説明

オゾンによる液状物の浄化装置

【課題】オゾンによる十分に実用的な液状物の脱臭や清浄化や殺菌を可能にする。液状物に混入したオゾンの気中への放散を最小限にする。十分に小型化した装置により、既存のタンク等への追加設置も可能にする。
【解決手段】流入口14と、下流に向かうほど次第に流路の実効断面積を縮小させる加速領域16と、加速領域16に、筒端20を開口させたオゾン供給筒18と、加速領域16に続く攪拌領域22中に配置され、衝突した液状物12の下流側にカルマン渦28を発生させる第一の柱状体24と、液状物12中に発生した乱流30を伝搬させて、オゾンと液状物12とを混合する混合領域32と、第二の柱状体34を、液状物12の流路中に複数本配置した気泡微細化領域36とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾンを用いて汚水を浄化するオゾンによる液状物の浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾンは、脱臭作用や浄化作用があり、環境を汚染する薬剤を使用しないことから、汚水の浄化処理への利用が広く試みられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−119971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記のような従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
オゾンを使用した汚水浄化システムは、オゾンを汚水中に分散させ、オゾン臭の発生を抑制するために、複雑な構造を必要としていた。従って、小型化が容易でない。例えば、高速道路の混雑時に、サービスエリアに移動式トイレの設置がされることも少なくない。また、イベント会場等では、集中的に大量の移動式トイレが配置される。これらの移動式トイレは、常設のトイレに比べて脱臭が容易でないという問題がある。また、バキュームカーにより運び出される糞尿の量も数トンに及ぶ。従って、その運送費用や処理費用が莫大になる。
【0005】
一方、イベント会場等では、屎尿の9割が水分であり、固形分はわずかに過ぎない。この水分を脱臭して無害化すれば、雨水等と同様にして下水への廃棄が可能になり、バキュームカーにより運び出す廃棄物量を大幅に削減できる。オゾンを使用することができれば、汚水に化学物質を混入しないから水分の無害化が容易である。
【0006】
しかしながら、特許文献等で提案されたオゾンを使用したシステムでは、十分な脱臭が難しく、オゾン自体も放散されるためにオゾン臭もするという問題があった。また、装置全体の構成が複雑で、移動用のトイレに採用するのは難しい。
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は次のようなオゾンによる液状物の浄化装置を提供することを目的とする。
(1)オゾンによる十分に実用的な汚水の脱臭と清浄化を可能にする。
(2)汚水に混入したオゾンの気中への放散を最小限にする。
(3)十分に小型化した装置により、既存のトイレ等への追加設置も可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
〈構成1〉
処理対象となる液状物が流入する流入口と、前記流入口に続く筒状の領域であって、下流に向かうほど次第に流路の実効断面積を縮小させる加速領域と、前記加速領域の前記流路の実効断面積が最も小さい部分の近傍に、筒端を開口させて前記流路の外側からオゾンを供給するオゾン供給筒と、前記加速領域で加速され前記オゾン供給筒の筒端から供給されたオゾンを含む前記液状物を受け入れる筒状の領域であって、下流に向かうほど次第に前記流路の実効断面積を拡大させる攪拌領域と、前記攪拌領域中で、前記液状物の流れの方向と交差する方向に軸を向けて配置され、衝突した前記液状物の下流側にカルマン渦を発生させる第一の柱状体と、前記攪拌領域の下流側に設けられた筒状の領域であって、前記カルマン渦により前記液状物中に発生した乱流を前記液状物全体に伝搬させて、前記オゾンと前記液状物とを混合する混合領域と、前記混合領域でオゾンが混合された液状物を衝突させて、下流側にカルマン渦を発生させる第二の柱状体を、前記液状物の流路中に複数本配置した気泡微細化領域とを備えたことを特徴とするオゾンによる液状物の浄化装置。
【0009】
〈構成2〉
構成1に記載のオゾンによる液状物の浄化装置において、前記流路はいずれの場所でもほぼ正方形もしくは長方形であって、いずれの領域においても、流路の断面積を前記長方形の長辺を伸縮して拡大もしくは縮小していることを特徴とするオゾンによる液状物の浄化装置。
【0010】
〈構成3〉
構成1に記載のオゾンによる液状物の浄化装置において、前記流路はいずれの場所でもほぼ円形もしくは長円形であって、いずれの領域においても、流路の断面積を前記長円の長軸を伸縮して拡大もしくは縮小していることを特徴とするオゾンによる液状物の浄化装置。
【0011】
〈構成4〉
構成1または2に記載のオゾンによる液状物の浄化装置において、前記第一の柱状体と第二の柱状体とは、いずれも、前記流路に直交し、かつ、前記長方形の長辺に直交する軸を持つことを特徴とするオゾンによる液状物の浄化装置。
【0012】
〈構成5〉
【0013】
〈構成6〉
構成1乃至5のいずれかに記載のオゾンによる液状物の浄化装置において、前記第一の柱状体と第二の柱状体とは、いずれも、ほぼ真円の断面を持つ円柱であることを特徴とするオゾンによる液状物の浄化装置。
【0014】
〈構成7〉
構成1乃至6のいずれかに記載のオゾンによる液状物の浄化装置において、前記第一の柱状体は、前記攪拌領域を前記流路を横切る断面から見たとき、そのほぼ中央に配置されていることを特徴とするオゾンによる液状物の浄化装置。
【0015】
〈構成8〉
構成1乃至7のいずれかに記載のオゾンによる液状物の浄化装置において、前記第二の柱状体は、前記気泡微細化領域の流路上に、複数本、ほぼ等しい間隔を置いて均等配置されていることを特徴とするオゾンによる液状物の浄化装置。
【0016】
〈構成9〉
構成1乃至8のいずれかに記載のオゾンによる液状物の浄化装置において、前記流入口の上流側には、汚水から固形物を除去して前記液状物を前記流入口に供給する供給装置が設けられていることを特徴とするオゾンによる液状物の浄化装置。
【0017】
〈構成10〉
構成1乃至9のいずれかに記載のオゾンによる液状物の浄化装置において、前記供給装置は、前記汚水中の固形物を沈殿させる分離槽と、前記汚水の上澄みを前記流入口に供給するポンプとを備えることを特徴とするオゾンによる液状物の浄化装置。
【0018】
〈構成11〉
汚水槽内に配置されて液状物を循環させることを特徴とする構成1乃至10のいずれかに記載のオゾンによる液状物の浄化装置。
【発明の効果】
【0019】
〈構成1の効果〉
加速領域で液状物中に取り込んだオゾンの気泡を、第一の柱状体によるカルマン渦を用いて砕いて混合領域で分散させる。その後にさらに、複数の第二の柱状体によるカルマン渦を用いてオゾンの気泡を微細化してマイクロバブル化する。これにより、オゾンのマイクロバブルが液状物の内部に広く拡散して液状物を効果的に浄化する。未反応オゾンが大気中に戻ることがきわめて少なく、オゾン臭がほとんどしない。これは、汚水の浄化のみならず、容器中の水の殺菌洗浄にも広く利用できる。
〈構成2の効果〉
容器の中に収容された液状物を容器の底や壁面で処理し、容器の中を循環させながら浄化できる。
〈構成3の効果〉
流路の断面は長方形でも長円形でもよい。
〈構成4の効果〉
長方形の断面の流路中で、流路に直交し長辺に直交する軸を持つ柱状体で、長辺に沿った渦流を生じさせ、これを拡大して攪拌することができる。
〈構成5の効果〉
流路の断面が長円形の場合でも、同様の柱状体を使用する。
〈構成6の効果〉
カルマン渦を発生させるには、ほぼ真円の断面を持つ円柱がもっとも適する。
〈構成7の効果〉
流路の中央にやや太い柱状体を配置して大きく広くカルマン渦を発生させることができる。
〈構成8の効果〉
流路の各部で一斉にカルマン渦を発生させて、流れを複雑に信号、攪拌効果を高めることができる。
〈構成9の効果〉
流入口の上流側にフィルタや汚水中の固形物を粉砕する装置があれば、その液状物を流入口に導入して処理できる。
〈構成10の効果〉
汚水から固形物を除外し、汚水の上澄みをポンプで汲み出して循環させると、効果的に汚水処理ができる。
〈構成11の効果〉
汚水槽にそのまま投入して浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1のオゾンによる液状物の浄化装置を示し、(a)は図中のA−A断面図、(b)はB−B断面図である。
【図2】液状物を含まないオゾンによる液状物の浄化装置を示し、(a)は図1(a)と同様のA−A線断面図、(b)は液状物12の(b)−(b)線横断面図、(c)は加速領域16の最も断面積の小さい(c)−(c)線部分の横断面図、(d)は攪拌領域22の(d)−(d)線横断面図、(e)は気泡微細化領域36の(e)−(e)線横断面図、(f)は変形例の(b)−(b)線横断面図である。
【図3】オゾンによる液状物の浄化装置10を設置した汚水槽48の具体例を示し、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は実施例1のオゾンによる液状物の浄化装置を示し、(a)は図中のA−A断面図、(b)はB−B断面図である。
この装置は、例えば、屎尿のような汚水を導入して浄化するために使用される。図のように、この実施例のオゾンによる液状物の浄化装置10は全体として、扁平な円板状をしている。図1(b)に示すように、このオゾンによる液状物の浄化装置10は底板40の上に側板42と上板44とを用いて、ほぼC字状の流路を形成している。液状物は、流入口14から流入して流路に沿って流れ、矢印の方向に排出される。
【0023】
オゾンによる液状物の浄化装置10には、処理対象となる液状物12が流入する流入口14から順に、加速領域16と、混合領域32と、気泡微細化領域36とが設けられている。加速領域16は、流入口14に続く筒状の領域であって、下流に向かうほど次第に流路の実効断面積を縮小させる構造をしている。加速領域16の流路の実効断面積が最も小さい部分の近傍には、、筒端20を開口させて流路の外側からオゾンを供給するオゾン供給筒18が接続されている。この加速領域16は、加圧加速された液状物を一気に開放された空間に放出し、この部分の減圧作用によりオゾン供給筒18から吸入されたオゾンと液状物とを混合する、ベンチュリー管を用いたイジェクタの機能を有する。
【0024】
攪拌領域22は、加速領域16で加速されオゾン供給筒18の筒端20から供給されたオゾンを含む液状物12を受け入れる筒状の領域であって、下流に向かうほど次第に流路の実効断面積を拡大させる構造をしている。攪拌領域22中には、液状物12の流れの方向と交差する方向に軸を向けて配置され、衝突した液状物12の下流側にカルマン渦28を発生させる第一の柱状体24が設けられている。
【0025】
混合領域32は、攪拌領域22の下流側に設けられた筒状の領域であって、カルマン渦28により液状物12中に発生した乱流30を液状物12全体に伝搬させて、オゾンと液状物12とを混合する機能を持つ。気泡微細化領域36には、液状物12の流路中に第二の柱状体34が複数本配置されている。第二の柱状体34は、オゾンが混合された液状物12を衝突させて、下流側にカルマン渦28を発生させる機能を持つ。
【0026】
加速領域16の下流側から加速領域16に向かって液状物12が逆流するような抵抗が加わらないように、混合領域32や気泡微細化領域36の流路の断面積は、流入口14の断面積よりも大きく選定されることが好ましい。気泡微細化領域36の流路の断面積は全長にわたって均一で構わない。
【0027】
以上の装置では、流入口14から流入した液状物12が加速領域16を通る間に次第に加速されて、筒端20の部分に達する。オゾン供給筒18には、後で図3を用いて説明するように、放電等により発生させたオゾンを供給する装置が接続されている。筒端20の部分では、ベンチュリー管の原理でオゾンが液状物12中に勢いよく取り込まれる。
【0028】
加速領域16を出た液状物12は、混合領域32に流入して第一の柱状体24に衝突する。断面が円形の柱に流体が衝突したときには、柱の背後で複雑に渦を巻くカルマン渦が発生することは良く知られている。加速領域16を出た液状物12中に取り込んだオゾンの気泡を、このカルマン渦28を用いて細かく砕いてから、混合領域32で分散させる。
【0029】
即ち、筒端20を通過した直後の液状物12には大きな泡状のオゾンが混入されている。これを、カルマン渦28で攪拌し、それを拡散させて乱流30を生じさせる混合領域32の作用で、液状物12全体にオゾンの気泡を分散させることができる。次に、液状物12は気泡微細化領域36中に流れ込む。気泡微細化領域36には、第一の柱状体24と同様の複数本の第二の柱状体34が配置されている。これらは、液状物12の流れの複数の箇所で多数のカルマン渦を発生させる。こうして、複数の第二の柱状体34によるカルマン渦28を用いて、オゾンの気泡を微細化してマイクロバブル化する。
【0030】
このように、2段階でオゾンの気泡を微細化すると、大きな気泡が液状物12中にほとんど残らない。既知のオゾンを用いた液状物の浄化装置は、ほとんどの場合、バブリングを使用している。しかしながら、バブリングでは、大きな気泡はほとんどそのまま大気中に放出されてしまう。従って、強いオゾン臭がする場合が多い。しかも、多くのオゾンが汚水に接触しないまま排出されるので、浄化機能が低い。
【0031】
この発明では、オゾンの気泡がきわめて小さくなるので、オゾンが液状物中に滞留する時間が長時間になる。マイクロバブル化すると、数分から数時間液状物中に滞留する。この間に、オゾンは液状物と反応する。反応後は酸素と水になる。即ち、大気中に放散されるときには既にオゾンでなくなる。オゾンのマイクロバブルが液状物12の内部に広く拡散して液状物12を効果的に浄化する。大気中に放散される未反応オゾンがきわめて少なく、オゾン臭はほとんどしない。
【実施例2】
【0032】
図2は液状物を含まないオゾンによる液状物の浄化装置を示し、(a)は図1(a)と同様のA−A線断面図、(b)は液状物12の(b)−(b)線横断面図、(c)は加速領域16の最も断面積の小さい(c)−(c)線部分の横断面図、(d)は攪拌領域22の(d)−(d)線横断面図、(e)は気泡微細化領域36の(e)−(e)線横断面図、(f)は変形例の(b)−(b)線横断面図である。
【0033】
この実施例では、図のように、液状物の流路はいずれの場所でもほぼ正方形もしくは長方形をしている。そして、いずれの領域においても、流路の断面積を長方形の長辺を伸縮して拡大もしくは縮小している。従って、全体をほぼ均一な厚みの、扁平な形状にできる。これは、汚水を収容した容器の底や壁面に固定するのに適した構造である。そして、容器の中に収容された液状物12を容器の底や壁面で処理し、容器の中を循環させながら浄化できる。なお、上記のように流路がC字状をしているので液状物の攪拌効果があるが、液状物を収容する容器の構造により、例えば、流路を直線状にしても構わない。液状物の循環作用については、後で図3を用いて詳細に説明する。
【0034】
なお、流路の断面を長円形にしても構わない。この場合には、流路はいずれの場所でもほぼ円形もしくは長円形であって、いずれの領域においても、図2(f)に示すように、流路の断面積を長円の長軸56を伸縮して拡大もしくは縮小させるとよい。
【0035】
また、図2(d)や(e)に示すように、第一の柱状体24と第二の柱状体34とは、いずれも、流路に直交し、かつ、長方形の長辺に直交する軸26を持つ。これにより、図1の(a)に示すように、長辺に沿った渦流を生じさせ、これを長辺の方向に拡大して攪拌することができる。流路を広く拡大して、気泡微細化領域36で多数の第二の柱状体34に衝突させると、オゾンのマイクロバブル化の効果が高まる。いずれの場所の第二の柱状体34も、均等に渦流発生効果を持つ。また、このような構造により、断面形状や第二の柱状体34の取り付け数の最適化が容易である。流路の断面が長円形の場合には、第一の柱状体24と第二の柱状体34とは、いずれも、流路に直交し、かつ、長円の長軸56に直交する軸を持つ。
【0036】
上記の実施例では、第一の柱状体と第二の柱状体34とは、いずれも、ほぼ真円の断面を持つ円柱である。カルマン渦28を発生させるには、ほぼ真円の断面を持つ円柱がもっとも適する。しかし、断面形状が多角形の柱状体であっても一定の効果があるし、断面形状が多角形の柱状体を混在させても構わない。
【0037】
上記の第一の柱状体は、攪拌領域22を流路を横切る断面から見たとき、そのほぼ中央に配置されている。第一の柱状体には、加速された液状物が衝突する。液状物の流速は、流路を横切る断面から見たとき、そのほぼ中央が最も速い。ここで、大きくカルマン渦28を発生させることが好ましい。
【0038】
上記の第二の柱状体は、気泡微細化領域36の流路上に、複数本、ほぼ等しい間隔を置いて均等配置されている。上記のように、気泡微細化領域36の流路の断面積を長方形の長辺を伸縮して拡大もしくは縮小し、全体をほぼ均一な厚みの扁平な形状にしておくと、どの場所に第二の柱状体を配置しても、同様の乱流発生効果が生じる。従って、複数本の第二の柱状体を均等に分散配置すれば、流路の各部で一斉にカルマン渦28を発生させて液状物全体を均一に攪拌処理できる。
【0039】
図3はオゾンによる液状物の浄化装置10を設置した汚水槽48の具体例を示し、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
図3(a)に示す汚水槽48は、例えば、移動式トイレの屎尿処理タンクである。この内部にオゾンによる液状物の浄化装置10を沈める。オゾンによる液状物の浄化装置10の流入口14は、この例では流路の端部上方に開口し、ここに供給装置46が連結されている。即ち、流入口14の上流側に、汚水から固形物を除去して液状物12を流入口14に供給する供給装置46が設けられている。また、汚水槽48の側面にはオゾン発生器52がとりつけられ、オゾン供給筒18を通じてオゾンによる液状物の浄化装置10の内部にオゾンを供給する構成になっている。
【0040】
この供給装置46の入り口内部には、固形物の侵入を阻止する網等のフィルタを取り付ける。さらに、この供給装置46の内部には、スクリューのような羽根を持つポンプを配置して、流動性のよい液状物12のみをオゾンによる液状物の浄化装置10の内部に送り込むよう構成されている。なお、既存の汚水槽48には、汚水中の固形物を沈殿させる分離槽が設けられているものがある。この場合、汚水の上澄みを、供給装置46を利用して流入口14に供給するとよい。
【0041】
ここで、オゾンによる液状物の浄化装置10を起動すると、図の(b)に示すように、供給装置46の上端から吸入された液状物12はポンプ50によりオゾンによる液状物の浄化装置10の内部に送り込まれる。そして、オゾン発生器52から供給されるオゾンにより浄化された液状物12は、オゾンによる液状物の浄化装置10の上面から矢印のように排出される。液状物12はオゾンによる液状物の浄化装置10から排出された後に汚水槽48の内部を旋回しなが上昇するそして、再び供給装置46の上端からオゾンによる液状物の浄化装置10に吸入される。
【0042】
このように、汚水から固形物を除外し、タンク中の汚水の上澄みをポンプで汲み出して循環させると、屎尿の場合、汚水の上澄みがほぼ無色透明になるまで殺菌、脱臭、漂白、浄化ができる。実験によれば、移動式トイレの場合、一人分の屎尿を5分間で完全に浄化できた。公的な機関により検査を受けた結果、そのまま下水に流すことができるレベルであることが証明された。上記の構造のオゾンによる液状物の浄化装置10は、オゾン発生器52やポンプ50を一体に組み込んでも非常に小型化できるので、既存の汚水槽にそのまま投入して浄化処理をすることが可能になる。また、汚水槽の垂直な壁面に貼り付けることもできる。なお、固形物が少なく沈殿物も少ない場合には全体から見てC字状の本体の流入口14から液状物を吸入して、排出口58から液状物を排出し、タンク内の液状物全体を攪拌しながら繰り返し循環させることができる。
【実施例3】
【0043】
上記の機能をそのまま利用すると、本発明のオゾンによる液状物の浄化装置10は、例えば、水道水や防火用水等の水を貯留したタンクに投入して、水に多量のオゾンのマイクロバブルを混入させて水自体及びタンク内壁面の殺菌漂白洗浄を行うことができる。水中に混入したオゾンが長時間滞留してほぼ全てのオゾンが殺菌等の役割を果たし、大気中に放出される未反応のオゾン量がきわめて少ない。また、水中に混入したオゾンがタンク内から配管に移動するまで有効に機能するので、タンクに接続された配管の内部まで殺菌漂白洗浄が可能になる。例えば、野菜を水に浸漬して洗浄するタンクの中で、水全体を繰り返し吸入して排出するという処理をくりかえせば、少量の水で大量の野菜を短時間に効率良く殺菌洗浄できる。
【0044】
以上のオゾンによる液状物の浄化装置10について、その効果をまとめると下記のようになる。
(1)オゾンのみにより液状物の脱臭と成分分解をして、汚水については、雨水と同様に下水に流せるほど浄化することができる。
(2)オゾンのマイクロバブルを液状物中に混入させて循環させることにより、液状物全体にオゾンが行き渡って反応し、未反応のオゾンが気中にそのまま排出されることがきわめて少なく、オゾン臭がしないシステムを実現できる。
(3)液状物中に十分に広くオゾンのマイクロバブルを拡散させるので、液状物を収容した小型のタンク等の場合には短時間で液状物の殺菌、漂白、浄化等ができる。
(4)オゾンを供給して混合するユニットは十分に小型化できるので、様々な装置に簡単に追加設置ができる。従って、大きな設備投資が不用である。
【符号の説明】
【0045】
10 オゾンによる液状物の浄化装置
12 液状物
14 流入口
16 加速領域
18 オゾン供給筒
20 筒端
22 攪拌領域
24 第一の柱状体
26 軸
28 カルマン渦
30 乱流
32 混合領域
34 第二の柱状体
36 気泡微細化領域
40 底板
42 側板
44 上板
46 供給装置
48 汚水槽
50 ポンプ
52 オゾン発生器
56 長軸
58 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象となる液状物が流入する流入口と、
前記流入口に続く筒状の領域であって、下流に向かうほど次第に流路の実効断面積を縮小させる加速領域と、
前記加速領域の前記流路の実効断面積が最も小さい部分の近傍に、筒端を開口させて前記流路の外側からオゾンを供給するオゾン供給筒と、
前記加速領域で加速され前記オゾン供給筒の筒端から供給されたオゾンを含む前記液状物を受け入れる筒状の領域であって、下流に向かうほど次第に前記流路の実効断面積を拡大させる攪拌領域と、
前記攪拌領域中で、前記液状物の流れの方向と交差する方向に軸を向けて配置され、衝突した前記液状物の下流側にカルマン渦を発生させる第一の柱状体と、
前記攪拌領域の下流側に設けられた筒状の領域であって、前記カルマン渦により前記液状物中に発生した乱流を前記液状物全体に伝搬させて、前記オゾンと前記液状物とを混合する混合領域と、
前記混合領域でオゾンが混合された液状物を衝突させて、下流側にカルマン渦を発生させる第二の柱状体を、前記液状物の流路中に複数本配置した気泡微細化領域とを備えたことを特徴とするオゾンによる液状物の浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載のオゾンによる液状物の浄化装置において、
前記流路はいずれの場所でもほぼ正方形もしくは長方形であって、いずれの領域においても、流路の断面積を前記長方形の長辺を伸縮して拡大もしくは縮小していることを特徴とするオゾンによる液状物の浄化装置。
【請求項3】
請求項1に記載のオゾンによる液状物の浄化装置において、
前記流路はいずれの場所でもほぼ円形もしくは長円形であって、いずれの領域においても、流路の断面積を前記長円の長軸を伸縮して拡大もしくは縮小していることを特徴とするオゾンによる液状物の浄化装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載のオゾンによる液状物の浄化装置において、
前記第一の柱状体と第二の柱状体とは、いずれも、前記流路に直交し、かつ、前記長方形の長辺に直交する軸を持つことを特徴とするオゾンによる液状物の浄化装置。
【請求項5】
請求項1または3に記載のオゾンによる液状物の浄化装置において、
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のオゾンによる液状物の浄化装置において、
前記第一の柱状体と第二の柱状体とは、いずれも、ほぼ真円の断面を持つ円柱であることを特徴とするオゾンによる液状物の浄化装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のオゾンによる液状物の浄化装置において、
前記第一の柱状体は、前記攪拌領域を前記流路を横切る断面から見たとき、そのほぼ中央に配置されていることを特徴とするオゾンによる液状物の浄化装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のオゾンによる液状物の浄化装置において、
前記第二の柱状体は、前記気泡微細化領域の流路上に、複数本、ほぼ等しい間隔を置いて均等配置されていることを特徴とするオゾンによる液状物の浄化装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のオゾンによる液状物の浄化装置において、
前記流入口の上流側には、汚水から固形物を除去して前記液状物を前記流入口に供給する供給装置が設けられていることを特徴とするオゾンによる液状物の浄化装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載のオゾンによる液状物の浄化装置において、
前記供給装置は、前記汚水中の固形物を沈殿させる分離槽と、前記汚水の上澄みを前記流入口に供給するポンプとを備えることを特徴とするオゾンによる液状物の浄化装置。
【請求項11】
汚水槽内に配置されて液状物を循環させることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のオゾンによる液状物の浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−189299(P2011−189299A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58637(P2010−58637)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(391045934)株式会社リガルジョイント (14)
【Fターム(参考)】