説明

オイル状入浴剤

【構成】 N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジエステルの混合物を、コメ胚芽油に溶解し、液状油脂類と常温で液状の界面活性剤を加えて混合することにより製造する、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジエステルの混合物を含有するオイル状入浴剤。
【効果】 保温作用と清浄作用を合わせ持つオイル状入浴剤が提供され、疲労回復、肩こり、冷え性、腰痛、神経痛、リウマチ、痔疾等の症状の緩和のみならず、アトピー性皮膚炎患者の皮膚の健康維持に有用である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、疲労回復、肩こり、冷え性、腰痛、神経痛、リウマチ、痔疾等の症状の緩和や、皮膚の健康維持に有用な新規なオイル状入浴剤、及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】入浴は、身体を清浄し、健康で正常な機能を持った皮膚を維持するために効果的な日常の習慣であり、入浴時に身体をよく暖め、全身の血行を高めることにより精神的、肉体的な疲労回復作用を高め、冷え性、肩こり、腰痛、神経痛、リウマチ等の症状を緩和する保温効果が知られている。
【0003】それらの効果を一層高めるためばかりでなく、近年の健康や美容に対する意識の高まりから、香りあるいは肌のしっとり、なめらか感を期待するさまざまなタイプの入浴剤が販売、利用されるようになっている。
【0004】入浴剤は、その構成成分から、無機塩類入浴剤、薬用植物入浴剤、オイル状入浴剤、炭酸ガス入浴剤などに分類されている。
【0005】また、入浴剤の皮膚への作用としては、上記の清浄作用や保温作用の他に、保湿作用、色素沈着予防作用等も知られている。
【0006】従来、皮膚清浄作用を有する入浴剤としては、無機塩類を主材とするものが良く使われていたが、近年、入浴によって失われる脂肪分を補い、肌のしっとり、なめらか感を与える等、保湿作用を有するものとして、オイル状入浴剤が使われるようになってきた。
【0007】
【発明が解決しようとする問題点】オイル状入浴剤では、油性保湿剤として、ハッカ油、ヒノキ油、橙皮油、アーモンド油、ヌカ油、オリーブ油、ホホバ油、テレンビン油、大豆油、ヒマシ油、パーム油、ラノリン、セレシン油、鯨ロウ、ワセリン、スクワラン、ミンク油、卵黄油等が使われ、皮膚表面の油分の補充により、皮膚表面の水分蒸発を防ぐ機能を持つため、皮膚乾燥を抑え、老齢者の乾燥肌の防止やアトピー性皮膚炎患者の皮膚のバリア機能の改善により、ダニや皮垢等の刺激物質の経皮進入を防止できることから有用であるとされているが、一方、入浴中の角質層から浴湯へ皮垢等の溶出を妨げ、皮膚を清潔に保つためには障害となる。
【0008】また、アトピー性皮膚炎患者において、汗や皮垢が皮膚炎の発症や増悪に関与していることがいわれ、従って、保湿作用とともに清浄作用を有する入浴剤がアトピー性皮膚炎患者にとって望まれるところある。
【0009】皮膚の清浄効果を持った浴用剤原料としては炭酸水素ナトリウム、ホウ砂、硫化カリウム、硫化ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ塩類が使われているが、アルカリが高値となると、皮膚に対する影響が懸念され、使用する原料によっては、安全性や安定性の問題や水に対する溶解性、排リンの問題等も生じてくる。
【0010】又、パパイン、パンクレアチンなどのたんぱく分解酵素を主成分とする入浴剤も清浄効果が期待されるが、酵素の安定性や、酵素の作用がその濃度、浴湯pH、浴湯温度、作用時間などによって大きく影響を受けやすく思ったほどの効果が得られない。
【0011】また、現在市販されている入浴剤の保温効果は、不十分で、より保温作用の高い入浴剤が求められている。
【0012】更に、オイル状入浴剤は、品質上、経時的に沈澱の発生や分離を生じることなく、均一な状態に保たれることが求められている。
【0013】従って、本発明の目的は、安全性や安定性に優れ、清浄性があり、より保温性に優れた入浴剤を提供することにある。
【0014】
【問題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題点に鑑み、保湿作用を有するオイル状入浴剤で、保温効果が高く、清浄性にもすぐれたものについて種々検討したところ、保湿剤としてN−ラウロイル−L−グルタミン酸ジエステルを添加することにより、入浴後の保温効果が高まり、しかも入浴時における清浄作用も高まる新規な入浴剤を見いだし、同時に、その成分を配合させたときに沈澱、液の分離等を生じさせない製造方法を提供できることを見いだし、本発明を完成させた。即ち、本発明はN−ラウロイル−L−グルタミン酸ジエステルを含有したオイル状入浴剤及びその製造法に関する。
【0015】本発明で使用するN−ラウロイル−L−グルタミン酸ジエステルは下記一般式で表される化合物の混合物(以下、混合ジエステルと略す。)である。
【0016】
【化1】


【0017】式中X及びYは双方が同じでも異なってもよく、コレステロール残基、2−オクチルドデシル基若しくはベヘニル基からなるものであり、そのモル比(%)が3:5:2のものが好ましい。
【0018】本混合ジエステルは常温状態に於いてろう状の物質であるため、通常用いられる液状油脂(流動パラフィン、ミリスチン酸イソプロピル等)や液状界面活性剤(モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)を用いて溶解性を検討したところ、コメ胚芽油に高い溶解性を見いだした。
【0019】すなわち、コメ胚芽油を溶解剤として用いることにより、長期に亘ってそのろう状沈澱物や液の濁りを防止でき、浴湯に投入したとき良好な分散・乳濁を呈する混合ジエステルを含有するオイル状入浴剤の製造が可能となった。
【0020】本発明に係わるオイル状入浴剤は、コメ胚芽油に混合ジエステルを加え、溶解後、液状油脂類と常温で液状の界面活性剤を加えて混合することにより製造する。
【0021】混合ジエステルの配合量は該オイル状入浴剤中0.1〜2.0重量%、好ましくは0.2〜1.0重量%である。
【0022】該オイル状入浴剤中0.1重量%未満である場合、十分な保温効果及び清浄効果が発現されず、また2.0重量%を越える場合、混合ジエステルが入浴剤中に安定に分散されず、ろう状物質の沈殿を生じる。
【0023】溶解剤としてのコメ胚芽油の配合量は該入浴剤において2.0〜20重量%で、好ましくは3〜10重量%である。
【0024】配合割合が2.0重量%未満の時は混合ジエステルを均一に分散することができなくなる。また、20重量%を越えると、浴湯に投入した時良好な乳濁が得られず、水面に油状物質が浮き、不快感を与える。
【0025】液状油脂類としては、たとえば流動パラフィン、スクワランなどの炭化水素類、ミンク油、ホホバ油、ヌカ油、オリーブ油などの動植物油類、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オクタン酸セチルなどの高級脂肪酸エステル類、オクチルドデカノールなどの高級アルコール類などが挙げられる。これらの配合量は該入浴剤中30〜80重量%、好ましくは50〜80重量%である。
【0026】該入浴剤中30重量%未満の時は、浴湯に入れた時に乳濁しなかったり、入浴時に皮膚表面の油分の補充が不十分となる。また、80重量%を越えた場合は浴湯に入れた時に油脂類が水面に浮き、不快感を与える。
【0027】液状の界面活性剤としては、たとえばソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンセスキイソステアレート、グリセリルモノイソステアレート、グリセリルジオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノイソステアレート、ポリオキシエチレンソルビットテトラオレエート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム等、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0028】該入浴剤中、液状界面活性剤の配合量は5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%である。5重量%未満では、浴湯に入れた時に良好な乳濁が得られず、水面に、油脂類が水面に浮き、40重量%を越える時は液状油脂類が湯に溶解し灰黒色となるためである。 これらの成分に加えて、必要に応じて、香料、色素、サリチル酸等の殺菌剤、l−メントール等の清涼化剤、その他抗炎症作用を有するカミツレエキス等の生薬エキス等を配合してもよい。
【0029】このようにして製造される本発明のオイル状入浴剤は長期保存においてもろう状沈澱物や液が濁ることがなく、又、優れた保温効果と洗浄効果を有している。
【0030】以下に、実施例、試験例をもって、さらに具体的に説明する。
【0031】なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0032】
【実施例】
[実施例1]混合ジエステル1g、コメ胚芽油8gを混合し、60℃に加温して溶解した。
【0033】つぎにトリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)27g、モノオレイン酸ソルビタン3g、流動パラフィン58gを加え混合し、冷却後、香料3gを加えて混合しオイル状入浴剤を得た。
【0034】[実施例2]混合ジエステル0.5g、コメ胚芽油4gを混合し、60℃に加温して溶解した。
【0035】別にサリチル酸0.5g、オクチルドデカノール20g、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)13.5gを混合し、60℃に加温して溶解し、これに混合ジエステル溶液、モノオレイン酸ソルビタン1.5g、流動パラフィン42g、スクワラン10g、オクタン酸セチル5gを加え混合し、冷却後、香料3gを加えて混合しオイル状入浴剤を得た。
【0036】[実施例3]混合ジエステル0.2g、コメ胚芽油4gを混合し、60℃に加温して溶解し、モノオレイン酸ソルビタン1.5g、流動パラフィン38.5g、スクワラン10g、オクチルドデカノール20g、オクタン酸セチル5gを混合した。
【0037】別にサリチル酸0.5g、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)13.5gを混合し、60℃に加温して溶解し、カミツレ流エキス3.3g、オウゴン抽出液0.5gを加えて混合した。これに先の混合ジエステル溶液を加えて混合し、冷却後、香料3gを加えて混合し、オイル状入浴剤を得た。
【0038】[実施例4]混合ジエステル量を0.5gにしたことを除いては実施例3と同様の操作によりオイル状入浴剤を得た。ただし、流動パラフィンで総重量を100gに調整した。
【0039】[比較例1]コメ胚芽油を用いることなく実施例1に準ずる操作によりオイル状入浴剤を得た。ただし、流動パラフィンで総重量を100gに調整した。
【0040】[比較例2]コメ胚芽油を用いることなく実施例2に準ずる操作によりオイル状入浴剤を得た。ただし、流動パラフィンで総重量を100gに調整した。
【0041】[比較例3]コメ胚芽油を用いることなく実施例4に準ずる操作によりオイル状入浴剤を得た。ただし、流動パラフィンで総重量を100gに調整した。
【0042】[比較例4]混合ジエステルを用いることなく実施例4に準ずる操作によりオイル状入浴剤を得た。ただし、流動パラフィンで総重量を100gに調整した。
【0043】(試験例1)性状の変化実施例1から4、比較例1から4で得た各入浴剤を用いて、性状の変化を目視により、製造直後、冷蔵庫(約4℃)保存1ヶ月、室温(18℃〜29℃)保存3ヶ月後に観察し、「ほぼ澄明の液」、「濁りのある液」、「ろう状物質の沈澱を認めるもの」、「二相に分離しているもの」の4段階で表現することとした。
【0044】結果を表1に示す。
【0045】
【表1】


【0046】コメ胚芽油を溶解剤として使用した混合ジエステルを含有する入浴剤は長期保存後においても安定であった。
【0047】(試験例2)入浴後の保温効果実施例4と比較例4で得た各入浴剤を入れた浴湯、市販の入浴剤を加えた浴湯及びさら湯での保温効果の比較を冷え易い自覚を持つ5名(男2名、女3名、25才〜44才)の成人を使って行った。
【0048】被験者は41℃のお湯150lにさら湯及び各オイル状入浴剤を15g入れてそれぞれ10分間両足膝から下の部分をお湯につける。入浴直後、10分、20分、30分、40分後に足親指付け根部分の皮膚表面温度を赤外線温度計を用いて測定した。
【0049】皮膚表面温度の平均値を図1に示した。
【0050】本発明の混合ジエステルを含有する入浴剤を用いた時、良好な保温効果の持続性が認められた。
【0051】(試験例3)清浄作用実施例4と比較例4で得た各入浴剤を入れた浴湯及びさら湯での清浄作用を成人男性5名(25才〜58才)を使って、足部皮膚表面から浴湯へ溶出するアミノ酸量から比較した。
【0052】2lのお湯(約41℃)にさら湯及び各オイル状入浴剤0.2gを入れ、それぞれ片足ずつ3分間両足を浴湯に浸した。被験者5人が同一の湯浴に同様に足を浸した液を0.45μmのフィルターでろ過し、足部皮膚表面から浴湯へ溶出したアミノ酸の分析を行った。
【0053】結果を表2にまとめた。
【0054】
【表2】

【0055】混合ジエステルを含有する入浴剤には、足部皮膚表面から浴湯へのアミノ酸の溶出を促進する作用(清浄作用)が認められた。
【0056】
【効果】本発明により、安定性に優れ、保温効果の持続性と清浄作用を合わせ持つ新規なオイル状入浴剤が提供され、疲労回復、肩こり、冷え性、腰痛、神経痛、リウマチ、痔疾等の症状の緩和のみならず、アトピー性皮膚炎患者の皮膚の健康維持に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】各種入浴剤を添加した浴湯及びさら湯に入浴後の保温効果を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ジ(コレステロール、ベヘニル、オクチルドデシルアルコール)N−ラウロイル−L−グルタミン酸エステルを含有するオイル状入浴剤。
【請求項2】 ジ(コレステロール、ベヘニル、オクチルドデシルアルコール)N−ラウロイル−L−グルタミン酸エステルの溶解剤としてコメ胚芽油を用いることを特徴とする請求項1記載の入浴剤の製造法。

【図1】
image rotate