説明

オゾンウェザーメーター

【課題】試験結果に影響を与える窒素酸化物の混入を防いで、オゾンによる試料の劣化を正確に試験するオゾンウェザーメーターを提供すること。
【解決手段】試料の劣化現象を試験するオゾンウェザーメーターにおいて、試験槽内を循環する気流を昇温する加熱器表面からの窒素酸化物の発生を防ぐと共に、気流中の窒素酸化物を除去する除去手段を設け、試験槽内に供給する気流は、前記除去手段を通過した気流であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素酸化物の影響を受けることなく、ゴムを始め、プラスチック、繊維、インクジェットプリント用紙等のオゾンによる加速劣化度合を人工的に促進して、耐オゾン性を試験するオゾンウェザーメーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゴム製品、自動車部品等のオゾンによる劣化現象や程度を試験するオゾンウェザーメーターは、オゾン発生器によりオゾンの濃度と、冷却器及び加熱器により温度と、加湿器により湿度とを一定条件にして試験を行っている。
【0003】
繊維や印刷物に関しては、窒素酸化物も色あせの原因になるため、窒素酸化物単独のガスによる試験や、オゾンや窒素酸化物等の複数のガスを混合した雰囲気による試験が行われている。
【0004】
特許文献1には、有機溶剤ガス、亜硫酸ガス、水蒸気又はオキシダント等の試験結果の精度に影響する有害なガスを、酸化剤、中和吸着剤、触媒吸着剤又は物理吸着剤等のガス除去剤を単独又は複数組合わせてなるフィルターで除去し、有害なガスを含まない空気を試験槽に送ることが記述されている。
【0005】
オゾンウェザーメーターには、外気を試験槽内に導入して試験を行う装置と、循環風路などを設けて試験機内の気流を循環させて、試験を開始してからは外気を導入せずに試験を行う装置とがある。特許文献2では、試験槽内の空気を外気と置換しないことで、外気の温度と湿度の影響を防ぐことが記述されている。
【0006】
非特許文献1では、オゾンの発生方法として、無声放電方式とオゾン発生用紫外線灯方式がある。紫外線灯方式の場合には、窒素酸化物の発生は殆んどない。一方、無声放電による場合には、試験結果に悪影響を及ぼす濃度のNO、NO等の窒素酸化物が発生する欠点がある。そこで、無声放電では、酸素を用いるか、空気を用いたときには、放電管内の風速を上げるなどの処置が必要であると記述されている。

【0007】
また、窒素酸化物が混入すると試験結果に影響を与えるため、特許文献3には、水を電気分解させることによってオゾンを生成し、窒素酸化物を発生させない方法が記載されている。
【0008】
【特許文献1】特公平5−12659号
【特許文献2】特開2001−194289号
【特許文献3】特開平9−273989号
【非特許文献1】JIS K 6259:2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のオゾンウェザーメーターでは、空気中に含まれるオゾンと誤認して測定される有機溶剤ガス、亜硫酸ガス、水蒸気又はオキシダント等のガスをフィルターにより除去した空気を、試験槽に送るものはあったが、繊維や印刷物等の色あせの原因になる空気中の窒素酸化物の除去に着目したものはなかった。
【0010】
また、オゾン生成時に窒素酸化物の発生を防ぐものはあったが、既に外気が含んでいる窒素酸化物について配慮したものはない。このために、オゾンウェザーメーターを設置した部屋でストーブを使用した場合では、ストーブを使用していなかった場合に比べ試験槽内に供給する空気中の窒素酸化物の濃度が増して試験結果に影響を与えるという問題があった。また、オゾンウェザーメーターを設置した場所によっては自動車の排気ガスや各種燃焼排気ガス由来の窒素酸化物が拡散、混入し試験結果に影響を与えるという問題があった。
【0011】
この問題は、外気を試験槽内に導入する装置のみでなく、外気を導入しない装置においても、試験開始時にすでに装置内に入っている空気に含まれる窒素酸化物により同様に生ずる恐れがあった。また、外気を導入しない装置の場合、試験中に発生した窒素酸化物が循環風路を通り再度試験槽内に流入してしまう問題があった。
【0012】
また、試験槽内の温度を調整する加熱器において、ニクロム線やカンタル線等の電気抵抗発熱型の発熱源を用いた場合には、加熱器の表面温度が高温となり、窒素酸化物が発生するという問題があった。
【0013】
本発明は、試験槽内に導入する外気が含んでいる窒素酸化物及び試験中に発生する試料由来の窒素酸化物を除去し、オゾンだけの影響で試料の劣化度合を把握すると共に、試験槽内の温度調節を行う加熱器の表面から窒素酸化物を発生させることのない機構のオゾンウェザーメーターを提供する。

【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、試料の劣化現象を試験するオゾンウェザーメーターにおいて、気流中の窒素酸化物を除去する除去手段を設け、試験槽内に供給する気流は、前記除去手段を通過した気流であることを特徴とする。
【0015】
本発明は、前記試験槽内の気流を外気と置換することなく前記除去手段を経由して循環させる手段を有することを特徴とする。
【0016】
本発明は、前記試験槽と、前記除去手段と、試験後の気流中の二酸化硫黄と炭化水素などを除去する浄化手段と、温度調整手段と、湿度調整手段と、オゾン濃度調整手段とを気流を介して連結させて設けることを特徴とする。
【0017】
本発明は、前記試験槽の外壁と前記温度調節手段とに気流が循環する風路を設け、前記試験槽は前記浄化手段に連結し、前記浄化手段は前記風路に連結し、前記風路は前記除去手段に連結し、前記除去手段は前記湿度調整手段と前記オゾン濃度調整手段とに連結し、前記オゾン濃度調整手段と前記湿度調整手段はそれぞれ前記試験槽に連結することを特徴とする。
【0018】
本発明は、前記温度調整手段に加熱器及び冷却器を設け、前記加熱器は別に設けられた温水源から温水を流し、前記温水の温度及び流量を調整して気流の温度を制御することを特徴とする。

【発明の効果】
【0019】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、試験槽内に導入する気流中の窒素酸化物を除去する除去手段を設けることによって、窒素酸化物の影響を受けずに、試料のオゾンによる加速劣化度合を正確に把握することができる。
【0020】
また、本発明によれば、試験中に試験槽内に導入する気流を外気と置換することなく、循環風路によって循環させる装置において、試験開始時に気流が含んでいる窒素酸化物を除去するのみでなく、試験中に発生する窒素酸化物も除去することができる。
【0021】
また、窒素酸化物を除去する除去手段を設けると共に、温水で加熱する加熱器により循環風路内の気流の温度を制御することで、窒素酸化物を除去すると共に、温水で加熱するため加熱器の表面温度が100℃以上にはならないので、窒素酸化物の発生も防ぐことができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、実施するための最良の形態により、本発明を詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本発明の例示にすぎず、以下の記載によって発明の具体的範囲が制限されるものではない。
【0023】
図1は、本発明の第1の実施するための最良の形態であり、オゾンウェザーメーター1は、試験槽2と、除湿器3と、浄化手段4と、風路5と、加熱器6及び冷却器7と、除去手段8と、オゾン発生器9と、湿度発生器10とを有する。
【0024】
試験槽2内には、試料11と、ファン12と、温度計13と、湿度計14が設けてあり、気流はファン12によって風向及び風速が調整され、試験槽2内を循環する。試験槽2は、排出口15で気流の一部を排出し、浄化手段4と除去手段8で処理した後、温度と、湿度と、オゾン濃度を調整した気流が供給口16a、16bから再び試験槽2内に戻る構造になっている。
【0025】
除湿器3は、試験槽2の排出口15と連結し、ファン17によって吸引される試験後の気流の除湿を行い、浄化手段4と連結する。浄化手段4は、気流が試料11と反応して生成された硫化ガスや炭化水素等を除去するが、窒素酸化物は除去できない。
【0026】
風路5を介して浄化手段4と連結した加熱器6及び冷却器7は、試験槽2内に設けた温度計13からの信号を基に気流の温度を制御する。風路5内には試験槽2と隔壁27と加熱器6及び冷却器7が配置され、温度が調整された気流をファン18によって試験槽2を取り囲む風路5内を循環させ、試験槽2内の温度を一定に保つ。加熱器6は温水を流通させる形式のもので、試験槽2内に設けた温度計13からの信号を基に温水源19で温水の温度及び流量を調整して気流の温度を制御する。冷却器7は冷凍機29と連結している。
【0027】
風路5の気流の一部を吸引するファン20からの気流の流量を調整する空気流量計21に連結した除去手段8は、空気流量計21と連結し、窒素酸化物を除去する。
【0028】
図1では、除去手段8は、オゾン発生器9と湿度発生器10とに連結しているが、試験槽2に供給する気流中の窒素酸化物を除去できる位置であればどの位置に連結してもよい。第1の最良の形態では、除去手段8は、過マンガン酸カリによる化学反応で除去する方式を採用したが、プラズマ等による分解反応や、吸着、触媒反応などの方式を用いてもよい。
【0029】
除去手段8と連結したオゾン発生器9と、湿度発生器10を流れる気流の流量は、流量計23,24によって調整される。
【0030】
オゾン濃度自動調節計25で、導入口28からサンプリングした気流を除湿器30で除湿した後、オゾン濃度を測定し、その測定を基に、オゾン発生器9は、供給口16bから試験槽2内に、設定したオゾン量を含む気流を供給する。第1の最良の形態では、オゾン発生器9には、オゾン以外の生成物がほとんどないオゾン発生用紫外線灯方式を用いたが、無声放電方式によって空気中の酸素をオゾン化する場合には、窒素酸化物も生成するため、オゾン発生器9から試験槽2に気流を供給する前に除去手段8を設ける。
【0031】
湿度発生器10は、湿度計14からの信号を基に、設定した湿度に気流中の湿度を調整し、供給口16aから試験槽2内に気流を供給する。
(発明を実施するための異なる形態)
【0032】
次に図2及び図3に示す本発明を実施するための異なる形態について説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当たって、前記本発明の第1の実施するための最良の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0033】
図2の本発明の第2の実施するための形態において、前記本発明の第1の実施するための最良の形態と主に異なる点は、循環風路26を設け、循環風路26内に浄化手段4と、加熱器6及び冷却器7と、除去手段8と、オゾン発生器9と、湿度発生器10を配置したことである。このように循環風路26内に浄化手段4と、加熱器6及び冷却器7と、除去手段8と、オゾン発生器9と、湿度発生器10を設置したので、前記本発明の第1の実施するための最良の形態と、同様な作用効果が得られる。
【0034】
図3の本発明の第3の実施するための形態において、前記本発明の第2の実施するための最良の形態と主に異なる点は、試験槽2aと循環風路26aを循環する気流の一部に外気を導入し、一部を外気に排出している点である。このように試験中に一部の気流を外気と置換する構成のオゾンウェザーメーター1においては、気流を試験槽2a内に供給する前に除去手段8aを設けたので、前記本発明の第2の実施するための最良の形態と、同様な作用効果が得られる。

【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明を実施するための第1の最良の形態のオゾンウェザーメーター。
【図2】本発明を実施するための第2の最良の形態のオゾンウェザーメーター。
【図3】本発明を実施するための第3の最良の形態のオゾンウェザーメーター。
【符号の説明】
【0036】
1 オゾンウェザーメーター
2、2a 試験槽
3 除湿器
4、4a、4b 浄化手段
5 風路
6、6a 加熱器
7 冷却器
8、8a 除去手段
9 オゾン発生器
10 湿度発生器
11 試料
12 ファン
13 温度計
14 湿度計
15、15a 排出口
16a、16b、16c 供給口
17 ファン
18、18a ファン
19 温水源
20 ファン
21 空気流量計
22 流量計
23 流量計
24 流量計
25 オゾン濃度自動調節計
26、26a 循環風路
27 隔壁
28、28a 導入口
29 冷凍機
30 除湿器
31 バブリング用ブロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の劣化現象を試験するオゾンウェザーメーターにおいて、気流中の窒素酸化物を除去する除去手段を設け、試験槽内に供給する気流は、前記除去手段を通過した気流であることを特徴とするオゾンウェザーメーター。
【請求項2】
前記試験槽内の気流を外気と置換することなく前記除去手段を経由して循環させる手段を有することを特徴とする請求項1に記載のオゾンウェザーメーター。
【請求項3】
前記試験槽と、前記除去手段と、試験後の気流中の二酸化硫黄と炭化水素等を除去する浄化手段と、温度調整手段と、湿度調整手段と、オゾン濃度調整手段とを気流を移送する風路を介して連結させて設けることを特徴とする請求項1または2に記載のオゾンウェザーメーター。
【請求項4】
前記試験槽の外壁と前記温度調節手段とに気流が循環する風路を設け、
前記試験槽は前記浄化手段に連結し、
前記浄化手段は前記風路に連結し、
前記風路は前記除去手段に連結し、
前記除去手段は前記湿度調整手段と前記オゾン濃度調整手段とに連結し、
前記オゾン濃度調整手段と前記湿度調整手段はそれぞれ前記試験槽に連結することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のオゾンウェザーメーター。
【請求項5】
前記温度調整手段に加熱器及び冷却器を設け、前記加熱器は温水を流し、温水の温度及び流量を調整して気流の温度を制御することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のオゾンウェザーメーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−47481(P2009−47481A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212122(P2007−212122)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【特許番号】特許第4117800号(P4117800)
【特許公報発行日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000107583)スガ試験機株式会社 (28)
【Fターム(参考)】