説明

オゾン水処理装置及びオゾン水処理方法

【課題】高いオゾン濃度のオゾン水を用いて被処理材の処理表面にオゾン水処理を行ったとしても、そのオゾン水から発生するオゾンガスの漏洩を抑制することができるオゾン水処理装置及びオゾン水処理方法を提供する。
【解決手段】被処理材Pを出し入れする開口部21が上方に形成されたオゾン水収容槽2と、該オゾン水収容槽2の上部において被処理材Pを水洗する水洗装置3と、水洗装置3の上方の空気を排気する排気装置4と、を備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理材の処理表面に対してオゾン水処理を行うオゾン水処理装置及びオゾン水処理方法に係り、特に、オゾン水処理時に発生するオゾンガスの漏洩を防止することができるオゾン水処理装置及びオゾン水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高分子樹脂からなる被処理材の処理表面に、導電性や光沢性を付与すべく金属被膜を形成する場合、めっき処理を行うことが多い。このめっき処理として、樹脂基材の下地となる導電性を有しない高分子樹脂の処理表面に、溶液中の金属イオンを化学的に還元析出させて、この処理表面に、めっき被膜を形成する処理(無電解めっき処理)を行うことがある。
【0003】
たとえば、このような被処理材のめっき処理方法として、被処理材の処理表面を活性化するために、オゾン水収容槽内のオゾン水に処理表面を接触させて改質し、その後、その処理表面に無電解めっき被膜を被覆することが一般的になされている。このオゾン水処理を行うことで、被処理材の処理表面をマイルドに改質すると共に、改質した表面のめっき被膜の密着性を高めることができる。しかし、オゾン水処理を行った場合には、オゾン水に含まれるオゾンがオゾンガスとなり、このオゾンガスが、装置外に漏洩することがある。このオゾンガスの漏洩により、オゾン処理の作業環境が必ずしも良いものといえない場合があった。
【0004】
そこで、このような点を鑑みて、オゾン水処理を行う装置として、例えば、オゾン水収容槽上に送風ブロワーに繋がる送気口と吸い込み口を設け、吸い込み口に回収された排オゾンを含むオゾンガスを排オゾン処理装置に送るオゾン水処理装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−284521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のオゾン水処理装置を用いた場合であっても、オゾン水収容槽の上部に形成された開口部から、被処理材を出し入れする際には、オゾン水収容槽で発生するオゾンガスによりの漏洩を抑えることは難しい。
【0007】
すなわち、この漏洩の原因としては、以下の2点が、主に挙げられる。まず、第一に、被処理材をオゾン水から引き上げた後、被処理材の表面にはオゾン水が付着している。この付着したオゾン水からオゾンガスが発生し、これが装置外で拡散することにより、漏洩するものと考えられる。特に、上述した高濃度(5ppm以上)のオゾン水の場合には、付着したオゾン水からのオゾンガスの発生も1ppm以上になることがある。
【0008】
第二に、被処理材をオゾン水から引き上げる際に、オゾン水の液面から発生するオゾンガスを含む被処理材の周りの空気を巻き込みながら(巻き上げながら)引き上げるので、これにより、オゾンガスが漏洩するものと考えられる。特に、処理効率を高めようとして、より濃度のオゾン水をオゾン水収容槽に収容した場合には、オゾン水の液面から発生するオゾン濃度は、より高いものになる。この場合には、上述した引き上げ時の巻き込みにより、より多くの(より濃度の高い)オゾンガスを装置外に漏洩してしまう。
【0009】
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、たとえ高いオゾン濃度のオゾン水を用いて被処理材の処理表面にオゾン水処理を行ったとしても、そのオゾン水から発生するオゾンガスの漏洩を抑制することができるオゾン水処理装置及びオゾン水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決すべく、発明者らは鋭意検討を重ねた結果、被処理材の処理表面に付着したオゾン水を、被処理材の処理表面を水洗することにより、オゾン水の持ち出しを排除し、さらには、引き上げ時において巻き上がる被処理材の周りのオゾンガスを含む空気を排気すれば、オゾンガスの漏洩を抑制できるとの新たな知見を得た。
【0011】
本発明は、発明者らのこの新たな知見に基づくものであり、本発明に係るオゾン水処理装置は、被処理材を出し入れする開口部が上方に形成されたオゾン水収容槽と、該オゾン水収容槽の上部において前記被処理材を水洗する水洗手段と、該水洗手段の上方の空気を排気する排気手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0012】
本発明によれば、オゾン水収容槽が収容されたオゾン収容槽の上方に形成された開口部から、被処理材を投入し、被処理材をオゾン水に浸漬させて、被処理材の処理表面に対して、オゾン水による処理を行うことができる。この処理後、被処理材をオゾン水から引き上げる際に、被処理材を例えばスプレー又はシャワーなどの水洗手段により、被処理材の表面に付着したオゾン水を洗い流すことによりオゾンの持ち出しを排除し、さらには、水洗された被処理材のまわりのオゾンガスを含む空気を排気することにより、空気に含まれる巻き込んだオゾンガスも排気することができる。この結果、オゾン水処理装置外に、オゾン水から発生するオゾンガスの漏洩を抑制することができる。
【0013】
また、より好ましくは、本発明に係るオゾン処理装置は、前記被処理材を前記オゾン水収容槽内で昇降させる昇降手段を備え、該昇降手段は、前記被処理材の昇降速度を調整する速度調整手段を備える。本発明によれば、昇降手段を用いることにより、被処理材に対して適正な水洗量の水を吹き付けることができるばかりでなく、引き上げ速度を調整して、被処理材周りの空気の巻き込みを抑えることができる。
【0014】
また、本発明として、オゾン水処理方法をも開示する。本発明に係るオゾン処理方法は、被処理材をオゾン水に浸漬させる工程と、前記被処理材を前記オゾン水から引き上げる際に、前記被処理材を水洗すると共に水洗した前記被処理材の周りの空気を排気する工程と含むことを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、被処理材をオゾン水に浸漬させることにより、被処理材の表面をオゾン水で改質することができる。その後、被処理材をオゾン水から引き上げる際に、被処理材を水洗することで、被処理材の表面に付着したオゾン水を洗い流すことができる。さらに、引き上げ時に、水洗された被処理材まわりの空気を排気することで、収容槽内のオゾン水から発生し拡散するオゾンガスばかりでなく、引き上げ時に巻き込まれた空気に含まれるオゾンガスをも排気することができる。この結果として、装置外へのオゾンガスの漏洩を抑制することができる。
【0016】
また、このようなオゾン水処理方法における水洗方法は、被処理材の表面に付着したオゾン水を洗い流すことができるのであれば、その方法は特に限定さるものではなく、例えば、スプレーにより被処理材の表面に水を吹付ける方法や、シャワーリングする方法などを挙げることができる。
【0017】
しかしながら、発明者らの実験によれば、被処理材の表面の水洗に最も重要な因子は、水洗時の単位面積あたりの水の吹付け量であるとの知見を得た。すなわち、被処理材の表面に付着するオゾン水の付着性は低いので、水洗効率は、被処理材への水の吹付け圧等よりも、水の噴き付け量に依存性が高いという点に着想したものである。
【0018】
このような発明者らの着想により、本発明に係るオゾン水処理方法は、前記被処理材の表面積に対して、単位面積あたり0.0046mL/cmの水を吹付けることにより、前記水洗を行うことがより好ましい。
【0019】
本発明によれば、前記範囲の水量を、引き上げ時のオゾン水が付着した処理表面に吹付けることにより、被処理材の処理表面のオゾン水を確実に洗い流すことができる。これにより、被処理材に付着したオゾン水の持ち出しを抑え、これによりオゾンガスの漏洩を抑えることができる。なお、本発明にいう単位面積当たりの水の吹付け量とは、吹きつけ方向に対して、垂直面を想定したときの、該垂直面に吹き付けられる単位面積当たりの水の総量のことをいう。
【0020】
また、オゾン水処理方法における空気の排気方法は、被処理材の周りのオゾンガスを含む空気を排気することができるのであれば、特にその方法は限定されるものではなく、例えば、ファン、ブロア等により、吸引して排気することができる。
【0021】
しかしながら、発明者らの実験によれば、被処理材のまわりの空気を排気するにあたって重要な因子は、排気時の被処理材の引き上げ速度と、被処理材の周りの空気の風速と、の2つの因子であるとの知見を得た。すなわち、排気時の被処理材の引き上げ速度は、被処理材の引き上げによるオゾンガスを含む空気の巻き込みに依存し、被処理材の周りの空気の風速は、巻き込み等により被処理材の周りに存在するオゾンガスの除去効率に依存するという点に着想したものである。
【0022】
そこで、このような発明者らの着想により、本発明におけるオゾン水処理方法は、前記被処理材をオゾン水から引き上げる速度を30cm/秒以下にし、前記被処理材の周りの空気の風速が0.3m/秒以上となるように、前記被処理材の周りの空気を排気することがより好ましい。
【0023】
本発明によれば、前記範囲に設定された引き上げ速度の条件で、被処理材を引き上げることにより、オゾンガスの空気の巻き込みを抑制し、さらに、この間に前記範囲に設定された風速条件で、被処理材まわりの空気を排気するので、収容槽内のオゾン水から発生し拡散するオゾンガスばかりでなく、たとえ、わずかなオゾンガスの巻き込みがあった場合でも、被処理材の周りのオゾンガスをも排気することができる。
【0024】
すなわち、引き上げ速度が前記範囲を超えた場合には、引き上げ時における被処理材の回りのオゾンガスを含む空気の巻き込みが大きくなり、また、風速が前記範囲未満である場合には、充分にオゾンガスを排気することができない。
【0025】
なお、このような効果からも明らかなように、引き上げ方向と風速の方向の依存性はほとんどない。したがって、本発明にいう「風速」とは、その方向にかかわらず、被処理材の周りの空気の風速が前記範囲を満たすものであればよく、特に、その方向が、引き上げ方向等に依存するものではない。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、たとえ高いオゾン濃度のオゾン水を用いて被処理材の処理表面にオゾン水処理を行ったとしても、そのオゾン水から発生するオゾンガスの漏洩を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態に係るオゾン水処理装置の模式的な全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、図面を参照して、本発明に係るオゾン水処理装置及びオゾン水処理方法の実施形態に基づいて説明する。
【0029】
図1は、本実施形態に係るオゾン水処理方法を好適に行うことができるオゾン水処理装置の模式的な全体構成図を示している。図1に示すように、本実施形態に係るオゾン水処理装置10は、オゾン水収容槽2、一対の水洗装置(水洗手段)3、排気装置(排気手段)4、及び、昇降装置(昇降手段)5を基本構成としている。
【0030】
オゾン水収容槽2は、被処理材Pを処理するオゾン水OWを収容するための層であり、上方に開口部21が形成されており、開口部21を介して、オゾン水OWの供給、及び昇降装置5を用いた被処理材Pが出し入れされるようになっている。
【0031】
また、オゾン水収容槽2の上部には、一対の水洗装置3が設けられ、該水洗装置3は、後述する水洗ノズルからの水が対向して噴射されるように配置されている。より具体的には、水洗装置3は、水の供給量を可変に調整することができる水供給ポンプ(図示ぜず)と、水供給ポンプからの水Wが供給される水供給管31と、水供給管31の長手方向に沿って等間隔に配置された複数の水洗ノズル32と、を備えている。また、各水洗装置3の各水洗ノズル32は、水供給管31から供給される水が、両側から被処理材Pに向かって放出するように、配置されている。
【0032】
さらに、水洗装置3の上方のオゾン水収容槽2の側壁には、排気口22が形成されている。排気口22は、排気管41を介して、排気ブロア42に接続されており、前述した排気装置4は、この排気口22に接続された排気管41と排気ブロア42とを含むものである。
【0033】
また、オゾン水収容槽2の外側には、昇降装置5が設けられている。この昇降装置5は、被処理材Pを取着する取着部51と、取着部51と共に被処理材Pをオゾン水収容槽2の内部へ昇降させる昇降機構52とを備えている。
【0034】
昇降機構52は、支柱部53と、支柱部53の上部からオゾン水収容槽2の上方に延出した梁部54とを備えている。梁部54の先端には、ワイヤ55が配置されており、このワイヤ55の一方側は、取着部51に接続され、他方側は、ドラム(図示せず)の周面沿って巻かれて、その端部はドラムに固着されている。また、ドラムのドラム軸には、電動モータ(図示せず)が連結されている。
【0035】
電動モータは、回転方向及び回転速度を調整する制御装置(速度調整手段)が搭載されており、たとえば、操作パネルからの操作者が要求する昇降方向の指令、昇降速度電動モータを正転または逆転させる指令により、取着部51を昇降させることができ、供給される駆動電流を制御して電動モータの回転速度を調整することにより、昇降速度を調整することができる。
【0036】
そして、昇降機構52は、被処理材Pをオゾン水収容槽2内のオゾン水に浸漬さることができる範囲まで下降させ、さらには、オゾン水OWから被処理材Pを引き上げて、開口部21を介して被処理材Pを取り出すことができる範囲まで上昇させることができるように、支柱部53の位置、梁部54の高さ、ワイヤ55の長さ等が設定されている。
【0037】
このように、被処理材Pを、オゾン水処理装置10から、開口部21を介して、出し入れ(昇降)することができ、被処理材Pを所定の速度で昇降することができるのであれば、特にその機構は限定されるものではない。
【0038】
このようなオゾン水処理装置10を用いたオゾン水処理方法を、以下に示す。
まず、昇降装置5の取着部51で、被処理材Pを取着する。次に、電動モータを回転させて、取着された被処理材Pを下降させ、オゾン水収容槽2の開口部21を介して、オゾン水収容槽2内のオゾン水OWに浸漬させる(浸漬工程)。次に、所定時間経過後(オゾン水により被処理材Pの表面の改質がされた後)、オゾン水OWから被処理材Pを引き上げる。
【0039】
被処理材Pをオゾン水OWから引き上げる際に、水洗ノズル32に所定の吹付け量の水が放出されるように水供給ポンプの吐出量を調整して、水供給管31を介して、水洗ノズル32から水Wを放出させることにより被処理材Pを水洗し、被処理材Pの表面に付着したオゾン水OWを洗い流することができる。なお、後述する実施例からも明らかなように、この際、水供給ポンプを調整して、被処理材Pの表面積に対して、単位面積あたり0.0046mL/cmの水を吹付けることにより、上述した水洗を行うことがより好ましい。
【0040】
さらに、排気ブロア42を駆動させることにより、引き上げ時に、水洗された被処理材Pまわりの空気を、排気口22、排気管41を巡視通過させ、排気ブロア42から排気することで、オゾン水OWから発生するオゾンガスを含む空気の巻き込みを抑えることができる。この結果として、装置外へのオゾンガスの漏洩を抑制することができる。なお、後述する実施例からも明らかなように、被処理材Pをオゾン水OWから引き上げる速度を30cm/秒以下にし、被処理材周りの空気の風速を0.3m/秒以上となるように、被処理材Pの空気を排気することがより好ましい。
【0041】
なお、この風速は、オゾン水収容槽内の複数個所に、例えば熱線式、超音波式、又は風車型の風速計を配置して、排気時の空気の流れに沿った風速を測定し、各風速の測定結果(例えば、平均値)に基づいて、排気ブロアの排気量を調整することにより、風速を調整することができる。風速計は、被処理材が通過する位置に配置することが好ましいが、オゾン水収容槽2内の空気の流れに沿って測定した風速が、槽内の全ての位置において略一定になるまで、排気状態を安定させることが好ましい。
【0042】
なお、本実施形態に係るオゾン水処理方法に用いる被処理材は、不飽和結合を有する樹脂としては、例えばABS樹脂、AS樹脂、PS樹脂、AN樹脂、エポキシ樹脂、PMMA樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニルサルファイド樹脂などを挙げることができ、これらの樹脂を用いることにより、その後工程で、処理表面に無電解めっきを、好適にすることができる。
【実施例】
【0043】
以下に本発明を実施例により説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。なお、以下に示す実施例1及び2は、上述した実施形態に示すオゾン水処理装置を用いて行ったものである。
【0044】
(実施例1)
まず、ABS樹脂からなる所定の形状のエンブレムを準備した。次に、このエンブレム(テストピース)を、オゾン水収容槽に収容されたオゾン水(オゾン濃度40ppm)に、8分間浸漬させた。その後、テストピースをオゾン水から引き上げる際に、表1に示す条件でテストピースを水洗すると共に水洗した前記被処理材まわりの空気を排気した。
【0045】
具体的には、以下の表に示す引き上げ速度(cm/秒)の条件、及びシャワー水洗量(L/分)の条件となるように、オゾン水処理を行った。
【0046】
なお、このときの室温は、20℃、であり、シャワー水洗量(水を噴きつける量)は、水供給ポンプの吐出量を調整することにより、表1に示す値毎に変更した。そして、テストピースを引き上げたときの、オゾン水収容槽上におけるオゾン濃度(ガス濃度)を測定した。この結果を、表1に示す。なお、単位面積当たりの水量(水を噴きつける量)は、次の式(1)により、算出した。
(単位面積当たりの水量)=(シャワー水洗量)÷(引き上げ速度)
÷(オゾン収容槽の長手距離(全体の吹付け幅))…(1)
例えば、オゾン収容槽の長手距離(全体の吹付け幅)は、60cmであるので、シャワー水洗量が、0.25L/分、引き上げ速度15cm/秒(900cm/分)の場合には、0.0046mL/cmとなり、また、一方、0.5L/分、引き上げ速度30cm/秒(1800cm/分)の場合も、0.0046mL/cmとなる。
【0047】
表1には、さらに、測定されたオゾン濃度が、0.03ppm以下の場合には、良好:○とし、それを超えた場合には、不良:×として、判定結果を示した。なお、良否の判定基準は、自然の日中に確認されるオゾン濃度を、上限値(0.03ppm)とした。
【0048】
なお、排気風速(風速)は、0.3m/秒となるように、排気ブロアを調整した。この風速は、直方体のオゾン収容槽の四隅に、その排気の空気の流れ方向に沿って、熱線式のアネモマスター6331(日本カノマックス株式会社製)の風速計を配置し、これらの値が略同じ値になったときの風速である。
【0049】
【表1】

【0050】
[結果1]
この結果から、単位面積あたり0.0046mL/cm以上の水を吹付けることにより、水洗の行うことで、オゾン水収容槽からのオゾンガスの漏洩を好適に抑えることができる。この条件では、被処理材の処理表面のオゾン水を洗い流すことができ、これにより、装置外へのオゾン水の持ち出しを抑えたことによると考えられる。
【0051】
(実施例2)
実施例1と同じようにして、オゾン水処理を行った。実施例1と相違する点は、シャワー水洗量を0.5L/分一定とし、排気ブロアを調整することで、排気風速(風速)を表2に示すようにして変更した点である。なお、排気風速は、実施例1と同じようにして、測定した値である。
【0052】
そして、実施例1と同じようにオゾン濃度(ガス濃度)を測定した。この結果を、表2に示す。なお、実施例1と同じように、測定されたオゾン濃度が、0.03ppm以下の場合には、良好:○とし、それを超えた場合には、不良:×とした。
【0053】
【表2】

【0054】
[結果2]
この結果から、前記被処理材をオゾン水から引き上げる速度を30cm/秒以下にし、被処理材周りの空気の風速を0.3m/秒以上となるように、前記被処理材の空気を排気することにより、オゾンガスの空気の巻き込みを抑制し、さらに、この間に前記風速条件で、空気を排気するので、たとえ、被処理材によるわずかなオゾンガスの巻き込みがあった場合でも、被処理材の周りのオゾンガスをも排気することができたと考えられる。
【0055】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0056】
2:オゾン水収容槽,3:水洗装置(水洗手段),4:排気装置(排気手段),5:昇降装置(昇降手段),10:オゾン水処理装置,21:開口部,22:排気口,31:水供給管,32:水洗ノズル,41:排気管,42:排気ブロア,51:取着部,52:昇降機構,53:支柱部,54:梁部,55:ワイヤ,P:被処理材,W:水,OW:オゾン水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理材を出し入れする開口部が上方に形成されたオゾン水収容槽と、該オゾン水収容槽の上部において前記被処理材を水洗する水洗手段と、該水洗手段の上方の空気を排気する排気手段と、を備えることを特徴とするオゾン水処理装置。
【請求項2】
前記被処理材を前記オゾン水収容槽内で昇降させる昇降手段を備え、該昇降手段は、前記被処理材の昇降速度を調整する速度調整手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のオゾン水処理装置。
【請求項3】
被処理材をオゾン水に浸漬させる工程と、
前記被処理材を前記オゾン水から引き上げる際に、前記被処理材を水洗すると共に水洗した前記被処理材の周りの空気を排気する工程と含むことを特徴とするオゾン水処理方法。
【請求項4】
前記被処理材の表面積に対して、単位面積あたり0.0046mL/cmの水を吹付けることにより、前記水洗を行うことを特徴とする請求項3に記載のオゾン水処理方法。
【請求項5】
前記被処理材をオゾン水から引き上げる速度を30cm/秒以下にし、前記被処理材の周りの空気の風速が0.3m/秒以上となるように、前記被処理材の周りの空気を排気することを特徴とする請求項3または4に記載のオゾン水処理方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−1569(P2011−1569A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143283(P2009−143283)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】