説明

オープンケーソン刃口の清掃装置

【課題】地盤中に深く掘削し埋設されたオープンケーソンの刃口部に付着した泥土を地上からの操作で除去し清掃する刃口清掃装置を提供する。
【解決手段】オープンケーソン1の坑径内に納まる長さを有し、クレーン等でオープンケーソン1の坑内へほぼ水平姿勢に吊り込まれる架台4と、外向きのノズル口5を備え前記架台4の一端部にほぼ垂直姿勢に設置された噴射ノズル管6および該噴射ノズル管6へ噴流体を供給する噴流体供給手段8と、架台4を一定方向へ水平回転させる回転駆動手段7及びその動力源とで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、いわゆるオープンケーソン工法により地盤中に深く掘削し埋設されたオープンケーソンの刃口部に付着した泥土を地上からの操作で除去し清掃する刃口清掃装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
地盤中に掘削し埋設されたオープンケーソンは、掘削後に刃口を綺麗に掃除した後、同刃口部分へ床付けの水中コンクリートを打設する。もしも刃口の掃除が不十分であると、被圧水の存在する場所では刃口に付着した土砂が原因で漏水(出水事故)の原因となるから、刃口の掃除は十分綺麗に行われることが要求される。しかし、オープンケーソンの坑内には掘削泥水及び地下水が溜まっているため、刃口部分の清掃作業は深い潜水作業になり、視界が効かないこともあって容易なことではない。従来一般には図10に示したようにクラムシエルバケットKで刃口部分1aの掘削を行った後、重い鋼製突き矢Yを引き揚げては落とし込む操作を地上から行って掃除をしている。しかし、一例として深さが50mにも達するほど深い刃口の掃除は、時間ばかり多くかかってあまり綺麗な掃除にならないのが現状であり、困っている。
【0003】
従来、下記の特許文献1に記載されたケーソン刃口周辺の掘削装置が公知である。しかし、この従来装置はそもそもケーソン内壁の円周方向にレールを敷設しておき、同レールに沿って移動する掘削装置を設備して作業する内容であるから、地下50mにも達するほど地盤中に深く掘削し埋設されたオープンケーソン刃口の掃除にはとうてい適用不可能な構成である。
特許文献2に記載されたオープンケーソンの刃口清掃装置も同様で、ケーソン躯体の内周面の円周方向に走行レールを取り付け、前記走行レールに沿って移動する作業装置で刃口面の掃除をする構成であるから、大深度の潜水作業となるオープンケーソン刃口の掃除にはとうてい適用不可能である。
【0004】
【特許文献1】特公昭60−22132号公報
【特許文献2】特開平10−266220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、地下50mにも達するほど地盤中に深く掘削し埋設されて水が充満した大深度オープンケーソンの刃口の掃除に容易に適用することができ、水中の潜水作業で視界が効かない条件下でも、地上からの操作で刃口の掃除を確実に綺麗に能率良く安価に行うことができるオープンケーソン刃口の清掃装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係るオープンケーソンの刃口清掃装置2は、
オープンケーソン1の坑径内に納まる長さを有し、クレーン等でオープンケーソン1の坑内へほぼ水平姿勢に吊り込まれる架台4と、
外向きのノズル口5を備え前記架台4の一端部にほぼ垂直姿勢に設置された噴射ノズル管6および該噴射ノズル管6へ噴流体を供給する噴流体供給手段8と、
前記架台4を一定方向へ水平回転させる回転駆動手段7及びその動力源とで構成されており、
架台4をオープンケーソン1の刃口部分1aまで下降させ、噴射ノズル管6から外向きの強い噴流30を刃口部分1aへ噴射させつつ架台4を水平回転させ刃口1aの清掃を行うことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載した発明に係るオープンケーソンの刃口清掃装置2は、
オープンケーソン1の坑径内に納まる長さを有し、クレーン等でオープンケーソン1の坑内へほぼ水平姿勢に吊り込まれる架台4と、
前記架台4に水平旋回が可能に設置された旋回部材40と、
外向きのノズル口5を備え前記旋回部材40の先端部にほぼ垂直姿勢に設置された噴射ノズル管6および該噴射ノズル管6へ噴流体を供給する噴流体供給手段8と、
前記架台4をオープンケーソン坑内の刃口清掃位置へほぼ水平姿勢に位置決め固定する手段と、
前記旋回部材40を水平回転させる回転駆動手段50及びその動力源とで構成され、
架台4をオープンケーソン1の刃口部分1aまで下降させ、噴射ノズル管6から外向きの強い噴流30を刃口部分1aへ噴射させつつ旋回部材40を水平回転させ刃口1aの清掃を行うことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載したオープンケーソン刃口の清掃装置2において、
噴射ノズル管6は、噴流体としての高圧水を導きノズル口5の中心部に高圧水ノズル開口5aを有する高圧水管6aと、高圧空気を導き前記高圧水ノズル開口5aの外周部に空気ノズル開口5bを有する高圧空気管6bとで構成されており、噴流30は高圧水噴流31とその外周の高圧空気噴流32との二層構造に形成されることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載した発明は、請求項1に記載したオープンケーソン刃口の清掃装置2において、
架台3の一端部に位置する噴射ノズル管6は、架台4の長手方向へスライド自在で先端部にオープンケーソン1の内周面に当たって転がる足車10を備えた移動枠11にほぼ垂直姿勢に設置されており、前記移動枠11を前記足車10がオープンケーソン1の内周面に当たる方向へ押し動かす油圧シリンダ12の一側が移動枠11と連結され、同油圧シリンダ12の他側は架台4の反力受け14との間に設置された圧縮型の緩衝バネ13と連結して設置されていること、
架台4の他端側には、該架台4を一定方向へ水平回転させる回転駆動手段7として、油圧シリンダ17と、オープンケーソン1の内周面に当たって回転する摩擦車18、及び前記油圧シリンダ17の直線運動を前記摩擦車18の回転に変換して伝える変換機構19とが設置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載した発明は、請求項1又は4に記載したオープンケーソン刃口の清掃装置2において、
架台4を一定方向へ水平回転させる回転駆動手段として、噴射ノズル管6のノズル口5が外向きに一定の傾斜角度で設置されており、噴流の反動を回転力に利用することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載した発明は、請求項2に記載したオープンケーソン刃口の清掃装置2において、
架台4をオープンケーソン坑内の刃口清掃位置へほぼ水平姿勢に位置決め固定する手段は、架台4の端部に位置して同架台4の長手方向へスライド自在で先端部にオープンケーソン1の内周面に当たる脚部100を備えた移動枠11と、前記移動枠11を前記脚部100がオープンケーソン1の内周面に当たる方向へ押し動かす油圧シリンダ12とからなり、前記油圧シリンダ12の一側は移動枠11と連結され、同油圧シリンダ12の他側は架台4の反力受け14との間に設置した圧縮型の緩衝バネ13と連結して設置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載した発明は、請求項2に記載したオープンケーソン刃口の清掃装置2において、
旋回部材40を水平回転させる回転駆動手段50として、旋回部材40を架台4と連結する垂直な旋回軸41に回転伝達機構46、47が設置され、前記の回転伝達機構を回転駆動する油圧モータ44等の動力装置が設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の刃口清掃装置2は、架台4をオープンケーソン1の坑内へクレーン等で吊り込み、刃口1aの近傍まで下降させて使用する構成であるから、オープンケーソン1の刃口1aが地下50m程度に深く、オープンケーソン1の坑内に水が溜まっていて視界が効かなくても、何の問題もなく使用できる。
すなわち、請求項1の発明の場合は、地上からオープンケーソン1の坑内へほぼ水平姿勢に吊り込まれた架台4を、回転駆動部7により一定方向へ水平回転させ(又は往復回転させ)つつ、同架台4上の噴射ノズル管6から高圧噴流30を刃口1aに向かって噴射させ刃口1aの掃除をする。また、請求項2の発明の場合は、地上からオープンケーソン1の坑内へほぼ水平姿勢に吊り込まれた架台4を、刃口清掃位置へほぼ水平姿勢に位置決め固定し、旋回部材40を水平回転させ、同旋回部材40上の噴射ノズル管6から高圧噴流30を刃口1aに向かって噴射させ刃口1aの掃除をするので、刃口1aに付着した泥土類は高圧噴流30によって強力に除去され綺麗に洗浄、清掃することができる。即ち、刃口1aの掃除を簡単に能率良く行えて、工費の節減、工期の短縮に寄与する。
【0014】
本発明の刃口清掃装置2を使用する場合に、オープンケーソン1の坑内に水が深く溜まっていて視界が効かなくとも、架台4又は旋回部材40の水平回転の実態を地上で監視し確認することにより、刃口1aの掃除の達成度は十分実感できる。
刃口1aの掃除を終了した後は、架台4をオープンケーソン1の坑内から引き揚げるだけで済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
オープンケーソン1の坑径内に納まる長さを有し、クレーン等でオープンケーソン1の坑内へほぼ水平姿勢に吊り込まれる架台4と、外向きにノズル口5を備え前記架台4の一端部にほぼ垂直姿勢に設置された噴射ノズル管6および前記噴射ノズル管6へ噴流体を供給する噴流体供給手段8、並びに前記架台4を一定方向へ水平回転させる回転駆動手段7およびその動力源とで構成する。
地上のクレーン等で吊り下げた架台4をオープンケーソン1の坑内へ挿入して刃口部分1aの近傍まで下降させ、同架台4を水平回転させつつ噴射ノズル管6から外向きに強い噴流30を刃口部分1aへ噴射させて刃口1aの清掃を行う。
【0016】
或いはまた、オープンケーソン1の坑径内に納まる長さを有し、クレーン等でオープンケーソン1の坑内へほぼ水平姿勢に吊り込まれる架台4と、前記架台4に水平旋回が可能に設置された旋回部材40と、外向きのノズル口5を備え前記旋回部材40の先端部にほぼ垂直姿勢に設置された噴射ノズル管6および該噴射ノズル管6へ噴流体を供給する噴流体供給手段8と、前記架台4をオープンケーソン坑内の刃口清掃位置へほぼ水平姿勢に位置決め固定する手段と、前記旋回部材40を水平回転させる回転駆動手段及びその動力源とで構成する。
架台4をオープンケーソン1の刃口部分1aまで下降させ、刃口清掃位置へ位置決め固定した上で、旋回部材40を回転させ、噴射ノズル管6から外向きの強い噴流30を刃口部分1aへ噴射させて刃口1aの清掃を行う。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明に係るオープンケーソンの刃口清掃装置2の実施例1を、図1〜図5に基づいて説明する。
図1と図2は、オープンケーソン1の刃口清掃装置2の実施例1を使用状態で示している。
この刃口清掃装置2は、オープンケーソン1の坑径(約10m)以内に納まる長さを有し、クレーン等の吊りワイヤ3でオープンケーソン1の坑内へほぼ水平姿勢に吊り込まれる架台4と、外向きのノズル口5を備え前記架台4の一端部にほぼ垂直姿勢に設置された噴射ノズル管6と、および前記噴射ノズル管6へ噴流体を供給する地上の噴流体供給手段8、並びに前記架台4を一定方向へ水平回転させる回転駆動手段7とその動力源とにより構成されている。
因みに、図示例のオープンケーソン1は、地上から刃口1aまでの深さが約50m、オープンケーソン1の坑径は約10m、壁厚1.8m、刃口1aの深さ寸法は約3m程度の規模である。
【0018】
架台4は鋼材を軽量なトラス構造に組んで構成されており、その上面部に取り付けた2本の吊り桁9、9の四隅に相当する端部を4本のワイヤ3でバランス良く水平に吊る構成とされている。
前記構成の架台4における図中右側の端部に、噴射ノズル管6がほぼ垂直下向きの姿勢で、架台4の下面から下方へ約4mの長さ突き出る形に設置され、その下端近傍の位置に放射方向外向きのノズル口5が設けられている。
この噴射ノズル管6は、一例を図5に拡大して示したように、噴流体としての高圧水を導きノズル口5の中心部に高圧水ノズル開口5aを有する高圧水管6aと、同じく噴流体としての高圧空気を導き前記高圧水ノズル口5aの外周部に同心円状に空気ノズル開口5bを有する高圧空気管6bとの二重管構造に構成されている。高圧水管6aおよび高圧空気管6bはそれぞれ、具体的な図示は省略したが、高圧水ホース及び高圧空気ホースによって地上の噴流体供給手段8(例えば)と接続されている。したがって、噴流30は、高圧水噴流31とその外周の高圧空気噴流32との内外二層構造に形成される。このように高圧水噴流31の外周に高圧空気噴流32を形成すると、刃口1aの泥土の除去、清掃に効果が大きいことが確認されたからである。
【0019】
上記の噴射ノズル管6は、図1〜図3に例示したように、架台4の図中右端部に架台4の長手方向へスライド自在に設置され先端部にオープンケーソン1の内周面に当たって転がる足車10を備えた移動枠11に、ほぼ垂直姿勢に設置されている。すなわち、噴射ノズル管6は、移動枠11の下部に突き出るステー15で支持した鞘管16の中に挿入して設置されている。
上記移動枠11は、足車10がオープンケーソン1の内周面に当たる方向へ押し出す油圧シリンダ12のヘッド側(図中右端部)と連結されている。同油圧シリンダ12の左側の出力軸12aは、架台4上に固定された反力受け14(バネ受け)に貫通状態に支持されている。この出力軸12aの外周に巻き付けた圧縮型の緩衝バネ13の左端が前記反力受け14と連結され、右端は前記油圧シリンダ12の左端ヘッドと連結されている。
従って、油圧シリンダ12が足車10をオープンケーソン1の内周面へ押し当てるべく前進動作するときの反力は、前記圧縮型の緩衝バネ13を介して反力受け14によって与えられる。そのため油圧シリンダ12が足車10を強く押し過ぎた場合でも、圧縮型の緩衝バネ13に予め設定したバネ力以上の押し付け力は働かない。もっとも、この架台4をクレーン等でオープンケーソン1の坑内へほぼ水平姿勢に吊り込む際、および清掃作業時に段階的に下降動作させる際には、架台4の両端がオープンケーソン1の内面と衝突して傷つけたり下降動作がギクシャクする不都合を防ぐ目的で、油圧シリンダ12を収縮動作させ、移動枠11および足車10を約20cm位引っ込ませる。この引っ込み状態において、もしも架台4が揺れ動いて足車10がオープンケーソン1の内面へ衝突するようなことがあっても、やはり圧縮型緩衝バネ13の緩衝作用が働いて、オープンケーソン1の内面を傷つける不都合は発生しない。
【0020】
一方、架台4の他端側(図1、図2の左端)には、当該架台4を一定方向へ水平回転(一方向への回転又は往復回転)させる回転駆動手段7として、油圧シリンダ17と、オープンケーソン1の内周面に当たって回転する摩擦車18と、前記摩擦車18と対称的に配置された足車10,並びに前記油圧シリンダ17の直線運動を前記摩擦車18の回転に変換して伝える変換機構19が設置されている。
変換機構19の詳細は図4A、Bに示したとおり、摩擦車18の垂直な回転軸18aが架台4に両端支持の形に設置されている。同摩擦車18の回転軸18aの上端部にクランク板20の一端が一体的に回転するように取り付けられ、その他端部の長孔21に同長孔21内を移動するクランクピン22を介して油圧シリンダ17の出力軸17aが連結されている。この油圧シリンダ17の他端(ヘッド)側は、ブラケット23によって架台4とピン支持されている。
前記摩擦車18の回転軸18aの軸受部分に、前記油圧シリンダ17の直線運動方向(中心線P−P)に対して二つの思案点S、Sの位置を前後に若干の回転角ずらせたカム板24が固定されている。このカム板24のカム曲線周面に対して、前記クランクピン22の下方延長部が当たって移動を案内される構成である。
【0021】
つまり、図4Aに示す、油圧シリンダ17が最も収縮した状態から左方へ伸長動作を開始すると、カム板24の手前側思案点Sを若干過ぎた位置で移動を開始するため、クランクピン22はカム板24のカム曲線周面のうち図4A中の上側部分に沿って滑りつつ前進することになり、クランク板20、ひいては摩擦車18に反時計回りの回転が発生する。
同油圧シリンダ17の伸長動作が限界点に到達する直前に、クランクピン22はカム板24の先側思案点Sを若干通過する。したがって、同油圧シリンダ17が収縮動作を開始すると、今度はクランクピン22がカム板24のカム曲線周面のうち図4A中の下側部分に沿って滑りつつ後退することになる。よってクランク板20及び摩擦車18には依然として反時計回りの回転が継続する。油圧シリンダ17の収縮動作が限界点に到達する直前に、クランクピン22はカム板24の手前側思案点Sを若干通過する。こうして油圧シリンダ17の伸長、収縮の直線運動は、摩擦車18の反時計回りの回転に変換して伝えられるのである。
【0022】
上記のとおりであるから、架台4の上記油圧シリンダ12を駆動して移動枠11を前進させ、先端の足車10がオープンケーソン1の内面へ突き当たる状態にすると、その反作用として、架台4の他端側の摩擦車18及び足車10が、やはりオープンケーソン1の内面へ強く押し付けられる。この状態で上記回転駆動手段7の油圧シリンダ17を伸長、収縮動作させると、摩擦車18が回転され、オープンケーソン1の内面との摩擦力で架台4が水平回転する。そこで地上の噴流体供給手段8から噴射ノズル管6へ噴流体として高圧水および高圧空気をそれぞれ空圧ホース、水圧ホースを通じて供給する(というよりも、現実の作業としては大深度の水圧に負けることのないように予め噴流体を供給し空吹きさせつつ架台4を下降させる。)ことにより、強力な噴流30が発生して刃口1aの洗浄、清掃の作業を行う。
【0023】
上記移動枠11の前進、後退および架台4を水平回転させる動力装置として油圧シリンダ12及び油圧シリンダ17を使用している理由は、水深50m前後の水圧の作用を受けても支障無く使用可能な構成であり、比較的安価な汎用製品だからである。また、動力源としての油圧を地上の油圧ユニットから油圧ホースで供給することが容易だからである。よって、同様に使用できるかぎり、油圧式の回転モータ、或いは電気モータを油圧シリンダ17の代わりに使用して摩擦車18を直接回転し、変換機構19の必要がない構成で実施することも好ましい。
【0024】
或いは上記摩擦車18による架台4の回転駆動手段に代えて、又はその補助動力として、上記噴射ノズル管6のノズル口5を、外向きの放射方向配置とするのではなく、放射方向に対して例えば10度ぐらい傾けた角度に設置して、噴流30の反動を回転力に利用することもできる。因みに、噴流30を形成する水圧は400kg/mに、空気圧は10kg/m位に設定されるので、かなり大きな反動力を期待でき、架台4の水平回転力に利用可能である。実際、清掃のための架台4の水平回転を噴流30の反動による回転力で行い、その回転速度の調節を摩擦車18の回転で制御する実施も行った。
もっとも、架台4の回転力は、クレーンによるケーブル3の吊り具にモータ等による回転器を併設して回転する方法等を同様に実施することもできる。
【0025】
最後に、上記構成の刃口清掃装置2を使用してオープンケーソン1の刃口部分1aを清掃する作業の概要をまとめて説明する。
オープンケーソン1の掘削、埋設の工事が完了した後に、刃口清掃装置2をオープンケーソン1の坑部内へ吊り込み下降させて行く。このときには予め油圧シリンダ12を収縮動作させ、移動枠11を限度まで後退させ、架台4の長さをオープンケーソン1の坑径に対して十分小さく縮めて最短状態とし、架台4の下降動作を円滑に行う。
架台4の下降深度および位置の確認は、例えばエスロンテープメジャーを架台4に取り付け、その目測とオープンケーソン1の設計施工深度との対比により行う。
噴射ノズル管6のノズル口5は、架台4から下方へ3m下がっているので、先ずは架台4を刃口1aの上端から更に上方へ2m高い位置に止め、油圧シリンダ12を伸長動作させ、移動枠11の足車10がケーソン内面へ突き当たる状態にして架台4の水平位置を固定する。
【0026】
次に、回転駆動用の油圧シリンダ17を伸長、収縮動作させ、摩擦車18を回転させて架台4の水平回転を開始する。架台4を回転させながら、地上の噴流体供給手段8から噴射ノズル管6へ高圧水(400kg/m)及び高圧空気(10kg/m)を送り、ノズル口5から外向きの強い噴流30を刃口部分1aへ噴射させ、刃口1aに付着した泥土を除去する清掃を、刃口1aの全周にわたり連続して行う。架台4の回転速度は、オープンケーソン1の坑径が約10mであるとき、1周する清掃を1〜2時間程度で行う。
上記噴流30による刃口の清掃幅は約1mとし、刃口1aの高さ寸法3mを1mピッチで3段階に分けて行う。架台4が1周する度に、油圧シリンダ12を一旦収縮動作させ、架台4を1m下降させて、その位置で再び油圧シリンダ12を伸長動作させ、架台4の水平位置を確定してから水平回転させ清掃作業を繰り返す。
刃口1aの清掃を全高にわたり全て完了した後は、油圧シリンダ12を収縮動作させて架台4を最短状態とし、地上へ吊り出して作業を終了する。清掃結果の確認は、公知の孔壁測定器を下ろして撮影し確認する。
【実施例2】
【0027】
次に、図6〜図9は、実施例2として、請求項2に記載した発明に係るオープンケーソンの刃口清掃装置2を使用状態で示している。
この刃口清掃装置2の場合は、やはりオープンケーソン1の坑径内に納まる長さを有し、クレーン等でオープンケーソン1の坑内へほぼ水平姿勢に吊り込まれる上記構成の架台4と、前記架台4の下側にほぼ平行な配置で水平旋回が可能に設置された旋回部材40と、外向きのノズル口5を備え前記旋回部材40の先端部にほぼ垂直姿勢に設置された噴射ノズル管6および該噴射ノズル管6へ噴流体を供給する噴流体供給手段8と、前記架台4をオープンケーソン坑内の刃口清掃位置へほぼ水平姿勢に位置決め固定する手段と、および前記旋回部材40を水平回転させる回転駆動手段50及びその動力源とで構成されている。
【0028】
要するに本実施例の刃口清掃装置2は、架台4をオープンケーソン1の刃口部分1aまで下降させ、オープンケーソン坑内の刃口清掃位置へほぼ水平姿勢に位置決め固定して、旋回部材40のみを水平回転させて、同旋回部材40に設置した噴射ノズル管6から外向きの強い噴流30を刃口部分1aへ噴射させ刃口1aの清掃を行うことを特徴とする。
【0029】
架台4をオープンケーソン坑内の刃口清掃位置へほぼ水平姿勢に位置決め固定する手段は、上記実施例1の移動枠11のスライド機構がほぼそっくり採用して実施することができる。
即ち、架台4の少なくとも一方の端部又は両端部に、同架台の長手方向へスライド自在で架台4の先端よりも10数cm〜数10cm程度の寸法突き出すことができ、先端部にオープンケーソン1の内周面に当たる脚部100を備えた移動枠11が、上記図1および図3のように設置される。この移動枠11を、その脚部100がオープンケーソン1の内周面に突き当たって位置決め固定に必要な摩擦力を得る方向へ押し出す油圧シリンダ12とで構成されている。前記油圧シリンダ12の一側は移動枠11と連結され、同油圧シリンダ12の他側は架台4の反力受け14との間に設置した圧縮型の緩衝バネ13と連結して設置され、油圧シリンダ12の作用力が過大にならない構成とすることは上記実施例1と同様である。
前記脚部100の構成は、例えば上記実施例1の足車10を非回転のゴムブッシュに置き換えて摩擦力を得やすい構成で実施される。
【0030】
また、この実施例2のオープンケーソン刃口の清掃装置2において、旋回部材40を水平回転させる回転駆動手段50として、図示した例は、旋回部材40を架台4と連結する垂直な旋回軸41が、架台4の上下面に設置されたラジアル・スラスト軸受42によって回転自在に支持され、この旋回軸41の上端に回転伝達機構の一部としてウオームギア47が設置されている。旋回部材40は前記旋回軸41に片持ち支持された構成であるが、これには限らない。架台4上には、前記ウオームギア47と噛み合うウオーム46の回転軸45がその両端を軸受台43、43によって回転自在に支持され、同回転軸45を回転する油圧モータ44が軸受台43へ固定して設置されている。
つまり、油圧モータ44が回転軸45を直接回転することにより、ウオームギア47とウオーム46と旋回軸41とからなる回転伝達機構を介して旋回部材40が回転されるのである。
勿論、回転伝達機構は、ウオームギア47とウオーム46の構成には限らないし、また、動力装置としても油圧モータ44に限らない。たとえば多種の歯車機構で、又は上記実施例1の油圧シリンダ17と変換機構19とによる機構を採用し実施することもできる。
旋回軸41は十分大径の中空管軸として構成され、同中空部内に噴流体を導くホース47が通され、同旋回軸41の上端部にいわゆるスイベルジョイントを設置して固定側のホースと接続することなどは、既往技術として知られた通りに実施される。
【0031】
以上に本発明を図示した実施例1、2に基づいて説明したが、これら実施例1、2の限りではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で、当業者が行う設計変更、変形応用による種々な態様で実施可能であることをここに申し添える。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1の刃口清掃装置を使用してオープンケーソン1刃口部分を清掃する作業状態を示した平面図である。
【図2】同上の垂直断面図である。
【図3】架台の一側の移動枠部分を拡大して示した立面図である。
【図4】Aは架台の他側回転駆動部を拡大して示した平面図、Bは同立面図である。
【図5】噴射ノズル管及びノズル口の構造詳細を示す断面図である。
【図6】実施例2の刃口清掃装置を使用してオープンケーソン1刃口部分を清掃する作業状態を示した平面図である。
【図7】同上の垂直断面図である。
【図8】旋回軸の回転駆動手段を拡大して示した平面図である。
【図9】旋回軸の回転駆動手段を拡大して示した立面図である。
【図10】従来の突き矢による清掃作業の説明図である。
【符号の説明】
【0033】
2 刃口清掃装置
1 オープンケーソン
4 架台
5 ノズル口
6 噴流ノズル管
8 噴流体供給手段
7 回転駆動手段
1a 刃口
30 噴流
40 旋回軸
6a 高圧水管
6b 高圧空気管
11 移動枠
12 油圧シリンダ
14 反力受け
13 緩衝バネ
17 油圧シリンダ
18 摩擦車
19 変換機構
100 脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オープンケーソンの坑径内に納まる長さを有し、クレーン等でオープンケーソンの坑内へほぼ水平姿勢に吊り込まれる架台と、
外向きのノズル口を備え前記架台の一端部にほぼ垂直姿勢に設置された噴射ノズル管および該噴射ノズル管へ噴流体を供給する噴流体供給手段と、
前記架台を一定方向へ水平回転させる回転駆動手段及びその動力源とで構成され、
架台をオープンケーソンの刃口部分まで下降させ、噴射ノズル管から外向きの強い噴流を刃口部分へ噴射させつつ架台を水平回転させ刃口の清掃を行うことを特徴とする、オープンケーソン刃口の清掃装置。
【請求項2】
オープンケーソンの坑径内に納まる長さを有し、クレーン等でオープンケーソンの坑内へほぼ水平姿勢に吊り込まれる架台と、
前記架台に水平旋回が可能に設置された旋回部材と、
外向きのノズル口を備え前記旋回部材の先端部にほぼ垂直姿勢に設置された噴射ノズル管および該噴射ノズル管へ噴流体を供給する噴流体供給手段と、
前記架台をオープンケーソン坑内の刃口清掃位置へほぼ水平姿勢に位置決め固定する手段と、
前記旋回部材を水平回転させる回転駆動手段及びその動力源とで構成され、
架台をオープンケーソンの刃口部分まで下降させ、噴射ノズル管から外向きの強い噴流を刃口部分へ噴射させつつ旋回部材を水平回転させ刃口の清掃を行うことを特徴とする、オープンケーソン刃口の清掃装置。
【請求項3】
噴射ノズル管は、噴流体としての高圧水を導きノズル口の中心部に高圧水ノズル開口を有する高圧水管と、高圧空気を導き前記高圧水ノズル開口の外周部に空気ノズル開口を有する高圧空気管とで構成されており、噴流は高圧水噴流とその外周の高圧空気噴流との二層構造に形成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載したオープンケーソン刃口の清掃装置。
【請求項4】
架台の一端部に位置する噴射ノズル管は、架台の長手方向へスライド自在で先端部にオープンケーソンの内周面に当たって転がる足車を備えた移動枠にほぼ垂直姿勢に設置されており、前記移動枠を前記足車がオープンケーソンの内周面に当たる方向へ押し動かす油圧シリンダの一側が移動枠と連結され、同油圧シリンダの他側は架台の反力受けとの間に設置した圧縮型の緩衝バネと連結して設置されていること、
架台の他端側には、当該架台を一定方向へ水平回転させる回転駆動手段として、油圧シリンダと、オープンケーソンの内周面に当たって回転する摩擦車、及び前記油圧シリンダの直線運動を前記摩擦車の回転に変換して伝える変換機構とが設置されていることを特徴とする、請求項1に記載したオープンケーソン刃口の清掃装置。
【請求項5】
架台を一定方向へ水平回転させる回転駆動手段として、噴射ノズル管のノズル口が外向きに一定の傾斜角度で設置されており、噴流の反動を回転力に利用することを特徴とする、請求項1又は4に記載したオープンケーソン刃口の清掃装置。
【請求項6】
架台をオープンケーソン坑内の刃口清掃位置へほぼ水平姿勢に位置決め固定する手段は、架台の端部に位置して同架台の長手方向へスライド自在で先端部にオープンケーソンの内周面に当たる脚部を備えた移動枠と、前記移動枠を前記脚部がオープンケーソンの内周面に当たる方向へ押し動かす油圧シリンダとからなり、前記油圧シリンダの一側は移動枠と連結され、同油圧シリンダの他側は架台の反力受けとの間に設置した圧縮型の緩衝バネと連結して設置されていることを特徴とする、請求項2に記載したオープンケーソン刃口の清掃装置。
【請求項7】
旋回部材を水平回転させる回転駆動手段として、旋回部材を架台と連結する垂直な旋回軸に回転伝達機構が設置され、前記の回転伝達機構を回転駆動する油圧モータ等の動力源が設置されていることを特徴とする、請求項2に記載したオープンケーソン刃口の清掃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−249694(P2006−249694A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64396(P2005−64396)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000150110)株式会社竹中土木 (101)