説明

オレフィン系重合体およびその製造方法

【課題】金属または極性樹脂との接着性や相溶性などに優れ、特に非ポリオレフィンセグメント含有オレフィン系重合体、およびその効率的な製造方法を提供する。
【解決手段】炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン重合体からなる基(PO)と、極性重合体からなる基(PL)が、PO−(O−C(=O)−PL)nの構造(nは、1以上の整数を表す)で結合していることを特徴とするオレフィン系重合体。また、ハロゲン原子を含有する、炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン重合体(PO−X)と、解離性金属原子を含んでなる極性重合体(PL−M)を処理して製造することを特徴とするオレフィン系重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系重合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にポリオレフィンは、成形性、耐熱性、機械的特性、衛生適合性、耐水蒸気透過性などに優れ、成型品の外観が良好であるなどの特長を有することから、押出成型品、中空成型品、射出成型品などに広く使用されている。
【0003】
しかし、一般にポリオレフィンは分子中に極性基を含まないため、ナイロン、EVOHなどの極性樹脂との相溶性、極性樹脂や金属との接着性が低く、これらの材料とブレンドして利用したり、積層して利用したりすることが困難であるという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、従来ポリオレフィンに極性基含有モノマーをグラフトして、極性樹脂との親和性を向上させる方法が広く行われている。しかし、この方法ではグラフト反応と並行してポリオレフィン同士の分子間架橋や分子鎖の切断が起こるため、グラフト重合体と極性樹脂との粘度マッチングが難しいことや、相溶性が十分でない場合があった。また、分子間架橋によって生成するゲル分や、分子鎖の切断によって成形物の外観が悪くなる場合もあった。
【0005】
特開平2−51511号公報および特開平3−177403号公報等には、α−オレフィンと極性基含有モノマーを、チタン触媒やバナジウム触媒を用いて共重合する方法が記載されている。この方法によれば上記のような分子同士の架橋や分子鎖の切断は起きにくくなるが、得られる共重合体の分子構造が不均一、すなわち分子量分布が広い、あるいはインバージョン含量が多いが故に、極性物質との界面への極性基の配向が十分でなく、結果として極性物質に対する接着性、相溶性などが十分でない場合があった。
【0006】
本出願人による特開2002−145947号公報や特開2002−155109号公報によれば、上記の大部分の問題点が解決できる新しい極性基含有オレフィン共重合体、その製造方法、それを含む熱可塑性樹脂組成物およびこれらの用途が開示されている。この開示によれば、極性基含有オレフィン共重合体の極性セグメントはアニオン重合、開環重合、重縮合のいずれかの方法によって調製・付与されるとしている。しかし、前記の鎖長延長反応のいずれも原料モノマーが限定されたり、リチウム金属等不安定な原料の使用が避けられないという問題点がある。また重縮合では原料モノマーが限定されること以外に反応条件の厳しいことが多くポリマーの劣化などを引き起こす場合もあった。このような見地から更なる改良の余地が残されていた。
【0007】
また、T. C. Chungらによる、Macromolecules、26巻、3467頁や Prog.Polym.Sci.、27巻、39頁によれば、ポリオレフィン主鎖末端または側鎖末端に9−BBNのようなアルキルボランを付加し、酸素の共存下、メタクリル酸メチルなどをラジカル重合させることで極性基含有オレフィン共重合体を得る手法が報告されている。しかし、本手法で用いられるアルキルボランは高価であり、工業化に不利である。また、MMAの重合温度が室温から60℃での不均一条件での重合例の報告しかなく、活性末端がより均一でかつ速度的に有利な高温での重合はなされていない。
【0008】
原子移動ラジカル重合(ATRP)を利用したブロックポリマーの製造方法も知られており、例えば、Journal of Polymer Science;Part A;Polymer Chemistry、41巻、3965頁には、ポリエチレンとポリメチルメタクリレートからなるブロックポリマーの合成例が開示されている。しかしながら、ATRPでは、重合触媒成分として銅や鉄等の金属を用いているため、製造された重合体からの金属成分の除去が必要であり、また脱酸素工程が必要であり工業的に不利であった。
【0009】
そこで、材料設計・製造を自在に行うことができ、かつ化学的安定性に優れたブロック型オレフィン系重合体およびその製造方法の開発が望まれていた。
【特許文献1】特開平2−51511号公報
【特許文献2】特開平3−177403号公報
【特許文献3】特開2002−145947号公報
【特許文献4】特開2002−155109号公報
【非特許文献1】Macromolecules、26巻、3467頁
【非特許文献2】Prog.Polym.Sci.、27巻、39頁
【非特許文献3】Journal of Polymer Science;Part A;Polymer Chemistry、41巻、3965頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するために行われたものであり、すなわち、金属または極性樹脂との接着性や相溶性などに優れ、特に非ポリオレフィンセグメント含有オレフィン系重合体、およびその効率的な製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、ハロゲン原子を含有するオレフィン重合体(PO−X)と、解離性金属原子を含んでなる極性重合体(PL−M)を処理して得られる、オレフィン系重合体およびその製造方法を見出した。
【0012】
すなわち、本発明のオレフィン系重合体は、炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン重合体からなる基(PO)と、極性重合体からなる基(PL)が、下記式(1)の構造で結合していることを特徴とするオレフィン系重合体である。
【0013】
【化1】

【0014】
(式中nは、1以上の整数を表す)
また本発明のオレフィン系重合体の製造方法は、ハロゲン原子を含有する、炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン重合体(PO−X)と、解離性金属原子を含んでなる極性重合体(PL−M)を処理して製造することを特徴とするオレフィン系重合体の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明におけるオレフィン系重合体の製造方法は、ハロゲン原子を含有するオレフィン重合体(PO−X)と、解離性金属原子を含んでなる極性重合体(PL−M)を処理する方法であり、自在に材料設計が可能で、しかも機械的物性などに悪影響を及ぼすことなく、化学的安定性に優れたオレフィン系重合体の製造できることから、本発明は工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明のオレフィン系重合体およびその製造方法について詳説する。
オレフィン系重合体
本発明に係るオレフィン系重合体は、オレフィン重合体からなる基(PO)と、極性重合体からなる基(PL)が、下記式(1)の構造で示されるように、エステル結合で結合していることを特徴とするオレフィン系重合体である。
【0017】
【化2】

【0018】
(式中nは、1以上の整数を表す)
〔PO〕
本発明におけるPOは、炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン重合体からなる基である。
【0019】
炭素原子数2〜20のオレフィンとしては、例えば直鎖状または分岐状α−オレフィン、環状オレフィン、共役ジエン、非共役ポリエンなどが挙げられる。
【0020】
直鎖状α−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素原子数2〜20の直鎖状α−オレフィンなどが挙げられる。これらの中でも、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどの炭素原子数2〜10の直鎖状α−オレフィンが好ましい。
【0021】
分岐状α−オレフィンとしては、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセンなどの炭素原子数5〜20、好ましくは5〜10の分岐状α−オレフィンなどが挙げられる。
【0022】
環状オレフィンとしては、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ビニルシクロヘキサンなどの炭素原子数3〜20、好ましくは5〜15の環状オレフィンなどが挙げられる。
【0023】
共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエンなどの炭素原子数4〜20、好ましくは4〜10の共役ジエンなどが挙げられる。
【0024】
非共役ポリエンとしては、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、4,8−ジメチル−1,4,8−デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエンなどの炭素原子数5〜20の非共役ポリエンなどが挙げられる。これらの中でも、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエンなどの炭素原子数5〜10の非共役ポリエンが好ましい。
【0025】
本発明におけるPOは、POを構成するモノマーとして、芳香族ビニル化合物、官能化ビニル化合物を少量含有していてもよい。
【0026】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、およびα−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレンなどのアルキルスチレンなどが挙げられる。
【0027】
官能化ビニル化合物としては、水酸基含有オレフィン、ハロゲン化オレフィン、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸ハライド、不飽和アミン、不飽和エポキシ化合物などが挙げられる。
【0028】
上記不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、プロピオン酸、3−ブテン酸、4−ペンテン酸、5−ヘキセン酸、6−ヘプテン酸、7−オクテン酸、8−ノネン酸、9−デセン酸などが挙げられる。
【0029】
上記不飽和カルボン酸無水物としては、(2,7−オクタジエニル)コハク酸無水物、ペンタプロペニルコハク酸無水物、および上記不飽和カルボン酸の無水物などが挙げられる。
【0030】
上記不飽和カルボン酸ハライドとしては、上記不飽和カルボン酸のカルボキシル基をカルボキシハライド基に置き換えた化合物が挙げられる。
【0031】
上記不飽和アミンとしては、アリルアミン、5−ヘキセンアミン、6−ヘプテンアミンなどが挙げられる。
【0032】
上記不飽和エポキシ化合物としては、4−エポキシ−1−ブテン、5−エポキシ−1−ペンテン、6−エポキシ−1−ヘキセン、7−エポキシ−1−ヘプテン、8−エポキシ−1−オクテン、9−エポキシ−1−ノネン、10−エポキシ−1−デセン、11−エポキシ−1−ウンデセンなどが挙げられる。
【0033】
上記水酸基含有オレフィンとしては、水酸基含有のオレフィン系化合物であれば特に制限は無いが、例えば末端水酸化オレフィン化合物が挙げられる。
【0034】
末端水酸化オレフィン化合物としては、末端水酸化直鎖状α−オレフィン、末端水酸化分岐状α−オレフィンが挙げられる。
【0035】
末端水酸化直鎖状α−オレフィンとしては、ビニルアルコール、アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、11ドデセン−1−オール、13テトラデセン−1−オール、15ヘキサデセン−1−オール、17オクタデセン−1−オール、19エイコセン−1−オールなどの炭素原子数2〜20の末端水産化直鎖状α−オレフィンなどが挙げられる。これら化合物の中でも、ビニルアルコール、アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オールなどの炭素原子数2〜10の末端水産化直鎖状α−オレフィンが好ましい。
【0036】
末端水酸化分岐状α−オレフィンとしては、2−メチル−3−ブテン−2−オール、2−メチル−4−ペンテン−2−オール、3−メチル−4−ペンテン−1−オール、3−エチル−4−ペンテン−1−オール、2,4−ジメチル−4−ペンテン−2−オール、2−メチル−5−ヘキセン−2−オール2,2−ジメチル−5−ヘキセン−3−オール、3−エチル−5−ヘキセン−3−オール、などの炭素原子数5〜20、好ましくは5〜10の末端水酸化分岐状α−オレフィンなどが挙げられる。
【0037】
上記ハロゲン化オレフィンとしては、塩素、臭素、よう素等周期律表第17族原子を有するハロゲン化直鎖状α−オレフィン、ハロゲン化分岐状α−オレフィンなどが挙げられる。
【0038】
上記ハロゲン化直鎖状α−オレフィンとしては、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化−1−ブテン、ハロゲン化−1−ペンテン、ハロゲン化−1−ヘキセン、ハロゲン化−1−オクテン、ハロゲン化−1−デセン、ハロゲン化−1−ドデセン、ハロゲン化−1−テトラデセン、ハロゲン化−1−ヘキサデセン、ハロゲン化−1−オクタデセン、ハロゲン化−1−エイコセンなどの炭素原子数2〜20のハロゲン化直鎖状α−オレフィンなどが挙げられる。これら化合物の中でも、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化−1−ブテン、ハロゲン化−1−ペンテン、ハロゲン化−1−ヘキセン、ハロゲン化−1−オクテン、ハロゲン化−1−デセンなどの炭素原子数2〜10のハロゲン化直鎖状α−オレフィンが好ましい。
【0039】
上記ハロゲン化分岐状α−オレフィンとしては、ハロゲン化−3−メチル−1−ブテン、ハロゲン化−4−メチル−1−ペンテン、ハロゲン化−3−メチル−1−ペンテン、ハロゲン化−3−エチル−1−ペンテン、ハロゲン化−4,4−ジメチル−1−ペンテン、ハロゲン化−4−メチル−1−ヘキセン、ハロゲン化−4,4−ジメチル−1−ヘキセン、ハロゲン化−4−エチル−1−ヘキセン、ハロゲン化−3−エチル−1−ヘキセンなどの炭素原子数5〜20、好ましくは5〜10のハロゲン化分岐状α−オレフィンなどが挙げられる。
【0040】
PO中の芳香族ビニル化合物、官能化ビニル化合物の含量は、総量で30重量%以下であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは、10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下である。
【0041】
POは、機械物性などの強度の観点からは、エチレン重合体、プロピレン重合体、エチレンと炭素原子数3〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンとの共重合体、およびプロピレンと炭素原子数4〜20のオレフィンかから選ばれる少なくとも1種のオレフィンから得られる共重合体からなる基であることが好ましい。
【0042】
上記POの分子量は、分子量が小さいと所望の物性の発現に不利であり、分子量が大きすぎると該オレフィン系重合体の製造時に粘度が高くなり好ましくない。上記POの分子量としては、デカリン中で測定した極限粘度([η])測定において、0.05〜15dl/gの範囲にあり、好ましくは0.1〜12dl/gの範囲にあり、より好ましくは0.15〜10dl/gの範囲にある。
【0043】
〔PL〕
本発明に係るオレフィン系重合体を構成する極性重合体からなる基(PL)とは、ヘテロ原子あるいは芳香族環を有するビニルモノマーの付加重合体あるいは、小員環化合物の開環重合体である。
【0044】
これら重合体からなる極性重合体からなる基(PL)としては、炭素-炭素不飽和結合を少なくとも一つ有する有機化合物から選ばれる1種以上のモノマーの単独重合体または共重合体であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算数平均分子量(Mn):100〜1000000、好ましくは、500〜500000、更に好ましくは1000〜100000の極性重合体であることが好ましい。
【0045】
これら炭素-炭素不飽和結合を少なくても一つ有する有機化合物から選ばれる1種以上のモノマーの具体例として、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸-n-ペンチル、(メタ)アクリル酸-n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸-n-オクチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸-2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマー、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル系モノマー、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等、更には、末端にアクロイル基、メタクロイル基やスチリル基などの炭素-炭素不飽和結合を有し、分子量が100〜100000のマクロモノマー等が挙げられる。 本発明におけるPLは、PLを構成するモノマーとして、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン系モノマー、ブタジエン、イソプレン等のジエン系モノマーを少量含有していてもよい。
【0046】
PL中のエチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン系モノマー、ブタジエン、イソプレン等のジエン系モノマーの含量は、総量で30重量%以下であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは、10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下である。
【0047】
本発明で用いられる付加重合体からなるPLとしては、(メタ)アクリル酸およびその誘導体、(メタ)アクリロニトリル、スチレンおよびその誘導体から選ばれる1種以上の単量体を、(共)重合して得られる重合体が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸の単独重合体および共重合体がより好ましく、特に、メタクリル酸メチル、スチレン、アクリル酸メチル、アクリロニトリル、アクリル酸ブチル、アクリルアミドの単独重合体あるいは、これらを主モノマーとした共重合体が好ましい。
【0048】
一方、小員環化合物の開環重合体からなるPLとしては、一種以上のラクトン類、ラクタム類、環状エーテル類、環状酸無水物または環状ホルマール類などの小員環化合物が開環して、それらが互いに付加した構造が好ましく挙げられる。
【0049】
開環重合体を得るための小員環化合物としては、容易に開環重合するものであれば特に限定されるものではないが、開環重合のし易さからラクトン類、環状エーテル類が好ましい。
【0050】
ラクトン類として、具体的にはグリコリド、ラクチド、さらにα-ヒドロキシ酪酸、α-ヒドロキシ吉草酸、α-ヒドロキシイソ吉草酸、α-ヒドロキシカプロン酸、α-ヒドロキシイソカプロン酸、α-ヒドロキシ-β-メチル吉草酸、α-ヒドロキシヘプタン酸等の分子間環状ジエステルが挙げられる。これらのなかで、グリコリド、ラクチドは容易に入手することができ、これらのポリマーの物理的性質が望ましいものであり、好ましいラクトン類である。また、不斉炭素を有するものは、L体、D体、ラセミ体、メソ体のいずれでもよい。
【0051】
環状エーテル類の具体的例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド、シス-1,2-ブチレンオキシド、トランス-1,2-ブチレンオキシド、スチレンオキシド、シクロペンテンオキシド、シクロヘキセンオキシド、エピクロロヒドリン、グリシドール、グリシジルフェニルエーテル、オキセタン、2-メチルオキセタン、2,2-ジメチルオキセタン、2-クロルメチルオキセタン、3,3-ジメチルオキセタン、3-メチル-3-クロロメチルオキセタン、3,3-ビス(クロロメチル)オキセタン、3-(トリメチルシリルオキシメチル)オキセタン、テトラヒドロフラン、2-メチル-テトラヒドロフラン、3-メチル-テトラヒドロフラン、2,5-ジメトキシテトラヒドロフラン、2-エトキシテトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフルフリルエーテル、2,3-ジヒドロベンゾフラン、2,3-ジヒドロフラン、2,5-ジヒドロフラン、テトラヒドロフランアセチックアシドエチルエステル、テトラヒドロフルフリルクロライド、テトラヒドロフルフリルアセテート、テトラヒドロフルフリルプロピオネート、テトラヒドロフルフリルn-ブチレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート等を挙げることができる。これらのうち、原料の入手しやすさからエチレンオキシド、プロピレンオキシド、オキセタン、テトラヒドロフランが好ましい。
【0052】
発明で用いられる極性重合体からなる基(PL)はカルボキシル基または酸無水基を有していても良く、一部のモノマー単位が、加水分解を起こしたものや、金属、低分子や導入された反応性基を介し変性されたり、架橋されたものでも良い。
【0053】
オレフィン系重合体の製造方法
次に本発明に係るオレフィン系重合体の製造方法について説明する。
【0054】
本発明に係るオレフィン系重合体は、PO−Xと、PL−Mを処理することにより製造できる。
【0055】
〔PO−X〕
本発明におけるPO−Xは、ハロゲン原子を含有する、炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン重合体である。
【0056】
炭素原子数2〜20のオレフィンは、前述のPOと同様である。
【0057】
PO−Xは、ハロゲン原子を含有する、これらのオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン重合体であり、PO−X中のハロゲン原子の含有量は、0.0001〜30wt%、好ましくは0.001〜20wt%、より好ましくは0.005〜15wt%、更に好ましくは0.01〜10wt%、最も好ましくは0.05〜5wt%である。ハロゲン原子の含有量が少ないと該オレフィン系重合体製造に不利であり、多すぎると該オレフィン系重合体の機械物性を低下させてしまう。
【0058】
次に、本発明に係るPO−Xの製造方法について説明する。PO−Xは、重合用触媒を用いてオレフィン系重合体を製造した後、ハロゲン化処理を行うことで製造することが出来る。また、PO−Xは、ハロゲン化オレフィンを含んだ上記オレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を構成単位としたオレフィン重合体として製造することも出来る。
【0059】
まず、上記ポリオレフィンの製造に用いられるオレフィン重合用触媒について説明する。ポリオレフィンの製造に用いられるオレフィン重合用触媒としては、マグネシウム担持型チタン触媒、メタロセン触媒、その他従来公知の触媒が挙げられ、例えば国際公開特許WO01/53369あるいはWO01/27124中に記載の触媒が好適に用いられる。
【0060】
例えば、固体状チタン触媒成分(a)またはその予備重合触媒、有機金属化合物触媒成分(b)、および電子供与体(ED)を構成成分として含むマグネシウム担持型チタン触媒系を用いる場合は、その固体状チタン触媒成分(a)またはその予備重合触媒を、重合容積1リットル当りチタン原子に換算して、通常は約0.0001〜50ミリモル、好ましくは約0.001〜10ミリモルの量で用い、有機金属化合物触媒成分(b)を、該触媒成分(b)中の金属原子が、重合系中の固体状チタン触媒成分(a)中のチタン原子1モルに対し、通常1〜2000モル、好ましくは2〜1000モルの量で用い、電子供与体(ED)を、有機金属化合物触媒成分(b)の金属原子1モルに対し、通常0.001モル〜10モル、好ましくは0.01モル〜5モルの量で用いる。
【0061】
上記マグネシウム担持型チタン触媒系を用いた重合の場合には、水素濃度はモノマー1モルに対して通常は0〜0.01モル、好ましくは0〜0.005モル、より好ましくは0〜0.001モルの量である。
【0062】
上記マグネシウム担持型チタン触媒系を用いた重合の場合には、重合温度は、通常は70℃以上、好ましくは80〜150℃、より好ましくは85〜140℃、特に好ましくは90〜130℃の範囲であり、重合圧力は、通常、常圧〜10MPa、好ましくは常圧〜5MPaに設定される。
【0063】
例えば、メタロセン化合物(c)および有機アルミニウムオキシ化合物(d)を構成成分として含むメタロセン系触媒を用いる場合には、そのメタロセン化合物(c)の濃度を、重合容積1リットル当り、通常は0.00005〜0.1ミリモル、好ましくは0.0001〜0.05ミリモルの量で用い、有機アルミニウムオキシ化合物(d)を、メタロセン化合物(c)中の遷移金属原子(M)に対するアルミニウム原子(Al)のモル比(Al/M)で、通常は5〜1000、好ましくは10〜400となるような量で用いる。また、さらに有機アルミニウム化合物(e)が用いられる場合には、メタロセン化合物(c)中の遷移金属原子1モルに対して、通常約1〜300モル、好ましくは約2〜200モルとなるような量で用いられる。
【0064】
上記メタロセン系触媒は、触媒が可溶な溶媒中で溶液状態として用いてもよく、無機化合物、樹脂組成物などに担持して、担持触媒として用いてもよい。
【0065】
上記メタロセン系触媒を用いた場合には、重合温度は、通常は−20〜150℃、好ましくは0〜120℃、さらに好ましくは0〜100℃の範囲であり、重合圧力は0を超えて8MPa、好ましくは0を超えて5MPaの範囲である。
【0066】
なお、ポリオレフィン部は、溶液重合、懸濁重合などの液相重合、または気相重合のいずれによっても、製造できる。また、ポリオレフィン部は、バッチ式、半連続式、連続式のいずれの方式によっても製造できる。
【0067】
さらに上記重合を、2段以上に分けて行うこともできる。2段以上に分けて行う場合は、反応条件は同じであっても異なっていてもよい。上記重合においては、前述したオレフィンの単独重合体を製造してもよく、前述したオレフィン類から選ばれる2種類以上のオレフィンからランダム共重合体、ブロック共重合体を製造してもよい。
前述したオレフィン系重合体を用いて、公知のハロゲン化方法によってPO−Xを製造することが出来る。公知のハロゲン化方法は特に例外なく用いることが出来るが、具体的には、臭素、N−ブロモスクシイミド等の臭素化剤を用いた臭素化方法、ヨウ素を用いたヨウ素化方法、塩素を用いた塩素化方法が挙げられる。これらの方法は適当な溶剤を用いて、溶液状態、懸濁状態で実施することができ、無溶剤で直接ハロゲン化することも出来る。適当な溶剤としては、ヘキサン、デカン等の飽和炭化水素系溶剤や、クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族系溶剤等を好適に用いることが出来る。また、水酸基含有オレフィン系重合体を製造した後、例えば、ブロモ−ブチリル酸ブロミド等のハロゲン化アルキル酸ハロゲン化物と処理することで、PO−Xを製造することが出来る。上記処理方法は、公知の有機合成手法を採用することで実施することが出来る。
【0068】
PO−Xにおけるハロゲン原子は、いかなる種類であっても良いが、環境負荷の観点から、臭素が好適に用いられる。
【0069】
〔PL−M〕
本発明におけるPL−Mは、解離性金属原子を含んでなる極性重合体である。
【0070】
極性重合体としては、前述のPL基と同様である。すなわち、前述の重合性モノマーを、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合の如き付加重合により重合して得られる重合体であり、あるいは前述の環状モノマーを、カチオン重合などの開環重合により得られる重合体であり、その製造は公知の方法を用いて実施することが出来る。また、本発明に係る極性重合体は、一般に市販品として所望の重合体を入手することが出来る。
【0071】
解離性金属原子としては、カルボン酸塩を構成する金属原子であるものが好ましく用いられる。金属原子は特に制限なく用いることができるが、好ましくは、周期律表第1族乃至第3族から選ばれる1種類以上の金属種であり、より好ましくは、リチウム、ナトリウム、カリウムが好適に用いられる。
【0072】
PL−Mは、解離性金属原子を含んでなる、極性重合体であり、PL−M中の解離性金属原子の含有量は、0.0001〜30wt%、好ましくは0.001〜20wt%、より好ましくは0.005〜15wt%、更に好ましくは0.01〜10wt%、最も好ましくは0.05〜5wt%である。解離性金属原子の含有量が少ないと該オレフィン系重合体製造に不利であり、多すぎると該オレフィン系重合体の機械物性を低下させてしまう。
【0073】
上記PL−Mの分子量は、分子量が小さいと所望の物性の発現に不利であり、分子量が大きすぎると該オレフィン系重合体の製造時に粘度が高くなり好ましくない。上記PL−Mの分子量としては、デカリン中で測定した極限粘度([η])測定において、0.05〜15dl/gの範囲にあり、好ましくは0.1〜12dl/gの範囲にあり、より好ましくは0.15〜10dl/gの範囲にある。
【0074】
次に、本発明に係るPL−Mの製造方法について説明する。PL−Mは、前述したカルボキシル基または酸無水基を含む極性重合体からなる基(PL)を製造した後、解離性金属原子導入処理を行うことで製造することが出来る。また、PL−Mは、イオン性重合性単量体を含んだ上記極性重合体からなる基として製造することが出来る。
【0075】
解離性金属原子導入処理は、公知の方法を特に例外なく用いることが出来るが、具体的には、必要に応じて製造した極性重合体の酸および/または酸無水物化処理を行い、酸および/または酸無水物を含んだ極性重合体を、解離性金属原子含有化合物で中和処理することで行われる。
【0076】
解離性金属原子含有化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸化物等が挙げられる。
【0077】
解離性金属原子含有化合物をもちいた処理方法は、適当な溶剤を用いて、溶液状態、懸濁状態で実施することができ、無溶剤で解離性金属原子を導入することも出来る。適当な溶剤としては、水、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、デカン等の飽和炭化水素系溶剤や、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤等を好適に用いることが出来る。
【0078】
処理温度は、通常は−20〜150℃、好ましくは0〜120℃、さらに好ましくは0〜100℃の範囲であり、処理圧力は0を超えて8MPa、好ましくは0を超えて5MPaの範囲である。
【0079】
次に本発明に係るオレフィン系重合体の製造方法について説明する。
【0080】
本発明に係るオレフィン系重合体は、上記PO−Xと、PL−Mを処理することにより製造できる。
【0081】
その製造方法としては、溶液法、懸濁法、溶融混錬法、その他公知の方法が挙げられる。上記方法の中で、製造する重合体の構造を制御するという観点からは、溶液法、懸濁法が好適である。
【0082】
溶剤としては特に制限無く用いることができるが、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤等が好適に用いられる。上記製造は、通常は0℃〜400℃の温度範囲で行なわれ、好ましくは20℃〜250℃、より好ましくは50℃〜220℃の温度範囲で行なわれる。
【0083】
PO−Xと、PL−Mとの処理時間は、通常は1分〜40時間、好ましくは5分〜20時間である。また、反応を促進させるために、公知の触媒を用いてもよい。
【0084】
上記溶融混錬法は、ラボプラストミル、一軸混錬機もしくはニ軸以上の多軸混錬機、混錬押出し機、攪拌機等を用いて行われる。混錬温度は、特に制限はなく常温であってもよいが、通常は50℃〜400℃程度の範囲、好ましくは100℃〜350℃程度の範囲である。混錬時間は、通常は0.1秒〜5時間程度の範囲、好ましくは1秒〜1時間程度の範囲である。溶融混錬時には、反応を促進させるために、公知の触媒を添加してもよい。また、溶融混錬時、粘度調製や反応効率向上のために、例えばトルエン、キシレン等の有機溶剤を添加してもよい。
【0085】
本発明によって製造されるオレフィン系重合体の分子量は、デカリン中での極性粘度測定によって観察される極限粘度[η]の値が0.2〜15.0dl/gの範囲である。分子量が小さいと所望の物性の発現に不利であり、分子量が大きすぎると該オレフィン系重合体の製造時に粘度が高くなり好ましくない。極限粘度[η]の値は、好ましくは0.25〜13dl/gの範囲にあり、より好ましくは0.3〜12dl/gの範囲にあり、更に好ましくは0.5〜10dl/gの範囲にある。
【0086】
本発明によって製造されるオレフィン系重合体のゲル分率は20重量%以下である。ゲル分率が多いと、該オレフィン系重合体を成型加工に用いる際、好ましくない。ゲル分率は、好ましくは15重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下であり、更に好ましくは5重量%以下であり、最も好ましくは2重量%以下である。
【0087】
本発明によって製造されるオレフィン系重合体は、強度等の機械物性を発現するために、POおよびPLから選ばれる少なくとも一つの基が耐熱性を有することが好ましい。示差走査熱量測定法によって観察される、POおよびPLから選ばれる少なくとも一つの基に由来する融点は、好ましくは60℃以上であり、より好ましくは80℃以上であり、更に好ましくは100℃以上である。
【0088】
製造されたオレフィン系重合体の性質および構造は、通常一般に既知の解析方法で分析できる。例えば、核磁気共鳴分析、赤外分光分析、紫外・可視分光分析、X線散乱、ラマン分光等により特定部位の同定ができ、昇温溶出分別、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー、および極限粘度などの測定により分子量の測定ができ、熱分析により、熱特性が確認できる。また、透過型電子顕微鏡観察や走査電子顕微鏡、原子間力顕微鏡等による形態観察により、モルフォロジーの確認もできる。
【0089】
本発明によって製造されるオレフィン系重合体は、上述の方法により好適に製造できるが、これら方法により製造した場合、製造条件によっては、未反応のPO−X、PL−Mを含んだ混合物として得られる場合もある。これら重合体の混合物は、カラム等により、各々の重合体に分離することもできるが、本発明では、その用途に応じ、得られたオレフィン系重合体を混合物のまま使用してもよい。
【0090】
以下に、実施例を挙げて本発明をより詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0091】
〔物性評価〕
実施例では、以下の条件で物性測定を行った。
(GPC測定)
測定装置:ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC 2000型(Waters社製)
測定条件:カラム:TSKgel GMH6-HT x 2 + TSKgel GMH6-HTL x 2 (東ソー社製)
カラム温度:140℃、移動相:1,2-ジクロロベンゼン、
検出器:示差屈折率計、流速:1mL/分、
試料濃度:0.15%(W/V)、注入量:500μL、
サンプリング時間間隔:1秒、カラム較正:単分散ポリスチレン(東ソー社製)
分子量換算:PP換算/汎用較正法、
試料処理:試料30mgを1,2-ジクロロベンゼン20mLに145℃で完全に溶解した後、孔径が1μmの焼結フィルターで濾過したものを分析試料とした。
(NMR分析)
測定装置:JEOL GSX-400スペクトロメーター 400MHz (FTモード)
測定条件:パルス角:45°、パルス反復:5秒、
パルス幅:8000Hz、温度:118℃、サンプリング点数:32000、
試料処理:試料50mgを重水素1,2-ジクロロベンゼン0.5mLに120℃で完全に溶解したものを分析試料とした。
(IR分析)
測定装置:JEOL FT-IR 410スペクトロメーター (FTモード)
試料処理: 200℃の熱プレス措置により該試料のプレスシートを作成し、分析試料とした。
【0092】
(イオンクロマトグラフィ分析による臭素含量測定)
測定装置(イオンクロマトグラフ):DX-500(Dionex製)
(カラム) :IonPacAS14(Dionex製)
資料処理:試料を酸素フラスコ燃焼法にて分解処理し、イオンクロマトグラフ法により臭素含量を定量した。
(極限粘度)
デカリン中、135℃で測定を行った。
(無水マレイン酸基含量)
1H-NMR分析により、無水マレイン酸帰属のピークから算出した。
(DSCによる融点測定)
重合体の融点(Tm)は、示差走査熱量測定(DSC)によって、200℃で5分間保持した重合体サンプルを、20℃まで冷却して5分間保持した後に、10℃/分で昇温させたときの結晶溶融ピークから算出した。
(ゲル分率)
325メッシュのSUS製フィルターを用い、沸騰キシレンで3時間抽出した後の残留物から算出した。
【0093】
〔製造例1〕(PL−Mの製造例)
アルドリッチ社製のポリ(t−ブチルメタクリレート)28.4gを、トルエンに溶解し、トリフルオロ酢酸を加えて室温下で2時間攪拌処理した後、アセトン中で析出させ19.4gの部分的にカルボキシル基を導入したポリメタクリル酸誘導体を合成した。IR分析より、t−ブチルエステル部位の80mol%が、カルボキシル基に変換されていることを確認した。
上記、ポリメタクリル酸誘導体のトルエン溶液と、1規定の水酸化ナトリウム水溶液を、室温下で30分間縣濁攪拌処理することで、部分的にカルボン酸ナトリウム塩化したポリメタクリル酸誘導体を合成した。IR分析より、t−ブチルエステル部位の5mol%が、カルボン酸ナトリウム塩に変換されていることを確認した。
【0094】
〔製造例2〕(PO−Xの製造例)
特開2002-145944記載の方法に準じて製造したプロピレン/10-ウンデセン-1-オール共重合ポリマー(高温GPC測定によるポリプロピレン換算分子量 Mw=26400,Mw/Mn=1.71,H-NMR測定より得られるコモノマー含量1.0mol%、) 170gを、脱気窒素置換された2Lガラス製重合器に入れ、ヘキサン1700mL、2-ブロモイソ酪酸ブロミド9.2mLをそれぞれ添加し、60℃に昇温し、2時間加熱撹拌した。室温に戻した反応スラリー状ポリマー溶液を、桐山ロートでろ過した後、ロート上のポリマーをメタノール200mLで3回リンスした。ポリマーを50℃、10Torrの減圧条件下で10時間乾燥させ、白色ポリマーが得られた。H-NMRの結果、OH基の94%が2-ブロモイソ酪酸基で修飾されたハロゲン原子含有ポリプロピレンであった。得られたポリプロピレンの極限粘度([η])は0.35dl/gであった。
【実施例1】
【0095】
(オレフィン系重合体の製造例)
製造例1で得られたカルボン酸ナトリウム塩化したポリメタクリル酸誘導体10.0gと、製造例2で得られたハロゲン原子含有ポリプロピレン30.0gをキシレン150ml中に加え、130℃で4時間攪拌処理した。これをアセトン500重量部中に加え、得られた重合体をアセトン500重量部で3回洗浄した後、減圧下120℃で10時間乾燥し、38.1gのオレフィン系重合体を得た。
得られた重合体の極限粘度([η])は0.39dl/gであり、ゲル分率は2.8重量%であった。
〔比較例1〕
特開2005−047986号公報の実施例を参考にして調製した無水マレイン酸変性エチレン・ブテン共重合体([η]=2.05dl/g、無水マレイン酸基含量:0.5重量%)70重量部と、特開2002−145944号広報を参考にして調製した水酸基含有ポリプロピレン30重量部、およびp−トルエンスルホン酸0.1重量部をキシレン1500重量部中に溶解し、130℃で4時間攪拌処理した。これをメタノール3000重量部中に加え、得られた重合体をメタノール3000重量部で3回洗浄した後、減圧下120℃で10時間乾燥し、99重量部のオレフィン系重合体を得た。
得られた重合体の極限粘度([η])は1.99dl/gであり、ゲル分率は22重量%であった。DSC測定から、融点は163.5℃に観測された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン重合体からなる基(PO)と、極性重合体からなる基(PL)が、下記式(1)の構造で結合していることを特徴とするオレフィン系重合体。
【化1】

(式中nは、1以上の整数を表す)
【請求項2】
ハロゲン原子を含有する、炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン重合体(PO−X)と、解離性金属原子を含んでなる極性重合体(PL−M)を処理して製造することを特徴とするオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項3】
PL−M中の解離性金属原子が、カルボン酸塩を構成する金属原子であることを特徴とする請求項2記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項4】
ハロゲン原子を含有する、炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン重合体(PO−X)と、カルボン酸塩を構成する金属原子を含んでなる極性重合体を処理して製造することを特徴とする請求項1記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項5】
カルボン酸塩を構成する金属原子が、周期律表第1族乃至第3族から選ばれる1種類以上の金属種であることを特徴とする請求項3記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項6】
製造されるオレフィン系重合体の、デカリン中での極性粘度測定によって観察される[η](dl/g)の値が0.2〜15.0の範囲にあって、ゲル分率が20重量%以下であることを特徴とする請求項2乃至4記載のオレフィン系重合体の製造方法。

【公開番号】特開2009−102597(P2009−102597A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278198(P2007−278198)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】