説明

オーディオ再生回路

【課題】本体のCPUに負担をかけずに、突然の音切れを防止することができるオーディオ再生回路を提供する。
【解決手段】MP3データDATを保持する入力バッファ12と、入力バッファ12に保持されたMP3データDATを一定の処理単位で読み出してデコードして音データVOIを出力するMP3デコーダ13と、MP3デコーダ13から出力される音データVOIを保持する出力バッファ14と、出力バッファ14から音データVOIをクロック信号CK1に同期して読み出して音声信号AUDに変換するDAC16を備えたオーディオ再生回路10Aにおいて、入力バッファ12内のMP3データDATの残存量QUIと出力バッファ14内の音データVOIの残存量QUOに基づいて入力バッファ12にMP3データDATを入力すべきタイミングを示す音切れ検出信号DETを出力する音切れ検出部20を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MP3(Mpeg audio layer 3)等の規格で圧縮された音声データを再生するオーディオ再生回路、特にその音切れ対策に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2は、従来のオーディオ再生回路の一例を示す構成図である。
このオーディオ再生回路10は、例えば携帯電話のような携帯機器に搭載されるもので、機器全体の制御を行うCPU(中央処理装置)1にシステムバス2を介して接続され、このCPU1から与えられるMP3データDATをデコードして音声信号AUDに変換するものである。なお、MP3データDATは、CPU1に接続されたMP3データファイル3によって管理され、オーディオ再生回路10で生成された音声信号AUDは、スピーカ4から音響信号として出力されるようになっている。
【0003】
オーディオ再生回路10は、CPU1との間で各種の制御情報や状態情報を受け渡しすると共に、このオーディオ再生回路10内部での状態管理を行うための制御レジスタ11と、CPU1から与えられるMP3データDATを一時的に保持する入力バッファ12を有している。入力バッファ12には、MP3デコーダ13が接続されている。また、入力バッファ12は、バッファ内のMP3データDATの残存量QUIを、制御レジスタ11に書き込むようになっている。
【0004】
MP3デコーダ13は、デコード用の比較的高速のクロック信号CK1に従い、入力バッファ12に保持されたMP3データDATを、グラニュールと呼ばれる576個のデータ単位で読み出し、例えばPCM(パルス符号変調)の音データVOIに変換するものである。MP3デコーダ13は、1グラニュール分のMP3データDATをデコードするたびに、変換した音データVOIを出力バッファ14に書き込むものである。また、MP3デコーダ13は、MP3データDATのヘッダ情報HDRを読み出したときに、そのヘッダ情報HDRを制御レジスタ11に書き込むようになっている。
【0005】
出力バッファ14は、MP3デコーダ13で変換された音データVOIを一時的に保持するもので、バッファ内の音データVOIの残存量QUOを、制御レジスタ11に書き込むようになっている。出力バッファ14には、音データVOIを一定のタイミングで読み出して、制御レジスタ11から与えられる音量制御信号CONに従って音量調整を行う音量調整部15が接続されている。なお、音量制御信号CONは、CPU1から制御レジスタ11に設定されるものである。
【0006】
更に、音量調整部15には、音量調節された音データVOIをアナログの音声信号AUDに変換するDAC(ディジタル・アナログ変換器)16が接続され、このDAC16に、音声信号AUDを音響信号に変換して出力するスピーカ4が接続されている。
【0007】
音量調整部15とDAC16には、タイミング生成部17から音声信号再生用のクロック信号CK2が与えられている。タイミング生成部17は、制御レジスタ11に格納されたMP3データのヘッダ情報HDRに基づいて、システムクロック等からクロック信号CK2を生成するものである。
【0008】
次に動作を説明する。
CPU1は、音楽等を出力する場合、オーディオ再生回路10の入力バッファ12にMP3データDATを書き込む。入力バッファ12に1グラニュール分のMP3データDATが溜まると、MP3デコーダ13によって入力バッファ12内のMP3データDATが読み出され、デコードが開始される。
【0009】
MP3デコーダ13は、MP3データDAT中にヘッダ情報HDRが含まれていれば、そのヘッダ情報HDRを制御レジスタ11に書き込む。そして、1グラニュール分のMP3データのデコードが終了すると、MP3デコーダ13は、変換した音データVOIを出力バッファ14に書き込む。
【0010】
一方、タイミング生成部17では、制御レジスタ11に格納されたサンプリング周波数SMPに基づいてクロック信号CK2を生成し、音量調整部15とDAC16に与える。音量調整部15では、クロック信号CK2に同期して出力バッファ14から音データVOIを順次読み出し、制御レジスタ11に設定された音量制御信号CONに従って音データVOIの音量を調整する。音量調整された音データVOIは、DAC16によってアナログの音声信号AUDに変換され、スピーカ4から音響信号として出力される。
【0011】
CPU1は、制御レジスタ11を介して入力バッファ12中のMP3データDATの残量QUIや、出力バッファ14中の音データVOIの残量QUOを確認し、適宜次のMP3データDATを入力バッファ12に補充することにより、連続した音響信号を出力することが出来る。
【0012】
【特許文献1】特開2005−346838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前記オーディオ再生回路では、次のような課題があった。
CPU1は、制御レジスタ11を介して入力バッファ12内のMP3データDATの残量QOIや、出力バッファ14内の音データVOIの残量QUOを確認し、適宜次のMP3データDATを入力バッファ12に補充する必要がある。また、出力バッファ14中の音データVOIが無くなって、オーディオの再生が突然停止する所謂“音切れ”の発生が明らかになったときには、CPU1から制御レジスタ11に、音量を徐々に小さくするフェードアウト等の音量制御信号CONを設定する必要がある。
【0014】
しかしながら、例えば携帯電話の場合、CPU1のメインの処理はオーディオの再生ではなく通話の制御であるので、入出力バッファの残量を常時監視して適切な処置をすることは困難である。このため、監視のタイミングが遅れて音切れが発生することがある。このような音切れの発生を抑制するには、入力バッファ12の容量を大きくするという対策が考えられるが、低コストの携帯端末では十分なメモリを確保することが困難なことが多い。また、MP3デコーダ13の処理は1グラニュール単位で行われるので、変換された音データVOIがどの時点で出力バッファ14に書き込まれるかを、CPU1で把握することが困難である。このように、オーディオの再生中に突然音切れが発生することがあるという課題があった。
【0015】
本発明は、本体のCPU1に負担をかけず、かつ大きなバッファメモリを使用することなく、突然の音切れを防止することができるオーディオ再生回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、圧縮符号化された音声データを入力して一時的に保持する入力バッファと、前記入力バッファに保持された音声データを一定の変換単位で読み出してデコードし、デコードした非圧縮の音データを変換単位に出力するデコーダと、前記デコーダから出力される音データを一時的に保持する出力バッファと、前記出力バッファから前記音データを所定のタイミングで順番に読み出して音声信号に変換するDACとを備えたオーディオ再生回路において、前記入力バッファ内の音声データの残存量と前記出力バッファ内の音データの残存量に基づいて音切れ発生を事前に検出し、音切れ検出信号を出力する音切れ検出手段を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、入力バッファ内の音声データの残存量と出力バッファ内の音データの残存量に基づいて音切れ発生を事前に検出し、音切れ検出信号を出力する音切れ検出手段を設けている。これにより、例えばCPUから、入力バッファ内の音声データや出力バッファ内の音データの残存量を監視する必要がなくなり、本体のCPU1に負担をかけず、かつ大きなバッファメモリを使用することなく、突然の音切れを防止することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、次の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。但し、図面は、もっぱら解説のためのものであって、この発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の実施例1を示すオーディオ再生回路の構成図であり、図2中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0020】
オーディオ再生回路10Aは、図2と同様に、例えば携帯電話のような携帯機器に搭載されるもので、機器全体を制御するCPU1にシステムバス2を介して接続され、このCPU1から与えられるMP3データDATをデコードして音声信号AUDに変換するものである。なお、MP3データDATは、CPU1に接続されたMP3データファイル3によって一元管理され、オーディオ再生回路10Aで生成された音声信号AUDは、スピーカ4から音響信号として出力されるようになっている。
【0021】
このオーディオ再生回路10Aは、図2のオーディオ再生回路10に音量制御部18と音切れ検出部20を追加したものである。即ち、このオーディオ再生回路10Aは、図2と同様に、CPU1との間で各種の制御情報や状態情報を受け渡しすると共に、このオーディオ再生回路10A内部での状態管理を行うための制御レジスタ11と、CPU1から入力されるMP3データDATを一時的に保持する入力バッファ12を有している。入力バッファ12にはMP3デコーダ13が接続され、この入力バッファ12内のMP3データDATの残存量QUIが、制御レジスタ11に書き込まれるようになっている。
【0022】
MP3デコーダ13は、デコード用の比較的高速のクロック信号CK1に従い、入力バッファ12に保持されたMP3データDATをグラニュール単位で読み出して、例えばPCM符号の音データVOIに変換するものである。MP3デコーダ13には出力バッファ14が接続され、1グラニュール分のMP3データDATをデコードするたびに、変換した音データVOIをこの出力バッファ14に書き込むようになっている。また、MP3デコーダ13は、MP3データDATのヘッダ情報HDRを読み出したときには、そのヘッダ情報HDRを制御レジスタ11に書き込むようになっている。
【0023】
出力バッファ14は、MP3デコーダ13で変換された音データVOIを一時的に保持するもので、この出力バッファ14内の音データVOIの残存量QUOが、制御レジスタ11に書き込まれるようになっている。出力バッファ14には、書き込まれた音データVOIを一定のタイミングで読み出して音量調整を行う音量調整部15が接続されている。
【0024】
音量調整部15は、音量制御部18から与えられる音量制御信号CONに従って音データVOIの音量を調整するもので、この音量調整部15には、音量調節後の音データVOIをアナログの音声信号AUDに変換するDAC16が接続されている。DAC16には、音声信号AUDを音響信号に変換して出力するスピーカ4が接続されている。
【0025】
なお、音量調整部15とDAC16には、タイミング生成部17から音声信号再生用のクロック信号CK2が与えられている。タイミング生成部17は、制御レジスタ11に格納されたサンプリング周波数SMPに基づいて、システムクロック等からクロック信号CK2を生成するものである。
【0026】
一方、音切れ検出部20は、入力バッファ12から出力されるMP3データDATの残存量QUIと、MP3デコーダ13から出力されるMP3データDATのヘッダ情報HDR及びデコード開始信号STAと、出力バッファ14から出力される音データVOIの残存量QUOに基づいて音切れが発生する状態であるか否かを事前に判定し、音切れが発生する状態を検出したときに、音切れ検出信号DETを出力するものである。音切れ検出信号DETは、CPU1に割り込み要求信号として与えられるようになっている。また、音量制御部18は、音切れ検出信号DETと制御レジスタ11に設定されたフェードアウト信号FAD等に基づいて音量制御信号CONを生成し、音量調整部15を制御するものである。
【0027】
図3は、図1中の音切れ検出部の構成図である。
この音切れ検出部20は、MP3デコーダ13から出力されるMP3データDATのヘッダ情報HDRを格納するレジスタ21を有している。このレジスタ21には、ヘッダ情報HDR内のMPEGバージョン番号VERと、サンプリング速度RATと、ステレオかモノラルかを示すチャンネルモードMODが格納されるようになっている。
【0028】
MPEGバージョン番号VERとサンプリング速度RATは、サンプリング周波数FRQを出力する周波数テーブル22に与えられている。周波数テーブル22は不揮発性のROM(読み出し専用メモリ)で構成され、MPEGバージョン番号VERとサンプリング速度RATをアドレス端子に与えることにより、対応するアドレスに予め記憶されたデータを、データ端子からサンプリング周波数FRQとして出力するものである。
【0029】
チャンネルモードMODは、1グラニュール当たりのデコード時間を出力するための変換時間テーブル23に与えられている。変換時間テーブル23はROMで構成され、チャンネルモードMODをアドレス端子に与えることにより、データ端子からデコード時間TMDを出力するものである。
【0030】
また、この音切れ検出部20は、入力バッファ12から出力されるMP3データDATの残存量QUIに従って、CPU1がMP3データDATを書き込む時間を出力する入力時間テーブル24を有している。入力時間テーブル24はROMで構成され、残存データ量QUIをアドレス端子に与えることにより、データ端子から入力時間(CPU1がMP3データDATを書き込む時間)TMIを出力するものである。変換時間テーブル23から出力されるデコード時間TMDと、入力時間テーブル24から出力される入力時間TMIは、加算器25に与えられている。
【0031】
加算器25は、デコード時間TMDと入力時間TMIを加算することにより、1グラニュール分のデータをデコードして次の出力データが得られるまでの時間である加算結果SUMを出力するものである。
【0032】
更に、この音切れ検出部20は、周波数テーブル22から出力されるサンプリング周波数FRQと、出力バッファ14から出力される音データVOIの残存量QUOに基づいて、この出力バッファ14の残りの出力時間を出力するための出力時間テーブル26を有している。出力時間テーブル26はROMで構成され、サンプリング周波数FRQと出力バッファ14内の音データVOIの残存量QUOをアドレス端子に与えることにより、データ端子から残りの出力時間TMOを出力するものである。
【0033】
加算器25から出力される加算結果SUMと、出力時間テーブル26から出力される出力時間TMOは、判定部27に与えられている。判定部27は、MP3デコーダ13からデコード開始信号STAが出力されたときに、加算結果SUMと出力時間TMOを比較し、出力時間TMOの方が小さい場合に音切れ検出信号DETを“1”にして出力し、それ以外の場合は“0”を出力するものである。
【0034】
次に動作を説明する。
CPU1は、音楽等を出力する場合、MP3データファイル3からMP3データDATを読み出し、システムバス2を介してオーディオ再生回路10の入力バッファ12にこのMP3データDATを書き込む。入力バッファ12に1グラニュール分のMP3データDATが溜まると、MP3デコーダ13によって入力バッファ12内のMP3データDATが読み出され、デコードが開始される。入力バッファ1内のMP3データDATの残存量QUIは、制御レジスタ11と音切れ検出部20に出力される。
【0035】
MP3デコーダ13は、MP3データDAT中にヘッダ情報HDRが含まれていれば、そのヘッダ情報HDRを制御レジスタ11と音切れ検出部20に出力する。そして、1グラニュール分のMP3データDATのデコードが終了すると、MP3デコーダ13は、変換した音データVOIを出力バッファ14に書き込む。このとき、出力バッファ14内の音データVOIの残存量QUOは、制御レジスタ11と音切れ検出部20に出力される。
【0036】
また、タイミング生成部17では、制御レジスタ11に格納されたサンプリング周波数SMPに基づいて、音声信号再生用のクロック信号CK2を生成して音量調整部15とDAC16に与える。音量調整部15では、クロック信号CK2に同期して出力バッファ14から音データVOIを順次読み出し、音量制御部18から与えられる音量制御信号CONに従って音データVOIの値を調整する。調整された音データVOIは、DAC16に与えられてアナログの音声信号AUDに変換され、スピーカ4から音響信号として出力される。
【0037】
一方、音切れ検出部20では、MP3デコーダ13から出力されるMP3データDATのヘッダ情報HDRにより、レジスタ21にそのMP3データDATのMPEGバージョン番号VERと、サンプリング速度RATと、チャンネルモードMODが格納される。MPEGバージョン番号VERとサンプリング速度RATは、周波数テーブル22によってサンプリング周波数FRQに変換され、チャンネルモードMODは、変換時間テーブル23によって1グラニュール当たりのデコード時間TMDに変換される。
【0038】
入力バッファ12から出力されるMP3データDATの残存量QUIは、入力時間テーブル24によって、CPU1がMP3データDATを書き込む入力時間TMIに変換される。そして、変換時間テーブル23から出力されるデコード時間TMDと、入力時間テーブル24から出力される入力時間TMIは、加算器25で加算されて加算結果SUMが出力される。なお、加算結果SUMは、1グラニュール分のMP3データをデコードして次の出力データ(音データ)が得られるまでの時間である。
【0039】
また、出力バッファ14から出力される音データVOIの残存量QUOは、周波数テーブル22から出力されるサンプリング周波数FRQと共に出力時間テーブル26に与えられ、この出力バッファ14の残りの出力時間TMOに変換される。
【0040】
MP3デコーダ13によってMP3データDATのデコードが開始されると、このMP3デコーダ13から音切れ検出部20の判定部27にデコード開始信号STAが与えられる。これにより、判定部27では、加算結果SUMと出力時間TMOを比較し、出力時間TMOの方が大きい場合には音切れ検出信号DETを出力しない。
【0041】
もしも、出力時間TMOの方が小さい場合、判定部27は、音切れ検出信号DETを“1”にして出力する。“1”の音切れ検出信号DETは、CPU1に割り込み要求信号として与えられる。CPU1は割り込み要求信号に基づいて、次のMP3データDATを入力バッファ12に書き込んだり、制御レジスタ11にフェードアウト等の音量制御信号CONを設定したりする等の処理を行う。
【0042】
以上のように、この実施例1のオーディオ再生回路は、MP3データDATのヘッダ情報HDRと、入力バッファ12内のMP3データDATの残存量QUIと、出力バッファ14内の音データVOIの残存量QUOに基づいて音切れが発生する状態であるか否かを事前に判定する音切れ検出部20を有している。従って、音切れが発生する状態である場合には、音切れ検出信号DETを割り込み要求信号としてCPU1に出力することにより、CPU1は制御レジスタ11の内容を常時読み出して音切れの発生を判定する必要がなくなる。これにより、本体のCPU1に負担をかけずに、突然の音切れを防止することができるという利点がある。
【実施例2】
【0043】
図4は、本発明の実施例2を示す音切れ検出部の構成図である。この音切れ検出部20Aは、図1中の音切れ検出部20に代えて用いられるもので、図3中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0044】
この音切れ検出部20Aは、図3の音切れ検出部20に、余裕時間設定部28と変換時間カウンタ29を追加すると共に、加算器25と判定部27に代えて若干機能の異なる加算器25Aと判定部27Aを設けたものである。
【0045】
余裕時間設定部28は、実際に音切れが発生する状況になる前に一定の余裕を持って音切れ検出信号DETを出力するために、その余裕時間MARを設定するためのレジスタである。
【0046】
変換時間カウンタ29は、デコード開始信号STAが与えられた時点で、変換時間テーブル23から出力されるデコード時間TMDをロードし、デコード用のクロック信号CK1に同期して1ずつ減少するカウント値CNVを出力するものである。このカウント値CNVは、MP3デコーダ13で読み出したMP3データDATを変換するために必要な残りの変換時間に対応する値である。
【0047】
加算器25Aは、入力時間テーブル24から出力される入力時間TMIと、余裕時間設定部28に設定された余裕時間MARと、変換時間カウンタ29のカウント値CNVを加算し、加算結果SUM2を出力するものである。加算結果SUM2は、判定部27Aに与えられるようになっている。
【0048】
判定部27Aは、加算結果SUM2と出力時間TMOを比較し、出力時間TMOの方が小さい場合に音切れ検出信号DETを“1”にして出力し、それ以外の場合は“0”を出力するものである。その他の構成は、図3と同様である。
【0049】
この音切れ検出部20Aでは、次のような動作が行われる。
MP3デコーダ13から出力されるMP3データDATのヘッダ情報HDRにより、レジスタ21にそのMP3データDATのMPEGバージョン番号VERと、サンプリング速度RATと、チャンネルモードMODが格納される。MPEGバージョン番号VERとサンプリング速度RATは、周波数テーブル22によってサンプリング周波数FRQに変換され、チャンネルモードMODは、変換時間テーブル23によって1グラニュール当たりのデコード時間TMDに変換される。
【0050】
MP3デコーダ13からデコード開始信号STAが与えられると、デコード時間TMDが変換時間カウンタ29の初期値としてロードされ、以後クロック信号CK1に同期して1ずつ減少するカウント値CNVが出力される。
【0051】
また、入力バッファ12から出力されるMP3データDATの残存量QUIは、入力時間テーブル24によって、CPU1がMP3データDATを書き込む入力時間TMIに変換される。そして、変換時間カウンタ29から出力されるカウント値CMVと、入力時間テーブル24から出力される入力時間TMIと、余裕時間設定部28に設定された余裕時間MARが、加算器25Aで加算されて加算結果SUM2が出力される。
【0052】
一方、出力バッファ14から出力される音データVOIの残存量QUOは、周波数テーブル22から出力されるサンプリング周波数FRQと共に出力時間テーブル26に与えられ、この出力バッファ14の残りの出力時間TMOに変換される。
【0053】
判定部27Aでは、加算結果SUM2と出力時間TMOを比較し、出力時間TMOの方が大きい場合には音切れ検出信号DETを出力しない。
【0054】
もしも、出力時間TMOの方が小さい場合、判定部27Aは、音切れ検出信号DETを“1”にして出力する。“1”の音切れ検出信号DETは、CPU1に割り込み要求信号として与えられる。これにより、CPU1は割り込み要求信号に基づいて、次のMP3データDATを入力バッファ12に書き込んだり、制御レジスタ11にフェードアウト等の音量制御信号CONを設定したりする等の処理を行う。
【0055】
以上のように、この実施例2の音切れ検出部20Aは、入力バッファ12内のMP3データDATの残存量QUIに基づく入力時間TMI、実際に変換した時間を差し引いた残りの変換時間(カウント値CNV)及び余裕時間MARを加えた加算結果SUM2と、出力バッファ13内の音データVOIの残存量QUOに基づく出力時間TMOを比較して音切れの発生を判定している。これにより、実際に音切れが発生する状況になる前に(余裕時間MARだけ前に)、音切れ検出信号DETを出力することが出来るので、CPU1は制御レジスタ11の内容を常時読み出して音切れの発生を判定する必要がなくなる。従って、CPU1に負担をかけずに突然の音切れを防止することができるという利点に加えて、次のMP3データDATを入力バッファ12に書き込む余裕時間が有るので、“音切れ”そのものを防止することが出来るという利点がある。
【0056】
更に、加算結果SUM2には、デコード開始信号STAで起動されて実際に変換した時間を差し引いた残りの変換時間CNVが反映されている。これにより、入力バッファ12、出力バッファ14及びMP3デコーダ13の状態に基づいてリアルタイムに音切れ検出信号DETが出力されるので、正確な音切れの判定をすることが出来るという利点がある。
【0057】
なお、本発明は、上記実施例に限定されず、種々の変形が可能である。この変形例としては、例えば、次のようなものがある。
(a) MP3データを対象としたオーディオ再生回路を説明したが、データの圧縮符号化方式はMP3に限定されない。
(b) ディジタルの音データVOIに対して音量調整を行う音量調整部15を有しているが、アナログの音声信号AUDに対して音量調整をするように構成することも出来る。
(c) 周波数テーブル22等の各テーブル22,23,24,26はROMで構成しているが、RAMやEPROM等の書き換え可能なメモリを使用することが出来る。これにより、適用する機器毎に適切な変換テーブルを構成することが出来る。
(d) 余裕時間設定部28に代えて、例えば制御レジスタ11内にCPU1から余裕時間MARを設定することが出来るレジスタを設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施例1を示すオーディオ再生回路の構成図である。
【図2】従来のオーディオ再生回路の一例を示す構成図である。
【図3】図1中の音切れ検出部の構成図である。
【図4】本発明の実施例2を示す音切れ検出部の構成図である。
【符号の説明】
【0059】
1 CPU
2 システムバス
3 MP3データファイル
4 スピーカ
10A オーディオ再生回路
11 制御レジスタ
12 入力バッファ
13 MP3デコーダ
14 出力バッファ
15 音量調整部
16 DAC
17 タイミング生成部
18 音量制御部
20,20A 音切れ検出部
21 レジスタ
22 周波数テーブル
23 変換時間テーブル
24 入力時間テーブル
25,25A 加算器
26 出力時間テーブル
27,27A 判定部
28 余裕時間設定部
29 変換時間カウンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮符号化された音声データを入力して一時的に保持する入力バッファと、前記入力バッファに保持された音声データを一定の変換単位で読み出してデコードし、デコードした非圧縮の音データを変換単位に出力するデコーダと、前記デコーダから出力される音データを一時的に保持する出力バッファと、前記出力バッファから前記音データを所定のタイミングで順番に読み出して音声信号に変換するディジタル・アナログ変換器とを備えたオーディオ再生回路において、
前記入力バッファ内の音声データの残存量と前記出力バッファ内の音データの残存量に基づいて音切れ発生を事前に検出し、音切れ検出信号を出力する音切れ検出手段を設けたことを特徴とするオーディオ再生回路。
【請求項2】
前記音切れ検出手段は、
前記音声データのヘッダに含まれるバージョン番号、サンプリング速度及びチャンネルモードを格納するレジスタと、
前記バージョン番号とサンプリング速度に基づいて対応するサンプリング周波数を出力する周波数テーブルと、
前記チャンネルモードに基づいて対応する前記変換単位当たりのデコード時間を出力する変換時間テーブルと、
前記入力バッファ内の音声データの残存量に基づいて該入力バッファに次の音声データを書き込む入力時間を出力する入力時間テーブルと、
前記変換時間テーブルから出力されるデコード時間と前記入力時間テーブルから出力される入力時間を加算する加算器と、
前記周波数テーブルから出力されるサンプリング周波数と前記出力バッファ内の音データの残存量に基づいて該出力バッファの残りの出力時間を出力する出力時間テーブルと、
前記デコーダが前記変換単位にデコードを開始するタイミングで、前記加算器の加算結果と前記出力時間テーブルから出力される出力時間を比較して該出力時間の方が小さい場合に前記音切れ検出信号を出力する判定部とを、
有することを特徴とする請求項1記載のオーディオ再生回路。
【請求項3】
前記音切れ検出手段は、
前記音声データのヘッダに含まれるバージョン番号、サンプリング速度及びチャンネルモードを格納するレジスタと、
前記バージョン番号とサンプリング速度に基づいて対応するサンプリング周波数を出力する周波数テーブルと、
前記チャンネルモードに基づいて対応する前記変換単位当たりのデコード時間を出力する変換時間テーブルと、
前記デコーダが前記変換単位にデコードを開始するタイミングで前記変換時間テーブルから出力されるデコード時間を初期値として取り込み、該デコーダの処理に応じてカウントダウンして該デコーダの残りの処理時間を出力する変換時間カウンタと、
前記入力バッファ内の音声データの残存量に基づいて該入力バッファに次の音声データを書き込む入力時間を出力する入力時間テーブルと、
音切れが発生する状況になる前に前記音切れ検出信号を出力するための余裕時間を設定する余裕時間設定部と、
前記変換時間カウンタから出力される残りの処理時間、前記入力時間テーブルから出力される入力時間及び前記余裕時間を加算する加算器と、
前記周波数テーブルから出力されるサンプリング周波数と前記出力バッファ内の音データの残存量に基づいて該出力バッファの残りの出力時間を出力する出力時間テーブルと、
前記加算器の加算結果と前記出力時間テーブルから出力される出力時間を比較して該出力時間の方が小さい場合に前記音切れ検出信号を出力する判定部とを、
有することを特徴とする請求項1記載のオーディオ再生回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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