説明

オリゴオレフィン−ポリエステル系又はポリカーボネート系ブロック共重合体

【課題】オリゴオレフィンブロックを有する新規なポリエステル又はポリカーボネートブロック共重合体とその製造方法を提供。
【解決手段】オリゴオレフィンの両末端に極性基を有するオリゴオレフィンと、ポリエステル又はポリカーボネートとのエステル交換反応により、オリゴオレフィンブロックを有するポリエステル又はポリカーボネートブロック共重合体が得られる。また、かかる共重合体は化学構造が大きく相違する2種類のブロックを一分子内に含むものであることから、優れた相溶性を奏する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野はオリゴオレフィンブロックを有するポリエステル又はポリカーボネートブロック共重合体に属する。
【背景技術】
【0002】
新規な物性を求めて、ポリエステル、ポリカーボネートやポリアミドなどの逐次重合系ポリマーにおいて、主鎖の交換反応を利用することで様々な共重合体の合成が試みられてきた(非特許文献1)。加えて、マレイン酸変性ポリオレフィンやエチレン−酢酸ビニル共重合体などの極性基を有するポリオレフィンと逐次重合系ポリマーとの交換反応を利用して、ポリマーブレンド又はポリマーアロイを製造することが多く試みられている(非特許文献2)。特に近年、ポリ乳酸のような生分解性に優れた環境に優しいポリエステルと、ポリプロピレンのような強度等に優れたポリオレフィンとのポリマーブレンド又はポリマーアロイは、実用性と環境への優しさを兼ね備えた理想的な材料として大きく興味が持たれている(非特許文献3)。
【0003】
一方、化学構造が相違するポリマーから安定なポリマーブレンド又はポリマーアロイを得るためこれらを単に溶融して混合するだけでは十分でなく、溶融状態でマクロ相分離してしまうものが多く、この場合は全く実用に耐えることはできない。従って、これらの化学構造が相違するポリマーから安定なポリマーブレンド又はポリマーアロイを得るために相溶化剤の添加が必要であり、これまでいくつかの相溶化剤が知られているが(非特許文献4〜6)、未だ十分なものはない。特にポリ乳酸と、ポリプロピレンとを十分に相溶化できる相溶化剤についてはその要求が極めて強いにも関わらず全く知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−231773。
【特許文献2】特開2005−307128。
【特許文献3】特開2007−100101。
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Polymer、33、2019−2030(1992)、Journal of Polymer Science、Macromolecular Reviews、16、367−395(1981)。
【非特許文献2】European Polymer Journal、44、1512−1524(2008)、Polymer、38、5085−5089(1998)。
【非特許文献3】Polymer、49、3902−3910(2008)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、新規ブロック共重合体、特にオリゴオレフィンブロックを有するポリエステル又はポリカーボネートブロック共重合体とその製造方法、及びそれを含む相溶化剤に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記要求を満たすべき新規な相溶化剤を見出すべく鋭意研究を行った結果、オリゴオレフィンの両末端に極性基を有するオリゴオレフィンと、ポリエステル又はポリカーボネートとのエステル交換反応により、オリゴオレフィンブロックを有するポリエステル又はポリカーボネートブロック共重合体が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明はオリゴオレフィンの両末端に極性基を有するオリゴオレフィンとポリエステル又はポリカーボネートとのエステル交換反応により得られる、オリゴオレフィンブロックを有するポリエステル又はポリカーボネートブロック共重合体に関する。さらに本発明は、オリゴオレフィンの両末端に極性基を有するオリゴオレフィンと、ポリエステル又はポリカーボネートとのエステル交換反応により、オリゴオレフィンブロックを有するポリエステル又はポリカーボネートブロック共重合体の製造方法に関する。
【0009】
また本発明は、オリゴオレフィンブロックを有するポリエステル又はポリカーボネートブロック共重合体を含む、相溶化剤に関する。
【0010】
ここで前記オリゴオレフィンには、イソタクチックオリゴプロピレン、シンジオタクチックオリゴプロピレン、アタクチックオリゴプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−(1−ブテン)ランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、オリゴ(1−ブテン)、オリゴ(4−メチル−1−ペンテン)などに加えて一般にランダムPPやリアクターブレンドPPと呼ばれるプロピレン系共重合体も挙げられる。また前記ポリエステルには、ポリ乳酸、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリブチレンサクシネート、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)/ポリ(3−ヒドロキシバレート)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシルジメチレンテレフタレート)、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリアリレート、全芳香族液晶性ポリエステルが含まれ、前記ポリカーボネートには、ビスフェノールAとホスゲン、ビスフェノールAとジフェニルカーボネート、又はビスフェノールAと二酸化炭素から製造されるポリカーボネート等が含まれる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法により、新規なオリゴオレフィンブロックを有するポリエステル、又はポリカーボネートブロック共重合体が製造可能となる。かかる共重合体は化学構造が大きく相違する2種類のブロックを一分子内に含むものであることから、優れた相溶性を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、iPP−OH、PCエステル交換により得られた生成物のGPC曲線を示す。
【図2】図2は、iPP−OH、PC、エステル交換により得られた生成物の1H NMRスペクトルを示す。
【図3】図3は、iPP−OH、PLLA、エステル交換により得られた生成物のGPC曲線を示す。
【図4】図4は、iPP−OH、PLLA、エステル交換により得られた生成物の1H NMRスペクトルを示す。
【図5】図5は、iPP−OH、PCL、エステル交換により得られた生成物のGPC曲線を示す。
【図6】図6は、iPP−OH、PCL、エステル交換により得られた生成物の1H NMRスペクトルを示す。
【図7】図7は、ポリマーブレンドのSEM像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(製造方法)
本発明の製造方法は、従来公知のエステル交換反応によるポリエステル、又はポリカーボネート合成方法を用いた方法であることを特徴とする。本発明で用いることのできるエステル交換反応の条件については特に制限はなく、以下説明するように、両末端に極性基を有するオリゴオレフィンとポリエステル又はポリカーボネートを原料として用いることを特徴とする。すなわち、両末端に極性基を有するオリゴオレフィンとポリエステル又はポリカーボネートとを用いたエステル交換反応により製造する。
【0014】
本発明において使用可能な両末端に極性基を有するオリゴオレフィンについては特に制限はなく、種々の公知のオリゴオレフィンであってかつ両末端に極性基を有するものであればよい。オリゴオレフィンとしては具体的には、イソタクチックオリゴプロピレン、シンジオタクチックオリゴプロピレン、アタクチックオリゴプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−(1−ブテン)ランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、オリゴ(1−ブテン)、オリゴ(4−メチル−1−ペンテン)などに加えて一般にランダムPPやリアクターブレンドPPと呼ばれるプロピレン系共重合体も挙げられる。オリゴオレフィンの分子量についても特に制限はなく、1,000から100,000の範囲であればよい。極性基としては具体的にヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、スルホン酸基が挙げられる。また、オリゴオレフィンの両末端に存在する極性基はエステル交換反応可能な官能基であれば特に制限はなく、さらに一つの末端に一つ以上の官能基が存在していてもよい。極性基として具体的にはヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、スルホン酸基が挙げられる。
【0015】
さらに本発明で使用可能な両末端に極性基を有するオリゴオレフィンは通常公知の種々の方法で得ることができる。具体的には例えば両末端に二重結合を有するオリゴオレフィンの二重結合を従来公知の方法により水酸基に変換することで可能である。ここで末端二重結合を水酸基に変換する方法及びその確認は特に制限はなく、通常公知の方法及び分析方法を使用することができる。
【0016】
本発明において使用されるポリエステルは特に制限はなく、種々の公知のポリエステルを用いることが可能である。具体的にはジオールとジカルボン酸とのポリエステル、ヒドロキシカルボン酸のポリエステルが含まれる。本発明において使用されるポリカーボネートは特に制限はなく、具体的には、ビスフェノールAから製造されたポリカーボネートが挙げられる。
【0017】
本発明でのエステル交換反応とは、エステル結合にヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基又は他のエステル結合を反応させて、別種のエステル結合を生成させる反応である。
【0018】
本発明のエステル交換反応の条件についても特に制限はなく、従来公知のエステルとアルコール又はカルボン酸などの極性基とのエステル交換反応が適用可能である。
具体的には反応器内に、ジオール又はジカルボン酸などの極性基を両末端に有するオリゴオレフィンとポリエステル又はポリカーボネートを混合して交換反応を行う。
必要な場合、適切なエステル交換反応触媒を使用する。触媒としてはパラトルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、三フッ化ホウ素、テトラアルキルチタネート、酢酸亜鉛、酢酸スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウム、オクチル酸スズ等が挙げられる。また必要な場合、加熱して反応を促進することも好ましい。反応は無溶媒で行うこともできるが、必要に応じて溶媒中で行うこともできる。使用できる溶媒は用いるオリゴオレフィン、ポリエステル又はポリカーボネートの種類と量により、適宜選択することができる。具体的にはオルトジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、デカヒドロナフタレン等が挙げられる。
【0019】
反応の進行は種々の分析方法を用いて、生成物を定性的若しくは定量的に分析することが可能である。具体的には、ガスクロマトグラフ、液体クロマトグラフ、質量分析又はこれらの組み合わせた方法、NMR、IR、UV−VIS等の分光学的方法が挙げられる。また生成するブロックコポリマーの分子量特性についてはGPC法で測定可能であり、ミクロ構造についてはNMRやIR分光学的方法が適用可能である。反応終了後は、生成物の貧溶媒により再沈殿させて精製することができる。通常、減圧乾燥により乾燥することができる。
【0020】
(ブロック共重合体)
本発明のエステル交換反応により得られるブロック共重合体は、オリゴオレフィンブロックが、ポリエステル又はポリカーボネートの一部に挿入された構造を有する。
エステル交換反応において、2種以上の両末端に極性基を有するオリゴオレフィンを同時に用いたり、2種以上のポリエステル又はポリカーボネートを同時に用いることも可能である。これらの組み合わせによってより多様な共重合体の合成が可能となる。
ブロック共重合体の分子量特性は、両末端に極性基を有するオリゴオレフィンとポリエステル又はポリカーボネートとの仕込み量によって調整することが出来る。
【0021】
これらのエステル交換反応の一例として次の反応式を示す。
【0022】
両末端ヒドロキシル化オリゴオレフィンとポリエステルのエステル交換の場合は以下の反応式で表される。
【化1】


ここで、R1はオリゴオレフィンブロックを示しており、R2及びR3はそれぞれポリエステル鎖を構成するジカルボン酸及びジオール成分である。
【化2】


【化3】


【化4】

【0023】
両末端ヒドロキシル化オリゴオレフィンとポリヒドロキシカルボン酸とのエステル交換の場合は以下の反応式で表される。
【化5】

【0024】
ここで、R1はオリゴオレフィンブロックを示しており、R4はヒドロキシカルボン酸ブロックである。
【化6】

【0025】
両末端ヒドロキシル化オリゴオレフィンとポリカーボネートとのエステル交換反応の場合は以下の反応式で表される。
【化7】

【0026】
ここでR1はオリゴオレフィンブロックを示し、R5はポリカーボネートブロックを構成するジオール成分である。
【化8】

【0027】
生成物としてのブロック共重合体の定性的若しくは定量的な分析は具体的には、ガスクロマトグラフ、液体クロマトグラフ、質量分析又はこれらの組み合わせた方法、NMR、IR、UV−VIS等の分光学的方法が挙げられる。また生成したブロックコポリマーの分子量特性についてはGPC法で測定可能であり、ミクロ構造についてはNMRやIR分光学的方法が適用可能である。
【0028】
(相溶化剤)
本発明の製造方法により得られるブロック共重合体は、ポリオレフィンと、ポリエステル又はポリカーボネートのブレンド又はアロイを調製する際に極めて優れた相溶性を示す。特にイソタクチックポリプロピレンとポリ乳酸とのブレンドに添加することで、これらの全く極性の相違するポリマーを相溶化させることができる。
【0029】
相溶化剤としての本発明のブロック共重合体の使用方法には特に制限はないが、混合するポリマーの種類(モノマーの種類、分子量)、相溶化の程度を考慮して適宜選択することができる。本発明のブロック共重合体を構成するオリゴオレフィン又はポリエステル、ポリカーボネートの種類、含量、分子量、分子量分布を考慮して最適化することができる。最適化に際しては、種々の混合比で混合してブレンドを調製して試料を作成し、その試料の断面を観察することで可能である。観察には通常公知のポリマーブレンド又はアロイの分野において使用される装置や方法が使用可能である。具体的には、ブレンドしたポリマーの一方を溶媒によって溶出して得られた試料の断面を観察することが好ましい。断面の観察により相溶化の程度も評価することができる。
【0030】
以下実施例により本発明を更に具体的に説明するが本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
(実施例1) 両末端ビニリデンオリゴプロピレンの合成
試料量が最大5kgのラボスケール高度制御熱分解装置を反応器として用いた。イソタクチックポリプロピレン(iPP、日本ポリプロピレン株式会社製、ノバテックPP、グレード:EA9A、MFR:0.5/10min)2kgを反応器に仕込み、反応器内を窒素置換した後、2mmHgに減圧した。反応器を200℃に加熱しiPPを溶融した。その後、390℃に設定されたメタルバスに反応器を沈めて熱分解を開始した。熱分解反応中、反応器内は2mmHg程度に減圧を維持した。反応器内で溶融したポリマーはキャピラリーから導入された窒素ガスのバブリングによって撹拌した。3時間経過後、反応器をメタルバスから上げ、室温まで冷却した後、反応器内を常圧に戻した。
【0032】
反応器内の残渣を熱キシレンにて溶解した後、メタノールに滴下して再沈殿精製した。収率は77wt%%(仕込み量を基準に計算)、分子量特性はMn=7,500、Mw/Mn=1.78であった。なお分子量はGPCを用いて測定した(以下本明細書において同様)。一分子当たりの二重結合の平均数(fTVD):1.78であった(13C NMRにより測定)。
【0033】
(実施例2) 両末端ヒドロキシル化オリゴプロピレンの合成
両末端ビニリデンオリゴプロピレン(Mn:1500)20gと、テトラヒドロフラン200mLを、還流装置を設けた1,000mLガラス製反応容器に仕込み、反応容器内部を窒素で置換した。反応器にボラン−テトラヒドロフラン錯体テトラヒドロフラン溶液(1M)を60mL加えた後、反応容器を加熱して3時間還流した。その後、反応装置を氷浴に漬けて冷却した後NaOH水溶液(5N)60mLを滴下して加え、続いて30%H2O2を60mL滴下して加えた。さらに反応溶液を加熱して15時間還流させた。反応の終了後、反応混合物を熱いままメタノール1,000mLに注いで再沈殿精製した。両末端ヒドロキシル化オリゴプロピレンは定量的に回収され、両末端がヒドロキシル基であることは、1H NMR、IR測定により確認した。
【0034】
(実施例3) ポリカーボネート(PC)とiPP−OHとのエステル交換反応
スターラーチップを入れた30mLガラス製試験管にPC(アルドリッチ社製、Mn=23,700)1.15gと、1,2,4−トリクロロベンゼン(5mL)を入れ、試験管を180℃で加熱して攪拌しながらPCを溶解した。PCが完全に溶解した後、実施例2で合成したiPP−OH(Mn=1,500)0.5gと、酢酸亜鉛(和光純薬社製)0.09185gを入れて180℃で3時間撹拌して反応させた。その後、反応溶液をメタノール(100mL)に注ぎ、再沈殿精製した。沈殿をメタノールで洗浄後、減圧加温乾燥した。得られた生成物(iPP−PC)の収率は79.5wt%であった。iPP−PCの分子量特性はポリスチレン換算でMn=3,500及びMw/Mn=1.64であった。iPP−PCの構造は、1H NMRにより確認した。
【0035】
図1及び図2には、用いたPC、iPP−OH及びiPP−PCのGPC及1H NMRスペクトルを示す。図1のiPP−OHにおいて検出された0.85、1.2及び1.6ppmのシグナルはiPP−OHの主鎖に由来するシグナルである。末端ヒドロキシル基隣接メチレンプロトン(a)は3.5ppmに検出された。PCのスペクトルにおいて主鎖は1.7及び7.2ppmに検出された。エステル交換によって得られたiPP−PCのスペクトルにはそれぞれの主鎖に由来するシグナルが検出された。加えて、iPP−OHにおける3.5ppmのシグナル(a)がほぼ完全に消失し、新たに4.0、4.8及び6.7ppmに新たにシグナルが出現した。これらは、それぞれ図中の構造式b、c及びdのプロトンである。図2におけるエステル交換により得られた生成物のGPC曲線が単峰性であることは、エステル交換反応が進行している事を示している。これらのことから、エステル化により得られた生成物中には全てのiPP−OHがPCとの共重合体として存在しており、ヒドロキシル基が分子鎖末端に導入されていることを示している。
【0036】
(実施例4) ポリ乳酸(PLLA)とiPP−OHとのエステル交換反応
スターラーチップを入れた30mLガラス製試験管にPLLA(三井化学社製、Mn=120,000)2.2gと、1,2,4−トリクロロベンゼン(5mL)を入れて180℃で加熱し、PLLAが溶解するまで撹拌した。PLLAが完全に溶解した後で、iPP−OH(0.5g、Mn=1,500)と酢酸亜鉛(和光純薬社製)0.09185gを入れ、180℃に加熱して3時間撹拌して反応させた。反応後、反応溶液をメタノール(100mL)に注ぎ、再沈殿精製した。沈殿をメタノールで洗浄した後、減圧加温乾燥した。得られた生成物(iPP−PLLA)の収率は58.7wt%であった。分子量特性はポリスチレン換算で、Mn=4,900及びMw/Mn=1.46であった。生成物の構造は、1H NMRにより確認した。
【0037】
図3及び図4には、用いたPLLA、iPP−OH及びiPP−PLLAのGPC及び1H NMRスペクトルを示す。図1のiPP−OHにおいて検出された0.85、1.2及び1.6ppmのシグナルはiPP−OHの主鎖に由来するシグナルである。末端ヒドロキシル基隣接メチレンプロトン(a)は3.5ppmに検出された。PLLAのスペクトルにおいて主鎖は1.7及び5.15ppmに検出された。エステル交換によって得られた生成物(iPP−PLLA)のスペクトルにはそれぞれの主鎖に由来するシグナルが検出された。加えて、iPP−OHにおける3.5ppmのシグナル(a)がほぼ完全に消失し、新たに4.0及び4.4ppmに新たにシグナルが出現した。これらは、それぞれ図中の構造式のb及びcのプロトンである。図4におけるエステル交換により得られた生成物のGPC曲線が単峰性であることは、エステル交換反応が進行している事を示している。これらのことから、エステル化により得られた生成物中には全てのiPP−OHがPLLAとの共重合体として存在しており、ヒドロキシル基が分子鎖末端に導入されていることを示している。
【0038】
(実施例5) ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)とiPP−OHとのエステル交換反応
スターラーチップを入れた30mLガラス製試験管にPCL(アルドリッチ製、Mn=58,800)2.0gと、1,2,4,−トリクロロベンゼン(5mL)を入れて加熱し、PCLが溶解するまで180℃で撹拌した。PCLが完全に溶解した後、iPP−OH(0.5g、Mn=1,500)と、酢酸亜鉛(和光純薬社製)0.09185gを入れ、加熱して180℃で、3時間撹拌して反応させた。反応後、反応溶液をメタノール(100mL)に注ぎ、生成物を沈殿させた。沈殿物をメタノールで洗浄した後、減圧加温乾燥した。得られた生成物(iPP−PCL)の収率は58.7wt%であった。分子量特性はポリスチレン換算でMn=4,100及びMw/Mn=1.58であった。生成物の構造は、1H NMRにより確認した。
【0039】
図5及び図6に,PCL、iPP−OH及びiPP−PCLのGPC及び1H NMRスペクトルを示す。図1のiPP−OHにおいて検出された0.85、1.2及び1.6ppmのシグナルはiPP−OHの主鎖に由来するシグナルである。末端ヒドロキシル基隣接メチレンプロトン(a)は3.5ppmに検出された。PCLのスペクトルにおいて主鎖は1.4、1.65、2.3及び4.05ppmに検出された。iPP−PCLのスペクトルにはそれぞれの主鎖に由来するシグナルが検出された。加えて、iPP−OHにおける3.5ppmのシグナル(a)がほぼ完全に消失し、新たに3.85及び3.65ppmに新たにシグナルが出現した。これらは、それぞれ図中の構造式b及びcのプロトンである。図6におけるエステル交換により得られた生成物のGPC曲線が単峰性であることは、エステル交換反応が進行している事を示している。これらのことから、エステル化により得られた生成物中には全てのiPP−OHがPCLとの共重合体として存在しており、ヒドロキシル基が分子鎖末端に導入されていることを示している。
【0040】
(実施例6) ポリ乳酸(PLLA)と高分子量iPP−OHとのエステル交換反応
スターラーチップを入れた100mLナス型フラスコにPLLA(三井化学製、Mn=120,000)2.2gと、1,2,4−トリクロロベンゼン(10mL)を入れて加熱し、PLLAが溶解するまで180℃で撹拌した。PLLAが完全に溶解した後、高分子量iPP−OH(1.4g、Mn=14,000)と、酢酸亜鉛(和光純薬製)0.09185gを入れて加熱し、180℃で3時間撹拌した。その後、反応溶液をメタノール(100mL)に注ぎ、生成物を再沈殿精製した。生成物(iPP−PLLA)の収率は78.1wt%であった。
【0041】
(実施例7) 相溶化性能の評価
実施例6で得た生成物(iPP−PLLA)1.0gと、iPP(日本ポリプロ製、Mn=160,000)5.0gと、PLLA(三井化学製、Mn=120,000)5.0gとをキシレン(100mL)中で加熱還流し完全に溶解させた。得られた熱キシレン溶液をメタノール(1,000mL)に注ぎ、再沈殿精製した。沈殿をメタノールで洗浄し、減圧加温乾燥してブレンドパウダーを得た。
【0042】
得られたブレンドパウダーを200℃で溶融混練後、200℃でヒートプレスしてブレンドシートを作成した。得られたブレンドシートを液体窒素で冷却して破断し、破断面をクロロホルムでエッチングし、SEMで破断面を観察した。
【0043】
図7には、iPP−PLLAを加えない50:50(重量比)のブレンドシートと、実施例6で得た生成物を加えて得られたブレンドシートの破断面SEM像を示す。ここで、PLLA相はクロロホルムによって溶出されているので、穴が開いているところはPLLAが存在していた部分であり、残っている部分がiPPの相である。単純ブレンドの場合に比べて、共重合体を含むブレンドの方がそれぞれのドメインがより小さくなっていることが明らかとなった。これにより、iPP−OHとPLLAのエステル交換によって得られたiPP−PLLAはポリマーブレンドの相溶化剤として有効であることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のブロック共重合体は、オリゴオレフィンを含有するものであり、ポリマーブレンドの相溶化剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両末端に極性基を有するオリゴオレフィンとポリエステル又はポリカーボネートとからエステル交換反応により得られるブロック共重合体。
【請求項2】
両末端に極性基を有するオリゴオレフィンとポリエステル又はポリカーボネートとからブロック共重合体を得るためにエステル交換反応を行う製造方法。
【請求項3】
前記オリゴオレフィンが、イソタクチックオリゴプロピレンである、請求項1に記載の共重合体。
【請求項4】
前記ポリエステルがポリ乳酸である請求項1又2に記載の共重合体。
【請求項5】
両末端に極性基を有するオリゴオレフィンとポリエステル又はポリカーボネートとのエステル交換反応により得られるブロック共重合体を含む相溶化剤。
【請求項6】
ポリ乳酸−イソタクチックポリプロピレンブレンドの相溶化剤である、請求項4に記載の共重合体を含む相溶化剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−202768(P2010−202768A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49667(P2009−49667)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【出願人】(596056896)株式会社三栄興業 (12)
【Fターム(参考)】