上記管(22a)を径方向に挟むように形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
この構成によれば、管及び補強板部によって締結用ボス近傍の剛性が向上する。
【発明の効果】
【0014】
第1発明によれば、第1タンク構成部材の第1溶着部における内周側の周方向一部に位置決め用の段部を形成し、この段部にフィルタの嵌合部を嵌合させた状態で、第1溶着部及び嵌合部を第2タンク構成部材の第2溶着部に溶着するようにしたので、フィルタをタンク本体に強固に、かつ、確実に固定でき、不良品の発生を抑制できる。
【0015】
第2の発明によれば、一方のタンク構成部材の周壁部に管及び補強板部を一体成形し、補強板部に複数の締結用ボスを、管を径方向に挟むように形成したので、タンク本体を強固に締結固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1にかかるオイルタンクの斜視図である。
【図2】オイルタンクの縦断面図である。
【図3】フィルタ及びタンクロアを上方から見た斜視図である。
【図4】タンクロアのフランジ近傍を拡大して示す断面斜視図である。
【図5】フィルタを組み付けた状態の図3相当図である。
【図6】嵌合部近傍を拡大して示す縦断面図である。
【図7】図1におけるVI−VI線断面図である。
【図8】実施形態1の変形例にかかる図3相当図である。
【図9】実施形態1の変形例にかかる図5相当図である。
【図10】実施形態2にかかるフィルタ及びタンクロアを上方から見た斜視図である。
【図11】フィルタを組み付けた状態の図10におけるXI−XI線に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0018】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1にかかるオイルタンク1を示すものである。このオイルタンク1は、例えば、自動車のパワーステアリング装置(図示せず)内を循環するオイルを一旦貯留しておくためのものである。
【0019】
オイルタンク1は、上下に延びる略円筒状のタンク本体2と、タンク本体2内に配設されるフィルタ30(図2や図3に示す)とを備えている。タンク本体2は、上下方向の中間部において半割形状のタンクアッパ(第2タンク構成部材)10とタンクロア(第1タンク構成部材)20とに分割されている。タンクアッパ10及びタンクロア20は樹脂製である。
【0020】
タンクアッパ10は略円形の上壁部11と、上壁部11の周縁部から下方へ延びるアッパ側周壁部12とを有している。上壁部11には、オイル注入孔11aが形成されている。一方、アッパ側周壁部12の下端部には、径方向外側へ延出して円環状に延びるアッパ側フランジ13が形成されている。図2に示すように、アッパ側フランジ13の下面の幅方向中央部には、下方へ突出して周方向全周に亘って円環状に延びるアッパ側溶着用突条部13aが形成されている。アッパ側溶着用突条部13aの幅は、下端から上端まで略同一に設定されている。アッパ側溶着用突条部13aの鉛直方向の断面は、略矩形状に設定されている。
【0021】
また、アッパ側フランジ13の下面におけるアッパ側溶着用突条部13aよりも外側には、外側突条部13bがアッパ側溶着用突条部13aに沿って円環状に形成されている。また、アッパ側フランジ13の下面におけるアッパ側溶着用突条部13aよりも内側には、内側突条部13cがアッパ側溶着用突条部13aに沿って円環状に形成されている。外側突条部13b及び内側突条部13cは、下端に近づくほど肉厚が薄くなっている。
【0022】
アッパ側溶着用突条部13aと外側突条部13bとの間、及び、アッパ側溶着用突条部13aと内側突条部13cとの間には、隙間が形成されている。
【0023】
また、アッパ側溶着用突条部13aは、溶着前において外側突条部13b及び内側突条部13cよりも下方へ突出している。
【0024】
タンクロア20は、略円形の底壁部21と、底壁部21の周縁部から上方へ延びるロア側周壁部22とを有している。底壁部21には、タンク本体2内に連通するオイル流入管21aが下方へ突出するように形成されている。オイル流入管21aの内部は、オイルが流入する流入孔S1である。オイル流入管21aには、図示しないが、パワーステアリング装置のオイル吐出口が配管を介して接続されており、パワーステアリング装置の運転時にはオイルがオイル流入管21aからタンク本体2内に流入するようになっている。
【0025】
一方、ロア側周壁部22の上端部には、径方向外側へ延出して環状に延びるロア側フランジ23が形成されている。ロア側フランジ23の上面の幅方向中央部には、上方へ突出して周方向全周に亘って円環状に延びるロア側溶着用突条部23aが上記アッパ側溶着用突条部13aに対応して形成されている。ロア側溶着用突条部23aの上端面と、上記アッパ側溶着用突条部13aの下端面とが接するようになっている。
【0026】
ロア側溶着用突条部23aの幅は、下端から上端まで略同一に設定されている。ロア側溶着用突条部23aの鉛直方向の断面は、略矩形状に設定されている。
【0027】
図3〜図6に示すように、上記ロア側溶着用突条部23aには、フィルタ30を位置決めするための位置決め用段部24が形成されている。位置決め用段部24は、ロア側溶着用突条部23aの内周側において周方向一部にのみ形成されている。この実施形態では、ロア側溶着用突条部23aの幅方向(内外方向)中央部よりも内側部分を、周方向について90゜以下の範囲で切り欠くことによって位置決め用段部24が形成されている。この切り欠く範囲は、周方向について90゜よりも広くしてもよい。
【0028】
位置決め用段部24の周方向の両端面24a,24aは、タンク本体2の径方向に延びている。この実施形態1では、両端面24a,24aの延びる方向は、それらの延長線がタンクロア20の中心部において交差する方向とされている。
【0029】
また、位置決め用段部24の両端面24a,24a間に亘って延びる側面24bは、ロア側溶着用突条部23aの外周面と略平行に円弧状に延びる湾曲面で構成されている。位置決め用段部24の底面24cは、フランジ23の上面と略同一高さに位置しており、タンク本体2の周方向に延びている(図4参照)。
【0030】
また、ロア側フランジ23の上面におけるロア側溶着用突条部23aよりも外側には、外側突条部23bがロア側溶着用突条部23aに沿って円環状に形成されている。また、ロア側フランジ23の上面におけるロア側溶着用突条部23aよりも内側には、内側突条部23cがロア側溶着用突条部23aに沿って形成されている。
【0031】
ロア側溶着用突条部23aと外側突条部23bとの間、及び、ロア側溶着用突条部23aと内側突条部23cとの間には、隙間が形成されている。また、ロア側溶着用突条部23aは、溶着前において外側突条部23b及び内側突条部23cよりも上方へ突出している。
【0032】
内側突条部23cには、切欠部23dが形成されている。切欠部23dは、内側突条部23cを、位置決め用段部24の形成範囲と同じ範囲だけ切り欠くことによって形成されたものである。
【0033】
図1及び図2に示すように、ロア側周壁部22の下部近傍には、タンク本体2内に連通するオイル流出管22aが径方向外方へ突出するように形成されている。オイル流出管22aの内部は、オイルが流出する流出孔S2である。オイル流出管22aには、図示しないが、パワーステアリング装置のオイル吸入口が配管を介して接続されており、パワーステアリング装置の運転時にはオイルタンク1内のオイルがオイル流出管22aから吸い出されるようになっている。
【0034】
ロア側周壁部22の外側には、補強板部25がロア側周壁部22及びオイル流出管22aと一体成形されている。補強板部25は、ロア側周壁部22の外面から径方向外方へ延びる複数の横板部25aと、上下方向に延びる縦板部25bと、底壁部21の下面から下方へ延びる下板部25cと、下板部25cと縦板部25bとを連結する連結板部25dとを有している。
【0035】
横板部25aは、上下方向に間隔をあけて4つ設けられており、互いに略平行に延びている。横板部25aのうち、上側の2つはオイル流出管22aよりも上に位置しており、下側の2つは、オイル流出管22aの外面と一体成形されたものと、ロア側周壁部22の下縁部から延びるものとである。
【0036】
縦板部25bは、4つの横板部25aとオイル流出管22aとを連結するように、横板部25aと直交する方向に延びている。また、連結板部25dは上下に間隔をあけて2つ形成されており、それぞれ下板部25cから縦板部25bまで延びている。
【0037】
つまり、補強板部25は、ロア側周壁部22及びオイル流出管22aと一体成形されるとともに、オイル流出管22aの径方向両側に形成されている。
【0038】
また、補強板部25の上部及び下部には、上側及び下側締結用ボス27a,27bが一体成形されており、従って、これら締結用ボス27a,27bはオイル流出管22aを径方向に挟むように配置される。
【0039】
締結用ボス27a,27bは、円筒状に形成されており、内孔には、タンク本体2を車体側部材に締結固定するためのボルトやビス等の締結部材が螺合するようになっている。
【0040】
また、図3に示すように、タンクロア20の底壁部21には、フィルタ30の下縁部を保持する底部突条28,28が形成されている。底部突条28,28は底壁部21を横切るように互いに略平行に延びており、長手方向両端部は、ロア側周壁部22内面近傍に位置している。
【0041】
また、ロア側周壁部22には、フィルタ30の側縁部を保持する側部突条29,29が形成されている。側部突条29,29は、底部突条28,28の長手方向両端部から上方へ向かってロア側周壁部22の上端まで連続して延びている。側部突条29,29の形成によって側部突条29,29がリブとして機能し、ロア側周壁部22の剛性が高まる。側部突条29,29は、ロア側周壁部22を窪ませることによって形成されており、従って、ロア側周壁部22には、側部突条29,29に対応して凹条部22c,22c(図1に示す)が形成されている。
【0042】
尚、側部突条29,29の形成方法としては、上記したようにロア側周壁部22を内側へ窪ませることによって形成してもよいし、ロア側周壁部22内面に板状のリブを形成することによって形成してもよい。
【0043】
図3に示すように、フィルタ30は、樹脂製であり、濾過部31と上壁部32とを有している。濾過部31は、上下方向に延びる板状に形成され、オイルが流通する網目部31aと、網目部31aを補強するためのリブ31bと、網目部31aを囲む枠部31cとを有している。濾過部31の下縁部は、底部突条28,28の間に嵌入し、また、濾過部31の側縁部の枠部31cは、側部突条29,29の間に嵌入するようになっている。濾過部31が底部突条28,28及び側部突条29,29に嵌入した状態で、濾過部31と、底部突条28,28及び側部突条29,29との間からオイルが漏れないようになっている。
【0044】
フィルタ30の上壁部32は、濾過部31に対し略直角に延びており、従って、図2に示すように、フィルタ30は、側面視で略L字形状となっている。上壁部32の下面には、濾過部31に連なる連結板部32cが一体成形されている。連結板部32cは、下に行くほど幅が狭くなるように形成されている。この連結板部32cによりフィルタ30の剛性が高められている。
【0045】
上壁部32の濾過部31側の縁部は、濾過部31の上縁部の形状に対応して直線状に延びる一方、上壁部32の濾過部31と反対側の縁部(外縁部)は、フランジ23の上面に沿うように略円弧状に延びている。
【0046】
図3等に示すように、上壁部32の外縁部には、フィルタ位置決め用段部24に嵌合する嵌合部32aが形成されている。嵌合部32aは、上壁部32の外縁部に沿って円弧状に、かつ、上下方向に延びる湾曲板状に形成されている。嵌合部32aの周方向の長さは、フィルタ位置決め用段部24の周方向の長さと略一致している。嵌合部32aがフィルタ位置決め用段部24に嵌合した状態で、嵌合部32aの長手方向両端面がフィルタ位置決め用段部24の両端面24a,24aに当接する。
【0047】
また、嵌合部32aの外側面は、フィルタ位置決め用段部24の側面24bに沿う形状となっており、嵌合部32aがフィルタ位置決め用段部24に嵌合した状態で、嵌合部32aの外側面がフィルタ位置決め用段部24の側面24bに当接する。
【0048】
また、嵌合部32aの上下方向の寸法は、ロア側溶着用突条部23aの上下方向の寸法と略同じに設定されている。上壁部32をフランジ23の上面に載置した状態で、嵌合部32aの上端面とロア側溶着用突条部23aの上端面とは略同一面上に位置する。また、嵌合部32aの上側部分は、ロア側溶着用突条部23aと共にアッパ側溶着用突条部13aに溶着される部分である。
【0049】
上壁部32の上面には、嵌合部32aよりも内周側に突条部32cが形成されている。この突条部32cは、嵌合部32aに沿って略円弧状に延びている。図5に示すように、嵌合部32aがフィルタ位置決め用段部24に嵌合した状態で、突条部32cが内側突条部23cの切欠部23d内に位置し、突条部32cの長手方向両端部が内側突条部23cと連続する。嵌合部32aと突条部32cとの間には隙間が形成されている。
【0050】
次に、上記のように構成されたオイルタンク1の製造要領について説明する。
【0051】
まず、図3に示すようにフィルタ30をタンクロア20の開放側から該タンクロア20内に挿入する。このとき、フィルタ30の下縁部及び両側縁部を側部突条29,29の間に差し込む。すると、フィルタ30は側部突条29,29により底部側へ案内されながら所定の組み付け位置に達し、図2及び図5に示すように、フィルタ30の下縁部が底部突条28,28の間に嵌入するとともに、両側縁部が側部突条29,29の間に嵌入する。
【0052】
これと同時に、図6に示すように、フィルタ30の嵌合部32aがタンクロア20の位置決め用段部24に嵌合する。嵌合させる際には、フィルタ30が側部突条29,29によって案内されるので容易に嵌合させることが可能である。
【0053】
嵌合部32aの嵌合状態では、嵌合部32aの長手方向両端面が位置決め用段部24の両端面24a,24aに当接するので、フィルタ30の周方向の移動が阻止される。同時に、嵌合部32aの外側面が位置決め用段部24の側面24bに当接するので、径方向外方への移動が阻止される。これらのことにより、フィルタ30の溶着される部分である嵌合部32aの位置ずれが抑制されることになる。
【0054】
このとき、位置決め用段部24の両端面24a,24aの延びる方向は、それらの延長線がタンクロア20の中心部において交差する方向とされているので、嵌合部32aが両端面24a,24aの間から径方向内方へも移動しにくくなり、位置決めが確実に行われる。
【0055】
その後、周知の熱板溶着法を用いてタンクアッパ10とフィルタ30及びタンクロア20とを溶着する。すなわち、タンクアッパ10の開放側とタンクロア20の開放側とに熱板を近づけてアッパ側溶着用突条部13a、ロア側溶着用突条部23a及びフィルタ30の嵌合部32aを溶融させた後、これらを合わせてアッパ側溶着用突条部13aの下端面と、ロア側溶着用突条部23aの上端面及び嵌合部32aの上端面とを圧接する(図6、図7参照)。
【0056】
溶着する際には、フィルタ30の嵌合部32aが位置決め用段部24に嵌合していて移動しないようになっているので、嵌合部32aのタンクロア20に対する位置ずれが抑制されて狙い通りの溶着が可能となる。
【0057】
溶着時に発生したバリは、外側突条部13b、23bとアッパ側溶着用突条部13a及びロア側溶着用突条部23aとの間に収容されるとともに、内側突条部13c、23cとアッパ側溶着用突条部13a及びロア側溶着用突条部23aとの間に収容される。
【0058】
上記のようにして得られたオイルタンク1は、上側及び下側締結用ボス27a,27bに締結部材を螺合させることによって車体構成部材に固定される。このときオイル流出管22a及び補強板部25をロア側周壁部22に一体成形することによって締結用ボス27a,27b近傍の剛性が向上しているので、タンク本体2の固定が強固なものとなる。
【0059】
また、オイルタンク1の使用状態では、パワーステアリング装置からのオイルがオイル流入孔S1からタンク本体2に流入する。このオイルは、フィルタ30の網目部31aを通過して濾過される。濾過後のオイルは、オイル流出管22aを通って排出される。
【0060】
オイルの濾過時には、フィルタ30に対し、オイルの脈動による加振力や車両の振動による加振力が作用するが、嵌合部32aがタンクアッパ10に溶着されているのでフィルタ30のがたつきが抑制されて所期の濾過性能が得られる。
【0061】
以上説明したように、この実施形態にかかるオイルタンク1によれば、タンクロア20のロア側溶着用突条部23aにおける内周側の周方向一部にフィルタ位置決め用段部24を形成し、フィルタ位置決め用段部24にフィルタ30の嵌合部32aを嵌合させた状態で、ロア側溶着用突条部23a及び嵌合部32aをアッパ側溶着用突条部13aに溶着するようにしたので、フィルタ30をタンク本体2に強固に、かつ、確実に固定でき、不良品の発生を抑制できる。
【0062】
また、タンクロア20のロア側周壁部22にオイル流出管22a及び補強板部25を一体成形し、補強板部25に締結用ボス27a,27bを、オイル流出管22aを径方向に挟むように形成したので、タンク本体2を強固に締結固定することができる。
【0063】
尚、図8及び図9に示すように、側部突条29A,29Bのうち、オイル流入側に位置する側部突条29Aの上端部に、上方へ延出する延出板部29aを形成してもよい。延出板部29aは、フランジ23の上面よりも上方へ延びており、延出板部29aの上端面は、内側突条部23cの上端面と略同一面上に位置している。延出板部29aと内側突条部23cとは連なっている。延出板部29aにより、濾過前のオイルがフィルタ30の上縁部を越えてオイル流出側へ漏れるのを抑制することが可能になる。
【0064】
(実施形態2)
図10は、本発明の実施形態2にかかるオイルタンク1のタンクロア20及びフィルタ30を示すものである。実施形態2では、フィルタ30のタンクロア20に対する位置決め構造が実施形態1のものと異なっており、以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0065】
タンクロア20は、実施形態1のものに比べて上下方向の寸法が長く設定されている。ロア側周壁部22の内面には、フィルタ30の上壁部32の外縁部に係合する突条部41が内面に沿うように円弧状に形成されている。また、フィルタ位置決め用段部24は、実施形態1に比べて周方向の寸法が短く設定されている。さらに、フィルタ位置決め用段部24の底面24cには、凹部24dが形成されている。
【0066】
一方、フィルタ30の上壁部32の外縁部には、下方へ突出して周方向に延びる係合部32d(図11参照)が形成されている。この係合部32dは、突条部41に係合するようになっている。また、上壁部32には、上方へ延びる固定板部33が形成されるとともに、固定板部33に連なる板部35も形成されている。固定板部33の上端部には、径方向外方へ突出する板状の嵌合部34が形成されている。嵌合部34の下面には、タンクロア20の凹部24dに挿入される凸部34bが下向きに突出するように形成されている。
【0067】
凸部34bは凹部24dに挿入されることによって、嵌合部34が径方向内方へ移動するのが阻止される。
【0068】
嵌合部34の上面には、アッパ側溶着用突条部13aに溶着される溶着部34aが上方へ突出するように形成されている。また、嵌合部34の上面には、内側突条部23cの切欠部23d内に位置する突条部34cが形成されている。
【0069】
したがって、この実施形態2においても、嵌合部34の嵌合状態では、嵌合部34が位置決め用段部24の両端面24a,24aに当接するので、フィルタ30の周方向の移動が阻止される。同時に、嵌合部34の外側面が位置決め用段部24の側面24bに当接するので、径方向外方への移動が阻止される。これらのことにより、フィルタ30の嵌合部34の位置ずれが抑制されることになる。
【0070】
以上説明したように、この実施形態2にかかるオイルタンク1によれば、実施形態1と同様に、フィルタ30をタンク本体2に強固に、かつ、確実に固定でき、不良品の発生を抑制できる。
【0071】
また、嵌合部34の凸部34bをタンクロア20の凹部24dに挿入して係合させることができるので、嵌合部34をしっかりと位置決めできる。
【0072】
尚、上記実施形態1、2では、タンクロア20にフィルタ30を位置決めするようにしているが、これに限らず、例えばタンクアッパ10にフィルタ30を位置決めするようにしてもよい。
【0073】
また、両端面24a,24aは、径方向に延びているが、両端面24a,24aが平行であっても段部24に凹部を設けて、該凹部に係合する凸部を嵌合部34に設けることによって実施形態2のように、嵌合部34が径方向内方へ移動するのを阻止できる。
【0074】
また、図示しないが、補強板部25がロア側側壁部22の凹条部22cと連結するように形成することで、補強板部25の剛性をより一層高めることができる。
【0075】
また、本発明は、自動車用パワーステアリング装置以外のオイルタンク1としても利用することが可能である。
【0076】
また、上記各実施形態では、タンクアッパ10及びタンクロア20を熱板溶着法で溶着するようにしているが、これに限らず、例えば、振動溶着法を用いて溶着するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上説明したように、本発明にかかるオイルタンクは、例えば、自動車用パワーステアリング装置に使用できる。
【符号の説明】
【0078】
1 オイルタンク
10 タンクアッパ(第2タンク構成部材)
12 アッパ側周壁部
13a アッパ側溶着用突条部(第2溶着部)
20 タンクロア(第1タンク構成部材)
22 ロア側周壁部
21a オイル流入管
22a オイル流出管
23a ロア側溶着用突条部(第1溶着部)
24 フィルタ位置決め用段部
27a,27b 締結用ボス
30 フィルタ
32a 嵌合部
S1 オイル流入孔
S2 オイル流出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルの流入孔(S1)及び流出孔(S2)を有する樹脂製のタンク本体(2)と、
上記タンク本体(2)の内部に配設されるオイル濾過用のフィルタ(30)とを備え、
上記流入孔(1)から流入したオイルを上記フィルタ(30)により濾過した後に上記流出孔(S2)から流出させるように構成されたオイルタンク(1)において、
上記タンク本体(2)は、半割形状の第1タンク構成部材(20)及び第2タンク構成部材(10)に分割され、
上記第1タンク構成部材(20)の開放側の全周には、上記第2タンク構成部材(10)の開放側の全周に溶着される環状の第1溶着部(23a)が形成され、
上記第2タンク構成部材(10)の開放側の全周には、上記第1溶着部(23a)の全周に溶着される環状の第2溶着部(13a)が形成され、
上記第1溶着部(23a)における内周側の周方向一部には、上記フィルタ(30)を位置決めするためのフィルタ位置決め用の段部(24)が形成され、
上記フィルタ(30)の縁部には、上記段部(24)に嵌合する嵌合部(32a)が形成され、
上記第1溶着部(23a)及び上記フィルタ(30)の嵌合部(32a)は、上記第2溶着部(13a)に溶着されていることを特徴とするオイルタンク(1)。
【請求項2】
請求項1に記載のオイルタンク(1)において、
上記第1タンク構成部材(20)及び第2タンク構成部材(10)の一方のタンク構成部材の周壁部には、上記流入孔(S1)及び流出孔(S2)の一方を構成する管(22a)が該周壁部の外側へ突出するように該周壁部に一体成形され、
上記一方のタンク構成部材の周壁部の外側には、該周壁部及び上記管(22a)と一体成形された補強板部(25)が該管(22a)の径方向両側に形成され、
上記補強板部(25)には、上記タンク本体(2)を締結固定するための複数の締結用ボス(27a,27b)が上記管(22a)を径方向に挟むように形成されていることを特徴とするオイルタンク(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−79007(P2013−79007A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220353(P2011−220353)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】