説明

オープンケーソン圧入工法

【課題】本発明は、ケーソン施工工期の短縮が図られたオープンケーソン圧入工法を提供することを目的とする。
【解決手段】クラムシェルのグラブバケット100で函内を掘削しながら、圧入桁80に取り付けられた油圧ジャッキ90で連結ロット11を引張ることによってグラウンドアンカ10に反力を取って、既に構築された躯体23の側壁に取り付けられた圧入力受ブラケット30を介して圧入力を躯体21,22,23に加え、圧入力受ブラケット30を盛替えながら、刃先抵抗とケーソンの外周面摩擦力に打ち勝って躯体21,22,23を地中に圧入沈下すると共に、予め組み立てられた鉄筋51、型枠52および足場53からなる組立体50を躯体23上に設置して、型枠52内に順次コンクリートを打設・養生して躯体を構築し、連続的にケーソン継足し及び沈下を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤に定着したグラウンドアンカの反力によってRCケーソンを地中に圧入沈下するオープンケーソン圧入工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、RC又はPCケーソンを水底や地中に沈設して橋脚等の基礎や大規模な地下構造物を構築する工法としてオープンケーソン圧入工法が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
このオープンケーソン圧入工法は、まず、複数のグラウンドアンカを地中に打ち込んで地盤に定着させる(準備工程)。次に、沈設位置に刃口金物を据え付け、足場を設置し、鉄筋及び型枠を組み立てた後、型枠内にコンクリートを打設・養生して、刃口を有する中空形状の躯体を構築する(刃口躯体構築工程)。次に、設置された足場と、組み立てられた型枠を解体・撤去した後、構築された躯体の上面に支圧盤を介して圧入桁を載置し、地盤に定着した複数のグラウンドアンカそれぞれに連結ロットを連結すると共に、圧入桁の上面に載置した複数の油圧ジャッキと各連結ロットを連結する(圧入設備セット工程)。次に、クラムシェルで函内を掘削しながら、圧入桁に取り付けられた油圧ジャッキで連結ロットを引張ることによってグラウンドアンカに反力を取って刃先抵抗とケーソンの外周面摩擦力に打ち勝って躯体を地中に圧入沈下する(掘削圧入工程)。次に、躯体の圧入が完了した後に、圧入桁、油圧ジャッキ、および連結ロットからなる圧入設備を撤去する(圧入設備撤去工程)。次に、足場を設置し、圧入沈下された躯体の上部に鉄筋を連結し、型枠を組み立てた後、型枠内にコンクリートを打設・養生して、圧入沈下された躯体の上部に躯体を構築する(躯体構築工程)。以後、上述した圧入設備セット工程、掘削圧入工程、圧入設備撤去工程、躯体構築工程を複数回繰り返して分割構築最終ロットの躯体を圧入沈下した後、最後に底板コンクリートを打設する。
【非特許文献1】角田安一・泉満明 共著、「アースアンカーによる圧入工法の設計と施工」、第1版、株式会社 オーム社、昭和56年4月20日、p.137−141
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オープンケーソン圧入工法は、周辺地盤を緩めたり乱したりするなどの影響が非常に少ない点や、個々の油圧ジャッキの制御によって圧入時に発生する傾斜を容易に修正することができる点などといった利点を有するものの、上述した躯体構築工程と掘削圧入工程を交互に繰り返して所定の深さまでRCケーソン等を圧入沈下するものであるため、ケーソン躯体の構築作業中はケーソンの圧入・掘削作業を行うことが出来ず、ケーソンの圧入・掘削作業中はケーソン躯体の構築作業を行うことが出来ない。そのため、工期が長くかかることとなり、例えば、河川の一渇水期(6〜8ヶ月/年)内の工期で、オープンケーソン圧入工法を用いて橋脚基礎等を構築することは困難である。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、ケーソン施工工期の短縮が図られたオープンケーソン圧入工法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明のオープンケーソン圧入工法は、沈設位置で既に構築された既設躯体の側壁に圧入力受ブラケットを取り付け、圧入力受ブラケットを介して圧入力を上記既設躯体に加え、圧入力受ブラケットを盛替えながら躯体を地中に圧入沈下すると共に、予め組み立てられた鉄筋、型枠および足場を上記既設躯体上に設置し、上記鉄筋を連結し、型枠内に順次コンクリートを打設して躯体を構築し、連続的にケーソン継足し及び沈下を行うことを特徴とする。
【0007】
本発明のオープンケーソン圧入工法は、既設躯体の側壁に取り付けられた圧入力受ブラケットを盛替えながら躯体を地中に圧入沈下すると共に、予め組み立てられた鉄筋、型枠および足場を既設躯体上に設置して躯体を構築することによって連続的にケーソン継足し及び沈下を行うものであるため、躯体の構築作業と圧入・掘削作業を同時に進め得ることができる。従って、本発明のオープンケーソン圧入工法によれば、大幅な工期短縮を図ることができる。
【0008】
ここで、上記本発明のオープンケーソン圧入工法は、上記鉄筋、型枠および足場として、予め一体に組み立てられた組立体を用いると、組立工程を更に短縮することができ好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のオープンケーソン圧入工法によれば、ケーソン躯体の構築作業とケーソンの圧入・掘削作業を同時に進め得ることができるため、大幅なケーソン施工工期の短縮を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態が適用されたオープンケーソン圧入工法を説明する地層断面図である。
【0012】
尚、この図1には、複数のグラウンドアンカ10が既に地中に打ち込まれて地盤に定着されていて、刃口21aを有する中空形状の躯体21からなる第1ロット、この第1ロットの躯体21上に構築された躯体22からなる第2ロット、およびこの第2ロットの躯体22上に構築された躯体23からなる第3ロットが既に地中に圧入されている状態が示されている。本実施形態では、本発明の既設躯体の実施例である、第1ロット〜第3ロットの躯体21,22,23を更に圧入沈下させると共に、第3ロットの躯体23上に躯体を構築する施工手順を説明する。
【0013】
まず、既に構築された既設躯体の側壁に圧入力受ブラケット30を取り付ける。本実施形態では、既に構築された第3ロットの躯体23の側壁に圧入力受ブラケット30が取り付けられている。この圧入力受ブラケット30は、本発明の圧入力受ブラケットの実施例である。
【0014】
図2は、図1に示す実施例の圧入力受ブラケット30の拡大図である。
【0015】
図2に示すように、躯体23にはねじ切りされた金物41(例えば、インサート)が埋め込まれていて、圧入力受ブラケット30はボルト42によって躯体23に取り付けられている。
【0016】
また、鉄筋51、型枠52および足場53からなる組立体50は、RCケーソンが沈設される沈設位置とは異なる場所に設けられた組立ヤードで予め一体として組み立てられていて、この組立体50が、吊治具61によって吊り上げられて揚重機60で組立ヤードから沈設位置に横移動されることによって、既に構築された第3ロットの躯体23上に設置される。また、ジャッキ71を有する型枠押え機70も、組立体50と共に吊治具61によって吊り上げられて揚重機60で組立ヤードから沈設位置に横移動され、組立体50が躯体23上に設置された後に、型枠押え機70のジャッキ71によって型枠52が押え付けられることによって、型枠52が位置決めされる。この組立体50は、本発明の組立体の実施例である。
【0017】
図3は、図1に示す実施例の組立体50の拡大図である。
【0018】
図3に示すように、足場53は型枠52に対してボルト43によって固定されている。
【0019】
次に、脚80aを有する圧入桁80の脚80aを、躯体23に取り付けられた圧入力受ブラケット30の上面に載置し、地盤に定着した複数のグラウンドアンカ10それぞれに連結ロット11を連結すると共に、圧入桁80の上面に載置した複数の油圧ジャッキ90と各連結ロット11を連結する。クラムシェルのグラブバケット100で函内を掘削しながら、圧入桁80に取り付けられた油圧ジャッキ90で連結ロット11を引張ることによってグラウンドアンカ10に反力を取って圧入力受ブラケット30を介して圧入力を躯体21,22,23に加え、圧入力受ブラケット30を盛替えながら、刃先抵抗とケーソンの外周面摩擦力に打ち勝って躯体21,22,23を地中に圧入沈下すると共に、既に構築された第3ロットの躯体23の鉄筋と組立体50の鉄筋51を連結し、組立体50の型枠52内に順次コンクリートを打設・養生して躯体を構築し、連続的にケーソン継足し及び沈下を行う。
【0020】
以上説明したように、本実施形態のオープンケーソン圧入工法によれば、ケーソン躯体の構築作業とケーソンの圧入・掘削作業を同時に進め得ることができるため、大幅なケーソン施工工期の短縮を図ることができる。また、鉄筋51、型枠52および足場53として、予め一体に組み立てられた組立体50を用いると、組立工程を更に短縮することができる。
【0021】
次に、本発明の他の実施形態として、型枠54および足場55を有する型枠足場体58と鉄筋59との双方のそれぞれが、RCケーソンが沈設される沈設位置とは異なる場所に設けられた組立ヤードで予め組み立てられたものを用いる、本発明のオープンケーソン圧入工法の実施形態について説明する。
【0022】
尚、以下説明する実施形態では、上述した実施形態で説明した装置構成とほぼ同じ装置構成を有するため、上述した実施形態との相違点に注目し、同じ要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0023】
図4は、本発明の一実施形態が適用されたオープンケーソン圧入工法を説明する地層断面図であり、図5は、図4に示す地層断面図のA−A断面図であり、図6は、図4に示す地層断面図のB−B断面図である。
【0024】
図4には、組立ヤードにおいて予め組み立てられた鉄筋59が、既に構築された第3ロットの躯体23上に設置された後に、組立ヤードにおいて予め組み立てられた型枠足場体58が躯体23上に設置される状態が示されている。
【0025】
型枠54および足場55は、組立ヤードにおいて予め組み立てられた後に、架台天端ビーム56にローラ57を介して取り付けられる。また、ジャッキ73を有する型枠押え機72も、組立ヤードにおいて架台天端ビーム56に取り付けられる。これら型枠54、足場55、型枠押え機72、および架台天端ビーム56からなる型枠足場体58が、架台天端ビーム56を介して吊り上げられて揚重機60で組立ヤードから沈設位置に横移動され、型枠足場体58が躯体23上に設置された後に、型枠押え機72のジャッキ73によって型枠54が押え付けられることによって、型枠54が位置決めされる。
【0026】
以上説明したように、型枠54および足場55を有する型枠足場体58と鉄筋59との双方が組立ヤードで予め組み立てられたそれぞれのものは、組立ヤードで予め一体として組み立てられた、鉄筋51、型枠52および足場53からなる組立体50よりも軽量であるため、作業効率が良い。
【0027】
尚、本実施形態では、組立ヤードで予め一体として組み立てられた、鉄筋51、型枠52および足場53からなる組立体50を用いる例や、および組立ヤードで予め組み立てられた型枠54および足場55を有する型枠足場体58と、組立ヤードで予め組み立てられた鉄筋59とを用いる例を挙げたが、これに限られるものではなく、鉄筋、型枠および足場のそれぞれは予め組み立てられたものであればよく、例えば、それぞれが独立して組み立てられたものや、いずれかを組み合わせて組み立てたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態が適用されたオープンケーソン圧入工法を説明する地層断面図である。
【図2】図1に示す実施例の圧入力受ブラケット30の拡大図である。
【図3】図1に示す実施例の組立体50の拡大図である。
【図4】本発明の一実施形態が適用されたオープンケーソン圧入工法を説明する地層断面図である。
【図5】図4に示す地層断面図のA−A断面図である。
【図6】図4に示す地層断面図のB−B断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 グラウンドアンカ
11 連結ロット
21,22,23 躯体
21a 刃口
30 圧入力受ブラケット
41 金物
42 ボルト
50 組立体
51 鉄筋
52 型枠
53 足場
60 揚重機
61 吊治具
70 型枠押え機
71 ジャッキ
80 圧入桁
80a 脚
90 油圧ジャッキ
100 グラブバケット
54 型枠
55 足場
56 架台天端ビーム
57 ローラ
58 型枠足場体
59 鉄筋
72 型枠押え機
73 ジャッキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈設位置で既に構築された既設躯体の側壁に圧入力受ブラケットを取り付け、圧入力受ブラケットを介して圧入力を前記既設躯体に加え、圧入力受ブラケットを盛替えながら躯体を地中に圧入沈下すると共に、予め組み立てられた鉄筋、型枠および足場を前記既設躯体上に設置し、前記鉄筋を連結し、型枠内に順次コンクリートを打設して躯体を構築し、連続的にケーソン継足し及び沈下を行うことを特徴とするオープンケーソン圧入工法。
【請求項2】
前記鉄筋、型枠および足場が、予め一体として組み立てられた組立体であることを特徴とする請求項1記載のオープンケーソン圧入工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−207152(P2006−207152A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−17293(P2005−17293)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(000112196)株式会社ピーエス三菱 (181)
【出願人】(596146821)菱建基礎株式会社 (7)