説明

オキセタン化合物及び硬化性組成物

【課題】耐熱性などが良好な、オキセタン化合物及びそれを含有する硬化性組成物の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表されることを特徴とするオキセタン化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なオキセタン化合物及び当該オキセタン化合物を用いたカチオン重合が可能な硬化性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オキセタン化合物は、カチオン重合または硬化が可能なモノマーとして、近年注目を浴びている化合物であり、多くのオキセタン化合物が報告されている。オキセタン環の連結基にシクロヘキサン環を有する化合物としては、例えば、下記式(2)、(3)、(4)で表される化合物が報告されている(例えば、特許文献1、2および3参照)が、本発明のオキセタン化合物はこれら従来公知のオキセタン化合物では構造が異なる新規なオキセタン化合物である。
【0003】
【化1−1】

【0004】
また、これらオキセタン化合物を硬化性組成物の成分として用いた場合、従来公知の化合物では、耐熱性、耐湿性、光透過性および密着性に優れた硬化物をえるのが困難であった。
【特許文献1】特開平11−246541号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2000−302774号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2004−250434号公報(特許請求の範囲、実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐熱性、耐湿性、光透過性および密着性などが良好な、オキセタン化合物を提供することを目的とする。更に、当該オキセタン化合物を含有する硬化性組成物の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0007】
1.下記一般式(1)で表されることを特徴とするオキセタン化合物。
【0008】
【化1】

【0009】
〔式中、R1〜R10は各々独立に水素原子、水酸基、または炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐アルキル基を表し、rが複数の場合、何れかがL1で連なる基となる。また、lが1の場合R4とR8はない。lは0または1を表す。L1はシクロヘキサン環に直結する酸素原子、硫黄原子またはカルボニル基であって、更にこれらの酸素原子、硫黄原子またはカルボニル基は炭素数1〜15の連結基でオキセタン環と結合する連結基を表す。rは1〜3を表す。R11は水素原子、水酸基、または炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐アルキル基を表し、mは1または2を表す。〕
2.前記一般式(1)で表されるオキセタン化合物及びエポキシ化合物を含有することを特徴とする硬化性組成物。
【0010】
3.熱重合開始剤又は光重合開始剤のいずれかを含有することを特徴とする前記2記載の硬化性組成物。
【0011】
4.熱重合開始剤が酸無水物又はスルホニウム塩のいずれかであることを特徴とする前記2記載の硬化性組成物。
【0012】
5.光重合開始剤がスルホニウム塩であることを特徴とする前記2記載の硬化性組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、耐熱性、耐湿性、光透過性および密着性などが良好な、オキセタン化合物及び該化合物を含有する硬化性組成物を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を更に詳しく説明する。
【0015】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、上記一般式(1)で表されるオキセタン化合物が、光カチオン硬化性組成物および/または熱カチオン硬化性組成物に用いることができることを見出し、本発明を完成させた。そして、この化合物を含有する硬化性組成物が、耐熱性、耐湿性、光透過性および密着性に優れ、封止剤、塗料、コーティング材、接着剤およびレンズ等に利用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
本発明の一般式(1)で表されるオキセタン化合物は、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンカルボン酸およびその誘導体、シクロヘキサンスルホン酸およびその誘導体とクロルアルキル、ヒドロキシアルキル、カルボン酸およびその誘導体、スルホン酸およびその誘導体基を有する単官能オキセタン化合物を適宜組み合わせて、既知の方法により合成できる。
【0017】
本発明の一般式(1)で表されるオキセタン化合物の具体例を以下に示す。
【0018】
【化2】

【0019】
カチオン重合開始剤
本発明におけるカチオン重合開始剤は、光あるいは熱の適応により活性化されて酸成分を生成し、組成物中のカチオン重合性基のカチオン重合を誘発するように作用するものである。
【0020】
カチオン重合開始剤としては、光が照射されて活性化され、カチオン重合性基の重合を誘発し得る限り任意の光カチオン重合開始剤を用いることができ、当該光カチオン重合開始剤としては、オニウム塩類および有機金属錯体類などを例示することができる。また、光増感剤を併用することもできる。
【0021】
光カチオン重合開始剤
光カチオン重合開始剤におけるオニウム塩類としては、例えば、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩およびヨードニウム塩が挙げられる。また、光カチオン重合開始剤における有機金属錯体類としては、例えば、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体およびアリールシラノール−アルミニウム錯体などが挙げられる。市販品である、例えば、オプトマーSP−150{商品名、旭電化工業(株)製}、オプトマーSP−170{商品名、旭電化工業(株)製}、UVE−1014(商品名、ゼネラルエレクトロニクス社製)およびCD−1012(商品名、サートマー社製)などを利用することもできる。
【0022】
カチオン重合開始剤のアニオン残基としては、SbF6-、AsF6-、B(C654-およびPF6-などから選ばれる一種を有するオニウム塩であることが好ましい。
【0023】
光増感剤
本発明において用いることができる典型的な増感剤は、クリベロがアドバンスド イン ポリマーサイエンス(Adv. in Plymer Sci.,62,1(1984)) で開示している化合物を用いることが可能である。具体的には、ピレン、ペリレン、アクリジンオレンジ、チオキサントン、2−クロロチオキサントン及びペンゾフラビン等がある。
【0024】
熱カチオン重合開始剤
熱カチオン重合開始剤としては、加熱により活性化されカチオン重合性基のカチオン重合を誘発する限り任意の熱カチオン重合開始剤が用いられ、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩およびスルホニウム塩などの各種オニウム塩類、並びに有機金属錯体類などが例示される。当該オニウム塩類としては、例えば、アデカオプトンCP−66およびアデカオプトンCP−77{いずれも商品名、旭電化工業(株)社製}、サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80LおよびサンエイドSI−100L{いずれも商品名、三新化学工業(株)製}、およびCIシリーズ{日本曹達(株)製}などの市販の化合物を用いることができる。また、当該有機金属錯体類としては、例えば、アルコキシシラン−アルミニウム錯体などが挙げられる。
【0025】
配合割合
カチオン重合開始剤のカチオン硬化性組成物への配合割合は、当該組成物中の重合性成分が一般式(1)のみであるときは、一般式(1)100質量部に対し、0.01〜5質量部が好ましく、更に0.1〜4質量部が好ましい。また、カチオン硬化性組成物中に一般式(1)以外の重合性成分を含むときは、当該重合性成分の合計100質量部に対するカチオン重合開始剤の配合割合は、0.01〜5質量部の範囲とすることが好ましく、0.1〜4質量部が好ましい。
【0026】
カチオン重合開始剤の配合割合が0.01質量部未満の場合には、光および/または熱の作用により活性化しても、カチオン重合性基のカチオン重合反応を十分に進行させることができないことがあり、重合後の耐熱性および吸水率などが不十分となる場合が有る。また、5質量部を超えて配合したとしても、重合を進行する作用はそれ以上高まらず、逆に耐熱性などの他の特性が低下することがある。
【0027】
ラジカル重合開始剤
本発明のカチオン硬化性組成物に、分子中にラジカル重合性基を有する化合物を配合したときは、ラジカル重合開始剤を添加することもできる。
【0028】
このラジカル重合開始剤とは、熱、光、あるいはレドックス反応などによりラジカルを発生する化合物を例示できる。このようなものとしては、有機過酸化物、アゾ化合物、レドックス開始剤などが挙げられる。
【0029】
開環重合性のポリマー
本発明のカチオン硬化性組成物には、一般式(1)以外の分子中に開環重合性の環状エーテル基を1個以上有する化合物を重合成成分として含有させることができる。
【0030】
この化合物としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、オキソラン化合物、環状アセタール化合物およびエポキシ化合物とラクトンとの反応生成物であるスピロオルソエステル化合物などを挙げることができる。これら化合物は、1種を単独で使用することもできるし、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0031】
エポキシ化合物
エポキシ化合物としては、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシルレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシルレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシルレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類;エポキシ化大豆油;エポキシステアリン酸ブチル;エポキシステアリン酸オクチル;エポキシ化アマニ油;エポキシ化ポリブタジエンなどを例示することができる。
【0032】
オキセタン化合物
オキセタン化合物としては、分子中に1個以上のオキセタン環を有する化合物であれば特に制限なく使用できる。具体的には、特開平8−85775号公報および特開平8−134405号公報などに記載された各種のオキセタン化合物が挙げられ、これらの中でもオキセタニル基を1個または数個有する化合物が好ましい。単官能オキセタンの例としては、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(クロロメチル)オキセタンなどが挙げられる。2官能オキセタンの例としては、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、ビス{[1−エチル(3−オキセタニル)]メチル}エーテルなどが挙げられる。これらの化合物は、東亞合成(株)製 アロンオキセタンOXT−101、OXT−121、OXT−211、OXT−221およびOXT−212(いずれも商品名)として市販されている。
【0033】
本発明のカチオン硬化性組成物に含有しているときの一般式(1)以外の分子中に開環重合性の環状エーテル基を1個以上有する化合物の添加量は、一般式(1)100質量部に対して0.01〜300質量部の割合で用いることが好ましく、更に0.1〜200質量部が好ましく、1〜100質量部が特に好ましい。
【0034】
分子中にラジカル重合性基を有する化合物
本発明のカチオン硬化性組成物には、分子中に少なくとも一個のラジカル重合性基を有する化合物を重合成成分として配合することもできる。このようなものとしては、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミドおよびN−メトキシブチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリロイル基を有する化合物;ビニル基を有する化合物;フマル酸モノブチルエステルおよびマレイン酸モノブチルエステルなどの不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステルおよび無水マレイン酸などが挙げられる。(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基とメタクリロイル基とを示す。
【0035】
(メタ)アクリロイル基を一個有する化合物
(メタ)アクリロイル基を有する化合物のうち、(メタ)アクリロイル基を一個有する化合物としては、例えばN−ビニルピロリドン、並びにテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、並びにフェノールのエチレンオキサイド付加物等のフェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート類、並びにノニルフェノールのようなアルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物等のアルキルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート類、並びに2−エチルヘキサノールのエチレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート等の脂肪族アルコールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート類等が挙げられる。上記のアルキルとは、分岐があっても良い低級アルキル基であり、具体的には、エチルおよびプロピル等のような炭素数1〜6のものである。また、上記のアルキレンとは、分岐があっても良い低級アルキル基であり、具体的には、エチレンおよびプロピレン等のような炭素数1〜6のものである。また、上記のアルキレンオキサイドとは、エチレンおよびプロピレンのような良い低級アルキレンよりなるものである。本発明のカチオン硬化性組成物には、これらの化合物を2種以上併用することもできる。
【0036】
(メタ)アクリロイル基を1分子中に2個以上有する化合物
(メタ)アクリロイル基を有する化合物のうち、アクリロイル基を1分子中に2個以上有する化合物としては、エチレンオキサイド変性ビスフェノールFのジアクリレート(例えば東亞合成(株)製「アロニックスM208」)、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAのジアクリレート(例えば東亞合成(株)製「アロニックスM210」)、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAのジアクリレート(例えば共栄社化学(株)製「ライトアクリレートBP−4PA」)、エチレンオキサイド変性イソシアヌル酸のジアクリレート(例えば東亞合成(株)製「アロニックスM215」)、ポリプロピレングリコールジアクリレート(例えば東亞合成(株)製「アロニックスM225」)、ポリエチレングリコールジアクリレート(例えば東亞合成(株)製「アロニックスM240」)、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート(例えば共栄社化学(株)製「ライトアクリレートPTMGA−250」)、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート(例えば東亞合成(株)製「アロニックスM233」)、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ノナンジオールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(例えば共栄社化学(株)製「ライトアクリレートDCP−A」)、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル(例えば共栄社化学(株)製「ライトアクリレートBA−134」)、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート(例えば共栄社化学(株)製「ライトアクリレートHPP−A」)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(例えば東亞合成(株)製「アロニックスM305」)、トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば東亞合成(株)製「アロニックスM309」)、アルキレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば東亞合成(株)製「アロニックスM310」、「アロニックスM350」)、エチレンオキサイド変性イソシアヌル酸のトリアクリレート(例えば東亞合成(株)製「アロニックスM315」)、グリセリントリアクリレート、アルキレンオキサイド変性グリセロールのトリアクリレート(例えば日本化薬(株)製「カヤラッドGPO−303」)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(例えば東亞合成(株)製「アロニックスM450」)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(例えば東亞合成(株)製「アロニックスM400」)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(例えば東亞合成(株)製「アロニックスM458」)、ウレタンアクリレート(例えば東亞合成(株)製「アロニックスM1100」、「アロニックスM1200」、「アロニックスM1600」)、ポリエステルアクリレート(例えば東亞合成(株)製「アロニックスM6100」、「アロニックスM7100」)、アルキレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物(例えば共栄社化学(株)製「エポキシエステル70PA」)、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物(例えば昭和高分子(株)製「リポキシVR60」)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂のアクリル酸付加物(例えば昭和高分子(株)製「リポキシH600」)、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物(例えば昭和高分子(株)製「リポキシSP510」)等がある。これらの化合物は所望により2種類以上用いても良い。
【0037】
ビニルエーテル基を有する化合物
このビニル基を有する化合物として、ビニルエーテル基を有する化合物が例示できる。このビニルエーテル基を有する化合物のうち、ビニルエーテル基を1個有する化合物としては、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート及びシクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。ビニルエーテル基を2個以上有する化合物としては、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル及びノボラック型ジビニルエーテル等が挙げられる。
【0038】
これら以外に本発明のカチオン硬化性組成物には、カチオン重合を阻害しないものであれば、各種モノマー、オリゴマー、ポリマーなどを配合することができる。
【0039】
任意成分
本発明のカチオン硬化性組成物には、必要に応じて他の成分を添加配合することができる。
【0040】
この例として、粉末状の補強剤や充填剤、例えば酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩、ケイソウ土粉、塩基性ケイ酸マグネシウム、焼成クレイ、微粉末シリカ、溶融シリカ、結晶シリカなどのケイ素化合物、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、その他、カオリン、マイカ、石英粉末、グラファイト、二硫化モリブデンなど、さらに繊維質の補強剤や充填剤、たとえばガラス繊維、セラミック繊維、カーボンファイバー、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維、ポリエステル繊維およびポリアミド繊維などである。これらは本発明の組成物100質量部に対して、10〜900質量部配合することができる。
【0041】
本発明のカチオン硬化性組成物には、必要に応じて着色剤、顔料、難燃剤、例えば二酸化チタン、鉄黒、モリブデン赤、紺青、群青、カドミウム黄、カドミウム赤、三酸化アンチモン、赤燐、ブロム化合物およびトリフェニルホスフェイトなどを配合することができる。これらは本発明の組成物100質量部に対して、0.1〜20質量部配合することができる。
【0042】
さらに、成形品などにおける樹脂の性質を改善する目的で種々の硬化性モノマー、オリゴマーおよび合成樹脂を本発明の組成物に配合することができる。例えば、モノエポキシなどのエポキシ樹脂用希釈剤、フェノール樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂などの1種または2種以上の組み合わせを挙げることができる。これら樹脂類の配合割合は、本発明のカチオン硬化性組成物の本来の性質を損なわない範囲の量、すなわち本発明の組成物100質量部に対して、50質量部以下が好ましい。
【0043】
本発明の組成物および任意成分の配合手段としては、加熱溶融混合、ロール、ニーダーによる溶融混練、適当な有機溶剤を用いての湿式混合および乾式混合などが挙げられる。
【0044】
本発明の組成物は、熱カチオン重合開始剤を用いた場合は熱により、また、活性エネルギー線カチオン重合開始剤を用いた場合は活性エネルギー線で硬化される。熱カチオン重合の場合は、通常、その熱カチオン重合開始剤がカチオン種やルイス酸の発生を開始する温度以上で行われ、通常50〜200℃にて実施される。
【0045】
活性エネルギー線により重合を行う場合に用いることのできる光源としては特に限定されるものではないが、波長400nm以下に発光分布を有する、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯およびメタルハライドランプなどを用いることができる。組成物への光照射強度は、目的とする製品毎に制御されるものであって特に限定されるものではないが、光潜在性を有するカチオン重合開始剤の活性化に有効な光波長領域(当該重合開始剤によって異なる)の光照射強度が0.1〜100mW/cm2であることが好ましい。組成物への光照射強度が0.1mW/cm2未満であると、反応時間が長くなり過ぎ、100mW/cm2を超えると、ランプから輻射される熱および組成物の重合時の発熱により、得られる粘着剤層の凝集力の低下や黄変あるいは支持体の劣化が生じる恐れがある。組成物への光照射時間は、目的とする製品毎に制御されるものであって特に限定されるものではないが、前記光波長領域での光照射強度と光照射時間の積として表される積算光量が10〜5,000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。上記粘着剤組成物への積算光量が10mJ/cm2未満であると、当該開始剤からの活性種の発生が充分でなく、得られる粘着剤層の粘着特性の低下を生じるおそれがあり、5,000mJ/cm2を超えると、照射時間が非常に長時間となり、生産性向上のためには不利なものとなる。また、活性エネルギー線の照射後0.1〜数分後には、ほとんどの組成物はカチオン重合により指触乾燥するが、カチオン重合の反応を促進するために加熱を併用することも場合によっては好ましい。
【0046】
熱により重合を行う場合は一般的に知られた方法により熱を適応する事ができ、その条件などは特に限定されるものではない。
【0047】
本発明の一般式(1)を含有するカチオン硬化性組成物は、重合時の酸素阻害が小さいことから、少ない活性エネルギー線照射で硬化させることができる。また、熱による重合も同様である。
【0048】
組成物の使用方法
本発明の一般式(1)を配合した組成物の使用方法としては、基材に硬化性組成物を塗布した後、活性エネルギー線を照射する方法などが挙げられる。当該基材としては、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートなどの成形樹脂加工品(プラスチック)、金属、ガラス、コンクリート、自然の木材および合成木材などの木材、石材並びに紙などが挙げられる。
【0049】
本発明の一般式(1)を含有する硬化物は、耐熱性、耐湿性、光透過性および密着性に優れている。このことから、封止剤、塗料、コーティング材、接着剤、レンズ等に利用できる。
【実施例】
【0050】
以下に実施例を用いて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0051】
合成例1
温度計、冷却器、分水管、攪拌装置および滴下漏斗を備えた300mlの四つ口フラスコに、シクロヘキサン−1,4−ジオール 23.2g(0.20mol)、3−クロロメチル−3−エチルオキセタン 80.9g(0.60mol)を加え、攪拌しながら加熱した。反応液の温度を約120℃に保ちながら、反応系内が還流するまで減圧にした。反応系内の還流を保ちながら、48%水酸化カリウム水溶液 51.4g(0.44mol)を約30分かけて滴下した。6時間加熱した後、48%水酸化カリウム水溶液 26.0g(0.22mol)を追加し、更に6時間後に48%水酸化カリウム水溶液 13.1g(0.11mol)および3−クロロメチル−3−エチルオキセタン 80.9g(0.60mol)、その2時間後に48%水酸化カリウム水溶液 13.1g(0.11mol)を追加し、合計18時間還流条件下120℃で攪拌した。なお反応系内の水は、3−クロロメチル−3−エチルオキセタンと共沸させて留去しながら反応を行い、分水管中の有機層はすべて反応器へ戻した。反応終了までに留出した水層は53.1gであった。反応液を室温まで冷却した後、水 156gを加え有機層と水層に分離した。得られた有機層にトルエン 158gを加えた後、水 100gで2回洗浄した。得られた有機層を減圧下溶媒留去し、残渣として粗精製物 89.1gを得た。得られた粗精製物を減圧蒸留により精製し、例示化合物1で表される化合物を得た。
【0052】
合成例2
合成例1において、シクロヘキサン−1,4−ジオール 23.2g(0.20mol)の代りにシクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸 34.4g(0.20mol)を用いた他は合成例1と同様に行い、例示化合物2で表される化合物を得た。
【0053】
合成例3
合成例1において、シクロヘキサン−1,3,5−トリオール 23.2g(0.20mol)の代りにシクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸 26.4g(0.20mol)を用いた他は合成例1と同様に行い、例示化合物3で表される化合物を得た。
【0054】
合成例4
合成例1において、シクロヘキサン−1,3,5−トリオール 23.2g(0.20mol)の代りにトランス−1,2−ノルボルナンジオール 25.6g(0.20mol)を用いた他は合成例1と同様に行い、例示化合物4で表される化合物を得た。
【0055】
合成例5
温度計、冷却器、攪拌装置及び滴下漏斗を備えた500mlの三つ口丸底フラスコに、純度60%の油性水素化ナトリウム10.0g(0.25mol)とトルエン50mlを入れ、80℃で加熱攪拌した。これに、純度98.6%の3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン29.5g(0.25mol)を20mlのトルエンに溶解した液を滴下漏斗から35分間かけて滴下した。その間、激しい発泡現象が観られるが、滴下終了後も発泡現象が観られなくなるまで攪拌を続けた。引き続き、これに、純度98.6%の26.0g(0.10mol)をトルエン300mlに溶解した液を、滴下漏斗から50分間かけて滴下した。滴下終了後、更に80℃で5時間反応を続けた。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却して析出物をロ別した。このロ液と析出物をトルエン20mlで2回洗浄して得られた洗浄液を一緒にして100mlの水で3回洗浄した。その油相を分離し、塩化カルシウムを加えて乾燥後、トルエンを減圧下で留去すると、残渣として粗精製物 41.1gを得た。得られた粗精製物を減圧蒸留により精製し、例示化合物5で表される化合物を得た。
【0056】
上記で得られたオキセタン化合物と下記成分を表1に示す比率(質量部)で配合して均一に混合し、液状の硬化性組成物を得た。
【0057】
<オキセタン化合物>
例示化合物1〜5
比較化合物1〜3(式(2)〜(4))
<エポキシ化合物>
セロキサイド2021P(商品名)(CEL−2021P):ダイセル化学工業社製、3,4−エポキシシクロヘキシル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート
【0058】
【化3】

【0059】
<硬化剤>
メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(商品名)MH−700:新日本理化社製
スルホニウム塩系カチオン重合開始剤(商品名)SI−100L:三新化学工業社製
【0060】
【化4】

【0061】
<硬化促進剤>
U−CAT5003(商品名):サンアプロ社製,ホスホニウム塩系
SA−102(商品名):サンアプロ社製、DBUのオクチル酸塩
上記各組成物を下記に示す条件で硬化させ、その硬化物についての耐熱性、耐湿性および光透過性について以下に述べる方法で測定し、評価した。結果を表1に示す。
【0062】
実施例1、2、3および比較例1、2は110℃で2時間加熱し、更に180℃で2時間加熱した。
【0063】
実施例4、5および比較例3は高圧水銀灯の光照射強度60W/cm2にて、8分間紫外線照射を行った。
【0064】
[耐熱性]
上記各組成物を上記条件で熱又は光硬化させた試験片(長さ10mm、幅5mm、厚さ5mm)を、熱機械測定装置(TMA)(セイコーインスルツルメント社製)でガラス転移温度を測定した。
【0065】
[耐湿性]
上記各組成物を上記耐熱性試験用サンプルと同条件で熱又は光硬化させた試験片(長さ50mm、幅50mm、厚さ3mm)をプレッシャークッキング装置(タバイエスペック社製)で130℃、2気圧(202kPa)、100時間の条件で加湿し、この加湿後の試験片の質量増加率を次式に従って求めた。質量増加率(%)=(W−W0)/W0×100なお、W0は加湿前の質量、Wは加湿後の質量である。その結果を以下の基準で評価した。◎:1.5%未満
○:1.5%以上2.5%未満
△:2.5%以上3.5%未満
×:3.5%以上。
【0066】
[光透過性]
上記各組成物を、耐熱性試料と同一硬化条件で硬化させて厚み3mmの硬化物を成形した。これについて、波長365nmにおける光透過率を分光光度計を用いて測定した。
【0067】
[密着性試験]
上記各組成物を、アルミ板A1050Pにバーコーター#36で塗布し、耐熱性試料と同一条件にて硬化させた。硬化後のサンプルのせん断強度を、引張り速度1mm/分で測定した。
【0068】
【表1】

【0069】
表1から、本発明の硬化性組成物は、耐熱性、耐湿性、光透過性および密着性が良好であることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とするオキセタン化合物。
【化1】

〔式中、R1〜R10は各々独立に水素原子、水酸基、または炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐アルキル基を表し、rが複数の場合、何れかがL1で連なる基となる。また、lが1の場合R4とR8はない。lは0または1を表す。L1はシクロヘキサン環に直結する酸素原子、硫黄原子またはカルボニル基であって、更にこれらの酸素原子、硫黄原子またはカルボニル基は炭素数1〜15の連結基でオキセタン環と結合する連結基を表す。rは1〜3を表す。R11は水素原子、水酸基、または炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐アルキル基を表し、mは1または2を表す。〕
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるオキセタン化合物及びエポキシ化合物を含有することを特徴とする硬化性組成物。
【請求項3】
熱重合開始剤又は光重合開始剤のいずれかを含有することを特徴とする請求項2記載の硬化性組成物。
【請求項4】
熱重合開始剤が酸無水物又はスルホニウム塩のいずれかであることを特徴とする請求項2記載の硬化性組成物。
【請求項5】
光重合開始剤がスルホニウム塩であることを特徴とする請求項2記載の硬化性組成物。