説明

オキソアニオンを吸着させるためのイオン交換体のコンディショニング

【課題】オキソアニオンを吸着させるためのイオン交換体のコンディショニングを提供する。
【解決手段】本発明は、好ましくは水または水溶液から、金属ドープされたイオン交換体、好ましくは酸化鉄/オキシ水酸化鉄含有イオン交換体へのオキソアニオンおよび/またはそれらのチオ類似体の吸着性を向上させるための無機塩の使用に関し、さらに、無機塩を使用することによりオキソアニオンおよび/またはそれらのチオ類似体に対する向上された吸着挙動を有するそれらの金属ドープされたイオン交換体のコンディショニングに関するが、ただし、官能基として酸性基および塩基性基の両方を有する両性イオン交換体の場合は除く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは水または水溶液から、金属ドープされたイオン交換体、好ましくは酸化鉄/オキシ水酸化鉄含有イオン交換体へのオキソアニオンおよび/またはそれらのチオ類似体の吸着性を向上させるための無機塩の使用に関し、さらに、無機塩を使用することによるオキソアニオンおよび/またはそれらのチオ類似体に対して改善された吸着挙動を有するそれらの金属ドープされたイオン交換体(ただし、官能基として酸性基および塩基性基の両方を有する両性イオン交換体の場合は除く)のコンディショニングに関する。
【0002】
さらに、本発明は、オキソアニオンおよび/またはそれらのチオ類似体を吸着させるための、金属ドープされたイオン交換体、好ましくは酸化鉄/オキシ水酸化鉄含有イオン交換体、特に好ましくは金属ドープされたイオン交換体の熱安定性を向上させるための方法であって、それらのイオン交換体(ただし官能基として酸性基および塩基性基の両方を有する両性イオン交換体は例外とする)を、その製造に続けて無機塩を用いてコンディショニングすることを特徴とする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明の意味合いの範囲に入るオキソアニオンは、式X、X2−、X3−、HX、またはH2−で表される(ここで、nは整数1、2、3または4であり、mは整数3、4、6、7、または13であり、そしてXは、一連のAu、Ag、Cu、Si、Cr、Ti、Te、Se、V、As、Sb、W、Mo、U、Os、Nb、Bi、Pb、Co、Ni、Fe、Mn、Ru、Re、Tc、Al、Bの金属もしくは遷移金属、または一連のF、Cl、Br、I、CN、C、N、P、Sの非金属である)。本発明においては、オキソアニオンという表現は、好ましくは、式XO2−、XO3−、HXO、またはHXO2−を意味しているが、ここで、mは、整数3または4であり、そしてXは、一連のCr、Te、Se、V、As、Sb、W、Mo、Biの金属もしくは遷移金属、または一連のCl、Br、I、C、N、P、Sの非金属である。特に好ましくは、本発明においては、オキソアニオンという表現は、酸化状態(III)および(V)にあるヒ素の、酸化状態(III)および(V)にあるアンチモンの、硫酸塩としての硫黄の、リン酸塩としてのリンの、クロム酸塩としてのクロムの、ビスマス酸塩としてのビスマスの、モリブデン酸塩としてのモリブデンの、バナジン酸塩としてのバナジウムの、タングステン酸塩としてのタングステンの、セレン酸塩としてのセレンの、テルル酸塩としてのテルルの、または塩素酸塩もしくは過塩素酸塩としての塩素の、オキソアニオンを意味している。本発明において特に好ましいオキソアニオンは、HAsO、HAsO、HAsO2−,AsO3−、HSbO、HSbO、HSbO2−、SbO3−、SeO2−、ClO、ClO、BiO2−、SO2−、PO3−、クロム酸塩である。本発明において、極めて特に好ましいものは、オキソアニオンの、HAsO、HAsO、HAsO2−,AsO3−およびさらにはSeO2−、ならびにクロム酸塩である。本発明の意味合いの範囲内において、本発明の開示の文脈におけるオキソアニオンという表現にはさらに、上述の式においてOに代えて、Sが硫黄を表している、チオ類似体もまた含まれる。
【0004】
飲料水の品質条件は、ここ数十年で顕著に厳しくなってきた。多くの国の健康に関わる当局は、水中の重金属濃度についての制限値を策定してきた。これは特に、ヒ素、アンチモンまたはクロムのような重金属に関わる。
【0005】
ある種の条件下では、たとえばヒ素化合物が岩石から抽出されて、地下水の中に入り込む。天然水中では、ヒ素は、3価および5価のヒ素を含む酸化化合物として出現する。この場合、通常の天然水のpHでは、HAsO、HAsO、HAsO、HAsO2−の化学種が主として出現することが見出されている。
【0006】
クロム、アンチモンおよびセレン化合物に加えて、容易に吸収され得るヒ素化合物は極めて毒性が強く、発ガン性でもある。しかしながら、鉱石作業場から地下水に入り込むビスマスもまた健康上安全なものではない。
【0007】
米国、インド、バングラディシュ、中国、さらには南米の多くの地域において、場所によっては地下水中に極めて高いヒ素濃度が認められる。
【0008】
多くの医学的研究によって、長期間にわたって高いヒ素汚染に暴露された人間は、慢性ヒ素中毒の結果として、病的な皮膚の変化(角質増殖症)や各種のタイプの腫瘍の発生の可能性があるということが確認されている。
【0009】
イオン交換体が、原水、廃水、および水系工程の流れを精製するために広く使用されている。イオン交換体はさらに、オキソアニオンたとえばヒ酸塩を除去するのにも適している。たとえば,(非特許文献1)には、第一級、第二級および第三級アミノ基を有するイオン交換体を使用して、アニオンたとえばヒ酸塩を交換させることが記載されている。
【0010】
(特許文献1)および(特許文献2)には、酸化鉄/オキシ水酸化鉄含有カルボキシル含有イオン交換体を製造するための方法の記載がある。この物質はヒ素を吸着して、低い残存濃度にまで下げるが、その吸着容量に限度がある。
【0011】
(特許文献3)には、特別に限定された金属イオンまたは金属含有イオンを含む強塩基性アニオン交換体に水を接触させることによって、その水からヒ素を除去するための方法が開示されている。(特許文献3)は、アルキル化させることによって第二級および第三級アミノ基を第四級アンモニウム基に転換させると、ヒ素に対する選択性が向上するという事実に関するものであって、その結果として(特許文献3)においては強塩基性アニオン交換体を特徴としている。金属とヒ酸塩とから形成される塩が、10−5以下のKspを有しているという点が重要である。
【0012】
さらに、特に、水を金属ドープされたイオン交換体と接触させることによって、水からヒ素(III)またはヒ素(V)を除去するための方法について、(非特許文献2)には、ポリスチレンベースの二酸化マンガンドープされたイオン交換体が、(非特許文献3)には、鉄(III)ドープされたキレート樹脂が、そして(非特許文献4)にも教示がある。
【特許文献1】国際公開第2004/110623A1号パンフレット
【特許文献2】欧州特許出願公開第1 495 800A号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1 568 660A号明細書
【非特許文献1】R.クーニン(R.Kunin)およびJ.マイヤース(J.Meyers)、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(J.Am.Chem.Soc.)、第69巻、2874頁(1947)
【非特許文献2】V.レノーブル(V.Lenoble)ら、サイエンス・オブ・ザ・トータル・エンバイロンメント(Science of the Total Environment)326(2004)、197〜207頁
【非特許文献3】I.ラオ(I.Rao)ら、ジャーナル・オブ・ラジオアナリティカル・アンド・ニュークリア・ケミストリー(Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry)、第246巻、第3号(2000)、597〜600頁
【非特許文献4】M.フルビー(M.Hruby)ら、コレクション・オブ・チェコスロバク・ケミカル・コミュニケーションズ(Colletc.Czech.Chem.Commun.)、第68巻、2003、2159〜2170頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来技術において公知のヒ素吸着剤は、選択性、容量、および熱安定性の面で、所望されているような性質を示していない。したがって、オキソアニオンおよび/またはそれらのチオ類似体、特にヒ素のオキソアニオンに特異的であり、製造するのが簡単であり、オキソアニオンおよび/またはそれらのチオ類似体の吸着性が改良され、さらにはより高い熱安定性を示すような、ビーズの形態の新規なイオン交換体または吸着剤が必要とされている。
【0014】
吸着剤の熱安定性が高い方が望ましいが、その理由は、第一には吸着剤が使用されるまでに温度の高い貯蔵室に保管される可能性があるか、あるいは高温のオキソアニオン含有水と接触させる可能性があるからである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
その目的の解決法、したがって本発明の主題は、好ましくは水または水溶液からオキソアニオンおよび/またはそれらのチオ類似体を吸着させるための、金属ドープされたイオン交換体(酸性および塩基性の両方の官能基を有する両性イオン交換体は除く)の使用であって、その使用前に無機塩を用いてコンディショニングを施すことを特徴とする使用である。
【0016】
本出願では以後において、無機塩を用いて、金属ドープされたイオン交換体を処理することを「コンディショニング」と呼ぶ。
【0017】
しかしながら、本発明はさらに、イオン交換体に対してのオキソアニオンおよび/またはそれらのチオ類似体の吸着性を向上させるための方法であって、イオン交換体(酸性および塩基性の両方の官能基を有する両性イオン交換体は除く)を、金属ドープした後に無機塩を用いてコンディショニングすることを特徴とする方法に関する。この方法は、好ましくは水または水溶液で用いられる。
【0018】
従来技術を考慮すると、無機塩コンディショニングされ、金属ドープされた、好ましくは酸化鉄/オキシ水酸化鉄含有イオン交換体は、従来技術に比較して、顕著に改良されたオキソアニオンおよびチオアニオン吸着性を示すばかりでなく、水溶液からのオキソアニオンおよび/またはそれらのチオ類似体の、好ましくはヒ酸塩、アンチモン酸塩、リン酸塩、クロム酸塩、モリブデン酸塩、ビスマス酸塩、タングステン酸塩またはセレン酸塩の、特に好ましくは酸化状態(III)および(V)のヒ酸塩もしくはアンチモン酸塩またはセレン酸塩の吸着のために使用するのに一般的に好適である、というのは意外なことであった。
【0019】
好ましい実施態様において、本発明は、無機塩処理された、金属ドープされたイオン交換体の使用に関し、ここで、その金属は一連の、鉄、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、ランタン、チタン、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、リチウムまたはスズから選択され、特に好ましくは、吸着されるオキソアニオンおよび/またはそのチオ類似体とのその塩が10−5以下のKspを有している前記金属であり、特に好ましくは、酸化鉄/オキシ水酸化鉄含有イオン交換体である。無機塩を用いてコンディショニングされるイオン交換体の金属含量が、それぞれのイオン交換体の乾燥重量の5〜30%であるのが好ましい。
【0020】
好ましい実施態様において、本発明は、イオン交換体(酸性および塩基性の両方の官能基を有する両性イオン交換体は除く)へのオキソアニオンおよび/またはそのチオ類似体の吸着容量を増大させるための無機塩の使用に関し、ここでその無機塩は、その好ましい用途が飲料水を得るための水の処理であるであるために、ヒトにとって生理学的に無害な塩である。本発明においては、そのコンディショニングには、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウムを使用するのが好ましく、塩化ナトリウムが特に好ましい。無機塩の使用は、必ずベースとなるイオン交換体の金属ドーピングが終わって初めて進行し、イオン交換体1mLあたり、水溶液、好ましくは25重量%強度溶液の形態の無機塩0.03グラムが使用される。
【0021】
無機塩を使用したそれぞれのイオン交換体のコンディショニングは、好ましくは5〜30℃の温度、特に好ましくは10〜25℃、特に好ましくは室温で進行させる。
【0022】
水溶液中での無機塩の計測は、時間について決定的ではない。これは、技術的状況にもよるが、可能な限り迅速に進行させうる。
【0023】
イオン交換体は、撹拌しながら、あるいはカラム中で濾過する形で、無機塩の水溶液と接触させることができる。
【0024】
イオン交換体1モルあたり、好ましくは1〜10モル、特に好ましくは3〜6モルの無機塩を使用する。
【0025】
コンディショニングのために用いる無機塩の水溶液は、好ましくは10〜40重量%、特に好ましくは20〜30重量%の無機塩含量を有し、好ましくは5〜13、特に好ましくは6〜11、特に好ましくは7〜9のpHを有している。
【0026】
本発明における無機塩を用いたコンディショニングのためには、官能基として好ましくは、水酸基、エーテル、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アミン、2価の硫黄、アミンオキシド、ホスホン酸、イミノ二酢酸またはヒドロキシルアミンを有する金属ドープされたイオン交換体を使用する。
【0027】
本発明において、無機塩を使用したコンディショニングのために使用されるイオン交換体は、複分散、単分散のいずれであってもよい。本発明においては、単分散イオン交換体を使用するのが好ましい。それらの粒径は一般的には、250〜1250μm、好ましくは280〜600μmである。
【0028】
単分散イオン交換体のベースとなる単分散粒状ポリマーは、公知の方法、たとえば分別法、アトマイゼーション法、ジェッティング法によるか、あるいはシードフィード法によって製造することができる。
【0029】
単分散イオン交換体の製造は、原理的には当業者に公知である。篩別による複分散イオン交換体の分別に加えて、前駆体の、単分散粒状ポリマーの製造における、実質的に2種の直接製造方法、すなわち、アトマイゼーション法もしくはジェッティング法と、シードフィード法とでは区別をする。シードフィード法においては、たとえば篩別またはジェッティングにより製造することが可能な単分散フィードを使用する。本発明においては、オキソアニオンを吸着させるためには、アトマイゼーション法またはジェッティングによって得られる単分散塩基性イオン交換体を使用するのが好ましい。
【0030】
本出願において、分布曲線の均等係数が1.2以下であるような粒状ポリマーまたはイオン交換体を「単分散」と呼ぶ。均等係数とは、特性値d60とd10の商である。d60とは、分布曲線における60質量%がそれより小さく、40質量%がそれ以上であるような直径を表す。d10とは、分布曲線における10質量%がそれより小さく、90質量%がそれ以上であるような直径を表す。
【0031】
イオン交換体の前駆体である、単分散粒状ポリマーは、水性懸濁液状態の、モノビニル芳香族化合物、ポリビニル芳香族化合物、さらには単一の重合開始剤もしくは重合開始剤混合物、および必要に応じてポロゲンからなる単分散の、必要に応じてカプセル化された、モノマー液滴を反応させることにより、製造することができる。マクロポーラスイオン交換体を製造するためのマクロポーラス粒状ポリマーを得るためには、ポロゲンの存在は絶対的に必要である。本発明においては、ゲルタイプまたはマクロポーラス単分散、いずれの塩基性イオン交換体も使用することが可能である。本発明の好ましい実施態様においては、単分散塩基性イオン交換体を使用するが、それを製造するためには、マイクロカプセル化モノマー液滴を使用した単分散粒状ポリマーを使用する。ジェッティングの原理によるかあるいはシードフィードの原理によるかの両方の、各種の単分散粒状ポリマーの製造方法が、当業者にとっては従来技術から公知である。ここで、米国特許第4,444,961A号明細書、欧州特許出願公開第0 046 535A号明細書、米国特許第4,419,245A号明細書、および国際公開第93/12167号パンフレットを参照されたい。
【0032】
本発明において使用されるモノビニル芳香族不飽和化合物は、好ましくは、たとえばスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、アルファ−メチルスチレン、クロロスチレン、またはクロロメチルスチレンのような化合物である。
【0033】
使用するのに好ましいポリビニル芳香族化合物(架橋剤)は、ジビニル担持の脂肪族または芳香族化合物である。ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、トリビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ヘキサ−1,5−ジエン、オクタ−1,7−ジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、さらにはジビニルエーテルを使用するのが特に好ましい。
【0034】
好適なジビニルエーテルは、一般式(I)の化合物である。
【0035】
【化1】

(I)
[式中、
Rは、一連のC2n、(C2m−O)−C2m、またはCH−C−CHの基であるが、n≧2、m=2〜8、p≧2である]
【0036】
n>2の場合の好適なポリビニルエーテルは、グリセロール、トリメチロールプロパンのトリビニルエーテル、またはペンタエリスリトールのテトラビニルエーテルである。
【0037】
エチレングリコール、ジ−、テトラ−もしくはポリエチレングリコール、ブタンジオールまたはポリ−THFのジビニルエーテル、または対応するトリ−もしくはテトラビニルエーテルを使用するのが特に好ましい。特に、極めて特に好ましいのは、ブタンジオールおよびジエチレングリコールのジビニルエーテルであるが、これについてはたとえば欧州特許出願公開第11 10 608A号明細書に記載がある。
【0038】
ゲルタイプ性に代わるものとして望ましいマクロポーラス性は、その前駆体である、粒状ポリマーを合成する際にイオン交換体にすでに与えられている。この目的のためには、「ポロゲン」と呼ばれるものの添加が不可欠である。イオン交換体とそのマクロポーラス構造の結びつきについては、独国特許公開明細書DE第1045102号明細書(1957)および独国特許公開明細書DE第1113570号明細書(1957)に記載がある。マクロポーラス塩基性イオン交換体を得る目的で本発明において使用されるマクロポーラス粒状ポリマーを製造するためのポロゲンとしては特に、モノマー中には溶解するが、ポリマーを溶解させたり膨潤させたりする能力が低い有機物質が特に好適である。そのようなものの例を挙げれば、脂肪族炭化水素たとえば、オクタン、イソオクタン、デカン、イソドデカンなどである。さらに、容易に適用可能な化合物としては、4〜10個の炭素原子を有するアルコール、たとえばブタノール、ヘキサノールまたはオクタノールなどが挙げられる。
【0039】
したがって、単分散ゲルタイプのイオン交換体に加えて、本発明においては、好ましくは、オキソアニオンおよび/またはそれらのチオ類似体を吸着させるためにマクロポーラス構造を有する単分散イオン交換体を使用してもよい。「マクロポーラス」という表現は、当業者には公知である。たとえば、J.R.ミラー(J.R.Millar)ら、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイエティ(J.Chem.Soc.)、1963、218に詳細が記載されている。マクロポーラスイオン交換体は、水銀ポロシメトリーで測定して、0.1〜2.2mL/g、好ましくは0.4〜1.8mL/gの細孔容積を有している。
【0040】
上述のような好ましい官能基を有する単分散イオン交換体を得るための、従来技術により得られる粒状ポリマーを官能化させることについても、従来技術から当業者にとっては同様に実質的に公知である。そのような官能化されたイオン交換体の例は、独国特許出願公開第10200601737A号明細書に記載されている(その内容の全体を本出願に援用するものとする)。
【0041】
独国特許出願公開第10200601737A号明細書には、フタルイミド法と名付けられた方法によって、弱塩基性、中塩基性または強塩基性基を有する単分散マクロポーラス塩基性イオン交換体を製造するための方法が記載されており、それには以下の工程が含まれている:
a)少なくとも1種のモノビニル芳香族化合物および少なくとも1種のポリビニル芳香族化合物ならびにさらにはポロゲンと、単一の重合開始剤もしくは重合開始剤の組合せとからなるモノマー液滴を反応させて、単分散架橋粒状ポリマーを得る工程、
b)フタルイミド誘導体を用いてその単分散架橋粒状ポリマーをアミドメチル化する工程、
c)そのアミドメチル化粒状ポリマーを反応させて、アミノメチル基を有する塩基性イオン交換体を得る工程、および
d)アルキル化反応によってその塩基性イオン交換体を反応させて、第二級および/または第三級および/または第四級アミノ基を有する弱塩基性〜強塩基性アニオン交換体を得る工程。
【0042】
本発明においては、水溶液からオキソアニオンおよび/またはそれらのチオ類似体を吸着させるためには、フタルイミド法によって製造され、無機塩を用いてコンディショニングされた、金属ドープされた単分散イオン交換体を得るのが好ましい。それらの置換度は1.6までであるが、これはすなわち、芳香族環1個あたり、統計的に平均して1.6個までの水素原子がCHNH基によって置換されているということである。したがって、フタルイミド法を使用することにより、高容量で非架橋の塩基性イオン交換体を製造することが可能であって、それは、金属ドープされた、好ましくは酸化鉄/オキシ水酸化鉄含有イオン交換体に転換させた後、そして無機塩を用いてそれをコンディショニングした後では、オキソアニオンおよび/またはそれらのチオ類似体、好ましくはヒ酸塩、アンチモン酸塩もしくはセレン酸塩および/またはそれらのチオ類似体を吸着させるには極めて好適であり、それらには、第一級および/または第二級および/または第三級アミノ基または第四級アンモニウム基が含まれている。
【0043】
無機塩を用いたコンディショニングより前に実施される、金属ドープされたイオン交換体を得るためのイオン交換体のドーピングは、各種の金属の対応する塩を使用して進行させる。冒頭に引用した従来技術においては、それぞれの金属を与えるための対応する金属塩が記載されている。
【0044】
無機塩を用いてコンディショニングされる、本発明において好適な鉄ドープされたイオン交換体の場合には、そのドーピングは、鉄(II)塩または鉄(III)塩を用いて、好ましくは錯体非形成タイプの鉄(II)塩または鉄(III)塩を用いて、コンディショニングの前に実施される。この目的のために使用することが可能な鉄(III)塩は、可溶性の鉄(III)塩、好ましくは塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)または硝酸鉄(III)である。
【0045】
鉄(II)塩としては、すべての可溶性鉄(II)塩が使用できるが、特に鉄(II)の塩化物、硫酸塩、硝酸塩を使用する。プロセス工程a)において懸濁液中で空気によって鉄(II)塩の酸化を進行させるのが好ましい。
【0046】
鉄を用いて好適にドーピングするためには、撹拌しながら、あるいはカラム中で濾過する形で、イオン交換体を鉄塩溶液と接触させることができる。この場合、使用した鉄塩1モルあたり、1〜10モル、好ましくは3〜6モルのアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を使用する。イオン交換体中の官能基1モルあたり、0.05〜3モル、好ましくは0.2〜1.2モルの鉄塩を使用する。ドーピング工程におけるpHは、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物、特に水酸化カリウム、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カルシウム、アルカリ金属炭酸塩もしくはアルカリ土類金属炭酸塩もしくは炭酸水素塩を使用して調節する。ドーピングを進行させる、すなわち酸化鉄/オキシ水酸化鉄基を形成させる場合のpH範囲は、2〜12、好ましくは3〜9の範囲である。この場合において使用する物質は、水溶液として使用するのが好ましい。アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物の水溶液の濃度は、50重量%までとすることができる。アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物の濃度が20〜40重量%の範囲である水溶液を使用するのが好ましい。アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物の水溶液を計量仕込みする速度は、所望のpHレベルと技術的な状況に依存する。たとえば、この目的のために120分が必要とされる。所望のpHに達した後、撹拌を1〜10時間、好ましくは2〜4時間継続する。アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物の水溶液の計量仕込みは、10〜90℃の間、好ましくは30〜60℃で進行させる。
【0047】
酸化鉄/オキシ水酸化鉄含有イオン交換体を合成するためには、好ましくはNaOHまたはKOHを塩基として使用するのが有用であることが判明した。しかしながら、FeOH基を形成させるためにはその他の塩基、たとえばNHOH、NaCO、CaO、Mg(OH)などを使用することも可能である。一般的には、先に列記した金属、Ca、Mg、Al、La、Ti、Zu、Ni、Co、Mn、LiまたはSnのエーテルを用いた同様のドーピングも起きるであろう。
【0048】
無機塩を用いたコンディショニングの後に、その最終的にコンディショニングされた金属ドープされたイオン交換体を単離する。本発明の意味合いにおいては、「単離」とは、そのイオン交換体を無機塩の水溶液から分離し、その最終的にコンディショニングされたイオン交換体を精製することを意味する。この分離は、当業者に公知の手段、たとえばデカント法、遠心分離法、濾過法などにより進行させる。精製は、たとえば脱イオン水を用いた洗浄により進行させるが、微細な画分と粗な画分とに分離するための分類が含まれていてもよい。必要に応じて、無機塩を用いてコンディショニングされた、金属ドープされたイオン交換体を、好ましくは減圧下、および/または特に好ましくは20℃〜120℃の間の温度で乾燥させることもできる。
【0049】
意外にも、本発明において無機塩を用いてコンディショニングされたイオン交換体は、たとえばヒ素のオキソアニオンおよび/またはそれらのチオ類似体、その最も普通の酸化状態においてのみならず、さらには、重金属たとえば好ましくはクロム、コバルト、ニッケル、鉛、亜鉛、カドミウム、銅のオキソアニオンおよび/またはチオ類似体のさらなるオキソアニオンおよび/またはチオ類似体として吸着する。前述したように、本発明において使用される、無機塩を用いてコンディショニングされたイオン交換体は、HAsO2−およびHAsOを、親近構造のイオン、たとえば、リン酸二水素塩、バナジン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、アンチモン酸塩、ビスマス酸塩、セレン酸塩またはクロム酸塩と、同様にイオン交換することができる。本発明における無機塩を用いてコンディショニングされたイオン交換体は、特に、好ましくは、HAsO、HAsO、HAsO2−,AsO3−、HSbO、HSbO、HSbO2−、SbO3−、SeO2−の化学種を吸着させるのに適している。
【0050】
本発明においては無機塩を用いてコンディショニングされた金属ドープされたイオン交換体、好ましくは酸化鉄/オキシ水酸化鉄含有のコンディショニングされたイオン交換体は、好ましくは、オキソアニオンおよびそれらのチオ類似体を含む水、または各種のタイプの水溶液を精製するために使用することができる。特に好ましくはそれらは、飲料水、化学工業またはごみ焼却プラントの廃水流れ、さらには鉱山の排水、埋立地の浸出水などを精製するのに使用される。
【0051】
本発明において使用される、無機塩を用いてコンディショニングされた、金属ドープされたイオン交換体、好ましくは本発明の酸化鉄/オキシ水酸化鉄含有のコンディショニングされたイオン交換体は、それらの作業に適した装置において使用するのが好ましい。
【0052】
したがって本発明はさらに、水性媒体またはガス、好ましくは飲料水からオキソアニオンおよび/またはそれらのチオ類似体を除去するため、好ましくはヒ素、アンチモンまたはセレン、特にヒ素のオキソアニオンを除去するための、その中を通過して処理されるべき液体が流れることができる装置、本出願に記載された方法によって得ることが可能な、金属ドープされたイオン交換体、好ましくは酸化鉄/オキシ水酸化鉄含有イオン交換体が充填された、好ましくは濾過ユニット、特に好ましくは吸着容器、特にフィルター吸着容器に関する。それらの装置は、たとえば家庭において、公衆衛生システムのため、あるいは公共飲料水供給のために設置することができる。
【0053】
分析方法
酸化状態Vのヒ素の吸着容量の測定:
ヒ素(V)の吸着を測定するためには、As(V)を2800ppbの量で含むNaHAsO水溶液250mLを、pH8.5とし、300mLのポリエチレンフラスコ中で0.3mLのヒ素吸着剤と共に24時間振盪させる。24時間後に、上澄み溶液中のヒ素(V)の残存量を分析する。
【0054】
オキソアニオン吸着剤の熱安定性の測定
50mLの脱イオン水を300mLのすり合わせガラスフラスコの中に仕込む。室温でこれに、50mLのオキソアニオン吸着剤を加える。次いでそのガラスフラスコを、乾燥キャビネット中に70℃で5日間保存する。その後で、その懸濁液をカラムに仕込んで、液相を流出させ、上から100mLの脱イオン水を用いて吸着剤を洗浄する。次いで、上述の測定法(酸化状態Vのヒ素の吸着容量の測定)により、ヒ素に対するその吸着容量を測定する。
【0055】
アミノメチル化架橋ポリスチレン粒状ポリマーの塩基性アミノメチル基の量の測定
100mLのアミノメチル化粒状ポリマーを、振盪容積計(jolting volumeter)上で振盪させてから、脱イオン水を用いてガラスカラムの中に流し込む。1時間40分の間に、1000mLの2重量%強度の水酸化ナトリウム溶液を濾過通過させる。次いで、フェノールフタレインを加えた100mLの溶出液が、多くとも0.05mLの0.1N(0.1規定)塩酸を消費するようになるまで、脱イオン水を濾過通過させる。
【0056】
その樹脂の50mLを、ガラスビーカー中の50mLの脱イオン水および100mLの1N塩酸に混合する。その懸濁液を30分間撹拌してから、ガラスカラムに仕込む。液をドレンさせる。20分かけてその樹脂に、1N塩酸をさらに100mL濾過通過させる。次いで、200mLのメタノールを濾過通過させる。溶出液を全部集めて合わせ、1N水酸化ナトリウム溶液を用いてメチルオレンジ指示薬で滴定する。
【0057】
1リットルのアミノメチル化樹脂中のアミノメチル基の量を、次式により計算する:
(200−V)*20=アミノメチル基のモル数/リットル・樹脂
[式中、Vは滴定で消費された1N水酸化ナトリウム溶液の容積である]
【0058】
架橋粒状ポリマーの芳香族環のアミノメチル基による置換度の測定
アミノメチル化樹脂の全量中のアミノメチル基の量を上述の方法により測定する。
【0059】
使用した粒状ポリマー量(A、グラム)から、分子量で除算をすることにより、その量の中に存在する芳香族化合物のモル量を計算する。
【0060】
たとえば、300グラムの粒状ポリマーからは、1.8モル/Lのアミノエチル基の量を含む950mLのアミノメチル化粒状ポリマーが製造される。
【0061】
950mLのアミノメチル化粒状ポリマーには2.82モルの芳香族化合物が含まれている。
【0062】
したがって、芳香族あたりには、1.8/2.81=0.64モルのアミノメチル基が存在している。
【0063】
その架橋粒状ポリマーの芳香族環のアミノメチル基による置換度は、0.64である。
【0064】
製造後の完全な粒子の数
100個の粒子を顕微鏡で観察する。割れまたは破片を生じた粒子の数を求める。破損された粒子と100との差から、完全な粒子の数が得られる。
【0065】
ローラー試験による樹脂の安定性の測定
試験にかける粒状ポリマーを、層の厚みを均一にして、2枚のプラスチッククロスの間に分配させる。そのクロスを硬質の水平支持体の上に置き、ローラー装置で20作業サイクルにかける。1作業サイクルは、ローラーを前進および後退させることからなる。ロール試験の後に、顕微鏡下で計数して、100粒子からなる代表サンプルについて、損傷されなかった粒子の数を求める。
【0066】
膨潤安定性試験
塩化物の形態のアニオン交換体25mLをカラムに仕込む。4重量%強度の水酸化ナトリウム水溶液、脱イオン水、6重量%強度の塩酸、ふたたび脱イオン水をこの順でカラムに加えるが、水酸化ナトリウム溶液と塩酸は上から樹脂の中を通過させて流し、脱イオン水はポンプを使用して、下から樹脂の中を通過させる。この処理は、調節装置を用いて時間を調節しながら進行させる。1回の作業サイクルは1時間続ける。20作業サイクルを実施する。作業サイクルが終了したら、その樹脂サンプルから100個の粒子を計数にかける。割れまたは破損によって損傷を受けていない完全な粒子の数を求める。
【0067】
アニオン交換体中の弱塩基性または強塩基性基の量の測定
ガラスカラムの中の100mLのアニオン交換体に、1000mLの2重量%強度の水酸化ナトリウム溶液を、1時間40分かけて仕込む。次いで、脱イオン水を用いてその樹脂を洗浄して、過剰の水酸化ナトリウム溶液を除去する。
【0068】
NaCl数の測定
遊離塩基の形態で、洗浄により中性とした50mLの交換体をカラムに入れ、950mLの2.5重量%強度の塩化ナトリウム水溶液を仕込む。溶出液を集め、脱イオン水を用いて定容して1リットルとし、その50mLについて0.1N塩酸を用いて滴定する。脱イオン水を用いてその樹脂を洗浄する。
0.1N塩酸消費mL数×4/100=NaCl数(モル)/リットル・樹脂
【0069】
NaNO数の測定
次いで、2.5重量%強度硝酸ナトリウム溶液の950mLを濾過通過させる。脱イオン水を用いて溶出液を定容して1000mLとする。その一部、10mLを採って、硝酸水銀溶液を用いて滴定することにより、その塩素含量を分析する。
【0070】
HCl数の測定
脱イオン水を用いて樹脂を洗浄し、ガラスビーカーの中に投入する。100mLの1N塩酸と混合し、30分間静置する。その懸濁液をすべて、ガラスカラムの中に入れる。さらに100mLの塩酸を、その樹脂に濾過通過させる。メタノールを用いてその樹脂を洗浄する。脱イオン水を用いて溶出液を定容して1000mLとする。その50mLについて、1N水酸化ナトリウム溶液を用いて滴定する。
(20−1N水酸化ナトリウム溶液の消費mL)/5=HCl数(モル/リットル・樹脂)
【0071】
強塩基性基の量は、NaNO数とHCl数を合計したものに等しい。
【0072】
弱塩基性基の量は、HCl数に等しい。
[実施例]
【0073】
実施例1
1a)スチレン、ジビニルベンゼンおよびエチルスチレンをベースとする単分散マクロポーラス粒状ポリマーの製造
3000gの脱イオン水を10Lのガラス製反応器に仕込み、320gの脱イオン水中の10gのゼラチン、16gのリン酸水素二ナトリウム十二水和物および0.73gのレソルシノールの溶液を添加し、完全に混合させる。その混合物を加熱して25℃とする。次いで、撹拌しながら、3.6重量%のジビニルベンゼンおよび0.9重量%のエチルスチレン(80%ジビニルベンゼンのジビニルベンゼンとエチルスチレンの混合物で市販されている通常の異性体混合物を使用)、0.5重量%の過酸化ジベンゾイル、56.2重量%のスチレン、および38.8重量%のイソドデカン(高いペンタメチルヘプタン含量を有する工業的異性体混合物)の、狭い粒径分布を有するマイクロカプセル化モノマー液滴の3200gの混合物を添加するが、ここでそのマイクロカプセルは、ゼラチンならびにアクリルアミドおよびアクリル酸のコポリマーの複合コアセルベートをホルムアルデヒド硬化させたものからなり、pHが12の水相を3200g添加する。そのモノマー液滴の平均粒径は460μmである。
【0074】
撹拌しながら、開始25℃、終了95℃の温度プログラムに従って昇温させることによって、このバッチを完全に重合させる。そのバッチを冷却させ、32μmの篩の上で洗浄してから真空中80℃で乾燥させる。これにより、平均粒径440μmで狭い粒径分布と滑らかな表面を有する球状ポリマー1893gが得られる。
【0075】
そのポリマーはチョークホワイト色であり、約370g/Lのかさ密度を有している。
【0076】
1b)アミドメチル化粒状ポリマーの製造
3567gのジクロロエタン、867gのフタルイミド、および604gの29.8重量%強度ホルマリンを室温で仕込む。水酸化ナトリウム溶液を使用して、その懸濁液のpHを調節して5.5〜6とする。次いで、蒸留により水を除去する。次いで、63.5gの硫酸を添加する。生成した水を蒸留により除去する。そのバッチを冷却する。30℃で、232gの65%強度の発煙硫酸、次いで403gの、プロセス工程1a)に従って製造された単分散粒状ポリマーを添加する。その懸濁液を加熱して70℃とし、その温度でさらに6時間撹拌する。その反応液を取り出し、脱イオン水を加え、残存量のジクロロエタンを蒸留により除去する。
アミドメチル化粒状ポリマーの収量:2600mL
元素分析組成:
炭素:74.9重量%、
水素:4.6重量%、
窒素:6.0重量%、
残り:酸素。
【0077】
1c)アミノメチル化粒状ポリマーの製造
1b)からのアミドメチル化粒状ポリマーの1250mLに、624gの50重量%強度水酸化ナトリウム溶液および1093mLの脱イオン水を室温で添加する。その懸濁液を加熱して2時間で180℃とし、その温度で8時間撹拌する。脱イオン水を用いて、そのようにして得られた粒状ポリマーを洗浄する。
アミノメチル化粒状ポリマーの収量:1110mL
これから、推測総合収量は2288mLとなる。
元素分析組成:
窒素:12.6重量%、
炭素:78.91重量%、
水素:8.5重量%。
【0078】
アミノメチル化粒状ポリマーの元素分析による組成から、統計的な平均値として、スチレンおよびジビニルベンゼン単位由来の芳香族環あたり1.34個の水素原子がアミノメチル基により置換されたと計算される。
【0079】
塩基性基の数は、2.41モル/リットル・樹脂となった。
【0080】
1d)第三級アミノ基を有する粒状ポリマーの製造
1380mLの脱イオン水、920mLの1c)からのアミノメチル化粒状ポリマー、および490gの29.7重量%強度ホルマリン溶液を反応器の中に室温で仕込む。その懸濁液を加熱して40℃とする。85重量%強度のギ酸を計量仕込みすることにより、その懸濁液のpHを調節してpH3とする。2時間かけて、その懸濁液を環流温度(97℃)にまで加熱する。この間、ギ酸を計量仕込みすることにより、そのpHを3.0に維持する。環流温度に達してから、ギ酸を計量仕込みし、次いで50重量%強度の硫酸を計量仕込みすることによりpHを2に調節する。それをpH2で30分間さらに撹拌する。次いで、50重量%強度の硫酸をさらに加えて、pHを1に調節する。pH1、環流温度で、その混合物をさらに8.5時間撹拌する。
【0081】
そのバッチを冷却し、篩上でその樹脂を濾過し、脱イオン水を用いて洗浄する。
容積収量:1430mL
【0082】
カラム中で、その樹脂に、2500mLの4重量%強度水酸化ナトリウム水溶液を濾過通過させる。次いで、水を用いてそれを洗浄する。
容積収量:1010mL
元素分析組成:
窒素:12.4重量%、
炭素:76.2重量%、
水素:8.2重量%。
【0083】
塩基性基の量を定量すると、2.22モル/リットル・樹脂となった。
【0084】
実施例2
イオン交換体をさらに塩化ナトリウム水溶液で処理することによるオキソアニオン交換体の製造
装置:2リットル反応器、撹拌機、温度計、滴下ロート、定量ポンプ
180mLの脱イオン水、および300mLの実施例1からのジメチルアミノ基を有する単分散マクロポーラスアニオン交換体を反応器に室温で仕込む。
【0085】
243mLの40重量%強度の硫酸鉄(III)水溶液を、撹拌しながら60分掛けて計量仕込みする。次いで、その混合物をさらに30分間撹拌する。その懸濁液のpHは1.9である。
【0086】
次いで、25〜30℃で、50重量%強度の水酸化ナトリウム溶液を、段階的に計量仕込みする。
【0087】
その懸濁液がpH2.5となるまで、水酸化ナトリウム溶液を計量仕込みする。次いで、その混合物をさらに30分間撹拌する。
【0088】
その懸濁液がpH3.5となるまで、さらなる水酸化ナトリウム溶液を計量仕込みする。次いで、その混合物をさらに30分間撹拌する。
【0089】
その懸濁液がpH4.0となるまで、さらなる水酸化ナトリウム溶液を計量仕込みする。次いで、その混合物をさらに30分間撹拌する。
【0090】
その懸濁液がpH4.5となるまで、さらなる水酸化ナトリウム溶液を計量仕込みする。次いで、その混合物をさらに30分間撹拌する。
【0091】
その懸濁液がpH5.0となるまで、さらなる水酸化ナトリウム溶液を計量仕込みする。次いで、その混合物をさらに30分間撹拌する。
【0092】
その懸濁液がpH6.0となるまで、さらなる水酸化ナトリウム溶液を計量仕込みする。次いで、その混合物をさらに30分間撹拌する。
【0093】
その懸濁液がpH7.0となるまで、さらなる水酸化ナトリウム溶液を計量仕込みする。次いで、その混合物をさらに2時間撹拌する。
【0094】
次いで、10分かけて、37.5mLの25重量%強度の塩化ナトリウム水溶液を計量仕込みする。次いで、その混合物をさらに30分間撹拌する。
【0095】
その反応混合物を篩の上に置いて、水を用いて洗浄する。吸着剤が篩の上に残る。さらなる精製をするために、その吸着剤をカラムに移し、底から水を流して分級して、液体と固体の不純物を除く。
容積収量:465mL
水酸化ナトリウム溶液の消費量:2.85モルNaOH
乾燥重量:33.61グラム/100mL
鉄含量:14重量%
塩化物含量:0.76重量%
【0096】
実施例3
イオン交換体を塩化ナトリウム水溶液で処理しないオキソアニオン交換体の製造
装置:2リットル反応器、撹拌機、温度計、滴下ロート、定量ポンプ
180mLの脱イオン水、および300mLの実施例1からのジメチルアミノ基を有する単分散マクロポーラスアニオン交換体を反応器に室温で仕込む。
【0097】
60分かけて、243mLの40重量%強度の硫酸鉄(III)水溶液を、撹拌しながら計量仕込みする。次いで、その混合物をさらに30分間撹拌する。その懸濁液のpHは1.9である。
【0098】
次いで、50重量%強度の水酸化ナトリウム溶液を25〜30℃で段階的に計量仕込みする。
【0099】
その懸濁液がpH2.5となるまで、水酸化ナトリウム溶液を計量仕込みする。次いで、その混合物をさらに30分間撹拌する。
【0100】
その懸濁液がpH3.5となるまで、さらなる水酸化ナトリウム溶液を計量仕込みする。次いで、その混合物をさらに30分間撹拌する。
【0101】
その懸濁液がpH4.0となるまで、さらなる水酸化ナトリウム溶液を計量仕込みする。次いで、その混合物をさらに30分間撹拌する。
【0102】
その懸濁液がpH4.5となるまで、さらなる水酸化ナトリウム溶液を計量仕込みする。次いで、その混合物をさらに30分間撹拌する。
【0103】
その懸濁液がpH5.0となるまで、さらなる水酸化ナトリウム溶液を計量仕込みする。次いで、その混合物をさらに30分間撹拌する。
【0104】
その懸濁液がpH6.0となるまで、さらなる水酸化ナトリウム溶液を計量仕込みする。次いで、その混合物をさらに30分間撹拌する。
【0105】
その懸濁液がpH7.0となるまで、さらなる水酸化ナトリウム溶液を計量仕込みする。次いで、その混合物をさらに2時間撹拌する。
【0106】
その反応混合物を篩の上に置いて、水を用いて洗浄する。吸着剤が篩の上に残る。さらなる精製をするために、その吸着剤をカラムに移し、底から水を流して分級して、液体と固体の不純物を除く。
容積収量:480mL
水酸化ナトリウム溶液の消費量:2.83モルNaOH
乾燥重量:33.95グラム/100mL
鉄含量:13重量%
【0107】
実施例4
ヒ素吸着の測定(表1参照)
水中にヒ酸水素二ナトリウムを溶解させることによって、2800ppbのヒ素を含む溶液を調製する。その溶液のpHを調節して、pH8.5とする。
【0108】
この溶液250グラムに、実施例3からの吸着剤0.3mLを添加する。その懸濁液を室温で24時間振盪させる。
【0109】
次いで、その上澄み溶液中のヒ素の残存含量を分析する。
ヒ素の残存含量:15ppb
【0110】
実施例5
ヒ素吸着の測定(表1参照)
水中にヒ酸水素二ナトリウムを溶解させることによって、2800ppbのヒ素を含む溶液を調製する。その溶液のpHを調節して、pH8.5とする。
【0111】
この溶液250グラムに、実施例2からの吸着剤0.3mLを計量仕込みする。その懸濁液を室温で24時間振盪させる。
【0112】
次いで、その上澄み溶液中の残存ヒ素含量を分析する。
ヒ素の残存含量:7ppb
【0113】
実施例6(表2参照)
コンディショニングされていないオキソアニオン吸着剤の熱安定性およびヒ素の吸着容量の測定
50mLの実施例3からの吸着剤を、50mLの脱イオン水の中に入れ、70℃で5日間保持する。その懸濁液を冷却してから、カラムに入れ、その樹脂に100mLの脱イオン水を濾過通過させる。
【0114】
水中にヒ酸水素二ナトリウムを溶解させることによって、2800ppbのヒ素を含む溶液を調製する。その溶液のpHを調節して、pH8.5とする。
【0115】
この溶液250グラムに、実施例6からの吸着剤0.3mLを添加する。その懸濁液を室温で24時間振盪させる。
【0116】
次いで、その上澄み溶液中の残存ヒ素含量を分析する。
残存ヒ素含量:550ppb
【0117】
実施例7(表2参照)
コンディショニングされたオキソアニオン吸着剤の熱安定性およびヒ素の吸着容量の測定
50mLの実施例2からの吸着剤を、50mLの脱イオン水の中に入れ、70℃で5日間保持する。その懸濁液を冷却してから、カラムに入れ、その樹脂に100mLの脱イオン水を濾過通過させる。
【0118】
水中にヒ酸水素二ナトリウムを溶解させることによって、2800ppbのヒ素を含む溶液を調製する。その溶液のpHを調節して、pH8.5とする。
【0119】
この溶液250グラムに、実施例7からの吸着剤0.3mLを添加する。その懸濁液を室温で24時間振盪させる。
【0120】
次いで、その上澄み溶液中の残存ヒ素含量を分析する。
残存ヒ素含量:45ppb
【0121】
【表1】

【0122】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキソアニオンおよび/またはそれらのチオ類似体を吸着させるための、金属ドープされたイオン交換体(酸性および塩基性の両方の官能基を有する両性イオン交換体は除く)の使用であって、
その使用前に、無機塩を用いてコンディショニングを施すことを特徴とする使用。
【請求項2】
前記イオン交換体が、一連の鉄、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、ランタン、チタン、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、リチウム、またはスズの金属を用いてドープされることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記イオン交換体の中に、鉄が、酸化鉄/オキシ水酸化鉄として存在することを特徴とする、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記コンディショニングされたイオン交換体が、一連の、水酸基、エーテル、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アミン、2価の硫黄、アミンオキシド、ホスホン酸、イミノ二酢酸、またはヒドロキシルアミンの官能基を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記金属が、吸着されるオキソアニオンおよび/またはそのチオ類似体と共に、10−5以下のKspを有する塩を形成することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
使用しようとする前記イオン交換体が単分散であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記イオン交換体が、単分散マクロポーラスイオン交換体であることを特徴とする、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記単分散イオン交換体の前駆体が、アトマイゼーション法またはジェッティング法により製造されることを特徴とする、請求項6または7に記載の使用。
【請求項9】
吸着される前記オキソアニオンが、式X、X2−、X3−、HX、またはH2−のものであり、ここで、nは整数1、2、3または4であり、mは整数3、4、6、7、または13であり、そしてXは、一連のAu、Ag、Cu、Si、Cr、Ti、Te、Se、V、As、Sb、W、Mo、U、Os、Nb、Bi、Pb、Co、Ni、Fe、Mn、Ru、Re、Tc、B、Alの金属もしくは遷移金属、または一連のF、Cl、Br、I、CN、C、N、P、Sの非金属であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記オキソアニオンが、HAsO、HAsO、HAsO2−、AsO3−、HSbO、HSbO、HSbO2−、SbO3−、SeO2−、クロム酸塩であることを特徴とする、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記イオン交換体が、水または水溶液を精製するために使用されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
精製しようとする前記水が、飲料水、化学工業またはごみ焼却プラントの廃水流、鉱山排水の廃水流、または埋立地の浸出水であることを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
コンディショニングを施された、金属ドープされた前記イオン交換体が、処理しようとする前記液体がその中を流れることが可能な装置の中で使用されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
使用される前記無機塩が、一連の、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、好ましくは塩化ナトリウムの塩であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
イオン交換体に対してのオキソアニオンおよび/またはそのチオ類似体の吸着性を向上させるための方法であって、
イオン交換体(酸性および塩基性の両方の官能基を有する両性イオン交換体は除く)を金属ドープした後、無機塩を用いてコンディショニングを施すことを特徴とする方法。
【請求項16】
金属ドープされたイオン交換体(官能基として酸性基および塩基性基の両方を有する両性イオン交換体は除く)の熱安定性を向上させるための方法であって、
これらのイオン交換体に、その製造にひき続き、無機塩を用いたコンディショニングを施すことを特徴とする方法。

【公開番号】特開2008−290070(P2008−290070A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−114487(P2008−114487)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】