説明

オーディオ信号を処理する装置及び方法

オーディオ信号を処理するための装置であって、オーディオ信号の拡大状態を検出するように構成された検出ユニットと、検出されたオーディオ信号の拡大状態に依存してオーディオ信号の拡大特性を変更するように構成された拡大変更ユニットと、を有する装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ信号を処理するための装置に関する。
【0002】
これに加え、本発明はオーディオ信号を処理する方法に関する。
【0003】
更に、本発明はプログラム要素に関する。
【0004】
更に、本発明はコンピュータ読み取り可能な媒体に関する。
【背景技術】
【0005】
オーディオ再生装置は、ますます重要なものになっている。とりわけ、オーディオ操作機能を有するオーディオシステムが、ますます重要になっている。
【0006】
米国特許US5,742,687は、オーディオ周波数スペクトル中に周波数を持つ信号を受信するための第1の入力部及び第2の入力部と、出力部と、を持つ信号結合回路を開示している。第1の入力部と出力部との間の第1の信号経路が、第1の伝送特性を持つ。第2の入力部と出力部との間の第2の信号経路が、第2の伝送特性を持つ。これら伝送特性は異なり、それにより第1の信号経路を通過する信号成分と、第2の信号経路を通過する信号成分との間に、位相シフトを生じさせる。これら伝送特性により決定される振幅伝送は、所定の周波数を超えて減少する。位相伝送特性の間に、周波数と共に減少する位相差がある。前記所定の周波数より低い周波数については、第1の伝送特性により決定される振幅伝送は、第2の伝送特性により決定される振幅伝送を超過する。第1の入力部と第2の入力部とを相互接続することにより、周波数の関数としての、該相互接続された入力部と出力部との間の振幅伝送は、略一定となる。該信号結合回路は、ステレオオーディオ再生システムにおいて、ステレオ音像を強調するために利用される。ステレオオーディオ再生システムは、オーディオ−ビジュアル再生システムの一部を形成しても良い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のオーディオ再生システムでは、オーディオ再生品質が満足いくものではないということが起こり得る。
【0008】
本発明の目的は、適切なオーディオ再生品質を持つオーディオシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上に定義された目的を達成するため、独立請求項によるオーディオ信号を処理するための装置、オーディオ信号を処理する方法、プログラム要素及びコンピュータ読み取り可能な媒体が提供される。
【0010】
本発明の一実施例によれば、オーディオ信号を処理するための装置であって、前記オーディオ信号の拡大状態を検出するように構成された検出ユニットと、前記検出された前記オーディオ信号の拡大状態に依存して、前記オーディオ信号の拡大特性を変更するように構成された拡大変更ユニットと、を有する装置が提供される。
【0011】
本発明の他の実施例によれば、オーディオ信号を処理する方法であって、前記オーディオ信号の拡大状態を検出するステップと、前記検出された前記オーディオ信号の拡大状態に依存して、前記オーディオ信号の拡大特性を変更するステップと、を有する方法が提供される。
【0012】
本発明の更に他の実施例によれば、オーディオ信号を処理するコンピュータプログラムが保存されたコンピュータ読み取り可能な媒体であって、前記コンピュータプログラムは、プロセッサにより実行されたときに、上述した特徴を持つ方法を実行又は制御するように構成された、コンピュータ読み取り可能な媒体が提供される。
【0013】
本発明の更に他の実施例によれば、オーディオ信号を処理するプログラム要素であって、プロセッサにより実行されたときに、上述した特徴を持つ方法を実行又は制御するように構成されたプログラム要素が提供される。
【0014】
本発明の実施例により実行され得る、オーディオ再生品質を改善するための信号処理及びオーディオ操作は、コンピュータプログラムによって即ちソフトウェアによって、若しくは1つ以上の特殊な電子最適化回路を利用することによって即ちハードウェアによって、又は混成の形態で即ちソフトウェア構成要素とハードウェア構成要素とを用いて、実現されても良い。
【0015】
「拡大(widening)」なる語は、特定のオーディオ効果、とりわけ変更されたステレオ効果を得るためにオーディオ信号が操作されるオーディオ信号処理方式を、特に示し得る。更に詳細には、ステレオ及びモノラル成分を抽出し、時間及び/又は空間的に成分を操作することにより、人間の聴取者により知覚されるステレオ特性を操作する(とりわけ向上させる)ことを可能とする、ステレオ拡大器(又はステレオ強調器)が提供され得る。例えば、斯かる操作によって、左チャネルと右チャネルとの差が強調される。「拡大」は、ステレオ効果を強調する(又は弱める)ための、ラウドスピーカのベースの仮想的な拡大を示し得る。
【0016】
「拡大特性の変更」なる語は、信号を選択的に広げる又は狭める(即ち縮小させる)操作方式を、信号に適用することを特に示し得る。例えば、以前に広げられた信号が狭められ、及び/又は以前に狭められた信号が広げられる。この手段をとることにより、元のオーディオ信号特性を回復することが可能となり得る。それ故、拡大特性の変更は、正の拡大又は負の拡大を含み得る。
【0017】
「ブラインド分離アルゴリズム」又はブラインド信号分離なる語は、ブラインド音源分離としても知られるものであり、信号の性質についての情報の支援なく(又は非常に少量の情報を用いて)、混合された(相関又は非相関)信号のセットから、信号のセットを分離することに関連する、いずれかのアルゴリズムを特に示し得る。例は、主成分分析、特異値分解、独立成分分析、従属成分分析、又は非負行列因子分解である。
【0018】
一実施例によれば、入力オーディオ信号が、可能性のある、以前に実行されたステレオ拡大操作に関して解析される、オーディオ処理方式が提供され得る。信号処理部の上流部分(例えば別個のCDプレイヤ又はリモートのTV局)に位置するインスタンス又はエンティティが既に信号拡大を実行していることを検出した場合には、該拡大が部分的に又は完全に補償され、それにより、オーディオ品質の劣化なく、該信号を更なる選択的な信号操作(例えば更なる拡大処理)に適合させても良い。それ故、逆拡大(又は逆縮小)処理が実行され、信号品質を乱すことなく、他の信号操作が実行され得る状態へと該信号を部分的に又は完全に戻すことを可能とし得る。
【0019】
それ故、本発明の実施例は、オーディオ信号の精度及び品質を改善するため、ステレオベースの拡大のキャンセルを可能とし得る。
【0020】
ステレオベースの拡大は、テレビジョン及びステレオセットのような、多くの消費者向け製品において利用され得る。斯かるステレオ拡大システムは、ラウドスピーカが、実際よりも離れて配置されているかのように知覚させ得る。このことは、消費者に対して、より優れた聴取性能を与える。近年、メディア放送局は、ステレオ拡大が既に適用された番組を放送することを開始している。消費者がステレオ拡大が適用されたTVを持っている場合には、このことは、ステレオ拡大システムの連続に帰着し、聴取性能の低下に帰着する。
【0021】
一実施例によれば、元のオーディオ信号、即ちステレオ拡大が適用されていない信号を解決するシステムを提供することにより、斯かる問題が克服され得る。このことは、消費者が望む態様でステレオ拡大を適用することを可能とする。
【0022】
ステレオ拡大システムは、ディジタル信号処理システムであっても良い。該システムは、元のオーディオ信号をフィルタリングする特定の構造を持ち得る。全ての更なる情報においてステレオ拡大が適用されたことが既知である場合、即ち拡大の量、フィルタ構造及びフィルタが知られている場合には、ステレオ拡大システムが反転させられることが可能であることが認識されている。更に、拡大の量を除く拡大システムについての全ての情報が既知である場合には、元の信号を解決することが可能であることが認識されている。しかしながら、フィルタ構造のみが既知である場合にも、元の信号が解決されることが可能となり得る。更に、システムについての既知のものがなくてもシステムを解決することが可能となり得る。
【0023】
拡大器は直列で利用され得、即ち、例えばTVスタジオ、CD、他のいずれかの記憶媒体、又は伝送チャネルにおいて既に信号が拡大されており、例えばオーディオセット(例えば携帯型のもの)又はTVセットにおいて拡大器が再度利用される場合には、拡大器構成ブロックの望ましくない連続が生じ得る。これら拡大器の連続は一般に望ましくない状況であり、低いオーディオ品質に帰着し得る。
【0024】
斯かる問題を克服するため、本発明の一実施例は、オーディオ入力信号を拡大するように構成されたオーディオ処理ユニットに関する。斯かるオーディオ処理ユニットは、オーディオ入力信号を受信するための入力部と、オーディオ入力信号を拡大し出力信号を出力するように構成された拡大ユニットと、オーディオ入力信号の拡大状態を表す拡大制御信号を供給するように構成された制御ユニットと、を有し得る。拡大ユニットは、拡大制御信号に基づいてオーディオ入力信号を拡大するように構成され得る。
【0025】
本発明の実施例は、拡大を検出し、(部分的又は完全に)該拡大を取り消し、又は次の拡大器を抑制して、より優れた音質に帰着させることを可能し得るという利点を持ち得る。
【0026】
従って、一実施例によれば、ステレオベース幅の自動的な制御が可能とされ得る。ステレオベース拡大器の連続が、信号劣化なく可能とされ得る。
【0027】
ステレオベース拡大器が利用される。ひとつの特別な形態は、Philips社のIncredible Surroundシステムとして知られている。拡大器は、TVセット及び携帯型オーディオセットにおけるようにラウドスピーカが互いに近接している場合に好まれる、ラウドスピーカの間の仮想的な拡大を提供するために利用され得る。従来、例えばTVスタジオやCDにおいてステレオ信号が既に拡大されており、例えばオーディオセット又はTVセット(又は他のいずれかの、特に携帯型装置)において拡大器が再度利用される場合に、問題が生じ得る。一例は、或るTV放送局が他の放送局よりも信号を拡大し得る点であり、チャネル切り換え(ザッピング)の間に音像が不快な態様で変化するため、連続する第2の拡大器がない場合であってもこのことは不快なものとなり得る。
【0028】
本発明の一実施例によれば、例えば拡大を完全に取り消す(undoing)ことにより、拡大が変更され得る。他の用途は、拡大を、他の拡大効果へと変更することである。拡大を最初に取り消し、次いで新たな拡大を適用することにより該拡大を変更することも可能である。
【0029】
他の実施例によれば、最後の2つの処理が1つに結合され得る。必須のフィルタが算出され得、信頼性の高い及び安定したものと思われる。また、拡大と該拡大の取り消しとの順序が交換されても良い。
【0030】
次いで、オーディオデータを処理するための装置の更なる実施例が説明される。しかしながら、これらの実施例は、方法、プログラム要素及びコンピュータ読み取り可能な媒体についても当てはまる。
【0031】
検出ユニットが、オーディオ信号が以前に広げられている(又は狭められている)か否かを検出するように構成され得る。換言すれば、オーディオ信号の解析によって、拡大(又は狭める)処理又はアルゴリズムが前もって、例えば該オーディオ信号が該装置に供給される前に、該オーディオ信号に適用されているか否かが検出される。該検出は単純な「Yes/No」推定で実行されても良いし、段階的な態様で実行されても良い。
【0032】
後者の場合については、検出ユニットが、例えば該装置の上流(信号処理の経路に関して)に位置するインスタンスの、オーディオ信号が以前に拡大された度合いを表す拡大パラメータを検出することも可能である。斯かる拡大パラメータ(実施例によればαと示され得る)は或る値の範囲を持っても良く、例えば0から1までに亘っても良く、該パラメータ値は拡大の度合いを示し得る。このことは、高められた精度で、以前に適用された拡大を特徴付けることを可能とし得る。
【0033】
検出ユニットは、ブラインド分離アルゴリズムに基づいて、オーディオ信号の拡大状態を検出するように構成されても良い。斯かるアルゴリズムを適用することにより、他の目的のために前に利用された既に開発されているアルゴリズムを利用して、高い精度で且つ少ない労力で拡大状態を検出することが可能となり得る。
【0034】
検出ユニットは、オーディオ信号自体の情報及び/又は外部情報に基づいて、オーディオ信号の拡大状態を検出するように構成されても良い。換言すれば、検出ユニットは、オーディオ信号の拡大特性に関する情報を導出するために、(専ら)オーディオ信号自体を利用しても良い(例えばブラインド信号分離を実行する)。代替としては、検出ユニットは、オーディオ信号の拡大特性に関する情報を導出するために、(専ら)外部情報を利用しても良い。斯かる外部情報は、インターネットから、オーディオコンテンツ供給源(CDのような)から、データベースから、専門家の知識又は経験的な知識を利用して、等のように取得されても良い。斯かる外部情報を解析することは(ここで「外部」なる語は、オーディオ信号自体には属さない情報を示し得る)、フレーム条件に関する知識(例えばCDに保存されたオーディオコンテンツが記録された方法)を改善し、オーディオデータの拡大が以前に行われた見込みが高いか否かの情報を導出することを可能とし得る。更に代替としては、検出ユニットは、オーディオ信号の拡大特性に関する情報を導出するために、オーディオデータと外部情報との両方を利用しても良い。
【0035】
拡大変更ユニットは、検出された拡大状態が、オーディオ信号が以前に拡大され又は狭められていることを示す場合に、以前に実行された拡大(又は狭めること)を、少なくとも部分的に、とりわけ完全に、取り消すような態様でオーディオ信号を拡大する(又は狭める)ように構成されても良い。換言すれば、拡大変更ユニットは、例えば該装置が接続されたリモートのオーディオコンポーネント(例えばCDプレイヤ又は接続されたTV局)によって、オーディオ信号に第1の拡大アルゴリズムが適用される前の最初の又は元の状態に、該オーディオ信号を戻し得る。該信号が元の状態に戻された後、2つの拡大処理の望ましくない連続によってオーディオ信号を劣化させることなく、特定の所望の(例えばユーザ制御された)拡大アルゴリズムが該装置によって適用されても良い。しかしながら、2つの別個のユニット又は装置が、以前の外部での拡大を取り消す処理と、所望の内部での拡大を実行する処理の両方を実行しても良い。代替として、2つの別個のユニットが、両方の機能を持つ1つの単一ユニット又は装置として構成されても良い。
【0036】
拡大変更ユニットは、検出された拡大状態がオーディオ信号が以前に拡大され又は狭められていることを示す場合に、該オーディオ信号の拡大又は縮小プロパティを変更するように構成されても良い。それ故、斯かる実施例は、以前の拡大を完全に取り消し後続する変更された拡大を実行することなく、単に拡大特性を変更しても良い。
【0037】
拡大変更ユニットは、検出された拡大状態がオーディオ信号が以前に拡大されていない又は狭められていないことを示す場合に、オーディオ信号の拡大又は縮小を抑制するように構成されても良い。それ故、オーディオ信号を該装置に入力する前に拡大が実行されていないことが決定された場合には、拡大変更ユニットは、単に何もしないか、又は操作を省略し、即ちオーディオ信号が変更なく通過するようにする。この手法をとることにより、以前の拡大が行われていない場合であっても、望ましくない縮小処理が実行されることを、確実に防ぎ得る。
【0038】
該装置は、上述した拡大変更ユニットとは別個に備えられた、拡大変更ユニットにより処理されたオーディオ信号を拡大するように構成されても良い、更なる又は付加的な(別個の)拡大変更ユニットを有しても良い。それ故、拡大変更ユニットの連続が実現され得るが、上述した問題を伴わない。即ち、第1の拡大変更ユニットによる以前に実行された拡大(又は縮小)の取り消しが、該信号を最初の状態へと戻し、更なる拡大変更ユニットが次いで、いずれかの所望の拡大処理を実行しても良い。
【0039】
拡大変更ユニットは、少なくとも1つのフィルタ、即ち、特定の周波数及び/又は振幅範囲のオーディオを通過させることが可能であり、他のオーディオ寄与がフィルタリングによって抑制又は除去されるオーディオ構成要素を用いて実現されても良い。
【0040】
拡大変更ユニットは、ステレオ拡大及びステレオ縮小から成る群から1つを選択的に実行するように構成されても良い。換言すれば、拡大は必ずしも、オーディオ信号のステレオ特性が増大させられることを意味するものではなく、斯かる特性の減少もあり得る(この場合にはステレオ縮小と示され得る)。
【0041】
本装置は、処理されたオーディオ信号を再生するように構成された、複数の(2個以上の)オーディオ再生装置を有しても良い。斯かるオーディオ再生装置は、ラウドスピーカ、ヘッドセット等を有しても良く、処理されたオーディオ信号の再生を人間の聴取者により可聴のものとし得る。特に、オーディオ再生装置間の距離が小さい場合、知覚されるオーディオ品質を改善するために拡大が望ましいものとなり得る。
【0042】
オーディオ信号は、多オーディオチャネル信号、とりわけステレオ信号であっても良い。「ステレオ信号」なる語は特に、オーディオ信号が、それぞれが別のラウドスピーカにより再生され、それによってステレオ効果又は他のいずれかの空間的な音響的な知覚を生成することを意図された、2つの成分を持つという事実を示し得る。オーディオ信号がステレオ信号である場合には、知覚されるオーディオの主観的な品質を改善するため、拡大が特に好まれ得る。しかしながら、多オーディオチャネル信号は、例えば5.1システム(3つの主チャネル(左、中央、右)、2つのサラウンドチャネル(左サラウンド、右サラウンド)及びLFEチャネル(全周波数チャネルの帯域幅の約10分の1を利用し得るため「.1」チャネルである)を用いるオーディオフォーマットを示す)におけるように、2つよりも多いオーディオ信号を有しても良い。オーディオサラウンドシステムは、本発明の実施例が実装されるようにしても良い。
【0043】
オーディオデータを処理するための装置は、携帯型オーディオプレイヤ、ラウドスピーカ、オーディオサラウンドシステム、モバイル電話、ヘッドセット、ラウドスピーカ、補聴器、ハンズフリーシステム、テレビジョン装置、TVセットオーディオプレイヤ、ビデオレコーダ、モニタ、ゲーム装置、ラップトップ型コンピュータ、オーディオプレイヤ、DVDプレイヤ、CDプレイヤ、ハードディスクベースのメディアプレイヤ、インターネットラジオ装置、一般向け娯楽装置、MP3プレイヤ、ハイファイシステム、車両用娯楽装置、乗用車向け娯楽装置、医用通信システム、装着式装置、音声通信装置、家庭用シネマシステム、家庭用シアターシステム、オーディオサーバ、オーディオクライアント、フラットテレビジョン装置、環境生成装置、及び音楽ホールシステムから成る群からの少なくとも1つとして実現されても良い。
【0044】
しかしながら、本発明の実施例によるシステムは音声又はオーディオデータの品質を改善することを主に意図したものであるが、本システムをオーディオデータとビジュアルデータとの組み合わせに適用することも可能である。例えば、本発明の一実施例は、1つ以上のスピーカが利用される、ビデオプレイヤ又は家庭用シネマシステムのようなオーディオビジュアル用途において、実装されても良い。
【0045】
本発明の以上に定義された態様及び更なる態様は、以下に記載される実施例から明らかであり、これら実施例を参照しながら説明される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施例によるオーディオ信号を処理するための装置を示す。
【図2】オーディオ信号を処理するための装置を示す。
【図3】オーディオ信号を処理するための装置を示す。
【図4】オーディオ信号を処理するための装置を示す。
【図5】本発明の実施例によるオーディオ信号を処理するための装置を示す。
【図6】本発明の実施例によるオーディオ信号を処理するための装置を示す。
【図7】本発明の実施例によるオーディオ信号を処理するための装置を示す。
【図8】本発明の実施例によるオーディオ信号を処理するための装置を示す。
【図9】本発明の実施例によるオーディオ信号を処理するための装置を示す。
【図10】本発明の実施例による位相差算出方式を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は以下に実施例を参照しながらより詳細に説明されるが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0048】
図面における説明図は、模式的なものである。異なる図において、類似する又は同一の要素は、同一の参照記号を付される。
【0049】
以下、図1を参照しながら、本発明の一実施例による、オーディオ信号120を処理するための装置100が説明される。
【0050】
装置100は、オーディオ信号120を供給する例えばCDプレイヤ、ハードディスク又はリモートのTV局への接続のようなオーディオコンテンツ供給源101を有する。オーディオコンテンツ供給源101内では、オーディオデータのいずれの前処理が発生しても良く、とりわけ例えばオーディオ信号120のステレオ効果を拡張するためのいずれかの拡大アルゴリズムが適用されても良い。
【0051】
図1から分かるように、オーディオデータ供給源101と双方向的に通信することが可能な、ユーザインタフェース102が備えられる。ユーザ入/出力装置102は、人間のユーザが、装置100の動作に関連する命令を供給することを可能とする。ユーザ入/出力装置102は、LCD、TFT又は陰極線管のモニタのようなディスプレイユニットを有しても良い。更に、例えばキーパッド、ジョイスティック、ボタン、トラックボール及び/又は音声認識システムのマイクロフォンを有する、ユーザ入/出力装置102における入力部が予期され得る。
【0052】
図1は更に、オーディオプロセッサ103(例えば中央処理装置又はマイクロプロセッサ)を示す。プロセッサ103は、装置100の動作のための必要な算出処理を実行し得る。
【0053】
装置100は、オーディオ信号120の拡大状態を検出する(例えばブラインド信号分離によって)ように構成された検出ユニット108を有する。オーディオデータ供給源101において以前に実行された可能性のある拡大に関するオーディオ信号120の解析の後、検出ユニット108は、オーディオ信号120の検出された拡大状態に従って、オーディオ信号120を拡大(又は縮小)するように構成された拡大変更ユニット107を制御する制御信号121を生成する。
【0054】
とりわけ、検出ユニット108は、オーディオ信号120が、ユニット101において以前に拡大されているか否かを検出する。斯かる「ディジタル的な」(換言すればYes/No型の)決定に対する代替としては、決定ユニット108は、オーディオ信号120が以前に拡大された度合いを示す、拡大パラメータαを検出するように構成されても良い。検出ユニット108はまた、拡大状態を決定するため、ブラインド分離アルゴリズムを実行するブラインド分離ブロック108として示され得る。
【0055】
制御信号121に基づいて、拡大変更ユニット107は、検出された拡大状態が、オーディオ信号120が以前に拡大されていることを示す場合には、以前に実行された拡大(オーディオデータ供給源101により実行されたもの)を少なくとも部分的に取り消し得る。代替としては、拡大変更ユニット107は、検出された拡大状態が、オーディオ信号120がユニット101において以前に拡大されていないことを示す場合には、オーディオ信号120がユニット107によって拡大されることを防いでも良い。換言すれば、ユニット107は、実行された可能性のある以前の拡大を除去又は低減する。
【0056】
中間信号122が供給される、更なる拡大変更ユニット109が示されている。中間信号122は、拡大変更ユニット107の出力部において供給される。更なる拡大変更ユニット109は、拡大変更ユニットにより処理されたオーディオ信号122を、いずれかの所望の態様で(例えば入/出力装置102を介してユーザにより定義された調節入力に従って)拡大する。
【0057】
更なる拡大変更ユニット109の出力部において、出力オーディオ信号123が供給され、該信号は第1のラウドスピーカ104及び第2のラウドスピーカ105の入力部に供給され、これらラウドスピーカは次いで音響波106をステレオ信号として発する。
【0058】
要約すると、拡大変更ユニット107がオーディオ信号120に対して以前に実行された拡大を取り消し、それ故縮小されたオーディオ信号122を生成するため、続いて接続された付加的な拡大変更ユニット109が、信号122及び123の品質を低下させることなく、いずれの所望の拡大アルゴリズムをも適用することができるという対策が得られる。
【0059】
以下、本発明の実施例の更に詳細な理解を提供するため、従来のシステムが説明される。
【0060】
ステレオベース拡大器が利用されている(R. M. Aartsによる「Phantom Sources Applied to Stereo-Base Widening」(J. Audio Eng. Soc.、48、3、181-189頁)又は米国特許US5,742,687を参照されたい)。ひとつの特別な形態は、Philips社のIncredible Surroundシステムとして知られている。拡大器は、TVセット及び携帯型オーディオセットにおけるようにラウドスピーカが互いに近接している場合に好まれる、ラウドスピーカの間の仮想的な拡大を提供するために利用される。
【0061】
図2は、ステレオ音楽拡大器の構成200を示し、ここでブロック201及び202は電子フィルタ(アナログ又はディジタル)である。信号L及びRはそれぞれ左及び右の入力信号であり、L及びRはラウドスピーカ(図2には示されていない)に送られるそれぞれの対応する出力信号である。
【0062】
図3は、方式200の更に抽象的な方式300を示す。ここでAは、以下の式により与えられる:
【数1】

【0063】
換言すれば、図3の方式300は、図2の構成、即ちステレオ音楽拡大器の、抽象的なバージョンを示す。
【0064】
ブロック301は、入力信号L及びRを選択的に操作して、出力信号L及びRを生成するように構成された操作ユニットを示し得る。
【0065】
斯かる従来のシステムにおいては、ステレオ信号が既に拡大されている場合に、問題を生じ得る(図4における方式400を参照されたい)。
【0066】
斯かる以前の拡大は、TVスタジオ、CD、他のいずれかの記憶媒体、又は伝送チャネルにおいて実行され得るものであり、A1により示される図4の拡大ユニット401によって模式的に示され得る。例えばオーディオセット(例えば携帯型のもの)又はTVセットにおいて、更なる拡大ユニット402が再度利用され得る(図4においてA2により示される)。
【0067】
図5は、拡大が拡大変更ユニット501により実行され、逆拡大変更ユニット502により取り消される、方式500を示す。それ故、図5においては、出力信号L及びRは、入力信号L及びRと同一である。
【0068】
図5において、ブロック501と502との順序を変更すること、即ち、操作されたオーディオ信号を拡大変更ユニット501に供給する前に、最初に逆拡大変更ユニット502によってオーディオ信号を操作することも可能である。ブロック501及び502は、信号処理経路におけるこれらブロックの順序にかかわらず、同一の出力信号を供給する性質を持ち得る。
【0069】
図6は、拡大変更ユニット501及び逆拡大変更ユニット502に加えて、付加的な拡大変更ユニット601が備えられる方式600を示す。
【0070】
それ故、ユニット501及び502の機能は互いを補償し、それにより、効率的に、付加的な拡大変更ユニット601の操作のみが生じる。
【0071】
換言すれば、図4はステレオ音楽拡大器の連続を示し、図5は取り消しを示し、図6は変更を示す。
【0072】
拡大器が直列で利用される場合には、これら構築ブロックの望ましくない連続が生じ得る。これら拡大器の連続は一般に望ましくない状況であり、低いオーディオ品質に帰着する。それ故、本発明の実施例は、拡大を検出して該拡大を補償し又は次の拡大器を抑制し、より優れた音質に帰着する。幾つかのTV放送局が他の放送局よりも大きく信号を拡大している場合には、チャネル切り換え(ザッピング)の間に音像が不快な態様で変化するため、連続する第2の拡大器がない場合であってもこのことは不快なものとなり得る。
【0073】
本発明の実施例によれば、例えば拡大を完全に取り消すことにより、拡大が変更される(図5を参照されたい)。行列A−1は、Aの逆行列を示し、出力が対応する入力に等しくなることに帰着する(L=L及びR=R)。この場合、拡大が取り消されたと言える。CDにおける音楽がAによりCDレコーディングスタジオにおいて拡大され得、CDプレイヤ又はいずれかの再生装置においてA−1によって取り消されることは、留意されるべきである。
【0074】
実施例による他の用途は、拡大を、他の拡大効果へと変更することである。図6の構成を利用して、新たな拡大Aを適用することによって、取り消し及び次いでその変更が実行されるようにすることも可能である。望ましい場合には、最後の2つの処理が組み合わせられても良い。
【0075】
図5は、以前に実行された拡大が取り消される実施例を示す。この場合、拡大が完全に取り消され、従ってユーザ自身が、図6に示されるように拡大Aを適用することを決定することができる。
【0076】
Incredible Soundの場合についての行列A−1は、容易に算出可能である。A−1の対応するフィルタの係数はこの場合既知であり、安定した及び信頼性の高いものと思われる。
【0077】
図7は、本発明の実施例によるオーディオ処理方式を示す。
【0078】
一実施例による図7のオーディオデータを処理するための装置700のブロック108は、ブラインド分離アルゴリズムを実行することが可能であり、それ自体が本分野において知られている。単純な実施例においては、拡大(Aによって為される)があるか否かが検出される必要があるのみである。前者の場合、拡大がA−1によって取り消され、後者の場合には何も実行されない。
【0079】
更に改良された実施例においては、以下に議論されるように、拡大は、パラメータαを用いて、パラメータ化されたバージョンで実行され得る。このとき、ブロック108はαを決定しA−1を算出することができ、解はパラメータαによりパラメータ化される。この状況においては、本明細書の最後の1つの式に対して参照が為され(以下を参照されたい)、更に効率的な方法では、該最後の1つの式に先行する2つの式により、以下に言及される図9の右図を用いる。
【0080】
図7は、Aの拡大を、Aの逆行列A−1により取り消すことを示し、該取り消しはブラインド分離ブロック108により制御され得る。出力信号L及びRは、入力信号L及びRと可能な限り類似したものとされる。Incredible Sound実装においては、このことは完全に可能であると考えられる。
【0081】
以下、ブラインド分離ブロック108が詳細にどのように動作するかに関して、詳細が説明される。種々の実施例が可能である:
(i)左及び右信号が独立であること、即ち古典的なブラインド音源分離問題を仮定することが可能であり得る(Hiroshi Sawada、Ryo Mukai、Shoko Araki及びShoji Makinoによる「A Robust and Precise Method for Solving the Permutation Problem of Frequency-Domain Blind Source Separation」(IEEE Transactions on Speech and Audio Processing、Vol. 12、No. 5、2004年9月、530-538頁)を参照されたい)。この仮定を行うことは奇妙に思われるかも知れないが、より改良された実施例において、該仮定が真である信号の部分のみをとることが可能である。更に、ブラインド音源分離を用いる場合、信号を分離することが望ましいこととなり得るが、本発明の実施例は、分離、拡大(縮小)及び再混合することを望み得、このことは該問題を非常に緩和させる。単純な実施例においては、拡大(縮小)フィルタが既知であり、従って拡大係数α即ち拡大(縮小)の量を推定するのみで十分となり得、このこともまた該問題をかなり緩和し得る。
(ii)信号が相関していることを仮定することも可能であり、このことは実際の状況に非常に近いものとなり得る。更に、該仮定が成り立つ信号の時間的な部分のみを考慮することが可能である。このとき、出力信号の位相差(拡大により増大させられ得る)を測定することにより、拡大の量を推定し、それ故該拡大を取り消すことが可能となり得る。
(iii)(i)と(ii)とを組み合わせることが可能である。
【0082】
現実的な方法は、出力信号間の相関を測定し、相関が約−1である場合にはαが1に等しいか又は近い値であることを仮定することである。相関が(通常のオーディオとして)小さい場合には、αはゼロに近い値か又は等しくなり得る。拡大及び縮小の演算を、信号自体ではなく、合計及び差分信号に対して実行するようにすることにより、混合システムが非常に単純になり得る。このとき、以上に引用したSawadaらの論文の図1に示されるように行列全体ではなく対角行列のみに対するフィルタによって行列が得られ、それにより、全体の分離問題が、含まれる論文において考察されるような全体問題よりも、かなり単純になり得る。
【0083】
結論として、Sawadaらの論文も示しているように、議論された部分問題が先行技術で解決されているが、本発明の実施例は更に単純な場合に対処し得る。即ち、フィルタが既知(混合システムが既知)であるが、混合の量(α)のみが未知である場合である。
【0084】
入力信号として第1の装置の出力信号(L、R)を受信する第2の装置に、「縮小器」が配置されても良い。従って、第1の装置は、実際には第2の装置から離れていても良い。第1の装置のAの情報が利用可能でない場合、ブラインド分離と呼ばれ得る。
【0085】
拡大器は、パラメータαによって、図3から図8への変更により、変更可能とされ又はパラメータ化されても良い。α=1である場合、図8は図3と等価となり、出力が入力と等しくなる。
【0086】
図8による装置800は、第1の加算ユニット801と、第2の加算ユニット802とを更に有する。
【0087】
換言すれば、図8は、パラメータαを用いた、図3の拡大器の一般化を示す。α=1である場合、図8は図3と等価となり、α=0である場合、出力が入力と等しくなる。
【0088】
このことは、以下の式のように記述され得る。ここで、簡略さのため同一のAが利用されるが、上述した第1の式のもののパラメータ化されたバージョンである:
【数2】

【0089】
フィルタH及びH(図2を参照されたい)を用いる動作の代わりに、拡大及び縮小の、より効率的なとり得る実装が可能となる。前者は、本発明の実施例による装置900を示す図9に示される。
【0090】
図9は右図を示す(明確さのため、左図のような「1−α」により示される経路は除かれている)。
【0091】
左図の構成において、最初に合計及び差分信号が決定される。合計及び差分信号に対して動作する2つのフィルタH及びHが存在する。次いで、これら信号は再び合計及び減算され、最終的にパラメータ化された出力信号L及びRを得る。図9の左側の方式は、右側の方式と完全に等価である。
【0092】
加算ユニットは、参照番号901乃至904により示される。ブロックH及びHは、参照番号901及び911により示される。更に、合計/差分ブロック912及び913が備えられる。
【0093】
本発明の有利な実施例は、図9の右図を利用するものである。拡大を取り消すため、それぞれH及びHとして示され得る、H及びHの逆フィルタを持つことが可能である。
【0094】
このことは、以下の式において示される。これらの場合において、行列Aの対象性のため、2つのフィルタH及びH並びにそれぞれこれらフィルタの逆フィルタである2つのフィルタH及びHのみで十分である。
【数3】

【0095】
結論として、ブロック108はαを推定し得、H及びHは既知である(係数が既知である)ため、上述の式により与えられるフィルタH及びHもまた既知である。H及びHを算出するためのこれら2つの式における除算を回避するため、フィルタH及びHは再帰的な態様で算出されても良い。
【0096】
及びH又はH及びHが未知である場合にも、Aの逆行列を算出することも可能である。
【0097】
信号が拡大されていない場合にも、Aの逆行列を利用することが可能であり、このようにしてステレオ縮小器が得られ得る。
【0098】
2x2行列の例はnxm行列へと一般化することが容易であることは明らかであり、例えば5チャネルのシステムについては5x5行列が存在する。この場合、前チャネル及び後チャネルにおいて、拡大又は拡大の取り消しを独立した態様で行うことが可能となり得る。
【0099】
以下、図10を参照しながら、本発明の一実施例によるパラメータαのブラインド推定の状況における位相差算出方式が説明される。αの値は、0と1との間で変更され得る。値0はステレオ拡大がないことを示し、値1は出力信号が拡大された信号のみから成ることを意味する。0と1との間の値は、出力信号が元のステレオ信号とフィルタリングされた信号との混合であることを意味する。実際には、αの値は0と1との間となる。全てのシステム特性(拡大の量αを除いて)が既知である場合には、該システムの逆動作を為すためにαが検出される必要がある。αの決定は、ブラインド同定問題である。元のオーディオ信号は、システムにとって未知であり得る。更に、実施例によれば、入力信号は独立であるとみなされるべきではない。αを推定するため、以下の考察が為されても良い。
【0100】
オーディオ信号の位相差は、あわせて分散されるノイズ信号の位相差と類似し得る。オーディオ信号をノイズ信号と比較するため、分布関数についての量的測定が有利となり得る。オーディオ信号及びノイズ信号の双方の分布は、ほぼ対称的なものとなり得、従って差分の平均は約0となり得る。このことは、分散又は標準偏差(分散の平方根)が、密度関数についての測定として容易に利用され得ることを意味している。あわせて分散されるノイズ源とオーディオ信号との間の類似度にもかかわらず、量αに対する1つの問題が存在する。該問題とは、差分の度合いが、オーディオ断片毎に異なり、傾斜角に影響を及ぼし得ることである。このことは、αが傾斜の勾配に直接相関しない場合があることを意味する。
【0101】
拡大係数αを決定するため、表が利用されても良い。表に対する代替としては、図10の方式が実装されても良い。本システムは、フィルタリングされていない場合においては分散の一次近似の勾配の角度がゼロに等しくなり得るという仮定に基づく。本システムの目的は、傾斜角をゼロへと制御することにある。一次近似の勾配の角度μを見出す方法は、一次多項式フィッティングに基づいて実行されても良い。
【0102】
図10のシステムは最初に、更新ブロック1011により供給される最新の拡大係数αを用いた逆拡大システムにより、入力信号のブロック(フィルタユニット1000及び1001の入力部に供給される)をフィルタリングする。次いで、ユニット1002乃至1008に基づいて、該ブロックについて位相差を算出する。該算出の結果は、ユニット1008の出力部において供給され、任意長のバッファ1009に入力される。該バッファ1009が一杯である場合には、勾配の角度が算出される。次いで、角度検出ユニット1010及び更新ブロック1011を用いて、拡大係数αの値が、以下のように更新される:
α:=α−μ
【0103】
図10において、フィルタブロック1000、フィルタブロック1001、ウィンドウブロック1002、ウィンドウブロック1003、高速フーリエ変換ブロック1004、高速フーリエ変換ブロック1005、処理ブロック1006、処理ブロック1007、結合ユニット1008、バッファ1009、角度検出ブロック1010及び拡大係数更新ブロック1011が示されている。
【0104】
「有する(comprising)」なる語は他の要素又は特徴を除外するものではなく、「1つの(a又はan)」は複数を除外するものではないことは、留意されるべきである。異なる実施例に関連して説明される要素は、組み合わせられても良い。
【0105】
請求項における参照記号は、請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことも、留意されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオ信号を処理するための装置であって、
前記オーディオ信号の拡大状態を検出するように構成された検出ユニットと、
前記検出された前記オーディオ信号の拡大状態に依存して、前記オーディオ信号の拡大特性を変更するように構成された拡大変更ユニットと、を有する装置。
【請求項2】
前記検出ユニットは、前記オーディオ信号が以前に拡大又は縮小されているか否かを検出するように構成された、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記検出ユニットは、前記オーディオ信号が以前に拡大又は縮小された度合いを示す拡大パラメータを検出するように構成された、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記検出ユニットは、ブラインド分離アルゴリズムに基づいて、前記オーディオ信号の拡大状態を検出するように構成された、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記検出ユニットは、オーディオ信号の成分間の位相差の算出に基づいて、前記オーディオ信号の拡大状態を検出するように構成された、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記検出ユニットは、繰り返し処理に基づいて前記オーディオ信号の拡大状態を検出するように構成された、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記検出ユニットは、前記オーディオ信号自体及び外部情報から成る群からの少なくとも1つの情報に基づいて、前記オーディオ信号の拡大状態を検出するように構成された、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記拡大変更ユニットは、前記検出された拡大状態が前記オーディオ信号が以前に拡大又は縮小されていることを示す場合に、以前に実行された拡大又は縮小を少なくとも部分的に、とりわけ完全に、取り消すような態様で、前記オーディオ信号を拡大する又は縮小するように構成された、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記拡大変更ユニットは、前記検出された拡大状態が前記オーディオ信号が以前に拡大又は縮小されていることを示す場合に、前記オーディオ信号の拡大又は縮小を変更するように構成された、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記拡大変更ユニットは、前記検出された拡大状態がオーディオ信号が以前に拡大又は縮小されていないことを示す場合に、前記オーディオ信号の拡大又は縮小を抑制するように構成された、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記拡大変更ユニットにより処理された前記オーディオ信号を拡大又は縮小するように構成された更なる拡大変更ユニットを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記拡大変更ユニットはフィルタを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記拡大変更ユニットは、ステレオ拡大及びステレオ縮小から成る群から1つを選択的に実行するように構成された、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記処理されたオーディオ信号を再生するように構成された複数のオーディオ再生装置を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記オーディオ信号は、多オーディオチャネル信号、とりわけステレオ信号である、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
携帯型オーディオプレイヤ、ラウドスピーカ、オーディオサラウンドシステム、モバイル電話、ヘッドセット、ラウドスピーカ、補聴器、ハンズフリーシステム、テレビジョン装置、TVセットオーディオプレイヤ、ビデオレコーダ、モニタ、ゲーム装置、ラップトップ型コンピュータ、オーディオプレイヤ、DVDプレイヤ、CDプレイヤ、ハードディスクベースのメディアプレイヤ、インターネットラジオ装置、一般向け娯楽装置、MP3プレイヤ、ハイファイシステム、車両用娯楽装置、乗用車向け娯楽装置、医用通信システム、装着式装置、音声通信装置、家庭用シネマシステム、家庭用シアターシステム、オーディオサーバ、オーディオクライアント、フラットテレビジョン装置、環境生成装置、及び音楽ホールシステムから成る群からの少なくとも1つとして実現される、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
オーディオ信号を処理する方法であって、
前記オーディオ信号の拡大状態を検出するステップと、
前記検出された前記オーディオ信号の拡大状態に依存して、前記オーディオ信号の拡大特性を変更するステップと、
を有する方法。
【請求項18】
オーディオ信号を処理するコンピュータプログラムが保存されたコンピュータ読み取り可能な媒体であって、前記コンピュータプログラムは、プロセッサにより実行されたときに、請求項17に記載の方法を実行又は制御するように構成された、コンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項19】
オーディオ信号を処理するプログラム要素であって、プロセッサにより実行されたときに、請求項17に記載の方法を実行又は制御するように構成されたプログラム要素。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−500806(P2010−500806A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523414(P2009−523414)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【国際出願番号】PCT/IB2007/053098
【国際公開番号】WO2008/018012
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】