説明

オルガノシロキサン樹脂−ポリエン材料

(A)一分子当たり平均してケイ素に結合した水素基を少なくとも2つ有する少なくとも1種のオルガノシロキサン樹脂;(B)一分子当たり平均して少なくとも2つの非芳香族炭素炭素二重結合を有する少なくとも1種のポリエン;及び触媒、を含む組成物。上述した組成物の製造法もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(A)一分子当たり平均してケイ素に結合した水素基を少なくとも2つ有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサン樹脂;(B)一分子当たり平均して少なくとも2つの非芳香族炭素炭素二重結合を有する少なくとも1種のポリエン;及び(C)触媒、を含む組成物に関する。上記組成物の製造法もまた開示される。
【0002】
Si−Hを含有する直鎖ポリシロキサン類、シクロシロキサン類、及び/又は四面体シロキシシラン類をポリエン類と反応させて製造される組成物が以前に記述されている。これらの組成物は特定の有用な性質を有する一方で、高温において、それらは分解する傾向を示し、且つそれらのガラス転移温度(Tg)及びモジュラス値はいずれも高すぎるためにダイ接着剤及びコーティング用途において応力誘起破壊という結果を招くか、又はそれらが低すぎるために、低い接着強度、及び低い耐引っかき性又は耐傷つき性、という結果を招いた。本発明は、ケイ素に結合した水素基を有するオルガノシロキサン樹脂を利用し、これが非芳香族炭素炭素二重結合を有するポリエンと反応した場合には、改善された熱安定性、並びに低い応力のダイ接着用途に対して魅力あるTg及びモジュラスをもつ反応生成物を与える。
【0003】
本発明は、(A)一分子当たり平均してケイ素に結合した水素基を少なくとも2つ有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサン樹脂;(B)一分子当たり平均して少なくとも2つの非芳香族炭素炭素二重結合を有する少なくとも1種のポリエン;及び(C)触媒、を含む組成物に関する。上記組成物の製造法もまた開示される。
【0004】
本発明の一つの態様は、
(A)実験式HSiO(4−a−b−c)/2を有するシロキサン単位を含む少なくとも1種のオルガノシロキサン樹脂(ここで、R及びRは独立に選択された1〜4の炭素原子を含むアルキル基又は6〜8の炭素原子を含むアリール基であり、1.3<(a+b+c)<2.0且つケイ素に結合した水素基が一分子当たり平均で少なくとも2つあるという条件で、添え字a>0、添え字b及びcはそれぞれ0又は正の数である。);
(B)一分子当たり平均して少なくとも2つの非芳香族炭素炭素二重結合を有する少なくとも1種のポリエン;及び
(C)触媒、
を含む組成物である。
【0005】
成分(A)は、実験式(I)HSiO(4−a−b−c)/2を有する単位を含む少なくとも1種のオルガノシロキサン樹脂を含み、ここで、R及びRそれぞれは、独立して選択された1〜4の炭素原子を含むアルキル基又は6〜8の炭素原子を含むアリール基であり、1.3<(a+b+c)<2.0且つケイ素に結合した水素基が一分子当たり平均で少なくとも2つあるという条件で、添え字a>0、添え字b及びcはそれぞれ0又は正の数である。成分(A)は単一のオルガノシロキサン樹脂、又は様々なオルガノシロキサン樹脂の混合物であることができる。
【0006】
ここで用いるように、用語「オルガノシロキサン樹脂」は、RSiO1/2(M単位)、RSiO2/2(D単位)、RSiO3/2(T単位)、及びSiO4/2(Q単位)で表されるシロキサン単位を含むことができる物質を意味し、ここで、オルガノシロキサン樹脂一分子当たり、ケイ素に結合した水素基が平均で少なくとも2つあるという条件で、Rは水素原子、又はR若しくはR基を表す。これらのケイ素に結合した水素基は、オルガノシロキサン樹脂分子内の上記M、D、及び/又はTに存在することができる。それに代わり、これらのケイ素に結合した水素基は、オルガノシロキサン樹脂分子内のM及び/又はD単位に存在することができる。一般には、特定のケイ素原子には、ただ一つの水素原子が結合しているだけである。
【0007】
オルガノシロキサン樹脂一分子当たり、ケイ素に結合した水素基は平均で少なくとも2つある。それに代えて、オルガノシロキサン樹脂一分子当たり、ケイ素に結合した水素基が平均で少なくとも3つある。
【0008】
実験式(I)のR及びRそれぞれは、独立して選択された1〜4の炭素原子を含むアルキル基又は6〜8の炭素原子を含むアリール基である。R及びRで表される前記アルキル基及びアリール基は、ハロゲン原子で置換されることも、無置換であることもできる。R及びRで表されるアルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、クロロメチル、及びシクロブチルが含まれる。R及びRで表されるアリール基の例には、フェニル、ベンジル、及びトリルが含まれる。それに代わり、R及びRの60モル%より多くが、1〜4の炭素原子を含むアルキル基から独立して選択される。それに代わり、R及びRの75モル%より多くがメチル基である。
【0009】
a+b+cの合計が1.3<(a+b+c)<2の範囲内であるという条件で、添え字a>0、及び実験式(I)の添え字b及びcはそれぞれ0又は正の数である。成分(A)に対する(a+b+c)のこの範囲は、単位の全体混合物が特定した範囲内にあるという条件で、M、D、T、及びQ単位の様々な混合物を可能にする。それに代わり、a+b+cの合計は、1.5<(a+b+c)<1.8の範囲内にあることができる。
【0010】
成分(A)のオルガノシロキサン樹脂は、ヒドロシリル化を妨害しないという条件で、分子内に存在するヒドロキシ基及び/又はアルコキシ基を有することができる。それに代わり、オルガノシロキサン樹脂のヒドロキシ及びアルコキシ含有量は、両者とも6質量%未満である。
【0011】
本発明において有用なオルガノシロキサン樹脂は、当技術分野で周知の方法によって製造されうる。例えば、オルガノシロキサン樹脂は、酸で触媒されたアルコキシシラン類の加水分解性重縮合によって製造されうる。
【0012】
成分(B)は、一分子当たり平均で、少なくとも2つの非芳香族炭素炭素二重結合を有する少なくとも1種のポリエンを含む。成分(B)は単一のポリエン又は様々なポリエンの混合物であることができる。
【0013】
本発明で有用なポリエンは、一分子当たりに、平均で少なくとも2つの非芳香族炭素炭素二重結合を含む化合物である。それに代わり、ポリエンは、一分子当たり、2〜4の非芳香族炭素炭素二重結合を含む化合物である。ポリエンはモノマー構造又は最大100の繰り返し単位を有するオリゴマー構造をもつことができる。ポリエンは、環構造内に位置する、側鎖として結合した、又は両方の、非芳香族炭素炭素二重結合を有する環式又は多環式であることができる。ポリエンは一般に炭化水素であるが、酸素及び窒素を含むがこれらに限定されない他の原子を含むポリエンもまた用いられることができる。
【0014】
有用な環式ポリエンの例には、シクロブタジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン、及びN,N’−p−フェニレンビスマレイミドなどのビスマレイミド類、が含まれる。
【0015】
有用な多環式ポリエンの例には、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、及びテトラシクロペンタジエンなどのシクロペンタジエンオリゴマー、ノルボルナジエンダイマー、ジメタノヘキサヒドロナフタレン、ビシクロヘプタジエン(すなわち、ノルボルナジエン)及びそれとシクロペンタジエンとのDiels-Alderオリゴマー(例えば、ジメタノヘキサヒドロナフタレン)、及びそれらいずれかの置換誘導体、例えば、メチルジシクロペンタジエン類、が含まれる。
【0016】
決定的に重要ではないが、本発明の組成物は、成分(A)の100質量部当たり、10〜75質量部の成分(B)を含む。それに代わり、本発明は同じ基準に基づいて、20〜50部の成分(B)を含む。成分(B)のポリエン類は購入可能であるか、又は当技術分野で公知の方法によって作られることができる。
【0017】
もちろん、架橋が生じるためには、成分(A)の一分子当たりの、ケイ素に結合した水素の平均数及び成分(B)の一分子当たりの炭素炭素二重結合の平均数の合計が、4より大きくなければならないことが一般的に理解される。成分(A)内のケイ素に結合した水素基と、成分(B)内の炭素炭素二重結合との比は、1:0.5〜1:1.5であることができる。それに代わり、成分(A)内のケイ素に結合した水素基と、成分(B)内の炭素炭素二重結合との比は、1:0.8〜1:1.2であることができる。
【0018】
本発明で有用なポリエンは、一分子当たり平均で、少なくとも2つの非芳香族炭素炭素二重結合を有する。所望する組成物にもよるが、ポリエンは、非常に類似した反応性を有するか又は化学的に区別可能な反応性を有する少なくとも2つの非芳香族炭素炭素二重結合をもつことができる。ここで用いるように「非常に類似した反応性」とは、類似した反応条件下で且つ同じ速度で、非芳香族炭素炭素二重結合(場合により複数)が、オルガノシロキサン樹脂上のケイ素に結合した水素基とのヒドロシリル化反応を受けることを意味する。同様にここで用いるように、用語「化学的に区別可能な反応性」とは、ポリエン分子内の少なくとも2つの非芳香族炭素炭素二重結合がヒドロシリル化において非常に異なる反応速度を有し、そして、あるポリエン分子の1つ以上の二重結合が、そのポリエン分子の他の二重結合が実質的に反応する前に、オルガノシロキサン樹脂上のケイ素に結合した水素とのヒドロシリル化を受けることを意味する。
【0019】
ポリエンが、一分子当たり、非常に類似した反応性を有する少なくとも2つの非芳香族炭素炭素二重結合を含む場合は、その二重結合は歪みのある多環式脂肪族環構造内の2つの橋頭位の隣か、又は歪んだ環構造(例えば、シクロブタジエン環)内に発見されうる。非常に類似した反応性をもつ少なくとも2つの非芳香族炭素炭素二重結合を有するポリエンの例には、5−ビニル−2−ノルボルネン、o−、m−、又はp−ジイソプロペニルベンゼン、o−、m−、又はp−ジビニルベンゼン、ジアリルベンゼン、ジメタノヘキサヒドロナフタレン、及びトリシクロペンタジエンの対称な異性体、が含まれる。
【0020】
それに代わり、ポリエンが、化学的に区別可能な反応性を有する少なくとも2つの非芳香族炭素炭素二重結合を含む場合は、反応性二重結合は、歪みのある多環式脂環式構造内の2つの橋頭位の隣か又は歪みのある環構造(例えば、シクロブタジエン環)内のいずれかに発見されうる。その他の炭素炭素二重結合(場合により複数)は、いずれかの他の非芳香族の、1,2−二置換非共役炭素炭素二重結合であることができ、その二重結合は、歪みのある多環式脂肪族環構造内の2つの橋頭位の隣でも、歪んだ環構造(例えば、シクロブタジエン環)でもない。化学的に区別可能な反応性を有するポリエンの例は、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエンの非対称の異性体、及びメチルジシクロペンタジエン、である。
【0021】
化学的に区別可能な反応性を有する少なくとも2つの非芳香族炭素炭素二重結合を含むポリエン類を用いることの利点は、「プレポリマー組成物」が形成可能なことである。このプレポリマー組成物はプレポリマー及び触媒を含み、これは次に、後で、高められた温度などの反応条件(これがより低い反応性の非芳香族炭素炭素二重結合を反応させる)を利用することによってさらに反応させることができる。ここで用いるように、「プレポリマー」の語は、成分(A)及び(B)(及びいずれかの反応性任意成分)の部分反応物を意味し、さらに厳しい反応条件を適用した場合にこれが次に高分子量へと反応し又は硬化した組成物へと架橋することができる。
【0022】
成分(C)は、ヒドロシリル化反応に典型的に用いられるいずれかの触媒を含む。白金族金属含有触媒を用いることが好ましい。「白金族」により、それは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金、並びにそれらの錯体を意味する。本発明の組成物を調製するのに有用な白金族金属含有触媒には、Willingの米国特許第3,419,593号明細書、及びBrownらの米国特許第5,175,325号明細書によって記述されたように調製される白金錯体が含まれ、これら特許のそれぞれをそのような触媒及びそれらの調製を示すために本願に援用する。有用な白金族金属含有触媒のその他の例は、Leeらの米国特許第3,989,668号明細書;Changらの米国特許第5,036,117号明細書;Ashbyの米国特許第3,159,601号明細書;Lamoreauxの米国特許第3,220,972号明細書;Chalkらの米国特許第3,296,291号明細書;Modicの米国特許第3,516,946号明細書;Karstedtの米国特許第3,814,730号明細書;及びChandraらの米国特許第3,928,629号明細書に発見することができ、有用な白金族金属含有触媒及びそれらの調製法を示すためにこれらの全てを本願に援用する。白金が選択した金属である場合、触媒は白金金属、シリカゲル又は粉末炭などの担体上に担持させた白金金属、又は白金族金属の化合物又は錯体であることができる。それに代わり、触媒は、6水和物形態又は無水形態のいずれかの塩化白金酸、及び塩化白金酸をジビニルテトラメチルジシロキサンなどの脂肪族不飽和オルガノシリコン化合物と反応させることによって得られる触媒、又は2001年12月7日に出願された米国特許出願第10/017229号に記載されているアルケン−白金−シリル錯体、例えば、(COD)Pt(SiMeCl(ここでCODは1,5−シクロオクタジエン及びMeはメチルである。)、を含むことができる。これらのアルケン−白金−シリル錯体は、例えば、0.015モルの(COD)PtClを0.045モルのCOD及び0.0612モルのHMeSiClと混合することによって調製することができる。
【0023】
触媒の適当な量は、用いる具体的な触媒に左右される。白金触媒はそれぞれの場合に、成分(A)及び(B)の合計質量に基づいて、少なくとも1ppm(百万分の1)、それに代えて2〜200ppmを提供できる充分な量で存在させうる。触媒は単一種又は2以上の異なる種類の混合物として添加されうる。
【0024】
本発明の組成物はさらに(D)少なくとも1種の阻害剤を含むことができる。この任意の成分(D)は、白金族金属含有触媒の触媒活性を阻害するために用いられることが知られているか又は用いられることができるいずれかの物質であることができる。ここで用いるように、「阻害剤」の語は、室温では触媒の活性を抑制するけれども、いくらか高くした温度においては触媒の性質を妨害しない物質を意味する。通常、阻害剤は、最終の硬化段階の前のいずれかの時に添加されることができる。それに代えて、非芳香族の、種々の反応性をもつ炭素炭素二重結合を有するポリエンを用いる場合、阻害剤はプレポリマーが形成される後に添加されることができ、それにより最終硬化条件が適用されるまで、プレポリマーをよりいっそう貯蔵時安定にする。適当な阻害剤には、エチレン性又は芳香族性不飽和アミド類、アセチレン化合物類、シリル化アセチレン化合物類、エチレン性不飽和イソシアネート類、オレフィンシロキサン類、不飽和炭化水素モノエステル及びジエステル類、共役エン−イン類、ヒドロパーオキシド類、ニトリル類、及びジアジリジン類、が含まれる。
【0025】
アセチレンアルコールの例には、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、2−メチル−3−ブチン−2−オール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール、2−エチニル−イソプロパノール、2−エチニル−ブタン−2−オール、及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール;トリメチル(3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オキシ)シラン、ジメチル−ビス−(3−メチル−1−ブチン−オキシ)シラン、メチルビニルビス(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)シラン、及び((1,1−ジメチル−2−プロピニル)オキシ)トリメチルシランによって例示されるシリル化アセチレンアルコール類、が含まれる。不飽和カルボン酸エステル類の例には、ジアリルマレート、ジメチルマレート、ジエチルフマレート、ジアリルフマレート、及びビス−2−メトキシ−1−メチルエチルマレート、モノ−オクチルマレート、モノ−イソオクチルマレート、モノ−アリルマレート、モノ−メチルマレート、モノ−エチルフマレート、モノ−アリルフマレート、及び2−メトキシ−1−メチルエチルマレート、が含まれる。共役エン−インの例には、2−イソブチル−1−ブテン−3−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3−メチル−3−ヘキセン−1−イン、1−エチニルシクロヘキセン、3−エチル−3−ブテン−1−イン、及び3−フェニル−3−ブテン−1−イン、オレフィンシロキサン類の例には、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、及び上述した共役エン−イン及び上述したビニルシクロシロキサンの混合物が含まれる。
【0026】
それに代わり、有用な阻害剤には、ジアリルマレート、ビス−2−メトキシ−1−メチルエチルマレート、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールが含まれる。
【0027】
本発明に用いる場合、成分(A)、(B)、及び(C)の合計質量を基準にして0.03〜10質量部の阻害剤が添加されることができる。阻害剤は、単一種又は1以上の異なる種の混合物として添加されることができる。
【0028】
本発明の組成物はまた、(E)通常、強靱性を改善するために添加される少なくとも1種の強化性化合物、を含むことができる。有用な強化性化合物の例には、100,000未満の分子量をもつ炭化水素エラストマー類、50,000未満の分子量をもつシロキサンエラストマー類、及びRSiO1/2(M単位)及びSiO4/2(Q単位)を有するシリケートベースのシロキサン樹脂(ここで、R基は一価の炭化水素基又は水素原子から独立して選択される)が含まれる。
【0029】
有用な炭化水素エラストマー類の例には、低分子量エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー類、低分子量ブチルゴム、部分水素化された低分子量ポリイソプレン又は天然ゴム、及び部分水素化された低分子量ポリブタジエン又はスチレン−ブタジエンコポリマー、が含まれる。
【0030】
有用なシロキサンエラストマー類の例には、低分子量ビニル又はSiH末端のポリジメチルシロキサン、ポリジメチル/ジフェニルシロキサン、又はポリジメチル/フェニルメチルシロキサンコポリマー類、が含まれる。
【0031】
有用なシリケートベースのシロキサン樹脂の例には、0.6〜0.9:1のM:Q比をもつMQ樹脂が含まれ、ここでMは主にトリメチルシロキシ基からなる。
【0032】
本発明の組成物に用いる場合、成分(A)、(B)、及び(C)の合計質量を基準にして、1〜25質量部の強化性化合物が添加されうる。強化性化合物は、最終の硬化段階前のいずれかの時に、組成物に添加されることができる。強化性化合物は単一種又は2以上の異なる種の混合物として添加されることができる。
【0033】
本発明の組成物はまた、(F)少なくとも1種のフィラー、を含むことができる。有用なフィラー類は、カーボンブラック、バーミキュライト、マイカ、ウォラストナイト、炭酸カルシウム、シリカ、溶融シリカ、ガラス球体、ガラスビーズ、ガラス粉末、ガラスフレーク、ガラスくず、及び、米国特許第4,900,779号明細書及び同4,902,731号明細書に記載されているものなどの繊維強化材、が含まれる。典型的な繊維強化材には、チョップト・ガラス、ガラス織物、不織ガラス、及びその他の複合材繊維、例えばセラミック、炭素(例えば、グラファイト)、金属、及び合成高分子繊維、が含まれるがこれらに限定されない。フィラー類は、強化のためか又は組成物のコスト低減のための増量剤としてか、いずれかで役立ちうる。
【0034】
本発明の組成物に用いる場合、フィラーは、成分(A)、(B)、及び(C)の合計質量を基準にして、5〜50質量部の量で存在しうる。フィラーは、最終硬化段階前のいずれかの時に、組成物に添加されることができる。それに代わり、プレポリマーが形成される場合は、フィラーはプレポリマーが形成される後、且つ最終の硬化段階前に添加されることができる。フィラーは単一種又は2以上の異なる種類の混合物として添加されることができる。
【0035】
組成物の特性が著しく低下されないという条件で、その他の追加の成分もまた添加されうる。そのような成分の例には、抗酸化剤、UV安定化剤、フリーラジカル捕捉剤、並びに流動及びレベリング添加剤、が含まれる。
【0036】
組成物が硬化する場合に、ケイ素に結合した水素及び/又は炭素炭素二重結合の全て又は実質的に全てが反応して網目を形成するように、成分(A)及び(B)が選択されうる。この網目は一般に熱硬化材料であり、それはもはや溶媒に溶けず且つ固体のガラス又はエラストマーの形態である。成分(B)に存在する炭素炭素二重結合が化学的に異なる反応性をもつ場合は、より反応性の高い炭素炭素二重結合をSi−H含有オルガノシロキサン樹脂と穏やかな条件下で反応させることによってプレポリマー組成物が調製されることができ、その後、そのプレポリマーは、より厳しい温度条件が適用されてヒドロシリル化反応が完結し、硬化材料をもたらすまで、なお活性な触媒とともに液体又は熱可塑性固体形態で貯蔵されることができる。本発明として権利主張された組成物は、成分として上記構成要素を含有する組成物、並びに上記構成要素の反応生成物を含有する組成物を含むことが理解される。
【0037】
本発明の別な態様は、以下のステップ:
(i) 以下の:
(A)実験式(I)HSiO(4−a−b−c)/2を有するシロキサン単位を含む少なくとも1種のオルガノシロキサン樹脂(ここでR及びRのそれぞれは、独立して選択された、1〜4の炭素原子を含むアルキル基又は6〜8の炭素原子を含むアリール基であり、1.3<(a+b+c)<2.0且つケイ素に結合した水素基が一分子当たり平均で少なくとも2つあるという条件で、添え字a>0、且つ添え字b及びcはそれぞれ0又は正の数である。);
(B)一分子当たり平均で少なくとも2つの非芳香族炭素炭素二重結合を有する少なくとも1種のポリエン;及び
(C)触媒
を含む材料を混合すること、
を含む上述した組成物の製造方法である。
【0038】
反応条件及び炭素炭素二重結合の反応性に応じて、上述した成分が反応し、そして得られる反応生成物は、プレポリマー組成物又は硬化された組成物を含むことができる。化学的に区別可能な反応性を有する炭素炭素二重結合を含む少なくとも1種のポリエンを用いた場合、2以上のステップで、硬化した組成物もまた形成されうる。
【0039】
さらなる態様は以下のステップ:
(i) 以下の:
(A)実験式(I)HSiO(4−a−b−c)/2を有するシロキサン単位を含む少なくとも1種のオルガノシロキサン樹脂(ここでR及びRのそれぞれは、独立して選択された、1〜4の炭素原子を含むアルキル基又は6〜8の炭素原子を含むアリール基であり、1.3<(a+b+c)<2.0及びケイ素に結合した水素基が一分子当たり平均で少なくとも2つあるという条件で、添え字a>0、且つ添え字b及びcはそれぞれ0又は正の数である。);
(B)一分子当たり平均で少なくとも2つの化学的に区別可能な反応性をもつ非芳香族炭素炭素二重結合を有する少なくとも1種のポリエン;及び
(C)触媒
を含む材料を混合すること、
を含むプレポリマー組成物の製造方法である。
【0040】
本発明のさらなる態様は、以下のステップ:
(i) 以下の:
(A)実験式(I)HSiO(4−a−b−c)/2を有するシロキサン単位を含む少なくとも1種のオルガノシロキサン樹脂(ここでR及びRのそれぞれは、独立して選択された、1〜4の炭素原子を含むアルキル基又は6〜8の炭素原子を含むアリール基であり、1.3<(a+b+c)<2.0及びケイ素に結合した水素基が一分子当たり平均で少なくとも2つあるという条件で、添え字a>0、且つ添え字b及びcはそれぞれ0又は正の数である。);
(B)一分子当たり平均で少なくとも2つの化学的に区別可能な反応性をもつ非芳香族炭素炭素二重結合を有する少なくとも1種のポリエン;及び
(C)プレポリマー組成物を形成するための触媒
を含む材料を混合すること;そして次に、
(iii) 上記プレポリマー組成物を加熱して、硬化した組成物を形成すること、
を含む硬化された組成物の製造方法である。
【0041】
成分(A)、(B)、及び(C)は上述した通りである。混合はいずれかの従来法、例えば、丸底フラスコ内にテフロン(登録商標)のへら(パドル)を有するモーター駆動の撹拌棒、又は、磁石式撹拌プレートによって駆動される、丸底フラスコ内の磁石式撹拌棒、によって行われうる。上記プレポリマー組成物を硬化させるために必要な条件は、用いた成分に応じて変動するが、通常は、残りの炭素炭素二重結合が反応することを確実にするための時間及び温度で加熱されることを必要とし、例えば、100℃〜300℃で10分〜10時間である。それに代えて、上記プレポリマーは、150℃〜250℃で0.5〜7時間加熱されることができる。これらの方法によって形成されたプレポリマー組成物は、直ちに使用されるか又は使用前に貯蔵されることができる。プレポリマー組成物が後日さらに反応される場合、代わりの方法は、ステップ(ii)プレポリマー組成物を安定化するための阻害剤を添加すること、を含むことができる。
【0042】
上記プレポリマー組成物は、一成分型接着剤、密封材、又はコーティング材として有用であり、これは液体として適用又は成形されることができ、そして次に高められた温度で熱硬化性材料に硬化されることができる。この材料は硬化の間に副生成物を放出しないために、薄い及び厚い断面の用途が達成されうる。成分(A)について上述したオルガノシロキサン樹脂を用いることによって熱硬化性材料を調製することができ、これは、厳しい条件下で少ない質量減少しか有さず、そしてまたエレクトロニック及び高温コーティング用途に対して魅力的である。
【0043】
以下の例はさらなる教示を開示するが、添付した請求項によって適切に示された本発明を制限するものではない。ここで用いるように、Meはメチルを意味し、Phはフェニルを意味する。
【0044】
〔試験方法〕
ケイ素‐29核磁気共鳴分光法(29SiNMR):
溶液状態の29SiNMR分光法を、79.458MHzに調整した16mmのSiフリープローブを有するバリアン(Varian)400MHz−NMR分光計で実施した。試験においては、ゲート・デカップリング、90°パルス幅、及び7.60秒の緩和遅延時間(at=1.6s, dl=6.0s)を用いた。サンプルは、0.02Mのクロム(II)アセチルアセトナートを用い、CDCl中約33体積%又はC中約75体積%で調製した。ケミカルシフトは、0.0ppmのテトラメチルシランのピーク(外部標準)を基準にして報告した。64〜512トランジェントはシグナル平均した。
【0045】
不揮発性成分含有量(NVC):
2インチ直径のアルミニウム秤量皿内の1.5gの材料サンプルを、150℃の強制空気オーブン中に1時間置き、次に再秤量した。初めのサンプルのパーセント割合としての残存物の量を、NVCとして報告する。
【0046】
動的機械的熱分析(ダイナミック・メカニカル・サーマル・アナリシス(DMTA)):
動的機械的熱分析は、直角のねじり固定具を取り付けられたReometric Scientific RDAIIを用いて実施した。直角試験の試験片は、厚さが1.4〜1.6mmの範囲であり、幅は6〜7mmであり、そして自由長は24〜28mmとなるように切断した。1Hzの動的周波数及び2℃/分の加熱速度を適用した。線形粘弾性を測定するために適当な歪度を決定するための開始温度(−102℃)で歪み掃引を行った;動的歪みは0.012〜0.040%の範囲であった。自動歪み(5%増分)及び自動張力オプションを使用した。用具の伸長は2.12μm/℃を基準とした。動的機械特性は、−100〜250℃の温度範囲にわたる一回の加熱サイクルを用いて測定した。25℃におけるシェア・ストーレッジ・モジュラス(G’)、及びプラトー・モジュラス(G)の両方を記録した(G’はガラス転移温度より約50℃高い温度で測定した)。
【0047】
熱重量分析(TGA):
熱重量分析は、TAインスツルメンツTGA2950を使用して行った。約7〜12mgの試験試料の単一片をPt皿内に置き、空気雰囲気下で、10℃/分で1000℃まで加熱した。二回の分析を基に、不確実さは±5%と見積もった。250℃、500℃、750℃、及び1000℃での一回の加熱スキャンで測定された%重量損失を記録した。
【0048】
〔樹脂の調製〕
樹脂A:
フェニルトリメトキシシラン(2379.5g)、メチルトリメトキシシラン(1634.6g)、及びトリフルオロメタンスルホン酸(2.3g)をフラスコに仕込んだ。脱イオン水(500.9g)を滴下して加えた。揮発成分(282g)を蒸留で除去し、次に反応混合物を46℃に冷却した。テトラメチルジシロキサン(1316.4g)を19分間にわたって加え、次に酢酸(588.6g)を9分間にわたって加えた。混合物を3時間にわたり50℃に加熱し、その後、揮発成分(754.4g)を蒸留により〜70℃で除去した。57℃に冷却後、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(3000g)及びヘプタン(1800g)を加え、そして混合物を1時間撹拌した。水層を底の抜き出しバルブから除去し、そして有機層を脱イオン水(3×2400mL)で洗浄し、次に溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。濾過により3385gの透明な、無色液体が得られた。NVC(1.5g/Al皿/150℃/1時間):95.8%。29SiNMRは、0.031モルOMe/モルSi、及び0.012モルOH/モルSiをもつ、(MeHSiO1/20.4(MeSiO3/20.3(PhSiO3/20.3の組成を示した。(a+b+c)の値、及び4未満の炭素基(<C)を有するR及びR基モル%を、表1に記した。
【0049】
樹脂B:
メチルトリメトキシシラン(3269.3g)、及びトリフルオロメタンスルホン酸(2.6g)をフラスコに仕込んだ。脱イオン水(432.4g)を18分間にわたって滴下して加えた。揮発成分(876.9g)を蒸留で除去し、次に反応混合物を40℃に冷却した。テトラメチルジシロキサン(1612.0g)を11分間にわたって加え、次に脱イオン水(216.2g)を4分間にわたって加えた。混合物を2時間にわたり50℃に加熱し、次に常温で〜16時間撹拌し、その後、揮発成分(806g)を蒸留により〜70℃で除去した。45℃に冷却後、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(3000g)及びヘプタン(1800g)を加え、そして混合物を常温で1時間撹拌した。水層を底の抜き出しバルブから除去し、そして有機層を脱イオン水(3×2000mL)で洗浄し、次に溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。濾過により2461.5gの透明な、無色液体が得られた。NVC(1.5g/Al皿/150℃/1時間):74.9%。29SiNMRは、0.056モルOMe/モルSi、及び0.016モルOH/モルSiをもつ、(MeHSiO1/20.42(MeSiO3/20.58の組成を示した。(a+b+c)の値、及び4未満の炭素基(<C)を有するR及びR基モル%を、表1に記した。
【0050】
樹脂C:
テトラメチルジシロキサン(16部)及び脱イオン水(8部)を反応器に仕込んだ。濃塩酸(5.35部)を反応器にゆっくり加え、次にメタノール(0.65部)を加えた。テトラメトキシシラン(20部)を混合物にゆっくり加え、続いて追加の脱イオン水(16.7部)を加えた。この混合物を5分間撹拌した。底のシロキサン層を除去し、そしてヘキサン(16.67部)を反応器に加えた。水層を除去した。上記シロキサン及びヘキサン層を混合し、そして追加の脱イオン水(16.67部)で洗浄し、次に減圧下に蒸留で全ての揮発成分を除去して生成物を得、この生成物は29NMRにより、合計レベルで0.039モルOH及びOMe/モルSiを含む(MeHSiO1/20.63(SiO4/20.37であることが示された。
【0051】
樹脂D:
メチルトリメトキシシラン(118.1g)及びトリフルオロメタンスルホン酸(0.06g)をフラスコに仕込んだ。脱イオン水(15g)を速やかに加え、次にこの混合物を30分間、加熱して還流した(68℃)。反応混合物を50℃に冷却し、その後テトラメチルジシロキサン(23.2g)及びメチルヒドリドシクロシロキサン(17.4g)を速やかに加え、次に脱イオン水(8.3g)を添加した。この混合物を短時間加熱して還流させ、次に50℃で1.3時間撹拌した。カプロラクタム(0.005g)を加え、そして混合物を常温で30分間撹拌した。トルエン(120g)を加え、次に揮発成分(〜135mL)を蒸留で除去し、そして追加のトルエン(〜135mL)で置換した。有機層を除去し、そして有機層を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(100mL)及び脱イオン水(3×100mL)で洗浄した。残存する水は共沸によって除去し、次に溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。濾過により92.1gの透明な無色液体が得られた。29NMRは、0.113モルOMe/モルSi、及び0.009モルOH/モルSiをもつ(MeHSiO1/20.17(MeHSiO2/20.21(MeSiO3/20.62の組成を示した。(a+b+c)の値、及び4未満の炭素基(<C)を有するR及びR基モル%を、表1に記した。
【0052】
樹脂E:
フェニルトリメトキシシラン(4752g)及びトリフルオロメタンスルホン酸(2.2g)をフラスコに仕込んだ。脱イオン水(500.9g)を7.5分間にわたって加えた。揮発成分(1105.1g)を蒸留で除去し、次に反応混合物を45℃に冷却した。テトラメチルジシロキサン(1316.4g)を23分間にわたって加え、次に酢酸(588.6g)を8.3分間にわたって加えた。この混合物を50℃に3時間加熱し、次に常温で〜16時間撹拌し、その後、揮発成分(653.8g)を〜70℃で蒸留によって除去した。57℃に冷却後、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(3000g)及びヘプタン(1800g)を加え、そして混合物を常温で1時間撹拌した。水層を除去し、そして有機層を脱イオン水(3×3600mL)で洗浄し、次に溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。濾過により4050.3gの透明な無色液体が得られた。NVC(1.5g/Al皿/150℃/1時間):99.4%。29SiNMRは、0.020モルOMe/モルSi、及び0.058モルOH/モルSiをもつ、(MeHSiO1/20.4(PhSiO3/20.6の組成を示した。(a+b+c)の値、及び4未満の炭素基(<C)を有するR及びR基モル%を、表1に記した。
【0053】
樹脂F:
テトラメチルジシロキサン(301.7g)及び脱イオン水(199.8g)をフラスコに仕込み、氷/水浴中で冷却した。追加のテトラメチルジシロキサン(301.7g)及びテトラクロロシラン(95.7g)を24分間にわたって滴下して加えた。氷浴を取り除き、そして混合物を30分間撹拌した。この混合物を分液ロートに移し、そして水層を除去した。有機層を、脱イオン水、飽和重炭酸ナトリウム水溶液、脱イオン水、及びさらなる重炭酸ナトリウム溶液(各200mL)で交互に洗浄し、次に硫酸マグネシウム上で乾燥し、そして濾過した。生成物の蒸留(1.5mmHgで99〜100℃)により、透明な無色液体の中間留分(74.5g)を得、これはGC−FIDによって99.8エリア%の所望の生成物であることがわかった。29SiNMRは、>99%純度の(MeHSiO1/20.8(SiO4/20.2を示した。(a+b+c)の値、及び4未満の炭素基(<C)を有するR及びR基モル%を、表1に記した。
【0054】
樹脂G:
メチルトリメトキシシラン(495.8g)、テトラメチルジシロキサン(545.4g)、及び0.92gのトリフルオロメタンスルホン酸をフラスコに仕込んだ。水の添加速度及び氷浴による冷却とにより、フラスコ温度を〜50℃に保ちながら、404.7gの脱イオン水を加えた。40分間の添加に続いて、反応混合物を50℃に3時間保った。CaCO(0.4g)を加えた;反応は室温で一晩中撹拌して行った。水層を除去した。有機層に60gの脱イオン水及び100gのトルエンを加え、125℃の温度に加熱することによって揮発成分を除去した。収量=715.8g。生成物は透明な無色液体だった。29SiNMRは、(MeHSiO1/20.68(MeSiO3/20.32の組成を示した。13CNMRにより、生成物は0.03モルOMe/モルSi、及び0.02モルOH/モルSiを有すると決定した。(a+b+c)の値、及び4未満の炭素基(<C)を有するR及びR基モル%を、表1に記した。
【0055】
樹脂H:
フェニルトリメトキシシラン(243.9g)、メチルトリメトキシシラン(336.6g)、及びトリフルオロメタンスルホン酸(0.29g)をフラスコに仕込んだ。脱イオン水(43.2g)を撹拌しながら速やかに添加した。揮発成分(113.7g)を蒸留により除去し、次に反応混合物を62℃に冷却した。テトラメチルジシロキサン(423.1g)を加え、次に酢酸(189.2g)を加えた。混合物を50〜55℃に3時間加熱し、その後、揮発成分(259g)を蒸留により除去した。ヘプタン(914g)及び飽和重炭酸ナトリウム水溶液(350g)を加え、そして混合物を30分間撹拌した。水層を除去し、そして有機層を脱イオン水(3×200mL)で洗浄し、次に、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過した。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、603.8gの透明な無色の低粘度液体を得た。NVC(1.5g/Al皿/150℃/1時間):31.9%。29SiNMRは、0.044モルOMe/モルSi、及び0.009モルOH/モルSiをもつ、(MeHSiO1/20.59(MeSiO3/20.27(PhSiO3/20.14の組成を示した。(a+b+c)の値、及び4未満の炭素基(<C)を有するR及びR基モル%を、表1に記した。
Si−H環式化合物:テトラメチルシクロテトラシロキサン
Si−H直鎖化合物:ダウ・コーニング(登録商標)5−0210液、直鎖メチルハイドロジェンシロキサンポリマー
【0056】
例1:
16mgの塩化白金酸及び29.2gのジシクロペンタジエンを酸素のない条件下でフラスコに仕込んだ。フラスコの内容物を、Nシール下で撹拌しながら60℃に30分間穏やかに加熱した。100gの樹脂A(〜1:1モル Si−H:C=C)をフラスコに速やかに加え、そして添加終了後3分で149℃までの発熱が観測された。128.89gの淡黄色の透明な高粘度オイルが得られた。このオイルは、29SiNMRによって、(MeHSiO1/20.15(MeRSiO1/20.22(MeSiO3/20.31(PhSiO3/20.32(ここでRはジシクロペンタジエンのモノヒドロシリル化生成物を表す。)で表される平均組成を有するアルケニル官能性物質であると決定された。
【0057】
このアルケニル官能性物質を、流れることを助けるために穏和な加熱を適用して、テフロン(登録商標)型中に注いだ。この物質を真空オーブン中、65℃で19時間の間、脱気した。オーブンはNガスを用いて大気圧に戻し、そして試料は150℃で4時間及び200℃で2時間硬化させ、続いて環境条件までゆっくり冷却した。透明な淡黄色の強靱なガラス様の厚板が得られた。この材料を動的機械的熱分析(DMTA)及び熱重量分析(TGA)を用いて評価した。結果は表2に見ることができる。
【0058】
例2:
9mgの塩化白金酸及び32.95gのジシクロペンタジエンを酸素のない条件下でフラスコに仕込んだ。フラスコの内容物を、Nシール下で撹拌しながら、60℃に1時間穏やかに加熱した。82.27gの樹脂B(〜1:1モル Si−H:C=C)を添加ロートからフラスコに速やかに加えた。添加終了後3分で137℃までの発熱が観測された。115.0gの淡黄色の透明なオイルが得られた。このオイルは、29SiNMRによって、(MeHSiO1/20.21(MeRSiO1/20.21(MeSiO3/20.58(ここでRはジシクロペンタジエンのモノヒドロシリル化生成物を表す。)で表される平均組成を有するアルケニル官能性物質であると決定された。
【0059】
このアルケニル官能性物質をテフロン(登録商標)型中に注ぎ、そして真空下、65℃で2.5時間脱気した。オーブンはNガスを用いて大気圧に戻し、そして試料は150℃で4時間及び200℃で2時間硬化させ、続いて環境条件までゆっくり冷却した。透明な淡黄色の強靱なガラス様の厚板が得られた。この材料をDMTA及びTGAを用いて評価した。結果を表2に示した。
【0060】
例3:
13mgの塩化白金酸及び49.19gのジシクロペンタジエンを酸素のない条件下でフラスコに仕込んだ。フラスコの内容物を、Nシール下で撹拌しながら、60〜70℃に1時間穏やかに加熱した。75gの樹脂C(〜1:1モル Si−H:C=C)を添加ロートを用いてフラスコに速やかに加えた。添加終了後9分で165℃までの発熱が観測された。123.25gの淡黄色の透明なオイルが得られた。このオイルは、29SiNMRによって、(MeHSiO1/20.42(MeRSiO1/20.20(SiO4/20.38(ここでRはジシクロペンタジエンのモノヒドロシリル化生成物を表す。)で表される平均組成を有するアルケニル官能性物質であると決定された。
【0061】
このアルケニル官能性物質をテフロン(登録商標)型中に注ぎ、そして真空下、65℃で1.5時間脱気した。オーブンはNガスを用いて大気圧に戻し、そして試料は150℃で4時間及び200℃で2時間硬化させ、続いて環境条件までゆっくり冷却した。透明な淡黄色の壊れやすいガラス様の厚板が得られた。この材料をDMTA及びTGAを用いて評価した。結果を表2に示した。
【0062】
例4:
9mgの塩化白金酸及び21.80gのジシクロペンタジエンを酸素のない条件下でフラスコに仕込んだ。フラスコの内容物を、Nシール下で撹拌しながら、60〜70℃に1時間穏やかに加熱した。60.55gの樹脂D(〜1:1モル Si−H:C=C)を添加ロートからフラスコに速やかに加えた。反応混合物を150℃に加熱し、灰色のオイルが得られた。このオイルは、29SiNMRによって、(MeHSiO1/20.09(MeRSiO1/20.08(HMeSiO2/20.14(MeRSiO2/20.06(MeSiO3/20.63(ここでRはジシクロペンタジエンのモノヒドロシリル化生成物を表す。)で表される平均組成を有するアルケニル官能性物質であると決定された。
【0063】
このアルケニル官能性物質をテフロン(登録商標)型中に注ぎ、そして真空下、65℃で1.5時間脱気した。オーブンはNガスを用いて大気圧に戻し、そして試料は150℃で4時間及び200℃で2時間硬化させ、続いて環境条件までゆっくり冷却した。透明な淡黄色の硬い皮革様の厚板が得られた。この材料をDMTA及びTGAを用いて評価した。結果を表2に示した。
【0064】
例5:
15mgの塩化白金酸及び31.3gのジシクロペンタジエンを酸素のない条件下でフラスコに仕込んだ。フラスコの内容物を、Nシール下で撹拌しながら、64℃に1時間穏やかに加熱した。118.7gの樹脂E(〜1:1モル Si−H:C=C)を添加ロートからフラスコに速やかに加えた。添加終了後1分で、140℃までの発熱が観測された。149.75gの淡黄色の透明で粘稠なオイルが得られた。このオイルは、29SiNMRによって、(MeHSiO1/20.18(MeRSiO1/20.21(MeSiO3/20.61(ここでRはジシクロペンタジエンのモノヒドロシリル化生成物を表す。)で表される平均組成を有するアルケニル官能性物質であると決定された。
【0065】
このアルケニル官能性物質をテフロン(登録商標)型中に注ぎ、そして真空下、65℃で19時間脱気した。オーブンはNガスを用いて大気圧に戻し、そして試料は150℃で4時間及び200℃で2時間硬化させ、続いて環境条件までゆっくり冷却した。透明な淡黄色の脆いガラス様の厚板が得られた。この材料をDMTA及びTGAを用いて評価した。結果を表2に示した。
【0066】
例6A:
19mgの塩化白金酸及び83.9gのジシクロペンタジエンを酸素のない条件下で500mLの三口丸底フラスコに仕込んだ。このフラスコには、水冷コンデンサー、温度計、及び磁気撹拌機を取り付けた。フラスコの内容物を、Nシール下で撹拌しながら、50℃に2時間穏やかに加熱した。76.4gのテトラメチルシクロテトラシロキサン(〜1:1モル Si−H:C=C)を添加ロートを用いてフラスコに速やかに加えた。添加終了後59分で、155℃までの発熱が観測された。明るい淡黄色の透明なオイルが得られた。このオイルは、29SiNMRによって、(HMeSiO2/20.55(MeRSiO2/20.45(ここでRはジシクロペンタジエンのモノヒドロシリル化生成物を表す。)で表される平均組成を有するアルケニル官能性物質であると決定された。
【0067】
このアルケニル官能性物質をテフロン(登録商標)型中に注ぎ、そして真空下、65℃で19時間脱気した。オーブンはNガスを用いて大気圧に戻し、そして試料は150℃で4時間及び200℃で2時間硬化させ、続いて環境条件までゆっくり冷却した。透明な淡黄色の強靱なガラス様の厚板が得られた。この材料をDMTA及びTGAを用いて評価した。結果を表2に示した。
【0068】
例6B:
今回は高温硬化の前に65℃で1.5時間だけ液体物質を脱気したことを除き、例6Aと同じ手順に従って別個のサンプルを調製した。透明な淡黄色の強靱なガラス様の厚板が得られた。この材料をDMTA及びTGAを用いて評価した。結果を表2に示した。
【0069】
例7:
15mgの塩化白金酸及び56.6gのジシクロペンタジエンを酸素のない条件下でフラスコに仕込んだ。フラスコの内容物を、Nシール下で撹拌しながら、55℃に1時間穏やかに加熱した。67.3gのシリコーン樹脂F(〜1:1モル Si−H:C=C)を添加ロートを使用してフラスコに速やかに加えた。添加終了後29分で、141℃までの発熱が観測された。淡黄色の透明なオイルが得られた。このオイルは、29SiNMRによって、(MeHSiO1/20.49(MeRSiO1/20.31(SiO4/20.20(ここでRはジシクロペンタジエンのモノヒドロシリル化生成物を表す。)で表される平均組成を有するアルケニル官能性物質であると決定された。
【0070】
このアルケニル官能性物質をテフロン(登録商標)型中に注ぎ、そして真空下、65℃で19時間脱気した。オーブンはNガスを用いて大気圧に戻し、そして試料は150℃で4時間及び200℃で2時間硬化させ、続いて環境条件までゆっくり冷却した。透明な淡黄色の弾力のある厚板が得られた。この材料をDMTA及びTGAを用いて評価した。結果を表2に示した。
【0071】
例8:
10mgの塩化白金酸及び34.7gのジシクロペンタジエンを酸素のない条件下でフラスコに仕込んだ。フラスコの内容物を、Nシール下で撹拌しながら、60℃に1時間穏やかに加熱した。60.1gの樹脂G(〜1:1モル Si−H:C=C)を添加ロートを使用してフラスコに速やかに加えた。添加終了後25分で、154℃までの発熱が観測された。89.5gの淡黄色の透明なオイルが得られた。このオイルは、29SiNMRによって、(MeHSiO1/20.34(MeRSiO1/20.33(MeSiO3/20.33(ここでRはジシクロペンタジエンのモノヒドロシリル化生成物を表す。)で表される平均組成を有するアルケニル官能性物質であると決定された。
【0072】
このアルケニル官能性物質をテフロン(登録商標)型中に注ぎ、そして真空下、65℃で1.5時間脱気した。オーブンはNガスを用いて大気圧に戻し、そして試料は150℃で4時間及び200℃で2時間硬化させ、続いて環境条件までゆっくり冷却した。透明な淡黄色の粘着性の弾力のある厚板が得られた。この材料をDMTA及びTGAを用いて評価した。結果を表2に示した。
【0073】
例9:
2滴の塩化白金酸及び55.97gのジシクロペンタジエンを酸素のない条件下でフラスコに仕込んだ。フラスコの内容物を、Nシール下で撹拌しながら、65℃に30分間穏やかに加熱した。30.0gのダウ・コーニング(登録商標)5−0210液、すなわちメチルハイドロジェン直鎖分子、をフラスコに速やかに加えた。160℃までの発熱が直ちに観測された。淡黄色の透明なオイルが得られた。このオイルは、29SiNMRによって、(MeSiO1/20.11(MeHSiO1/20.34(MeRSiO2/20.54(ここでRはジシクロペンタジエンのモノヒドロシリル化生成物を表す。)で表される平均組成を有するアルケニル官能性物質であると決定された。
【0074】
このアルケニル官能性物質をテフロン(登録商標)型中に注ぎ、そして真空下、65℃で1.5時間脱気した。オーブンはNガスを用いて大気圧に戻し、そして試料は150℃で4時間及び200℃で2時間硬化させ、続いて環境条件までゆっくり冷却した。透明な淡黄色の硬いガラス様厚板が得られた。この材料をDMTA及びTGAを用いて評価した。結果を表2に示した。
【0075】
例10:
12mgの塩化白金酸及び37.38gのジシクロペンタジエンを酸素のない条件下でフラスコに仕込んだ。フラスコの内容物を、Nシール下で撹拌しながら、60℃に1時間穏やかに加熱した。75.00gの樹脂H(〜1:1モル Si−H:C=C)を、添加ロートを使用してフラスコに速やかに加えた。添加終了後12分で、164℃までの発熱が観測された。111.68gの淡黄色の透明なオイルが得られた。このオイルは、29SiNMRによって、(MeHSiO1/20.34(MeRSiO1/20.23(MeSiO3/20.28(PhSiO3/20.15(ここでRはジシクロペンタジエンのモノヒドロシリル化生成物を表す。)で表される平均組成を有するアルケニル官能性物質であると決定された。
【0076】
このアルケニル官能性物質をテフロン(登録商標)型中に注ぎ、そして真空下、65℃で1.5時間脱気した。オーブンはNガスを用いて大気圧に戻し、そして試料は150℃で4時間及び200℃で2時間硬化させ、続いて環境条件までゆっくり冷却した。透明な淡黄色の、弱い、粘着性の弾力のある厚板が得られた。この材料をDMTA及びTGAを用いて評価した。結果を表2に示した。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
(A)実験式HSiO(4−a−b−c)/2を有するシロキサン単位を含む少なくとも1種のオルガノシロキサン樹脂(ここで、R及びRは独立に選択された1〜4の炭素原子を含むアルキル基又は6〜8の炭素原子を含むアリール基であり、1.3<(a+b+c)<2.0且つケイ素に結合した水素基が一分子当たり平均で少なくとも2つあるという条件で、添え字a>0、添え字b及びcはそれぞれ0又は正の数である。);
(B)一分子当たり平均して少なくとも2つの非芳香族炭素炭素二重結合を有する少なくとも1種のポリエン;及び
(C)触媒、
を含む組成物。
【請求項2】
オルガノシロキサン樹脂一分子当たり、ケイ素に結合した水素基が平均で少なくとも3つある、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記R及びR基の60モル%より多くが、1〜4の炭素原子を含むアルキル基から独立して選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記a+b+cの合計が、1.5<(a+b+c)<1.8の範囲にある、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
成分(A)中のケイ素に結合した水素基と成分(B)中の炭素炭素二重結合との比が、1:0.5〜1:1.5である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリエンが多環式ポリエンである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
以下のステップ:
(i) 以下の:
(A)実験式(I)HSiO(4−a−b−c)/2を有するシロキサン単位を含む少なくとも1種のオルガノシロキサン樹脂(ここでR及びRのそれぞれは、独立して選択された、1〜4の炭素原子を含むアルキル基又は6〜8の炭素原子を含むアリール基であり、1.3<(a+b+c)<2.0且つケイ素に結合した水素基が一分子当たり平均で少なくとも2つあるという条件で、添え字a>0、且つ添え字b及びcはそれぞれ0又は正の数である。);
(B)一分子当たり平均で少なくとも2つの非芳香族炭素炭素二重結合を有する少なくとも1種のポリエン;及び
(C)触媒
を含む材料を混合すること、
を含む方法。
【請求項8】
以下のステップ:
(i) 以下の:
(A)実験式(I)HSiO(4−a−b−c)/2を有するシロキサン単位を含む少なくとも1種のオルガノシロキサン樹脂(ここでR及びRのそれぞれは、独立して選択された、1〜4の炭素原子を含むアルキル基又は6〜8の炭素原子を含むアリール基であり、1.3<(a+b+c)<2.0且つケイ素に結合した水素基が一分子当たり平均で少なくとも2つあるという条件で、添え字a>0、且つ添え字b及びcはそれぞれ0又は正の数である。);
(B)一分子当たり平均で少なくとも2つの化学的に区別可能な反応性をもつ非芳香族炭素炭素二重結合を有する少なくとも1種のポリエン;及び
(C)触媒
を含む材料を混合すること、
を含む方法。
【請求項9】
以下のステップ:
(i) 以下の:
(A)実験式(I)HSiO(4−a−b−c)/2を有するシロキサン単位を含む少なくとも1種のオルガノシロキサン樹脂(ここでR及びRのそれぞれは、独立して選択された、1〜4の炭素原子を含むアルキル基又は6〜8の炭素原子を含むアリール基であり、1.3<(a+b+c)<2.0且つケイ素に結合した水素基が一分子当たり平均で少なくとも2つあるという条件で、添え字a>0、且つ添え字b及びcはそれぞれ0又は正の数である。);
(B)一分子当たり平均で少なくとも2つの化学的に区別可能な反応性をもつ非芳香族炭素炭素二重結合を有する少なくとも1種のポリエン;及び
(C)プレポリマー組成物を形成するための触媒
を含む材料を混合すること;そして次に、
(iii) 前記プレポリマー組成物を加熱すること、
を含む方法。
【請求項10】
ステップ(i)によって形成された組成物に阻害剤(D)を添加するステップ(ii)をさらに含む、請求項8又は9に記載の方法。

【公表番号】特表2006−506507(P2006−506507A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553480(P2004−553480)
【出願日】平成15年10月27日(2003.10.27)
【国際出願番号】PCT/US2003/034054
【国際公開番号】WO2004/046225
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】