説明

オイルポット

【目的】 揚げ物の調理に使用した直後の熱いオイルを注入しても外面が高温にならない上、オイルを出したときに内面にオイルが付着しにくく、そのため利便性、安全性、清潔性、清掃性に優れているとともに、オイルの劣化を抑制するオイルポットを提供する。
【構成】 オイルが注入される容器本体2を、外胴4と内胴6との間に真空断熱空間8が形成された断熱二重構造のものとする。そして、内胴6の内面にセラミック系塗料による塗膜24を積層する。あるいは、内胴6の内面にセラミック系塗料による塗膜26を積層し、この塗膜26の表面にフッ素樹脂含有塗料による塗膜28を形成する。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案はオイルポットに関し、特に揚げ物の調理に用いた料理用オイルの保存に好適に使用されるオイルポットに関する。
【0002】
【従来の技術】
料理用オイルの保存に用いるオイルポットとしては、従来、ステンレススチール製、アルミニウム製、ほうろう製等の単層構造のものや、複数の金属層を重ね合わせた構造のものが使用されている。オイルポットは、揚げ物用オイルの保存に多く用いられる。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
ステンレススチール製、アルミニウム製、ほうろう製等の従来のオイルポットは、揚げ物の調理が終わった直後の熱いオイルを注入した場合、外面が高温になるため、手で触れると危険であるとともに、熱に弱いテーブル等の上に直接置くことができず、取り扱い面で利便性に劣るという欠点があった。一方、上述した危険や不便を避けようとすると、オイルを鍋の中に放置して冷やしてからオイルポットに入れなければならず、家事効率の面で不都合であった。
【0004】
また、従来のオイルポットは、調理時や清掃時にオイルを全部出したときにオイルが内面に付着して残存するため、不潔感を与えるとともに、清掃が面倒であった。
【0005】
本考案は、上記事情に鑑みてなされたもので、熱いオイルを注入しても外面が高温にならない上、内面にオイルが付着しにくく、そのため利便性、安全性、清潔性、清掃性に優れているとともに、オイルの劣化が抑制されるオイルポットを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本考案は、上記目的を達成するため、下記(1)〜(2)のオイルポットを提供する。
【0007】
(1)オイルが注入される容器本体を備えたオイルポットであって、前記容器本体が、外胴及び内胴を有しこれら外胴と内胴との間に真空断熱空間が形成されているとともに、内胴の内面にセラミック系塗料による塗膜が積層されたものであることを特徴とするオイルポット(請求項1)。
【0008】
(2)オイルが注入される容器本体を備えたオイルポットであって、前記容器本体が、外胴及び内胴を有しこれら外胴と内胴との間に真空断熱空間が形成され、かつ内胴の内面にセラミック系塗料による塗膜が積層されているとともに、セラミック系塗料による塗膜の表面にフッ素樹脂含有塗料による塗膜が形成されたものであることを特徴とするオイルポット(請求項2)。
【0009】
請求項1〜2のオイルポットに用いる容器本体としては、テンレススチールからなる有底円筒状の外胴及び内胴の上端部相互を接合し、外胴と内胴との間の空間部を真空にしたものを好適に使用できるが、これに限定されるものではない。
【0010】
請求項1のオイルポットは、容器本体の内胴の内面にセラミック系塗料による塗膜が積層されたものである。請求項1のオイルポットに用いるセラミック系塗料としては、塗料型のセラミックコーティング剤であればいずれのものでも使用できるが、特に好ましいのは、ビヒクル(バインダー)として無機高分子物質を含有し、常温〜350℃で反応して硬化するセラミック系塗料である。ビヒクルである無機高分子物質としては、ケイ酸塩、ジルコニウム塩、リン酸塩、シラン化合物、金属アルコキシド、金属アシレート等が挙げられる。このセラミック系塗料は、通常、ビヒクルの他に溶剤、充填剤、添加剤を含む。
【0011】
請求項1のオイルポットにおいて、セラミック系塗料による塗膜の厚さは15〜25μmとすることが好適である。
【0012】
請求項2のオイルポットは、容器本体の内胴の内面にセラミック系塗料による塗膜が積層されているとともに、このセラミック系塗料による塗膜の表面にフッ素樹脂含有塗料による塗膜が形成されたものである。請求項2のオイルポットに用いるセラミック系塗料としては、請求項1について述べたのと同様のものを使用することができる。また、フッ素樹脂含有塗料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンの粒子を含有するものを用いることができる。
【0013】
請求項2のオイルポットにおいて、セラミック系塗料による塗膜の厚さは15〜25μmとすることが好ましく、フッ素樹脂含有塗料による塗膜の厚さは5〜10μmとすることが好ましい。
【0014】
【作用】
本考案で用いる容器本体は、外胴と内胴との間に真空断熱空間が形成されていることにより、断熱性を有する。そのため、請求項1〜2のオイルポットは、容器本体に熱いオイルを注入しても、このオイルの熱が外胴に伝わらないので、オイルポットの外面が加熱されない。
【0015】
セラミック系塗料による塗膜は、優れた滑り性を有する。そのため、請求項1のオイルポットは、容器本体の内面にオイルが付着しにくく、オイルを出したときにオイルが内面に残存しにくい。
【0016】
また、セラミック系塗料による塗膜は、オイルの酸化重合抑制作用を有する。
そのため、請求項1のオイルポットでは、容器本体内に保存したオイルの劣化が抑制される。
【0017】
フッ素樹脂含有塗料による塗膜は、セラミック系塗料による塗膜よりもさらに優れた滑り性を有する。そのため、請求項2のオイルポットは、オイルを出したときの内面へのオイル付着量がきわめて少ない。また、セラミック系塗料による塗膜が有するオイルの酸化重合抑制作用が働くため、オイルの劣化が抑制される。
【0018】
【実施例】
次に、実施例により本考案を具体的に示すが、本考案は下記実施例に限定されるものではない。
【0019】
実施例1 図1は実施例1のオイルポットを示す部分断面正面図、図2は同オイルポットの容器本体を示す模式的拡大断面図である。図1において、2はオイルが注入される容器本体を示す。この容器本体2は、ステンレススチールからなる有底円筒状の外胴4及び内胴6の上端部相互が接合され、これら外胴4と内胴6との間に真空断熱空間8が形成された断熱二重構造のものである。
【0020】
図中10は容器本体2の上端部に固定されたリング状の下蓋、12は下蓋10の側部に設けられた注ぎ口、14は下蓋10の上端開口部に着脱可能に取り付けられた上蓋、16は上蓋14の側部に設けられた開閉可能な注ぎ口キャップ、18は下蓋10の中空部に着脱可能に取り付けられた濾過ネット、20は上端が下蓋10、下端が容器本体2に固定された把手、22は容器本体2の底部に固定された底板を示す。なお、上蓋14は容器本体2にオイルを注入するときに取り外すものである。
【0021】
本実施例のオイルポットにおいては、図2に示すように、内胴6の内面全面にセラミック系塗料による厚さ約20μmの塗膜24が積層されている。なお、図示していないが、外胴4の外周面には化粧塗装が施されている。
【0022】
セラミック系塗料による塗膜24は、ビヒクルとして無機高分子物質を含有するセラミック系塗料を下地処理を行った内胴6の内面に塗布し、これを加熱して硬化させることにより形成されている。
【0023】
実施例2 図3は実施例2のオイルポットの容器本体を示す模式的拡大断面図である。本実施例のオイルポットにおいては、容器本体2の内胴6の内面全面にセラミック系塗料による厚さ約20μmの塗膜26が積層されているとともに、このセラミック系塗料による塗膜26の表面全面にフッ素樹脂含有塗料による厚さ約10μmの塗膜28が形成されている。
【0024】
セラミック系塗料による塗膜26は、実施例1のオイルポットと同様にして形成されている。また、フッ素樹脂含有塗料による塗膜28は、ポリテトラフルオロエチレンを含有するフッ素樹脂含有塗料をセラミック系塗料による塗膜26の表面に塗布し、これを加熱して硬化させることにより形成されている。
【0025】
実施例1〜2のオイルポットは、熱いオイルを注入しても外面が高温にならないとともに、容器本体の内面が優れた滑り性を有し、オイルが付着しにくいものであった。
【0026】
【考案の効果】
以上説明したように、請求項1〜2のオイルポットは、下記の効果を奏する。
(a)熱いオイルを注入しても外面が高温にならないため、手で触れても火傷の危険がなく、安全性が高いとともに、熱いオイルを入れたまま熱に弱いテーブル等の上に直接置くことができるため、取り扱い面での利便性に優れている。また、揚げ物の調理に使用した熱いオイルを直ちに注入して保存することができるので、家事効率の向上に寄与する。
【0027】
(b)調理時や清掃時にオイルを全部出したときに内面に付着して残存するオイルの量が少ないため、清潔感を与えるとともに、清掃が容易である。
【0028】
(c)セラミック系塗料による塗膜が有するオイルの酸化重合抑制作用により容器本体内に保存したオイルの劣化が抑制される。
【0029】
(d)セラミックコーティング手段としては塗料、ほうろう、溶射及び蒸着があるが、本考案では塗料を使用しているため、簡便な装置、温和な条件でセラミックコーティング膜を形成できる。したがって、本考案のオイルポットは製造が容易であるという利点も有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1のオイルポットを示す部分断面正面図である。
【図2】図2は、同オイルポットの容器本体を示す模式的拡大断面図である。
【図3】図3は、実施例2のオイルポットの容器本体を示す模式的拡大断面図である。
【符号の説明】
2 容器本体
4 外胴
6 内胴
8 真空断熱空間
24 セラミック系塗料による塗膜
26 セラミック系塗料による塗膜
28 フッ素樹脂含有塗料による塗膜
30 フッ素樹脂含有セラミック系塗料による塗膜

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 オイルが注入される容器本体を備えたオイルポットであって、前記容器本体が、外胴及び内胴を有しこれら外胴と内胴との間に真空断熱空間が形成されているとともに、内胴の内面にセラミック系塗料による塗膜が積層されたものであることを特徴とするオイルポット。
【請求項2】 オイルが注入される容器本体を備えたオイルポットであって、前記容器本体が、外胴及び内胴を有しこれら外胴と内胴との間に真空断熱空間が形成され、かつ内胴の内面にセラミック系塗料による塗膜が積層されているとともに、セラミック系塗料による塗膜の表面にフッ素樹脂含有塗料による塗膜が形成されたものであることを特徴とするオイルポット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【登録番号】第3002997号
【登録日】平成6年(1994)8月3日
【発行日】平成6年(1994)10月11日
【考案の名称】オイルポット
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平6−4208
【出願日】平成6年(1994)3月29日
【出願人】(000002266)シルバー精工株式会社 (17)
【出願人】(000234203)柏崎シルバー精工株式会社 (1)