オートフレッテージ加工装置、オートフレッテージ加工方法、及び、オートフレッテージ加工を施したワークの製造方法
【課題】磨耗による部品消耗を極力低減することが可能なオートフレッテージ加工を提供する。
【解決手段】加圧部に駆動され、加圧部の加圧前の状態において、ワークの一端部側の内壁と、ピストンの軸方向に沿った側面との間に、所定の平均隙間量(h)および第1の軸方向長さ(a)を有する隙間を形成するピストンを所定の送り速度(v)で挿入させて、ワークにオートフレッテージ加工を施すオートフレッテージ加工装置において、隙間より漏れ出す作動油の、第1の軸方向長さ(a)における単位時間当たりの最大漏れ流量(Qmax(a))に相当する第1の臨界送り速度(Vca)が、予め設定されたピストンの限界送り速度(V0)よりも大きい場合には、第1の軸方向長さ(a)よりも長い第2の軸方向長さ(b)を有する隙間を設定することを特徴とする。
【解決手段】加圧部に駆動され、加圧部の加圧前の状態において、ワークの一端部側の内壁と、ピストンの軸方向に沿った側面との間に、所定の平均隙間量(h)および第1の軸方向長さ(a)を有する隙間を形成するピストンを所定の送り速度(v)で挿入させて、ワークにオートフレッテージ加工を施すオートフレッテージ加工装置において、隙間より漏れ出す作動油の、第1の軸方向長さ(a)における単位時間当たりの最大漏れ流量(Qmax(a))に相当する第1の臨界送り速度(Vca)が、予め設定されたピストンの限界送り速度(V0)よりも大きい場合には、第1の軸方向長さ(a)よりも長い第2の軸方向長さ(b)を有する隙間を設定することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、高圧燃料噴射管やコモンレール等の加工装置に使用されるものであって、特に超高圧下でのオートフレッテージ加工を行うためのオートフレッテージ加工装置、オートフレッテージ加工方法、及び、オートフレッテージ加工を施したワークの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2等にみられるように、密閉状態で高圧をかけて材料組織に残留応力を残して強度をあげる加工方法(オートフレッテージ加工と称す)が知られている。
すなわち、オートフレッテージ加工では、ワークの内側においては塑性変形させるように、かつ、ワークの外側においては弾性変形させるものの塑性変形させないような高圧力をワーク内部に与えている。これによって、ワークに残留圧縮応力を付与し、ワークの耐圧疲労強度を増強させている。このような加工方法は、ディーゼルコモンレールシステム部品などの耐圧疲労強度が必要とされる部品の、疲労強度増強を目的とした残留圧縮応力付与に利用されている。
従来のオートフレッテージ加工装置は、図19に示すように、液体(オートフレッテージ作動油)を増圧するために、ピストンロッド32の摺動部の隙間をゼロとする必要があった。そして、隙間をゼロとするために、シリンダハウジング33とピストンロッド32との間に高精度のシールリング35を幾重にも重ね、内圧によりシールリング35を変形・密着させて摺動させていた。
しかし、これにより、シールリング35は磨耗(もしくは破壊)し、ある程度の回数で交換が必要になるという問題がある。
なお、先行技術として挙げた特許文献1においても、一見ワーク内部(特許文献1の符号2参照)にピストン(特許文献1の符号19参照)が挿入されている。しかしながら、あくまでシール部材が別に設けられていることに留意されるべきである(特許文献1の段落0026の「排出ピストン開口部6と事前充填開口部7の密閉は、然るべき密閉円錐によって行われる」なる記載参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許発明第102006054440号明細書(DE102006054440B3、特表2010−510385号公報は対応日本公報)
【特許文献2】特開2004−92551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、磨耗による部品消耗を極力低減することが可能なオートフレッテージ加工装置、オートフレッテージ加工方法、及び、オートフレッテージ加工を施したワークの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、駆動モータを有する加圧部(40)と、該加圧部(40)に駆動され、前記加圧部の加圧前の状態において、ワーク(1)の一端部側の内壁と、ピストン(42)の軸方向に沿った側面との間に、所定の平均隙間量(h)および第1の軸方向長さ(a)を有する隙間(3)を形成する前記ピストン(42)と、前記一端部を除いて密閉された前記ワーク(1)および前記ピストン(42)により形成され、作動油(2)が充填された内圧室(IC)と、を具備し、前記加圧部(40)は、前記作動油(2)で充填された前記内圧室(IC)に前記ピストン(42)を所定の送り速度(v)で挿入させるものであり、当該挿入により前記隙間(3)より漏れ出す前記作動油(2)の、前記第1の軸方向長さ(a)における単位時間当たりの最大漏れ流量(Qmax(a))に相当する第1の臨界送り速度(Vca)が、予め設定された前記ピストン(42)の限界送り速度(V0)よりも大きい場合には、前記第1の軸方向長さ(a)よりも長い第2の軸方向長さ(b)を有する前記隙間を設定することにより、前記第1の臨界送り速度(Vca)を、前記限界送り速度(V0)よりも小さい、前記第2の軸方向長さ(b)における単位時間当たりの最大漏れ流量(Qmax(b))に相当する第2の臨界送り速度(Vcb)とし、当該第2の臨界送り速度(Vcb)よりも前記所定の送り速度(v)を速くすることにより、前記ワーク(1)にオートフレッテージ加工を施すオートフレッテージ加工装置である。
【0006】
これにより、摺動部品であるピストンにシールリング等の封止部材を設ける必要が無いので、オートフレッテージ加工を実現しながら、磨耗による部品消耗を極力低減することが可能である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記内圧室(IC)において前記ピストン(42)を所定の送り速度(v)で送る、前記ピストン(42)の動作開始位置を変更して、前記第1の軸方向長さ(a)よりも長い第2の軸方向長さ(b)を有する前記隙間を設定したことを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記ピストン(42)が、ピストンヘッド(42−1)とピストン軸(42−2)から構成されて、前記ピストンヘッド(42−1)の側面の軸方向長さが、前記隙間(3)を形成する前記第1の軸方向長さ(a)であって、前記挿入により前記隙間(3)より漏れ出す前記作動油(2)の、前記第1の軸方向長さ(a)における単位時間当たりの最大漏れ流量(Qmax(a))に相当する第1の臨界送り速度(Vca)が、予め設定された前記ピストン(42)の限界送り速度(V0)よりも大きい場合には、前記ピストンヘッド(42−1)の側面の軸方向長さを、前記第1の軸方向長さ(a)よりも長い第2の軸方向長さ(b)に設定することを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の発明において、前記所定の送り速度(v)が、前記第2の臨界送り速度(Vcb)よりも速い前記所定の送り速度(v)に達するまでの間に亘って、ワーク(1)の一端部側の内壁とピストン(42)の軸方向に沿った側面との間の、前記所定の平均隙間量(h)を有する隙間(3)が、前記ワーク(1)に形成されていない場合には、前記ワーク(1)の一端部に連結体を継ぎ足し連結して、前記所定の送り速度(v)が、前記第2の臨界送り速度(Vcb)よりも速い前記所定の送り速度(v)に達するまでの間、ワーク(1)の一端部側の内壁と、ピストン(42)の軸方向に沿った側面との間に、連続的な所定の平均隙間量(h)を有する隙間(3)が形成されるようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載の発明に、前記ワーク(1)の一端部に、鍛造成形時に盛肉部(80)を連結形成して、前記連結体の継ぎ足し連結として構成するようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明は、請求項4項に記載の発明において、前記ワーク(1)の一端部に、前記連結体(80)をねじ結合によって連結して、前記連結体の継ぎ足し連結として構成するようにしたことを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載の発明において、前記内圧室(IC)に所定の送り速度(v)で挿入させられる前記ピストン(42)が、一定の円柱断面積(A)を有していることを特徴とする。
【0013】
請求項8の発明は、請求項1から7のいずれか1項に記載の発明において、前記隙間(3)を形成する、ワーク(1)の一端部側の内壁に対向するピストン(42)の軸方向に沿った側面に、摩擦抵抗を上昇させる摩擦抵抗部が形成されたことを特徴とする。
【0014】
請求項9の発明は、駆動モータを有する加圧部(40)と、該加圧部(40)に駆動され、前記加圧部の加圧前の状態において、ワーク(1)の一端部側の内壁と、ピストン(42)の軸方向に沿った側面との間に、所定の平均隙間量(h)および第1の軸方向長さ(a)を有する隙間(3)を形成する前記ピストン(42)と、前記一端部を除いて密閉された前記ワーク(1)および前記ピストン(42)により形成され、作動油(2)が充填された内圧室(IC)と、を具備し、前記加圧部(40)は、前記作動油(2)で充填された前記内圧室(IC)に前記ピストン(42)を所定の送り速度(v)で挿入させるものであり、当該挿入により前記隙間(3)より漏れ出す作動油(2)の、前記第1の軸方向長さ(a)における単位時間当たりの最大漏れ流量(Qmax(a))に相当する第1の臨界送り速度(Vca)が、予め設定された前記ピストン(42)の限界送り速度(V0)よりも大きい場合には、前記隙間(3)を形成する前記ワーク(1)の一端部側の内壁と対向する前記ピストン(42)の軸方向に沿った側面に、摩擦抵抗を上昇させる摩擦抵抗部を形成させて、前記限界送り速度(V0)よりも小さい、前記摩擦抵抗部を形成させた場合の単位時間当たりの最大漏れ流量に相当する第2の臨界送り速度(Vcb)を設定し、当該第2の臨界送り速度(Vcb)よりも所定の送り速度(v)を速くすることにより、前記ワーク(1)にオートフレッテージ加工を施すオートフレッテージ加工装置である。
【0015】
請求項10の発明は、請求項9の発明において、前記摩擦抵抗部は、凹凸面からなる粗面を有することを特徴とする。
【0016】
請求項11の発明は、請求項9の発明において、前記摩擦抵抗部は、前記ピストン(42)の円周方向に設けられた溝であって、当該溝の前記ピストン(42)の軸方向間隙量が、前記溝の開口より底部において大きく構成された複数の溝からなるラビリンス構造を有することを特徴とする。
【0017】
請求項12の発明は、ワーク(1)にオートフレッテージ加工を行うオートフレッテージ加工方法であって、ワーク(1)一端部を除いて閉鎖された前記ワーク(1)と、前記一端部側の内壁に対して平均隙間量(h)から成る隙間(3)を有するピストン(42)により形成された内圧室(IC)に作動油(2)を導入する段階と、駆動モータを有する加圧部(40)で、前記ピストン(42)を駆動して、前記内圧室(IC)に、前記ピストン(42)を所定の送り速度(v)で前記内圧室(IC)に挿入して前記作動油(2)の前記内圧室圧力(P)を上昇させる段階と、を具備するオートフレッテージ加工方法において、当該挿入により前記隙間(3)より漏れ出す前記作動油(2)の、前記第1の軸方向長さ(a)における単位時間当たりの最大漏れ流量(Qmax(a))に相当する第1の臨界送り速度(Vca)が、予め設定された前記ピストン(42)の限界送り速度(V0)よりも大きい場合には、前記第1の軸方向長さ(a)よりも長い第2の軸方向長さ(b)を有する前記隙間を設定する段階をさらに具備し、前記第1の臨界送り速度(Vca)を、前記限界送り速度(V0)よりも小さい、前記第2の軸方向長さ(b)における単位時間当たりの最大漏れ流量(Qmax(b))に相当する第2の臨界送り速度(Vcb)とし、当該第2の臨界送り速度(Vcb)よりも前記所定の送り速度(v)を速くすることにより、前記ワーク(1)にオートフレッテージ加工を施すことを特徴とするオートフレッテージ加工方法である。
【0018】
請求項13の発明は、請求項12の発明において、前記ワーク(1)の一端部側に、鍛造成形による盛肉部(80)が連結形成されたことを特徴とする。
【0019】
請求項14の発明は、高圧管路(101)を有するワーク(1)の製造方法であって、
熱間鍛造によりワーク(1)の第1形状を形成する鍛造工程と、前記第1形状の前記ワーク(1)を機械加工して、盛肉部(80)を有する第2形状を形成する第1機械加工工程と、請求項13に記載の発明のオートフレッテージ加工方法により、前記ワーク(1)の高圧管路(101)に、オートフレッテージ加工を施すオートフレッテージ加工工程と、前記第2形状の前記ワーク(1)を機械加工して、前記盛肉部(80)を除去して前記ワーク(1)の製品形状を形成する第2機械加工工程を具備することを特徴とするワーク(1)の製造方法である。
【0020】
なお、上記に付した符号は、後述する実施形態に記載の具体的実施態様との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ダイレクト加圧式のオートフレッテージ加工装置を模式的に示す説明図であり、(a)はピストン42の摺動開始前、(b)はピストン42の摺動開始後を示す図である。
【図2】ダイレクト加圧式のオートフレッテージ加工装置を模式的に示す説明図である。
【図3】(a)は図1に示す装置においてピストンをある一定の送り速度V0で内圧室ICに挿入して、内圧室ICの圧力Pを上昇させようとした場合の圧力と時間の関係を示す模式図であり、(b)はこの状況を説明する説明図である。
【図4】(a)〜(e)は、それぞれピストンを内圧室ICに挿入する送り速度を、V1〜V4に変更した場合の圧力上昇波形を示す特性図である。
【図5】漏れと圧力の関係を解析するための説明図である。
【図6】臨界送り速度Vcを求める一例を説明するための説明図である。
【図7】平均隙間量hを変更した場合の、内圧室ICの圧力と漏れ流量の関係および臨界送り速度Vcを示す特性図である。
【図8】作動油および平均隙間量hを変更した場合の内圧室圧力と最大漏れ流量Qmaxの関係を示す特性図である。
【図9】ディーゼルエンジンで用いられる燃料噴射弁の一例である。
【図10】(a)、(b)は、燃料噴射弁に使用される一部材の一例を示す断面図である。
【図11】本発明の実施形態の概要を示す説明図であり、(a)は、オートフレッテージ加工開始前の状態、(b)は本発明の一実施形態(第1実施形態)の概要を示す説明図であり、(c)は別の実施形態(第3実施形態)の概要を示す説明図である。
【図12】隙間3のシート幅Lをaからbに変更した場合の圧力上昇波形を示す特性図である。
【図13】本発明の第1実施形態を説明する説明図であり、(a)は、オートフレッテージ加工開始前の状態、(b)は、本発明の第1実施形態を示す説明図である。
【図14】本発明の第1実施形態の変形例を説明する説明図であり、(a)は、オートフレッテージ加工開始前の状態、(b)は、本発明の第1実施形態の変形例を示す説明図である。
【図15】(a)、(b)は、第3実施形態を示す説明図である。
【図16】(a)、(b)は、盛肉部の代わりに、ねじ込みとした場合の第3実施形態を示す説明図である。
【図17】(a)、(b)は、本発明の第4実施形態を模式的に示す説明図である。
【図18】(a)は、封止部材24の変形例を説明するための説明図であり、(b)は、(a)に示すキャップ21内部の拡大図である。
【図19】従来装置の一部を拡大した一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。各実施態様について、同一構成の部分には、同一の符号を付してその説明を省略する。本発明の各実施形態が、本発明の基礎となった基礎技術に対しても同一構成の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
本発明の一実施形態を説明する前に、本発明の基礎となった基礎技術である、ダイレクト加圧式のオートフレッテージ加工装置を説明する。なお、本発明の一実施形態においてもダイレクト加圧式のオートフレッテージ加工装置を前提としている。
【0023】
(ダイレクト加圧式オートフレッテージ加工)
図1、2は、ダイレクト加圧式オートフレッテージ加工を模式的に示す説明図である。高圧下でオートフレッテージ加工を施すワーク1の一例としては、特にディーゼルコモンレールシステム部品などの、耐圧疲労強度が必要とされる部品が挙げられる。その他、疲労強度増強を目的とした残留圧縮付与が必要とされる部品なら本発明は適用可能である。以下の説明では、ワーク1として、高圧燃料噴射管、コモンレール用レール、シリンダポンプ等にオートフレッジ加工を施す場合を例示して、本発明の一実施形態を説明する。
【0024】
図1において、模式的に密閉したワークとして示されるワーク1の内部には作動油2が充填されており、サーボモータ(駆動モータ)を有する加圧部40には、ピストン42が連結されている。なお加圧部40は必ずしもピストン42に連結されている必要はない。
このピストン42は、図2に示すように、ワーク1の一端部の内壁に対して平均隙間量h(一例として1〜30μm)から成る隙間3を有するように挿入される。そのため、ピストン42が挿入されても平均隙間量hが維持されるように、少なくともピストン42が挿入される範囲のワーク1内部の軸方向と、ピストン42の軸方向と、加圧部40の加圧軸方向とが一致するように、加圧部40とワーク1とは設備に固定されている。
【0025】
そして、ワーク1の配管口23に封止部材24が挿入された状態で圧力Wを掛けることで密閉され、ワーク1の他端はシールピン4で密閉されているので、ワーク1は、その一端部以外は閉鎖された構造となり、ピストン42によりワーク1の内部に内圧室ICが形成されることになる。また、ワーク1の内圧室ICの圧力Pを計測するためにピストン42には歪みゲージ50が貼られていて、ピストン42の変形量から内圧室ICの圧力Pが算出される。なお、加圧部40に含まれるサーボモータとしては、流体圧アクチュエータ(油圧)を利用してもよく、また、電動モータでねじを回転させて、加圧しても良い。
【0026】
次に、上記構成における作動を説明する。ワーク1の他端側をシールピン4で密閉し、ワーク1の配管口23に封止部材24を挿入して圧力Wを掛けることで密閉した状態で作動油2をワーク1に充填する。続いて、ピストン42をワーク1の一端側より挿入し、ピストン42の非挿入側を加圧部40に連結する。ここで、ピストン42は、上述したように、ワーク1の一端部の内壁に対して所定の平均隙間量hからなる隙間3を有するように設定されていて、ピストン42とワーク1の内壁間には、シールリング等は一切使用されない。
【0027】
この状態で、加圧部40によりピストン42をワーク1に所定の送り速度vで挿入させると、ワーク1の内壁およびピストン42の間の隙間3から作動油2が漏れ出すことになるが、上述した所定の送り速度vを当該漏れ出す速度よりも速く設定する、すなわち、隙間3から作動油2が漏れ出す速度以上の速度でワーク1の内部にピストン42を挿入させることにより、ワーク1の内部に充填された作動油2を圧縮し、ワーク1内部の圧力を上昇させる。
【0028】
こうすることにより、オートフレッテージ加工装置において、シールリングを使用することなくオートフレッテージ加工を行うことができ、磨耗による部品消耗を極力低減することが可能である。また、従来、内圧により変形が起こると隙間をゼロとすることができないため、作動油の増圧部は非常に肉厚で巨大なハウジングを必要としていたが、このような巨大で高価な増圧部のハウジングをなくすことで、設備構造をシンプル・スリム化することができ、安い経費、償却費でオートフレッテージ加工をすることができるようになった。
【0029】
(臨界送り速度Vcと、単位時間当たりの最大漏れ流量Qmax)
次に、上述したピストン42をワーク1に挿入させる際の所定の送り速度vについて説明するとともに、臨界送り速度Vcと、単位時間当たりの最大漏れ流量Qmaxとは何かについて説明する。
ワーク1の内部に充填される作動油2の粘度ηは、油の圧力をPとしたときに、次の式1で表すことができる。
η=η0exp(αP)・・・式1
ここで、η0は大気圧下の粘度(常圧粘度)、αは粘度圧力係数(液体固有のもの)であり、全ての液体で成立する(「トライボロジスト」第49巻第9号(2004年)720〜721頁等参照)。
【0030】
この式1からわかるように、圧力Pが上昇すると指数関数的に粘度ηが増加する。すなわち、ピストン42を高速で降下させ、ワーク1の内圧室ICの圧力Pを上昇させると、内部の作動油2の粘度が上昇し、隙間3からの漏れ流量を減らす働きをする。この働きにより、更に内圧室ICの圧力が上昇し、目標とする圧力(フレッテージ加工を行う高圧力)に到達することができるものと考えられた。
しかし、実際には、上記の推測通りではない事が発明者の鋭意研究の末、判明した。以下、その内容について説明する。
【0031】
図3(a)は、図1に示すオートフレッテージ加工装置において、ピストン42を、ある一定の送り速度v=V0で内圧室ICに挿入して、内圧室ICの圧力Pを上昇させようとした場合の圧力と時間の関係を説明するための模式図であり、(b)は、この状況を説明する説明図である。
図3(a)に示すように、前段の推測にもかかわらず、ピストン42を所定の送り速度V0で内圧室ICに挿入しても、内圧室ICの圧力Pが、時間T2までは圧力PはP2まで上昇するが、その後、圧力Pは上昇せず飽和してしまう状況が発生してしまい、目標とする圧力(フレッテージ加工を行う高圧力)に到達できないことが判明した。
【0032】
この状況は図3(b)を用いて次のように説明される。
ピストン42の下降に伴い、内圧室ICの容積が減少し、同時に隙間3から作動油2が流出し始める。ピストン42の下降と作動油2の流出にはタイムラグが発生するので、内圧室ICの圧力Pは上昇する(時間T1〜T2)。やがて作動油2の流出(漏れ流量)が増大すると、内圧室ICの容積が減少する速度も低下して定常状態となるため、内圧室ICの圧力Pは飽和(時間T2〜T3)する。やがてピストン24が停止する(T3)と、作動油2の流出だけが発生して圧力が0になる(T4)という状況が発生するものと考えられる。
【0033】
次に、一定の送り速度vを変化させた場合の圧力と時間の関係について説明する。
図4(a)〜(e)は、それぞれ、ピストン42を内圧室ICに挿入する際の所定の送り速度を、V1〜V4に変更した場合の圧力と時間の関係を示す特性図である。
ピストン42を内圧室ICに挿入する所定の送り速度vをV1〜V4と徐々に上げると、送り速度V1、V2、Vcでは図3に示す模式図と同様に、圧力が上昇してやがて飽和状態となる特性図が得られたが、送り速度Vcを超えた送り速度V3、V4では、圧力が飽和することなく、時間の経過と共に超高圧レベルまで内圧室ICの圧力Pが上昇していることがわかる。
【0034】
すなわち、図1に示すオートフレッテージ加工装置において、ピストン42を一定の送り速度で内圧室ICに挿入して、内圧室ICの圧力Pを上昇させようとする場合には、ピストン42の送り速度vが、送り速度Vc(臨界送り速度)より大きくすれば、内圧室ICの圧力Pが飽和することなく、時間の経過と共に超高圧レベルまで上昇させることができる。このように、内圧室ICの圧力Pが、飽和することなく時間の経過と共に超高圧レベルまで圧力Pが上昇するような特性に変移した場合の送り速度を、臨界送り速度Vcと定める。
【0035】
次に、上記臨界送り速度Vcの求め方について、例示説明する。なお、臨界送り速度Vcの求め方については、実験によって定めても良い。
図5は、漏れ流量と圧力の関係を解析するための説明図であり、ピストン42をワーク1の内部に挿入することにより作動油2が漏れ出している状態を示している。
隙間3(平均隙間量h)からの漏れ流量Qは、次の一般式で表せる。
Q=C*(B/12L)*(h3/η)*ΔP・・・式2
ここで、Bは、シート円周長さ(隙間3の中央部分の円周長さ)、Lは、シート幅(隙間3が形成された領域の幅)、hは、隙間3の平均隙間量、ηは作動油2の粘性係数、ΔPは、隙間3の入口・出口圧力差である。Cは、ピストンとワーク内壁との間の表面形状によって定まる係数であり、表面粗さがRz=3.2程度の研磨面のときに、C=1とする。
【0036】
(1)式1に基づいて、内圧室ICのある圧力Pのときの作動油粘度ηを算出する。
この時、常圧粘度η0および粘度圧力係数αは、使用する作動油2の種別によって一義的に決定される。図6に示す一例では、常圧粘度η0=0.047(Pa・s)、粘度圧力係数α=10.328(Pa-1)の特性値を有するエーテル系3を作動油2として使用している。ここで、エーテル系3とは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルからなる作動油のことである。
【0037】
(2)続いて、式2に基づいて内圧室ICのある圧力Pのときの隙間3からの漏れ流量Qを算出する。
この時、シート円周長さBおよび平均隙間量hは製品形状から一義的に決定され、粘性係数ηは上記(1)で求めた値を使用する。なお、シート幅Lについては、本来、ピストンの挿入量と共に増大する可変パラメータであるが、発明者達の研究結果によれば、軸方向長さ(シート幅L)の増大に伴って隙間の摩擦抵抗が増大しても、その影響はほとんどないことが判明している。このため、シート幅Lについては、固定値として漏れ流量Qを算出しても概ね差し支えない。
図6に示す一例では、B=9.5(mm)、h=20(μm)、L=10(mm)となっている。
【0038】
(3)内圧0〜800MPa程度の間で、上記(1)および(2)を実施し、各圧力時での漏れ流量Qの大きさを求め、その中で最も大きい漏れ流量Qmax(最大漏れ流量と称す)を求める。
【0039】
(4)続いて、(3)で算出した最大漏れ流量Qmaxをピストン42の断面積Aで割ることにより臨界送り速度Vcを算出する。
単位時間あたりに隙間3より流出する作動油2の漏れ流量は、ワーク1内部に挿入されるピストン42の単位時間あたりの体積に等しいので、最大漏れ流量Qmaxとなる時がピストン42の送り速度が最も速くなる速度、すなわち、臨界送り速度Vcとなる。
【0040】
このように、臨界送り速度Vcと最大漏れ流量Qmaxの定義がなされ、それらの関係は、次のように表すことができる。
(臨界送り速度Vc)=(最大漏れ流量Qmax)/(ピストン42の断面積A)・・・式3
図6に示す一例の場合、最大漏れ流量Qmax=2329.32(mm3/sec)、ピストン42の断面積A=70.8mm2であるため、臨界送り速度Vc=32.9(mm/sec)となる。
【0041】
つまり、この臨界送り速度Vc=32.9(mm/sec)を超える速度でピストン42をワーク1内部に挿入すれば、図4(d)、図4(e)に示すように、内圧室ICの圧力Pが飽和することなく、時間の経過と共に超高圧レベルまで上昇させることが可能となる。
【0042】
次に、図6で示した作動油2と同一の作動油を使用しながら隙間3の平均隙間量hを変更した場合について説明する。
図7は、隙間3の平均隙間量hを変更した場合の内圧室ICの圧力と漏れ流量の関係を示す特性図である。図7に示すように、隙間3の平均隙間量hを変更しても、圧力が変化する過程でピーク値である最大漏れ流量Qmaxが発生する特性となっているため、上記と同様に、各々の平均隙間量に応じた臨界送り速度Vcを算出すればよい。
次に、図6で示した作動油2とは異なる作動油を使用しつつ、隙間3の平均隙間量hを変更した場合について説明する。
【0043】
図8は、作動油の種類および平均隙間量を変更した場合の内圧室ICの圧力と漏れ流量の関係を示す特性図であり、作動油の種類として、トリエステル系、エーテル系1、エーテル系5、モノエステル系が例示されている。ここで、エーテル系1とは、ポリエチレングリコールからなる作動油のことであり、エーテル系5とは、ポリオキシプロピレンジアルキルエーテルからなる作動油のことである。図8に示すように、作動油として図6に示すものとは異なる上記作動油を使用しても、さらに、上記作動油で隙間3の平均隙間量hを変更しても、圧力が変化する過程でピーク値である最大漏れ流量Qmaxが発生する特性となることがわかる。
【0044】
以上説明したダイレクト加圧式オートフレッテージ加工によれば、使用する作動油の特性(作動油粘度η)、およびワーク1とピストン42との隙間3のスペック(平均隙間量h、シート幅B、シート円周長さL)から最大漏れ流量Qmaxを求め、その最大漏れ流量Qmaxとピストン42のスペック(断面積A)とに基づいて臨界送り速度Vcを算出することにより、当該臨界送り速度Vcより速い速度でピストン42を送り出せば、オートフレッテージ加工として必要な目標圧力(一例として700MPa〜800MPa)まで昇圧させることができる。これにより、ダイレクト加圧式オートフレッテージ加工は、シールリングを無くすことができ、シールリングの磨耗に起因するコスト増大を低減することができる。
【0045】
(ダイレクト加圧式オートフレッテージ加工における各種制約)
ダイレクト加圧式オートフレッテージ加工は上記のように、従来のオートフレッテージ加工の問題点を解決するものであるが、オートフレッテージ作動油を加圧するための加圧部の送り速度限界や製品形状などに起因する各種制約が発生することがある。
【0046】
1つには、例えば加圧部40を駆動する駆動モータの出力不足や、寿命からみた適切な出力限界であり、これらが要因となって、送り速度vが臨界送り速度Vcに上昇できないことがある。
また、駆動モータを制御する制御回路や、オートフレッテージ加工の圧力制御装置(例えば、所定以上の圧力を何秒間掛けるといった圧力制御)において、制御すべき対象が余りにも速いと制御回路・装置が適切に制御することができないというような制約が生じる。このため、送り速度vは、ある程度遅い速度を利用した方が制御しやすく、通常最大出力の7割程度に制限することが必要となる。このように、駆動モータ、圧力制御回路などから生じる様々な制約から、送り速度vには上限が存在しているので、送り速度vを臨界送り速度Vcには上昇できない場合が発生することがある。
【0047】
一方、ダイレクト加圧式オートフレッテージ加工を行う際に、加工の対象となるワークの形状に起因して様々な制約が発生することがある。
図9は、ディーゼルエンジンで用いられる燃料噴射弁の一例である。図10(a)、(b)は、燃料噴射弁に使用される一部材の一例を示す断面図である。
加工対象がディーゼルエンジンで用いられる燃料噴射弁(一例として、特開2009−203843号公報等参照)である場合について説明する。この燃料噴射弁は、コモンレールから供給される高圧側の管路101と、バルブを閉じるまでに噴射されずに残った燃料をフューエルタンクへ戻す低圧側の管路102が存在している。図9に示すように、燃料噴射弁ボデー103内部の大径部104(図10参照)においては、ボデーの中心に、ピストン等がアクチュエータ(ソレノイド又はピエゾ)により上下するように配置されているため、オートフレッジ加工を施す高圧の管路101は必然的に偏芯してしまうことになる。このため、図10(a)に示すロアボディ103’の上部管路101’は傾斜して比較的短くなってしまう。また、図10(b)に示すような場合においても、管路101’’は比較的短いことが多い。オートフレッジ加工を施す管路が短いと、ピストンの送り速度が、臨界送り速度Vcを超えて所定の圧力に達するに必要なストロークを確保できない場合が発生する。
【0048】
また、加工対象がディーゼルエンジン用のコモンレールシステムである場合について説明する。燃料ポンプから吐出された燃料は、コモンレールに加圧供給される。コモンレールは、燃料ポンプから圧送された燃料を高圧状態で蓄え、高圧配管を介して各気筒の燃料噴射弁に供給する。図2のワーク1は、コモンレールを例示したもので、各気筒の燃料噴射弁に供給するための配管口23が複数配設されている。図2に示すワーク1において、オートフレッテージ加工は、少なくとも交差穴端部Xに対しても施す必要があるため、ワーク1の一端側から交差穴端部Xまでの距離が所望の圧力に達するのに必要なストロークより長くする必要がある。
しかし、ワーク1の形状によっては、ワーク1の一端側から交差穴端部Xまでの距離が所定の圧力に達するのに必要なストロークより短い場合がある。
【0049】
本発明は、上記のような加圧部の送り速度限界や製品形状などに起因する各種制約に対する解決策を提供するものである。
図11は、本発明の実施形態の概要を示す説明図であり、(a)は、オートフレッテージ加工開始前の状態、(b)は本発明の一実施形態(第1実施形態)の概要を示す説明図であり、(c)は別の実施形態(第3実施形態)の概要を示す説明図である。
【0050】
各実施形態の概要をまず簡単に要約する。
一実施形態(第1実施形態)とは、シート幅L=aの図11(a)の状態で、第1の臨界送り速度Vca以上でダイレクト加圧式オートフレッテージ加工を行う場合、駆動モータ、圧力制御回路などから生じる様々な制約から、送り速度vを、第1の臨界送り速度Vcaには上昇できない場合の解決手段である。すなわち、上記制約上の最大送り速度を、限界送り速度V0と称すると、V0<Vcaの場合である。
【0051】
この場合には、ピストンを、図11(b)に示すように、示すシート幅Lをaより長いbとなるようにピストン42の動作開始位置を変更して、第2の臨界送り速度Vcbより大きい送り速度vで、ダイレクト加圧式オートフレッテージ加工を行うようにしたものである。第1の臨界送り速度Vca、第2の臨界送り速度Vcbは、それぞれ、L=a、bに基づき、式2、3により定められる。第2の臨界送り速度Vcbは、b>aであるので、第1の臨界送り速度Vcより小さい。
図12は、隙間3のシート幅Lをaからbに変更した場合の圧力上昇波形を示す特性図である。隙間3のシート幅Lをa=10mmからb=20mmに変更した場合の圧力上昇波形は、明らかにオートフレッジ加工が可能となっていることを示している。a=10mmの場合の臨界送り速度Vca=32.9mm/secは、b=20mmの場合には、臨界送り速度Vcb=16.5mm/secと低下している。
このようにして、所定の送り速度vを、第2の臨界送り速度Vcbより速くし、かつ、限界送り速度V0未満の適当な値に設定することができるのである。
【0052】
別の実施形態(第3実施形態)とは、オートフレッテージ加工を施す管路が短いと、所定の圧力に達するのに必要なストロークを確保できないので、ワークに盛肉部80を設置して、シート幅Lをaより長いbとなるようにしたものである。
【0053】
以下、図面を参照して、本発明の各実施形態を詳説する。各実施態様について、同一構成の部分には、同一の符号を付してその説明を省略する。
(第1実施形態)
図13は、本発明の第1実施形態を説明する説明図であり、(a)は、オートフレッテージ加工開始前の状態、(b)は、本発明の第1実施形態を示す説明図である。
図13(a)のオートフレッテージ加工開始前の状態で、式2に示すように、シート幅L=a、所定の平均隙間量h、作動油の粘性係数η、シート円周長さB等が与件として定められたので、シート幅L=a(第1の軸方向長さ)の場合の最大漏れ流量Qmax(a)が算出することができる(実験で求めても良い)。なお、これまでの研究の結果、図7、8に見られるように、必ず最大値として1つ存在することがわかっている。
【0054】
次に、式3によって、第1の臨界送り速度Vcaを求め、加圧部の送り速度限界に起因する限界送り速度V0と比較して、Vca<V0なら基礎技術の場合と同じで、問題なくオートフレッテージ加工が可能である。本発明の一実施形態では、Vca>V0となってしまった場合の解決策である。この場合は、ピストン42の送り速度vが、あいにく第1の臨界送り速度Vcaまで上昇させることができなくなり、超高圧まで内圧室IC圧力を昇圧させることができない。
【0055】
そこで、シート幅Lをa(第1の軸方向長さ)より長いb(第2の軸方向長さ)の位置に設定すれば、臨界送り速度Vcが低下することに着想を得て、第1実施形態を案出したものである。シート幅Lを長く設定すれば、隙間3の摩擦抵抗が大きくなるので最大漏れ流量が低下するので、当然臨界送り速度Vcも低下する。このことは、式2のみならず、実験的にも確認されている。第2の臨界送り速度Vcbが、Vcb<V0となっていることは、式2により確認すればよい。なお、シート幅Lを長く設定した場合の、実際の送り速度vは、第2の臨界送り速度Vcbより速い速度にしないと、超高圧に昇圧することができない。
【0056】
すなわち、第1の臨界送り速度Vcaを、限界送り速度V0よりも小さい、第2の軸方向長さbにおける単位時間当たりの最大漏れ流量Qmax(b)に相当する第2の臨界送り速度Vcbとし、第2の臨界送り速度Vcbよりも所定の送り速度vを速くすることにより、ワーク1にオートフレッテージ加工を施すようにしたものである。
【0057】
これにより、ダイレクト加圧式オートフレッテージ加工において、駆動モータ、圧力制御回路などの装置から生じる様々な制約から生じる送り速度vの上限を適切に回避して、これらの装置に負担をかけずに、ダイレクト加圧式オートフレッテージ加工を実施することができる。すなわち、ピストンのシート幅Lをaより長いbの位置に設定して、第2の臨界送り速度Vcbより大きい送り速度Vにすることによって内圧室ICの圧力Pが飽和することなく、時間の経過と共に超高圧レベルまで上昇させることが可能となる。
【0058】
第1実施形態は、また、方法としても実施することができ、同様な作用効果を発揮する。すなわち、ワーク1にオートフレッテージ加工を行うオートフレッテージ加工方法であって、ワーク1一端部を除いて閉鎖された前記ワーク1と、前記一端部側の内壁に対して平均隙間量hから成る隙間3を有するピストン42により形成された内圧室ICに作動油2を導入する段階と、駆動モータを有する加圧部40で、前記ピストン42を駆動して、前記内圧室ICに、前記ピストン42を所定の送り速度vで前記内圧室ICに挿入して前記作動油2の前記内圧室圧力Pを上昇させる段階とを具備するオートフレッテージ加工方法において、当該挿入により前記隙間3より漏れ出す前記作動油2の、前記第1の軸方向長さaにおける単位時間当たりの最大漏れ流量Qmax(a)に相当する第1の臨界送り速度Vcaが、予め設定された前記ピストン42の限界送り速度V0よりも大きい場合には、前記第1の軸方向長さaよりも長い第2の軸方向長さbを有する前記隙間を設定する段階をさらに具備し、前記第1の臨界送り速度Vcaを、前記限界送り速度V0よりも小さい、前記第2の軸方向長さbにおける単位時間当たりの最大漏れ流量Qmax(b)に相当する第2の臨界送り速度Vcbとし、当該第2の臨界送り速度Vcbよりも前記所定の送り速度vを速くすることにより、前記ワーク1にオートフレッテージ加工を施すことものである。
【0059】
(第1実施形態の変形例)
図14は、本発明の第1実施形態の変形例を説明する説明図であり、(a)は、オートフレッテージ加工開始前の状態、(b)は、本発明の第1実施形態の変形例を示す説明図である。
本発明の第1実施形態の変形例においては、ピストン42が、ピストンヘッド42−1とピストン軸42−2から構成されて、ピストンヘッド42−1の側面の軸方向長さが、隙間3を形成する第1の軸方向長さaとなっている。この場合のピストン軸42−2には、剛性の高いピストン軸を使用する。
【0060】
先の第1実施形態の場合には、ピストン42が、一定の円柱断面積Aを有しており、加圧部によりピストンがワーク内に送り込まれると、ピストンとワークの隙間の軸方向長さが、時々刻々と増加する。第1実施形態の変形例の場合には、軸方向長さ(シート幅L)が一定なので、第1、2の臨界送り速度Vca、Vcbの算出が容易になる。その他については本発明の第1実施形態と同様である。
【0061】
(第2実施形態)
内圧室ICにおいてピストン42、又は、42−1を所定の送り速度vで送る、ピストン42の動作開始位置を変更して、第1の軸方向長さaよりも長い第2の軸方向長さbを有する隙間3を設定した場合が、第2実施形態である。
シート幅Lを第1の軸方向長さaより長い第2の軸方向長さbの位置に設定した場合に、ピストン42、又は、42−1の動作開始位置とオートフレッジ加工終了位置との間のストロークに余裕がある場合には、第1、2実施形態は問題なく実施できる。余裕のない場合の解決策が、次に述べる第3実施形態である。
【0062】
(第3実施形態)
図15(a)、(b)は、第3実施形態を示す説明図である。図15に示すように、オートフレッジ加工を施す管路が短いと、所定の圧力に達するのに必要なストロークを確保できないので、ワークに盛肉部(連結体とも呼ぶ)を設置して、シート幅Lをaより長いbの位置に設定できるようにしたものである。このようにすれば、図11(c)に示すように、シート幅Lをa(第1の軸方向長さ)より長いb(第2の軸方向長さ)を確保することができるので、ピストン42、42−1のスタート位置とオートフレッジ加工終了位置との間のストロークに余裕が発生する。第1、2実施形態と同様にして、ダイレクト加圧式オートフレッテージ加工を実施することができる。これにより、ピストンのスタート位置とオートフレッジ加工終了位置との間のストロークに余裕がない場合でも、ダイレクト加圧式オートフレッテージ加工において、送り速度Vを臨界送り速度Vc以上にすることによって内圧室ICの圧力Pが飽和することなく、時間の経過と共に超高圧レベルまで上昇させることが可能となる。
【0063】
盛肉部を設置したロアボデー103'(ワーク1)の製造方法は次の工程で構成されている。すなわち、高圧管路101を有するワーク1の製造方法であって、熱間鍛造によりワーク1の第1形状を形成する鍛造工程と、前記第1形状の前記ワーク1を機械加工して、盛肉部80を有する第2形状を形成する第1機械加工工程と、第1実施形態において記載のオートフレッテージ加工方法により、前記ワーク1の高圧管路101に、オートフレッテージ加工を施すオートフレッテージ加工工程と、前記第2形状の前記ワーク1を機械加工して、前記盛肉部80を除去して前記ワーク1の製品形状を形成する第2機械加工工程を具備するものである。
【0064】
ワーク1は、熱間鍛造工程により第1形状としての概略形状が形成され、この概略形状には、製品形状に付け加えて、盛肉部80や切削取り代が含まれている。
第1形状のワーク1を切削、研削等の第1機械加工を行い、盛肉部80を有する第2形状を形成する。ピストン42の挿入角度を傾斜させるか、軸芯方向とするかによって図15の(a)、(b)の2通りに分かれる。図15(a)に示すような、傾斜管路101’にあわせて盛肉部80の管路を形成すると、ダイレクト加圧式オートフレッテージ加工において、ピストンの送り方向が傾斜してしまうので、そのための機構が必要である。第2形状において、盛肉部80以外は、製品形状であるようにすることが好ましい。
オートフレッテージ加工工程後、第2機械加工工程においては、盛肉部80のみを対象として切削、研削等を行い、最終的製品形状とすると良い。
【0065】
図15(a)に示す場合には、必ずしも盛肉部80によらなくても良い。図16(a)、(b)は、盛肉部の代わりに、ねじ込みとした場合の第3実施形態を示す説明図である。最終製品の雄ねじ部81を利用して、連結体80を雌ねじ付昇圧用ジグとしても良い。
【0066】
(第4実施形態)
図17(a)、(b)は、本発明の第4実施形態を模式的に示す説明図である。
第1実施形態、第1実施形態の変形例では、シート幅Lをaからbに長く設定することにより(a<b)、隙間3の摩擦抵抗が大きくし、最大漏れ流量を低下させ、臨界送り速度Vcを低下させた。
ここで、隙間3の摩擦抵抗は、シート幅Lに限らず、隙間3のピストン42、42−1の表面性状(表面粗さ、形状)によっても変更することができる。この第4実施形態は、隙間3の摩擦抵抗に着目したものである。これにより、ピストン側面での摩擦を大きくすることにより漏れ流量を小さくすることができ、ダイレクト加圧式オートフレッテージ加工において、送り速度Vを臨界送り速度Vc以上にすることによって内圧室ICの圧力Pが飽和することなく、時間の経過と共に超高圧レベルまで上昇させることが可能となる。
すなわち、隙間3を作動油が上ってゆくときの摩擦が大きければ、流量が減少するため、発生する最大漏れ流量が減少する。これにより、臨界送り速度Vcを低下させることができるので、加圧部の送り速度限界や製品形状などに起因する各種制約が発生した場合でも、必要な所定圧力を達成することができる。なお、式2のCは、ピストンとワーク内壁との間の表面形状によって定まる係数であり、(例えば、表面粗さがRz=3.2程度の研磨面のときに、C=1としている)。Cを小さくすると、隙間3を作動油が上ってゆくときの摩擦が大きく、漏れ流量が減少する。
【0067】
具体的には、図17(a)に示すように、ピストン42の側面に山形溝、凹凸面からなる粗面(ランダムであっても、規則的な繰り返しであってもよい)を設けると良い。また、図17(b)に一例として示すように、ピストン42の円周方向に設けられた溝であって、当該溝のピストン42の軸方向間隙量が、前記溝の開口より底部において大きく構成された複数の溝からなるラビリンス構造としても良い。
図17(b)の例では、断面がL字状(ピストン軸を含む断面に表れた形状)であるが、必ずしもこれに限られるものではなく、下部断面が円形状に膨らんでいても良い。特に、L字状の場合は、高圧の作動油の圧力を受けて、図17(b)の可撓部43部分が変形して適切にシール性を向上させることができるが、ワーク内に挿入されるピストンなので、シール性が過度に高められてピストンの作動に支障が生じないようなように各部の寸法を設計しなければならない。このような観点から、適切にシール性を向上させ、かつピストンの作動に支障が生じないように設計されたラビリンス構造とする。
【0068】
その他、ピストン42の側面に環状溝を設けるという、いわゆる通常のラビリンスパッキンに用いられるラビリンス構造を有する形状としてもよい。これらの形状は、旋削、放電加工、化学腐食処理等で行えばよい。
【0069】
次に、封止部材24の変形例について説明する。図18(a)は、封止部材24の変形例を説明するための説明図であり、(b)は、(a)に示すキャップ21内部の拡大図である。この変形例におけるワーク1に設けられた配管口23の外周はねじ切りされており、キャップ21がねじで固定されている。
そして、図18(b)に示すように、キャップ21の内部には穴25が設けられており、配管口用シールピン20が挿入されている。配管口23に挿入されるシールピン20の端部22には、半球状のR部が設けられている。配管口23の外周のねじに対して、キャップ21を回して、配管口23の内側のテーパ部23’にシールピン20の端部22の半球状のR部が、所定圧で接触するように調整する。シールピン20とキャップ21が封止部材24を構成する。こうすることにより、シールピン20の端部22が、高いシール耐圧を持って密着するようになる。
【符号の説明】
【0070】
1 ワーク
2 作動油
3 隙間
21 キャップ
22 溝穴
23 配管口
40 加圧部
42 ピストン
42−1 ピストンヘッド
42−2 ピストン軸
80 盛肉部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、高圧燃料噴射管やコモンレール等の加工装置に使用されるものであって、特に超高圧下でのオートフレッテージ加工を行うためのオートフレッテージ加工装置、オートフレッテージ加工方法、及び、オートフレッテージ加工を施したワークの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2等にみられるように、密閉状態で高圧をかけて材料組織に残留応力を残して強度をあげる加工方法(オートフレッテージ加工と称す)が知られている。
すなわち、オートフレッテージ加工では、ワークの内側においては塑性変形させるように、かつ、ワークの外側においては弾性変形させるものの塑性変形させないような高圧力をワーク内部に与えている。これによって、ワークに残留圧縮応力を付与し、ワークの耐圧疲労強度を増強させている。このような加工方法は、ディーゼルコモンレールシステム部品などの耐圧疲労強度が必要とされる部品の、疲労強度増強を目的とした残留圧縮応力付与に利用されている。
従来のオートフレッテージ加工装置は、図19に示すように、液体(オートフレッテージ作動油)を増圧するために、ピストンロッド32の摺動部の隙間をゼロとする必要があった。そして、隙間をゼロとするために、シリンダハウジング33とピストンロッド32との間に高精度のシールリング35を幾重にも重ね、内圧によりシールリング35を変形・密着させて摺動させていた。
しかし、これにより、シールリング35は磨耗(もしくは破壊)し、ある程度の回数で交換が必要になるという問題がある。
なお、先行技術として挙げた特許文献1においても、一見ワーク内部(特許文献1の符号2参照)にピストン(特許文献1の符号19参照)が挿入されている。しかしながら、あくまでシール部材が別に設けられていることに留意されるべきである(特許文献1の段落0026の「排出ピストン開口部6と事前充填開口部7の密閉は、然るべき密閉円錐によって行われる」なる記載参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許発明第102006054440号明細書(DE102006054440B3、特表2010−510385号公報は対応日本公報)
【特許文献2】特開2004−92551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、磨耗による部品消耗を極力低減することが可能なオートフレッテージ加工装置、オートフレッテージ加工方法、及び、オートフレッテージ加工を施したワークの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、駆動モータを有する加圧部(40)と、該加圧部(40)に駆動され、前記加圧部の加圧前の状態において、ワーク(1)の一端部側の内壁と、ピストン(42)の軸方向に沿った側面との間に、所定の平均隙間量(h)および第1の軸方向長さ(a)を有する隙間(3)を形成する前記ピストン(42)と、前記一端部を除いて密閉された前記ワーク(1)および前記ピストン(42)により形成され、作動油(2)が充填された内圧室(IC)と、を具備し、前記加圧部(40)は、前記作動油(2)で充填された前記内圧室(IC)に前記ピストン(42)を所定の送り速度(v)で挿入させるものであり、当該挿入により前記隙間(3)より漏れ出す前記作動油(2)の、前記第1の軸方向長さ(a)における単位時間当たりの最大漏れ流量(Qmax(a))に相当する第1の臨界送り速度(Vca)が、予め設定された前記ピストン(42)の限界送り速度(V0)よりも大きい場合には、前記第1の軸方向長さ(a)よりも長い第2の軸方向長さ(b)を有する前記隙間を設定することにより、前記第1の臨界送り速度(Vca)を、前記限界送り速度(V0)よりも小さい、前記第2の軸方向長さ(b)における単位時間当たりの最大漏れ流量(Qmax(b))に相当する第2の臨界送り速度(Vcb)とし、当該第2の臨界送り速度(Vcb)よりも前記所定の送り速度(v)を速くすることにより、前記ワーク(1)にオートフレッテージ加工を施すオートフレッテージ加工装置である。
【0006】
これにより、摺動部品であるピストンにシールリング等の封止部材を設ける必要が無いので、オートフレッテージ加工を実現しながら、磨耗による部品消耗を極力低減することが可能である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記内圧室(IC)において前記ピストン(42)を所定の送り速度(v)で送る、前記ピストン(42)の動作開始位置を変更して、前記第1の軸方向長さ(a)よりも長い第2の軸方向長さ(b)を有する前記隙間を設定したことを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記ピストン(42)が、ピストンヘッド(42−1)とピストン軸(42−2)から構成されて、前記ピストンヘッド(42−1)の側面の軸方向長さが、前記隙間(3)を形成する前記第1の軸方向長さ(a)であって、前記挿入により前記隙間(3)より漏れ出す前記作動油(2)の、前記第1の軸方向長さ(a)における単位時間当たりの最大漏れ流量(Qmax(a))に相当する第1の臨界送り速度(Vca)が、予め設定された前記ピストン(42)の限界送り速度(V0)よりも大きい場合には、前記ピストンヘッド(42−1)の側面の軸方向長さを、前記第1の軸方向長さ(a)よりも長い第2の軸方向長さ(b)に設定することを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の発明において、前記所定の送り速度(v)が、前記第2の臨界送り速度(Vcb)よりも速い前記所定の送り速度(v)に達するまでの間に亘って、ワーク(1)の一端部側の内壁とピストン(42)の軸方向に沿った側面との間の、前記所定の平均隙間量(h)を有する隙間(3)が、前記ワーク(1)に形成されていない場合には、前記ワーク(1)の一端部に連結体を継ぎ足し連結して、前記所定の送り速度(v)が、前記第2の臨界送り速度(Vcb)よりも速い前記所定の送り速度(v)に達するまでの間、ワーク(1)の一端部側の内壁と、ピストン(42)の軸方向に沿った側面との間に、連続的な所定の平均隙間量(h)を有する隙間(3)が形成されるようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載の発明に、前記ワーク(1)の一端部に、鍛造成形時に盛肉部(80)を連結形成して、前記連結体の継ぎ足し連結として構成するようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明は、請求項4項に記載の発明において、前記ワーク(1)の一端部に、前記連結体(80)をねじ結合によって連結して、前記連結体の継ぎ足し連結として構成するようにしたことを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載の発明において、前記内圧室(IC)に所定の送り速度(v)で挿入させられる前記ピストン(42)が、一定の円柱断面積(A)を有していることを特徴とする。
【0013】
請求項8の発明は、請求項1から7のいずれか1項に記載の発明において、前記隙間(3)を形成する、ワーク(1)の一端部側の内壁に対向するピストン(42)の軸方向に沿った側面に、摩擦抵抗を上昇させる摩擦抵抗部が形成されたことを特徴とする。
【0014】
請求項9の発明は、駆動モータを有する加圧部(40)と、該加圧部(40)に駆動され、前記加圧部の加圧前の状態において、ワーク(1)の一端部側の内壁と、ピストン(42)の軸方向に沿った側面との間に、所定の平均隙間量(h)および第1の軸方向長さ(a)を有する隙間(3)を形成する前記ピストン(42)と、前記一端部を除いて密閉された前記ワーク(1)および前記ピストン(42)により形成され、作動油(2)が充填された内圧室(IC)と、を具備し、前記加圧部(40)は、前記作動油(2)で充填された前記内圧室(IC)に前記ピストン(42)を所定の送り速度(v)で挿入させるものであり、当該挿入により前記隙間(3)より漏れ出す作動油(2)の、前記第1の軸方向長さ(a)における単位時間当たりの最大漏れ流量(Qmax(a))に相当する第1の臨界送り速度(Vca)が、予め設定された前記ピストン(42)の限界送り速度(V0)よりも大きい場合には、前記隙間(3)を形成する前記ワーク(1)の一端部側の内壁と対向する前記ピストン(42)の軸方向に沿った側面に、摩擦抵抗を上昇させる摩擦抵抗部を形成させて、前記限界送り速度(V0)よりも小さい、前記摩擦抵抗部を形成させた場合の単位時間当たりの最大漏れ流量に相当する第2の臨界送り速度(Vcb)を設定し、当該第2の臨界送り速度(Vcb)よりも所定の送り速度(v)を速くすることにより、前記ワーク(1)にオートフレッテージ加工を施すオートフレッテージ加工装置である。
【0015】
請求項10の発明は、請求項9の発明において、前記摩擦抵抗部は、凹凸面からなる粗面を有することを特徴とする。
【0016】
請求項11の発明は、請求項9の発明において、前記摩擦抵抗部は、前記ピストン(42)の円周方向に設けられた溝であって、当該溝の前記ピストン(42)の軸方向間隙量が、前記溝の開口より底部において大きく構成された複数の溝からなるラビリンス構造を有することを特徴とする。
【0017】
請求項12の発明は、ワーク(1)にオートフレッテージ加工を行うオートフレッテージ加工方法であって、ワーク(1)一端部を除いて閉鎖された前記ワーク(1)と、前記一端部側の内壁に対して平均隙間量(h)から成る隙間(3)を有するピストン(42)により形成された内圧室(IC)に作動油(2)を導入する段階と、駆動モータを有する加圧部(40)で、前記ピストン(42)を駆動して、前記内圧室(IC)に、前記ピストン(42)を所定の送り速度(v)で前記内圧室(IC)に挿入して前記作動油(2)の前記内圧室圧力(P)を上昇させる段階と、を具備するオートフレッテージ加工方法において、当該挿入により前記隙間(3)より漏れ出す前記作動油(2)の、前記第1の軸方向長さ(a)における単位時間当たりの最大漏れ流量(Qmax(a))に相当する第1の臨界送り速度(Vca)が、予め設定された前記ピストン(42)の限界送り速度(V0)よりも大きい場合には、前記第1の軸方向長さ(a)よりも長い第2の軸方向長さ(b)を有する前記隙間を設定する段階をさらに具備し、前記第1の臨界送り速度(Vca)を、前記限界送り速度(V0)よりも小さい、前記第2の軸方向長さ(b)における単位時間当たりの最大漏れ流量(Qmax(b))に相当する第2の臨界送り速度(Vcb)とし、当該第2の臨界送り速度(Vcb)よりも前記所定の送り速度(v)を速くすることにより、前記ワーク(1)にオートフレッテージ加工を施すことを特徴とするオートフレッテージ加工方法である。
【0018】
請求項13の発明は、請求項12の発明において、前記ワーク(1)の一端部側に、鍛造成形による盛肉部(80)が連結形成されたことを特徴とする。
【0019】
請求項14の発明は、高圧管路(101)を有するワーク(1)の製造方法であって、
熱間鍛造によりワーク(1)の第1形状を形成する鍛造工程と、前記第1形状の前記ワーク(1)を機械加工して、盛肉部(80)を有する第2形状を形成する第1機械加工工程と、請求項13に記載の発明のオートフレッテージ加工方法により、前記ワーク(1)の高圧管路(101)に、オートフレッテージ加工を施すオートフレッテージ加工工程と、前記第2形状の前記ワーク(1)を機械加工して、前記盛肉部(80)を除去して前記ワーク(1)の製品形状を形成する第2機械加工工程を具備することを特徴とするワーク(1)の製造方法である。
【0020】
なお、上記に付した符号は、後述する実施形態に記載の具体的実施態様との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ダイレクト加圧式のオートフレッテージ加工装置を模式的に示す説明図であり、(a)はピストン42の摺動開始前、(b)はピストン42の摺動開始後を示す図である。
【図2】ダイレクト加圧式のオートフレッテージ加工装置を模式的に示す説明図である。
【図3】(a)は図1に示す装置においてピストンをある一定の送り速度V0で内圧室ICに挿入して、内圧室ICの圧力Pを上昇させようとした場合の圧力と時間の関係を示す模式図であり、(b)はこの状況を説明する説明図である。
【図4】(a)〜(e)は、それぞれピストンを内圧室ICに挿入する送り速度を、V1〜V4に変更した場合の圧力上昇波形を示す特性図である。
【図5】漏れと圧力の関係を解析するための説明図である。
【図6】臨界送り速度Vcを求める一例を説明するための説明図である。
【図7】平均隙間量hを変更した場合の、内圧室ICの圧力と漏れ流量の関係および臨界送り速度Vcを示す特性図である。
【図8】作動油および平均隙間量hを変更した場合の内圧室圧力と最大漏れ流量Qmaxの関係を示す特性図である。
【図9】ディーゼルエンジンで用いられる燃料噴射弁の一例である。
【図10】(a)、(b)は、燃料噴射弁に使用される一部材の一例を示す断面図である。
【図11】本発明の実施形態の概要を示す説明図であり、(a)は、オートフレッテージ加工開始前の状態、(b)は本発明の一実施形態(第1実施形態)の概要を示す説明図であり、(c)は別の実施形態(第3実施形態)の概要を示す説明図である。
【図12】隙間3のシート幅Lをaからbに変更した場合の圧力上昇波形を示す特性図である。
【図13】本発明の第1実施形態を説明する説明図であり、(a)は、オートフレッテージ加工開始前の状態、(b)は、本発明の第1実施形態を示す説明図である。
【図14】本発明の第1実施形態の変形例を説明する説明図であり、(a)は、オートフレッテージ加工開始前の状態、(b)は、本発明の第1実施形態の変形例を示す説明図である。
【図15】(a)、(b)は、第3実施形態を示す説明図である。
【図16】(a)、(b)は、盛肉部の代わりに、ねじ込みとした場合の第3実施形態を示す説明図である。
【図17】(a)、(b)は、本発明の第4実施形態を模式的に示す説明図である。
【図18】(a)は、封止部材24の変形例を説明するための説明図であり、(b)は、(a)に示すキャップ21内部の拡大図である。
【図19】従来装置の一部を拡大した一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。各実施態様について、同一構成の部分には、同一の符号を付してその説明を省略する。本発明の各実施形態が、本発明の基礎となった基礎技術に対しても同一構成の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
本発明の一実施形態を説明する前に、本発明の基礎となった基礎技術である、ダイレクト加圧式のオートフレッテージ加工装置を説明する。なお、本発明の一実施形態においてもダイレクト加圧式のオートフレッテージ加工装置を前提としている。
【0023】
(ダイレクト加圧式オートフレッテージ加工)
図1、2は、ダイレクト加圧式オートフレッテージ加工を模式的に示す説明図である。高圧下でオートフレッテージ加工を施すワーク1の一例としては、特にディーゼルコモンレールシステム部品などの、耐圧疲労強度が必要とされる部品が挙げられる。その他、疲労強度増強を目的とした残留圧縮付与が必要とされる部品なら本発明は適用可能である。以下の説明では、ワーク1として、高圧燃料噴射管、コモンレール用レール、シリンダポンプ等にオートフレッジ加工を施す場合を例示して、本発明の一実施形態を説明する。
【0024】
図1において、模式的に密閉したワークとして示されるワーク1の内部には作動油2が充填されており、サーボモータ(駆動モータ)を有する加圧部40には、ピストン42が連結されている。なお加圧部40は必ずしもピストン42に連結されている必要はない。
このピストン42は、図2に示すように、ワーク1の一端部の内壁に対して平均隙間量h(一例として1〜30μm)から成る隙間3を有するように挿入される。そのため、ピストン42が挿入されても平均隙間量hが維持されるように、少なくともピストン42が挿入される範囲のワーク1内部の軸方向と、ピストン42の軸方向と、加圧部40の加圧軸方向とが一致するように、加圧部40とワーク1とは設備に固定されている。
【0025】
そして、ワーク1の配管口23に封止部材24が挿入された状態で圧力Wを掛けることで密閉され、ワーク1の他端はシールピン4で密閉されているので、ワーク1は、その一端部以外は閉鎖された構造となり、ピストン42によりワーク1の内部に内圧室ICが形成されることになる。また、ワーク1の内圧室ICの圧力Pを計測するためにピストン42には歪みゲージ50が貼られていて、ピストン42の変形量から内圧室ICの圧力Pが算出される。なお、加圧部40に含まれるサーボモータとしては、流体圧アクチュエータ(油圧)を利用してもよく、また、電動モータでねじを回転させて、加圧しても良い。
【0026】
次に、上記構成における作動を説明する。ワーク1の他端側をシールピン4で密閉し、ワーク1の配管口23に封止部材24を挿入して圧力Wを掛けることで密閉した状態で作動油2をワーク1に充填する。続いて、ピストン42をワーク1の一端側より挿入し、ピストン42の非挿入側を加圧部40に連結する。ここで、ピストン42は、上述したように、ワーク1の一端部の内壁に対して所定の平均隙間量hからなる隙間3を有するように設定されていて、ピストン42とワーク1の内壁間には、シールリング等は一切使用されない。
【0027】
この状態で、加圧部40によりピストン42をワーク1に所定の送り速度vで挿入させると、ワーク1の内壁およびピストン42の間の隙間3から作動油2が漏れ出すことになるが、上述した所定の送り速度vを当該漏れ出す速度よりも速く設定する、すなわち、隙間3から作動油2が漏れ出す速度以上の速度でワーク1の内部にピストン42を挿入させることにより、ワーク1の内部に充填された作動油2を圧縮し、ワーク1内部の圧力を上昇させる。
【0028】
こうすることにより、オートフレッテージ加工装置において、シールリングを使用することなくオートフレッテージ加工を行うことができ、磨耗による部品消耗を極力低減することが可能である。また、従来、内圧により変形が起こると隙間をゼロとすることができないため、作動油の増圧部は非常に肉厚で巨大なハウジングを必要としていたが、このような巨大で高価な増圧部のハウジングをなくすことで、設備構造をシンプル・スリム化することができ、安い経費、償却費でオートフレッテージ加工をすることができるようになった。
【0029】
(臨界送り速度Vcと、単位時間当たりの最大漏れ流量Qmax)
次に、上述したピストン42をワーク1に挿入させる際の所定の送り速度vについて説明するとともに、臨界送り速度Vcと、単位時間当たりの最大漏れ流量Qmaxとは何かについて説明する。
ワーク1の内部に充填される作動油2の粘度ηは、油の圧力をPとしたときに、次の式1で表すことができる。
η=η0exp(αP)・・・式1
ここで、η0は大気圧下の粘度(常圧粘度)、αは粘度圧力係数(液体固有のもの)であり、全ての液体で成立する(「トライボロジスト」第49巻第9号(2004年)720〜721頁等参照)。
【0030】
この式1からわかるように、圧力Pが上昇すると指数関数的に粘度ηが増加する。すなわち、ピストン42を高速で降下させ、ワーク1の内圧室ICの圧力Pを上昇させると、内部の作動油2の粘度が上昇し、隙間3からの漏れ流量を減らす働きをする。この働きにより、更に内圧室ICの圧力が上昇し、目標とする圧力(フレッテージ加工を行う高圧力)に到達することができるものと考えられた。
しかし、実際には、上記の推測通りではない事が発明者の鋭意研究の末、判明した。以下、その内容について説明する。
【0031】
図3(a)は、図1に示すオートフレッテージ加工装置において、ピストン42を、ある一定の送り速度v=V0で内圧室ICに挿入して、内圧室ICの圧力Pを上昇させようとした場合の圧力と時間の関係を説明するための模式図であり、(b)は、この状況を説明する説明図である。
図3(a)に示すように、前段の推測にもかかわらず、ピストン42を所定の送り速度V0で内圧室ICに挿入しても、内圧室ICの圧力Pが、時間T2までは圧力PはP2まで上昇するが、その後、圧力Pは上昇せず飽和してしまう状況が発生してしまい、目標とする圧力(フレッテージ加工を行う高圧力)に到達できないことが判明した。
【0032】
この状況は図3(b)を用いて次のように説明される。
ピストン42の下降に伴い、内圧室ICの容積が減少し、同時に隙間3から作動油2が流出し始める。ピストン42の下降と作動油2の流出にはタイムラグが発生するので、内圧室ICの圧力Pは上昇する(時間T1〜T2)。やがて作動油2の流出(漏れ流量)が増大すると、内圧室ICの容積が減少する速度も低下して定常状態となるため、内圧室ICの圧力Pは飽和(時間T2〜T3)する。やがてピストン24が停止する(T3)と、作動油2の流出だけが発生して圧力が0になる(T4)という状況が発生するものと考えられる。
【0033】
次に、一定の送り速度vを変化させた場合の圧力と時間の関係について説明する。
図4(a)〜(e)は、それぞれ、ピストン42を内圧室ICに挿入する際の所定の送り速度を、V1〜V4に変更した場合の圧力と時間の関係を示す特性図である。
ピストン42を内圧室ICに挿入する所定の送り速度vをV1〜V4と徐々に上げると、送り速度V1、V2、Vcでは図3に示す模式図と同様に、圧力が上昇してやがて飽和状態となる特性図が得られたが、送り速度Vcを超えた送り速度V3、V4では、圧力が飽和することなく、時間の経過と共に超高圧レベルまで内圧室ICの圧力Pが上昇していることがわかる。
【0034】
すなわち、図1に示すオートフレッテージ加工装置において、ピストン42を一定の送り速度で内圧室ICに挿入して、内圧室ICの圧力Pを上昇させようとする場合には、ピストン42の送り速度vが、送り速度Vc(臨界送り速度)より大きくすれば、内圧室ICの圧力Pが飽和することなく、時間の経過と共に超高圧レベルまで上昇させることができる。このように、内圧室ICの圧力Pが、飽和することなく時間の経過と共に超高圧レベルまで圧力Pが上昇するような特性に変移した場合の送り速度を、臨界送り速度Vcと定める。
【0035】
次に、上記臨界送り速度Vcの求め方について、例示説明する。なお、臨界送り速度Vcの求め方については、実験によって定めても良い。
図5は、漏れ流量と圧力の関係を解析するための説明図であり、ピストン42をワーク1の内部に挿入することにより作動油2が漏れ出している状態を示している。
隙間3(平均隙間量h)からの漏れ流量Qは、次の一般式で表せる。
Q=C*(B/12L)*(h3/η)*ΔP・・・式2
ここで、Bは、シート円周長さ(隙間3の中央部分の円周長さ)、Lは、シート幅(隙間3が形成された領域の幅)、hは、隙間3の平均隙間量、ηは作動油2の粘性係数、ΔPは、隙間3の入口・出口圧力差である。Cは、ピストンとワーク内壁との間の表面形状によって定まる係数であり、表面粗さがRz=3.2程度の研磨面のときに、C=1とする。
【0036】
(1)式1に基づいて、内圧室ICのある圧力Pのときの作動油粘度ηを算出する。
この時、常圧粘度η0および粘度圧力係数αは、使用する作動油2の種別によって一義的に決定される。図6に示す一例では、常圧粘度η0=0.047(Pa・s)、粘度圧力係数α=10.328(Pa-1)の特性値を有するエーテル系3を作動油2として使用している。ここで、エーテル系3とは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルからなる作動油のことである。
【0037】
(2)続いて、式2に基づいて内圧室ICのある圧力Pのときの隙間3からの漏れ流量Qを算出する。
この時、シート円周長さBおよび平均隙間量hは製品形状から一義的に決定され、粘性係数ηは上記(1)で求めた値を使用する。なお、シート幅Lについては、本来、ピストンの挿入量と共に増大する可変パラメータであるが、発明者達の研究結果によれば、軸方向長さ(シート幅L)の増大に伴って隙間の摩擦抵抗が増大しても、その影響はほとんどないことが判明している。このため、シート幅Lについては、固定値として漏れ流量Qを算出しても概ね差し支えない。
図6に示す一例では、B=9.5(mm)、h=20(μm)、L=10(mm)となっている。
【0038】
(3)内圧0〜800MPa程度の間で、上記(1)および(2)を実施し、各圧力時での漏れ流量Qの大きさを求め、その中で最も大きい漏れ流量Qmax(最大漏れ流量と称す)を求める。
【0039】
(4)続いて、(3)で算出した最大漏れ流量Qmaxをピストン42の断面積Aで割ることにより臨界送り速度Vcを算出する。
単位時間あたりに隙間3より流出する作動油2の漏れ流量は、ワーク1内部に挿入されるピストン42の単位時間あたりの体積に等しいので、最大漏れ流量Qmaxとなる時がピストン42の送り速度が最も速くなる速度、すなわち、臨界送り速度Vcとなる。
【0040】
このように、臨界送り速度Vcと最大漏れ流量Qmaxの定義がなされ、それらの関係は、次のように表すことができる。
(臨界送り速度Vc)=(最大漏れ流量Qmax)/(ピストン42の断面積A)・・・式3
図6に示す一例の場合、最大漏れ流量Qmax=2329.32(mm3/sec)、ピストン42の断面積A=70.8mm2であるため、臨界送り速度Vc=32.9(mm/sec)となる。
【0041】
つまり、この臨界送り速度Vc=32.9(mm/sec)を超える速度でピストン42をワーク1内部に挿入すれば、図4(d)、図4(e)に示すように、内圧室ICの圧力Pが飽和することなく、時間の経過と共に超高圧レベルまで上昇させることが可能となる。
【0042】
次に、図6で示した作動油2と同一の作動油を使用しながら隙間3の平均隙間量hを変更した場合について説明する。
図7は、隙間3の平均隙間量hを変更した場合の内圧室ICの圧力と漏れ流量の関係を示す特性図である。図7に示すように、隙間3の平均隙間量hを変更しても、圧力が変化する過程でピーク値である最大漏れ流量Qmaxが発生する特性となっているため、上記と同様に、各々の平均隙間量に応じた臨界送り速度Vcを算出すればよい。
次に、図6で示した作動油2とは異なる作動油を使用しつつ、隙間3の平均隙間量hを変更した場合について説明する。
【0043】
図8は、作動油の種類および平均隙間量を変更した場合の内圧室ICの圧力と漏れ流量の関係を示す特性図であり、作動油の種類として、トリエステル系、エーテル系1、エーテル系5、モノエステル系が例示されている。ここで、エーテル系1とは、ポリエチレングリコールからなる作動油のことであり、エーテル系5とは、ポリオキシプロピレンジアルキルエーテルからなる作動油のことである。図8に示すように、作動油として図6に示すものとは異なる上記作動油を使用しても、さらに、上記作動油で隙間3の平均隙間量hを変更しても、圧力が変化する過程でピーク値である最大漏れ流量Qmaxが発生する特性となることがわかる。
【0044】
以上説明したダイレクト加圧式オートフレッテージ加工によれば、使用する作動油の特性(作動油粘度η)、およびワーク1とピストン42との隙間3のスペック(平均隙間量h、シート幅B、シート円周長さL)から最大漏れ流量Qmaxを求め、その最大漏れ流量Qmaxとピストン42のスペック(断面積A)とに基づいて臨界送り速度Vcを算出することにより、当該臨界送り速度Vcより速い速度でピストン42を送り出せば、オートフレッテージ加工として必要な目標圧力(一例として700MPa〜800MPa)まで昇圧させることができる。これにより、ダイレクト加圧式オートフレッテージ加工は、シールリングを無くすことができ、シールリングの磨耗に起因するコスト増大を低減することができる。
【0045】
(ダイレクト加圧式オートフレッテージ加工における各種制約)
ダイレクト加圧式オートフレッテージ加工は上記のように、従来のオートフレッテージ加工の問題点を解決するものであるが、オートフレッテージ作動油を加圧するための加圧部の送り速度限界や製品形状などに起因する各種制約が発生することがある。
【0046】
1つには、例えば加圧部40を駆動する駆動モータの出力不足や、寿命からみた適切な出力限界であり、これらが要因となって、送り速度vが臨界送り速度Vcに上昇できないことがある。
また、駆動モータを制御する制御回路や、オートフレッテージ加工の圧力制御装置(例えば、所定以上の圧力を何秒間掛けるといった圧力制御)において、制御すべき対象が余りにも速いと制御回路・装置が適切に制御することができないというような制約が生じる。このため、送り速度vは、ある程度遅い速度を利用した方が制御しやすく、通常最大出力の7割程度に制限することが必要となる。このように、駆動モータ、圧力制御回路などから生じる様々な制約から、送り速度vには上限が存在しているので、送り速度vを臨界送り速度Vcには上昇できない場合が発生することがある。
【0047】
一方、ダイレクト加圧式オートフレッテージ加工を行う際に、加工の対象となるワークの形状に起因して様々な制約が発生することがある。
図9は、ディーゼルエンジンで用いられる燃料噴射弁の一例である。図10(a)、(b)は、燃料噴射弁に使用される一部材の一例を示す断面図である。
加工対象がディーゼルエンジンで用いられる燃料噴射弁(一例として、特開2009−203843号公報等参照)である場合について説明する。この燃料噴射弁は、コモンレールから供給される高圧側の管路101と、バルブを閉じるまでに噴射されずに残った燃料をフューエルタンクへ戻す低圧側の管路102が存在している。図9に示すように、燃料噴射弁ボデー103内部の大径部104(図10参照)においては、ボデーの中心に、ピストン等がアクチュエータ(ソレノイド又はピエゾ)により上下するように配置されているため、オートフレッジ加工を施す高圧の管路101は必然的に偏芯してしまうことになる。このため、図10(a)に示すロアボディ103’の上部管路101’は傾斜して比較的短くなってしまう。また、図10(b)に示すような場合においても、管路101’’は比較的短いことが多い。オートフレッジ加工を施す管路が短いと、ピストンの送り速度が、臨界送り速度Vcを超えて所定の圧力に達するに必要なストロークを確保できない場合が発生する。
【0048】
また、加工対象がディーゼルエンジン用のコモンレールシステムである場合について説明する。燃料ポンプから吐出された燃料は、コモンレールに加圧供給される。コモンレールは、燃料ポンプから圧送された燃料を高圧状態で蓄え、高圧配管を介して各気筒の燃料噴射弁に供給する。図2のワーク1は、コモンレールを例示したもので、各気筒の燃料噴射弁に供給するための配管口23が複数配設されている。図2に示すワーク1において、オートフレッテージ加工は、少なくとも交差穴端部Xに対しても施す必要があるため、ワーク1の一端側から交差穴端部Xまでの距離が所望の圧力に達するのに必要なストロークより長くする必要がある。
しかし、ワーク1の形状によっては、ワーク1の一端側から交差穴端部Xまでの距離が所定の圧力に達するのに必要なストロークより短い場合がある。
【0049】
本発明は、上記のような加圧部の送り速度限界や製品形状などに起因する各種制約に対する解決策を提供するものである。
図11は、本発明の実施形態の概要を示す説明図であり、(a)は、オートフレッテージ加工開始前の状態、(b)は本発明の一実施形態(第1実施形態)の概要を示す説明図であり、(c)は別の実施形態(第3実施形態)の概要を示す説明図である。
【0050】
各実施形態の概要をまず簡単に要約する。
一実施形態(第1実施形態)とは、シート幅L=aの図11(a)の状態で、第1の臨界送り速度Vca以上でダイレクト加圧式オートフレッテージ加工を行う場合、駆動モータ、圧力制御回路などから生じる様々な制約から、送り速度vを、第1の臨界送り速度Vcaには上昇できない場合の解決手段である。すなわち、上記制約上の最大送り速度を、限界送り速度V0と称すると、V0<Vcaの場合である。
【0051】
この場合には、ピストンを、図11(b)に示すように、示すシート幅Lをaより長いbとなるようにピストン42の動作開始位置を変更して、第2の臨界送り速度Vcbより大きい送り速度vで、ダイレクト加圧式オートフレッテージ加工を行うようにしたものである。第1の臨界送り速度Vca、第2の臨界送り速度Vcbは、それぞれ、L=a、bに基づき、式2、3により定められる。第2の臨界送り速度Vcbは、b>aであるので、第1の臨界送り速度Vcより小さい。
図12は、隙間3のシート幅Lをaからbに変更した場合の圧力上昇波形を示す特性図である。隙間3のシート幅Lをa=10mmからb=20mmに変更した場合の圧力上昇波形は、明らかにオートフレッジ加工が可能となっていることを示している。a=10mmの場合の臨界送り速度Vca=32.9mm/secは、b=20mmの場合には、臨界送り速度Vcb=16.5mm/secと低下している。
このようにして、所定の送り速度vを、第2の臨界送り速度Vcbより速くし、かつ、限界送り速度V0未満の適当な値に設定することができるのである。
【0052】
別の実施形態(第3実施形態)とは、オートフレッテージ加工を施す管路が短いと、所定の圧力に達するのに必要なストロークを確保できないので、ワークに盛肉部80を設置して、シート幅Lをaより長いbとなるようにしたものである。
【0053】
以下、図面を参照して、本発明の各実施形態を詳説する。各実施態様について、同一構成の部分には、同一の符号を付してその説明を省略する。
(第1実施形態)
図13は、本発明の第1実施形態を説明する説明図であり、(a)は、オートフレッテージ加工開始前の状態、(b)は、本発明の第1実施形態を示す説明図である。
図13(a)のオートフレッテージ加工開始前の状態で、式2に示すように、シート幅L=a、所定の平均隙間量h、作動油の粘性係数η、シート円周長さB等が与件として定められたので、シート幅L=a(第1の軸方向長さ)の場合の最大漏れ流量Qmax(a)が算出することができる(実験で求めても良い)。なお、これまでの研究の結果、図7、8に見られるように、必ず最大値として1つ存在することがわかっている。
【0054】
次に、式3によって、第1の臨界送り速度Vcaを求め、加圧部の送り速度限界に起因する限界送り速度V0と比較して、Vca<V0なら基礎技術の場合と同じで、問題なくオートフレッテージ加工が可能である。本発明の一実施形態では、Vca>V0となってしまった場合の解決策である。この場合は、ピストン42の送り速度vが、あいにく第1の臨界送り速度Vcaまで上昇させることができなくなり、超高圧まで内圧室IC圧力を昇圧させることができない。
【0055】
そこで、シート幅Lをa(第1の軸方向長さ)より長いb(第2の軸方向長さ)の位置に設定すれば、臨界送り速度Vcが低下することに着想を得て、第1実施形態を案出したものである。シート幅Lを長く設定すれば、隙間3の摩擦抵抗が大きくなるので最大漏れ流量が低下するので、当然臨界送り速度Vcも低下する。このことは、式2のみならず、実験的にも確認されている。第2の臨界送り速度Vcbが、Vcb<V0となっていることは、式2により確認すればよい。なお、シート幅Lを長く設定した場合の、実際の送り速度vは、第2の臨界送り速度Vcbより速い速度にしないと、超高圧に昇圧することができない。
【0056】
すなわち、第1の臨界送り速度Vcaを、限界送り速度V0よりも小さい、第2の軸方向長さbにおける単位時間当たりの最大漏れ流量Qmax(b)に相当する第2の臨界送り速度Vcbとし、第2の臨界送り速度Vcbよりも所定の送り速度vを速くすることにより、ワーク1にオートフレッテージ加工を施すようにしたものである。
【0057】
これにより、ダイレクト加圧式オートフレッテージ加工において、駆動モータ、圧力制御回路などの装置から生じる様々な制約から生じる送り速度vの上限を適切に回避して、これらの装置に負担をかけずに、ダイレクト加圧式オートフレッテージ加工を実施することができる。すなわち、ピストンのシート幅Lをaより長いbの位置に設定して、第2の臨界送り速度Vcbより大きい送り速度Vにすることによって内圧室ICの圧力Pが飽和することなく、時間の経過と共に超高圧レベルまで上昇させることが可能となる。
【0058】
第1実施形態は、また、方法としても実施することができ、同様な作用効果を発揮する。すなわち、ワーク1にオートフレッテージ加工を行うオートフレッテージ加工方法であって、ワーク1一端部を除いて閉鎖された前記ワーク1と、前記一端部側の内壁に対して平均隙間量hから成る隙間3を有するピストン42により形成された内圧室ICに作動油2を導入する段階と、駆動モータを有する加圧部40で、前記ピストン42を駆動して、前記内圧室ICに、前記ピストン42を所定の送り速度vで前記内圧室ICに挿入して前記作動油2の前記内圧室圧力Pを上昇させる段階とを具備するオートフレッテージ加工方法において、当該挿入により前記隙間3より漏れ出す前記作動油2の、前記第1の軸方向長さaにおける単位時間当たりの最大漏れ流量Qmax(a)に相当する第1の臨界送り速度Vcaが、予め設定された前記ピストン42の限界送り速度V0よりも大きい場合には、前記第1の軸方向長さaよりも長い第2の軸方向長さbを有する前記隙間を設定する段階をさらに具備し、前記第1の臨界送り速度Vcaを、前記限界送り速度V0よりも小さい、前記第2の軸方向長さbにおける単位時間当たりの最大漏れ流量Qmax(b)に相当する第2の臨界送り速度Vcbとし、当該第2の臨界送り速度Vcbよりも前記所定の送り速度vを速くすることにより、前記ワーク1にオートフレッテージ加工を施すことものである。
【0059】
(第1実施形態の変形例)
図14は、本発明の第1実施形態の変形例を説明する説明図であり、(a)は、オートフレッテージ加工開始前の状態、(b)は、本発明の第1実施形態の変形例を示す説明図である。
本発明の第1実施形態の変形例においては、ピストン42が、ピストンヘッド42−1とピストン軸42−2から構成されて、ピストンヘッド42−1の側面の軸方向長さが、隙間3を形成する第1の軸方向長さaとなっている。この場合のピストン軸42−2には、剛性の高いピストン軸を使用する。
【0060】
先の第1実施形態の場合には、ピストン42が、一定の円柱断面積Aを有しており、加圧部によりピストンがワーク内に送り込まれると、ピストンとワークの隙間の軸方向長さが、時々刻々と増加する。第1実施形態の変形例の場合には、軸方向長さ(シート幅L)が一定なので、第1、2の臨界送り速度Vca、Vcbの算出が容易になる。その他については本発明の第1実施形態と同様である。
【0061】
(第2実施形態)
内圧室ICにおいてピストン42、又は、42−1を所定の送り速度vで送る、ピストン42の動作開始位置を変更して、第1の軸方向長さaよりも長い第2の軸方向長さbを有する隙間3を設定した場合が、第2実施形態である。
シート幅Lを第1の軸方向長さaより長い第2の軸方向長さbの位置に設定した場合に、ピストン42、又は、42−1の動作開始位置とオートフレッジ加工終了位置との間のストロークに余裕がある場合には、第1、2実施形態は問題なく実施できる。余裕のない場合の解決策が、次に述べる第3実施形態である。
【0062】
(第3実施形態)
図15(a)、(b)は、第3実施形態を示す説明図である。図15に示すように、オートフレッジ加工を施す管路が短いと、所定の圧力に達するのに必要なストロークを確保できないので、ワークに盛肉部(連結体とも呼ぶ)を設置して、シート幅Lをaより長いbの位置に設定できるようにしたものである。このようにすれば、図11(c)に示すように、シート幅Lをa(第1の軸方向長さ)より長いb(第2の軸方向長さ)を確保することができるので、ピストン42、42−1のスタート位置とオートフレッジ加工終了位置との間のストロークに余裕が発生する。第1、2実施形態と同様にして、ダイレクト加圧式オートフレッテージ加工を実施することができる。これにより、ピストンのスタート位置とオートフレッジ加工終了位置との間のストロークに余裕がない場合でも、ダイレクト加圧式オートフレッテージ加工において、送り速度Vを臨界送り速度Vc以上にすることによって内圧室ICの圧力Pが飽和することなく、時間の経過と共に超高圧レベルまで上昇させることが可能となる。
【0063】
盛肉部を設置したロアボデー103'(ワーク1)の製造方法は次の工程で構成されている。すなわち、高圧管路101を有するワーク1の製造方法であって、熱間鍛造によりワーク1の第1形状を形成する鍛造工程と、前記第1形状の前記ワーク1を機械加工して、盛肉部80を有する第2形状を形成する第1機械加工工程と、第1実施形態において記載のオートフレッテージ加工方法により、前記ワーク1の高圧管路101に、オートフレッテージ加工を施すオートフレッテージ加工工程と、前記第2形状の前記ワーク1を機械加工して、前記盛肉部80を除去して前記ワーク1の製品形状を形成する第2機械加工工程を具備するものである。
【0064】
ワーク1は、熱間鍛造工程により第1形状としての概略形状が形成され、この概略形状には、製品形状に付け加えて、盛肉部80や切削取り代が含まれている。
第1形状のワーク1を切削、研削等の第1機械加工を行い、盛肉部80を有する第2形状を形成する。ピストン42の挿入角度を傾斜させるか、軸芯方向とするかによって図15の(a)、(b)の2通りに分かれる。図15(a)に示すような、傾斜管路101’にあわせて盛肉部80の管路を形成すると、ダイレクト加圧式オートフレッテージ加工において、ピストンの送り方向が傾斜してしまうので、そのための機構が必要である。第2形状において、盛肉部80以外は、製品形状であるようにすることが好ましい。
オートフレッテージ加工工程後、第2機械加工工程においては、盛肉部80のみを対象として切削、研削等を行い、最終的製品形状とすると良い。
【0065】
図15(a)に示す場合には、必ずしも盛肉部80によらなくても良い。図16(a)、(b)は、盛肉部の代わりに、ねじ込みとした場合の第3実施形態を示す説明図である。最終製品の雄ねじ部81を利用して、連結体80を雌ねじ付昇圧用ジグとしても良い。
【0066】
(第4実施形態)
図17(a)、(b)は、本発明の第4実施形態を模式的に示す説明図である。
第1実施形態、第1実施形態の変形例では、シート幅Lをaからbに長く設定することにより(a<b)、隙間3の摩擦抵抗が大きくし、最大漏れ流量を低下させ、臨界送り速度Vcを低下させた。
ここで、隙間3の摩擦抵抗は、シート幅Lに限らず、隙間3のピストン42、42−1の表面性状(表面粗さ、形状)によっても変更することができる。この第4実施形態は、隙間3の摩擦抵抗に着目したものである。これにより、ピストン側面での摩擦を大きくすることにより漏れ流量を小さくすることができ、ダイレクト加圧式オートフレッテージ加工において、送り速度Vを臨界送り速度Vc以上にすることによって内圧室ICの圧力Pが飽和することなく、時間の経過と共に超高圧レベルまで上昇させることが可能となる。
すなわち、隙間3を作動油が上ってゆくときの摩擦が大きければ、流量が減少するため、発生する最大漏れ流量が減少する。これにより、臨界送り速度Vcを低下させることができるので、加圧部の送り速度限界や製品形状などに起因する各種制約が発生した場合でも、必要な所定圧力を達成することができる。なお、式2のCは、ピストンとワーク内壁との間の表面形状によって定まる係数であり、(例えば、表面粗さがRz=3.2程度の研磨面のときに、C=1としている)。Cを小さくすると、隙間3を作動油が上ってゆくときの摩擦が大きく、漏れ流量が減少する。
【0067】
具体的には、図17(a)に示すように、ピストン42の側面に山形溝、凹凸面からなる粗面(ランダムであっても、規則的な繰り返しであってもよい)を設けると良い。また、図17(b)に一例として示すように、ピストン42の円周方向に設けられた溝であって、当該溝のピストン42の軸方向間隙量が、前記溝の開口より底部において大きく構成された複数の溝からなるラビリンス構造としても良い。
図17(b)の例では、断面がL字状(ピストン軸を含む断面に表れた形状)であるが、必ずしもこれに限られるものではなく、下部断面が円形状に膨らんでいても良い。特に、L字状の場合は、高圧の作動油の圧力を受けて、図17(b)の可撓部43部分が変形して適切にシール性を向上させることができるが、ワーク内に挿入されるピストンなので、シール性が過度に高められてピストンの作動に支障が生じないようなように各部の寸法を設計しなければならない。このような観点から、適切にシール性を向上させ、かつピストンの作動に支障が生じないように設計されたラビリンス構造とする。
【0068】
その他、ピストン42の側面に環状溝を設けるという、いわゆる通常のラビリンスパッキンに用いられるラビリンス構造を有する形状としてもよい。これらの形状は、旋削、放電加工、化学腐食処理等で行えばよい。
【0069】
次に、封止部材24の変形例について説明する。図18(a)は、封止部材24の変形例を説明するための説明図であり、(b)は、(a)に示すキャップ21内部の拡大図である。この変形例におけるワーク1に設けられた配管口23の外周はねじ切りされており、キャップ21がねじで固定されている。
そして、図18(b)に示すように、キャップ21の内部には穴25が設けられており、配管口用シールピン20が挿入されている。配管口23に挿入されるシールピン20の端部22には、半球状のR部が設けられている。配管口23の外周のねじに対して、キャップ21を回して、配管口23の内側のテーパ部23’にシールピン20の端部22の半球状のR部が、所定圧で接触するように調整する。シールピン20とキャップ21が封止部材24を構成する。こうすることにより、シールピン20の端部22が、高いシール耐圧を持って密着するようになる。
【符号の説明】
【0070】
1 ワーク
2 作動油
3 隙間
21 キャップ
22 溝穴
23 配管口
40 加圧部
42 ピストン
42−1 ピストンヘッド
42−2 ピストン軸
80 盛肉部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動モータを有する加圧部(40)と、
該加圧部(40)に駆動され、前記加圧部の加圧前の状態において、ワーク(1)の一端部側の内壁と、ピストン(42)の軸方向に沿った側面との間に、所定の平均隙間量(h)および第1の軸方向長さ(a)を有する隙間(3)を形成する前記ピストン(42)と、
前記一端部を除いて密閉された前記ワーク(1)および前記ピストン(42)により形成され、作動油(2)が充填された内圧室(IC)と、を具備し、
前記加圧部(40)は、前記作動油(2)で充填された前記内圧室(IC)に前記ピストン(42)を所定の送り速度(v)で挿入させるものであり、
当該挿入により前記隙間(3)より漏れ出す前記作動油(2)の、前記第1の軸方向長さ(a)における単位時間当たりの最大漏れ流量(Qmax(a))に相当する第1の臨界送り速度(Vca)が、予め設定された前記ピストン(42)の限界送り速度(V0)よりも大きい場合には、
前記第1の軸方向長さ(a)よりも長い第2の軸方向長さ(b)を有する前記隙間を設定することにより、
前記第1の臨界送り速度(Vca)を、前記限界送り速度(V0)よりも小さい、前記第2の軸方向長さ(b)における単位時間当たりの最大漏れ流量(Qmax(b))に相当する第2の臨界送り速度(Vcb)とし、当該第2の臨界送り速度(Vcb)よりも前記所定の送り速度(v)を速くすることにより、前記ワーク(1)にオートフレッテージ加工を施すオートフレッテージ加工装置。
【請求項2】
前記内圧室(IC)において前記ピストン(42)を所定の送り速度(v)で送る、前記ピストン(42)の動作開始位置を変更して、前記第1の軸方向長さ(a)よりも長い第2の軸方向長さ(b)を有する前記隙間を設定したことを特徴とする請求項1に記載のオートフレッテージ加工装置。
【請求項3】
前記ピストン(42)が、ピストンヘッド(42−1)とピストン軸(42−2)から構成されて、前記ピストンヘッド(42−1)の側面の軸方向長さが、前記隙間(3)を形成する前記第1の軸方向長さ(a)であって、
前記挿入により前記隙間(3)より漏れ出す前記作動油(2)の、前記第1の軸方向長さ(a)における単位時間当たりの最大漏れ流量(Qmax(a))に相当する第1の臨界送り速度(Vca)が、予め設定された前記ピストン(42)の限界送り速度(V0)よりも大きい場合には、前記ピストンヘッド(42−1)の側面の軸方向長さを、前記第1の軸方向長さ(a)よりも長い第2の軸方向長さ(b)に設定することを特徴とする請求項1又は2に記載のオートフレッテージ加工装置。
【請求項4】
前記所定の送り速度(v)が、前記第2の臨界送り速度(Vcb)よりも速い前記所定の送り速度(v)に達するまでの間に亘って、ワーク(1)の一端部側の内壁とピストン(42)の軸方向に沿った側面との間の、前記所定の平均隙間量(h)を有する隙間(3)が、前記ワーク(1)に形成されていない場合には、
前記ワーク(1)の一端部に連結体を継ぎ足し連結して、
前記所定の送り速度(v)が、前記第2の臨界送り速度(Vcb)よりも速い前記所定の送り速度(v)に達するまでの間、ワーク(1)の一端部側の内壁と、ピストン(42)の軸方向に沿った側面との間に、連続的な所定の平均隙間量(h)を有する隙間(3)が形成されるようにしたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のオートフレッテージ加工装置。
【請求項5】
前記ワーク(1)の一端部に、鍛造成形時に盛肉部(80)を連結形成して、前記連結体の継ぎ足し連結として構成するようにしたことを特徴とする請求項4に記載のオートフレッテージ加工装置。
【請求項6】
前記ワーク(1)の一端部に、前記連結体(80)をねじ結合によって連結して、前記連結体の継ぎ足し連結として構成するようにしたことを特徴とする請求項4に記載のオートフレッテージ加工装置。
【請求項7】
前記内圧室(IC)に所定の送り速度(v)で挿入させられる前記ピストン(42)が、一定の円柱断面積(A)を有していることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のオートフレッテージ加工装置。
【請求項8】
前記隙間(3)を形成する、ワーク(1)の一端部側の内壁に対向するピストン(42)の軸方向に沿った側面に、摩擦抵抗を上昇させる摩擦抵抗部が形成されたことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のオートフレッテージ加工装置。
【請求項9】
駆動モータを有する加圧部(40)と、
該加圧部(40)に駆動され、前記加圧部の加圧前の状態において、ワーク(1)の一端部側の内壁と、ピストン(42)の軸方向に沿った側面との間に、所定の平均隙間量(h)および第1の軸方向長さ(a)を有する隙間(3)を形成する前記ピストン(42)と、
前記一端部を除いて密閉された前記ワーク(1)および前記ピストン(42)により形成され、作動油(2)が充填された内圧室(IC)と、を具備し、
前記加圧部(40)は、前記作動油(2)で充填された前記内圧室(IC)に前記ピストン(42)を所定の送り速度(v)で挿入させるものであり、
当該挿入により前記隙間(3)より漏れ出す作動油(2)の、前記第1の軸方向長さ(a)における単位時間当たりの最大漏れ流量(Qmax(a))に相当する第1の臨界送り速度(Vca)が、予め設定された前記ピストン(42)の限界送り速度(V0)よりも大きい場合には、前記隙間(3)を形成する前記ワーク(1)の一端部側の内壁と対向する前記ピストン(42)の軸方向に沿った側面に、摩擦抵抗を上昇させる摩擦抵抗部を形成させて、前記限界送り速度(V0)よりも小さい、前記摩擦抵抗部を形成させた場合の単位時間当たりの最大漏れ流量に相当する第2の臨界送り速度(Vcb)を設定し、当該第2の臨界送り速度(Vcb)よりも所定の送り速度(v)を速くすることにより、前記ワーク(1)にオートフレッテージ加工を施すオートフレッテージ加工装置。
【請求項10】
前記摩擦抵抗部は、凹凸面からなる粗面を有することを特徴とする請求項9に記載のオートフレッテージ加工装置。
【請求項11】
前記摩擦抵抗部は、前記ピストン(42)の円周方向に設けられた溝であって、当該溝の前記ピストン(42)の軸方向間隙量が、前記溝の開口より底部において大きく構成された複数の溝からなるラビリンス構造を有することを特徴とする請求項9に記載のオートフレッテージ加工装置。
【請求項12】
ワーク(1)にオートフレッテージ加工を行うオートフレッテージ加工方法であって、
ワーク(1)一端部を除いて閉鎖された前記ワーク(1)と、前記一端部側の内壁に対して平均隙間量(h)から成る隙間(3)を有するピストン(42)により形成された内圧室(IC)に作動油(2)を導入する段階と、
駆動モータを有する加圧部(40)で、前記ピストン(42)を駆動して、前記内圧室(IC)に、前記ピストン(42)を所定の送り速度(v)で前記内圧室(IC)に挿入して前記作動油(2)の前記内圧室圧力(P)を上昇させる段階と、を具備するオートフレッテージ加工方法において、
当該挿入により前記隙間(3)より漏れ出す前記作動油(2)の、前記第1の軸方向長さ(a)における単位時間当たりの最大漏れ流量(Qmax(a))に相当する第1の臨界送り速度(Vca)が、予め設定された前記ピストン(42)の限界送り速度(V0)よりも大きい場合には、
前記第1の軸方向長さ(a)よりも長い第2の軸方向長さ(b)を有する前記隙間を設定する段階をさらに具備し、
前記第1の臨界送り速度(Vca)を、前記限界送り速度(V0)よりも小さい、前記第2の軸方向長さ(b)における単位時間当たりの最大漏れ流量(Qmax(b))に相当する第2の臨界送り速度(Vcb)とし、当該第2の臨界送り速度(Vcb)よりも前記所定の送り速度(v)を速くすることにより、前記ワーク(1)にオートフレッテージ加工を施すことを特徴とするオートフレッテージ加工方法。
【請求項13】
前記ワーク(1)の一端部側に、鍛造成形による盛肉部(80)が連結形成されたことを特徴とする請求項12に記載のオートフレッテージ加工方法。
【請求項14】
高圧管路(101)を有するワーク(1)の製造方法であって、
熱間鍛造によりワーク(1)の第1形状を形成する鍛造工程と、
前記第1形状の前記ワーク(1)を機械加工して、盛肉部(80)を有する第2形状を形成する第1機械加工工程と、
請求項13に記載のオートフレッテージ加工方法により、前記ワーク(1)の高圧管路(101)に、オートフレッテージ加工を施すオートフレッテージ加工工程と、
前記第2形状の前記ワーク(1)を機械加工して、前記盛肉部(80)を除去して前記ワーク(1)の製品形状を形成する第2機械加工工程を具備することを特徴とするワーク(1)の製造方法。
【請求項1】
駆動モータを有する加圧部(40)と、
該加圧部(40)に駆動され、前記加圧部の加圧前の状態において、ワーク(1)の一端部側の内壁と、ピストン(42)の軸方向に沿った側面との間に、所定の平均隙間量(h)および第1の軸方向長さ(a)を有する隙間(3)を形成する前記ピストン(42)と、
前記一端部を除いて密閉された前記ワーク(1)および前記ピストン(42)により形成され、作動油(2)が充填された内圧室(IC)と、を具備し、
前記加圧部(40)は、前記作動油(2)で充填された前記内圧室(IC)に前記ピストン(42)を所定の送り速度(v)で挿入させるものであり、
当該挿入により前記隙間(3)より漏れ出す前記作動油(2)の、前記第1の軸方向長さ(a)における単位時間当たりの最大漏れ流量(Qmax(a))に相当する第1の臨界送り速度(Vca)が、予め設定された前記ピストン(42)の限界送り速度(V0)よりも大きい場合には、
前記第1の軸方向長さ(a)よりも長い第2の軸方向長さ(b)を有する前記隙間を設定することにより、
前記第1の臨界送り速度(Vca)を、前記限界送り速度(V0)よりも小さい、前記第2の軸方向長さ(b)における単位時間当たりの最大漏れ流量(Qmax(b))に相当する第2の臨界送り速度(Vcb)とし、当該第2の臨界送り速度(Vcb)よりも前記所定の送り速度(v)を速くすることにより、前記ワーク(1)にオートフレッテージ加工を施すオートフレッテージ加工装置。
【請求項2】
前記内圧室(IC)において前記ピストン(42)を所定の送り速度(v)で送る、前記ピストン(42)の動作開始位置を変更して、前記第1の軸方向長さ(a)よりも長い第2の軸方向長さ(b)を有する前記隙間を設定したことを特徴とする請求項1に記載のオートフレッテージ加工装置。
【請求項3】
前記ピストン(42)が、ピストンヘッド(42−1)とピストン軸(42−2)から構成されて、前記ピストンヘッド(42−1)の側面の軸方向長さが、前記隙間(3)を形成する前記第1の軸方向長さ(a)であって、
前記挿入により前記隙間(3)より漏れ出す前記作動油(2)の、前記第1の軸方向長さ(a)における単位時間当たりの最大漏れ流量(Qmax(a))に相当する第1の臨界送り速度(Vca)が、予め設定された前記ピストン(42)の限界送り速度(V0)よりも大きい場合には、前記ピストンヘッド(42−1)の側面の軸方向長さを、前記第1の軸方向長さ(a)よりも長い第2の軸方向長さ(b)に設定することを特徴とする請求項1又は2に記載のオートフレッテージ加工装置。
【請求項4】
前記所定の送り速度(v)が、前記第2の臨界送り速度(Vcb)よりも速い前記所定の送り速度(v)に達するまでの間に亘って、ワーク(1)の一端部側の内壁とピストン(42)の軸方向に沿った側面との間の、前記所定の平均隙間量(h)を有する隙間(3)が、前記ワーク(1)に形成されていない場合には、
前記ワーク(1)の一端部に連結体を継ぎ足し連結して、
前記所定の送り速度(v)が、前記第2の臨界送り速度(Vcb)よりも速い前記所定の送り速度(v)に達するまでの間、ワーク(1)の一端部側の内壁と、ピストン(42)の軸方向に沿った側面との間に、連続的な所定の平均隙間量(h)を有する隙間(3)が形成されるようにしたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のオートフレッテージ加工装置。
【請求項5】
前記ワーク(1)の一端部に、鍛造成形時に盛肉部(80)を連結形成して、前記連結体の継ぎ足し連結として構成するようにしたことを特徴とする請求項4に記載のオートフレッテージ加工装置。
【請求項6】
前記ワーク(1)の一端部に、前記連結体(80)をねじ結合によって連結して、前記連結体の継ぎ足し連結として構成するようにしたことを特徴とする請求項4に記載のオートフレッテージ加工装置。
【請求項7】
前記内圧室(IC)に所定の送り速度(v)で挿入させられる前記ピストン(42)が、一定の円柱断面積(A)を有していることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のオートフレッテージ加工装置。
【請求項8】
前記隙間(3)を形成する、ワーク(1)の一端部側の内壁に対向するピストン(42)の軸方向に沿った側面に、摩擦抵抗を上昇させる摩擦抵抗部が形成されたことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のオートフレッテージ加工装置。
【請求項9】
駆動モータを有する加圧部(40)と、
該加圧部(40)に駆動され、前記加圧部の加圧前の状態において、ワーク(1)の一端部側の内壁と、ピストン(42)の軸方向に沿った側面との間に、所定の平均隙間量(h)および第1の軸方向長さ(a)を有する隙間(3)を形成する前記ピストン(42)と、
前記一端部を除いて密閉された前記ワーク(1)および前記ピストン(42)により形成され、作動油(2)が充填された内圧室(IC)と、を具備し、
前記加圧部(40)は、前記作動油(2)で充填された前記内圧室(IC)に前記ピストン(42)を所定の送り速度(v)で挿入させるものであり、
当該挿入により前記隙間(3)より漏れ出す作動油(2)の、前記第1の軸方向長さ(a)における単位時間当たりの最大漏れ流量(Qmax(a))に相当する第1の臨界送り速度(Vca)が、予め設定された前記ピストン(42)の限界送り速度(V0)よりも大きい場合には、前記隙間(3)を形成する前記ワーク(1)の一端部側の内壁と対向する前記ピストン(42)の軸方向に沿った側面に、摩擦抵抗を上昇させる摩擦抵抗部を形成させて、前記限界送り速度(V0)よりも小さい、前記摩擦抵抗部を形成させた場合の単位時間当たりの最大漏れ流量に相当する第2の臨界送り速度(Vcb)を設定し、当該第2の臨界送り速度(Vcb)よりも所定の送り速度(v)を速くすることにより、前記ワーク(1)にオートフレッテージ加工を施すオートフレッテージ加工装置。
【請求項10】
前記摩擦抵抗部は、凹凸面からなる粗面を有することを特徴とする請求項9に記載のオートフレッテージ加工装置。
【請求項11】
前記摩擦抵抗部は、前記ピストン(42)の円周方向に設けられた溝であって、当該溝の前記ピストン(42)の軸方向間隙量が、前記溝の開口より底部において大きく構成された複数の溝からなるラビリンス構造を有することを特徴とする請求項9に記載のオートフレッテージ加工装置。
【請求項12】
ワーク(1)にオートフレッテージ加工を行うオートフレッテージ加工方法であって、
ワーク(1)一端部を除いて閉鎖された前記ワーク(1)と、前記一端部側の内壁に対して平均隙間量(h)から成る隙間(3)を有するピストン(42)により形成された内圧室(IC)に作動油(2)を導入する段階と、
駆動モータを有する加圧部(40)で、前記ピストン(42)を駆動して、前記内圧室(IC)に、前記ピストン(42)を所定の送り速度(v)で前記内圧室(IC)に挿入して前記作動油(2)の前記内圧室圧力(P)を上昇させる段階と、を具備するオートフレッテージ加工方法において、
当該挿入により前記隙間(3)より漏れ出す前記作動油(2)の、前記第1の軸方向長さ(a)における単位時間当たりの最大漏れ流量(Qmax(a))に相当する第1の臨界送り速度(Vca)が、予め設定された前記ピストン(42)の限界送り速度(V0)よりも大きい場合には、
前記第1の軸方向長さ(a)よりも長い第2の軸方向長さ(b)を有する前記隙間を設定する段階をさらに具備し、
前記第1の臨界送り速度(Vca)を、前記限界送り速度(V0)よりも小さい、前記第2の軸方向長さ(b)における単位時間当たりの最大漏れ流量(Qmax(b))に相当する第2の臨界送り速度(Vcb)とし、当該第2の臨界送り速度(Vcb)よりも前記所定の送り速度(v)を速くすることにより、前記ワーク(1)にオートフレッテージ加工を施すことを特徴とするオートフレッテージ加工方法。
【請求項13】
前記ワーク(1)の一端部側に、鍛造成形による盛肉部(80)が連結形成されたことを特徴とする請求項12に記載のオートフレッテージ加工方法。
【請求項14】
高圧管路(101)を有するワーク(1)の製造方法であって、
熱間鍛造によりワーク(1)の第1形状を形成する鍛造工程と、
前記第1形状の前記ワーク(1)を機械加工して、盛肉部(80)を有する第2形状を形成する第1機械加工工程と、
請求項13に記載のオートフレッテージ加工方法により、前記ワーク(1)の高圧管路(101)に、オートフレッテージ加工を施すオートフレッテージ加工工程と、
前記第2形状の前記ワーク(1)を機械加工して、前記盛肉部(80)を除去して前記ワーク(1)の製品形状を形成する第2機械加工工程を具備することを特徴とするワーク(1)の製造方法。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図3】
【図6】
【図11】
【図13】
【図14】
【図2】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図3】
【図6】
【図11】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−66937(P2013−66937A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−259866(P2012−259866)
【出願日】平成24年11月28日(2012.11.28)
【分割の表示】特願2010−234653(P2010−234653)の分割
【原出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年11月28日(2012.11.28)
【分割の表示】特願2010−234653(P2010−234653)の分割
【原出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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