説明

オルガノシロキサン共重合ポリエステル樹脂

【課題】
【発明が解決しようとする課題】
透明性、溶解性、耐熱性および撥水性に優れ、シリコーンオイルなどブリードアウト成分のないオルガノシロキサン共重合ポリエステル樹脂を提供する。
【解決手段】
二価フェノール成分と芳香族ジカルボン酸成分を共重合して得られるポリエステルであって、前記二価フェノール成分が特定のビスフェノールおよび式(2)であり、芳香族ジカルボン酸成分がテレフタル酸とイソフタル酸の混合物であり、構成成分中のビスフェノールと式(2)の和に対する式(2)のモル比率が0.001モル%以上、10モル%未満であることを特徴とするオルガノシロキサン共重合ポリエステル樹脂。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性、溶解性、耐熱性および撥水性に優れ、シリコーンオイルなどブリードアウト成分のないオルガノシロキサン共重合ポリエステル樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールAと略記することがある〕とテレフタル酸及びイソフタル酸とから得られるポリアリレートは、エンジニアリングプラスチックとして既によく知られている。かかるビスフェノールAを原料としたポリアリレートは、耐熱性が高く、衝撃強度に代表される機械的強度や寸法安定性に優れ、加えて非晶性で透明であるために、その成形品は電気・電子、自動車、機械等の分野に幅広く応用されている。
【0003】
また、優れた電気的特性(絶縁性、誘電特性等)、耐熱性を有しているので、溶媒に溶解させた塗工液からフィルムを形成させてコンデンサ等の電子部品用のフィルムや液晶表示装置用のフィルムに、また、コーティング樹脂のような被膜を形成する用途に応用されている。
【0004】
これらの用途ではポリアリレートを溶媒に溶解させて使用することが多いが、近年では環境への影響から塩化メチレンやクロロホルムなどの塩素系溶剤の使用が制限されており、より環境負荷の少ないシクロヘキサノンなどの非塩素系汎用溶剤に対する溶解性が求められていた。また、ポリアリレートは溶剤に溶解させたときに溶液粘度が高く、ハンドリング性向上の観点から溶液粘度の低減も同様に求められていた。
【0005】
また、フィルム用途やコーティング材料など被膜を形成する用途における被膜表面の防汚性・撥水性付与や、摩擦や摩耗に対する要求は、ますます厳しいものになり、ポリアリレートでは、これらの特性が不十分な用途が生じてきている。例えば、摺動部品材料では金属や他のプラスチック材料との摩擦摺動により傷が生じたりする問題があり、低摩擦の材料が求められている。
【0006】
表面撥水性や低摩擦性を発現させるために、ポリアリレートにシリコーンオイルの添加する方法を用いられる場合があった。しかし、この場合、ポリアリレートとシリコーンオイルの間での相溶性が乏しいために、ブリードアウトが起こったり、外観が白化したりするなどの問題点があった。
【0007】
ポリアリレートにシロキサン構造を導入したものとして、特許文献1では、ポリアリレート−ポリオルガノシロキサンブロック共重合体の開示があるが、オルガノシロキサンの末端フェノール位置が4位であるため、溶液粘度が高くハンドリング性に改善が求められるものであった。特許文献2、特許文献3では、ポリアリレートに、特定数以下のブロック長を有したシロキサン単位を含むオルガノシロキサンを導入すると、良好な光学特性と、耐摩耗性、溶媒への溶解性を有する樹脂組成物が得られるとの開示があるが、撥水性能や低摩擦性能が不満足であった。
【特許文献1】特開平4−91125号公報
【特許文献2】特許第3631827号公報
【特許文献3】特開2000−1530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような方法では、優れた光学特性、溶解性、耐熱性に優れる樹脂組成物を得られるものの、撥水性に劣る性能であった。
【0009】
本発明は、透明性、溶解性、耐熱性および撥水性に優れ、溶液粘度が低くハンドリング性にも優れ、シリコーンオイルなどブリードアウト成分のないオルガノシロキサン共重合ポリエステル樹脂を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、このような課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定構造をもつオルガノシロキサン共重合ポリエステル樹脂が、透明性、溶解性、耐熱性および撥水性に優れ、溶液粘度が低くハンドリング性にも優れ、オイルなどブリードアウト成分のないことを見出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち本発明の要旨は次のとおりである。
【0012】
[1]二価フェノール成分と芳香族ジカルボン酸成分を共重合して得られるポリエステルであって、前記二価フェノール成分が下記式(1)および式(2)であり、芳香族ジカルボン酸成分が式(3)で示されるテレフタル酸とイソフタル酸の混合物であり、テレフタル酸とイソフタル酸のモル比率が90/10〜10/90であり、構成成分中の式(1)と式(2)の和に対する式(2)のモル比率が0.001モル%以上、10モル%未満であることを特徴とする共重合ポリエステル樹脂。
【0013】
【化1】

[式中R1及びR2はそれぞれ独立にハロゲン元素、または炭素原子数1〜9の直鎖状、枝分かれ状もしくは環状の炭化水素基、あるいは芳香族基を表し、p及びqはそれぞれ独立した0〜4の整数である。W1は単結合又は炭素数1〜12の直鎖状、枝分かれ状もしくは環状の炭化水素基であってベンゼン環を含んでいてもよい基を表す。]
【0014】
【化2】

[式中RおよびRは、それぞれ独立に炭素原子数が1〜12個の脂肪族基または芳香族基であり、R、R、R、R、RおよびRは、同一でも異なっていても良い脂肪族基または芳香族基である。RおよびR10は、炭素原子数が1〜4個の脂肪族基またはアルコキシ基であり、sおよびtはそれぞれ独立した0〜4の整数である。mおよびnはそれぞれ独立した整数であり、m+nは10以上の整数である。]
【0015】
【化3】

[2] 上記式(2)におけるR1およびR2が、それぞれともに下記構造(4)のいずれかであることを特徴とする[1]である共重合ポリエステル樹脂。
【0016】
【化4】

[3]上記式(1)におけるpおよびqが、それぞれともに1以上であることを特徴とする[1]、[2]の共重合ポリエステル樹脂。
[4] 上記式(1)におけるW1が下記構造(5)であることを特徴とする[1]〜[3]の共重合ポリエステル樹脂。
【0017】
【化5】

[5] [1]〜[4]のいずれかの共重合ポリエステル樹脂を成形して得られる成型体、フィルム、コート被膜。
【発明の効果】
【0018】
本発明者のオルガノシロキサン共重合ポリエステル樹脂は、耐熱性、透明性、溶解性および撥水性に優れ、オイルなどブリードアウト成分のないことから、各種成形体、フィルム、コート被膜に用いることができ、特に、電気機器、モータ、発電機、相間絶縁、電線の被覆等の絶縁被膜、変圧器やコンデンサーなどの誘電体被膜、液晶表示用の基板フィルム、そのコート層や積層フィルム、情報記録用ディスクなどの基板や、その積層体、光学レンズや電子写真感光体用バインダー、音響機器の振動板などへの適用が可能であり、産業上の利用価値は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明のオルガノシロキサン共重合ポリエステル樹脂を構成する、二価フェノール成分としては、二価フェノール化合物の残基、特定数以上のブロック長を有するポリオルガノシロキサンの残基よりなり、芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸の混合物の残基よりなる。
【0021】
本発明のオルガノシロキサン共重合ポリエステル樹脂を構成する二価フェノール化合物として好ましいものは、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−メチル−2−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4’−ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビスフェノールフルオレン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、4,4’−[1,4−フェニレン−ビス(2−プロピリデン)−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)]、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2,4’−メチレンビスフェノール、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、ビス(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、テルペンジフェノール、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3,5−ジsec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチルフェニル)エタン、ビス(3−ノニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチル−6−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシ−5−フルオロフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、ビス(3ーフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−(p−フルオロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−(p−フルオロフェニル)メタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラtert−ブチル−4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラフルオロ−4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチルフェニル)エタン、イサチンビスフェノール、イサチンビスクレゾール、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチル−4,4’−ビフェノール、ビス(2ーヒドロキシフェニル)メタン、2,4’−メチレンビスフェノール、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ヒドロキシ−3−アリルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2ーヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)エタン、ビス(2−ヒドロキシ−5−フェニルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、1,2−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチルフェニル)メタン、2,2−ビス(3−スチリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(p−ニトロフェニル)エタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’,5,5’−テトラtert−ブチル−2,2’−ビフェノール、2,2’−ジアリル−4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5,5−テトラメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,4−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−エチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロペンタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9、9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、1,1−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、2,4−ジヒドロキシジフェニルスルホンなどが挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、共重合して用いても良い。
【0022】
上記の二価フェノール化合物の中でも、工業的に入手しやすく、耐熱性や溶剤溶解性に優れている点から、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールC〕、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔TMBPA〕、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン〔ビスフェノールAP〕、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン〔ビスフェノールZ〕および2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン〔ビスフェノールAF〕が好ましく、さらには溶液のハンドリング性の観点からは、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールC〕、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔TMBPA〕が特に好ましく、透明性の観点からは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン〔ビスフェノールAF〕が特に好ましい。
【0023】
本発明のオルガノシロキサン共重合ポリエステル樹脂を構成するポリオルガノシロキサンとして好ましいものは、下記式(2)で示されるオルガノシロキサンが挙げられる。
【0024】
式(2)で示されるポリオルガノシロキサンにおいて、RおよびRは、同一でも異なっていても良く、炭素原子数が1〜12個の脂肪族基または芳香族基であり、R、R、R、R、RおよびRは、同一でも異なっていても良い脂肪族基または芳香族基である。RおよびR10は、炭素原子数が1〜4個の脂肪族基またはアルコキシ基であり、sおよびtはそれぞれ独立した0〜4の整数である。mおよびnはそれぞれ独立した整数であり、m+nは10以上の整数である。
【0025】
【化6】

【0026】
ここでR、Rとして示される2価の脂肪族基としては、直鎖状でも分岐状でも構わないアルキレン基等を挙げることができ、2価の芳香族基としては、p−フェニレン基、m−フェニレン基、ジフェニレン基、ナフチレン基等を挙げることができる。また、R、R、R、R、RおよびRは、メチル基、エチル基またはフェニル基等から選択することができる。
【0027】
上記式(2)に示すオルガノシロキサンとしては、得られるオルガノシロキサン共重合ポリエステル樹脂の溶剤に対する溶解性を良好にさせるため、下記式(6)の構造のものを用いることが最も好ましい。
【0028】
【化7】

【0029】
ここでR、Rとして示される2価の脂肪族基としては、直鎖状でも分岐状でも構わないアルキレン基等を挙げることができ、2価の芳香族基としては、p−フェニレン基、m−フェニレン基、ジフェニレン基、ナフチレン基等を挙げることができる。また、R、R、R、R、RおよびRは、メチル基、エチル基またはフェニル基等から選択することができる。
【0030】
工業的に入手しやすく重合が可能である観点から、オルガノシロキサン中のR、Rとしては下記の構造(4)のいずれかが特に望ましい。
【0031】
【化8】

【0032】
オルガノシロキサン構造のシロキサン単位のブロック長を示す上記式(2)におけるm+nは整数であり、好ましくは10以上250以下、さらに好ましくは30以上200以下、特に好ましくは60以上180以下である。m+nが10未満のときは耐熱性が低下し、250を超えるときは、オルガノシロキサンの粘度増加や溶解性低下のため重合時の原料シロキサン化合物のハンドリング性が低下したり、得られるオルガノシロキサン共重合ポリエステル樹脂の透明性が低下したりすることがある。
【0033】
式(2)で示される繰返し数mで示されるユニットと繰り返す数nで示されるユニットは、同一であっても異なっていても構わない。また、それぞれのユニットはブロック的に繰り返されていても、ランダム的に繰り返されていても構わない。
【0034】
式(2)において、R1またはR2と水酸基は、芳香環を介して隣接しており、そのため得られた高分子鎖は屈曲したものになり、溶融粘度や溶媒に溶かしたときの溶液粘度が低くなり、ハンドリングしやすい。
【0035】
オルガノシロキサンセグメントとポリエステルセグメントとが結合する部分は、−Si−O−C−結合を介してはならず、−Si−C−結合を介する必要がある。これは、−Si−O−C−結合は非常に加水分解を受けやすいためであり、得られるオルガノシロキサン共重合ポリエステルが加水分解しやすくなるため、好ましくない。
【0036】
オルガノシロキサン共重合ポリエステル樹脂中における式(2)で示されるオルガノシロキサン残基の含有するモル比は、0.001モル%以上、10モル%未満であり、好ましくは、0.01モル%以上、5モル%未満であり、特に好ましくは0.1モル%以上1モル%未満である。0.0001モル%未満の場合は、撥水性などシロキサン導入による効果が不十分となることがあり、10モル%以上のときは耐熱性が不足することがある。
【0037】
なお、オルガノシロキサン共重合ポリエステル樹脂中における、上記式(2)で示されるオルガノシロキサン残基の含有量は、好ましくは0.01質量%以上50質量%以下であり、さらに好ましくは0.05質量%以上35質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以上25質量%以下である。0.01質量%未満の場合は、撥水性などシロキサン導入による効果が不十分となることがあり、50質量%を超えるときは耐熱性が不足する場合がある。
【0038】
本発明のオルガノシロキサン共重合ポリエステル樹脂を構成する芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸とイソフタル酸の混合物であり、テレフタル酸とイソフタル酸の混合のモル比率は90/10〜10/90の範囲である。この範囲を外れた場合、オルガノシロキサン共重合ポリエステルを溶媒に溶解させたとき、溶液安定性が悪化するために好ましくない。
【0039】
本発明のオルガノシロキサン共重合ポリエステル樹脂の酸価は、100当量/t以下とすることが好ましく、より好ましくは50当量/t以下であり、最適には30当量/t以下である。酸価が100当量/tを超えると、加水分解しやくなったり、樹脂の絶縁破壊電圧、耐アーク性や誘電率等の電気的特性が悪化したりする傾向があり、さらに、樹脂を溶媒に溶解して塗工液としたときの保存安定性が低下する傾向がある。塗工液の保存安定性が低下すると、時間の経過とともに、白濁したり沈澱、不溶物が生じたり、増粘してゲル化したりして、その結果として均一な被膜が形成できなくなり、被膜の機械特性や電気的特性が低下する場合がある。
【0040】
本発明のオルガノシロキサン共重合ポリエステル樹脂の分子量は、固有粘度(1,1,2,2−テトラクロロエタン中、25℃で測定)を指標として表すことができ、0.10〜2.5dl/gが好ましく、より好ましくは0.15〜2.0dl/gである。固有粘度が0.10dl/g未満では、樹脂の強度が不足する場合がある。一方、固有粘度が2.5dl/gより高いと、高粘度のため取扱いが困難になる傾向がある。樹脂の分子量は、製造に際して、後述する末端封止剤の添加量によって制御することができる。
【0041】
本発明のオルガノシロキサン共重合ポリエステル樹脂を製造する方法としては、界面重合法や溶液重合法などの有機溶媒中で反応させて得る方法、あるいは溶融重縮合などの溶融状態で反応させる方法が挙げられるが、重合性や、得られた樹脂の外観の点から、有機溶媒中での反応、特には低温で反応をおこなうことができる界面重合法によって製造することが最も好ましい。
【0042】
界面重合法とは、水と相溶しない有機溶剤に溶解させた二価カルボン酸ハライドと、アルカリ水溶液に溶解させた二価フェノールとを混合することによってポリエステルを得る重合方法である。界面重合法に関する文献として、W.M.EARECKSON J.Poly.Sci.XL399 1959年や、特公昭40−1959号公報などが挙げられる。界面重合法は溶液重合法と比較すると、反応が速いため、酸ハライドの加水分解を抑えることができ、結果として高分子量の樹脂を得ることができる。
【0043】
界面重合法についてさらに詳細に例示する。まず、水相として、二価フェノールのアルカリ水溶液を調製し、続いて、重合触媒を添加する。次に、有機相として、水と相溶せず樹脂を溶解する有機溶媒に末端フェノールであるオルガノシロキサンを溶解させ、この溶液を先のアルカリ溶液に混合する。一方で、この混合液とは別に、有機溶媒に芳香族ジカルボン酸のハライドを溶解させ、この溶液を先のアルカリ・有機溶媒混合溶液にさらに添加することにより、徐々に重合度を上げ、有機溶媒中にオルガノシロキサン共重合ポリエステル樹脂を合成することが出来る。
【0044】
重合条件としては、好ましくは50℃以下の温度で1時間〜8時間撹拌しながら重合反応をおこなうことによって所望のオルガノシロキサン共重合ポリエステル溶液を得ることができる。
【0045】
界面重合において二価フェノール水溶液を調製する際に用いられるアルカリとしては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどが挙げられる。
【0046】
本発明のオルガノシロキサン共重合ポリエステル樹脂の末端は、一価フェノール、一価酸クロライド、一価アルコール、一価カルボン酸などで封止されていてもよい。そのような末端封止剤として用いられる一価フェノールとしては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、o−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、o−メトキシフェノール、m−メトキシフェノール、p−メトキシフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2−フェニルー2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(「p−(α−クミル)フェノール)」と記すことがある。)2−フェニルー2−(2−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−フェニルー2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパンなどが挙げられ、一価酸クロライドとしては、ベンゾイルクロライド、安息香酸クロライド、メタンスルホニルクロライド、フェニルクロロホルメートなどが挙げられ、一価アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ドデシルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコールなどが挙げられ、一価カルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、フェニル酢酸、p−tert−ブチル安息香酸、p−メトキシフェニル酢酸などが挙げられる。
【0047】
界面重合の重合触媒としては、トリブチルベンジルアンモニウムハライド、テトラブチルアンモニウムハライド、トリメチルベンジルアンモニウムハライド、トリエチルベンジルアンモニウムハライドなどの第四級アンモニウム塩や、トリブチルベンジルホスホニウムハライド、テトラブチルホスホニウムハライド、トリメチルベンジルホスホニウムハライド、トリエチルベンジルホスホニウムハライドなどの第四級ホスホニウム塩が挙げられるが、中でも、重合を促進しやすく、樹脂中に含有する芳香族ジカルボン酸量を300ppm以下にしやすい点で、トリブチルベンジルアンモニウムハライド、テトラブチルアンモニウムハライド、トリブチルベンジルホスホニウムハライド、テトラブチルホスホニウムハライドが好ましい。
【0048】
界面重合における有機相の溶媒としては、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、o−、m−,p−ジクロロベンゼンなどの塩素系溶媒、トルエン、ベンゼン、キシレンなどの芳香族系炭化水素、テトラヒドロフランなどを用いることができる。
【0049】
重合後に得られた樹脂溶液に酢酸を添加し、重合を終了したあと、樹脂溶液を水で繰返し洗浄し、樹脂溶液に含まれるナトリウムやカリウム、および重合触媒などのイオン性成分を除去する。洗浄に使用する水は、酸性であっても、塩基性であっても構わないが、洗浄廃液水が、中性になるまで繰返し洗浄することが望ましい。
【0050】
ここで得られたオルガノシロキサン共重合ポリエステル溶液を、貧溶媒に添加することによりポリマーを析出させる(再沈殿)。ここで用いられる貧溶媒としては、特に限定はされないがメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類やヘキサンなどの炭化水素などが好適に用いられる。析出で得られたポリマー固形分はろ過などで単離し、その後に乾燥させることにより固形分を得ることができる。
【0051】
本願発明のオルガノシロキサン共重合樹脂は、耐熱性を維持しつつ、透明性や柔軟性があり、紫外線による色変化が抑制され、撥水性に優れ、摩擦係数が小さく、電気的特性(絶縁性、誘電特性等)に優れるため、コンデンサ等の電子部品用フィルム、液晶表示装置、プラズマディスプレイ、有機EL用の位相差フィルム、偏光フィルム、反射防止フィルム、視野角拡大フィルム、高輝度フィルム、拡散フィルム、導光フィルム等の光学フィルム、およびそのコート層や積層体、ITO膜等を付与したタッチパネル、微細加工用のベースフィルム、スピーカーなどの音響機器用振動板などに用いることができる。
【0052】
また、溶解性に優れ、溶液粘度が低くハンドリング性に優れるため、溶媒に溶かし塗膜として形成させることができ、電子回路基板、液晶ドライバ、ワイヤーハーネス等の絶縁保護被膜として用いることができる。
【実施例】
【0053】
次に、本発明を実施例、比較例によって具体的に説明する。
【0054】
なお、本願発明のオルガノシロキサン共重合ポリエステル樹脂は、得られた樹脂単独で用いても良いし、または、2種類以上を混合して用いても良い。
また、用いたオルガノシロキサンの式(6)〜式(9)に相当する分子量、m+nの関係を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
上記で得られたオルガノシロキサン共重合ポリエステル樹脂に対して、各種評価を以下の通りでおこなった。
【0057】
1.樹脂特性
(固有粘度)
溶媒として1,1,2,2−テトラクロロエタンを用い、濃度1g/dl、温度25℃の条件で測定した。
(Tg)
樹脂15mgをサンプルとし、DSC(示差走査熱量測定)装置(パーキンエルマー社製DSC7)を用いて昇温速度10℃/分の条件で測定を行い、得られた昇温曲線中のガラス転移に由来する2つの折曲点の温度の中間値を求め、これをガラス転移温度とした。耐熱性の指標として、ガラス転移温度が150℃以上を合格とした。
(酸価)
試験管に樹脂0.15gを精秤し、ベンジルアルコール5mlに加熱溶解した。クロロホルム10mlと前記の樹脂のベンジルアルコール溶液とを混合した後、フェノールレッドを指示薬として加え、撹拌しながら0.1N−KOHベンジルアルコール溶液で中和滴定を行なって酸価を求めた。
(溶解性)
樹脂10質量部に対してシクロヘキサノン90質量部を加え、25℃において24時間攪拌後の溶解状態を観察した。溶解していたものを○、溶解しなかったものを×とした。ここでは、環境負荷の低い塗工液の汎用溶媒であるシクロヘキサノンを用いた。
(溶液粘度)
N−メチルピロリドンを溶媒とし、樹脂固形分15%のポリマー溶液を作製し、25℃での溶液粘度を測定した。ここでは、測定時のポリマー溶液の濃度変化を抑制するため、揮発性の低いN−メチルピロリドンを用いた。
【0058】
2.フィルム特性
上記で得られたオルガノシロキサン共重合ポリエステル樹脂に対して、樹脂15質量部に塩化メチレン85質量部を加えて作製した溶液を用い、PETフィルム上に溶液流延塗布を行い50μmの塗膜を作製した。得られた塗膜について、減圧にて120℃24時間乾燥して、樹脂フィルムを作製した。そして、以下の評価を行なった。ここでは、樹脂の溶解性に優れ、塗膜形成後に溶媒除去を行いやすい塩化メチレンを用いた。
(耐熱性)
50μmの樹脂フィルムより、巾6mm、長さ35mmの切片を切り出し、レオメトリック社製固体粘弾性装置RSA−IIを用いて、−80℃から300℃までを10℃/minで測定(100Hz)し、tanδのピーク温度を求めた。tanδのピーク温度が高いほど、耐熱性が高いことを示し、150℃以上を合格とした。
(全光線透過率)
JIS-K7361に準拠し、日本電色工業製ヘーズメーターを用いて50μmの樹脂フィルム
の全光線透過率を測定した。全光線透過率の数値が大きいほど、透明性が高いことを示す。
(接触角)
JIS R 3257に準拠し、協和界面科学社製接触角計CA−DT・A型を用いて、20℃×50%RHの環境下で、50μmの樹脂フィルムに対し、純水を滴下することで接触角の測定を行った。接触角が大きいほど、撥水性が高いことを示す。
(ブリードアウト評価)
50μmの樹脂フィルムを、100℃×24hrの環境下に放置し、フィルム表面に粘性のあるオイルの存在が確認できたものをブリードアウト評価×とし、確認できなかったものをブリードアウト評価○とした。
【0059】
製造例1
攪拌装置を備えた反応容器中に、二価フェノール成分として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン29.84質量部(99.42モル部)、末端封止剤としてp−tert−ブチルフェノール(PTBP)0.43質量部(2.2モル部)、アルカリとして水酸化ナトリウム15.94質量部、重合触媒としてベンジル−トリ−n−ブチルアンモニウムクロライド(BTBAC)0.56質量部、ハイドロサルファイトナトリウム(SHS)0.16質量部を仕込み、水1000質量部に溶解した(水相)。また、これとは別に、塩化メチレン200質量部に、下記式(7)で示すオルガノシロキサン2.52質量部(0.58モル部)を溶解した(有機相1)。この有機相1を、先に調製した水相中に強攪拌下で添加し、そのまま15℃で30分間攪拌した。
【0060】
【化9】

【0061】
さらに、この有機相1とは別に、塩化メチレン400質量部に、テレフタル酸クロライドとイソテレフタルクロライドの当量混合物であるフタル酸クロライド(モル比50:50)26.98質量部(101.1モル部)を溶解した(有機相2)。この有機相2を、すでに攪拌している水相と有機相1の混合溶液中に強攪拌下で添加し、15℃で2時間重合反応を行った。この後攪拌を停止し、水相と有機相をデカンテーションして分離した。水相を除去した後、新たに塩化メチレン200質量部、純水1000重量部と酢酸を添加して反応を停止し、15℃で30分間攪拌した。この有機相を純水で5回洗浄した後に、有機相をヘキサン中に添加してポリマーを沈殿させ、分離・乾燥後、オルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(P−1)を得た。得られたオルガノシロキサン共重合ポリアリレート(P−1)を1H−NMRにて、組成分析をおこなったところ、得られた重合比率は仕込み比率と同じであることが確認された。その結果を表2に示す。
【0062】
【表2】

【0063】
製造例2
用いるオルガノシロキサンを下記式(8)で示す構造のものとし、仕込み量を表2のようにした以外は製造例1と同様におこない、オルガノシロキサン共重合ポリアリレート(P−2)を得た。その結果を表2に示す。
【0064】
【化10】

【0065】
製造例3
用いるビスフェノールを2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンを等モル量、オルガノシロキサンを上記式(8)で示す構造のものとし、仕込み量を表1の通りとした以外は製造例1と同様におこない、オルガノシロキサン共重合ポリアリレート(P−3)を得た。その結果を表2に示す。
【0066】
製造例4
用いるビスフェノールを2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、オルガノシロキサンを上記式(6)で示す構造のものとし、仕込み量を表1の通りとした以外は製造例1と同様におこない、オルガノシロキサン共重合ポリアリレート(P−4)を得た。その結果を表2に示す。
【0067】
製造例5
用いるビスフェノールを2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、オルガノシロキサンを下記式(9)で示す構造のものとし、仕込み量を表1の通りとした以外は製造例1と同様におこない、オルガノシロキサン共重合ポリアリレート(P−5)を得た。その結果を表2に示す。
【0068】
【化11】

【0069】
製造例6
攪拌装置を備えた反応容器中に、二価フェノール成分として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン31.50質量部(100モル部)、末端封止剤としてp−tert−ブチルフェノール(PTBP)0.46質量部(2.2モル部)、アルカリとして水酸化ナトリウム16.74質量部、重合触媒としてベンジル−トリ−n−ブチルアンモニウムクロライド(BTBAC)0.59質量部、ハイドロサルファイトナトリウム(SHS)0.16質量部を仕込み、水1000質量部に溶解した(水相)。
【0070】
この有機相とは別に、塩化メチレン600質量部に、テレフタル酸クロライドとイソテレフタルクロライドの当量混合物であるフタル酸クロライド(モル当量比50:50)28.32質量部(101.1モル部)を溶解した(有機相)。この有機相を、すでに攪拌している水相中に強攪拌下で添加し、15℃で2時間重合反応を行った。この後攪拌を停止し、水相と有機相をデカンテーションして分離した。後は、製造例1と同様におこない、ポリアリレート(P−6)を得た。その結果を表2に示す。
【0071】
製造例7
用いるビスフェノールを2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、オルガノシロキサンを下記式(10)で示す構造のものとし、仕込み量を表1の通りとした以外は製造例1と同様におこない、オルガノシロキサン共重合ポリアリレート(P−7)を得た。その結果を表2に示す。
【0072】
【化12】

【0073】
実施例1
製造例1で得られたオルガノシロキサン共重合ポリアリレート(P−1)15質量部に対し、塩化メチレン85質量部を加えて作製した溶液を用い、PETフィルム上に溶液流延塗布を行い50μmの塗膜を作製した。得られた塗膜について、減圧にて120℃24時間乾燥して、樹脂フィルムを作製した。そのフィルムにつき、耐熱性、全光線透過率、接触角およびブリードアウト評価をおこなった。その結果を表3に示す。
【0074】
【表3】

【0075】
実施例2〜実施例8
オルガノシロキサン共重合ポリアリレートとして表3に記載のものを用いた
以外は、実施例1と同様におこなった。その結果を表3に示す。
【0076】
比較例1〜比較例2
オルガノシロキサン共重合ポリアリレートとして表3に記載のものを用いた以外は、実施例1と同様におこなった。その結果を表3に示す。
【0077】
比較例3
製造例4で得られたオルガノシロキサン共重合ポリアリレート(P−4)を100質量部、信越化学製シロキサンオイルKF98を10質量部、塩化メチレン900質量部を加えて作製した溶液を用い、PETフィルム上に溶液流延塗布を行い、50μmの塗膜を作製した。得られた塗膜を剥離した後、減圧にて120℃24時間乾燥して、樹脂フィルムを作製した。後は、実施例1と同様に各種評価をおこなった。その結果を表3に示す。
【0078】
実施例1〜8では、オルガノシロキサン成分が共重合されることにより接触角が大きくなり、溶媒に対する溶解性は優れたものであった。ガラス転移温度は高く、乾燥時にブリードアウトは見られず、透明性は高いものであった。
【0079】
比較例1は、オルガノシロキサン成分を共重合しなかったため、接触角が低く、溶媒に対する溶解性も乏しいものであった。比較例2は、共重合するオルガノシロキサンが、本願発明の範囲よりも短いブロック長のシロキサン単位であったため、撥水性は不満足であり、また耐熱性も不十分なものであった。比較例3は、オルガノシロキサンの共重合は行わず、替わりにシリコーンオイルの添加を行ったため、ブリードアウトが見られ、周辺部分へのオイル付着が起こり、樹脂としての適性は不適であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二価フェノール成分と芳香族ジカルボン酸成分を共重合して得られるポリエステルであって、前記二価フェノール成分が下記式(1)および式(2)であり、芳香族ジカルボン酸成分が式(3)で示されるテレフタル酸とイソフタル酸の混合物であり、テレフタル酸とイソフタル酸のモル比率が90/10〜10/90であり、構成成分中の式(1)と式(2)の和に対する式(2)のモル比率が0.001モル%以上、10モル%未満であることを特徴とする共重合ポリエステル樹脂。
【化1】

[式中R1及びR2はそれぞれ独立にハロゲン元素、または炭素原子数1〜9の直鎖状、枝分かれ状もしくは環状の炭化水素基、あるいは芳香族基を表し、p及びqはそれぞれ独立した0〜4の整数である。W1は単結合又は炭素数1〜12の直鎖状、枝分かれ状もしくは環状の炭化水素基であってベンゼン環を含んでいてもよい基を表す。]
【化2】

[式中RおよびRは、それぞれ独立に炭素原子数が1〜12個の脂肪族基または芳香族基であり、R、R、R、R、RおよびRは、同一でも異なっていても良い脂肪族基または芳香族基である。RおよびR10は、炭素原子数が1〜4個の脂肪族基またはアルコキシ基であり、sおよびtはそれぞれ独立した0〜4の整数である。mおよびnはそれぞれ独立した整数であり、m+nは10以上の整数である。]
【化3】

【請求項2】
上記式(2)におけるRおよびR2が、それぞれともに下記構造(4)のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の共重合ポリエステル樹脂
【化4】

【請求項3】
上記式(1)におけるpおよびqが、それぞれともに1以上であることを特徴とする請求項1、2のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂。
【請求項4】
上記式(1)におけるW1が下記構造(5)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂。
【化5】

【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂を成形して得られる成型体、フィルム、コート被膜。































【公開番号】特開2009−46667(P2009−46667A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187122(P2008−187122)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】